JP6844180B2 - 複合パネル及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、複合パネル及びその製造方法に関する。
液晶表示装置及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、適宜「有機EL表示装置」ということがある。)等の表示装置には、樹脂によって形成された光学フィルムが設けられることがある。このような光学フィルムは、表示装置の構成要素であるガラス基板等の基材に貼り合わせて用いられることがある。例えば、光学フィルムは、液晶表示装置の液晶セルのガラス基板に貼り合わせられたり、有機EL表示装置の発光素子のガラス基板に貼り合わせられたりすることがある。
前記のように基材に貼り合わせて用いられる場合、光学フィルムは、通常、最終的な製品としてのフィルム片の寸法よりも大きい寸法の樹脂フィルムとして用意される。そして、このような樹脂フィルムから、所望の形状のフィルム片が切り出され、この切り出されたフィルム片が基材に貼り合わせられる。
樹脂フィルムを所望の形状に切り出す方法としては、例えば、ナイフを用いた機械的切断方法、及び、レーザー光を用いたレーザー切断方法が挙げられる。これらの中でも、レーザー切断方法は、切断カスが発生し難いことから、好ましい(特許文献1)。前記のようなレーザー光としては、工業的には、赤外レーザー光がしばしば用いられる。
特開2010−76181号公報
ところが、基材に貼り合わせる前にレーザー光を用いて樹脂フィルムを切り出す場合には、切り出されたフィルム片の縁部分が変形することがあった。具体的には、樹脂フィルムに含まれる樹脂が、レーザー光の熱によって流動化して盛り上がったり、レーザー光のエネルギー分布によって丸みを帯びたりすることがあった。そのため、フィルム片の縁部分を平滑化するためには、レーザー光による切断の後で、フィルム片の縁部分に平滑化のための処理を施することが求められていた。
また、近年、表示装置の表示面の大型化が進行している。さらに、表示装置の意匠性を高める観点から、矩形以外の形状の表示面を有する表示装置についての検討が進められている。このような大型の表示面を有する表示装置、及び、矩形以外の形状の表示面を有する表示装置の製造方法では、従来のように大きい寸法の樹脂フィルムから切り出されたフィルム片を基材に貼り合わせようとすると、フィルム片の貼り合わせ位置を精密に調整することが困難であった。仮にフィルム片の貼り合わせ位置にずれが生じると、そのずれは目立ち易いので、表示装置の品質低下の一因となりうる。
そこで、本発明者は、フィルム片の縁部分の平滑化及び貼り合わせ位置のずれ抑制のために、樹脂フィルムを基材に貼り合わせた後で、レーザー光によって、樹脂フィルムを所望の形状に切断することを試みた。基材としてガラスのようにレーザー光のエネルギーを吸収し難いものを用いた場合、基材を切断すること無く、基材に貼り合わせた樹脂フィルムだけを切断することが可能である。
ところが、樹脂フィルムを基材に貼り合わせた後に、レーザー光によって樹脂フィルムを切断すると、切断によって現れる樹脂フィルムの端面(以下、適宜「切断面」ということがある。)の、基材の表面に対する傾斜が、緩やかになる傾向がある。一般に、表示装置では、基材の表面に対する樹脂フィルムの切断面は、90°に近い急峻な傾斜を有することが望まれる。そこで、前記の切断面の基材の表面に対する傾斜を急峻にするための技術が望まれている。
本発明は前記の課題に鑑みて創案されたもので、基材上に設けられた樹脂層を赤外レーザー光で切断して複合パネルを製造する製造方法であって、基材の表面に対する前記樹脂層の切断面の傾斜を急峻にできる製造方法;並びに、基材及び樹脂層を備え、基材の表面に対する樹脂層の端面の傾斜が急峻になっている複合パネル;を提供することを目的とする。
本発明者は、前記の課題を解決するべく、基材及び樹脂層を備える複層体として、環状オレフィン重合体を含む低吸収層、及び、低吸収層よりも赤外線吸収率が高い高吸収層を、基材とは反対側からこの順に備える樹脂層を含むものについて検討した。その結果、本発明者は、この複層体の基材とは反対側に赤外レーザー光を照射して、樹脂層を切断することにより、急峻な切断面が得られることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
〔1〕 基材、及び、前記基材の表面に設けられた樹脂層を備える複層体の、前記樹脂層を切断する工程を含む、複合パネルの製造方法であって、
前記樹脂層が、環状オレフィン重合体を含む低吸収層と、9μm〜11μmの波長範囲における赤外線吸収率が前記低吸収層よりも高い高吸収層とを、前記基材とは反対側からこの順に備え、
前記樹脂層の厚みに対する前記低吸収層の厚みの割合が、10%〜50%であり、
前記工程が、前記樹脂層の前記基材とは反対側に赤外レーザー光を照射して、前記基材を切断しないで前記樹脂層を切断することを含む、複合パネルの製造方法。
〔2〕 前記低吸収層は、厚み方向において、前記樹脂層の中央部よりも、前記基材から遠くに設けられている、〔1〕記載の複合パネルの製造方法。
〔3〕 前記赤外レーザー光が、トップハット状のエネルギー分布を有する、〔1〕又は〔2〕記載の複合パネルの製造方法。
〔4〕 基材、及び、前記基材の表面に設けられた樹脂層を備える複合パネルであって、
前記樹脂層が、環状オレフィン重合体を含む低吸収層と、9μm〜11μmの波長範囲における赤外線吸収率が前記低吸収層よりも高い高吸収層とを、前記基材とは反対側からこの順に備え、
前記樹脂層の端面が、前記基材の表面に対してなす平均角度が、75°〜90°である、複合パネル。
本発明によれば、基材上に設けられた樹脂層を赤外レーザー光で切断して複合パネルを製造する製造方法であって、基材の表面に対する前記樹脂層の切断面の傾斜を急峻にできる製造方法;並びに、基材及び樹脂層を備え、基材の表面に対する樹脂層の端面の傾斜が急峻になっている複合パネル;を提供することを目的とする。
図1は、本発明の一実施形態に係る複合パネルの製造方法において用いる複層体を模式的に示す平面図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る複合パネルの製造方法において用いる複層体を模式的に示す断面図である。 図3は、本発明の一実施形態に係る複合パネルの製造方法において、複層体の樹脂層に赤外レーザー光を照射して、樹脂層を切断する様子を模式的に示す断面図である。 図4は、本発明の一実施形態に係る複合パネルの製造方法によって得られる複合パネルを模式的に示す平面図である。 図5は、本発明の一実施形態に係る複合パネルの製造方法によって得られる複合パネルを模式的に示す断面図である。 図6は、トップハット状のエネルギー分布を有するレーザー光の、エネルギー分布の一例を示すグラフである。 図7は、ガウシアンモードのレーザー光のエネルギー分布の一例を示すグラフである。 図8は、本発明の一実施形態に係る複合パネルを、切れ目の近傍で切った断面を拡大して模式的に示す断面図である。 図9は、本発明の一例に係る複合パネルを、切れ目の近傍で切った断面を拡大して模式的に示す断面図である。
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、ビームや部材の方向が「平行」又は「垂直」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば、通常±5°、好ましくは±2°、より好ましくは±1°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
以下の説明において、ある層のレターデーションとは、別に断らない限り、層の面内レターデーションをいう。また、層の面内レターデーションReとは、別に断らない限り、Re=(nx−ny)×dで表される値である。ここで、nxは、層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、層の前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。dは、層の厚みを表す。レターデーションは、市販の位相差測定装置あるいはセナルモン法を用いて測定しうる。面内レターデーションの測定波長は、別に断らない限り、550nmである。
以下の説明において、赤外線とは、別に断らない限り、760nm以上1mm未満の波長の光をいう。
[1.複合パネルの製造方法の概要]
本発明の一実施形態に係る複合パネルの製造方法は、基材及び樹脂層を備える複層体の、前記樹脂層を切断する工程を含む。前記の工程は、樹脂層に赤外レーザー光を照射して、基材を切断しないで樹脂層を切断することを含む。樹脂層が切断されることにより、基材及び切断された樹脂層を備える複合パネルが得られる。
[2.複層体の用意]
図1は、本発明の一実施形態に係る複合パネルの製造方法において用いる複層体10を模式的に示す平面図である。また、図2は、本発明の一実施形態に係る複合パネルの製造方法において用いる複層体10を模式的に示す断面図である。
本発明の一実施形態に係る複合パネルの製造方法は、図1及び図2に示すように、基材100及び樹脂層200を備えた複層体10を用意する工程を含む。
〔2.1.基材〕
基材100の材料としては、例えば、ガラス、樹脂及び金属が挙げられる。ガラスの具体例としては、ソーダガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、化学強化ガラスが挙げられる。また、樹脂の例としては、ポリイミド樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等の、耐熱性を有しうる樹脂が挙げられる。金属の例としては、アルミニウム、ステンレス鋼等が挙げられる。中でも、優れた透明性を有し、且つ、赤外レーザー光のエネルギーを吸収し難いことから、ガラスが好ましい。また、前記の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
基材100としては、凹凸の無い平坦な表面100Uを有する部材を用いることが好ましく、平板を用いることがより好ましい。通常は、基材100として、表側及び裏側の両方に平坦面を有する基板を用いる。
基材100の厚みは、特に限定されず、本発明の方法を実施するのに適した厚みを適宜選択しうる。例えば、基材100としてガラス基板を用いる場合、基材100の厚みは、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上であり、好ましくは1.3mm以下、より好ましくは1.1mm以下である。また、例えば、基材100として樹脂基板を用いる場合、基材100の厚みは、好ましくは0.005mm以上、より好ましくは0.01mm以上であり、好ましくは0.2mm以下、より好ましくは0.1mm以下である。さらに、例えば、基材100として金属基板を用いる場合、基材100の厚みは、好ましくは0.005mm以上、より好ましくは0.01mm以上であり、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.0mm以下である。
〔2.2.樹脂層〕
樹脂層200は、基材100の表面100Uに設けられた層である。この樹脂層200は、環状オレフィン重合体を含む低吸収層210と、9μm〜11μmの波長範囲における赤外線吸収率が低吸収層210よりも高い高吸収層220とを、基材100とは反対側からこの順に備える。
(低吸収層210)
低吸収層210は、環状オレフィン重合体を含む環状オレフィン樹脂の層である。環状オレフィン樹脂は、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性、位相差発現性、低温での成形性、等の種々の観点から、光学フィルムの材料として優れている。
環状オレフィン重合体は、その重合体の構造単位が脂環式構造を有する重合体である。環状オレフィン重合体は、主鎖に脂環式構造を有する重合体、側鎖に脂環式構造を有する重合体、主鎖及び側鎖に脂環式構造を有する重合体、並びに、これらの2以上の任意の比率の混合物としうる。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点から、主鎖に脂環式構造を有する重合体が好ましい。
脂環式構造の例としては、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、及び不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造が挙げられる。中でも、機械強度及び耐熱性の観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。脂環式構造を構成する炭素原子数がこの範囲であると、環状オレフィン樹脂の機械強度、耐熱性及び成形性が高度にバランスされる。
環状オレフィン重合体において、脂環式構造を有する構造単位の割合は、得られる製品の使用目的に応じて選択しうる。環状オレフィン重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。環状オレフィン重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合がこの範囲にあると、環状オレフィン樹脂の透明性及び耐熱性が良好となる。
環状オレフィン重合体の中でも、シクロオレフィン重合体が好ましい。シクロオレフィン重合体とは、シクロオレフィン単量体を重合して得られる構造を有する重合体である。また、シクロオレフィン単量体は、炭素原子で形成される環構造を有し、かつ該環構造中に重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物である。重合性の炭素−炭素二重結合の例としては、開環重合等の重合が可能な炭素−炭素二重結合が挙げられる。また、シクロオレフィン単量体の環構造の例としては、単環、多環、縮合多環、橋かけ環及びこれらを組み合わせた多環等が挙げられる。中でも、得られる重合体の誘電特性及び耐熱性等の特性を高度にバランスさせる観点から、多環のシクロオレフィン単量体が好ましい。
上記のシクロオレフィン重合体の中でも好ましいものとしては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、及び、これらの水素化物等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体は、成形性が良好なため、特に好適である。
ノルボルネン系重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素化物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる他の単量体との開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる他の単量体との付加共重合体が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素化物は、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適である。
ノルボルネン構造を有する単量体の例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)を挙げることができる。ここで、置換基の例としては、アルキル基、アルキレン基、及び極性基を挙げることができる。また、これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
極性基の例としては、ヘテロ原子、及びヘテロ原子を有する原子団が挙げられる。ヘテロ原子の例としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、及びハロゲン原子が挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、アミド基、イミド基、ニトリル基、及びスルホン酸基が挙げられる。
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な単量体の例としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類およびその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエンおよびその誘導体が挙げられる。ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体は、例えば、単量体を開環重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な単量体の例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素原子数2〜20のα−オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;並びに1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエンが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。また、ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体は、例えば、単量体を付加重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
上述した開環重合体及び付加重合体の水素添加物は、例えば、これらの開環重合体及び付加重合体の溶液において、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む水素添加触媒の存在下で、炭素−炭素不飽和結合を、好ましくは90%以上水素添加することによって製造しうる。
ノルボルネン系重合体の中でも、構造単位として、X:ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジイル−エチレン構造と、Y:トリシクロ[4.3.0.12,5]デカン−7,9−ジイル−エチレン構造とを有し、これらの構造単位の量が、ノルボルネン系重合体の構造単位全体に対して90重量%以上であり、かつ、Xの割合とYの割合との比が、X:Yの重量比で100:0〜40:60であるものが好ましい。このような重合体を用いることにより、当該ノルボルネン系重合体を含む低吸収層210を、長期的に寸法変化がなく、光学特性の安定性に優れるものにできる。
単環の環状オレフィン系重合体の例としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環を有する環状オレフィン系モノマーの付加重合体を挙げることができる。
環状共役ジエン系重合体の例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン系モノマーの付加重合体を環化反応して得られる重合体;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系モノマーの1,2−または1,4−付加重合体;およびこれらの水素化物を挙げることができる。
さらに、上述した環状オレフィン重合体は、当該環状オレフィン重合体の分子が極性基を含まないことが好ましい。分子中に極性基を含まない環状オレフィン重合体は、一般に、赤外線吸収率が低い。このように赤外線吸収率が低い環状オレフィン重合体を含む低吸収層210を、高い赤外線吸収率を有する高吸収層220と組み合わせることにより、赤外レーザー光による切断後の樹脂層200の切断面(即ち、切断によって現れる樹脂層200の端面。図1及び図2では、図示せず。)の傾斜を急峻にできる。また、分子中に極性基を含まない環状オレフィン重合体を用いることにより、環状オレフィン樹脂の吸水性を低減できる。
環状オレフィン重合体の重量平均分子量(Mw)は、複合パネルの使用目的に応じて適宜選定でき、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、特に好ましくは50,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、低吸収層210の機械的強度及び成型加工性が高度にバランスされる。ここで、前記の重量平均分子量は、溶媒としてシクロヘキサンを用いて(但し、試料がシクロヘキサンに溶解しない場合にはトルエンを用いてもよい)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレン又はポリスチレン換算の重量平均分子量である。
環状オレフィン重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、特に好ましくは1.8以上であり、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.7以下である。分子量分布が前記下限値以上であることにより、重合体の生産性を高め、製造コストを抑制できる。また、上限値以下であることにより、低分子成分の量が小さくなるので、高温曝露時の緩和を抑制して、低吸収層210の安定性を高めることができる。
低吸収層210に含まれる環状オレフィン樹脂における環状オレフィン重合体の割合は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは92重量%以上、特に好ましくは95重量%以上であり、好ましくは99.9重量%以下、より好ましくは99重量%以下、特に好ましくは98重量%以下である。環状オレフィン重合体の割合が前記範囲の下限値以上であることにより、低吸収層210の吸水性を低減できる。また、上限値以下であることにより、赤外線吸収率が適度に高くなるので、赤外レーザー光による切断を行い易くできる。
低吸収層210に含まれる環状オレフィン樹脂は、環状オレフィン重合体に組み合わせて、更に任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、レーザー光に対する感受性を高めるためのエステル化合物、顔料、染料等の着色剤;蛍光増白剤;分散剤;熱安定剤;光安定剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;酸化防止剤;微粒子;界面活性剤等の添加剤が挙げられる。これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
低吸収層210に含まれる環状オレフィン樹脂のガラス転移温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上であり、好ましくは190℃以下、より好ましくは180℃以下、特に好ましくは170℃以下である。ガラス転移温度が前記範囲内であることにより、耐久性に優れる低吸収層210を容易に製造することができる。また、上限値以下であることにより、成形を容易に行える。
環状オレフィン重合体が赤外線を吸収し難いので、低吸収層210は、高吸収層220よりも、赤外線吸収率が低い。具体的には、9μm〜11μmの波長範囲における低吸収層210の赤外線吸収率は、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.2%以下である。低吸収層210の赤外線吸収率が、前記のように小さいことにより、赤外レーザー光での切断後の樹脂層200の切断面の傾斜を急峻にできる。9μm〜11μmの波長範囲における低吸収層210の赤外線吸収率の下限は、特段の制限は無いが、通常0.04%以上である。
9μm〜11μmの波長範囲における、ある層の赤外線吸収率は、波長0.01μm毎で吸収率を測定し、その測定値の平均値として求めうる。測定装置としては、フーリエ変換赤外分光分析装置を用いうる。さらに、測定方法としては、透過法を採用しうる。
低吸収層210は、樹脂層200の厚み方向において、当該樹脂層200の中央部200Cよりも、基材100から遠くに設けられていることが好ましい。これにより、樹脂層200に進入した赤外レーザー光のエネルギーが、基材100に近い位置で吸収され易くなるので、基材100の表面100Uに対する樹脂層200の切断面の傾斜を、効果的に急峻にできる。
低吸収層210は、可視光線に対して高い透明性を有することが好ましい。低吸収層210の全光線透過率は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。低吸収層210の全光線透過率は、JIS K0115に準拠して、分光光度計(日本分光社製、紫外可視近赤外分光光度計「V−570」)を用いて、波長400nm〜700nmの範囲で測定しうる。
低吸収層210は、面内レターデーションを実質的に有さない光学等方性の層であってもよく、用途に応じた大きさの面内レターデーションを有する光学異方性の層であってもよい。
例えば、低吸収層210が光学等方性の層である場合、低吸収層210の具体的な面内レターデーションは、好ましくは0nm〜20nm、より好ましくは0nm〜10nm、特に好ましくは0nm〜5nmとしうる。このように光学等方性の低吸収層210は、例えば、高吸収層220が偏光子として機能しうる層である場合には、この偏光子を保護するための偏光子保護層として機能できる。
また、例えば、低吸収層210が1/4波長板として機能しうる光学異方性の層である場合、低吸収層210の具体的な面内レターデーションは、好ましくは80nm以上、より好ましくは85nm以上、特に好ましくは90nm以上、且つ、好ましくは180nm以下、より好ましくは160nm以下、特に好ましくは150nm以下としうる。このように1/4波長板として機能しうる低吸収層210は、例えば、高吸収層220が偏光子として機能しうる場合には、その高吸収層220との組み合わせによって、円偏光板として機能できる。
特に、低吸収層210が1/4波長板として機能しうる層であり、且つ、高吸収層220が偏光子として機能しうる層である場合には、低吸収層210の遅相軸と、高吸収層220の偏光吸収軸とが、厚み方向から見て、所定の角度をなすように調整することが好ましい。具体的には、前記の角度は、好ましくは40°以上、より好ましくは43°以上、特に好ましくは44°以上であり、好ましくは50°以下、より好ましくは47°以下、特に好ましくは46°以下である。低吸収層210の遅相軸と高吸収層220の偏光吸収軸とが前記のように角度をなす場合に、低吸収層210と高吸収層220との組み合わせにより、円偏光板としての機能を得ることができる。
樹脂層200の厚み100%に対する低吸収層210の厚みの割合は、通常10%以上、好ましくは15%以上であり、通常50%以下、好ましくは45%以下である。低吸収層210の割合が、前記下限値以上であることにより、基材100の表面100Uに対する樹脂層200の切断面の傾斜を、効果的に急峻にできる。また、低吸収層210の割合が、前記上限値以下であることにより、樹脂層200の切断に要する赤外レーザー光のエネルギーが過大になることを抑制できるので、基材100の傷付きを抑制することが可能である。
低吸収層210の厚みは、低吸収層210の厚みの割合が前記の範囲に収まるように設定することが好ましい。低吸収層210の具体的な厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、特に好ましくは10μm以上であり、好ましくは100μm以下である。
(高吸収層220)
高吸収層220は、9μm〜11μmの波長範囲において低吸収層210よりも高い赤外線吸収率を有する、樹脂の層である。一般に、9μm〜11μmの波長範囲における赤外線吸収率が高い化合物は、9μm〜11μm以外の実用的な波長範囲における赤外線吸収率も高い傾向がある。そこで、本発明においては、9μm〜11μmの波長範囲における赤外線吸収率を、広範な赤外波長範囲を代表する赤外線吸収率の代表値として採用している。9μm〜11μmの波長範囲における高吸収層220の具体的な赤外線吸収率は、好ましくは0.5%以上、より好ましくは1%以上、特に好ましくは2%以上である。高吸収層220の赤外線吸収率が、前記のように大きいことにより、赤外レーザー光での切断後の樹脂層200の切断面の傾斜を急峻にできる。9μm〜11μmの波長範囲における高吸収層220の赤外線吸収率の上限は、特段の制限は無いが、通常6%以下である。
低吸収層210の9μm〜11μmの波長範囲における赤外線吸収率と高吸収層220の9μm〜11μmの波長範囲における赤外線吸収率との差は、大きいことが好ましい。具体的には、前記の赤外線吸収率の差は、好ましくは0.3%以上、より好ましくは1%以上、特に好ましくは2%以上である。赤外線吸収率の差が前記のように大きいことにより、基材100の表面100Uに対する樹脂層200の切断面の傾斜を効果的に急峻にできる。前記の赤外レーザー光の吸収率の差の上限は、特段の制限は無いが、通常5%以下である。
高吸収層220に含まれる樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、部分ホルマール化ポリビニルアルコール樹脂等のビニルアルコール系樹脂;トリアセチルセルロース樹脂等のアセテート樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂;等が挙げられる。また、製造される複合パネルを表示装置の構成部材として用いる場合、高吸収層220は、表示装置において偏光子に相当する光学要素となりうる。よって、前記の樹脂の中でも、高吸収層220に含まれる樹脂としては、偏光子用の樹脂として用いられうる樹脂が好ましく、ビニルアルコール系樹脂及びアセテート樹脂が特に好ましい。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
偏光子として機能しうる高吸収層220の具体例としては、ポリビニルアルコール、部分ホルマール化ポリビニルアルコール等の適切なビニルアルコール系重合体のフィルムに、ヨウ素及び二色性染料等の二色性物質による染色処理、延伸処理、架橋処理等の適切な処理を適切な順序及び方式で施して得られるフィルム層が挙げられる。中でも、ポリビニルアルコールを含むポリビニルアルコール樹脂からなるフィルム層が好ましい。
高吸収層220が偏光子として機能しうる層である場合、その高吸収層220は、偏光吸収軸を有し、この偏光吸収軸と平行な振動方向を有する直線偏光を吸収し、これ以外の偏光を透過させうる機能を有しうる。ここで、直線偏光の振動方向とは、直線偏光の電場の振動方向を意味する。
高吸収層220の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、特に好ましくは10μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、特に好ましくは40μm以下である。高吸収層220の厚みが、前記範囲の下限値以上であることにより、赤外レーザー光のエネルギーを十分に吸収して低吸収層210の速やかな切断ができ、また、前記範囲の上限値以下であることにより、複合パネルの薄型化ができる。
(任意の層)
樹脂層200は、低吸収層210及び高吸収層220に組み合わせて、任意の層(図示せず)を含んでいてもよい。任意の層としては、例えば、低吸収層210と高吸収層220との間に設けられる接着層、高吸収層220と基材100との間に設けられる接着層、低吸収層210の高吸収層220とは反対側に設けられるハードコート層、などが挙げられる。
(樹脂層の厚み)
樹脂層200の厚みは、好ましくは2μm以上、より好ましくは10μm以上、特に好ましくは20μm以上であり、好ましくは600μm以下、より好ましくは500μm以下、特に好ましくは400μm以下である。樹脂層200の厚みが、前記範囲の下限値以上であることにより、樹脂層200の形成が容易であり、また、前記範囲の上限値以下であることにより、樹脂層200の切断を容易に行うことができる。
(複層体の製造方法)
複層体10は、通常、基材100の表面100Uに樹脂層200を設けることにより、製造する。基材100の表面100Uに樹脂層200を設ける方法に制限は無く、例えば、基材100の表面100Uに、高吸収層220及び低吸収層210を順に形成する方法によって、樹脂層200を設けてもよい。ただし、好ましくは、樹脂層200の一部又は全体に相当する樹脂フィルムを製造し、その製造した樹脂フィルムを基材100の表面100Uに貼り合わせる方法を採用する。
樹脂層200に相当する樹脂フィルムの製造方法は、任意である。好ましくは、低吸収層210に相当するフィルム及び高吸収層220に相当するフィルムをそれぞれ製造し、それらのフィルムを貼り合わせることによって、樹脂層200に相当する樹脂フィルムを製造しうる。
低吸収層210に相当するフィルムと高吸収層220に相当するフィルムとの貼り合わせ、並びに、樹脂層200に相当する樹脂フィルムの基材100の表面100Uへの貼り合わせには、必要に応じて、接着剤を用いうる。接着剤を用いる場合、通常は、貼り合わせ位置に、前記の接着剤又は当該接着剤の硬化物からなる接着層が形成される。樹脂フィルムに加えて、前記のような接着層も、樹脂層200に含まれる。接着剤は、特に限定されず、貼合対象に適した接着剤を適宜選択しうる。
好ましい接着剤を構成する材料の例としては、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、合成ゴム、ポリビニルアルコール、エポキシポリマー等のポリマー材料が挙げられる。接着剤は、例えば、石油系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、アルキド系樹脂等の粘着付与剤;フタル酸エステル、リン酸エステル、塩化パラフィン、ポリブテン、ポリイソブチレン等の軟化剤;各種充填剤;老化防止剤;などの添加剤を含みうる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
接着剤の特に好ましい例として、ポリビニルアルコール及び水溶性エポキシ樹脂を含む水溶液の接着剤が挙げられる。この接着剤は、低吸収層210と高吸収層220との接着に、特に好ましく用いうる。接着剤の別の特に好ましい例として、上記の材料のいずれかと、必要に応じて光重合開始剤とを含み、紫外線の照射により硬化させうるUV接着剤が挙げられる。この接着剤は、樹脂層200と基材100との接着に、特に好ましく用いうる。
[3.切断工程]
図3は、本発明の一実施形態に係る複合パネルの製造方法において、複層体10の樹脂層200に赤外レーザー光300を照射して、樹脂層200を切断する様子を模式的に示す断面図である。また、図4は、本発明の一実施形態に係る複合パネルの製造方法によって得られる複合パネル20を模式的に示す平面図である。さらに、図5は、本発明の一実施形態に係る複合パネルの製造方法によって得られる複合パネル20を模式的に示す断面図である。
本発明の一実施形態に係る複合パネルの製造方法は、複層体10を用意した後で、図3に示すように、複層体10の樹脂層200に赤外レーザー光300を照射して、樹脂層200を切断する工程を行う。この工程は、樹脂層200の基材100とは反対側に、赤外線レーザー光300を照射することを含む。赤外レーザー光300が照射されると、この赤外レーザー光300は樹脂層200で吸収され、赤外レーザー光300を吸収した部分で熱が生じる。この熱によって、樹脂層200に含まれる樹脂がヒュームとなって蒸発し、除去される。これにより、赤外レーザー光300を照射された部分において樹脂層200が切断され、図4及び図5に示すように、切れ目230が形成される。他方、基材100は、赤外レーザー光300によっては切断されない。これにより、基材100と、所望の形状に切断された樹脂層200とを備える複合パネル20が得られる。
赤外レーザー光300としては、赤外領域の波長を有するレーザー光を用いうる。赤外レーザー光300の具体的な波長は、切断しようとする樹脂層200に含まれる樹脂に応じて適切に設定しうる。中でも、樹脂層200の切断に適した出力が効率的に得られ、且つ、比較的安価に導入可能であることから、9μm〜12μmの範囲内の波長のレーザー光が好ましい。特に、9μm〜11μmの波長のレーザー光がより好ましく、9μm以上9.5μm以下の波長のレーザー光が特に好ましい。このような波長のレーザー光は、レーザー装置として炭酸ガスレーザー装置を用いる場合に安定して出力することができるため、複合パネル20の製造を特に良好に行うことができる。
赤外レーザー光300を発生させるレーザー装置としては、例えば、ArFエキシマレーザー装置、KrFエキシマレーザー装置、XeClエキシマレーザー装置、YAGレーザー装置(特に、第3高調波若しくは第4高調波)、YLF若しくはYVOの固体レーザー装置(特に、第3高調波若しくは第4高調波)、Ti:Sレーザー装置、半導体レーザー装置、ファイバーレーザー装置、及び炭酸ガスレーザー装置が挙げられる。これらのレーザー装置の中でも、比較的安価であり、且つフィルムの加工に適した出力が効率的に得られる観点から、炭酸ガスレーザー装置が好ましい。
赤外レーザー光300としては、ガウシアンモードのレーザー光を用いてもよいが、トップハット状のエネルギー分布を有するレーザー光を用いることが好ましい。前記のトップハット状のエネルギー分布は、平坦状のエネルギー分布であり、トップフラット状のエネルギー分布と呼ばれることもある。
ここで、レーザー光のエネルギー分布は、レーザー光のビームの光軸からの距離を横軸に取り、当該距離の位置におけるエネルギー量を縦軸に取ったグラフにより表現しうる。トップハット状のエネルギー分布の例を、図6を参照して説明する。図6は、トップハット状のエネルギー分布を有するレーザー光の、エネルギー分布の一例を示すグラフである。図6の横軸は、レーザー光のビームの光軸からの距離を、ある方位角を正、その反対の方位角を負として示し、図6の縦軸は、当該距離の位置におけるレーザー光のエネルギー量を示している。図6に示す例では、エネルギー分布は、矢印A11で示す幅において、平坦状となっている。
他方、図7は、ガウシアンモードのレーザー光のエネルギー分布の一例を示すグラフである。図7に示すように、ガウシアンモードのレーザー光は、通常、レーザー光のビームの中心の光軸においてエネルギーが高く、光軸から離れた位置ではエネルギーが低い状態となっている。そのため、このガウシアンモードのレーザー光のエネルギー分布は、平坦な部分を有さない形状となっている。
切断工程において用いる赤外レーザー光300としては、少なくとも一の方位において、トップハット状のエネルギー分布を示すレーザー光を用いることが好ましい。トップハット状のエネルギー分布を有するレーザー光を赤外レーザー光300として用いることにより、図5に示すように、基材100の表面100Uに対する樹脂層200の切断面240の傾斜を、効果的に急峻にできる。例えば、赤外レーザー光300としては、当該レーザー光のビームの光軸に垂直な断面において、全ての方位角においてトップハット状のエネルギー分布を有するレーザー光が、好ましい。また、例えば、赤外レーザー光300としては、当該レーザー光のビームの断面の長軸方向においてエネルギー分布がトップハット状であり、短軸方向においてガウシアン分布であるレーザー光も、好ましい。
トップハット状のエネルギー分布を示すレーザー光を用いると、通常は、切れ目230における樹脂層200の盛り上がりを抑制できる。ガウシアンモードのレーザー光を用いると、光軸に近い位置では樹脂が高温になって昇華する一方、光軸から遠い位置では樹脂は昇華するほどの高温にはならずに流動化する。そのため、光軸に近い位置で昇華した樹脂の体積膨張によって流動化した樹脂が押し上げられることにより、切れ目200において樹脂層200の盛り上がりが生じる可能性がある。しかし、トップハット状のエネルギー分布を示すレーザー光を用いれば、前記のような樹脂層200の盛り上がりを、抑制することが可能である。そのため、切れ目230における樹脂層200の平滑性を、効果的に高めることができる。
前記のトップハット状のエネルギー分布において、平坦な領域におけるエネルギー量のバラツキ(図6の矢印A12に対応)は、平坦な領域の平均のエネルギー量に対して、好ましくは±10%、より好ましくは±7%、さらにより好ましくは±6%の範囲内である。このようなエネルギー分布を有するレーザー光を用いることにより、基材100へのダメージを低減しながら、確実に樹脂層200を切断することができる。
トップハット状のエネルギー分布を有するレーザー光は、ガウシアンモード又はそれに近いモードで出射されたレーザー光の経路内にビーム整形器を配置し、エネルギー分布を変換することにより、得うる。ビーム整形器の例としては、入射したビームを屈折、回折、反射、及びこれらの組み合わせによって整形し、ビーム内のエネルギー分布を再配分する整形器が挙げられる。整形器の具体例としては、特開2004−42140号公報又は特表2012−521890号公報に記載のもの、並びに、ガウシアンモードのレーザー光を、少なくとも一の方位においてトップハット状のエネルギー分布を有するレーザー光に変換しうる市販の整形器(例えば、大興製作所社製のトップハットモジュール)が挙げられる。
赤外レーザー光300は、連続レーザー光でもよく、パルスレーザー光でもよいが、パルスレーザー光が好ましい。赤外レーザー光300としてパルスレーザー光を用いることにより、熱の発生を抑えて加工することができる。
パルスレーザー光を用いる場合、そのパルスレーザー光の周波数は、好ましくは10kHz以上、より好ましくは15kHz以上、特に好ましくは20kHz以上であり、好ましくは80kHz以下、より好ましくは75kHz以下、特に好ましくは70kHz以下である。パルスレーザー光の周波数を前記範囲の下限値以上にすることによって、加工速度を速めることができ、また、前記範囲の上限値以下にすることによって、より熱の影響を抑えた加工ができる。
パルスレーザー光を用いる場合、パルス幅の範囲は、好ましくは10ナノ秒以上、より好ましくは12ナノ秒以上、特に好ましくは15ナノ秒以上であり、好ましくは30ナノ秒以下、より好ましくは28ナノ秒以下、特に好ましくは25ナノ秒以下である。パルスレーザー光のパルス幅を、前記範囲の下限値以上にすることによって、加工速度を速めることができ、また、前記範囲の上限値以下にすることによって、より熱の影響を抑えた加工ができる。
赤外レーザー光300の出力は、好ましくは1W以上、より好ましくは5W以上、さらに好ましくは15W以上であり、好ましくは120W以下、より好ましくは100W以下、さらに好ましくは80W以下、特に好ましくは70W以下である。赤外レーザー光300の出力を前記範囲の下限値以上にすることによって、赤外レーザー光300の照射量の不足を抑制して、切断工程を安定して行うことができる。また、赤外レーザー光300の出力を前記範囲の上限値以下とすることによって、樹脂層200の不所望な変形を抑制したり、基材100へのダメージを抑制したりできる。
図3に示すように、赤外レーザー光300の照射は、通常、樹脂層200の基材100とは反対側に行う。したがって、基材100とは反対側の表面200Uが、赤外レーザー光300を受容する面となる。
図4及び図5に示すように、樹脂層200の切れ目230は、赤外レーザー光300の照射を受けた部分において形成される。よって、赤外レーザー光300が樹脂層200に当たる照射点は、切断後に得ようとする樹脂層200の形状に応じて設定することが好ましい。
切断工程においては、通常、赤外レーザー光300が樹脂層200の表面200Uを所望の線に沿って走査するように、赤外レーザー光300を樹脂層200に照射する。これにより、赤外レーザー光300の照射点が、樹脂層200の表面200Uを所望の線に沿って移動するので、切断したい形状に樹脂層200を切断できる。この際、赤外レーザー光300の照射点に樹脂層200の表面200Uを移動させるために、赤外レーザー光300の照射装置を移動させてもよく、複層体10を移動させてもよく、赤外レーザー光300及び複層値10の両方を移動させてもよい。
本実施形態では、赤外レーザー光300の照射点が樹脂層200の表面200Uを楕円を描くように移動することで、楕円形の切れ目230が形成されるように切断を行った例を示して説明する。
赤外レーザー光300の照射点が樹脂層200の表面200Uを移動する際の移動速度は、赤外レーザー光300の出力、樹脂層200の厚み等の条件に応じて、適切に設定しうる。前記の移動速度の具体的な範囲は、好ましくは5mm/秒以上、より好ましくは10mm/秒以上、特に好ましくは20mm/秒以上であり、好ましくは500mm/秒以下、より好ましくは450mm/秒以下、特に好ましくは400mm/秒以下である。前記の移動速度を前記範囲の下限値以上にすることによって、生じる熱を抑え、良好な切断面240を得ることができる。また、前記の移動速度を前記範囲の上限値以下にすることによって、赤外レーザー光300の走査回数を減らし効率的な切断ができる。
樹脂層200をある線に沿って切断するために赤外レーザー光300を照射する際、その線に沿った赤外レーザー光300の走査回数は、1回でもよく、2回以上でもよい。1回の走査で切断することにより、切断工程に要する時間を短くできる。また、2回以上にすることにより、1回当たりの赤外レーザー光300の照射で樹脂層200に生じる熱を小さくできるので、切断時の熱による樹脂層200の変形を効果的に抑制できる。
一の方位のみにおいてトップハット状のエネルギー分布を示す赤外レーザー光300を用いる場合、切断工程において、当該方位と垂直な方向に赤外レーザー光300を移動させることが好ましい。すなわち、赤外レーザー光300が樹脂層200に当たる照射点の移動方向と、赤外レーザー300がトップハット状のエネルギー分布を示す方位とは、垂直であることが好ましい。トップハット状のエネルギー分布を示す方位と垂直な方向に赤外レーザー光300を移動させることにより、基材100の表面100Uに対する樹脂層200の切断面240の傾斜を効果的に急峻にできる。
赤外レーザー光300の照射角度(赤外レーザー光300の光軸と、樹脂層200の表面200Uとが交わる角度)は、垂直方向とすることが、基材100の表面100Uに対する樹脂層100の切断面240の傾斜を効果的に急峻にできる観点から、好ましい。しかしながら、照射角度はこれに限られず、垂直方向に対して好ましくは0°〜2°の範囲、より好ましくは0°〜1°の範囲の角度を有していてもよい。
[4.任意の工程]
複合パネル20の製造方法は、上述した工程に組み合わせて、更に任意の工程を含みうる。例えば、切断工程の結果複数の部分に分けられた樹脂層200のうち一部を、基材100から剥離する工程を行いうる。
また、複合パネル20に、更に任意の層を設ける工程を行ってもよい。
[5.複合パネル]
上述した製造方法によって、図4及び図5に示すような、基材100、及び、切断された樹脂層200を備える複合パネル20が得られる。この複合パネル20の樹脂層200は、切れ目230にある端面として、切断面240を有している。この切断面240は、樹脂層200の切断によって現れたものであり、樹脂層200の表面200Uに平行な面内方向において、樹脂層200の外縁200Eよりも内側(更に通常は、基材100の外縁100Eよりも内側)にある。
図8は、本発明の一実施形態に係る複合パネル20を、切れ目230の近傍で切った断面を拡大して模式的に示す断面図である。
図8に示すように、上述した製造方法で製造された複合パネル20において、樹脂層200の切断面240は、基材100の表面100Uに対して急峻に傾斜している。具体的には、樹脂層200の切断面240が、基材100の表面100Uに対してなす平均角度θが、通常75°以上、好ましくは77°以上、より好ましくは80°以上である。また、前記の平均角度θの上限は、理想的には90°以下であるが、現実的には85°以下であり、84°以下になることが多い。以下の説明において、樹脂層200の切断面240が基材100の表面100Uに対してなす平均角度θを、適宜「平均端面角度」ということがある。
通常、複合パネル20は、基材100の表面100Uに対する垂直方向から観察される。複合パネル20が観察される場合、樹脂層200は、所定の光学機能を発揮することが求められる。ところが、切断面240は、一般に、樹脂層200に求められる光学機能を発揮することが難しい。そのため、樹脂層200の全面積に占める、光学機能を発揮できる部分の面積を大きくして、樹脂層200の効率的な活用を行う観点からは、基材100の表面100Uの面内方向における樹脂層200の切断面240の面積(以下、適宜「額縁面積」ということがある。)を狭くすることが望ましい。これに関し、上述した複合パネル20の樹脂層200は、平均端面角度θが90°に近いことにより、樹脂層200の額縁面積を狭くできる。よって、樹脂層200の効率的な活用が可能である。
ここで、樹脂層200の平均端面角度θの測定方法を説明する。
樹脂層200の切断面240が単一の平面である場合、その切断面240が基材100の表面100Uに対してなす角度を、平均端面角度θとして測定しうる。ただし、一般に、切断面240は、単一の平面にはなっていない。通常、樹脂層200の切断面240は、樹脂層200に含まれる層毎に異なる傾斜の面の集合となっている。そこで、樹脂層200に含まれる層の数に応じて、下記の方法によって、平均端面角度θを測定する。
まず、図8に示すように、樹脂層200が低吸収層210及び高吸収層220の2層のみを含む場合を説明する。
この場合、樹脂層200を、切れ目230に交差するように切断する。この切断は、当該切断で現れる断面が、レーザー光の照射点の移動方向に対して垂直な平面になるように行う。そして、この切断によって現れた断面を撮影する。
その後、撮影された断面の像において、樹脂層200に含まれる各層(即ち、低吸収層210及び高吸収層220)の端面241及び242の中心点P210及びP220を特定する。ここで、前記の中心点P210及びP220は、各層の厚み方向の中心点を表す。その後、これらの中心点P210及びP220を通る直線L1を求める。そして、この直線L1が基材100の表面100Uに対してなす角度を、平均端面角度θとして求める。
次に、樹脂層200が3層以上の層を含む場合を説明する。図9は、本発明の一例に係る複合パネル21を、切れ目230の近傍で切った断面を拡大して模式的に示す断面図である。この図9では、低吸収層210及び高吸収層220に組み合わせて、更に任意の層250を備える樹脂層200を備える複合パネル21を示す。
この場合、樹脂層200が2層のみを含む場合と同様に、樹脂層200を切れ目230に交差するように切断し、この切断によって現れた断面を撮影する。
その後、撮影された断面の像において、樹脂層200に含まれる各層(図9では、低吸収層210、高吸収層220及び任意の層250)の端面241、242及び245の中心点P210、P220及びP250を特定する。ここで、前記の中心点P210、P220及びP250は、各層の厚み方向の中心点を表す。その後、基材100の表面100Uに平行な横軸、及び、樹脂層200の厚み方向に平行な縦軸を有する座標を設定し、前記の各層の中心点P210、P220及びP250の座標から、最小二乗法によって近似直線L2を計算する。そして、この近似直線L2が基材100の表面100Uに対してなす角度を、平均端面角度θとして求める。
以下、基材100の表面100Uに対して急峻に傾斜した切断面240が得られる仕組みを、従来技術と対比しながら説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、この仕組みによって限定されるものでは無い。
従来の一般的な切断方法では、基材上の樹脂層の前記基材とは反対側に赤外レーザー光を照射すると、赤外レーザー光のエネルギーは、樹脂層の浅い位置で消費され、その残りの赤外レーザー光が樹脂層の深い位置に届けられていた。ここで、樹脂層の浅い位置とは、基材からの距離が遠い位置を表し、樹脂層の深い位置とは、基材からの距離が近い位置を表す。そのため、樹脂層の浅い位置では赤外レーザー光による発熱が大きく、樹脂層の深い位置では赤外レーザー光による発熱は小さかった。したがって、基材から遠い位置ほど大量の樹脂が除去されるので、基材の表面に対する樹脂層の切断面の傾斜は、緩やかになり易かった。
この点、赤外レーザー光のエネルギーを大きくすると、切断面の傾斜を急峻にできると考えられる。しかし、環状オレフィン重合体は、赤外レーザー光の吸収が小さい。よって、環状オレフィン重合体を含む樹脂層を赤外レーザー光で切断しようとすれば、赤外レーザー光のエネルギーを大きくすることが求められる。よって、切断面の傾斜を急峻にしようとすると、赤外レーザー光のエネルギーを更に大きくすることになるので、基材が傷つく可能性があった。
これに対し、上述した実施形態のように低吸収層210と高吸収層220とを組み合わせて含む樹脂層200では、図3に示すように、赤外レーザー光300は、低吸収層210で大きなエネルギーを消費することなく、高吸収層220まで届く。そして、高吸収層220で大きな発熱が生じ、この熱によって高吸収層220だけでなく、低吸収層210も切断される。具体的には、赤外レーザー光300を吸収した高吸収層200の樹脂が昇華し、昇華した樹脂によって低吸収層210へと伝熱して低吸収層210の樹脂が溶融又は昇華し、低吸収層210に開放空間が形成された時点で、切断が達成される。そうすると、低吸収層210は、高吸収層220から伝わってきた熱によって切断されるのであるから、高吸収層220よりも低吸収層210の除去量が過大にはならない。その結果、基材100の表面100Uに対する樹脂層200の切断面240の傾斜を、急峻にできる。
上述した複合パネル20は、液晶表示装置及び有機EL表示装置等の画像表示装置の構成部材として、好適に用いうる。画像表示装置に設けられる場合、低吸収層210は1/4波長板として機能することが好ましく、高吸収層220は偏光子として機能することが好ましい。
前記のような複合パネル20は、通常、液晶表示装置において、液晶セル、基材100及び樹脂層200がこの順に並ぶように、設けられる。これにより、液晶表示装置の画像を円偏光によって表示させることが可能になるので、偏光サングラスを通して見た時の画像の視認性を向上させることができる。
また、前記のような複合パネル20は、通常、有機EL表示装置において、有機エレクトロルミネッセンス素子、樹脂層200及び基材100がこの順に並ぶように、設けられる。これにより、樹脂層200を円偏光板として機能させることによって外光の反射を抑制することができる。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
[評価方法]
(フィルムの赤外線吸収率の測定方法)
9μm〜11μmの波長領域において、波長0.01μm毎で、試料であるフィルムの吸収率を測定し、その測定値の平均値を、前記フィルムの赤外線吸収率として求めた。測定は、フーリエ変換赤外分光分析装置(パーキンエルマージャパン社製「Frontier MIR/NIR」)を用いて、透過法によって行った。
(樹脂層の切断面の平均端面角度の測定方法)
複合パネルを、樹脂層がレーザー光によって切断された部分で、#180ガーネット研磨剤を混合した水によるウォータージェット法を用いて切断した。この切断は、ウォータージェットによる切断で現れる断面が、レーザー光の照射点の移動方向に対して垂直になるように、行った。そして、ウォータージェットによる切断によって現れた断面を撮影した。
撮影された断面の写真において、樹脂層に含まれる各層の端面の中心点(厚み方向の中心点)を、特定した。そして、基材の表面に平行な横軸、及び、樹脂層の厚み方向に平行な縦軸を有する座標を設定し、前記の各層の中心点の座標から、最小二乗法によって近似直線を計算した。この近似直線が、基材の表面に対してなす角度を、平均端面角度θとして求めた。
[製造例1.環状オレフィン樹脂フィルムの製造]
(開環重合工程)
ジシクロペンタジエンと、テトラシクロドデセンと、メタノテトラヒドロフルオレンとを、重量比60/35/5で含むモノマー混合物を用意した。
窒素で置換した反応器に、前記のモノマー混合物7部(重合に使用するモノマー全量に対して1重量%)、及び、シクロヘキサン1600部を加え、更にトリ−i−ブチルアルミニウム0.55部、イソブチルアルコール0.21部、反応調整剤としてジイソプロピルエーテル0.84部、及び分子量調節剤として1−ヘキセン3.24部を添加した。
ここに、シクロヘキサンに溶解させた濃度0.65%の六塩化タングステン溶液24.1部を添加して、55℃で10分間攪拌した。
次いで、反応系を55℃に保持しながら、前記のモノマー混合物693部と、シクロヘキサンに溶解させた濃度0.65%の六塩化タングステン溶液48.9部とをそれぞれ系内に150分かけて連続的に滴下した。
その後、30分間反応を継続し、重合を終了して、開環重合体を含む開環重合反応液を得た。重合終了後、ガスクロマトグラフィーにより測定したモノマーの重合転化率は、重合終了時で100%であった。
(水素添加工程)
得られた開環重合反応液を耐圧性の水素添加反応器に移送し、ケイソウ土担持ニッケル触媒(日揮化学社製「T8400RL」、ニッケル担持率57%)1.4部及びシクロヘキサン167部を加え、180℃、水素圧4.6MPaで6時間反応させて反応溶液を得た。この反応溶液を、ラジオライト#500を濾過床として、圧力0.25MPaで加圧濾過(石川島播磨重工社製「フンダフィルター」)して水素添加触媒を除去し、開環重合体の水素添加物を含む無色透明な水素添加物溶液を得た。
(濾過工程)
次いで、この水素添加物溶液を、フィルター(キュノー社製「ゼータープラスフィルター30H」、孔径0.5μm〜1μm)にて順次濾過し、さらに別の金属ファイバー製フィルター(ニチダイ社製、孔径0.4μm)にて更に濾過して、水素添加物溶液から微小な固形分を除去した。
(乾燥工程及び成形工程)
次いで、この水素添加物溶液を、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所社製)を用いて、温度270℃、圧力1kPa以下で乾燥した。これにより、水素添加物溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去して、樹脂固形分を得た。この樹脂固形分を、前記の濃縮乾燥機に直結したダイから溶融状態でストランド状に押し出した。押し出された樹脂固形分を、冷却後、ペレタイザーでカットして、開環重合体の水素添加物を含むペレット状の環状オレフィン樹脂を得た。
(フィルムの製造)
スクリュー径=20mmφ、圧縮比3.1、スクリューの有効長さLとスクリューの直径Dとの比L/D=30のスクリューを備えたハンガーマニュホールドタイプのTダイ式のフィルム溶融押出成形機(据置型、GSIクレオス社製)を用意した。このフィルム溶融押出成形機を使用して、前記の環状オレフィン樹脂をフィルム状に成形し、厚み80μmの環状オレフィン樹脂フィルム(以下「COPフィルム」ということがある。)を得た。成形時の条件は、ダイリップ0.8mm、Tダイの幅300mm、溶融樹脂温度260℃、冷却ロール温度110℃であった。得られたCOPフィルムの赤外線吸収率は、0.2%であった。
[実施例1]
(加工用複層体の製造)
偏光子フィルムとして、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向している厚み32μmのフィルム(以下「PVAフィルム」ということがある。)を用意した。このPVAフィルムの赤外線吸収率は、0.6%であった。
また、偏光子保護フィルムとして、厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルム(以下「80TACフィルム」ということがある。)を用意した。このトリアセチルセルロースフィルムの赤外線吸収率は、70%以上であった。
さらに、表面保護フィルムとして、厚み60μmのトリアセチルセルロースフィルム(以下「60TACフィルム」ということがある。)を用意した。このトリアセチルセルロースフィルムの赤外線吸収率は、70%以上であった。
また、粘着剤として、日東電工社製「CS9621」を用意した。この粘着剤の厚み25μmでの赤外線吸収率は、0.55%であった。
用意した前記のフィルムを、粘着剤を用いて貼り合わせて、「80TACフィルム/PVAフィルム/80TACフィルム/粘着層/COPフィルム/粘着層/60TACフィルム」の層構成を有する複層樹脂フィルムを得た。ここで、粘着層の厚みは、いずれも25μmであった。
前記の複層樹脂フィルムを、基材としてのガラス板(コーニング社製「Eagle XG」)の一方の面上に、粘着剤を用いて貼合した。これにより、「ガラス板/粘着層/80TACフィルム/PVAフィルム/80TACフィルム/粘着層/COPフィルム/粘着層/60TACフィルム」の層構成を有する加工用複層体を得た。これらの層のうち、「粘着層/80TACフィルム/PVAフィルム/80TACフィルム/粘着層/COPフィルム/粘着層/60TACフィルム」が、樹脂層に相当する。この樹脂層の厚みを測定したところ、407μmであった。また、ガラス板と複層樹脂フィルムとの間の粘着層の厚みは、25μmであった。
(樹脂層の切断)
前記の加工用複層体の樹脂層側の面に、レーザー光照射装置(Coherent社製「DIAMOND E−250i」)を用いて、波長9.4μmの炭酸ガスレーザー光を垂直に照射し、樹脂層を切断した。レーザー光の出力の調整は、24Wとした。照射に際し、レーザー光は、照射と停止とを周波数20kHzの周期で繰り返すパルスレーザー光とした。照射装置から照射されたトップハット状のエネルギー分布を有する平行光線であるレーザー光を、DOE(回折光学素子)を備えるビーム整形器を用いて整形することにより、レーザー光のビームのエネルギー分布を、光軸に垂直な面方向に略均一な平坦状のエネルギー分布(トップハット状)とした。加工用複層体を移動させることによって、レーザー光が樹脂層に当たる照射点を、樹脂層の面上を走査するように移動させることで、走査的な樹脂層の切断を行なった。走査速度(照射点の移動速度)は500mm/s、走査回数は1回とした。これにより、基材及び樹脂層を備える複合パネルを得た。
得られた複合パネルの樹脂層の端面としての切断面が、基材の表面に対してなす平均端面角度θを、上述した方法で測定した。
[実施例2〜5及び比較例1〜6]
複層樹脂フィルムを製造するために貼り合わせるフィルムの組み合わせを変更することによって、複層樹脂フィルムの層構成を、表1に示すように変更した。ここで、実施例4及び比較例4で用いた略称「PE」で示すフィルムは、厚み200μmのポリエチレンフィルムを示す。また、いずれの実施例及び比較例でも、粘着層の厚みは、25μmであった。
以上の事項以外は、実施例1と同様にして、複合パネルの製造及び評価を行った。
ただし、比較例2と比較例5とは、同じ実験を行った結果を示す。
[結果]
実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。下記の表において、略称の意味は、以下の通りである。
G:ガラス基材。
A:粘着層。
80TAC:厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルム。
60TAC:厚み60μmのトリアセチルセルロースフィルム。
PVA:ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向している厚み32μmのフィルム。
COP:厚み80μmの環状オレフィン樹脂フィルム。
PE:厚み200μmのポリエチレンフィルム。
COP割合:樹脂層の厚みに対するCOPフィルムの厚みの割合。
Figure 0006844180
[検討]
実施例1〜5に示すように、樹脂層が低吸収層としてのCOPフィルムと高吸収層としてのPVAフィルムとを組み合わせて含んでいると、赤外レーザー光によって、樹脂層を切断することができた。
特に、実施例1と比較例1との対比からは、COPフィルムが、厚み方向において樹脂層の中央部よりもガラス板から遠くにある場合に、切断面を急峻にできることが分かる。
また、実施例2と比較例2との対比からは、COPフィルムが樹脂層の表面にあることにより、特に効果的に切断面を急峻にできることが分かる。
さらに、実施例3と比較例3との対比からは、一般的な偏光子であるPVAフィルムの保護フィルムとしてCOPフィルムを用いた場合に、特に効果的に切断面を急峻にできることが分かる。特に、比較例3に示すように、一般的な偏光子保護フィルムであるトリアセチルセルロースフィルムを用いた場合と比べると、平均端面角度θにおいて20°という大きな改善が得られている。
また、実施例4と比較例4との対比からは、COPフィルムが樹脂層の厚み方向の中央付近にあっても、切断面を急峻にできることが分かる。
さらに、実施例5と比較例5の対比からは、偏光子保護フィルムとしてCOPフィルムを用いていると、樹脂層の表面材料が同じであっても、切断面を急峻にできることが分かる。
ただし、比較例6から分かるように、樹脂層において低吸収層の厚みの割合が過大であると、基材としてのガラス板を切断しないで低吸収層を切断できないことから、樹脂層における低吸収層の厚みの割合には適切な範囲があることが確認された。
10 複層体
20 複合パネル
21 複合パネル
100 基材
200 樹脂層
210 低吸収層
220 高吸収層
230 切れ目
240 切断面
241 低吸収層の端面
242 高吸収層の端面
245 任意の層の端面
250 任意の層
300 赤外レーザー光

Claims (4)

  1. 基材、及び、前記基材の表面に設けられた樹脂層を備える複層体の、前記樹脂層を切断する工程を含む、複合パネルの製造方法であって、
    前記樹脂層が、環状オレフィン重合体を含む低吸収層と、9μm〜11μmの波長範囲における赤外線吸収率が前記低吸収層よりも高い高吸収層とを、前記基材とは反対側からこの順に備え、
    前記樹脂層の厚みに対する前記低吸収層の厚みの割合が、10%〜50%であり、
    前記基材の前記表面に、前記高吸収層が形成されているか、又は、前記高吸収層と前記基材との間に設けられる接着層によって前記高吸収層が貼り合わせられており、
    前記工程が、前記樹脂層の前記基材とは反対側に9μm〜11μmの範囲内の波長を有する赤外レーザー光を照射して、前記基材を切断しないで前記樹脂層を切断することを含む、複合パネルの製造方法。
  2. 前記低吸収層は、厚み方向において、前記樹脂層の中央部よりも、前記基材から遠くに設けられている、請求項1記載の複合パネルの製造方法。
  3. 前記赤外レーザー光が、トップハット状のエネルギー分布を有する、請求項1又は2記載の複合パネルの製造方法。
  4. 基材、及び、前記基材の表面に設けられた樹脂層を備える複合パネルであって、
    前記樹脂層が、環状オレフィン重合体を含む低吸収層と、9μm〜11μmの波長範囲における赤外線吸収率が前記低吸収層よりも高い高吸収層とを、前記基材とは反対側からこの順に備え、
    前記樹脂層の厚みに対する前記低吸収層の厚みの割合が、10%〜50%であり、
    前記基材の前記表面に、前記高吸収層が形成されているか、又は、前記高吸収層と前記基材との間に設けられる接着層によって前記高吸収層が貼り合わせられており、
    前記樹脂層の端面が、前記基材の表面に対してなす平均角度が、75°〜90°である、複合パネル。
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