以下、本発明の記録媒体製造装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の記録媒体製造装置(第1実施形態)の主要部を示すブロック図である。図2は、図1に示す記録媒体製造装置で製造される記録媒体の一例を示す平面図である。図3は、図2中のA−A線断面図である。図4および図5は、それぞれ、図1に示す記録媒体製造装置で記録媒体を製造する過程を順に示す垂直断面側面図である。なお、以下では、説明の便宜上、互いに直交する3つの座標軸、すなわち、x軸、y軸およびz軸が描かれた図面がある。この図面では、x軸とy軸を含むxy平面が水平方向となっており、z軸が鉛直方向となっている。また、x軸に平行な方向を「x軸方向(第1の方向)」とも言い、y軸に平行な方向を「y軸方向(第2の方向)」とも言い、z軸に平行な方向を「z軸方向(第3の方向)」とも言う。また、各方向の矢印が向いた方向を「正」、その反対方向を「負」と言う。また、座標軸が描かれた図面では、その上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言うことがある。また、座標軸が描かれた図面では、その左側を「上流側」、右側を「下流側」と言うことがある。
本発明の記録媒体製造装置1は、少なくとも1つの材料供給ユニット2と転写部134とを含むインク受容層形成部13と、表面性状処理部14とインク受容層固化部15とを含む後処理部20と、搬送部16と、制御部11と、を備え、基材901上にインク受容層902を形成して記録媒体90を製造する装置である。ここで、材料供給ユニット2は、貯留部21と、攪拌機(アジテーター)22と、供給ローラー23と、担持体24と、ブレード25と、ハウジング26と、を有している。表面性状処理部14は、均し処理部3と、加圧処理部4と、半固化処理部5と、を有している。インク受容層固化部15は、固化ローラー151と、ヒーター152と、を有している。制御部11は、CPU(中央演算処理部)111と、記憶部112と、を有している。
すなわち、本発明の記録媒体製造装置1は、セルロース繊維と樹脂とを含む繊維含有材料を貯留する貯留部21と、繊維含有材料を担持する担持体24と、を含む少なくとも1つの材料供給ユニット2と、担持体24に担持された繊維含有材料を被転写体(基材901)に静電転写する転写部134と、被転写体(基材901)に静電転写された繊維含有材料(インク受容層902)に対して後処理を行なう後処理部20と、を有する。
このような本発明によれば、後述するように、感光体を省略することができ、よって、記録媒体製造装置1をできる限り簡単な構成のものとすることができる。また、繊維含有材料を担持体24から被転写体(基材901)に静電転写することができる。これにより、後述するように、基材901に付着した繊維含有材料の付着量にばらつきが生じるのを防止することができる、すなわち、基材901に繊維含有材料を過不足なく付着することができる。その結果、当該繊維含有材料で構成されたインク受容層902を、厚さが均一なものとして安定して形成することができる。また、材料供給ユニット2を貯留部21や担持体24ごと交換することもできる。
また、記録媒体製造装置1で製造される記録媒体90の一例として、図2に示す記録媒体90がある。図3に示すように、記録媒体90は、シート状の基材901と、基材901上に形成されたインク受容層902と、を有している。そして、未使用状態の記録媒体90は、インク受容層902に印刷を施して使用することができる。この印刷により、インク受容層902には、各種情報が記録されることとなる。このようにインク受容層902は、各種情報が記録される「記録層」と言うこともできる。なお、各種情報には、例えば、文字、記号、図形、模様、色彩またはこれらの組み合わせ等が含まれる。
また、インク受容層902には、インク受容層902に関する情報を含んだマーキング部も記録することができる。マーキング部は、バーコード(1次元バーコード)であってもよいが、QRコード(2次元コード)(「QRコード」は登録商標)であるのがより好ましい。
また、印刷が施されて使用済みとなった記録媒体90が例えば不要となった場合には、この記録媒体90は、古紙として再利用される。この場合、記録媒体90からインク受容層902を除去して基材901を得る。そして、基材901上にインク受容層902を再度形成することにより、未使用状態の記録媒体90が再生される(製造される)。なお、基材901としては、特に限定されず、例えば、使用済みとなった記録媒体90からインク受容層902を除去したものであってもよいし、一般的に市販されているPPC(Plain Paper Copier)用紙であってもよい。また、インク受容層902の除去は、切削、スクレイプ、研削および研磨のうちの少なくとも1つで行なうことができる。
まず、記録媒体製造装置1の各部の構成について説明する前に、記録媒体90について説明する。
前述したように、記録媒体90は、基材901と、インク受容層902と、を有している。
基材901は、例えば、前記PPC用紙である。なお、基材901は、古紙を解繊して製造されたリサイクルペーパーであってもよいし、OHP(Over Head Projector)に用いるOHPシート(トレンスペアレンシ)であってもよい。基材901は、このように可撓性を有するものであるが、これに限定されず、剛体であってもよい。また、図2に示す構成では、基材901の平面視での形状(基材901の厚さ方向からみた形状)は、長方形であるが、これに限定されない。基材901が平面視で長方形の場合、そのサイズとしては、特に限定されず、例えば、A判サイズであってもよいし、B判サイズであってもよい。
基材901は、平面視で、基材901の縁部の少なくとも一部に、インク受容層902が設けられていない余白部903を有している。図2に示す構成では、余白部903は、基材901の縁部の全周にわたって帯状に設けられている。このような余白部903が設けられていることにより、例えば記録媒体90を再利用する際に、インク受容層902を除去する場合、余白部903からインク受容層902を容易に除去することができる。
なお、余白部903の幅は、例えば、1mm以上10mm以下が好ましく、3mm以上7mm以下がより好ましい。余白部903の幅が前記下限値以上であれば、余白部903からインク受容層902を容易に除去することができる。また、余白部903の幅が前記上限値以下であれば、基材901上でのインク受容層902の面積を、印刷可能な程度に十分に確保することができる。なお、余白部903は、基材901の縁部の全周にわたって設けられているが、これに限定されず、基材901の縁部の一部に設けられていてもよい。
基材901上には、インク受容層902が設けられている。インク受容層902は、図3に示す構成では基材901の一方側の面(図3中の上側の第1面905)に設けられている。また、基材901の平面視での形状が長方形である場合、インク受容層902の平面視での形状も長方形であるのが好ましい(図2参照)。
インク受容層902は、インクジェット方式によって(例えばインクジェットプリンターによって)印刷される部分であり、セルロース繊維と、セルロース繊維の少なくとも一部を被覆している疎水性材料とを含む複合体(繊維含有材料)で構成された繊維含有層である。このような繊維含有層がインクを受容するインク受容層902であることにより、インク受容層902は、インクジェットプリンターの印刷ヘッドから吐出されたインクを容易に受容し浸透させることができる。その結果、インク受容層902に印刷が施されることとなる。前述したように、インク受容層902には、印刷によって例えば文字等の各種情報が記録される。そして、インク受容層902の構成材料である複合体は、情報の記録に供される材料であるため、「情報記録材料」と言うこともできる。
インク受容層902の厚さは、例えば、20μm以上100μm以下が好ましく、30μm以上70μm以下がより好ましい。インク受容層902の厚さが前記下限値以上であれば、インクジェットプリンターによって吐出されたインクがインク受容層902の下側の基材901にまで浸透することを抑制することができる。また、インク受容層902の厚さが前記上限値以下であれば、記録媒体90の製造コストを抑えることができる。なお、例えば、インク受容層902の厚さを50μmよりも厚くした場合には、インク受容層902でのインクの吸収性および保持性がより優れた記録媒体90を得ることができる。
インク受容層902は、セルロース繊維と、セルロース繊維の少なくとも一部を被覆している疎水性材料とを含む複合体(繊維含有材料)で構成されている。インク受容層902は、後述するように、電子写真方式に類する方式による静電塗布(静電気力を利用した塗布)により、複合体を基材901上に付着させて、加圧加熱されることにより形成される。セルロース繊維は、セルロースによって構成されている繊維である。セルロース繊維は、天然繊維であってもよいし、再生繊維であってもよいし、半合成繊維であってもよい。言い換えると、セルロース繊維は、例えば、バージンパルプ由来のものであってもよいし、紙等(古紙、再生紙等を含む)のセルロース製品由来のものであってもよいし、上記のようなセルロースを含む材料に対し化学処理を施すことにより得られた半合成繊維であってもよい。疎水性材料がセルロース繊維を被覆する前の状態において、セルロース繊維は、粉体状の繊維であってもよい。
なお、本発明において、セルロース繊維とは、化合物としてのセルロース(狭義のセルロース)を主成分とし繊維状をなすものであればよく、セルロース(狭義のセルロース)の他に、ヘミセルロース、リグニンを含むものであってもよい。
インク受容層902に含まれるセルロース繊維の大きさは、例えば、平均(個数平均)で長さ(長径)が1μm以上100μm以下、幅(短径)が1μm以上30μm以下であるのが好ましく、長さが5μm以上30μm以下、幅が5μm以上20μm以下であるのがより好ましい。セルロース繊維の長さを前記下限値より小さくした場合には、セルロース繊維の製造コストが高くなってしまうが、上記の範囲であれば製造コストを抑えることができる。さらに、セルロース繊維の大きさが前記数値範囲内であれば、セルロース繊維の長さを乾式方式で調整することができる。セルロース繊維の長さが前記上限値以下であれば、セルロース繊維同士が絡み合うことを抑制することができる。これにより、インク受容層902を形成する複合体からなる粉体の帯電量の分布の均一性を向上させることができ、よって、複合体を基材901上に均一に静電塗布することができる。
なお、セルロース繊維の大きさ(長さ、幅)は、例えば、マルバーン社(Malvern Instruments)製の粒子画像分析装置モフォロギG3(Morphologi G3)を用いて測定される。この装置は、自動乾式分散ユニットにより試料を均一に分散させ、該試料の静止画像を解析することにより、粒度および粒子形状を測定する装置である。
インク受容層902を構成する繊維含有材料には、疎水性材料が含まれており、その疎水性材料がセルロース繊維の少なくとも一部を被覆している。そして、このインク受容層902に含まれるセルロース繊維の平均アスペクト比は、3未満であるのが好ましく、2以下であるのがより好ましい。セルロース繊維の平均アスペクト比が3未満であれば、セルロース繊維同士が絡み合うことを抑制することができる。これにより、インク受容層902を形成する複合体からなる粉体の帯電量の分布の均一性を向上させることができ、よって、複合体を基材901上に均一に静電塗布させることができる。また、セルロース繊維の平均アスペクト比を2以下とすることにより、インク受容層902を、印刷時にインクが浸透するのにより適した多孔質にすることができる。このように、特に、インク受容層902においてインクの吸収性を高くすることができる。なお、セルロース繊維の平均アスペクト比は、例えば、粒子画像分析装置モフォロギG3で測定されたセルロース繊維の平均長さを平均幅で割った値である。
なお、セルロース繊維の平均長さは、1μm以上100μm以下であるのが好ましい。これにより、記録媒体90では、乾式方式でセルロース繊維の長さを小さくすることができ、かつ、セルロース繊維同士が絡み合うことを抑制することができる。これにより、インク受容層902を形成する複合体からなる粉体の帯電量の分布の均一性を向上させることができ、よって、複合体を基材901上に均一に静電塗布することができる。
疎水性材料は、例えば、加熱処理によりセルロース繊維に融着されて、複合体を形成する。疎水性材料は、セルロース繊維の表面の一部を被覆していてもよいし、セルロース繊維の表面全面を被覆していてもよい。なお、疎水性材料は、全体としてセルロースよりも疎水性の高いものであればよく、例えば、セルロースよりも疎水性の低い成分(親水性の高い成分)を含んでいてもよい。
疎水性材料は、セルロース繊維同士を結着させて、多孔質のインク受容層902を形成する。また、疎水性を有することにより、インク受容層902の疎水性、親水性のバランスを調整することができ、インク受容層902にインクを付与した際のインクの過度な濡れ広がりや弾き等を抑制し、インク受容層902におけるインクの吸収性を優れたものとすることができる。さらに、疎水性材料は、セルロース繊維を被覆することにより、複合体の帯電特性の安定性を優れたものとすることができる。これにより、静電塗布によりインク受容層902を好適に形成することができる。例えば、疎水性材料が被覆されていないセルロース繊維では、環境(具体的には湿度)によって帯電性が変化しやすく、静電塗布によりインク受容層902を形成することが困難な場合がある。また、疎水性材料が被覆されていないセルロース繊維では、インクとの親和性が高く、インクがにじんでしまう場合がある。疎水性材料をセルロースに被覆させることにより、セルロース繊維の帯電性を安定させることができ、インクのにじみを抑えることができる。
疎水性材料は、少なくとも樹脂を含む。樹脂は、セルロース繊維同士を結着させて、多孔質のインク受容層902を形成する。セルロース繊維を被覆する前の状態において、樹脂は、粉体状のものであってもよい。なお、インク受容層902中の樹脂の含有量は、10質量%以上40質量%未満であるのが好ましく、15質量%以上30質量%以下であるのがより好ましい。
疎水性材料は、セルロース繊維同士を結着させる機能を有するとともに、セルロース繊維を被覆することにより、複合体の帯電特性を安定化させる機能も有している。また、疎水性材料は、概ね後述するような樹脂で構成されている。この樹脂は、正帯電性のものであってもよいし、負帯電性のものであってもよいが、負帯電性のものであるのが好ましい。負帯電性の樹脂は、一般に、帯電特性の安定性が特に優れている。また、負帯電性の樹脂は、正帯電性の樹脂に比べて、種類が豊富で、樹脂の特性(例えば、融点、ガラス転移温度、セルロース繊維との接合強度、帯電量、疎水性の程度等)の調整を容易に行うことができるとともに、記録媒体90の製造コストの抑制等の観点からも有利である。
疎水性材料を構成する樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等を用いることができるが、熱可塑性樹脂を用いるのが好ましい。特に、疎水性材料が熱可塑性樹脂を含むものであると、一般に、より安定した帯電特性(特に、負帯電性)が得られる。なお、疎水性材料が硬化性樹脂を含むものであると、記録媒体90の耐熱性、耐久性等を特に優れたものとすることができる。よって、疎水性材料としては、熱可塑性樹脂を単独で含むものの他、熱可塑性樹脂と硬化性樹脂とを含むものでもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、AS樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66等のポリアミド(ナイロン)、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは、熱可塑性樹脂としては、ポリエステルまたはこれを含むものを用いる。
熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば、50℃以上200℃以下であるのが好ましく、55℃以上160℃以下であるのがより好ましい。熱可塑性樹脂のガラス転移温度が前記下限値以上であれば、摩擦程度の加熱でインク受容層902が剥がれることを抑制することができ、インク受容層902の強度が低下することを抑制することができる。熱可塑性樹脂のガラス転移温度が前記上限値以下であれば、例えばインク受容層902となる複合体を加熱加圧して固着させる際に、記録媒体90を前記上限値よりも高い温度まで加熱する必要がなく、セルロース繊維が熱によりダメージを受けることを抑制することができる。また、前述したようにインク受容層902を剥離する場合にも、インク受容層902を加熱により軟化させることができ、その際、記録媒体90を前記上限値よりも高い温度まで加熱する必要がない。
硬化性樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられ、より具体的には、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂(ポリウレタン)、アクリル樹脂等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
インク受容層902(繊維含有層)中の樹脂(熱可塑性樹脂)の含有量をWaとしたとき、Waは、10質量%以上40質量%未満であるのが好ましく、15質量%以上30質量%以下であるのがより好ましい。含有量Waが前記下限値以上であれば、セルロース繊維の結着力を確保することができ、セルロース繊維がインク受容層902から脱落することを抑制することができる。含有量Waが前記上限値未満であれば、インク受容層902の疎水性が高くなりすぎてインクを弾いてしまうことを抑制することができ、印刷品質を向上させることができる。複合体が基材901上に付着される前の状態であっても、複合体が基材901上に付着されてインク受容層902を形成している状態であっても、含有量Waは、前記数値範囲内であることが好ましい。
疎水性材料は、帯電制御剤(電荷制御剤)を含むものであってもよい。これにより、インク受容層902となる複合体は、安定した帯電性、より大きな帯電性を有することができる。なお、複合体が帯電制御剤を含んでいるか否かは、複合体の帯電量の変化の他、複合体の安息角の減少によっても確認することができる。帯電制御剤は、複合体が凝集することを抑制する凝集抑制剤としての機能を有していてもよい。疎水性材料中において、帯電制御剤は、通常、少なくともその一部が、前述した樹脂の表面に露出している。これにより、帯電制御剤を含むことによる効果がより効果的に発揮される。
帯電制御剤としては、例えば、シリカ(二酸化珪素)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、カテコールの金属塩、含金属ビスアゾ染料、ニグロシン染料、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、塩素化ポリエステル、ニトロフニン酸等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、帯電制御剤は、例えば、帯電特性の調整、疎水性の調整等を目的とする表面処理が施されたものであってもよい。帯電制御剤の表面処理には、例えば、シラン化合物を用いることができる。これにより、帯電制御剤に対して好適に疎水処理することができる。帯電制御剤の疎水処理に用いられるシラン化合物としては、例えば、トリメチルシラン、ジメチルシラン、トリエチルシラン、トリイソプロピルシラン、トリイソブチルシラン等のアルキルシラン類、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤等が挙げられる。
帯電制御剤の形態は、特に限定されないが、粒子状(微粒子状)をなすものであるのが好ましい。帯電制御剤の体積基準の平均粒子径(体積平均粒子径)は、例えば、1nm以上100nm以下であるのが好ましく、5nm以上50nm以下であるのがより好ましい。帯電制御剤の粒子径が前記数値範囲内であれば、より良好な帯電効果を得ることができる。さらに、帯電制御剤の粒子径が前記数値範囲内であれば、樹脂の表面により良好にコーティングを行なうことができる。なお、帯電制御剤の体積平均粒子径は、例えば、レーザー回折・散乱法や、動的光散乱法等により求めることができる。
帯電制御剤の含有量は、セルロース繊維および樹脂の混合物100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上10質量部以下であるのが好ましく、1質量部以上5質量部以下であるのがより好ましい。帯電制御剤の含有量の範囲が前記数値範囲内であれば、インク受容層902となる複合体は、より良好で安定した帯電性を発揮することができる。
疎水性材料は、白色顔料を含むものであってもよい。これにより、インク受容層902の白色度を好適に調整することができる。例えば、白色顔料によって、白色度が低い基材901に対しても、あるいは白色度の低いセルロース繊維を用いた場合でも、白色度の高いインク受容層902を形成することができ、印刷の見栄え(品質)を向上させることができる。
白色顔料の材料としては、例えば、炭酸カルシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、リトポン、酸化アルミニウム、酸化珪素、三酸化アンチモン、燐酸チタニウム、酸化亜鉛、鉛白、酸化ジルコニウム等の無機顔料やポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体等の有機微粉末等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは、白色顔料としては、二酸化チタンや炭酸カルシウムを用いる。
白色顔料の配合量としては、例えば、樹脂90質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であるのが好ましく、3質量部以上20質量部以下であるのがより好ましい。これにより、記録媒体90の製造コストの上昇を抑制しつつ、インク受容層902の白色度をより好適に高めることができる。白色顔料は、樹脂の表面、内部のいずれに配されていてもよい。
例えば、ポリエステル90質量部に対して、白色顔料である炭酸カルシウムを10質量部だけホッパー内で混合した後、二軸混練押出機に投入し溶融混練して白色の樹脂ペレットを製造した場合、この樹脂ペレットから形成されるインク受容層902は、より白色度の高いものとなる。
疎水性材料は、上記以外の成分を含むものであってもよい。例えば、疎水性材料は、白色顔料以外の顔料や染料を含んでもよい。この場合、静電塗布により、色紙を簡単に低コストで得ることができる。
また、インク受容層902を形成する複合体の平均帯電量の絶対値は、3μC/g以上であるのが好ましい。複合体の平均帯電量の絶対値が高い方が、静電塗布により、容易に複合体を基材901上に付着させてインク受容層902を形成することができる。なお、複合体の帯電量は、複合体同士を摩擦帯電させて測定することができる。帯電量の測定は、例えば、標準キャリアと称する粉体と複合体とを空気中で撹拌(混合)し、その粉体の帯電量を測定することにより行うことができる。標準キャリアとしては、例えば、日本画像学会から購入可能(正帯電極性または負帯電極性トナー用標準キャリア、「P−01またはN−01」として入手可能)な、フェライトコアを表面処理した球形キャリアで、正帯電極性トナー用または負帯電極性トナー用の標準キャリア、パウダーテック株式会社から入手可能なフェライトキャリア等を用いることができる。より具体的には、複合体の平均帯電量は、例えば、次のようにして求めることができる。上記キャリアを80質量%、および複合体を20質量%の混合粉体を、アクリル製の容器に投入し、60秒間100rpmで容器をボールミル架台に載せて回転させ、キャリアと複合体(粉体)との混合を行う。混合を行った複合体とキャリアとの混合物について吸引式小型帯電量測定装置(例えば、トレック社製「Model210Hs-2」)により測定することで、平均帯電量の絶対値を求めることができる。
例えば、平均長さ(長径)が18μm、平均幅(短径)が9μmのセルロース繊維と、ポリエステル樹脂(ガラス転移温度:56℃、分子量:10000)で構成され、粒径が1μm〜40μmの粉体とを、2:8(重量比)で空気中で混合した後、加熱処理によってポリエステル樹脂をセルロース繊維に融着させて複合化した。次いで、この複合化したものに、表面が疎水化処理された二酸化珪素微粒子を重量比で1.5%になるように加えて、卓上ブレンダーに投入し、翼端速度30m/sで60秒間攪拌処理した。なお、疎水化処理した無機微粒子の効果は、安息角の減少および帯電量の変化により確認することができる。通常、セルロース繊維は、比較的正帯電し易い材料であるが、ポリエステル樹脂と複合化し、この複合体を無機微粒子でコーティングすることにより負帯電し易くなる。この場合、平均帯電量は、−6μC/gとなる。
次に、記録媒体製造装置1の各部の構成について説明する。図1に示すように、記録媒体製造装置1は、制御部11と、材料供給ユニット2および転写部134を有するインク受容層形成部13と、表面性状処理部14およびインク受容層固化部15を有する後処理部20と、搬送部16と、を備えている。
制御部11は、記録媒体製造装置1の各部の作動を制御する制御装置である。この制御部11は、CPU(中央演算処理部)111と、記憶部112とを有している。記憶部112には、前記作動を制御する制御プログラムや各種データー等が記憶されている。
なお、図示はしないが、制御部11は、例えば、キーボードやタッチパネル等のような入力部と、LCDモニター等のような画像表示部とを有しているのが好ましい。後述する各部の作動条件は、制御プログラムに予め入力されていてもよいし、入力部を介してその都度入力されてもよい。また、この入力情報は、画像表示部を介して確認することもできる。また、制御部11には、入力部や画像表示部がそれぞれ接続される接続部が設けられていてもよい。
図4、図5に示すように、搬送部16は、インク受容層902が形成される以前の基材901、または、インク受容層902が形成された基材901(記録媒体90)を搬送するものであり、記録媒体90の製造前、製造中、製造後の各段階にわたって設けられている。
搬送部16は、搬送ローラー163を有している。この搬送ローラー163は、2つで1組となって、これらの間で基材901を挟持しつつ搬送するよう構成されている。また、各組の搬送ローラー163は、基材901の搬送方向に沿って間隔を置いて配置されている。なお、隣り合う各組の搬送ローラー163同士の間隔は、基材901のx軸方向(搬送方向)の長さよりも小さいのが好ましい。
そして、各搬送ローラー163がそれぞれ矢印α163方向に回転することによって基材901を搬送することができる。なお、本実施形態では、搬送部16は、全ての搬送ローラー163がモーターに接続された駆動ローラーである必要はなく、基材901の搬送が可能であれば、どの搬送ローラー163が駆動ローラーであるかについては任意である。また、搬送部16は、基材901を搬送する搬送速度を変更可能に構成されている。この変更方法としては、特に限定されず、例えば、搬送ローラー163に接続されるモーターに対して印加する電圧を調整する方法等が挙げられる。
また、図4に示すように、搬送部16には、インク受容層902が形成される以前の基材901が、トレイ17から供給される。この供給は、自動的に行なわれてもよいし、手動で行なわれてもよい。また、搬送部16には、基材901を1枚ごとに(毎葉に)供給するのが好ましい。また、インク受容層902が形成された基材901は、その搬送方向下流側で搬送部16から別途回収される。この回収も、自動的に行なわれてもよいし、手動で行なわれてもよい。
基材901の搬送方向の途中には、インク受容層形成部13が配置されている。図4に示すように、インク受容層形成部13は、繊維含有材料(インク受容層902となる複合体)によりインク受容層902を基材901に形成する装置である。インク受容層形成部13は、担持体24等を有する材料供給ユニット2と、転写部134と、を備え、静電塗布により、基材901上にインク受容層902を形成する装置である。
材料供給ユニット2は、繊維含有材料を基材901に移動付着させることができる。材料供給ユニット2は、貯留部21と、攪拌機(アジテーター)22と、供給ローラー23と、担持体24と、ブレード25と、ハウジング26と、を有している。
貯留部21は、粉体状の繊維含有材料を内部に貯留している。
攪拌機22は、貯留部21内で矢印α22方向に回転することができる。これにより、貯留部21内で繊維含有材料を攪拌し、帯電させることができる。この繊維含有材料は、矢印α23方向に回転する供給ローラー23を介して、担持体24に供給される。
担持体24は、貯留部21から排出された繊維含有材料を担持するローラーである。この担持体24は、供給ローラー23を介して供給された繊維含有材料との間に電位差を有し、矢印α24方向に回転しつつ、繊維含有材料が静電付着する。なお、担持体24と供給ローラー23との電位差は、適宜設定される。また、この電位差の設定は、制御部11によって制御されている。また、担持体24は、その周速を変更可能に構成されている。この変更方法としては、特に限定されず、例えば、担持体24に接続されるモーターに印加する電圧を変更することにより可能である。
ブレード25は、担持体24上に付着した繊維含有材料の厚さ(付着量)を調整して薄膜化し、摩擦帯電させる。
ハウジング26は、例えば箱状をなし、その内側に、攪拌機22を内蔵した貯留部21と、供給ローラー23と、担持体24と、ブレード25とを一括して収納する収納部である。
転写部134は、担持体24に担持された繊維含有材料を、被転写体である基材901に静電転写するものである。転写部134は、矢印α24方向と反対の矢印α134方向に回転するアイドルローラーとなっている。転写部134は、担持体24の下側に配置され、担持体24との間で基材901を挟持することができる。そして、この状態で、担持体24が矢印α24方向に回転するとともに、転写部134が矢印α134方向に回転することができる。また、転写部134は、担持体24との間で、間隙(空間)である転写ニップ135を形成している。転写ニップ135では、転写部134と担持体24との間に電位差が生じている。これにより、担持体24上の繊維含有材料が転写部134側に静電的に移動して、基材901に安定して転写される。そして、転写された繊維含有材料は、基材901の移動に伴って層状に形成されて、インク受容層902となる。また、転写部134は、搬送部16の搬送ローラー163とともに基材901を搬送する搬送ローラーとしての機能を有している。
ところで、担持体として感光体を利用することが考えられる。あるいは、担持体(1次担持体)に担持された材料を、一旦、感光体(2次担持体)に担持して、感光体から基材に材料を転写するような構成も考えられる。感光体上に多種多様の形状の像を形成し、この像を基材に転写する場合に有効である。
しかしながら、感光体は特性劣化による短寿命の欠点がある。特に有機感光体の場合は経時劣化、曝露劣化が顕著であり、また低硬度のため粉体との摩耗による摩耗劣化(例えば、感光層が薄くなり帯電特性が低下したり、感光層の表面に筋状の傷が発生する)が問題となる。
一方、記録媒体製造装置1では、基材901上に形成されるインク受容層902は、その平面視での形状が長方形(または正方形)のような比較的単純な(簡単な)四角形状である(図2参照)。そして、このような平面形状を有するインク受容層902を継続して形成していく。従って、記録媒体製造装置1では、多種多様の形状の像を形成する必要性が低いため、前記感光体を省略し、繊維含有材料を担持体24から直接的に基材901に転写するものとすることができる。これにより、記録媒体製造装置1をできる限り簡単な構成のものとすることができる。
また、記録媒体製造装置1では、繊維含有材料を担持体24から基材901(被転写体)に静電転写している。特性劣化の激しい感光体を使用しないため、基材901に付着した繊維含有材料の付着量にばらつきが生じるのを防止することができる、すなわち、基材901に繊維含有材料を過不足なく付着することができる。さらに、担持体24は金属ローラーや表層に誘電体を有するローラーで構成され、劣化が非常に少なく長寿命である。その結果、当該繊維含有材料から得られるインク受容層902を、厚さが均一なものとして安定して形成することができる。
また、転写部134は、担持体24との間の電位差で生じる静電気力によって繊維含有材料を被転写体である基材901に転写することができる。このように静電気力を用いる(静電転写)という簡単な方法で、繊維含有材料を基材901に容易かつ適正に付着させることができる。また、静電転写を用いることは、記録媒体製造装置1の小型化や低騒音化にも寄与する。
前述したように、本実施形態では、担持体24上の繊維含有材料が転写される被転写体は、繊維含有材料とともに記録媒体90を構成する基材901である。これにより、基材901とインク受容層902とで構成された記録媒体90を迅速に製造することができる。
インク受容層形成部13に対して下流側、すなわち、x軸方向正側には、後処理部20が配置されている。後処理部20は、基材901に静電転写された繊維含有材料に対して後処理を行なうものであり、表面性状処理部14と、インク受容層固化部15と、を有している。
インク受容層形成部13で形成された直後のインク受容層902は、例えば筋ムラ等の各種のムラやうねり等(以下「筋ムラ」を代表する)が生じた状態となっている。このような状態は、その程度にもよるが、例えば、インク受容層902でのインクの受容を多少なりとも阻害する場合がある。そこで、ムラが生じたインク受容層902に対して表面性状を整える処理を行なう必要があり、この表面性状処理を表面性状処理部14で行なう。本実施形態では、表面性状処理として、インク受容層902の表面902aを均して平坦化する均し処理と、インク受容層902を加圧する加圧処理と、インク受容層902の表面902aを半固化する半固化処理とが含まれる。なお、インク受容層902にムラが生じる原因としては、例えば、インク受容層形成部13を構成する部品同士の組み立て誤差(例えば層形成時や転写時の駆動歯車ピッチの誤差)によるもの、転写時の放電によるもの、転写後の搬送振動でインク受容層902が崩れたことによるもの等が挙げられる。
図5に示すように、表面性状処理部14は、均し処理部3と、加圧処理部4と、半固化処理部5と、を有している。また、均し処理部3と、加圧処理部4と、半固化処理部5とは、基材901の搬送方向に沿ってこの順に配置されている。
表面性状処理は、前述したようにインク受容層902(層状をなす繊維含有材料)の表面902aを均して平坦化する、すなわち、平滑化する処理(均し処理)を含む。この均し処理により、インク受容層902の表面902aを平滑な状態とすることができる。
表面性状処理部14では、均し処理を均し処理部3で行なう。図5に示すように、均し処理部3は、均しローラー31と、支持ローラー32とを有している。
均しローラー31は、その駆動源であるモーター(図示せず)によって、矢印α31方向に回転することができる。また、均しローラー31は、インク受容層902の表面902aに接することができる。そして、均しローラー31は、表面902aとの接点での接線方向の速度が、基材901の搬送速度よりも小さくなるよう回転が調整されている。これにより、インク受容層902の表面902aは、x軸方向正側に移動するのに従って、筋ムラを形成する微小な凹凸等が潰されるとともに、繊維含有材料が上流側に押し戻される。これにより、インク受容層902の表面902aは、うねりや凹凸等が均されて減少し、平滑化(平坦化)される。また、インク受容層902から押し戻された材料は、別途回収されて、破棄されてもよいし、再利用されてもよい。また、均しローラー31の回転は、制御部11によって制御されている。
なお、均しローラー31の外周面は、例えば、ステンレス鋼等のような金属材料で構成されているのが好ましい。また、均しローラー31の外周面の表面粗さ(中心線平均粗さRa)は、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上100μm以下であるのが好ましい。
また、インク受容層902には、均しローラー31との摩擦によって生じた静電気が帯びる。そこで、均しローラー31は、アース線33を介して接地されている。これにより、均しローラー31を除電することができ、よって、インク受容層902を構成する繊維含有材料の粉体が均しローラー31に付着するのを防止することができる。このように表面性状処理部14では、インク受容層902(繊維含有材料)の搬送中に、インク受容層902に対して除電を行なうことができる。
支持ローラー32は、均しローラー31の下側に配置されている。この支持ローラー32は、矢印α32方向に回転するアイドルローラーである。これにより、支持ローラー32は、インク受容層902が形成された基材901を下方から支持することができ、よって、インク受容層902の表面902aに対する均し処理(平坦化処理)を十分に行なうことができる。なお、支持ローラー32は、搬送部16の搬送ローラー163とともに基材901を搬送する搬送ローラーとしての機能を有している。
表面性状処理は、前述したようにインク受容層902(層状をなす繊維含有材料)を加圧する処理(加圧処理)を含む。この加圧処理により、インク受容層902内で繊維含有材料同士が結合することとなる。
表面性状処理部14では、加圧処理を加圧処理部4で行なう。図5に示すように、加圧処理部4は、外周部411がステンレス鋼等のような金属材料で構成された2つの加圧ローラー41を有するカレンダー機である。これら2つの加圧ローラー41は、上下に配置されており、矢印α41方向に回転するアイドルローラーである。そして、2つの加圧ローラー41の間をインク受容層902が通過する際に、インク受容層902に対して層厚が減少する方向に加圧することができる。これにより、加圧処理が施され、よって、インク受容層902内で繊維含有材料同士が結合する。また、加圧されたインク受容層902内では、繊維含有材料の密度が増加するとともに、その密度も均一化される。なお、2つの加圧ローラー41がインク受容層902を加圧する力は、例えば、好ましくは5kg以上200kg以下であり、より好ましくは20kg以上80kg以下である強加圧となっている。なお、インク受容層902に対する加圧は、本実施形態では1回であるが、これに限定されず、例えば複数回にわたって段階的に行なわれてもよい。また、下側の加圧ローラー41は、搬送部16の搬送ローラー163とともに基材901を搬送する搬送ローラーとしての機能を有している。また、2つの加圧ローラー41は、中心間距離が可変に構成されていてもよい。これにより、加圧力を調整することができる。この調整も、制御部11によって制御される。
表面性状処理は、前述したようにインク受容層902(層状をなす繊維含有材料)の表面902aを半固化する処理(半固化処理)を含む。この半固化処理により、インク受容層902の表面902aに薄い膜が形成されて、インク受容層902の形状維持等に寄与する。
表面性状処理部14では、半固化処理を半固化処理部5で行なう。図5に示すように、半固化処理部5は、チャンバー51と、ヒーター52とを有している。
チャンバー51は、断熱材で構成された断熱壁511を有している。また、チャンバー51は、入口512と、出口513とを有している。これにより、基材901がインク受容層902とともにチャンバー51内を通過することができる。
ヒーター52は、チャンバー51内の上側に配置されている。ヒーター52は、通電により発熱する発熱体で構成されているのが好ましく、例えば、ハロゲンヒーター(ハロゲンランプ)を用いることができる。これにより、インク受容層902は、チャンバー51内を通過する間に上側から非接触で加熱される。この加熱により、インク受容層902の表面902a側では、熱可塑性樹脂が一旦溶融される。そして、インク受容層902がチャンバー51内から出ると、前記溶融した熱可塑性樹脂は、例えば自然に冷却されて、結着し、固化する。この固化により、表面902aには、インク受容層902の層厚に対して薄い膜が形成される。この膜化により、例えば、表面性状処理部14の次に配置されたインク受容層固化部15との接触で生じる静電気でインク受容層902から繊維含有材料が飛び散ったり、搬送による振動でインク受容層902の形状が崩れてしまったりするのを防止することができる。
なお、半固化処理部5での加熱温度は、例えば、熱可塑性樹脂の前記ガラス転移温度以上であり、熱可塑性樹脂の好ましくは融点以上である。この加熱温度は、制御部11によって制御される。また、半固化処理部5での加熱時間は、例えば、チャンバー51内を基材901(インク受容層902)が移動する距離と、基材901の搬送速度との関係で求められる。
前述したように、基材901(被転写体)に静電転写された繊維含有材料は、層状をなしている。そして、後処理部20の表面性状処理部14は、後処理として、層状をなす繊維含有材料、すなわち、インク受容層902の表面性状を整える各種の表面性状処理を行なうことができる。これにより、インク受容層902は、インクの受容を安定して行なうことができるものとなる。
図5に示すように、表面性状処理部14に対して下流側、すなわち、x軸方向正側には、インク受容層固化部15が配置されている。インク受容層固化部15は、2つの固化ローラー151を有している。これら2つの固化ローラー151は、上下に配置されており、矢印α151方向に回転する。また、各固化ローラー151には、それぞれ、ヒーター152が内蔵されている。ヒーター152は、通電により発熱する発熱体で構成されているのが好ましく、例えば、ハロゲンヒーター(ハロゲンランプ)を用いることができる。そして、2つの固化ローラー151の間をインク受容層902が通過する際に、インク受容層902を加熱しつつ、インク受容層902に対して層厚が減少する方向に加圧することができる。これにより、インク受容層902内の熱可塑性樹脂を全体的に十分に溶融することができる。そして、インク受容層902が2つの固化ローラー151の間を通過した後は、前記溶融した熱可塑性樹脂は、例えば自然に冷却されて、結着し、固化する。これにより、過不足なく固化したインク受容層902が形成される。なお、2つの固化ローラー151がインク受容層902を加圧する力は、例えば、好ましくは1kg以上100kg以下であり、より好ましくは10kg以上30kg以下である。また、インク受容層902を加熱する温度は、好ましくは100℃以上200℃以下であり、より好ましくは120℃以上180℃以下である。なお、インク受容層902を加熱する温度は、前記数値範囲に限定されず、熱可塑性樹脂の種類に応じて、変更することもできる。この場合、熱可塑性樹脂が軟化または溶融するまで加熱するのが好ましい。
前述したように、基材901(被転写体)に静電転写された繊維含有材料は、層状をなしている。そして、後処理部20のインク受容層固化部15は、後処理として、層状をなす繊維含有材料、すなわち、インク受容層902を固化する固化処理を行なうことができる。これにより、インク受容層902は、過不足なく固化したものとなり、よって、例えばインクジェットプリンターに用いられた場合、印刷に十分耐え得る程度の強度を有するものとなる。
このように記録媒体製造装置1により製造された記録媒体90は、例えばインクジェット方式で印刷が良好に行なわれる。また、記録媒体90は、トナーを用いるレーザープリンターやコピー機でも印刷が良好に行なわれる。また、記録媒体90は、手書きでも良好に用いられる。手書きの場合、例えば、油性インクや水性インクのペン、鉛筆等を用いることができる。
また、記録媒体製造装置1は、例えば、オフィス、工場、家庭やスーパー、コンビニエンスストア等のような店舗、学校、病院、駅、公民館等のような公共機関等、いかなる場所にも設置することができる。
<第2実施形態>
図6および図7は、それぞれ、本発明の記録媒体製造装置(第2実施形態)で記録媒体を製造する過程を順に示す垂直断面側面図である。
以下、これらの図を参照して本発明の記録媒体製造装置の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
図6に示すように、本実施形態では、担持体24上の繊維含有材料が転写される被転写体は、繊維含有材料を搬送する搬送ベルト161(ベルト)である。そして、記録媒体製造装置1は、搬送部16が搬送ベルト161(ベルト)を有するものとなっている。そして、搬送ベルト161に転写された繊維含有材料は、搬送ベルト161の駆動に伴って下流側に移動することとなり、帯状に形成される。この帯状の繊維含有材料は、インク受容層902となる。このように本実施形態の記録媒体製造装置1では、被転写体が搬送ベルト161となっている。これにより、基材901が省略され、インク受容層902で構成された記録媒体90を得ることができる。また、搬送部16は、搬送ローラー162aと、搬送ローラー162bと、複数の搬送ローラー162cも有している。
搬送ベルト161は、本実施形態では無端ベルトで構成されており、繊維含有材料を載置したままx軸方向正側に向かって搬送することができる。この搬送ベルト161は、繊維含有材料の搬送に耐え得る程度の十分な強度を有し、無端ベルトとして機能する程度の十分な柔軟性を有するのが好ましい。また、搬送ベルト161は、少なくとも表側の面が中・高抵抗(体積抵抗率107〜1011Ω・cm)を有する樹脂で構成されているのが好ましい。このような構成材料としては、特に限定されず、例えば、フッ素系樹脂にカーボンブラックが混練されたものを用いることができる。これにより、インク受容層形成部13では、繊維含有材料の粉体が電位差で搬送ベルト161に転写され、さらに搬送ベルト161上で静電保持される。また、搬送ローラー162bを低抵抗(体積抵抗率106Ω・cm以下)もしくは導電にして接地することによる、搬送ベルト161の折り返し部161aでの静電保持力の減少と、折り返し部161aの曲率とにより、繊維含有材料を搬送ベルト161から剥離することができる。このように、インク受容層902を構成する繊維含有材料の粉体が搬送ベルト161上に残留するのを防止することができる。また、繊維含有材料で構成されたインク受容層902(記録媒体90)を搬送ベルト161から容易に剥離することができる。
このような搬送ベルト161は、搬送ローラー162aと搬送ローラー162bとに掛け回されている。搬送ローラー162aは、例えば減速機を介してモーターに接続された主動ローラーである。搬送ローラー162bは、搬送ローラー162aの回転力が搬送ベルト161を介して伝達されて回転する従動ローラーである。本実施形態では、搬送ベルト161(搬送部16)による繊維含有材料の搬送方向の上流側に搬送ローラー162aが配置され、下流側に搬送ローラー162bが配置されているが、これに限定されず、例えば、上流側に搬送ローラー162bが配置され、下流側に搬送ローラー162aが配置されていてもよい。搬送ローラー162aと搬送ローラー162bとの間には、複数の搬送ローラー162cが間隔を置いて配置されている。これらの搬送ローラー162cは、アイドルローラーである。そして、搬送ローラー162aと搬送ローラー162bと各搬送ローラー162cがそれぞれ矢印α162方向に回転することにより、搬送ベルト161上に載置された繊維含有材料を搬送することができる。
なお、搬送部16は、繊維含有材料を搬送する速度(搬送速度)V16を変更可能に構成されている。この変更方法としては、特に限定されず、例えば、減速機を介して搬送ローラー162aに接続されたモーターに対する印加電圧を調整する方法、減速機におけるギア比を変更する方法等が挙げられる。
図6に示すように、転写ニップ135(転写部134上)では、担持体24による繊維含有材料の搬送方向CD24と、搬送部16による繊維含有材料の搬送方向CD16とは同方向となっている。また、転写ニップ135では、担持体24は、その担持体24が担持した繊維含有材料を速度(周速)V24(第1速度V1)で搬送し、搬送ベルト161は、その搬送ベルト161に転写された繊維含有材料を速度V16(第2速度V2)で搬送するものである。そして、担持体24から搬送ベルト161に繊維含有材料が静電転写される際、担持体24による繊維含有材料の搬送方向CD24と、搬送ベルト161による繊維含有材料の搬送方向CD16とは、同方向であり、かつ、速度V24>速度V16(すなわち第1速度V1>第2速度V2)なる関係を満足するのが好ましい。このような大小関係により、繊維含有材料は、担持体24から搬送ベルト161に転写される際、転写ニップ135で一旦(一時的に)x軸方向負側に向かって寄せて集められて溜まることとなる。そして、転写ニップ135での繊維含有材料の溜まりが限界に達すると、この繊維含有材料は、下流側に搬送されて、層状となる。このような現象は、速度V24と速度V16との間に大小をつけるという簡単な構成で発現可能であり、当該現象により、インク受容層902をできる限り厚く形成することができる。なお、この現象によって形成されるインク受容層902の厚さとしては、例えば、10μm以上が可能であり、好ましくは10μm以上100μm以下が可能である。また、速度V24と速度V16との大小関係を満足させるのは、担持体24の回転速度(角速度)や搬送部16の搬送速度(主動ローラーである搬送ローラー162aの角速度)を調整することにより可能である。また、各速度調整は、制御部11によって制御されている。
また、速度V24と速度V16との大小関係は、次の2つの条件(2式)のうちの少なくとも一方を満足するのが好ましい。1つ目の条件は、|速度V24|/|速度V16|>1.2(すなわち、|第1速度V1|/|第2速度V2|>1.2)なる関係を満足することである。2つ目の条件は、|速度V24|/|速度V16|<15(すなわち|第1速度V1|/|第2速度V2|<15)なる関係を満足することである。このような条件を満足することにより、できる限り厚いインク受容層902の形成を安定して迅速に行なうことができる。
図7に示すように、搬送ベルト161には、下流側で搬送ローラー162bで折り返された折り返し部161aが形成されている。この折り返し部161aに対して、図7中の右下方には、巻き取り部19が配置されている。巻き取り部19は、帯状に製造された記録媒体90(帯状に形成されたインク受容層902)を巻き取るものである。この巻き取り部19は、矢印α19方向に回転するローラーである。そして、記録媒体90の下流側の端部を巻き取り部19に固定した状態で、巻き取り部19が回転することにより、記録媒体90をロール状に巻き取ることができる。そして、この記録媒体90を使用する際には、ロール状態を展開して、適宜切断されて使用される。なお、巻き取り部19は、記録媒体90を巻き取る巻き取り速度も変更可能である。この変更方法としては、特に限定されず、例えば、巻き取り部19に接続されたモーターに対する印加電圧を調整する方法等が挙げられる。
また、記録媒体90は、巻き取られるのに従って、搬送ベルト161から剥離されていく。なお、搬送ローラー162bの直径は、搬送ベルト161の折り返し部161aの曲率を大きくし記録媒体90を剥離し易くするため、小径であることが好ましい。例えば、20mm以下であるのが好ましく、10mm以上20mm以下であるのがより好ましい。さらに、搬送ベルト161の折り返し部161aでは、搬送ローラー162bを低抵抗(体積抵抗率106Ω・cm以下)もしくは導電にして接地することで、静電保持力を減少させることが好ましい。これにより、記録媒体90の搬送ベルト161からの剥離が円滑に行われる。
また、図7に示すように、記録媒体製造装置1は、記録媒体90(繊維含有材料)の搬送ベルト161(被転写体)からの剥離を促進する剥離促進部18を有する。剥離促進部18は、空気GS18を吹き出す吹出口181を有するファンである。吹出口181は、搬送ローラー162bと巻き取り部19との間に配置され、搬送ローラー162b側を向いている。これにより、搬送ベルト161の折り返し部161aで、搬送ベルト161と記録媒体90との間に空気GS18を流入させることができ、よって、搬送ベルト161と記録媒体90との剥離が容易となる。また、搬送ベルト161と記録媒体90との間に流入した空気GS18は、記録媒体90に当たる。これにより、記録媒体90は、冷却されてさらに固化されることとなり、搬送ベルト161からの剥離がさらに容易となる、すなわち、促進される。
また、搬送部16としては、搬送ベルト161を有する構成のものに限定されず、例えば、プラテン(ステージ)を有する構成のものであってもよい。
また、記録媒体製造装置1は、搬送方向CD24と搬送方向CD16とが同方向となるよう構成されているが、これに限定されず、搬送方向CD24と搬送方向CD16とが反対方向となるよう構成されていてもよい。
また、記録媒体製造装置1は、速度V24と速度V16との大小関係を規定して、インク受容層902を形成しているが、これに限定されない。例えば、インク受容層902の形成に際し、担持体24に担持されている繊維含有材料の単位面積当たりの重量、すなわち、目付量(単位:g/cm2)をW1、搬送ベルト161に静電転写された繊維含有材料の単位面積当たりの重量、すなわち、目付量(単位:g/cm2)をW2としたとき、重量W2/重量W1>1.0なる関係を満足してもよい。これにより、重量W1と重量W2との間に大小をつけるという簡単な構成で、繊維含有材料を担持体24から搬送ベルト161に比較的多く転写することができる。さらに、重量W2/重量W1<15なる関係を満足するのが好ましい。これにより、できる限り厚いインク受容層902の形成を安定して迅速に行なうことができる。なお、重量W1と重量W2との大小関係を満足させるには、例えば、担持体24での電位や転写部134での電位(または電界強度)を調整することにより可能である。そして、このような電位調整は、制御部11によって制御される。
<第3実施形態>
図8および図9は、それぞれ、本発明の記録媒体製造装置(第3実施形態)に対して材料供給ユニットを変位させる過程を順に示す垂直断面側面図である。
以下、これらの図を参照して本発明の記録媒体製造装置の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態では、材料供給ユニット2は、被転写体(基材901)への繊維含有材料の静電転写が可能な第1位置(図8に示す状態)と、第1位置から退避した第2位置(図9示す状態)とを取り得る。これにより、後述するように、材料供給ユニット2に対する各種メンテナンスが可能となる。
記録媒体製造装置1では、長期間使用を継続するに際し、例えば材料供給ユニット2に対して、保守、点検、清掃、材料(繊維含有材料)の補充、修理、整備、交換(一部の部品の交換も含む)等の各種メンテナンスを行なうのが好ましい。そこで、本実施形態の記録媒体製造装置1は、材料供給ユニット2に対して、前記各種メンテナンスを行なうことができる構成となっている。
材料供給ユニット2は、図8に示す状態と、図8に示す状態から移動した図9に示す状態とを取り得るカートリッジとなっている。図8に示す状態では、材料供給ユニット2は、被転写体である基材901への繊維含有材料の静電転写が可能な第1位置に位置している。一方、図9に示す状態では、材料供給ユニット2は、第1位置から退避した第2位置に変位している。
そして、インク受容層形成部13には、材料供給ユニット2の第1位置と第2位置との間の変位を可能とする支持部6が設けられている。支持部6は、材料供給ユニット2をz軸方向(鉛直方向)に移動可能に支持するガイド部61と、材料供給ユニット2のz軸方向負側への移動限界を規制す規制部62と、を有している。
図8に示すように、材料供給ユニット2は、第1位置では、記録媒体製造装置1に装填された装填状態となる。この装填状態の材料供給ユニット2は、転写ニップ135に搬送されてきた基材901に繊維含有材料を移行させて静電転写を行ない、インク受容層902の形成が可能となる。そして、メンテナンスを行なう場合には、記録媒体製造装置1を、インク受容層902の形成を停止した状態として、材料供給ユニット2を第2位置に変位させる。この操作は、まず、図9に示すように、材料供給ユニット2をガイド部61に沿わせてz軸方向正側、すなわち、矢印α61方向に移動させると、遂には、この材料供給ユニット2を記録媒体製造装置1から離脱させることができる。このように、材料供給ユニット2は、第2位置では、記録媒体製造装置1から離脱可能な離脱状態となる。そして、この離脱状態の材料供給ユニット2に対して、前述したような各種のメンテナンスを行なうことができる。また、材料供給ユニット2は、離脱状態となっているため、例えばガイド部61に支持されたままの状態に比べて、メンテナンスを容易に行なうことができる。
前述したように、メンテナンスの種類には、例えば、保守、点検、清掃、材料(繊維含有材料)の補充、修理、整備、交換等がある。材料供給ユニット2が例えば経時的な劣化により故障した場合には、材料供給ユニット2の交換や修理が行われる。また、材料供給ユニット2の貯留部21に貯留されている繊維含有材料が使い切られた、すなわち、空になった場合には、貯留部21への繊維含有材料の補充、または、新たな材料供給ユニット2への交換が行われる。また、材料供給ユニット2に故障等の不具合が生じるのを未然に防止する場合には、材料供給ユニット2の清掃、整備、点検等が行われる。
なお、貯留部21内の繊維含有材料の充填量は、貯留部21内が空となるまでの期間が担持体24の寿命とほぼ同じとなるように調整されているのが好ましい。これにより、記録媒体製造装置1の使用中に、貯留部21内が空となる状態と担持体24に寿命がくる状態とのうちの少なくとも一方の状態となったと場合、材料供給ユニット2をできる限り無駄なく、新たな材料供給ユニット2に交換することができる。
材料供給ユニット2は、離脱状態で新たな材料供給ユニット2に交換可能である。これにより、故障時の材料供給ユニット2の交換や、繊維含有材料が空になったときの材料供給ユニット2の交換を容易かつ迅速に行うことができる。
また、材料供給ユニット2は、離脱状態で交換可能であることの他に、離脱状態で清掃、修理、整備、点検、材料の補充も可能である。これにより、清掃、修理、整備、点検、材料の補充も容易かつ迅速に行うことができる。
メンテナンス後は、前記とは反対に材料供給ユニット2を移動させることにより、材料供給ユニット2を第1位置に戻すことができる。これにより、材料供給ユニット2が第1位置に戻って、規制部62で位置決めされ、記録媒体製造装置1を継続して使用することができる。
なお、インク受容層形成部13には、第1位置にある材料供給ユニット2を固定するロック部(図示せず)が設けられているのが好ましい。これにより、例えば記録媒体90を製造している最中の記録媒体製造装置1に、各部の作動による振動が生じたとしても、材料供給ユニット2の位置ズレを防止することができ、よって、インク受容層902の形成を安定して行なうことができる。また、材料供給ユニット2を第2位置に移動させるときには、前記ロック部による固定状態を解除することができる。
前述したように、担持体24は、ローラーで構成されたものである。本実施形態では、材料供給ユニット2は、ローラーの幅、すなわち、担持体24のy軸方向の長さが異なるものが複数種用意されており、離脱状態で複数種のもののうちから選択して交換可能である。これにより、選択された材料供給ユニット2に応じて、幅が異なるインク受容層902を基材901上に形成することができる。
前述したように、記録媒体製造装置1は、基材901(被転写体)に静電転写された繊維含有材料(インク受容層902)を搬送する搬送部を有している。図9に示すように、本実施形態では、材料供給ユニット2が第1位置と第2位置の間を変位する方向、すなわち、矢印α61方向は、搬送部16による基材901(繊維含有材料)の搬送方向(x軸方向)と交差する方向、特に直交する方向(z方向)である。記録媒体製造装置1における材料供給ユニット2の周辺の構造にもよるが、矢印α61方向は、材料供給ユニット2の周辺との干渉を防止しつつ、メンテナンス時の材料供給ユニット2の変位方向に適している場合があるため、好ましい。
<第4実施形態>
図10および図11は、それぞれ、本発明の記録媒体製造装置(第4実施形態)で記録媒体を製造する過程を順に示す垂直断面側面図である。図12〜図14は、それぞれ、本発明の記録媒体製造装置(第4実施形態)で製造された記録媒体の一例を示す垂直断面図である。また、図10および図11において、図示の都合上、インク受容層902は、1層でも複数層の積層体でも、1つのインク受容層902として表示する。
以下、これらの図を参照して本発明の記録媒体製造装置の第4実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態の記録媒体製造装置1では、インク受容層形成部13とインク受容層固化部15とがx軸方向正側に向かって複数(本実施形態では4つ)ずつ配置されている。これら4つのインク受容層形成部13を、上流側から順に、「インク受容層形成部13A」(図10参照)、「インク受容層形成部13B」(図10参照)、「インク受容層形成部13C」(図11参照)、「インク受容層形成部13D」(図11参照)と言うことがある。また、4つのインク受容層固化部15を、上流側から順に、「インク受容層固化部15A」(図10参照)、「インク受容層固化部15B」(図10参照)、「インク受容層固化部15C」(図11参照)、「インク受容層固化部15D」(図11参照)と言うことがある。そして、インク受容層固化部15Aは、インク受容層形成部13Aとインク受容層形成部13Bとの間に配置され、インク受容層固化部15Bは、インク受容層形成部13Bとインク受容層形成部13Cとの間に配置され、インク受容層固化部15Cは、インク受容層形成部13Cとインク受容層形成部13Dとの間に配置され、インク受容層固化部15Dは、インク受容層形成部13Dに対して下流側、すなわち、x軸方向正側に配置されている。
このように記録媒体製造装置1は、インク受容層形成部13を4つ有し、すなわち、材料供給ユニット2と転写部134とが、それぞれ、4つ(複数)配置されているとともに、インク受容層固化部15を4つ有する構成となっている。このような構成の記録媒体製造装置1は、例えば図12に示す記録媒体90のような、インク受容層902が複数積層された記録媒体90を製造することができる。図12に示す記録媒体90は、インク受容層902が4つ積層されたものである。また、各インク受容層902の厚さは、同じとなっている。
インク受容層形成部13Aは、基材901上に1層目のインク受容層902を形成する。インク受容層固化部15Aは、1層目のインク受容層902を固化する。
インク受容層形成部13Bは、前記固化した1層目のインク受容層902上に2層目のインク受容層902を形成する。インク受容層固化部15Bは、2層目のインク受容層902を固化する。
インク受容層形成部13Cは、前記固化した2層目のインク受容層902上に3層目のインク受容層902を形成する。インク受容層固化部15Cは、3層目のインク受容層902を固化する。
インク受容層形成部13Dは、前記固化した3層目のインク受容層902上に4層目のインク受容層902を形成する。インク受容層固化部15Dは、4層目のインク受容層902を固化する。
このような構成により、複数のインク受容層902を順に積層することができる。また、各インク受容層902は、形成されるごとに、前述した例えば筋ムラ等が生じた状態となる場合がある。しかしながら、インク受容層902が複数積層されるのに従って、筋ムラがランダムになり、その結果、4層目のインク受容層902は、筋ムラが解消されたような状態となる。これにより、製造された記録媒体90は、インクを安定して受容することができるものとなる。
なお、記録媒体製造装置1は、図示の構成では表面性状処理部14が省略された構成となっているが、表面性状処理部14を有する構成となっていてもよい。
また、記録媒体製造装置1では、1層目のインク受容層902を形成する形成条件と、2層目のインク受容層902を形成する形成条件と、3層目のインク受容層902を形成する形成条件と、4層目のインク受容層902を形成する形成条件とが異なるよう、例えばインク受容層形成部13およびインク受容層固化部15の作動条件を調整することができる。これにより、特性(性状)が異なる種々の記録媒体90を容易かつ迅速に製造することができる。なお、インク受容層形成部13およびインク受容層固化部15の作動条件の調整は、制御部11によって制御される。
例えば、インク受容層形成部13Aで1層目のインク受容層902を形成するときの静電気力と、インク受容層形成部13Bで2層目のインク受容層902を形成するときの静電気力と、インク受容層形成部13Cで3層目のインク受容層902を形成するときの静電気力と、インク受容層形成部13Dで4層目のインク受容層902を形成するときの静電気力とが異なるよう、各インク受容層形成部13の転写部134での電位を調整することができる。電位の大小関係は、「(1層目のインク受容層902形成時の電位)<(2層目のインク受容層902形成時の電位)<(3層目のインク受容層902形成時の電位)<(4層目のインク受容層902形成時の電位)」となるのが好ましい。インク受容層902が積層されるのに従って、基材901上でのインク受容層902の総厚が増加する。このため、前記電位の大小関係により、各インク受容層902形成時の転写効率を向上させることができる。
また、記録媒体製造装置1では、1層目のインク受容層902をインク受容層固化部15Aで加熱し、2層目のインク受容層902をインク受容層固化部15Bで加熱し、3層目のインク受容層902をインク受容層固化部15Cで加熱し、4層目のインク受容層902をインク受容層固化部15Dで加熱している。
この場合、1層目のインク受容層902を加熱する加熱温度と、2層目のインク受容層902を加熱する加熱温度と、3層目のインク受容層902を加熱する加熱温度と、4層目のインク受容層902を加熱する加熱温度とが異なるよう、各インク受容層固化部15のヒーター152の温度を調整することができる。加熱温度の大小関係は、「(1層目のインク受容層902固化時の加熱温度)<(2層目のインク受容層902固化時の加熱温度)<(3層目のインク受容層902固化時の加熱温度)<(4層目のインク受容層902固化時の加熱温度)」となるのが好ましい。前記と同様に、インク受容層902が積層されるのに従って、基材901上でのインク受容層902の総厚が増加する。このため、前記加熱温度の大小関係により、上側のインク受容層902ほど樹脂の溶融を向上させて、その後の固化を過不足なく行なうことができる。
また、記録媒体製造装置1では、1層目のインク受容層902をインク受容層固化部15Aで加圧し、2層目のインク受容層902をインク受容層固化部15Bで加圧し、3層目のインク受容層902をインク受容層固化部15Cで加圧し、4層目のインク受容層902をインク受容層固化部15Dで加圧している。
この場合、1層目のインク受容層902を加圧する加圧力と、2層目のインク受容層902を加圧する加圧力と、3層目のインク受容層902を加圧する加圧力と、4層目のインク受容層902を加圧する加圧力とが異なるよう、インク受容層固化部15の加圧力を調整することができる。加圧力の大小関係は、「(1層目のインク受容層902固化時の加圧力)<(2層目のインク受容層902固化時の加圧力)<(3層目のインク受容層902固化時の加圧力)<(4層目のインク受容層902固化時の加圧力)」となるのが好ましい。前記と同様に、インク受容層902が積層されるのに従って、基材901上でのインク受容層902の総厚が増加する。このため、前記加圧力の大小関係により、上側のインク受容層902ほど圧縮を向上させることができる。これにより、上側の層ほど薄くなって、ヒーター152からの熱を伝え易くすることができ、よって、樹脂の溶融をさらに向上させることができる。
また、1層目のインク受容層902の厚さと、2層目のインク受容層902の厚さと、3層目のインク受容層902の厚さと、4層目のインク受容層902の厚さとが異なる記録媒体90も製造することができる。厚さの大小関係は、「(1層目のインク受容層902の厚さ)>(2層目のインク受容層902の厚さ)>(3層目のインク受容層902の厚さ)>(4層目のインク受容層902の厚さ)」となっているのが好ましい。これにより、最大厚さを有する1層目のインク受容層902が、例えばインクの基材901への到達を防止するインクストップ層として機能することができる。よって、記録媒体90は、裏面でのインクのにじみを防止することができる。
この場合、インク受容層形成部13Aで1層目のインク受容層902を形成するときの繊維含有材料の転写量と、インク受容層形成部13Bで2層目のインク受容層902を形成するときの繊維含有材料の転写量と、インク受容層形成部13Cで3層目のインク受容層902を形成するときの繊維含有材料の転写量と、インク受容層形成部13Dで4層目のインク受容層902を形成するときの繊維含有材料の転写量とが異なるよう、各インク受容層形成部13の作動を調整することができる。
また、記録媒体製造装置1では、各インク受容層形成部13の材料供給ユニット2を、例えば適宜次の複数種(例えば6種)のものとしてもよい。
1つ目の種類の材料供給ユニット2(以下この材料供給ユニット2を有するインク受容層形成部13を「タイプA」と言う)は、繊維含有材料におけるセルロース繊維と樹脂との比が重量比で9:1の繊維含有材料を貯留したものである。なお、セルロース繊維を被覆する前の樹脂は、平均粒径が12μmのポリエステルの粉体である。
2つ目の種類の材料供給ユニット2(以下この材料供給ユニット2を有するインク受容層形成部13を「タイプB」と言う)は、繊維含有材料におけるセルロース繊維と樹脂との比が重量比で8:2の繊維含有材料を貯留したものである。なお、セルロース繊維を被覆する前の樹脂は、平均粒径が12μmのポリエステルの粉体である。
3つ目の種類の材料供給ユニット2(以下この材料供給ユニット2を有するインク受容層形成部13を「タイプC」と言う)は、繊維含有材料におけるセルロース繊維と樹脂との比が重量比で2:8の繊維含有材料を貯留したものである。
4つ目の種類の材料供給ユニット2(以下この材料供給ユニット2を有するインク受容層形成部13を「タイプD」と言う)は、平均粒径が12μmのポリエステルの粉体に色材としての顔料が分散した材料を貯留したものである。顔料の色としては、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)が挙げられ、これらから適宜選択される。
5つ目の種類の材料供給ユニット2(以下この材料供給ユニット2を有するインク受容層形成部13を「タイプE」と言う)は、繊維含有材料におけるセルロース繊維と樹脂との比が重量比で9:1であり、さらに、色材としての前記顔料が分散した繊維含有材料を貯留したものである。なお、セルロース繊維を被覆する前の樹脂は、平均粒径が12μmのポリエステルの粉体である。
6つ目の種類の材料供給ユニット2(以下この材料供給ユニット2を有するインク受容層形成部13を「タイプF」と言う)は、繊維含有材料におけるセルロース繊維と樹脂との比が重量比で8:2であり、さらに、色材としての前記顔料が分散した繊維含有材料を貯留したものである。なお、セルロース繊維を被覆する前の樹脂は、平均粒径が12μmのポリエステルの粉体である。
そして、例えば、インク受容層形成部13AをタイプCとし、インク受容層形成部13BをタイプBとし、インク受容層形成部13CをタイプAとし、インク受容層形成部13DをタイプDとすることができる。この状態(以下「第1状態」と言う)で記録媒体製造装置1を作動させることができる。第1状態での作動パターンとしては、例えば、次のパターンがある。
・パターン1:タイプC、タイプBでそれぞれインク受容層902を形成し、タイプA、タイプDでのインク受容層902の形成は停止する。
・パターン2:タイプC、タイプAでそれぞれインク受容層902を形成し、タイプB、タイプDでのインク受容層902の形成は停止する。
・パターン3:タイプC、タイプB、タイプDでそれぞれインク受容層902を形成し、タイプAでのインク受容層902の形成は停止する。
・パターン4:タイプC、タイプA、タイプDでそれぞれインク受容層902を形成し、タイプBでのインク受容層902の形成は停止する。
また、第1状態に対して、例えば、タイプBに代えて、インク受容層形成部13BをタイプFとし、タイプAに代えて、インク受容層形成部13CをタイプEとすることができる。この状態(以下「第2状態」と言う)で記録媒体製造装置1を作動させることができる。第2状態での作動パターンとしては、例えば、次のパターンがある。
・パターン5:タイプC、タイプEでそれぞれインク受容層902を形成し、タイプA、タイプDでのインク受容層902の形成は停止する。
・パターン6:タイプC、タイプFでそれぞれインク受容層902を形成し、タイプB、タイプDでのインク受容層902の形成は停止する。
パターン1の作動により、まず、基材901上にタイプCで1層目のインク受容層902(以下「インク受容層902b」と言う)が形成される(図13参照)。次に、インク受容層902b上にタイプBで2層目のインク受容層902(以下「インク受容層902c」と言う)が形成される(図13参照)。このように製造された記録媒体90では、インクは、主にインク受容層902cで保持され、それ以上のインクの浸透は、インク受容層902bで防止される。これにより、記録媒体90は、裏面でのインクのにじみ、すなわち、裏うつりが防止されたものとなる。また、この記録媒体90は、主にグラフィック画像や写真画像等のようなインクドットの配置密度が比較的高い画像の印刷に適したものとなる。
パターン2の作動により、まず、基材901上にタイプCでインク受容層902bが形成される(図13参照)。次に、インク受容層902b上にタイプAでインク受容層902cが形成される。このように製造された記録媒体90も、インクは、主にインク受容層902cで保持され、それ以上のインクの浸透は、インク受容層902bで防止される。また、この記録媒体90は、主に文字の印刷に適したものとなる。
パターン3の作動により、パターン1で得られた記録媒体90に、さらにタイプDで3層目のインク受容層902(以下「インク受容層902d」と言う)が積層された記録媒体90が得られる(図14参照)。この記録媒体90は、パターン1で得られた記録媒体90と同じ機能を有し、さらに顔料の色が反映されたカラーの記録媒体90となる。
パターン4の作動により、パターン2で得られた記録媒体90に、さらにタイプDで3層目のインク受容層902dが積層された記録媒体90が得られる。この記録媒体90は、パターン2で得られた記録媒体90と同じ機能を有し、さらに顔料の色が反映されたカラーの記録媒体90となる。
パターン5の作動により、タイプCでインク受容層902bが形成され、タイプEでインク受容層902cが形成される。このように製造された記録媒体90は、主にグラフィック画像等の印刷に適し、インクの浸透がインク受容層902cで防止されるカラーの記録媒体90となる。
パターン6の作動により、タイプCでインク受容層902bが形成され、タイプFでインク受容層902cが形成される。このように製造された記録媒体90は、主に文字の印刷に適し、インクの浸透がインク受容層902cで防止されるカラーの記録媒体90となる。
このような構成により、前記のように層形成に際し、選択して用いられるインク受容層形成部13に応じて、特性(性状)が異なるインク受容層902を形成することができる。これにより、特性(性状)が異なる種々の記録媒体90を得ることができる。
また、記録媒体製造装置1は、本実施形態では材料供給ユニット2と転写部134とがそれぞれ4つ配置されているが、その配置数は、特に限定されないのは言うまでもない。
また、インク受容層902の積層体を有する記録媒体90は、例えば、インク受容層902同士の間に、繊維含有材料と異なる材料で構成された中間層が配置されたものであってもよい。中間層の機能としては、特に限定されず、例えば、インク受容層902同士の密着性を高める機能等が挙げられる。
また、インク受容層902の積層体を有する記録媒体90を製造する場合、本実施形態の記録媒体製造装置1のようにインク受容層形成部13とインク受容層固化部15とが複数ずつ配置されたものを用いることができるが、例えば、第1実施形態の記録媒体製造装置1のようにインク受容層形成部13とインク受容層固化部15とが1つずつ配置されたものを用いることができる。第1実施形態の記録媒体製造装置1を用いる場合、基材901をインク受容層形成部13とインク受容層固化部15とに対して複数回(インク受容層902の積層分だけ)循環させることにより、インク受容層902の積層体を有する記録媒体90を製造することができる。
以上、本発明の記録媒体製造装置を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、記録媒体製造装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
また、本発明の記録媒体製造装置は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。