以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
<第一実施形態>
(インクジェット記録装置10)
本実施形態に係るインクジェット記録装置10について説明する。図1は、インクジェット記録装置10の構成を簡略化して示す図である。
図1に示されるインクジェット記録装置10は、記録媒体13(シート材の一例)に画像を形成する画像形成装置の一例である。具体的には、インクジェット記録装置10は、色材を含有するインクと、インクを凝集させる機能を有する処理液と、を用いて、画像データに基づき、記録媒体13の記録面に画像を形成する2液凝集方式の記録装置である。
画像が形成される記録媒体13は、シート状の部材であるシート材の一例である。記録媒体13としては、例えば、インク及び処理液15(図2参照)を保持(具体的には、吸収)する用紙等の媒体が用いられる。
インクジェット記録装置10は、図1に示されるように、給紙部20、処理液塗布部30(塗布装置の一例)、画像形成部40、乾燥部50、定着部60、及び排出部70を備えている。処理液塗布部30、画像形成部40、乾燥部50、及び定着部60は、それぞれ、記録媒体13の受け渡しを行う渡し胴32、42、52、62(以下、渡し胴32〜62という)と、記録媒体13を保持しながら搬送する圧胴34、44、54、64(以下、圧胴34〜64という)と、を有している。
各渡し胴32〜62及び各圧胴34〜64には、記録媒体13の前端部(先端部)を挟持する挟持部としてのグリッパ19A、19Bが設けられている。グリッパ19A、19Bは、各渡し胴32〜62及び各圧胴34〜64の周方向に等間隔(180度毎)に配置されている。
各渡し胴32〜62及び各圧胴34〜64は、グリッパ19A、19Bにより記録媒体13の前端部を挟持した状態で回転することで、渡し胴32〜62及び圧胴34〜64の外周面に沿って記録媒体13を搬送する。なお、各渡し胴32〜62及び各圧胴34〜64の具体的な構成については後述する。
なお、図1では、渡し胴52に設けられたグリッパ19A、19Bのみに符号を付し、他の渡し胴及び圧胴に設けられたグリッパの符号を省略している。また、本実施形態における「前端」とは、各渡し胴32〜62及び各圧胴34〜64の回転方向の下流側の端をいう。また、本実施形態における「後端」とは、各渡し胴32〜62及び各圧胴34〜64の回転方向の上流側の端をいう。
(給紙部20)
給紙部20は、図1に示されるように、記録媒体13が収容される収容部22と、収容部22から記録媒体13を一枚ずつ送り出す送出機構24と、を有している。
送出機構24は、収容部22から一枚ずつ送り出した記録媒体13をガイド部材(図示省略)によって位置決めした状態で一旦停止させる。これにより、記録媒体13の前端部が、処理液塗布部30の渡し胴32のグリッパ(図示省略)の位置に位置した状態で、記録媒体13が、処理液塗布部30の渡し胴32へ受け渡される。
(処理液塗布部30)
処理液塗布部30は、処理液(塗布液の一例)を記録媒体13に塗布する塗布装置の一例である。具体的には、処理液塗布部30は、図1に示されるように、前述の渡し胴32と、前述の圧胴34としての搬送ドラム34(回転体の一例)と、処理液塗布機構80と、を有している。
渡し胴32は、図1における時計回り方向に回転する。渡し胴32は、給紙部20から受け渡された記録媒体13の前端部をグリッパ(図示省略)により挟持した状態で回転することで、渡し胴32の外周面に沿って記録媒体13を搬送する。そして、渡し胴32は、搬送ドラム34へ記録媒体13を受け渡す受渡位置まで記録媒体13を搬送し、受渡位置にて搬送ドラム34へ記録媒体13を受け渡す。
搬送ドラム34は、図1及び図2における反時計回り方向に回転する。また、搬送ドラム34は、外周面に形成された複数の吸気孔(図示省略)を通じて、記録媒体13を吸引することで、外周面に記録媒体13を吸着する。
搬送ドラム34では、渡し胴32から受け渡された記録媒体13の前端部を各グリッパ19A、19Bで挟持した状態で回転することで(図2参照)、記録媒体13を搬送ドラム34の外周面に巻き掛けながら、その記録媒体13を自らの外周面に吸着する。そして、搬送ドラム34は、吸着により自らの外周面に記録媒体13を保持した状態で回転することで、渡し胴42へ記録媒体13を受け渡す受渡位置まで記録媒体13を搬送する。
本実施形態では、図2に示されるように、搬送ドラム34は、記録媒体13を自らの外周面に周方向に沿って2枚保持する。なお、搬送ドラム34が保持する記録媒体13の枚数は、1枚(単数枚)であっても、3枚以上であってもよい。
また、本実施形態では、搬送ドラム34は、吸気による吸着によって記録媒体13を外周面に保持していたが、これに限られず、搬送ドラム34は、例えば、静電吸着により、記録媒体13を外周面に保持する構成であってもよい。
処理液塗布機構80は、搬送ドラム34の外周面に保持された記録媒体13の記録面に処理液15(図2参照)を塗布する機能を有している。処理液塗布機構80は、搬送ドラム34の外周面と対向する位置に配置されている。
処理液塗布機構80は、具体的には、図2に示されるように、塗布ローラ82(塗布体の一例)と、アニロックスローラ84(供給部の一例)と、貯留部87と、を有している。
貯留部87は、処理液15を貯留する機能を有している。具体的には、貯留部87は、上部が開放された容器で構成されている。貯留部87に貯留される処理液15としては、画像形成部40の後述のインクジェットヘッド48K〜48Cが吐出するインク中の色材(顔料)を凝集させる色材凝集剤を含む液体が用いられる。記録媒体13上で処理液15とインクとが接触すると、インク中の色材と溶媒との分離が促進される。なお、図2以外の図面では、貯留部87の図示を、適宜省略している。
塗布ローラ82は、搬送ドラム34の外周面に保持された記録媒体13の記録面(表面の一例)に処理液15を塗布する塗布体の一例である。塗布ローラ82には、例えば、エチレンプロピレンジエン共重合ゴム(EPDM)やシリコンゴムなどのゴムローラが用いられている。
塗布ローラ82は、自らの外周面が搬送ドラム34の外周面に予め定められた塗布位置で接触した状態で回転する。塗布ローラ82は、具体的には、搬送ドラム34に従動して回転する。これにより、塗布ローラ82は、搬送ドラム34と同期して回転する。
塗布位置は、塗布ローラ82が搬送ドラム34の外周面に保持された記録媒体13に処理液を塗布する位置である。塗布位置は、塗布ローラ82の外周面と搬送ドラム34の外周面とが接触する接触位置でもある。この塗布位置は、塗布ローラ82の外周上の予め定められた位置に設定されている。
そして、塗布ローラ82は、搬送ドラム34に保持された記録媒体13の記録面に塗布位置で処理液15を塗布する。なお、塗布ローラ82は、搬送ドラム34と同期して、モータ等の駆動部からの駆動力によって回転駆動する構成であってもよい。
なお、塗布ローラ82は、処理液15を記録媒体13に塗布した後も、処理液15が薄膜状に外周上に残留する。
アニロックスローラ84は、処理液15を塗布ローラ82の外周面に供給する供給ローラである。すなわち、アニロックスローラ84は、処理液15を塗布ローラ82の外周面に供給する供給部の一例である。
アニロックスローラ84は、具体的には、表面に多数のセル(処理液15を計量するための凹部)が形成された構造を有している。アニロックスローラ84は、貯留部87内に貯留されている処理液15に下部が浸漬した状態で回転可能に貯留部87に支持されている。さらに、アニロックスローラ84は、塗布ローラ82に対して接触及び離間可能に貯留部87に支持されている。
アニロックスローラ84は、接離機構(図示省略)によって、塗布ローラ82に対して予め定められた供給位置で接触し、又は、塗布ローラ82から離間する(二点鎖線参照)。すなわち、アニロックスローラ84は、接離機構(図示省略)によって、塗布ローラ82に対して予め定められた供給位置で接触する接触状態(実線で示す状態)と、塗布ローラ82から離間する離間状態(二点鎖線で示す状態)と、に切り替えられる。
そして、アニロックスローラ84は、回転することで貯留部87内の処理液15をくみ上げて、セル内に保持する。アニロックスローラ84の外周面(表面)に付着した余分な処理液15は、ブレード(図示省略)によってかき取られて、アニロックスローラ84のセル内には、一定量の処理液15が保持される。アニロックスローラ84のセル内に保持された処理液15は、アニロックスローラ84が塗布ローラ82に対して供給位置で接触する接触状態において、塗布ローラ82へ供給される。
本実施形態では、アニロックスローラ84は、搬送ドラム34に保持された記録媒体13が塗布位置を通過するタイミングに合わせて、塗布ローラ82に対する接触及び離間のタイミングが調整される。これにより、アニロックスローラ84は、搬送ドラム34に保持された記録媒体13が塗布位置を通過するタイミングに合わせて、処理液15を塗布ローラ82の外周面に供給する。なお、アニロックスローラ84の具体的な供給動作は、後述する。
ここで、本実施形態では、塗布ローラ82の周長(円周)をPとし、搬送ドラム34の周長(円周)をSとし、搬送ドラム34の外周面に保持される記録媒体13の枚数をNとしたとき、P=S×(1/N)を満たす。本実施形態では、搬送ドラム34の外周面に保持される記録媒体13の枚数が2枚であるので、P=S/2となる。すなわち、塗布ローラ82の周長は、搬送ドラム34の周長の半分とされている。
搬送ドラム34の外周面上には、図2及び図3に示されるように、第一形成領域91と、第一保持領域93と、第二形成領域92と、第二保持領域94と、が形成されている。なお、図3は、搬送ドラム34の外周面を展開して示す図である。図3において、矢印RAは、搬送ドラム34の回転方向を示している。
第一形成領域91及び第二形成領域92は、それぞれ、搬送ドラム34の軸方向一端部及び軸方向他端部で塗布ローラ82の外周面に接触するが、軸方向一端部と軸方向他端部との間の軸方向の中央側部分では、塗布ローラ82の外周面に接触しない領域である。第一形成領域91及び第二形成領域92における軸方向の中央側部分には、凹部99が形成されている。これにより、第一形成領域91及び第二形成領域92は、搬送ドラム34の軸方向の中央側部分が塗布ローラ82の外周面に接触しない。
さらに、第一形成領域91の凹部99及び第二形成領域92の凹部99には、それぞれ、前述のグリッパ19A、19Bが設けられている。グリッパ19A、19Bは、それぞれ、図3に示されるように、搬送ドラム34の軸方向に沿って複数配置されている。なお、グリッパ19A、19B及び、グリッパ19A、19Bで挟持された記録媒体13の前端部は、第一形成領域91の軸方向一端部及び軸方向他端部、並びに、第二形成領域92の軸方向一端部及び軸方向他端部よりも、搬送ドラム34の回転中心側(径方向内側)に位置するため、塗布ローラ82の外周面に接触しない。
そして、第一形成領域91、第一保持領域93、第二形成領域92及び第二保持領域94は、この順で、搬送ドラム34の回転方向の下流側から上流側へ向かって配置されている。第一形成領域91及び第一保持領域93と、第二形成領域92及び第二保持領域94とは、それぞれ、搬送ドラム34の半周の範囲(180度の範囲)に配置されている。
第一保持領域93及び第二保持領域94は、搬送ドラム34の周方向に沿った長さが同じ領域であり、搬送ドラム34の周方向に等間隔で配置されている。第一形成領域91及び第二形成領域92は、搬送ドラム34の周方向に沿った長さが同じ領域であり、搬送ドラム34の周方向に等間隔で配置されている。第一形成領域91及び第二形成領域92の周方向に沿った長さは、第一保持領域93及び第二保持領域94の周方向に沿った長さよりも短くなっている。
第一保持領域93及び第二保持領域94は、それぞれ、搬送ドラム34の軸方向の一端から他端にかけて塗布ローラ82の外周面に接触する領域である。
第一保持領域93は、グリッパ19Aによって前端部が挟持された記録媒体13における前端部よりも後端側を、吸引により、第一保持領域93の領域内に保持する領域でもある。第一保持領域93に保持される記録媒体13は、第一保持領域93の領域内の前端から後端側の位置に保持される。第一保持領域93の後端側の領域には、記録媒体13が保持されない領域が存在する。
なお、第一保持領域93は、第一形成領域91の後端(搬送ドラム34の回転方向における上流端)から第二形成領域92の前端(搬送ドラム34の回転方向における下流端)までの領域である。
第二保持領域94は、グリッパ19Bによって前端部が挟持された記録媒体13における前端部よりも後端側を、吸引により、第二保持領域94の領域内に保持する領域でもある。第二保持領域94に保持される記録媒体13は、第二保持領域94の領域内の前端から後端側の位置に保持される。第二保持領域94の後端側の領域には、記録媒体13が保持されない領域が存在する。
なお、第二保持領域94は、第二形成領域92の後端(搬送ドラム34の回転方向における上流端)から第一形成領域91の前端(搬送ドラム34の回転方向における下流端)までの領域である。
第一保持領域93と第二保持領域94とは、搬送ドラム34の周方向に等間隔に配置されている。第一保持領域93及び第二保持領域94のそれぞれに、同じ長さの記録媒体13が保持された状態において、記録媒体13は等間隔で配置される。
搬送ドラム34の回転により、第一形成領域91、第一保持領域93、第二形成領域92、第二保持領域94の順で塗布位置を通過する。
塗布ローラ82の外周上には、非接触領域821と、塗布領域823と、が形成されている。
非接触領域821は、搬送ドラム34の第一形成領域91及び第二形成領域92のそれぞれと、対応付けられた領域である。搬送ドラム34の回転により、第一形成領域91及び第二形成領域92が交互に塗布位置を通過するのに同期して、非接触領域821が塗布位置を通過する。
なお、第一形成領域91及び第二形成領域92のそれぞれが、塗布位置を通過する際に、第一形成領域91及び第二形成領域92のそれぞれは、軸方向の中央側部分において、非接触領域821の軸方向の中央側部分と接触しないが、軸方向一端部及び軸方向他端部では、非接触領域821の軸方向一端部及び他端部と接触する。このため、第一形成領域91及び第二形成領域92のそれぞれが、塗布位置を通過する際にも、塗布ローラ82が、搬送ドラム34に従動する状態が維持される。なお、第一形成領域91及び第二形成領域92のそれぞれが、塗布位置を通過する際に、第一形成領域91及び第二形成領域92のそれぞれが、軸方向一端部及び軸方向他端部において、非接触領域821の軸方向一端部及び他端部と接触せず、塗布ローラ82が惰性で回転する構成であってもよい。
塗布領域823は、アニロックスローラ84から処理液15が供給され、処理液15を保持する領域である。塗布領域823は、搬送ドラム34の第一保持領域93及び第二保持領域94のそれぞれと、対応付けられた領域である。搬送ドラム34の回転により、第一保持領域93及び第二保持領域94が交互に塗布位置を通過するのに同期して、塗布領域823が塗布位置を通過する。
第一保持領域93及び第二保持領域94のそれぞれが、塗布位置を通過する際に、塗布領域823に接触する。
第一保持領域93及び第二保持領域94に記録媒体13が保持されている場合には、記録媒体13が塗布領域823に接触する。これにより、塗布領域823に供給された処理液15が、第一保持領域93及び第二保持領域94に保持された記録媒体13に塗布される。
すなわち、塗布ローラ82は、塗布領域823に供給された処理液15を、搬送ドラム34の第一保持領域93及び第二保持領域94に保持された記録媒体13に塗布する。
なお、図3に示されるように、搬送ドラム34の第一保持領域93及び第二保持領域94に保持された記録媒体13は、画像形成部40によって画像が形成される画像形成領域13Aを有している。記録媒体13の外周部分には、画像が形成されない非形成部分(以下、画像形成領域外13Bという)が枠状に存在している。画像形成領域13Aは、画像形成領域外13Bの内側に存在している。
(画像形成部40)
画像形成部40は、記録媒体13に画像を形成する機能を有している。具体的には、画像形成部40は、図1に示されるように、前述の渡し胴42と、前述の圧胴44と、媒体抑えローラ46と、インクジェットヘッド48K、48Y、48M、48C(以下、インクジェットヘッド48K〜48Cという)と、を有している。
渡し胴42は、渡し胴32と同様に構成されている。渡し胴42は、処理液塗布部30の搬送ドラム34から受け渡された記録媒体13の前端部を各グリッパ19A、19Bにより挟持した状態で回転することで、渡し胴42の外周面に沿って記録媒体13を搬送する。そして、渡し胴42は、圧胴44へ記録媒体13を受け渡す受渡位置まで記録媒体13を搬送し、受渡位置にて圧胴44へ記録媒体13を受け渡す。
圧胴44は、搬送ドラム34と同様に構成されている。圧胴44では、渡し胴42から受け渡された記録媒体13の前端部を各グリッパ19A、19Bで挟持した状態で回転することで、記録媒体13を圧胴44の外周面に巻き掛けながら、その記録媒体13を自らの外周面に吸着する。そして、圧胴44は、吸着により自らの外周面に記録媒体13を保持した状態で回転することで、渡し胴52へ記録媒体13を受け渡す受渡位置まで記録媒体13を搬送する。
本実施形態では、圧胴44は、記録媒体13を自らの外周面に周方向に沿って2枚保持する。なお、圧胴44が保持する記録媒体13の枚数は、1枚(単数枚)であっても、3枚以上であってもよい。
媒体抑えローラ46は、圧胴44の外周面に記録媒体13を押し付けるローラである。媒体抑えローラ46は、渡し胴42から圧胴44へ受け渡された記録媒体13を、圧胴44の外周面へ押し付けることで、圧胴44の外周面へ密着させる。
インクジェットヘッド48K〜48Cは、それぞれ、ブラック(K)、イエロー(Y)マゼンダ(M)、シアン(C)の各色のインクを吐出するインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド48K〜48Cは、記録媒体13における画像形成領域13Aの最大幅(記録媒体13の搬送方向と直交する方向の長さ)以上の長さを有するラインヘッドで構成されている。
インクジェットヘッド48K〜48Cは、圧胴44の上側に、圧胴44の外周面に対向して配置されている。
インクジェットヘッド48K〜48Cは、圧胴44の外周面に保持された記録媒体13に対して、画像データに基づいて、ブラック(K)、イエロー(Y)マゼンダ(M)、シアン(C)の各色のインクを吐出する。
インクジェットヘッド48K〜48Cから吐出されたインクの液滴が、記録媒体13に着弾すると、記録媒体13に塗布された処理液15(図2参照)とインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料系色材)又は不溶化する色材(染料系色材)の凝集反応が発現し、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体13上に形成された画像における色材の移動(ドットの位置ズレ、ドットの色ムラ)が抑制される。
なお、本実施形態では、KYMCの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
(乾燥部50)
乾燥部50は、インクが吐出された記録媒体13を乾燥する機能を有している。具体的には、乾燥部50は、前述の渡し胴52と、前述の圧胴54と、乾燥処理装置56と、を有している。
渡し胴52は、渡し胴32と同様に構成されている。渡し胴52は、画像形成部40の圧胴44から受け渡された記録媒体13の前端部を各グリッパ19A、19Bにより挟持した状態で回転することで、渡し胴52の外周面に沿って記録媒体13を搬送する。そして、渡し胴52は、圧胴54へ記録媒体13を受け渡す受渡位置まで記録媒体13を搬送し、受渡位置にて圧胴54へ記録媒体13を受け渡す。
圧胴54は、搬送ドラム34と同様に構成されている。圧胴54では、渡し胴52から受け渡された記録媒体13の前端部を各グリッパ19A、19Bで挟持した状態で回転することで、記録媒体13を圧胴54の外周面に巻き掛けながら、その記録媒体13を自らの外周面に吸着する。そして、圧胴54は、吸着により自らの外周面に記録媒体13を保持した状態で回転することで、渡し胴62へ記録媒体13を受け渡す受渡位置まで記録媒体13を搬送する。
本実施形態では、圧胴54は、記録媒体13を自らの外周面に周方向に沿って2枚保持する。なお、圧胴54が保持する記録媒体13の枚数は、1枚(単数枚)であっても、3枚以上であってもよい。
乾燥処理装置56は、記録媒体13の液体成分を蒸発させることで、記録媒体13を乾燥する装置である。
乾燥処理装置56は、圧胴54の上側に、圧胴54の外周面に対向して配置されている。画像形成部40により記録媒体13にインクが吐出されると、処理液とインクとの凝集反応により分離したインクの液体成分(溶媒成分)及び処理液の液体成分(溶媒成分)が記録媒体13上に残留してしまうので、かかる液体成分を乾燥処理装置56によって蒸発させることで除去する。
乾燥処理装置56は、例えば、ヒータによる加熱、ファンによる送風、又はこれらを併用して記録媒体13上に存在する液体成分を蒸発させる乾燥処理を行う。記録媒体13に付与される加熱量及び送風量は、記録媒体13上に残留する液体量、記録媒体13の種類、及び記録媒体13の搬送速度等のパラメータに応じて適宜設定される。
(定着部60)
定着部60は、記録媒体13上のインクを記録媒体13に定着させる機能を有している。具体的には、定着部60は、前述の渡し胴62と、前述の圧胴64と、ヒータ66と、定着ローラ68と、を有している。
渡し胴62は、渡し胴32と同様に構成されている。渡し胴62は、乾燥部50の圧胴54から受け渡された記録媒体13の前端部を各グリッパ19A、19Bにより挟持した状態で回転することで、渡し胴62の外周面に沿って記録媒体13を搬送する。そして、渡し胴62は、圧胴64へ記録媒体13を受け渡す受渡位置まで記録媒体13を搬送し、受渡位置にて圧胴64へ記録媒体13を受け渡す。
圧胴64は、搬送ドラム34と同様に構成されている。圧胴64では、渡し胴62から受け渡された記録媒体13の前端部を各グリッパ19A、19Bで挟持した状態で回転することで、記録媒体13を圧胴64の外周面に巻き掛けながら、その記録媒体13を自らの外周面に吸着する。そして、圧胴64は、吸着により自らの外周面に記録媒体13を保持した状態で回転することで、排出部70へ記録媒体13を受け渡す受渡位置まで記録媒体13を搬送する。
本実施形態では、圧胴64は、記録媒体13を自らの外周面に周方向に沿って2枚保持する。なお、圧胴64が保持する記録媒体13の枚数は、1枚(単数枚)であっても、3枚以上であってもよい。
ヒータ66及び定着ローラ68は、圧胴64の外周面に対向する位置に配置されている。具体的には、ヒータ66及び定着ローラ68は、圧胴64の回転方向(図1において反時計回り方向)の上流側から、ヒータ66及び定着ローラ68の順で配置されている。
ヒータ66は、圧胴64の外周面に保持された記録媒体13を予備加熱する機能を有している。定着ローラ68は、圧胴64の外周面に保持された記録媒体13を加熱し且つ圧胴64との間に挟んで加圧することで、インクを被膜化させて記録媒体13に定着する。定着ローラ68としては、例えば、内部にハロゲンランプが設けられた金属ローラなどが用いられる。
インラインセンサ82は、圧胴64の外周面に対向する位置であって、定着ローラ68に対する圧胴64の回転方向の下流側に配置されている。インラインセンサ82は、記録媒体13に形成された画像を読み取るセンサである。インラインセンサ82が読み取った結果に基づき、インクジェットヘッド48K〜48Cの吐出異常の有無などが判断される。
(排出部70)
排出部70は、張架ローラ72A、72Bに巻きかけられた無端状の搬送ベルト74と、画像形成後の記録媒体13が収容される排出トレイ76と、を有している。排出部70では、定着部60から送り出された定着後の記録媒体13が、搬送ベルト74によって搬送され、排出トレイ76に排出される。
(処理液塗布部30の作用効果)
本実施形態に係る処理液塗布部30では、図2に示されるように、搬送ドラム34が、記録媒体13の前端部を各グリッパ19A、19Bで挟持し、且つ、記録媒体13を吸気により外周面に吸着することで、記録媒体13を自らの外周面(具体的には、第一保持領域93及び第二保持領域94)に周方向に沿って2枚保持した状態で回転する。これにより、搬送ドラム34は、自らの外周面に周方向に沿って保持した2枚の記録媒体13を搬送する。
塗布ローラ82は、自らの外周面が搬送ドラム34の外周面に予め定められた塗布位置で接触した状態で回転し、搬送ドラム34に保持された記録媒体13の記録面に塗布位置で処理液15を塗布する。
アニロックスローラ84は、搬送ドラム34に保持された記録媒体13が塗布位置を通過するタイミングに合わせて、処理液15を塗布ローラ82の外周面に供給する。具体的には、以下のように、アニロックスローラ84の塗布ローラ82への塗布ローラ82の供給動作が行われる。
図4に示されるように、回転する塗布ローラ82に供給された処理液15の前端が、回転する搬送ドラム34に保持された記録媒体13の塗布開始部分(塗布ローラ82による接触(塗布)が開始されるべき前端側の部分)と、同じタイミングで塗布位置を通過するように、アニロックスローラ84が塗布ローラ82に接触する。このように、アニロックスローラ84は、搬送ドラム34に保持された記録媒体13の塗布開始部分が塗布位置を通過するタイミングに合わせて接触する。なお、記録媒体13の塗布開始部分は、各グリッパ19A、19Bで挟持した前端部よりも後端側の位置に存在し、第一保持領域93(第二保持領域94)の前端に配置された部分である。また、本実施形態では、アニロックスローラ84が、回転する塗布ローラ82の塗布領域823(図2参照)の前端に対して接触を開始することで、記録媒体13の塗布開始部分が塗布位置を通過するタイミングに合わせて処理液の塗布が開始される。
さらに、図5に示されるように、回転する塗布ローラ82に供給された処理液15の後端が、回転する搬送ドラム34に保持された記録媒体13の後端と、同じタイミングで塗布位置を通過するように、アニロックスローラ84が塗布ローラ82から離間する。このように、アニロックスローラ84は、搬送ドラム34に保持された記録媒体13の後端が塗布位置を通過するタイミングに合わせて離間する。
そして、処理液塗布部30では、塗布ローラ82の周長をPとし、搬送ドラム34の周長をSとし、搬送ドラム34の外周面に保持される記録媒体13の枚数をNとしたとき、P=S×(1/N)を満たす。具体的には、塗布ローラ82の周長は、搬送ドラム34の周長の半分とされている。
このため、回転する塗布ローラ82の外周面上の各領域(各位置)と、回転する搬送ドラム34の外周面上の各領域(各位置)と、を対応付けて、塗布位置を通過させることができる。すなわち、塗布ローラ82の外周面上の各領域(各位置)と、搬送ドラム34の外周面上の各領域(各位置)と、を同期させて、塗布位置を通過させることができる。
具体的には、回転する搬送ドラム34の第一形成領域91、第一保持領域93、第二形成領域92、第二保持領域94が、この順で塗布位置を通過するのに同期して、回転する塗布ローラ82の非接触領域821、塗布領域823、非接触領域821及び塗布領域823がこの順で通過する(図2参照)。
したがって、搬送ドラム34の第一保持領域93及び第二保持領域94のそれぞれが、塗布位置を通過する際に、第一保持領域93及び第二保持領域94のそれぞれは、塗布領域823に常に接触する。
ここで、前述のように、塗布ローラ82に対するアニロックスローラ84の接触及び離間のタイミングを、搬送ドラム34に保持された記録媒体13が、塗布位置を通過する通過タイミングに合わせることで、記録媒体13の範囲内に処理液15を塗布することができる。
しかしながら、塗布ローラ82に対するアニロックスローラ84の接触及び離間のタイミングを、記録媒体13が塗布位置を通過する通過タイミングに完全に合わせ込むことは、困難である。
例えば、アニロックスローラ84が塗布ローラ82から離間するタイミングが、第一保持領域93に保持されたM枚目の記録媒体13の後端が塗布位置を通過するタイミングよりも遅れる場合(以下、第一の場合という)が考えられる。
また、アニロックスローラ84が塗布ローラ82から離間するタイミングが、第一保持領域93に保持されたM枚目の記録媒体13の後端が塗布位置を通過するタイミングよりも早い場合(以下、第二の場合という)が考えられる。
前述の第一の場合では、図6に示されるように、塗布ローラ82の外周面(具体的には塗布領域823(図2参照))に供給された処理液15は、塗布位置において、搬送ドラム34の外周面(具体的には第一保持領域93(図2参照))に保持されたM枚目の記録媒体13の後端よりも後方側(塗布体の回転方向上流側)へはみ出す。
そして、M枚目の記録媒体13の後端よりも後方側へはみ出した処理液15は、M枚目の記録媒体13に塗布されずに、塗布ローラ82の外周面に残留する。なお、塗布ローラ82の外周面に残留した処理液15は、搬送ドラム34の外周面(具体的には第一保持領域93(図2参照))に接触するが、記録媒体13に接触しないため、記録媒体13で吸収されず、塗布ローラ82の外周面に残留する。
そして、塗布ローラ82の処理液15が残留した領域は、他の領域よりも処理液15の量が多い領域15A(以下、多量領域15Aという)となる。
ここで、本実施形態では、前述のように、塗布ローラ82の外周面上の各領域(各位置)と、搬送ドラム34の外周面上の各領域(各位置)と、が同期して塗布位置を通過する。このため、塗布ローラ82の多量領域15Aを、搬送ドラム34におけるM枚目以降の各記録媒体13の後端よりも後方側の領域34A(記録媒体13が存在しない領域)に、塗布位置で常に接触させることができる。
これにより、塗布ローラ82の多量領域15Aが、M枚目以降の記録媒体13に接触せず、記録媒体13に塗布する処理液15の塗布ムラ(塗布量の局所的な増減)を抑制できる。
前述の第二の場合では、図7に示されるように、塗布ローラ82の外周面(具体的には塗布領域823(図2参照))に供給された処理液15は、塗布位置において、搬送ドラム34の外周面(具体的には第一保持領域93(図2参照))に保持されたM枚目の記録媒体13の後端よりも前方側(塗布体の回転方向下流側)へ短くなる。
そして、塗布ローラ82の外周面において処理液の供給が短くなった領域は、処理液が供給された領域よりも処理液15の量が少ない領域15B(以下、少量領域15Bという)となる。
なお、本実施形態では、少量領域15Bの長さ(塗布ローラ82の周方向に沿った長さ)が、記録媒体13の後端側の画像形成領域外13Bの長さ(画像形成領域13Aの後端から記録媒体13の後端までの長さ)よりも短くなる範囲で、アニロックスローラ84の離間タイミングの誤差が生じる。
そして、塗布ローラ82の塗布領域823と、搬送ドラム34の第一保持領域93に保持されたM枚目の記録媒体13とが、同期して塗布位置を通過すると(図2参照)、塗布ローラ82の処理液15が記録媒体13の少なくとも画像形成領域13A内に接触する。したがって、記録媒体13の少なくとも画像形成領域13A内に処理液15が塗布される。
一方、少量領域15Bは、塗布位置において、記録媒体13の後端側の画像形成領域外13B(画像形成領域13Aの後端から記録媒体13の後端までの間)に接触する。このため、記録媒体13の後端側の画像形成領域外13Bに塗布される処理液15の塗布量が、画像形成領域13A内に塗布される処理液15の塗布量よりも少なくなるが、画像形成領域外13Bであるので、画像に影響がでない。
ここで、本実施形態では、前述のように、塗布ローラ82の外周面上の各領域(各位置)と、搬送ドラム34の外周面上の各領域(各位置)と、が同期して塗布位置を通過する。このため、塗布ローラ82の少量領域15Bを、搬送ドラム34におけるM枚目以降の各記録媒体13の後端側の画像形成領域外13Bに、塗布位置で常に接触させることができる。
これにより、塗布ローラ82の少量領域15Bは、M枚目以降の記録媒体13の画像形成領域13A内に接触せず、記録媒体13の画像形成領域13A内において、処理液15の塗布ムラを抑制できる。
<第二実施形態>
次に、第二実施形態に係る処理液塗布部230について説明する。ここでは、前述の第一実施形態と異なる部分について説明し、前述の第一実施形態と同一機能を有する部分については、同一符号を付して、説明を適宜省略する。
第二実施形態に係る処理液塗布部230は、前述の処理液塗布部30に替えて、インクジェット記録装置10に適用される。
処理液塗布部230では、塗布ローラ82の周長(円周)をPとし、搬送ドラム34の周長(円周)をSとし、搬送ドラム34の外周面に保持される記録媒体13の枚数をNとし、記録媒体13の画像形成領域13Aの後端から記録媒体13の後端までの距離をAとしたとき、P=S×(1/N)−X、0<X<Aを満たす。なお、距離Aは、記録媒体13の後端側の画像形成領域外13Bにおける搬送ドラム34の周方向(回転方向)に沿った長さに相当する(図8及び図9参照)。
本実施形態では、搬送ドラム34の外周面に保持される記録媒体13の枚数が2枚であるので、P=S/2−Xとなる。すなわち、塗布ローラ82の周長は、搬送ドラム34の周長の半分よりもX分短い長さとされている。
これにより、塗布ローラ82の回転毎に、塗布ローラ82と搬送ドラム34との位相が、X分ずれていく。このため、前述の第一の場合において塗布ローラ82に形成された多量領域15A(図8参照)は、M+1枚目の記録媒体131の後端側の画像形成領域外13B(M+1枚目の記録媒体131における画像形成領域13Aの後端からM+1枚目の記録媒体131の後端までの間)に接触する。なお、Xは、画像形成領域13Aの後端から記録媒体13の後端までの距離A(画像形成領域外13Bの長さ)よりも短いため、塗布ローラ82の多量領域15Aは、M+1枚目の記録媒体131の画像形成領域13A内には接触しない。
このため、多量領域15AがM+1枚目の記録媒体131の画像形成領域13A内に接触する場合に比べ、記録媒体13に塗布する処理液の画像形成領域13A内での塗布ムラを抑制できる。
また、塗布ローラ82の多量領域15Aが、M+1枚目の記録媒体131の後端側の画像形成領域外13Bに接触することで、多量領域15Aの処理液が、記録媒体13の後端側の画像形成領域外13Bに塗布されるので、多量領域15Aにおける他の領域よりも処理液の量が多い状態が解消される。
さらに、塗布ローラ82の回転毎に多量領域15Aが形成されたとしても、塗布ローラ82の回転毎に、塗布ローラ82と搬送ドラム34との位相がX分ずれていくため、多量領域15AがX分ずれた状態で塗布ローラ82に形成される。これにより、塗布ローラ82の外周上の一か所に処理液が蓄積されるのを抑制できる。
本実施形態では、前述のように、塗布ローラ82の回転毎に、塗布ローラ82と搬送ドラム34との位相が、X分ずれていく。このため、前述の第二の場合において塗布ローラ82に形成された少量領域15B(図10参照)は、少なくとも一部が、M+1枚目の記録媒体131の後端側の画像形成領域外13B(M+1枚目の記録媒体131における画像形成領域13Aの後端からM+1枚目の記録媒体131の後端までの間)に接触する。
このため、少量領域15Bの全部がM+1枚目の記録媒体131の画像形成領域13A内に接触する場合に比べ、記録媒体13に塗布する処理液の画像形成領域13A内での塗布ムラを抑制できる。
さらに、塗布ローラ82の回転毎に少量領域15Bが形成されたとしても、塗布ローラ82の回転毎に、塗布ローラ82と搬送ドラム34との位相がX分ずれていくため、少量領域15BがX分ずれた状態で塗布ローラ82に形成される。これにより、塗布ローラ82の外周上の一か所において処理液が減少した状態が生じることを抑制できる。
(第二実施形態の変形例)
搬送ドラム34の外周面に保持された記録媒体13の後端に対して、塗布ローラ82の外周面において塗布液が供給された領域の後端が、塗布位置において搬送ドラム34の周方向へずれる最大長をBとしたとき、B<X<Aを満たす構成としてもよい。
本変形例に構成によれば、Xは、搬送ドラム34の外周面に保持された記録媒体13の後端に対して、塗布ローラ82の外周面において塗布液が供給された領域の後端が、塗布位置において搬送ドラム34の周方向へずれる最大長Bよりも長い。
したがって、前述の第一の場合において、最大長Bは、塗布ローラ82の外周面上に形成された多量領域15Aの最大長Bに相当する(図8参照)。なお、図8では、搬送ドラム34の周方向を矢印RBにて示している。
したがって、塗布ローラ82の回転毎に、塗布ローラ82と搬送ドラム34との位相が、多量領域15Aの最大長Bを超えるX分ずれていく。このため、M+1枚目の記録媒体13への処理液の塗布の際に、塗布ローラ82に形成された多量領域15Aは、M枚目の記録媒体13への処理液の塗布の際に塗布ローラ82に形成された多量領域15Aと重ならない。これにより、塗布ローラ82の外周上の一か所に処理液が蓄積されるのを抑制できる。この結果、記録媒体13に塗布される処理液の塗布ムラを抑制できる。
また、前述の第二の場合において、最大長Bは、塗布ローラ82の外周面上に形成された少量領域15Bの最大長Bに相当する(図10参照)。
したがって、塗布ローラ82の回転毎に、塗布ローラ82と搬送ドラム34との位相が、少量領域15Bの最大長Bを超えるX分ずれていく。このため、M+1枚目の記録媒体13への処理液の塗布の際に、塗布ローラ82に形成された少量領域15Bは、M枚目の記録媒体13への処理液の塗布の際に塗布ローラ82に形成された少量領域15Bと重ならない。これにより、塗布ローラ82の外周上の一か所に処理液が蓄積されるのを抑制できる。この結果、記録媒体13に塗布される処理液の塗布ムラを抑制できる。
<第三実施形態>
次に、第三実施形態に係る処理液塗布部330について説明する。ここでは、前述の第一実施形態と異なる部分について説明し、前述の第一実施形態と同一機能を有する部分については、同一符号を付して、説明を適宜省略する。
第三実施形態に係る処理液塗布部330は、前述の処理液塗布部30に替えて、インクジェット記録装置10に適用される。
処理液塗布部330では、塗布ローラ82の周長(円周)をPとし、搬送ドラム34の周長(円周)をSとし、搬送ドラム34の外周面に保持される記録媒体13の枚数をNとし、記録媒体13における前端側の部分に対して塗布ローラ82が接触を開始する接触開始位置から画像形成領域13Aの前端までの距離をCとしたとき、P=S×(1/N)+Y、0<Y<Cを満たす。
本実施形態では、第一保持領域93に保持された記録媒体13に対して、第一保持領域93の前端の位置にて接触が開始される。したがって、距離Cは、第一保持領域93の前端から、第一保持領域93に保持された記録媒体13の画像形成領域13Aの前端までの距離に相当する(図11及び図12参照)。
なお、第二保持領域94に保持された記録媒体13に対して、第二保持領域94の前端の位置にて接触が開始される。接触開始位置である第二保持領域94の前端から、第二保持領域94に保持された記録媒体13の画像形成領域13Aの前端までの距離は、接触開始位置である第一保持領域93の前端から、第一保持領域93に保持された記録媒体13の画像形成領域13Aの前端までの距離と同じである。
ここで、前述のように、塗布ローラ82に対するアニロックスローラ84の接触及び離間のタイミングを、搬送ドラム34に保持された記録媒体13が、塗布位置を通過する通過タイミングに合わせることで、記録媒体13の範囲内に処理液15を塗布することができる。
しかしながら、塗布ローラ82に対するアニロックスローラ84の接触及び離間のタイミングを、記録媒体13が塗布位置を通過する通過タイミングに完全に合わせ込むことは、困難である。
例えば、アニロックスローラ84が塗布ローラ82に接触開始するタイミングが、第一保持領域93に保持されたM枚目の記録媒体13の塗布開始部分(塗布ローラ82による接触(塗布)が開始されるべき前端側の部分)が塗布位置を通過するタイミングよりも早い場合(以下、第三の場合という)が考えられる。
また、アニロックスローラ84が塗布ローラ82に接触開始するタイミングが、第一保持領域93に保持されたM枚目の記録媒体13の塗布開始部分が塗布位置を通過するタイミングよりも遅れる場合(以下、第四の場合という)が考えられる。
前述の第三の場合では、図11に示されるように、塗布ローラ82の外周面に供給された処理液15は、塗布位置において、搬送ドラム34の外周面(具体的には第一保持領域93(図2参照))に保持されたM枚目の記録媒体13の塗布開始部分よりも前方側(塗布体の回転方向下流側)へはみ出す。
そして、M枚目の記録媒体13の塗布開始部分よりも前方側へはみ出した処理液15は、M枚目の記録媒体13に塗布されずに、塗布ローラ82の外周面に残留する。なお、塗布ローラ82の外周面に残留した処理液15は、搬送ドラム34の外周面(具体的には第一保持領域93(図2参照))に接触するが、記録媒体13に接触しないため、記録媒体13で吸収されず、塗布ローラ82の外周面に残留する。
そして、塗布ローラ82の処理液15が残留した領域は、他の領域よりも処理液15の量が多い領域315A(以下、多量領域315Aという)となる。
一方、前述の第四の場合では、図13に示されるように、塗布ローラ82の外周面に供給された処理液15は、塗布位置において、搬送ドラム34の外周面(具体的には第一保持領域93(図2参照))に保持されたM枚目の記録媒体13の塗布開始部分よりも後方側(塗布体の回転方向上流側)へ短くなる。
これにより、塗布ローラ82の外周面において処理液の供給が短くなった領域は、処理液が供給された領域よりも処理液15の量が少ない領域315B(以下、少量領域315Bという)となる。
なお、本実施形態では、少量領域315Bの長さ(塗布ローラ82の周方向に沿った長さ)が、記録媒体13における画像形成領域13Aの前端から塗布開始位置まで(第一保持領域93の前端)までの距離よりも短くなる範囲で、アニロックスローラ84の接触タイミングの誤差が生じる。
そして、前述のように、処理液塗布部330では、塗布ローラ82の周長(円周)をPとし、搬送ドラム34の周長(円周)をSとし、搬送ドラム34の外周面に保持される記録媒体13の枚数をNとし、記録媒体13における前端側の部分に対して塗布ローラ82が接触を開始する接触開始位置から画像形成領域13Aの前端までの距離をCとしたとき、P=S×(1/N)+Y、0<Y<Cを満たす。
本実施形態では、搬送ドラム34の外周面に保持される記録媒体13の枚数が2枚であるので、P=S/2+Yとなる。すなわち、塗布ローラ82の周長は、搬送ドラム34の周長の半分よりもY分長い長さとされている。
これにより、塗布ローラ82の回転毎に、塗布ローラ82と搬送ドラム34との位相が、Y分ずれていく。
このため、前述の第三の場合において塗布ローラ82に形成された多量領域315A(図11参照)は、M+1枚目の記録媒体131の前端側の画像形成領域外13B(M+1枚目の記録媒体131における画像形成領域13Aの前端から塗布開始位置まで(第一保持領域93の前端)までの間)に接触する。なお、Yは、画像形成領域13Aの前端から塗布開始位置までの距離Cよりも短いため、塗布ローラ82の多量領域315Aは、M+1枚目の記録媒体131の画像形成領域13A内には接触しない。
このため、多量領域315AがM+1枚目の記録媒体131の画像形成領域13A内に接触する場合に比べ、記録媒体13に塗布する処理液の画像形成領域13A内での塗布ムラを抑制できる。
また、塗布ローラ82の多量領域315Aが、M+1枚目の記録媒体131の前端側の画像形成領域外13Bに接触することで、多量領域315Aの処理液が、記録媒体13の前端側の画像形成領域外13Bに塗布されるので、多量領域315Aにおける他の領域よりも処理液の量が多い状態が解消される。
さらに、塗布ローラ82の回転毎に多量領域315Aが形成されたとしても、塗布ローラ82の回転毎に、塗布ローラ82と搬送ドラム34との位相がY分ずれていくため、多量領域315AがY分ずれた状態で塗布ローラ82に形成される。これにより、塗布ローラ82の外周上の一か所に処理液が蓄積されるのを抑制できる。
本実施形態では、前述のように、塗布ローラ82の回転毎に、塗布ローラ82と搬送ドラム34との位相が、Y分ずれていく。このため、前述の第四の場合において塗布ローラ82に形成された少量領域315B(図13参照)は、少なくとも一部が、M+1枚目の記録媒体131の前端側の画像形成領域外13Bに接触する。
このため、少量領域315Bの全部がM+1枚目の記録媒体131の画像形成領域13A内に接触する場合に比べ、記録媒体13に塗布する処理液の画像形成領域13A内での塗布ムラを抑制できる。
さらに、塗布ローラ82の回転毎に少量領域315Bが形成されたとしても、塗布ローラ82の回転毎に、塗布ローラ82と搬送ドラム34との位相がY分ずれていくため、少量領域315BがY分ずれた状態で塗布ローラ82に形成される。これにより、塗布ローラ82の外周上の一か所において処理液が減少した状態が生じることを抑制できる。
(第三実施形態の第一変形例)
第一保持領域93に保持された記録媒体13の後端から第一保持領域93の後端までの距離をDとしたとき、D<Cの場合には、0<Y<Dを満たすように構成してもよい。
なお、距離Dは、第二保持領域94に保持された記録媒体13の後端から第二保持領域94の後端までの距離と同じである。
これにより、前述の第一の場合において塗布ローラ82に形成された多量領域15A(図14参照)は、M+1枚目の記録媒体131の後端131Eから第二保持領域94の後端94Eまでの間に接触する。
このため、多量領域315Aの処理液の一部が、搬送ドラム34の外周上に転移するので、多量領域315Aにおける他の領域よりも処理液の量が多い状態が解消される。多量領域315Aにおける他の領域よりも処理液の量が多い状態が解消されることで、記録媒体13に塗布する処理液の画像形成領域13A内での塗布ムラを抑制できる。
(第三実施形態の第二変形例)
搬送ドラム34の外周面に保持された記録媒体13に対する塗布開始位置に対して、塗布ローラ82の外周面において塗布液が供給された領域の前端が、塗布位置において搬送ドラム34の周方向へずれる最大長をEとしたとき、E<Y<Cを満たす構成としてもよい。
本変形例に構成によれば、Yは、搬送ドラム34の外周面に保持された記録媒体13に対する塗布開始位置に対して、塗布ローラ82の外周面において塗布液が供給された領域の前端が、塗布位置において搬送ドラム34の周方向へずれる最大長Eよりも長い。
したがって、前述の第三の場合において、最大長Eは、塗布ローラ82の外周面上に形成された多量領域315Aの最大長Eに相当する(図11参照)。なお、図11では、搬送ドラム34の周方向を矢印RBにて示している。
したがって、塗布ローラ82の回転毎に、塗布ローラ82と搬送ドラム34との位相が、多量領域15Aの最大長Eを超えるY分ずれていく。このため、M+1枚目の記録媒体13への処理液の塗布の際に、塗布ローラ82に形成された多量領域315Aは、M枚目の記録媒体13への処理液の塗布の際に塗布ローラ82に形成された多量領域315Aと重ならない。これにより、塗布ローラ82の外周上の一か所に処理液が蓄積されるのを抑制できる。この結果、記録媒体13に塗布される処理液の塗布ムラを抑制できる。
また、前述の第四の場合において、最大長Eは、塗布ローラ82の外周面上に形成された少量領域315Bの最大長Eに相当する(図10参照)。
したがって、塗布ローラ82の回転毎に、塗布ローラ82と搬送ドラム34との位相が、少量領域315Bの最大長Eを超えるX分ずれていく。このため、M+1枚目の記録媒体13への処理液の塗布の際に、塗布ローラ82に形成された少量領域315Bは、M枚目の記録媒体13への処理液の塗布の際に塗布ローラ82に形成された少量領域315Bと重ならない。これにより、塗布ローラ82の外周上の一か所に処理液が蓄積されるのを抑制できる。この結果、記録媒体13に塗布される処理液の塗布ムラを抑制できる。
(変形例)
本実施形態では、シート材の一例として、用紙等の記録媒体13を用いたが、これに限られない。シート材の一例としては、例えば、画像の形成を目的しないシート材であってもよく、塗布液が塗布されるシート材であればよい。
また、本実施形態では、回転体の一例として、搬送ドラム34を用いたが、これに限られない。回転体の一例としては、例えば、搬送ベルト等のベルト体であってもよい。
また、本実施形態では、塗布体の一例として、塗布ローラ82を用いたが、これに限られない。塗布体の一例としては、ローラ状である必要はなく、例えば、ベルト状の塗布体であってもよい。
また、本実施形態では、供給部の一例として、アニロックスローラ84を用いたが、これに限られない。供給部の一例としては、例えば、処理液等の塗布液を吐出や滴下等して塗布体に供給するものであってもよい。
また、本実施形態では、塗布液の一例として処理液を用いたが、これに限られない。塗布液の一例としては、塗布ムラが抑制された状態でシート材に塗布される必要がある液体であればよい。
本発明は、前述した実施形態に限るものではなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、前述した変形例は、適宜、複数を組み合わせて構成してもよい。