図1は、操作部8を示す図である。操作者は、操作部8を用いてロボット、機械、設備等を操作する。操作部8は、例えば、産業用ロボットに動作を教示する際に使用される教示ペンダントである。図1では、操作者の左の手9を二点鎖線にて示している。操作部8は、本体部81と、表示部82と、複数の操作ボタン83と、イネーブルスイッチ1とを含む。操作部8が操作者の左の手9に把持された状態で、右の手で操作ボタン83を介して入力が行われる。なお、入力手段はボタンには限定されず、ダイヤル、スライダ、スイッチ等が利用されてよい。
表示部82は、入力された情報や操作対象の状態を示す情報を表示する。イネーブルスイッチ1は、操作者が操作部8を把持した状態で指が触れる位置に存在する。図1の場合、操作者の左の手9の人差し指91、中指、薬指および小指がイネーブルスイッチ1に触れる。
図2は、イネーブルスイッチ1の斜視図である。イネーブルスイッチ1は、ロボットアーム等の操作対象の近くで、動作の教示作業を行う際に、作業者の安全を確保するための安全装置である。イネーブルスイッチ1は、いわゆる、3ポジションイネーブルスイッチである。図3は、イネーブルスイッチ1の側面図である。イネーブルスイッチ1により、操作部8による操作対象の操作が許可される。すなわち、操作対象を動作させる信号が操作対象に向かって出力される。
イネーブルスイッチ1は、本体11と、認証部12と、保持検出部14と、保持力検出部15と、後述の回路部とを備える。本実施の形態では、認証部12は、操作者の指紋を検出して操作者を認証する。認証には様々な手法が採用されてよく、一般的に表現すれば、認証部12は、操作者の身体の一部または操作者が身につけている物品に基づいて操作者を認証する。
好ましくは、認証部12は、操作者の指または手の特徴を認識する。認証対象となる特徴には、指紋のみならず、皺、静脈、その他様々な特徴が利用されてよい。認証部12の構成は、利用する特徴に応じて適宜変更される。認証部12が、操作者の指または手の特徴を認識する場合、認証部12は、図1に示すように操作部8の側面に設けられることが好ましい。後述するように、認証部12は、操作部8の背面に設けられることも好ましい。これにより、操作者が保持しやすい状態で操作部8を保持した際に認証を容易に行うことができる。
保持検出部14は、本実施の形態では、一対の電極である。保持検出部14としては様々なものが採用可能であるが、好ましくは、操作者による操作部8の保持による押し込み量が実質的に無く、操作者による操作部8の保持を検出するデバイスが採用される。
本体11の下部に配置される保持力検出部15は、操作者による操作部の保持力が予め定められた上限値より大きいか否かを検出する。
回路部は、認証部12による認証後、保持検出部14が操作者による保持を検出している間、操作対象の操作を許可する信号であるイネーブル信号を出力する。回路部の詳細については後述する。保持力が上限値を超えた場合、すなわち保持力検出部15が操作者による操作部の保持力が予め定められた上限値より大きいことを検出すると、回路部は、イネーブル信号を取り消す。イネーブルスイッチ1には、保持力の上限値を設定する上限値設定部が設けられてもよい。上限値設定部は、認証部12による認証結果に従って、上記上限値を決定する。回路部は、認証部12による認証を行ったり、認証結果に従って決定された上限値を記憶するために、記憶部を含む。記憶部に操作者毎の情報を記憶させておくことで、操作者毎の情報を回路部や認証部12が利用することができる。
図2および図3の例では、認証部12は本体11の上面に配置される。認証部12は、撮像部にて操作者の指紋を認証する。図1のように保持される場合、認証部12は操作者の左手の人差し指91の指紋を認証する。認証部12の脇には、指が伸びる方向に向かって並ぶ2つの電極13が配置される。電極13は認証部12における操作者の指の存在を検出する。認証部12は、静脈認証や虹彩認証等の操作者の生体情報を取得する他の生体認証部でもよい。認証部12には物体指紋認証技術が採用されてもよい。物体指紋認証技術は、物体の表面に現れる個々の特徴を認識することで、同じ形状の物体であっても個体差を識別することができる。これにより、例えば、操作者が手袋をしていても認証可能となる。操作者が身につけている識別カード等により操作者が認証、すなわち、特定されてもよい。
イネーブルスイッチ1が認証部12を備えていることにより、操作を許されていない者が操作することを防止したり、操作者の技能に応じて操作可能な権限を変更できるなど、イネーブルスイッチ1の特性を変更することができる。操作者毎のイネーブルスイッチ1の特性は、記憶部に記憶される。
保持検出部14は本体11の上面に配置される。保持検出部14は例えば電極である。保持検出部14は押し込み量が実質的に無いスイッチであればどのようなものが採用されてもよい。例えば、静電容量型のスイッチが用いられてもよく、静電容量型のタッチパネルであってもよい。保持検出部14は指や手の存在、すなわち、指や手の接触を検出する。図1の例の場合、保持検出部14は、操作者の左手の人差し指、中指、薬指または小指の接触を検出する。
保持力検出部15は、指や手による押圧状態を検出する。保持力検出部15は、好ましくは、機械的な押し込み量のあるスイッチである。保持力と上限値とが比較可能であれば、保持力検出部15は、押し込み量が実質的に無いスイッチでもよい。例えば、保持力検出部15に圧電素子が利用されてもよい。保持力検出部15は、2次元の検出センサにより指や手の接触面積を検出するデバイスであってもよい。
機械的スイッチにて操作される従来の3ポジションイネーブルスイッチでは、手が離れた状態、または、手や指が軽く触れた状態ででポジション1となり、操作は許可されない。スイッチを軽く押すとポジション2となり、操作部による操作が許可される。操作者が危険を感じたり、操作対象の誤動作により驚いたり、恐怖を感じる等してスイッチを強く押した場合はポジション3となり、操作は許可されない。また、ポジション3からポジション1へ復帰する際には、機械的にポジション2を経由するが、操作は許可されない。
これに対し、図2のイネーブルスイッチ1では、指が保持検出部14に触れていない状態がポジション1となる。イネーブルスイッチ1では、認証部12による認証により操作者が特定される。これにより、操作部8は作業権限を判断する。認証とは独立して、または、認証動作の開始と同時に、保持検出部14は指の存在の検出を開始する。認証が成功している間に保持検出部14により指が検出されると、または、指が検出されていると、ポジション1から2になったと判断し、操作対象の操作を許可する。すなわち、イネーブルスイッチ1はイネーブル信号を出力し、操作部8から操作信号が出力可能となる。
イネーブルスイッチ1は、保持力検出部15が上限値を超える押し込み力、すなわち、上限値を超える保持力を検出しない限り、ポジション2と判断する。保持力検出部15により上限値を超える保持力が検出されると、イネーブルスイッチ1はポジション3と判断し、動作許可が取り消される。すなわち、回路部2は、イネーブル信号の出力を停止する。イネーブル信号が出力されない限り、操作者が操作部8に入力を行っても操作部8から操作対象には操作信号が出力されない。イネーブル信号が出力されなくなった後は、操作者が指を離すまでポジション3が維持され、操作者が指を離すとイネーブルスイッチ1はポジション1と判断し、リセット状態となる。その後、再度、イネーブルスイッチ1は生体認証を要求する。認証部12による認証によって操作者が特定されない限り、イネーブルスイッチ1はイネーブル信号を出力しない。
許可時に認証の完了と指の存在の検出とが少しでも同時に行われていることは必要であるが、許可後、すなわち、一旦、イネーブル信号が出力されると、保持検出部14で指の存在が検出されていればポジション2と判断され、イネーブル信号の出力が継続される。一旦、イネーブル信号が出力されると、認証部12または保持検出部14のいずれかで指の存在が検出されていればポジション2と判断されてもよい。
図4は回路部2およびその周辺構成を示す図である。以下の説明における2値信号に関して、「信号の出力」は信号が「1」または正の値を示すことをいい、「信号の停止」は信号が「0」を示すことをいうものとする。回路部2は、AND回路21と、OR回路22とを含む。認証部12は、撮像部121と、認証アルゴリズム123を含む論理回路である認証回路122とを含む。撮像部121にて取得された指紋等の画像は、認証回路122に入力され、操作者が特定される。
一方、一対の電極である保持検出部14にて保持が検出されると、認証信号および保持検出信号はAND回路21に入力され、これらの信号のAND信号がイネーブル信号として出力される。イネーブル信号および認証信号はOR回路22に入力され、これらの信号のOR信号はAND回路21に戻される。これにより、一旦認証が完了すると、保持検出部14が指を検出している間、イネーブル信号が出力される。認証と保持の双方の検出でイネーブル信号が出力されるため、許可の二重化が実現される。その結果、不用意な接触等でイネーブル信号が出力されることが防止される。
保持力検出部15は、AND回路21からのイネーブル信号の出力経路途上に位置する。保持力検出部15により、保持力が強くなった場合にイネーブル信号が遮断される。すなわち、操作対象の操作の許可が取り消される。保持力検出部15は、主に緊急時に操作されるため、押し込み量により操作感があるスイッチであることが好ましい。また、押し込み量があることにより、操作を検出する信頼性を高くすることができる。保持力検出部15は、少なくとも保持力が上限値を超えた際に押し込まれるスイッチであることが好ましい。
図5および図6は、認証部12からの出力を「認証信号」、保持検出部14からの出力を「保持信号」、保持力が上限値より大きいか否かの保持力検出部15による検出結果を「保持力上限信号」と表現した場合のこれらの信号とイネーブル信号との関係を示す図である。横軸は右に向かって時間の経過を示す。図5では、保持力上限信号は常に「1」であり、保持力が上限値を超えた場合に、保持力上限信号は立下る。
図5に示すように、保持検出部14が保持を検出して保持信号を出力している間に認証部12が認証を行って認証信号を出力すると、イネーブル信号が出力される。すなわち、イネーブル信号は「1」になる。イネーブル信号の出力は認証が終了した後も継続する。この状態で保持信号が停止すると、イネーブル信号の出力も停止する。一方、図6に示すように、認証後、保持信号およびイネーブル信号の出力が継続している状態で、保持力検出部15の状態を示す保持力上限信号が立下ると、イネーブル信号の出力は停止する。すなわち、イネーブル信号は「0」になる。
図7は回路部2およびその周辺構成の他の例を示す図である。回路部2は、AND回路21と、OR回路22と、AND回路23,24と、OR回路25とを含む。図7では、図4では省略した電極13も示している。一対の電極13からの信号はAND回路23に入力される。AND回路23の出力は認証部12の認証開始信号として利用されると共に、OR回路25に入力される。一方、保持検出部14の2つの電極からの信号はAND回路24に入力され、AND回路24の出力はOR回路25に入力される。OR回路25の出力は、AND回路21に入力される。
認証部12で生体認証を用いるイネーブルスイッチ1において、認証部12の撮像部121にて取得された画像は、認証回路122に入力され、操作者が特定される。一方、保持検出部14にて保持が検出されると、認証信号と保持信号とのAND信号がAND回路21からイネーブル信号として出力される。図4の場合と同様に、イネーブル信号と認証信号とのOR信号はAND回路に戻され、一旦認証が完了すると、OR回路22からAND回路21への入力は継続される。
一方、電極13からの信号は、AND回路23を介してOR回路25に入力されることにより2通りの許可が実現される。すなわち、保持検出部14または電極13が指の存在を検出している間、イネーブル信号の出力は継続する。その結果、操作者のいずれかの指がイネーブルスイッチ1を保持していることを検出している限りイネーブル信号が出力される。人差し指と親指とで操作部8を保持し他の指を全て操作部8から離してもイネーブル信号の出力は継続し、意図せずにイネーブル信号が取り消されることを抑制することができる。
図8は保持力検出部15の他の例を示す図である。図8では、保持力検出部15にて定められている保持力の上限が、操作者毎に変更可能である。回路部2の周辺構成として、上限値設定部161が設けられる。上限値設定部161は、各操作者に適した上限値を記憶する記憶部を有する。保持力検出部15は比較回路152を有し、比較回路152の結果に従ってスイッチ151が操作される。比較回路152には上限値を記憶する記憶部が設けられる。上限値設定部161は、認証部12による認証結果に対応する操作者の上限値を決定し、当該上限値を比較回路152の記憶部に設定する。例えば、一般的な上限値では誤って上限値より大きい力で保持してしまうことが多い操作者には、高めの上限値が設定される。逆に、保持力が弱く、一般的な上限値では安全性に不安がある操作者には、低めの上限値が設定される。これにより、操作者毎にイネーブルスイッチ1の特性を設定することができる。
上限値が個別に設定される点を除き、回路部2の動作は図4の場合と同じである。認証後、指の存在が検出され、かつ、設定された上限値より保持力が小さい間、イネーブル信号が出力される。保持力がなくなるとポジション1と判断され、保持力が上限値を超えるとポジション3と判断されて許可が取り消される。上限値設定部161の記憶部に操作者毎の上限値を記憶しておくことで、認証部12で操作者が特定されると自動的に保持力の上限値が設定されるため、操作者が操作を開始する度に操作者が上限値を決定する必要はない。
なお、図4のように上限値が固定の場合、スイッチの機械的特性により上限値は定められる。図4では、その点を考慮して保持力検出部15をスイッチの記号のみにて示したが、図4においても図8と同様に、比較回路による保持力と上限値との電気的な比較により、スイッチの操作が行われてよい。
図9に示すように、上限値設定部161と共に下限値設定部162が設けられてもよい。上限値設定161を設けずに下限値設定部162のみが設けられてもよい。下限値設定部162の記憶部には、操作者毎の保持力の下限値が記憶される。認証部12による認証が行われると、自動的に、保持力の上限値および下限値が決定され、比較回路152に上限値と下限値とが設定される。この場合、保持力が上限値と下限値との間にある間、イネーブル信号が出力される。以下、上限値と下限値との間の範囲を「イネーブル範囲」と呼ぶ。具体的には、認証後、イネーブル信号が出力されている間に、保持力が下限値より小さくなるとポジション1と判断され、保持力が上限値より大きくなるとポジション3と判断され、許可が取り消される。
操作者毎に上限値または下限値が設定される構成は、保持力検出部15が機械式ではなく、押し込み量が実質的に無い場合に特に適している。機械式でない保持力検出部15は、例えば、イネーブルスイッチ1にて保持検出部14としてタッチパネルが設けられ、タッチパネルと指との接触面積にて保持力を検出する場合に適している。この場合、保持検出部14は保持力検出部15を兼ねる。
事前に上限値または下限値を決定する際には、例えば、認証後に操作者が操作部を通常通り保持し、その後、強く保持したり弱く保持したりすることにより、保持力検出部15が保持力を検出する。上限値設定部161または下限値設定部162は、検出結果に基づいて上限値または下限値を決定する。上限値または下限値は、認証直後の保持力を基準に設定されてもよい。
認証部12にて静脈認証を利用することも可能である。この場合、血管の形状変化により保持力が求められてもよい。スキャナによる画像認識であれば、手や指の接触面の形状変化から保持力が求められてもよい。比較的大きな撮像部を設け、撮像部にて取得される画像により、認証と、保持検出と、保持力検出とが行われてもよい。この場合、撮像部とその周辺の回路とにより、認証部12、保持検出部14および保持力検出部15の機能が実現される。認証部12と保持検出部14とが共通のデバイスにより実現されてもよく、認証部12と保持力検出部15とが共通のデバイスにより実現されてもよく、保持検出部14と保持力検出部15とが共通のデバイスにより実現されてもよい。
図10は、イネーブルスイッチ1の他の例を示す図である。イネーブルスイッチ1は、図2および図3の場合と同様に、本体11と、認証部12と、保持検出部14と、保持力検出部15とを含む。図示の都合上、実際よりも厚さ方向に厚く描いている。保持検出部14は、操作ボタン17の表面に設けられた面状のスイッチであり、操作者による操作部8の保持による押し込み量は実質的に無い。保持力検出部15は、操作ボタン17を含む機械的なスイッチである。操作部8の通常の把持では、操作ボタン17は押し込まれない。押し込み量が実質的に無いスイッチ(またはセンサ)とは、反発力が無いスイッチともいえる。
イネーブルスイッチ1は、ロック機構18を含む。認証部12による認証が正常に行われると、ロック機構18のレバー181と操作ボタン17との係合が解除され、操作ボタン17のロックが解除される。認証後、保持検出部14にて操作者による操作部8の保持が検出される間、ポジション2と判断される。強く保持すると、操作ボタン17が押し込まれて保持力検出部15が操作され、ポジション3と判断される。他の動作は図2および図3の場合と同様である。ロック機構18を設けることにより、イネーブルスイッチ1による操作者の安全性がさらに向上する。
従来の機械的なイネーブルスイッチでは、教示作業等が長時間に亘る場合、操作者はスイッチをある程度の力で押し続けて作業を行う必要がある。これに対し、イネーブルスイッチ1では、イネーブル信号を出力している間、操作者の指や手は、押し込み量が実質的に無い保持検出部14にて検出される。これにより、操作対象を操作している間、指や手の疲れを低減することができ、作業負担を緩和することができる。操作者はスイッチの押下を意識せずに操作に集中することができる。
イネーブルスイッチ1では、保持検出部14の表面と認証部12の表面とをほぼ同じ高さにすることで、操作部8の保持が容易になるとともにイネーブルスイッチ1の薄型化や形状変更設計が容易となる。図2、図3、図10の例の場合、保持検出部14の配置箇所は、機械的なスイッチである保持力検出部15の上面でもあり、認証部12、保持検出部14および保持力検出部15の上面が、実質的に同じ高さに位置していると捉えることができる。
また、従来の機械的なイネーブルスイッチでは、操作部上のイネーブルスイッチの設置箇所に合わせて操作者が操作部を保持する必要がある。本実施の形態に係るイネーブルスイッチ1では、保持検出部14を様々な場所に容易に設けることができるため、操作部8の保持が容易となる。また、認証部12による認証により、操作者毎に作業権限を変更することができ、未熟な操作者による好ましくない誤操作を防止することができる。さらに、操作者毎に保持力の上限値または下限値を設定することにより、操作者に合った3ポジション検出を行うことができる。
機械式のイネーブルスイッチの場合、イネーブルスイッチがポジション2(操作許可状態)となるように、例えば針金や紐によって固定する等してイネーブルスイッチが無効化される虞があるが、イネーブルスイッチ1では生体認証を利用することにより、イネーブルスイッチの無効化を防止することができる。
保持検出部14として非常に薄い装置を利用することができるため、イネーブルスイッチ1の薄型化や形状変更設計が容易となる。
図11は、認証部12の他の配置例を示す操作部8の背面図である。認証部12は操作部8の背面に配置される。図11では、認証部12に指が配置されたことを検出する電極13が1つの例を示している。認証部12が、イネーブルスイッチ1の本体11から分離して操作部8の背面に配置される点を除いて、操作部8は図1と同様である。操作者の左の手9が操作部8を保持し、人差し指91を伸ばすと、人差し指91の先端は自然に認証部12に位置する。他の指は、イネーブルスイッチ1の保持検出部14上に位置する。
図12は、両手持ちのタイプの操作部8を例示する背面図である。認証部12は図11の場合と同様に、操作部8の背面に位置する。操作部8の背面には、中央から下端に向かって厚さ方向に窪む凹部84が設けられる。イネーブルスイッチ1の認証部12以外の部位は、凹部84の左右それぞれに配置される。操作者が操作部8を両手で保持すると、左の手9の人差し指91は自然に認証部12上に位置する。両手の人差し指以外の指は、凹部84の左右にて保持検出部14上に位置する。操作部8は、形状と、イネーブルスイッチ1の本体11が2つ設けられる点とを除いて、図11の操作部8と同様である。
図12の例の場合、認証部12にて操作者の認証が行われた後、2つの保持検出部14のいずれかが保持を検出している間、イネーブル信号が出力される。また、2つの保持力検出部15のいずれかが上限値より大きい保持力を検出すると、イネーブル信号の出力が停止される。これにより、一方の手を操作部8から離しても、イネーブル信号が出力され続け、操作者の手9の疲労をさらに低減することができる。図2に示す形態のイネーブルスイッチ1が両手持ちタイプの操作部8に採用されてもよい。
図1、図11および図12のように、認証部12を操作部8の背面または側面に設けることにより、操作者が保持しやすい状態で操作部8を保持した際に認証を容易に行うことができる。
図13は、回路部2およびその周辺構成のさらに他の例を示す図である。回路部2は、図4の回路部2に加えて下限立下り遅延回路311を含む。下限立下り遅延回路311は、保持検出部14とAND回路21との間に位置し、保持検出部14からの信号の立下りを予め定められた時間だけ遅延させる。立上りは遅延されない。
ここで、保持力の下限値が極めて0に近く、少なくとも保持力が下限値以上でないとイネーブル信号がAND回路21から出力されない場合、または、保持力の下限値が0であり、少なくとも保持力が下限値を上回らないとイネーブル信号がAND回路21から出力されない場合、操作者がイネーブルスイッチ1に触れるだけでイネーブルスイッチ1はポジション1からポジション2に移行する。保持検出部14は、実質的に、このような保持力と下限値との比較機能を有する機能を有すると捉えることも可能である。
一方、スイッチ151は保持力が上限値よりも大きいか否かを検出する。したがって、保持検出部14とスイッチ151とにより保持力が予め定められた上限値と下限値との間のイネーブル範囲内であるか否かを検出しているといえる。そこで、図13の説明では、保持検出部14を保持力検出部15の一部とみなし、保持力検出部15は保持検出部14とスイッチ151とを含むものとする。保持力検出部15は、操作者による操作部の保持力が、予め定められたイネーブル範囲内であるか否かを検出する。
保持力がイネーブル範囲内であることを保持力検出部15が検出している間に、認証部12による認証が行われると、回路部2は、操作部8による操作対象の操作を許可するイネーブル信号を出力する。保持力がイネーブル範囲内であることを保持力検出部15が検出している間、継続してイネーブル信号は出力される。なお、認証部12が省略されたイネーブルスイッチ1の場合、回路部2は、保持力検出部15が保持力がイネーブル範囲内であることを検出している間、操作部8による操作対象の操作を許可するイネーブル信号を出力する回路として機能する。
図14は、図13に示す構成を含むイネーブルスイッチ1の動作例を示す図である。図14中の「認証信号」、「保持信号」、「保持力上限信号」および「イネーブル信号」という表現は、図5の場合と同様である。保持信号は、上述の通り、実質的に保持力が下限値より大きいことを示しており、「保持力下限信号」と呼ぶこともできる。「下限立下り遅延信号」は、保持検出部14からの保持信号の立下り、すなわち、「1」から「0」への変化タイミングが遅延された信号である。さらに換言すれば、保持力が下限値よりも大きいことを示す信号において、保持力が下限値を下回ることを示す立下りを遅延した信号である。保持検出部14が操作者の指の接触のみを検出する場合、ポジション1と2との境界は、保持検出部14に指が触れていない状態と僅かに触れる状態との間になる。下限立下り遅延回路311は、ポジション2からポジション1への移行を示す信号の立下りを遅延している。各信号の表現は、以下の類似の図についても同様である。
図5の場合と同様に、保持力検出部15の保持検出部14が保持を検出している間に認証が行われると、イネーブル信号が出力される。ここで、下限立下り遅延回路311における遅延時間Δt11よりも短い時間Δt12だけ操作者が保持検出部14から指を離したとしても、立下りが遅延されるため、下限立下り遅延信号は変化しない。その結果、時間Δt12の間もイネーブル信号は出力され続け、時間Δt12の経過後もイネーブル信号は出力される。なお、操作者が保持検出部14から指を離してイネーブル信号の出力を停止させる際には、操作者が保持検出部14から指を離してから時間Δt11だけ経過した後にイネーブル信号は停止するが、時間Δt11は安全確保上、十分に短い時間である。好ましくは、Δt11は、0.2〜0.5秒の範囲で設定される。
このように、下限立下り遅延回路311の存在により、イネーブル信号の出力中に保持力がイネーブル範囲の下限値を下回ってから予め定められた時間Δt11が経過するまで、回路部2はイネーブル信号の出力を維持する。以下、時間Δt11を「信号出力維持時間」と呼ぶ。
図15は、操作者が保持検出部14から一時的に指を離した時間が信号出力維持時間Δt11よりも長い時間Δt13の場合のイネーブル信号の出力を示す図である。時間Δt13が経過する前に下限立下り遅延回路311からの下限立下り遅延信号が立下るため、その時点でイネーブル信号の出力が停止する。操作者の指が再度保持検出部14に触れても認証が行われていないため、イネーブル信号の出力が停止した状態が維持される。
図14に示す動作により、短時間の間だけ保持力が下限値よりも弱まった場合の不要な操作停止を防止することができる。例えば、操作部8の持ち直し等の際にイネーブル信号の停止を抑制することができる。その結果、操作効率の低下を抑制することができる。
図16は、イネーブル信号が出力されている間に操作者がイネーブルスイッチ1を強く保持して保持力検出部15のスイッチ151が上限値よりも大きい保持力を検出した場合を示す図である。なお、図16では図14と同様に時間Δt12だけ保持が解除されてもイネーブル信号の出力が継続する様子も示している。保持力が上限値を超える場合は、緊急性が高い場合もあるため、保持力上限信号が立下ると、その瞬間に遅延なくイネーブル信号の出力が停止する。これにより、操作者の安全が確保される。
図13では、保持力検出部15のスイッチ151がAND回路21の出力上に位置するため、スイッチ151がイネーブル信号の出力を停止するが、スイッチ151をAND回路21の入力側に位置させ、スイッチ151の出力をAND回路21に入力することによっても、同様の動作を実現することができる。したがって、図13では、保持力検出部15が保持力が上限値を超えた場合にイネーブル信号を停止させるのではなく、スイッチ151の配置構造を含む回路部2が、保持力が上限値を超えた場合に保持力検出部15による検出結果に従ってイネーブル信号の出力を停止させていると捉えることができる。
信号出力維持時間Δt11は変更可能であってもよい。この場合、例えば、図13に示すように、イネーブルスイッチ1に、操作中の操作対象90の特定の部位の速度または操作対象に対する操作者の相対位置の入力を受け付ける受付部191と、維持時間変更部192とが設けられる。操作対象90の特定の部位とは、例えば、操作対象90がロボットアームの場合、ロボットアームの先端である。一般的には、特定の部位は最も可動する部位である。操作対象90に対する操作者の相対位置は、例えば、操作対象90であるロボットまたはその近傍に設けられた三次元スキャナにより測定される。操作者の位置を検出する装置が操作者が存在する部屋に設けられてもよい。
維持時間変更部192は、操作対象90の特定の部位の速度または操作対象に対する操作者の相対位置に応じて、下限立下り遅延回路311に設定されている信号出力維持時間Δt11を変更する。これにより、例えば、特定の部位の速度が遅くなったり、操作者と操作対象90との距離が大きくなった場合等に信号出力維持時間を長くし、より効果的に不要な操作停止を抑制しつつ安全性を確保することができる。また、信号出力維持時間Δt11を0とし、特定の部位の速度が遅くなったり、操作者と操作対象90との距離が大きくなった場合等に0より大きい信号出力維持時間が設定されてもよい。
図17は、イネーブルスイッチ1のさらに他の例を示す平面図である。図17のイネーブルスイッチ1では、図2および図3のイネーブルスイッチ1の保持検出部14の位置に保持力検出部15が設けられる。図3の本体11の下部に設けられる保持力検出部15は省かれる。図17の保持力検出部15は、タッチパネル、すなわち、2次元のタッチセンサとなっており、保持検出部14を兼ねる。以下の説明における保持力検出部15についても同様である。その他の構成は、図2および図3のイネーブルスイッチ1と同様である。
図18は、イネーブルスイッチ1の回路部2およびその周辺構成の一例を示す図である。回路部2は、図4と同様に、認証部12からの出力が入力されるOR回路22と、AND回路21と、を含む。保持力検出部15は比較回路153を含む。図18では上限値設定部161が設けられる場合も示している。
比較回路153は、保持力と予め定められた下限値とを比較する比較器と、保持力と予め定められた上限値とを比較する比較器とを含む。保持力と下限値とを比較する比較器からの出力を示す線に符号321を付し、保持力と上限値とを比較する比較器からの出力を示す線に符号322を付している。比較結果を示す信号は、個別にAND回路21に入力される。AND回路21からは、保持力が下限値より大きく、かつ、上限値より小さい場合のみ、イネーブル信号が出力される。なお、2つの比較器からの出力、すなわち、信号は、操作部8内の他の回路にも入力されてよい。
「上限値より小さい」という表現は、上限値の設定を僅かに変更することにより、「上限値以下」と同義となる。「下限値より大きい」という表現は、下限値の設定を僅かに変更することにより、「下限値以上」と同義となる。そのため、以下の説明における「上限値より小さい」は「上限値以下」と表現しても実質的に同じであり、「下限値より大きい」は「下限値以上」と表現しても実質的に同じである。同様に、「下限値より小さい」代えて「下限値以下」と表現し、「上限値より大きい」に代えて「上限値以上」と表現する場合も同様である。ただし、上述の押し込み量の無い保持検出部14の場合に下限値に「0」を設定する場合は、保持力は下限値以下であるか下限値より大きいかで保持力と下限値との大小関係が判断される。
保持力検出部15としてタッチパネルが利用される場合、保持力検出部15に指が触れるだけでポジション2と判断することができる。そのため、下限値は非常に0に近い値、または、0に設定される。もちろん、下限値としてある程度の大きさの値が設定されてもよい。
保持力の上限値が操作者毎に設定される場合、回路部2に上限値設定部161が設けられる。予め上限値を設定する際には、認証部12にて操作者が認証されると、保持力検出部15が検出する保持力に応じて、上限値設定部161は比較回路153に上限値を設定する。下限値設定部を設けて上限値の設定と同様にして下限値も操作者毎に比較回路153に設定されてよい。
操作部8の通常の使用の際には、操作者が操作部8を保持して保持力が下限値より大きく、かつ、上限値よりも小さい状態で認証部12が操作者の認証を行うと、AND回路21に入力される信号は全て「1」となり、イネーブル信号が出力される。すなわち、保持力がイネーブル範囲内であることを保持力検出部15が検出している間に、認証部12による認証が行われると、回路部2は、操作部8による操作対象の操作を許可するイネーブル信号を出力する。保持力が下限値よりも小さい、または、上限値よりも大きい場合、比較回路153からAND回路21に入力される2つの信号のいずれかが「0」となり、イネーブル信号の出力が停止する。比較回路153からの2つの比較結果の論理積を得るAND回路が保持力検出部15に設けられてもよい。
一旦認証が行われると、保持力がイネーブル範囲内であることを保持力検出部15が検出している間、継続してイネーブル信号が出力される。
なお、認証部12が省略されたイネーブルスイッチ1の場合、保持力がイネーブル範囲内であることを保持力検出部15が検出している間、回路部2は、操作部8による操作対象の操作を許可するイネーブル信号を出力する回路として機能する。
図19は、図18の回路部2に下限立下り遅延回路311を設けた例を示す図である。図19では、受付部191および維持時間変更部192も示している。受付部191および維持時間変更部192の機能は、図13の場合と同様である。他の図の下限立下り遅延回路311に対しても、受付部191および維持時間変更部192が設られてよい。
下限立下り遅延回路311は、比較回路153とAND回路21との間の符号321を付す線上に設けられ、保持力と下限値との比較結果の立下りを信号出力維持時間だけ遅延させる。図19の例では、符号322を付す線にて示すように、保持力と上限値との比較結果はそのままAND回路21に入力される。すなわち、保持力が下限値を下回って比較回路153からの出力が「1」から「0」に変化した場合にのみ、その変化を予め定められた信号出力維持時間だけ遅延する。
図20は、図19の構成を含むイネーブルスイッチ1の動作例を示す図である。保持力の下限値は非常に0に近い正の値または0である。保持力が0を超えると保持力下限信号が立上り、保持力が0になると保持力下限信号が立下る。したがって、保持力下限信号は、図14の保持信号に相当する。認証信号およびイネーブル信号は、図14の場合と同様であり、下限立下り遅延信号は、下限立下り遅延回路311により保持力下限信号の立下りが遅延されたものである。
図14の場合と同様に、下限立下り遅延回路311により、操作者がイネーブルスイッチ1から指を短時間だけ離したとしても、保持力下限信号が「0」となる停止時間Δt12が信号出力維持時間Δt11よりも短い場合、イネーブル信号の出力は継続する。一方、図21に示すように、保持力下限信号の停止時間Δt13が信号出力維持時間Δt11よりも長い場合、下限立下り遅延回路311からの信号が「0」となり、すなわち、立下り、イネーブル信号の出力は停止される。以上のように、回路部2は、保持力がイネーブル範囲の下限値を下回ってから予め定められた信号出力維持時間Δt11が経過するまで、イネーブル信号の出力を維持する。
図22は、保持力が上限値を超える場合のイネーブル信号を示す図である。図22の保持力上限信号は、比較回路153における保持力と上限値との比較結果を示し、保持力が上限値を上回ると立下る。図22では保持力下限信号の記載を省いており、保持力下限信号が時間Δt12だけ停止する様子も示している。認証が行われてイネーブル信号が出力されている間に、保持力上限信号が立下ると、下限立下り遅延回路311の動作とは関係なくイネーブル信号の出力は停止される。このように、回路部2は、保持力がイネーブル範囲の上限値を上回った際に、イネーブル信号の出力を停止する。
図23は、図19の回路部2に上限立下り遅延回路312を設けた例を示す図である。図23では、上限値設定部161および下限値設定部162も示しており、上限値設定部161および下限値設定部162により、認証部12での認証結果に従って操作者毎の保持力の上限値および下限値が比較回路153に設定される。図23では、図13と同様の受付部191および維持時間変更部192も示している。受付部191および維持時間変更部192により、下限立下り遅延回路311に設定されている信号出力維持時間が変更されると共に、上限立下り遅延回路312に設定されている信号出力維持時間も変更される。
上限立下り遅延回路312は、比較回路153とAND回路21との間にて符号322を付す線上に設けられ、保持力と上限値との比較結果の立下りを信号出力維持時間だけ遅延させる。保持力と下限値との比較結果は、図19の場合と同様に、下限立下り遅延回路311を経由してAND回路21に入力される。すなわち、回路部2は、保持力が下限値を下回って比較回路153からの一方の出力が「1」から「0」に変化した場合に、その変化を予め定められた信号出力維持時間(以下、「第1信号出力維持時間」という。)だけ遅延し、保持力が上限値を上回って比較回路153からの他方の出力が「1」から「0」に変化した場合に、その変化を予め定められた信号出力維持時間(以下、「第2信号出力維持時間」という。)だけ遅延する。
図24は、図23の構成を含むイネーブルスイッチ1の動作例を示す図である。保持力下限信号および下限立下り遅延信号の記載を省略している。保持力が上限値を上回ると保持力上限信号が立下り、保持力が上限値を下回ると保持力下限信号が立上る。上限立下り遅延回路312により、保持力が非常に短時間の間だけ上限値を上回ったとしても、保持力上限信号の停止時間Δt22が第2信号出力維持時間よりも短い場合、上限立下り遅延信号は途切れず、イネーブル信号の出力は継続する。
一方、図25に示すように、保持力上限信号の停止時間Δt23が第2信号出力維持時間Δt21よりも長い場合、上限立下り遅延回路312からの信号が「0」となり、すなわち、立下り、イネーブル信号の出力は停止される。このように、回路部2は、保持力がイネーブル範囲の上限値を上回ってから予め定められた第2信号出力維持時間Δt21が経過するまで、イネーブル信号の出力を維持する。
第2信号出力維持時間Δt21は、安全性に問題が生じない程度に非常に短い時間が設定される。これにより、例えば、押し込み量の無い保持力検出部15に指が触れた直後に保持力が上限値を上回ったとしても操作の不要な停止が抑制される。その結果、操作効率の低下が抑制される。なお、保持力上限信号の立下りの遅延は、保持力検出部15が機械的なものである場合においてもその構造によっては効果を奏する。通常、第2信号出力維持時間Δt21は、第1信号出力維持時間Δt11よりも短い。
受付部191および維持時間変更部192が設けられる場合、受付部191は、操作中の操作対象90の特定の部位の速度または操作対象90に対する操作者の相対位置の入力を受け付ける。そして、維持時間変更部192は、当該特定の部位の速度または操作対象90に対する操作者の相対位置に応じて第2信号出力維持時間Δt21を変更する。既述のように、第1信号出力維持時間Δt11についても同様である。
なお、下限立下り遅延回路311を設けずに上限立下り遅延回路312のみが設けられてもよい。
図26は、図23の比較回路153に3つの比較器を設けた例を示す図である。一部の周辺構成の記載を省略している。図23では、保持力と上限値とを比較する比較器と、保持力と下限値とを比較する比較器とが設けられるが、図26では、保持力と補助上限値とを比較する比較器が追加される。すなわち、回路部2において、イネーブル範囲の上限値よりも大きい補助上限値が設定されている。保持力と補助上限値との比較結果がAND回路21に入力される様子を符号323を付す線にて示している。保持力が補助上限値を上回ると、比較結果である補助上限信号は、「1」から「0」に立下る。したがって、イネーブル信号の出力は停止する。
図27は、図26の構成を含むイネーブルスイッチ1の動作例を示す図である。保持力上限信号や保持力下限信号等の記載を省略している。上限立下り遅延回路312により、保持力が上限値を上回っても第2信号出力維持時間の間はイネーブル信号の出力は維持される。しかし、第2信号出力維持時間が経過する前に保持力が補助上限値を上回った場合、補助上限信号が立下り、イネーブル信号の出力は強制的に停止される。図27では、保持力が上限値を上回ってから補助上限値を上回るまでの時間にΔt24を付している。このように、保持力が補助上限値を上回った際に、第2信号出力維持時間Δt21に関わらず、回路部2は、イネーブル信号の出力を停止する。
図23に示す上限値設定部161および下限値設定部162に準じて、補助上限値を認証結果に応じて設定する補助上限値設定部が設けられてもよい。これにより、認証部12での認証結果に従って操作者毎の保持力の補助上限値が設定される。保持力検出部15が押し込み量が実質的に無いデバイスである場合、保持し直した瞬間等において保持力が瞬間的に下限値を下回ったり上限値を上回ったりする可能性があるため、保持力下限信号や保持力上限信号を遅延させたり、補助上限値を設けることは、このような保持力検出部15に特に適している。
図28は、図26の構成に警告部4を追加した例を示す図である。警告部4は、保持力がイネーブル範囲の下限値に近づいた際に操作者に警告を通知する。また、警告部4は、保持力がイネーブル範囲の上限値に近づいた際にも操作者に警告を通知する。なお、下限値側の警告および上限値側の警告の一方のみが行われてもよい。警告により、不要な操作停止が抑制され、操作効率の低下を抑制することができる。保持力が下限値に近づいたことを示す警告が行われる場合、下限立下り遅延回路311は省略されてもよい。保持力が上限値に近づいたことを示す警告が行われる場合、上限立下り遅延回路312は省略されてもよい。
操作者に注意喚起を行う警告部4による警告は、例えば、操作部8の振動、操作部8の表示、操作部8や操作部8以外に設けられたやインジケータライトの点滅、音声、警告音等である。操作場所は騒音が大きい場合が多いため、これらの警告手法のうち、操作部8の振動が最も好ましい。保持力がイネーブル範囲の下限値に近づいた際の警告手法と、保持力がイネーブル範囲の上限値に近づいた際の警告手法とは異なってもよい。
比較回路153には、下限値よりも少し大きい下限警告値と、上限値よりも少し小さい上限警告値とが予め設定されている。以下の説明では、下限値よりも大きく、かつ、下限警告値よりも小さい範囲を「下限警告範囲」と呼ぶ。上限値よりも小さく、かつ、上限警告値よりも大きい範囲を「上限警告範囲」と呼ぶ。比較回路153には保持力と下限警告値とを比較する比較器と、保持力と上限警告値とを比較する比較器とがさらに設けられる。
保持力と下限警告値とを比較する比較器からの出力は、保持力が下限警告値よりも小さくなると「0」から「1」に変化する。この出力は、符号271にて示すようにAND回路273に入力される。AND回路273には、保持力と下限値とを比較する比較器からの出力も符号321にて示すように入力される。さらに、AND回路273にはイネーブル信号も入力される。したがって、AND回路273の出力は、イネーブル信号が出力されている間に保持力が下限警告範囲に入ると「1」となり、警告部4から操作者に警告が通知される。
保持力と上限警告値とを比較する比較器からの出力は、保持力が上限警告値よりも大きくなると「0」から「1」に変化する。この出力は、符号272にて示すようにAND回路274に入力される。AND回路274には、保持力と上限値とを比較する比較器からの出力も符号322にて示すように入力される。さらに、AND回路274にはイネーブル信号も入力される。したがって、AND回路274の出力は、イネーブル信号が出力されている間に保持力が上限警告範囲に入ると「1」となり、警告部4から操作者に警告が通知される。
図29は、図28の構成を含むイネーブルスイッチ1の動作例を示す図である。保持力上限信号や保持力下限信号等の記載を省略している。また、下限立下り遅延回路311および上限立下り遅延回路312が存在しない場合のイネーブル信号を示している。下限警告範囲に符号R1、上限警告範囲に符号R2を付している。「下限警告信号」は、AND回路273からの出力を示している。保持力が下限警告範囲R1に入っている間、下限警告信号は「1」となり、警告部4により操作者に警告が通知される。
図30は、図28の構成を含むイネーブルスイッチ1の他の動作例を示す図である。下限立下り遅延回路311および上限立下り遅延回路312が存在しない場合のイネーブル信号を示している。「上限警告信号」は、AND回路274からの出力を示している。保持力が上限警告範囲R2に入っている間、上限警告信号は「1」となり、警告部4により操作者に警告が通知される。
警告により、保持力が意図すること無く下限値を下回ったり、上限値を上回ったりすることが抑制され、操作効率の低下が抑制される。
図31は、図30の構成に下限立上り遅延回路281と、上限立上り遅延回路282とを追加した例を示す図である。下限立上り遅延回路281はAND回路273と警告部4との間に位置する。上限立上り遅延回路282はAND回路274と警告部4との間に位置する。
下限立上り遅延回路281は、AND回路273からの下限警告信号の立上りを、予め定められた警告停止時間だけ遅延させる。これにより、AND回路273からの警告信号が「1」になっている時間が警告停止時間よりも短い場合、警告は行われない。同様に、上限立上り遅延回路282は、AND回路274からの上限警告信号の立上りを、予め定められた警告停止時間だけ遅延させる。これにより、AND回路274からの警告信号が「1」になっている時間が警告停止時間よりも短い場合、警告は行われない。換言すれば、下限立上り遅延回路281により、保持力が下限警告範囲R1に入っている時間が予め定められた警告停止時間を超えた場合に、警告部4は操作者に警告を通知する。上限立上り遅延回路282により、保持力が上限警告範囲R2に入っている時間が予め定められた警告停止時間を超えた場合に、警告部4は操作者に警告を通知する。
なお、下限立上り遅延回路281および上限立上り遅延回路282の一方のみが設けられてもよい。また、これらの遅延回路281,282の警告停止時間は異なってよい。
図32は、図31の構成を含むイネーブルスイッチ1の動作例を示す図である。保持力が下限警告範囲R1に入っている時間Δt32が、警告遅延時間Δt31よりも長い場合、保持力が下限警告範囲R1に入ってから警告遅延時間Δt31が経過した後、下限警告信号が立ち上がる。一方、保持力が下限警告範囲R1に入っている時間Δt33が、警告遅延時間Δt31よりも短い場合、下限警告信号が立上らない。これにより、例えば、操作者がイネーブルスイッチ1から手を離す際等に、不要な警告が通知されることを抑制することができる。この動作は、保持力検出部15が、押し込み量が実質的に無いために操作者が保持力を押し込み量で把握することが困難なスイッチを含む場合に特に適している。
図示を省略するが、上限警告信号に関しても下限警告信号に準じた動作が行われる。すなわち、保持力が上限警告範囲R2に入っている時間が、警告遅延時間よりも長い場合、保持力が上限警告範囲R2に入ってから警告遅延時間が経過した後、上限警告信号が立ち上がる。一方、保持力が上限警告範囲R2に入っている時間が、警告遅延時間よりも短い場合、上限警告信号は立上らない。これにより、操作者がイネーブルスイッチ1を保持した直後等に、不要な警告が通知されることを抑制することができる。この動作も、保持力検出部15が、押し込み量が実質的に無いために操作者が保持力を押し込み量で把握することが困難なスイッチを含む場合に特に適している。
上記イネーブルスイッチ1および操作部8は様々な変更が可能である。イネーブルスイッチ1が設けられる操作部8は、教示ペンダントには限定されず、ホイスト等の重機の操作部、車両の操作部、電動車いすの操作部等の様々な操作部に利用可能である。認証部12による認識は、操作者の身体の様々な部位が利用されてよく、顔認証等でもよい。操作者が身につけているもので認証されてもよく、ICチップが埋め込まれたカードには限定されず、2次元コードや顔写真を読み取ることにより認識されてもよい。
イネーブルスイッチ1を、一つの独立した操作デバイスとしてもよい。操作対象の所定範囲内にあるか、操作対象の操作部等に取り付けることで操作部による操作を許可するデバイスとして、様々な操作部と連携できるようにしてもよい。
保持検出部14は、押し込み量が実質的に無い検出デバイスであれば様々なものが採用可能である。「押し込み量が実質的に無い」とは、通常の保持する力で操作部を保持した場合に、押し込みを感じ取ることが無いことを意味し、必ずしも厳密な意味で押し込み量が無いことを意味しない。保持検出部14には、各種タッチパネル、圧力センサ、光反射型の物体検出センサ等が採用可能である。
保持力検出部15には、押し込み量が実質的に無い検出部や機械的なスイッチが採用可能であるが、他の様々なデバイスも採用可能である。例えば、各種タッチパネル、圧力センサ、押し込み量に従って押圧力が漸次増大するスイッチ、押し込み量に従って押圧力が複雑に変化するスイッチ等が利用可能である。
回路部2の構成は、実質的に同等の機能が実現されるのであれば様々に変形されてよい。回路部2にはマイクロコンピュータが利用されてもよい。認証部12、保持検出部14、保持力検出部15、上限値設定部161、下限値設定部162、受付部191、維持時間変更部192等は、一部または全体が、回路部2と共通の回路であってもよい。上記実施の形態にて示した各種回路構成は、主な機能により分けて表現しているに過ぎない。
認証部12、保持検出部14、保持力検出部15は操作部8の様々な場所に設けてよい。例えば、認証部12は、保持検出部14や保持力検出部15が設けられる本体11とは異なる操作部8上の位置に設けられてもよい。既述のように認証には様々な手法が採用されてよく、認証手法に応じて認証部12は適切な位置に配置される。認証部12は操作部8の外部に設けることも可能である。認証回路122による認証結果は、操作部8にも出力され、操作部8による操作対象90の操作権限が変更される。回路部2は、イネーブルスイッチ1の本体11内ではなく、操作部8内に設けられてもよい。さらには、回路部2の一部は操作部8の外部に設けられてもよい。
上記実施の形態にて説明した信号の立下りおよび立上りは一例に過ぎず、例えば、上記説明における立下りおよび立上りを入れ替え、これに合わせて論理回路を変更しても同様の機能は実現可能である。
イネーブルスイッチ1には、上限警告値や下限警告値を認証結果に応じて変更する構成要素が追加されてもよい。認証結果に応じて警告停止時間を変更する構成が追加されてもよい。
保持力や押し込み量が上限値を超えた際にイネーブル信号の出力を僅かな時間だけ維持する際には、イネーブルスイッチ1または操作部8から操作対象の動作を減速させるための減速信号が出力されてもよい。これにより、操作者の安全がさらに確保された状況下で意図せずにイネーブル信号が取り消されることが抑制され、操作効率の低下を抑制することができる。
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
発明を詳細に描写して説明したが、既述の説明は例示的であって限定的なものではない。したがって、本発明の範囲を逸脱しない限り、多数の変形や態様が可能であるといえる。