(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係るタッチダウン軸受の試験装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本実施形態のタッチダウン軸受の試験装置の構成図である。図1に示すように、タッチダウン軸受の試験装置10は、タッチダウン軸受120を保持する軸受保持部110と、タッチダウン軸受120の内輪121を回転させる回転部材100と、回転部材100を回転させる回転駆動機構40と、回転駆動機構40と回転部材100とを着脱可能に接続する接続機構50と、接続機構50による接続を解除して、回転状態にある回転部材100をタッチダウン軸受120の内輪121上に落下させる落下機構70と、を主に備える。
回転駆動機構40は、天板11上に立設されてボルト固定された回転導入機20を備える。回転導入機20は、天板11の貫通孔11aと同心に位置する内周面12aを有する回転導入ハウジング12を備え、回転導入ハウジング12の内周面12aには、上下が一対の転がり軸受13で支承された中空の回転導入機軸21が回転自在に配設されている。回転導入機軸21は、天板11の貫通孔11aを通過して天板11の一方の面側(図中上側)から他方の面側(図中下側)に亘って配設されている。
回転導入機20は、常圧環境と真空環境とを封止した状態を維持しながら、回転導入機軸21を両環境内に貫通させる装置である。このため、一対の転がり軸受13の間で、回転導入ハウジング12の内周面12aと回転導入機軸21の外周面との間の環状空間には、真空密封シール18が配設されている。なお、真空密封シール18は、差動排気シール、や磁気シール、磁気カップリングであってもよい。
天板11より下面側は、不図示の真空装置(真空槽等)に接続されている。また、回転導入機20は、天板11と、該天板11にボルト固定される回転導入ハウジング12のフランジ12bとの間が、封止部材であるOリング14によって封止されている。従って、天板11より下方は真空環境(真空室V)となり、天板11より上方は常圧環境(室内)となる。
回転導入機軸21の上端には、スプラインハウジング22が外嵌し、一体固定されている。スプラインハウジング22の外周面に固定されたプーリ23と、回転駆動機構40の駆動モータである高周波モータ24の駆動軸25に固定されたプーリ26との間には、ベルト27が巻き掛けられている。なお、プーリ23、プーリ26、及びベルト27は、高周波モータ24から回転導入機軸21へ回転駆動力を伝達する動力伝達機構を構成する。
高周波モータ24を支持する支持台28は、ボルト29で天板11上に固定されており、該ボルト29を緩めた状態で、天板11と支持台28との間に配設された位置調整ボルト30を回転させ、支持台28を左右方向に移動させることで、ベルト27の張力状態を調整可能である。高周波モータ24は、図示しない外部のコントローラによって、任意の速度で回転制御される。
図2は、回転導入機軸21の下部近傍の拡大図である。天板11より下方(真空環境)に位置する回転導入機軸21の下端には、円筒形状の磁石ホルダ31が外嵌する。磁石ホルダ31は、磁石ホルダ31を径方向に貫通するセットスクリュー32が回転導入機軸21の円周溝21aに係合すると共に、回転導入機軸21と磁石ホルダ31との間にキー33が配設されて、回転導入機軸21と磁石ホルダ31を一体に接続している。
磁石ホルダ31の外周面には、円筒形状のガイドリング34が外嵌する。ガイドリング34は、ガイドリング34を径方向に貫通するねじ35により、磁石ホルダ31に固定されている。ガイドリング34の下面は、磁石ホルダ31の下面より、若干軸方向に突出している。即ち、ガイドリング34の内径と、磁石ホルダ31の下面とにより円形の嵌合凹部が形成され、後述する回転部材100の嵌合凸部(上凸部103)が嵌合することで、回転部材100を位置決めする。
磁石ホルダ31の下面に形成された断面略矩形の円周溝36には、リング形状の磁石51が接着などにより固定されている。磁石51の下面は、磁石ホルダ31の下面と同一面となっている。磁石51は、真空室V内に配置され、回転導入機軸21と回転部材100とを磁気的に接続する接続機構50を構成する。
磁石51が回転部材100を磁気的に吸着するため、磁石ホルダ31は磁束を通し難い材質が好ましく、SUS304,SUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼や、A2017,A5052,A5056,A2024,A7075等のアルミ合金等の非磁性材料が使用される。
磁石51の材質は特に問うものではないが、フェライト系磁石に加えて、ネオジウム系、サマリウムコバルト系の希土類系磁石等の最大エネルギー積値の大きい磁石を用いると、吸着力に対してサイズを小さくできるので、磁石51を回転させて使用する(磁石の慣性モーメントの影響をうける)本発明には好適である。
磁石51の形状は、遠心力のバランスを考慮すると、リング形状が好ましい。しかし、
回転部材100の吸着が目的であるので、充分な吸着力が得られるならば、円弧形状等の磁石を円周方向に等間隔で配置してもよい。また、回転部材100の吸着のためには、磁石51の着磁方向は軸方向が適しているが、回転部材100を吸着可能であれば,特に限定されない。
なお、回転駆動機構40の構成部材である回転導入機軸21の内周面及び外周面、スプラインハウジング22、プーリ23、磁石ホルダ31、ガイドリング34、及び磁石51の全ての中心軸は、同一の軸線CL上に位置するように設定されている。従って、高周波モータ24を回転させると、プーリ26、ベルト27、プーリ23を介してスプラインハウジング22が回転導入機軸21と共に回転し、さらに、磁石ホルダ31、ガイドリング34、及び磁石51が、高周波モータ24の回転と同期して回転する。これにより、常圧環境側から真空環境側に回転運動を導入することができる。
図1に戻り、落下機構70は、アクチュエータ軸72を直線駆動可能なアクチュエータ(直動モータ)71を備える。アクチュエータ71は、回転導入機20の上部に動力伝達ケース38を介して配置された環状の支持部材73に固定されている。アクチュエータ71は、不図示の外部コントローラによってアクチュエータ軸72の直線運動が制御される。
支持部材73の内周面73aには、リニアボールベアリング74が内嵌・装着されている。リニアボールベアリング74には、回転静止変換軸75がアクチュエータ軸72と同一軸線上で直線運動自在に配設されている。これにより、アクチュエータ71が作動すると、回転静止変換軸75が、アクチュエータ軸72と共に直線運動する。
回転静止変換軸75は、アクチュエータ軸72の先端(下端)に一体的に接続され、リニアボールベアリング74に嵌合する細径部75aと、細径部75aの下方に形成されたカップ状の大径部75bと、からなる。大径部75bの孔部には、予圧が付与された一対の転がり軸受76の外輪が内嵌する。一対の転がり軸受76の内輪には、回転ピン77が内嵌し、回転自在に支持されている。
一方、スプラインハウジング22の中心に形成された貫通孔22aには、軸方向に雌スプライン(図示せず)が形成されたスプラインユニット78が固定されている。スプラインユニット78の雌スプラインには、スプライン軸79がスプライン嵌合する。スプライン軸79の上端と、回転ピン77とは、回転継手80を介して一体に接続されている。なお、スプラインユニット78は、ボールスプラインであってもよい。
これにより、高周波モータ24によってスプラインハウジング22が回転駆動されると、スプラインユニット78を介してスプライン軸79が回転し、さらに、スプライン軸79と回転継手80で接続される回転ピン77が回転する。回転ピン77は、一対の転がり軸受76で回転自在に支持されており、また、回転静止変換軸75はアクチュエータ軸72に接続しているため、回転静止変換軸75が回転することはない。
スプライン軸79は、高周波モータ24で駆動されて回転可能であり、且つ、アクチュエータ71で駆動されてスプラインユニット78に対して直線運動可能である。即ち、スプライン軸79は、回転しながら、直線運動自在に構成されている。
中空の回転導入機軸21の内周面21bには、ピストン81が軸方向に摺動自在に嵌合する。ピストン81の上端に形成された雄ねじ81aは、スプライン軸79の下端に螺合して、ピストン81とスプライン軸79とが軸方向に一体接続している。
ピストン81には、Oリング82が装着される3つのOリング溝81bが、ピストン81の上部、及び下部にそれぞれ形成されている。回転導入機軸21の内周面21bは、面粗さが良好に仕上げ加工されており、Oリング溝81bにそれぞれOリング82が装着されたピストン81を嵌合することで、回転導入機軸21とピストン81との間が真空封止されている。
基本的には、回転導入機軸21とピストン81との間には、少なくとも一つのOリング82が設けられればよい。ピストン81の下方のOリング82によって真空封止され、上方の2本のOリング82は、バックアップとして機能する。即ち、ピストン81の下方のOリング82よって真空環境と常圧環境とが封止されており、ピストン81の先端81cは、真空環境中に存在する。また、ピストン81の先端81cの直径は、後述するすべり軸受83の内径よりも細く、アクチュエータ71が作動したとき、すべり軸受83内に進入可能である。
回転導入機軸21の内周面21bの下部は若干拡径されて、中空のすべり軸受83が接着によって固定されている。すべり軸受83は、直動軸受であってもよい。すべり軸受83には、軸方向断面が略逆T字型の押圧部材84の円柱部84aが同軸的に嵌合している。円柱部84aより直径が大きい押圧部84bは、回転導入機軸21の下端部に形成された拡径部21cに収容されている。押圧部84bの下面は、磁石ホルダ31の下面、即ち、磁石51の下面と同一面か、若干、凹んでいる。
図2に示す状態では、押圧部84bの下面は、磁石51の磁力によって吸着保持された回転部材100の上面に接している。このため、回転部材100が存在しない場合、押圧部材84がすべり軸受83から抜け落ちて落下する可能性があるが、押圧部材84は、強磁性材料で製作されているので、磁石51からの漏洩磁束に捕捉され、落下することはない。押圧部材84の強磁性材料としては、S45C等の軟鋼の調質鋼や、SUJ2の焼入れ鋼、TBH鋼等の高強度非調質鋼、SKD5やSKH4等の高速度鋼等が好適である。
落下機構70の構成部材であるアクチュエータ軸72、回転静止変換軸75、回転ピン77、回転継手80、スプライン軸79、ピストン81、及び押圧部材84の各中心線は、同一の軸線CL上に位置するように設定されている。なお、落下機構70の軸線CLと、回転駆動機構40の軸線CLとは、同一軸線となっている。
これにより、アクチュエータ71を作動させると、アクチュエータ軸72の直線運動は、回転静止変換軸75、回転ピン77、回転継手80、スプライン軸79、及びピストン81を介して押圧部材84に伝達されて直線移動し、磁石51の磁力で保持される回転部材100を下方に押圧する。
また、試験用のタッチダウン軸受120を回転導入機軸21の真下に設置するための軸受保持部110は、天板11の下面に固定される円筒ケース111と、円筒ケース111の下面に取り付けられる下板部112と、下板部112の中央部に固定される軸受保持台113と、を備える。軸受保持台113は、上面に開口し、外輪122の外径と同じ内径を有する内周面113aと、該内周面113aの下部で径方向内側に環状に突出する内向き突部113bと、を有する。内向き突部113bの内径は、外輪122の内径より僅かに大きくなっている。これにより、タッチダウン軸受120は、外輪122が軸受保持台113の内周面113a、及び内向き突部113bの上面に嵌合・保持され、内輪121が軸受保持台113と接触することなく、回転自在に軸受保持台113に保持される。
試験用のタッチダウン軸受120は、内周面113aに外輪122を嵌合した後、外輪122の上面に当接する略クランク状の押さえ板114を軸受保持台113にねじ止めすることで軸受保持台113に固定される。これにより、試験用のタッチダウン軸受120は、内輪121の中心と、回転駆動機構40及び落下機構70の軸線CLとが一致した状態で軸受保持台113にセットされ、真空室V内に臨んで配置される。
回転部材100は、下方に向かって広がる略円錐台形の本体部101と、本体部101から下方に延びる、回転軸と同径の導入軸102と、を備える。導入軸102の外径は、試験用のタッチダウン軸受120の内輪121の内径より小さくなっており、試験用のタッチダウン軸受120が軸受保持台113に固定されたとき、導入軸102は内輪121に接触することなく、所定の隙間を介して挿入される。
本体部101の上面には、円板状の上凸部103が一体に形成され、本体部101の下面には、円板状の下凸部104が一体に形成されている。上凸部103の外径は、ガイドリング34の内径と同じ直径である。即ち、上凸部103は、ガイドリング34と磁石ホルダ31とにより形成される嵌合凹部と嵌合する嵌合凸部となる。回転部材100の上凸部103(嵌合凸部)と、該嵌合凹部と、を嵌合させることで、回転部材100は、その中心線が回転駆動機構40及び落下機構70の軸線CLと一致して取り付けられる。
下凸部104の外径は、試験用のタッチダウン軸受120の外輪122の内径より小さく、より詳細には、導入軸102と内輪121の内径との隙間分を考慮して小さく設定されている。即ち、回転部材100がタッチダウンしたとき、導入軸102が内輪121の内径内で隙間分だけ半径方向に移動しても、回転部材100とタッチダウン軸受120の外輪122とは接触しないようになっている。
回転部材100は強磁性体、例えば一般の軟鋼やSUS430等のフェライト系ステンレス鋼、SUS420J2等のマルテンサイト系ステンレス鋼、SUS630等の析出硬化系ステンレス鋼等、あるいはSK材、SKD材、SKH材等の工具鋼等を用いる。
<タッチダウン軸受の試験手順>
次に、本実施形態のタッチダウン軸受の試験装置によるタッチダウン軸受の試験手順について説明する。
試験軸受は、タッチダウン軸受としての性能評価に供するもので、試験目的によって適宜選択される。例えば、軸受材質によるタッチダウン性能の違いを検証する場合は、SUS440C製とSUJ2製などの材質の異なる軸受が選択される。あるいは、軸受の構成の違いによる性能を検証する場合は、保持器有り・無しの軸受としたり、軸受形式の違いによる性能を検証する場合は、深溝玉軸受やアンギュラ玉軸受など、形式が異なる軸受が選択される。さらに、潤滑剤の違いによる性能を検証する場合は、異なった潤滑剤を充填・塗布した軸受が選択される。また、潤滑部位の違いによる性能を検証する場合は、転動体だけに潤滑剤を施した軸受、転動体と軸受内輪だけに潤滑剤を施した軸受、あるいは、軸受内輪端面だけに潤滑剤を施した軸受が選択されるなど、種々の組み合わせが考えられる。
先ず、図1及び図2に示すように、回転部材100の導入軸102を、試験用のタッチダウン軸受120の内輪121に挿通した状態で、回転部材100の上凸部103を、ガイドリング34の内径に嵌合させ、磁石51の磁力によって吸着保持する。さらに、試験用のタッチダウン軸受120の外輪122を、軸受保持台113の内周面113aに嵌合させ、外輪122の上面に押さえ板114を当接させて軸受保持台113にねじ止めして、試験用のタッチダウン軸受120を軸受保持台113に固定する。そして、回転部材100の導入軸102とタッチダウン軸受120の内輪121との間に隙間があり、接触していないことを確認して試験の準備作業を行う。
回転部材100は、上凸部103がガイドリング34の内径に嵌合することで、回転部材100の中心軸と、回転導入機軸21の中心軸(回転駆動機構40及び落下機構70の軸線CL)とが一致した状態で取り付けられる。
ここで、高周波モータ24を回転させると、駆動軸25の回転は、プーリ26、ベルト27、プーリ23を介してスプラインハウジング22に伝達され、スプラインハウジング22に一体固定されている回転導入機軸21が回転する。さらに、回転導入機軸21に固定された磁石ホルダ31、ガイドリング34、磁石51、及び磁石51で吸着保持された回転部材100が、高周波モータ24の回転と同期して回転する。
回転部材100が回転する際、回転部材100の軸回りには、一般的に、わずかな偏心荷重(アンバランス)が存在するため、軸と直角方向の遠心力が生じるが、回転部材100の上凸部103がガイドリング34に嵌合し、且つ磁石51の磁力で磁石ホルダ31に吸着されているので、回転部材100が磁石ホルダ31から離脱することはない。
また、回転導入機軸21の回転と同時に、スプラインハウジング22に固定されるスプラインユニット78、スプラインユニット78にスプライン嵌合するスプライン軸79、スプライン軸79に接続されたピストン81、回転継手80、及び回転ピン77が、高周波モータ24の回転と同期して回転する。回転ピン77は、一対の転がり軸受76で回転自在に支持されているので、回転静止変換軸75、及びアクチュエータ軸72が回転することはない。
次に、真空室V内の回転部材100の回転速度が所定の速度に達したとき、図3に示すように、アクチュエータ71を作動させて、アクチュエータ軸72を図中、下方に直線運動させると、リニアボールベアリング74で支持された回転静止変換軸75が、下方に移動する。これに伴って、回転ピン77、回転継手80、スプライン軸79、ピストン81、及び押圧部材84が、回転しながら下方に直線移動する。
回転ピン77は回転しているが、一対の転がり軸受76で回転自在に支持されているので、回転ピン77の直線移動が回転によって阻害されることはなく、回転運動と直線運動とが、同時に行われる。また、ピストン81は、回転導入機軸21と同じ回転速度で、即ち、相対回転なく回転している。従って、Oリング82は、回転導入機軸21と、直線運動するピストン81と、の間を真空封止する。Oリング82には、真空用グリースや真空用オイル等が塗布されており、Oリング摺動時の潤滑性能と封止性能とを向上させている。
図4も参照して、ピストン81によって押圧部材84が押圧されると、すべり軸受83で摺動自在に支持される押圧部材84が下方に移動し、磁石ホルダ31の下面と同一面にあった押圧部84bが、磁石ホルダ31の下面から突出して回転部材100を下方に押圧する。
アクチュエータ71の推力は、回転部材100を吸着する磁石51の磁力より大きく設定されているので、回転している回転部材100は、磁石51から離間する。やがて、磁石51と回転部材100との離間距離が大きくなるに従って、磁石51の吸着力が次第に小さくなり、回転部材100の上凸部103とガイドリング34との嵌合がなくなると、回転部材100は、どの部材とも機械的に接触しておらず、空中に放出される。
このとき、回転部材100(回転部材100の重心)に作用する力は、アクチュエータ71により下方に直線移動する回転部材100の慣性力、回転する回転部材100の遠心力、及び重力となる(さらに詳細には、磁石51から吸着力も作用する)。従って、回転部材100は、慣性力、遠心力、及び重力の3力の合力の方向に進行する。
アクチュエータ71は、ピストン81が、磁石51の吸着力に打ち勝って回転部材100が自重落下可能な位置まで押圧部材84を押圧すると、作動を停止する。この時、押圧部材84は、磁石51の漏洩磁束によって捕捉されているため、回転部材100と共に落下することなく、その場で停止、保持される。
回転部材100は、上記した3力の合力方向に落下するが、回転部材100がタッチダウンする前に、導入軸102がタッチダウン軸受120の内輪121に接触すると、回転部材100は、導入軸102が挿通する試験用のタッチダウン軸受120の内輪121に案内されて落下し、回転部材100の下凸部104がタッチダウン軸受120の内輪121に当接してタッチダウンする。
以下の説明では、回転部材100の導入軸102が、タッチダウン軸受120の内輪121にタッチダウンするものとして説明する。
図5に示すように、落下する回転部材100は、導入軸102がタッチダウン軸受120の内輪121に接触することなく、あるいは、一瞬接触して、回転部材100の下凸部104がタッチダウン軸受120の内輪121の端面に当接してタッチダウンする。回転部材100は、落下中も回転を続けており、その回転速度は、磁石ホルダ31から離脱直前の回転導入機軸21の回転速度と同一である。
図6も参照して、タッチダウン軸受120の内輪121上にタッチダウンした回転部材100は、最初に下凸部104の下面と、内輪121の上方の端面との間で摺動して内輪121を回転起動させる。その後、導入軸102は、内輪121の内径内を半径方向に移動して、導入軸102の外径と内輪121の内径との間で、摺動や転動を複雑に繰り返しながら内輪121の回転速度が加速していく。
タッチダウン軸受120の内輪121の回転速度が次第に大きくなると共に、回転部材100の回転速度が次第に小さくなって、両者が同一の回転速度になると両者が一体となって回転し、両者の回転速度に違いが生じると、互いに相対角速度をもって回転するなど、内輪121は、複雑な回転状態を繰り返しながら惰性回転を続ける。
上記した摺動や転動などにより、タッチダウン直前に回転部材100が持っていた回転エネルギーが消費されると、タッチダウン軸受120は、内輪121上に回転部材100を載せた状態で停止する。
そして、タッチダウン軸受120が停止するまでの惰性回転時間を計測して比較したり、惰性回転中の回転状態、例えば、玉づまりの発生状況、潤滑剤の枯渇の有無、惰性回転中における異音の発生、軸受損傷の有無などを確認する。あるいは、所定回数のタッチダウンを行なったタッチダウン軸受120を分解観察する等を行う。これにより、タッチダウン軸受120の種々のタッチダウン性能を検証する。
タッチダウン軸受120の回転が停止した後、高周波モータ24を停止させ、前進状態で停止しているアクチュエータ71を元の作動開始位置にまで戻し、回転部材100を再び、磁石51の磁力により磁石ホルダ31に吸着すれば、同一軸受の2回目のタッチダウン性能試験を開始することができる。また、新しいタッチダウン軸受120のタッチダウン性能試験は、上記した手順を繰り返すことで可能である。
以上説明したように、本実施形態のタッチダウン軸受の試験装置10によれば、回転部材100を回転させる回転駆動機構40と、回転駆動機構40と回転部材100とを着脱可能に接続する接続機構50と、接続機構50による回転導入機軸21と回転部材100との接続状態を解除して、回転状態にある回転部材100をタッチダウン軸受120上に落下させる落下機構70と、を備えるので、実際のタッチダウン現象に近い条件で、タッチダウン軸受120のタッチダウン性能を試験することができる。
また、タッチダウン軸受120、回転部材100、及び接続機構50は、真空室V内に配置されるので、真空環境におけるタッチダウン軸受120のタッチダウン性能を試験することができる。
また、回転駆動機構40は、回転自在とされて外部から真空室V内に延設された中空の回転導入機軸21を備え、落下機構70は、回転導入機軸21と一体回転可能、且つ軸方
向に摺動自在とされて回転導入機軸21の内周面21bに嵌合し、外部から真空室V内に延設されるピストン81を備え、ピストン81は、回転駆動機構40と回転部材100との接続状態を解除するので、真空室V内にあるタッチダウン軸受120を、大気環境にある外部から操作して、タッチダウン性能を試験することができる。
また、接続機構50は、回転駆動機構40の回転導入機軸21と回転部材100とを、磁石51の磁力により接続するので、回転導入機軸21と回転部材100とを、容易に接
続、及び解除できる。
また、回転部材100は、本体部101と、該本体部101から下方に延びる、回転軸と同径の導入軸102と、を備え、導入軸102は、タッチダウン軸受120の内輪121に隙間を介して挿入されるので、タッチダウン軸受120に影響を与えることなく、回転部材100を所定の回転速度まで回転させることができる。また、回転する回転部材100を、内輪121で案内して落下させることができ、タッチダウン試験を安定して実施できる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るタッチダウン軸受の試験装置について、図7〜図11を参照して説明する。
なお、第2実施形態では、接続機構及び落下機構の構成において第1実施形態のものと異なる。このため、第1実施形態と同一又は同等部分については、説明を省略或いは簡略化する。
本実施形態の落下機構70は、第1実施形態と実質的に同様な構成である、アクチュエータ軸72、回転静止変換軸75、回転ピン77、回転継手80、スプライン軸79、ピストン81を備える。一方、図7に示すように、本実施形態の落下機構70は、押圧部材140、上側磁石170、及び、本発明の押し出し装置を構成するイジェクタピン(以降、Eピンと称す。)180を主に備える。
ピストン81の先端81cによって押し出される押圧部材140は軸方向中間部にフランジ部141が軸部143と同軸に取り付けられたこま形状をしている。押圧部材140の軸部143は、回転部材100と回転導入機軸21とが磁気的に接続されている状態(セット状態)では、ピストン81の先端81cから離れて、ピストン81の先端81cより下位位置に位置している。
上側すべり軸受150は、回転導入機軸21の先端内径に嵌合されており、上側磁石ハウジング160が回転導入機軸21の先端外径に同軸で嵌合している。上側磁石ハウジング160は略スリーブ形状に形成され、軸方向一端面(図では下側)にフランジ部161が形成されていて、そのフランジ部161の下端面に上側磁石170が埋設されている。上側磁石170は円筒を輪切りにしたリング形状で、上側磁石ハウジング160に対して同軸的に配置される。上側磁石170は単一のリングである必要はなく、円柱形状の磁石を上側磁石ハウジング160に対して同軸的等配位置に複数配置するものでも良い。上側磁石170の下端面は、上側磁石ハウジング160の下端面と同一面内に設置されるように接着、あるいはしまりばめ等の手段で上側磁石ハウジング160に埋設される。上側磁石170は軸方向に着磁されているが、後述する、Eピン180を内蔵する押圧部材140と接合されている背板185を磁気吸着して、鉛直方向に落下しない吸着力が得られるならば、その磁化方向は問わない。
押圧部材140のフランジ部141には、該フランジ部141の端面間を上下方向に貫通する段付き穴142が3個以上(例えば6個等)設置されている。複数の段付き穴142は、軸部143に対して等配位置に配置され、且つ、複数の段付き穴142のピッチ円の中心が軸部143と同軸に配置される。イジェクタピン(以降、Eピンと称す。)180は、小径側のピン部181と大径側の根元拡径部182とが同軸に配置された段付き形状に構成されている。Eピン180は、樹脂の射出成形型に内蔵して成形部品を型穴から排出する際に使用される市販のイジェクタピンを流用して製作されている。フランジ部141の段付き穴142の小径側には、Eピン180がピン部181の外径ですきま精度良く嵌合していて、同時に根元拡径部182がフランジ部141の段付き穴大径側にすきまを保って収容される。したがって、各Eピン180のピン部181も軸部143に対して等配位置に配置され、且つ、ピン部181のピッチ円の中心が軸部143と同軸に配置される。
ピン部181の根元側周囲にはOリング等の弾性部材186が挿入されており、Eピン180は、ピン部181がフランジ部141の段付き穴142の小径側口元から突出するようにして、フランジ部141の段付き穴142に装填される。その後、略平板リング形状の背板185は押圧部材140の軸部143へ、Eピン180の根元拡径部182の端面側から挿入され、押圧部材140のフランジ部141の端面に締結される。この状態で、根元拡径部182の端面は、弾性部材186の機能により、背板185に押しつけられて背板185と密着する。
弾性部材186は上述の機能を持つものであれば良く、例えば圧縮ばね等でも良い。Eピン180は射出成形Eピン用の研磨工具を使用することで、複数のEピン180の全長(ピン部181端面から根元拡径部182の端面までの距離)を同一にすることが可能である。全て、全長を同一に調整したEピン180を用いて、押圧部材140に装填し、背板185を締結すれば、押圧部材140のフランジ部141から複数(3本以上)のピン部181が突出して配置され、いずれのピン部181の端面も押圧部材140自身の軸に垂直な同一平面内に位置することになる。
押圧部材140の材質は一般軟鋼の他、オーステナイト系ステンレス鋼等、マルテンサイト系ステンレス鋼等、析出硬化系ステンレス鋼等であっても良いが、2箇所の軸部が上側すべり軸受150、及び下側すべり軸受155と摺動するので摩耗を防止することから、SK材、SKD材、SKH材等を用いるのでも良い。
また、背板185は強磁性体である必要があり、例えば一般の軟鋼やSUS430等のフェライト系ステンレス鋼、SUS420J2等のマルテンサイト系ステンレス鋼、SUS630等の析出硬化系ステンレス鋼等を用いる。背板185は、端面の平面度、及び両端面間の平行度が良好に製作されている。
押圧部材140の軸部143の背板側は、上側すべり軸受150の内径にすきま精度良く嵌合している。上側すべり軸受150の内径は回転導入機軸21と同軸に配置されているので、押圧部材140の軸部143も回転導入機軸21と同軸となる。背板185の端面は上側磁石170の端面の一部または全部が接触するように背板185の外径寸法と上側磁石170の等配径寸法とが設定されていて、背板185の端面が上側磁石170端面に吸着される。背板185とEピン180を装着した押圧部材140はねじで締結されているので、Eピン180付きの押圧部材140は上側磁石170に吸着される。上側磁石170の磁力はEピン180付きの押圧部材140を吸着したまま、落下することなく保持できるように設定されているので、Eピン180付き押圧部材140が上側すべり軸受150から図中下方へすべり落ちるということはない。
上側磁石ハウジング160のフランジ部161は、その外周面が、上側磁石ハウジング160の内周面と同軸に形成されている。上側磁石ハウジング160の内周面は、回転導入機軸21の先端外周面と嵌合するので、上側磁石ハウジング160のフランジ部161の外径は、回転導入機軸21と同軸となる。フランジ部161の外周面には下側磁石ハウジング165の内周面165aが精度良く嵌合している。下側磁石ハウジング165は、複数の段部によって内径が異なる複数の内周面165a〜165dを有する。下側磁石ハウジング165の内周面165a〜165dは、それぞれ同軸に形成されている。下側磁石ハウジング165の内周面165cには下側すべり軸受155が接着、または圧入しまり嵌めで嵌合している。下側すべり軸受155の端部の片側には円筒部156が形成されていて、下側磁石ハウジング165の内周面165cへ下側すべり軸受155を嵌合する際の位置決めとして機能する。
上側すべり軸受150及び下側すべり軸受155の材質は特に問われるものではないが、一般の軟鋼、SUS304等のステンレス鋼、黄銅、PEEKやPTFE等の樹脂製であっても良い。黄銅は真空高温環境プロセスにおいて、含有するZnが蒸発して汚染が生じることがあるため、使用を嫌われることもあるが、本実施形態では温度が常温に対して大きく上昇するということはないので、その懸念はない。
上側及び下側すべり軸受150、155の内径は上側及び下側すべり軸受150、155の外径と同軸となっているので、上側すべり軸受150の内径、及び下側すべり軸受155の内径は、回転導入機軸21と同軸に配置されていることになる。
また、押圧部材140の軸部143の背板側部分の外径を、上側軸部外径、反背板側部分の外径を下側軸部外径とすると、上側軸部外径は、上側すべり軸受150の内径に、下側軸部外径は、下側すべり軸受155の内径にそれぞれ、同軸にすきま精度良く嵌合している。このため、上側すべり軸受150の内径、及び下側すべり軸受155の内径の両方をガイドとして、軸部143を上下に直動させることが可能で、直動中、常に軸部143は回転導入機軸21と同軸が保たれる。押圧部材140が直動する際の上死点は背板185の端面が上側磁石170端面に吸着されている位置であり、一方、下死点は、押圧部材140のフランジ部141の反背板側端面が下側すべり軸受155の円筒部156の端面と接する位置である。
上側磁石ハウジング160のフランジ部161の外周面と下側磁石ハウジング165の内周面165aとは、互いに同軸に嵌合・締結されている。また、その際に接触する、上側磁石ハウジング160のフランジ部161の端面と、該端面と当接する下側磁石ハウジング165の上側軸方向端面とは、いずれも平面度良く、同時にそれぞれの軸に対する直角度も良好に成形されている。下側磁石ハウジング165の、図中で最も下側に位置する端面(以降、磁石溝端面165eと称す)には、磁石埋設用溝166が下側磁石ハウジング165自身の軸と同軸的に設けられていて、磁石埋設用溝166には、回転部材100を吸着するための下側磁石175が磁石溝端面165eと同一端面となるように埋設されている。下側磁石175は、円筒を輪切りにしたようなリング形状を有し、磁石埋設用溝166に接着、または圧入等のしまり嵌めで埋設される。また、下側磁石ハウジング165の磁石溝端面165eと、下側磁石ハウジング165の上側軸方向端面とは、相互に平行度良く成形されているので、下側磁石ハウジング165の磁石溝端面165eは回転導入機軸21に対して良好な直角度が保たれている。
下側磁石ハウジング165の磁石溝端面165eには、下側磁石ハウジング165の内周面165bの下端と連続する軸方向上端面に貫通する貫通穴167が設けられている。貫通穴167は、Eピン180のピッチ円径と同一のピッチ円径、Eピン180の等配個数と同一の個数で設けられており、貫通穴167の内径はEピン180のピン部181の外径寸法よりわずかに大きく設定されている。このため、貫通穴167にEピン180を挿入したまま、押圧部材140を直動させることができる。押圧部材140の背板185が上側磁石170に吸着される時、すなわち、押圧部材140の位置が上死点にある時には、Eピン180の端面は貫通穴167の口元からわずかに貫通穴167の中に入った位置となるように設定されている。また、押圧部材140が直動を開始して、背板185が上側磁石170の吸着から離脱すると、すぐに貫通穴167の口元からEピン180端面が突出し始めるように、貫通穴167の口元からのEピン180の落ち込み距離が設定されている。
下側磁石ハウジング165の内周面165dは、貫通穴167のピッチ円より内側に設けられている。下側磁石ハウジング165の内周面165dに連続する下向き端面は、下側磁石ハウジング165自身の軸に精度良く直角度が確保されていて、一方、前記内周面165dは、前記軸に精度良く同軸度が確保されている。下側磁石ハウジング165の内周面165dには、矩形断面リング形状のセンターリング187が接着、または圧入等のしまり嵌めにより嵌合している。センターリング187は、後述する回転部材100のセンターボス105と嵌合し、回転状態にある回転部材100の半径方向への変位を規制している。センターリング187は外径と内径とが同軸度良く成形されていて、両端面が平行度良く成形されていて、内径、及び外径が、端面に対して直角度良く成形されている。したがって、センターリング187の内径と回転導入機軸21とは同軸となる。
上側磁石ハウジング160、及び下側磁石ハウジング165は、それぞれ上側磁石170、下側磁石175を埋設することから、非磁性材料であるSUS304等のオーステナイト系ステンレス鋼等が用いられる。センターリング187は、センターリング187の内径の摩耗を防止するため、また、Eピン180は、ピン部181の先端端面の摩耗を防止するため、ともにSK材、SKD材等の工具鋼、SKH材等の高速度工具鋼等が用いられる。
また、上側磁石170と下側磁石175は、それぞれの吸着物(押圧部材140、回転部材100)を吸着してそれらが落下しない磁力が確保できるならば材質は問わない。一方、上側磁石170と下側磁石175に、フェライト磁石の他、サマリウムコバルト磁石やネオジウム磁石等の希土類磁石を用いると、それらは最大エネルギー積が大きいので、同じ吸着力を得るのに磁石サイズを小さく設定できる。それにより、上側磁石ハウジング160、下側磁石ハウジング165等を小型に設定することが可能となり、それらを高速度で回転させる本試験装置には好適といえる。
なお、本実施形態においては、回転駆動機構40と回転部材100とを着脱可能に接続する接続機構は、下側磁石175、及び本発明のガイド部を構成するセンターリング187を主に有する。
回転部材100は、第1実施形態と同様に、本体部101、導入軸102、及び下凸部104を有している。下凸部104の外径寸法は、試験を行うタッチダウン軸受120の内輪121の外径寸法より大きく、かつ、下凸部104の端面と対向する外輪122の内径寸法よりも小さくなるように設定されている。本体部101の両端面には台形の上底と下底に相当する長さを径寸法とする扁平な円柱形状部が接続されている。
本体部101の上底側段部端面101aには、扁平円柱形状のセンターボス105が回転部材100自身の軸と同軸的に設けられている。センターボス105の外径は、センターリング187の内径と精度良く嵌合している。本体部101の上底側段部端面101aは、回転部材100自身の軸に直角度良く成形されている。センターボス105の上底側段部端面101aからの高さは、センターボス105がセンターリング187に挿入された際、上底側段部端面101aが最初に下側磁石175の端面に接触するように設定されていて、センターボス105の端面がセンターリング187内で底付きすることはない。
回転部材100の上底側段部の外径寸法は、下側磁石175の内径寸法より大きく設定されているので、センターボス105をセンターリング187に嵌合させた際は、下側磁石175の端面の一部または全部が本体部101の上底側段部端面101aと接触し、回転部材100は下側磁石175に吸着される。下側磁石175の磁力は回転部材100を吸着した後、回転部材100の自重を保持できるように設定されているので、回転部材100がセンターリング187から自重によって脱落することはない。
回転部材100自身の軸に対して、上底側段部端面101aは直角度良く成形されていて、回転部材100のセンターボス105、及び回転部材100の導入軸102は、同軸である。したがって、センターボス105の外径をセンターリング187の内径に嵌合させ上底側段部端面101aを下側磁石175に吸着させると、回転部材100の導入軸102と回転導入機軸21とは同軸にセットされることになる。この状態で、回転導入機軸21を回転させることで、回転部材100を回転導入機軸21との同軸を保持したまま回転させることができる。
本実施形態においても、回転部材100は強磁性体、例えば一般の軟鋼やSUS430等のフェライト系ステンレス鋼、SUS420J2等のマルテンサイト系ステンレス鋼、SUS630等の析出硬化系ステンレス鋼等、あるいはSK材、SKD材、SKH材等の工具鋼等を用いる。回転部材100は、タッチダウン試験を繰り返し行うとセンターリング187への装脱着が頻繁に生じるので、材質に工具鋼等を用いると耐摩耗性上好適である。
回転部材100の導入軸102が貫通するタッチダウン軸受120は、回転部材100と同軸的に配置され、軸受120の内径と回転部材100の導入軸102の外径とは、クリアランスを形成している。そのため、回転導入機軸21を回転させると、機械的一体となった回転部材100が回転するが、タッチダウン軸受120は、回転部材100の導入軸102と常に同一の大きさのクリアランスを保ったまま静止している。タッチダウン軸受120の内輪121の端面は、回転部材100の下凸部104の端面と対向していて、両端面とも回転部材100自身の軸と直角度良く配置されているので、回転部材100が下側磁石175との磁気的結合が解除されて、姿勢そのままに直下に落下したとすると、回転部材100の導入軸102の外径と内輪121の内径は、当初のクリアランスを保ったまま、通過して、前記両端面は全周同時に衝突接触することになる。
本実施形態の回転部材100と回転導入機軸21との組み立ては、回転部材100の導入軸102を軸受120に貫通させ、回転部材100を軸受120の所定位置に配置した後では、センターボス105をセンターリング187に嵌合させることはできない。このため、センターボス105をセンターリング187に嵌合させながら回転部材100が下側磁石175に吸着されて回転導入機軸21と回転部材100との機械的一体化を確保した後、軸受120を回転部材100の導入軸102の先端から挿入し、所定位置に配置する、という順番で組み立てる。
導入軸102を軸受120の所定位置に配置し、回転部材100と回転導入機軸21とが組み立てられた本実施形態の試験装置では、回転導入機軸21が回転し、所定回転速度に到達したら、アクチュエータ71を稼動させて図8に示すように、ピストン81を下方に直進(前進)させる。ピストン81が前進してピストン81の先端81cが押圧部材140の軸上端面に接触し、さらにピストン81が前進すると押圧部材140がピストン81の先端81cに押されてピストン81と一体的に前進を開始する。押圧部材140が前進すると背板185の端面が上側磁石170の端面と離れて、相互の磁気的吸着力は減衰するが、まだ磁気的吸着力が残っているので、押圧部材140が自由落下してしまうことはなく、ピストン81の先端81cと一体的になったまま、前進を続ける。
押圧部材140が前進すると、Eピン180も前進し、当初、Eピン180の先端端面は、貫通穴167内を下方に前進した後、貫通穴167から突出し始める。すると、前進したEピン180先端端面が回転部材100の本体部101の上底側段部端面101aと接触し、そのまま回転部材100を下方に押し出す。回転部材100はセンターボス105がセンターリング187と嵌合しているので、センターボス105の外径とセンターリング187の内径とが摺動しながら、回転部材100は真下方向に直進していく。直進が継続すると、当初、センターボス105の外径とセンターリング187の内径とは相互のストレート部に接触していたのが、どちらかのR面取り部に到達し、R面取り部に到達したところから、接触を終了して、機械的ガイドを失っていく。センターボス105の外径とセンターリング187の内径とは、全周について同時に接触状態が失われるわけではなく、微視的には一部は接触状態にあって、残りはすでにどちらかのR面取り部に到達しているため、すでに非接触状態にあるという接触・非接触の混在状態が、全周に渡って非接触となる前段階として存在する。
その時、回転部材100は回転中であるため、遠心力を受けている。そのため、上記の接触状態にある領域の一部を支点にして、回転部材100が図の紙面内に回転し、回転部材100の導入軸102の先端を首を振るように回転の軸の外に飛び出そうという力が働く。つまり、回転部材100が回転軸に対して傾き始めることになる。
しかし、本実施形態では、センターボス105の外径より外側にEピン180が3等配以上位置に存在するため、Eピン180先端端面がストッパーとなって回転部材100が上記のように傾くことができない。そのため、回転部材100は回転の軸から軸を逸脱することなく、直下に押し出されていく。図8は、センターボス105とセンターリング187とが接触状態から非接触状態に変化する、その瞬間の状況を示している。
図9はピストン81が所定距離を前進して、停止した瞬間を示している。ピストン81の先端81cと押圧部材140の軸部143の端面とが接触しているが、押圧部材140のフランジ部141の端面と下側すべり軸受155の端面との間にはまだ距離が設けてあるため、ピストン81が押圧部材140を押し切る前に押圧部材140と下側すべり軸受155とが衝突するということはない。ピストン81は停止しているので、押圧部材140は下方への初速度を持って、自由落下し始めるが背板185が上側磁石170との吸着力を残しているのでそれがブレーキとなって、ピストン81の先端81cから押圧部材140の軸部143の端面がわずかに離れたところで押圧部材140は停止する。
Eピン180の先端は、前進運動を開始する前は、下側磁石ハウジング165の貫通穴167の途中に位置しているので、押圧部材140が前進した距離よりも、Eピン180先端の突出距離はわずかに小さい。ピストン81が前進して停止するまでは、Eピン180先端端面は回転部材100を押す推力を有している。回転部材100のセンターボス105がセンターリング187から離れた時点で、回転部材100が初速度を持った自由落下を開始するが、それまでは、等配位置に配置されたEピン180の先端のいずれにも接触したまま、回転の軸と同軸を保ちながら回転部材100は前進する。自由落下開始後もその状態が維持されるので、図10に示すように、回転部材100の導入軸102はタッチダウン軸受120の内輪121と接触することなく、内輪端面と回転部材100の下凸部104の端面とが衝突接触するまで自由落下し、タッチダウンする。
次に、図11に示すように、タッチダウンした回転部材100は自身の軸周りに回転していて、軸受120の内輪121の端面と回転部材100の下凸部104の端面とが摺動し、内輪121が回転し始める。両端面は、相対速度を持っているので、その影響により、軸受内径と回転部材100の導入軸102の外径とが接触するまで、回転部材100は内輪121の端面上を移動する。その後、回転部材100と内輪121とが一体となって、軸受120の軸周りに回転し始めて、そのまま、しばらく回転が継続した後、軸受の摩擦によって回転部材100を載せた内輪121は停止し、タッチダウン軸受試験のタッチダウン1回分が終了する。
このように第2実施形態のタッチダウン軸受の試験装置によれば、接続機構50は、回転部材100のセンターボス105と嵌合して、回転状態にある回転部材100の半径方向への変位を規制するセンターリング187を備え、落下機構70は、センターリング187と回転部材100のセンターボス105との嵌合状態を解除するEピン180を備え、センターリング187の内径より大きいピッチ円径でEピン180が配置されているので、回転部材100が落下中に傾くことなく、タッチダウン軸受120の内輪121の端面上へのタッチダウンをより安定的に行うことができる。
本発明のタッチダウン軸受の試験装置の有用性を確認するため、潤滑剤の有無によるタッチダウン軸受の性能試験を、本発明のタッチダウン軸受の試験装置を用いて実施した。試験装置及び試験軸受の仕様は、以下のものを用いた。
・試験装置回転部材の重量:一定重量
回転部材の導入軸外径:5mm
回転部材の落下距離:13mm
回転速度:10000min−1
環境:常圧
・試験軸受材質:SUS440C製
軸受形式:アンギュラ玉軸受、保持器なし(総ボール仕様)
内輪内径:6mm
潤滑被膜:構成1:潤滑被膜なし、試験軸受個数(2個)
構成2:MoS2系固体潤滑被膜、試験軸受個数(7個)
被膜部位:転動体
なお、本試験は、タッチダウン軸受の試験装置の有用性判定のために行ったので、各試験は、常圧環境で実施した。タッチダウンの成功の可否は、惰性回転中に玉つまりなどの異常が発生しないこと、惰性回転時間が2分間以上であること、のいずれも満足する場合、成功と判断した。そして、2種類のタッチダウン軸受の性能に、差が検出されるか否かで、試験装置の有用性を判定した。
図12は、試験結果であり、潤滑被膜のない構成1の試験用タッチダウン軸受は、2個とも判定基準をクリアできなかったのに対して、転動体にMoS2系固体潤滑被膜が施された構成2の7個のタッチダウン軸受は、11回〜21回のタッチダウンが可能であった。
以上の結果から、本発明のタッチダウン軸受の試験装置によって、タッチダウン軸受のタッチダウン性能を検証可能であることが実証された。
尚、本発明は、前述した実施形態及び実施例に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
例えば、回転駆動機構の構成は、回転駆動モータの駆動力を回転駆動機の回転駆動機軸に伝達可能な構成であれば、本実施形態に限定されるものでない。
具体的に、回転導入機は、回転駆動機構と一体式、或いは、回転駆動機構を同軸的に内蔵か、直接接続されて、外部に回転駆動機構を必要とせず、自立回転できるものであってもよい。
また、接続機構の構成は、本実施形態の磁石に限定されるものでない。
例えば、接続機構は、弾性部材(ゴム、樹脂、エラストマー、バネ、オイル等の液体媒体等)の弾性力を使用して、回転部材の嵌合凸部を内径把持又は外径把持するものであってもよい。或いは、接続機構は、電磁石を用いるものでもよい。この場合、電磁石への供給電力量を変更することで、回転部材の重量に応じた吸着力に調整し、回転部材の重量を任意に変化させたタッチダウン試験が可能となる。
さらに、回転部材の嵌合凸部と嵌合する嵌合凹部は、第1実施形態のガイドリングと磁石ホルダの組み合わせや、第2実施形態のセンターリングに限定されるものでない。
また、回転導入機の一対の軸受は、封止機構(差動排気シール、磁気シール、磁気カッ
プリング等)により、常圧側に配置されるものであってもよい。その場合、軸受は、真空環境中に配置されないので、軸受の潤滑剤で真空環境を汚染することがなくなる。
また、本発明の回転部材は、落下物重量を確保するための本体部とタッチダウン軸受の内径に対する落下ガイドとなる導入軸とを有するもので、こま型形状であれば良く、必ずしも本体部は上記に記載した略台形形状である必要はない。本体部が略台形形状であると、回転部材の重心が、よりタッチダウン軸受に近くなるので、タッチダウン試験をより安定的に繰り返し行うことができる。