JP6476779B2 - 光学フィルムの製造方法、及び偏光板の製造方法 - Google Patents

光学フィルムの製造方法、及び偏光板の製造方法 Download PDF

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本発明は、光学フィルムの製造方法、偏光板の製造方法、及び光学フィルムに関する。
一般的に、光学フィルムの製造の工程においては、光学フィルムに、打痕と呼ばれる不所望な凹凸形状が発生することがある。例えば、表示装置に用いる偏光板の保護フィルムとして用いられる光学フィルムが打痕を有していると、かかる偏光板を用いた表示装置の表示性能が損なわれるといった不具合が生じうる。したがって、このような打痕の発生が低減するような製造を行うことが求められる。
打痕の発生については、従来より、フィルム巻き取りのためのコアに存在するゴミや傷によるものが知られていた(特許文献1)。しかしながら製造工程の他の段階においても、打痕が発生しうる場合がある。
例えば、熱可塑性樹脂を用いて光学フィルムを製造する場合、かかる樹脂のフィルムとマスキングフィルムとを重ね合わせて、これらを一対のロールにより加圧処理して圧着させて、マスキングフィルムにより保護された熱可塑性樹脂のフィルムを得ることがある。このような加圧処理の工程においては、フィルムとロールとの間に異物が入ることにより、フィルムの表面に打痕が発生することがある。
特開2008−216418号公報
光学フィルムの製造に際しては、打痕の影響を低減するために、打痕の数、及びその高さをなるべく低減するような緩和の処理が求められる。加えて、そのような処理を行う場合に、光学フィルムの光学的性能が損なわれないことが求められる。具体的には、光学フィルムに不所望な異方性の変化が生じないようにすることが求められる。
従って、本発明の目的は、打痕の緩和率が高く、且つフィルムに不所望な異方性の変化を与えることが少ない、光学フィルムの製造方法及び偏光板の製造方法、並びに、打痕が少なく光学的性能が高い光学フィルムを提供することにある。
本発明者は、上述した課題を解決するべく検討し、特に、フィルムに張力を付加することにより打痕を緩和することについて検討した。その結果、打痕の緩和の条件を特定のものとすることにより、高い打痕の緩和率を達成することができ、且つ、打痕の緩和に際してのフィルムの異方性の変化を低減し、光学フィルムの製造において有用な打痕の緩和が可能であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明によれば、下記〔1〕〜〔6〕が提供される。
〔1〕 1層以上の、熱可塑性樹脂層を含む光学フィルムの製造方法であって、
前記熱可塑性樹脂のフィルムを、
(i)張力50N/m以上〜200N/m以下
(ii)処理温度(Tg−80)℃〜(Tg−30)℃、但しTgは前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度(℃)、
(iii)処理時間30〜200秒
の条件による打痕緩和処理に供する打痕緩和工程を含む、光学フィルムの製造方法。
〔2〕 前記打痕緩和工程による下記式(1)で求められる打痕緩和率が0.2以上であり、下記式(2)で示される正面位相差変化量が1.0nm以下である、〔1〕に記載の光学フィルムの製造方法。
打痕緩和率=1.0−(打痕緩和処理後の打痕高さ/打痕緩和処理前の打痕高さ) ・・・式(1)
正面位相差変化量=|打痕緩和処理前の正面位相差−打痕緩和処理後の正面位相差| ・・・式(2)
〔3〕 得られる光学フィルムが長尺状フィルムである、〔1〕又〔2〕に記載の光学フィルムの製造方法。
〔4〕 前記熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂が、脂環式構造含有重合体を含有する樹脂である、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
〔5〕 偏光板の製造方法であって、
〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法により得られた光学フィルムと、偏光子とを貼合する工程を含む、製造方法。
〔6〕 〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法により製造された光学フィルムであって、
フィルム表面に存在する打痕高さが、1μm未満である、光学フィルム。
本発明の光学フィルムの製造方法では、打痕の緩和率が高く、且つフィルムに不所望な異方性の変化を与えることが少なく、高品質な本発明の光学フィルムを効率的に製造することができる。また本発明の偏光板の製造方法では、高品質な偏光板を効率的に製造することができる。
図1は、本発明の製造方法で用いる熱可塑性樹脂のフィルムを調製する工程の一例を概略的に示す断面図である。 図2は、図1に示した打痕139の具体的な一例を、概略的に示す断面図である。
以下、実施形態及び例示物等を示して本発明について詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。
以下の説明において、本発明の方法を実施するための部材の構成要素の方向が「平行」または「直交」とは、本発明の効果を著しく損なわない範囲内(例えば±5°)での誤差を含んでいてもよい。
以下の説明において、「(メタ)アクリル」といった表現は、アクリル、メタクリル又はこれらの組み合わせを意味する。例えば、(メタ)アクリル重合体とは、アクリル重合体(アクリル酸、アクリル酸エステル等の重合体)、メタクリル重合体(メタクリル酸、メタクリル酸エステル等の重合体)、又はこれらの組み合わせを意味する。
以下の説明において、「長尺状」のフィルムとは、フィルムの幅に対して、少なくとも5倍以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。
以下の説明において、「偏光板」とは、剛直な板状の部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルム(シートも含む)のように可撓性を有する部材も含む。
〔1.光学フィルムの製造方法〕
本発明の光学フィルムの製造方法は、1層以上の熱可塑性樹脂層を含む光学フィルムの製造方法であって、熱可塑性樹脂のフィルムを、特定の条件による打痕緩和処理に供する打痕緩和工程を含む。
〔1.1熱可塑性樹脂のフィルム〕
本発明において、「熱可塑性樹脂のフィルム」とは、打痕緩和工程に供するフィルムである。熱可塑性樹脂のフィルムは、構成する層として、1層以上の熱可塑性樹脂層のみを含むフィルム、又は1層以上の熱可塑性樹脂層と、他の1層以上の任意の層とを含むフィルムである。
熱可塑性樹脂のフィルムの好ましい例としては、1層以上の熱可塑性樹脂層とマスキングフィルムとを含む複層物が挙げられる。このような複層物の製造は、通常、熱可塑性樹脂層を構成するフィルムとマスキングフィルムとを重ね合わせて、これらを一対のロールにより加圧処理して圧着させることにより行われる。このような加圧処理の工程においては、フィルムとロールとの間に異物が入ることにより、フィルムの表面に打痕が発生することが多い。本発明の光学フィルムの製造方法は、このような打痕を有効に緩和しうるので、このような加圧処理工程を含むフィルムの製造において、有用に適用しうる。
このような複層物を調製する工程を、図1を参照して説明する。図1は、本発明の製造方法で用いる熱可塑性樹脂のフィルムを調製する工程の一例を概略的に示す断面図である。図1において、加圧処理前の複層物110及び加圧処理後の複層物(以下において、単に「加圧処理複層物」という場合がある。)130は、その長手方向に平行な面で切断した断面図として示される。
図1の例において、複層物110は、熱可塑性樹脂の長尺状のフィルム111を、長尺状のマスキングフィルム112と、長尺方向を揃えて連続的に重ね合わせてなるものである。この複層物110を、矢印A1の方向に搬送し、ゴムロール121及び金属ロール122との間に導き、これらのロールで圧力を加えることにより加圧処理し、加圧処理複層物130が得られる。この例では、複層物110は、異物の緩和が比較的良好になされるよう、熱可塑性樹脂層111側の面がゴムロール121に接し、マスキングフィルム112側の面が金属ロール122に接するよう導いている。硬質な金属ロール122と柔軟なゴムロール121とを組み合わせて用いることにより、金属ロール122の周面により規定される歪みの無い平坦な面への加圧がなされ、その結果、加圧処理後の熱可塑性樹脂の長尺状のフィルム131及びマスキングフィルム132とを含む、加圧処理複層物130が得られる。加圧処理に際して加える圧力は、好ましくは0.2N/mm以上、より好ましくは0.3N/mm以上であり、一方好ましくは0.5N/mm以下、より好ましくは0.4N/mm以下である。このように、加圧処理を行うことにより、熱可塑性樹脂のフィルムとマスキングフィルムとの間の空気を押出すことができ、高品質の圧着を達成することができる。また、これらのフィルムの密着性を高めることができる。
図1の例においては、金属ロール122に接したクリーニングロール123を併せて設け、金属ロール122の周面上の異物を除去している。さらに、フィルム製造の工程は、通常、空気中に浮遊する異物が少ないクリーンルーム内において行い、異物の存在量をなるべく少なくする。しかしながら、それらの異物低減の手段を講じてもなお、金属ロール122とマスキングフィルム112との間に入る異物129が完全に存在しないようにすることはできず、その結果、加圧処理複層物130には不所望な打痕139が形成される。図1の例に示す通り、打痕139は、通常、ゴムロール121の変形等のため、異物が存在した側と反対の面において凸になり、その高さHは、打痕による不良の度合いの指標となる。
図2は、図1に示した打痕139の具体的な一例を、概略的に示す断面図である。図2において、加圧処理複層物130は、その平滑な面131Uに垂直で、且つ打痕139の高さの最も高い点Pを通る面で切断した断面図として示される。図2の例に示す通り、打痕139は通常、異物の形状を反映して凸になった部分を中心に不定形状となり、中心近くに、高さが最も高くなる位置Pが存在する。平滑な面131Uを基準面とし、当該基準面からこの位置Pまでの高さHを、打痕の高さとして計測しうる。
打痕の高さの数値は、干渉式の反射顕微鏡(例えばZYGO Canon社製)にてフィルムの表面形状を観察し、そのデータを元に高さを求めることにより、得ることができる。
打痕緩和工程に供する前の、熱可塑性樹脂のフィルムにおける打痕の数の上限は、好ましくは10個/m以下、より好ましくは5個/m以下である。また、打痕の平均の高さの上限は、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは3.0μm以下である。打痕が少なく且つ打痕の高さが低いほど、高品質な光学フィルムを得ることができる。一方、打痕の数の下限は、例えば1個/m以上であってもよく、打痕の高さの下限は1.0μm以上であってもよい。本発明の製造方法を適用することにより、このような数及び高さの打痕を有する光学フィルムにおいて、有効な打痕の緩和を達成しうる。
熱可塑性樹脂のフィルムは、好ましくは、長尺状のフィルムである。長尺状のフィルムを用いることにより、光学フィルムの効率的な製造が可能となる。特に、打痕緩和工程における張力を付加する工程を効率的に行うことができるので、本発明の製造方法に特に有用に適用しうる。熱可塑性樹脂のフィルムが長尺状のフィルムである場合のフィルムの幅は、好ましくは500mm以上、より好ましくは1000mm以上であり、一方好ましくは2500mm以下、より好ましくは2000mm以下である。また、熱可塑性樹脂のフィルムの厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、一方好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下である。当該範囲の寸法を有する熱可塑性樹脂のフィルムを用いた場合、有効な打痕緩和処理を行うことができ特に好ましい。
〔1.2.熱可塑性樹脂層〕
熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂の例としては、各種の重合体を含む樹脂が挙げられる。かかる重合体としては、炭化水素重合体、(メタ)アクリル重合体およびポリエステル等が挙げられる。
炭化水素重合体とは、重合体の繰り返し単位の少なくとも一部が、炭化水素基である重合体をいう。炭化水素重合体中の、繰り返し単位である炭化水素基の割合は、使用目的に応じて適宜選択しうるが、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
炭化水素重合体としては、脂環式構造含有重合体が好ましい。脂環式構造含有重合体とは、重合体の繰り返し単位中に脂環式構造を有する重合体であり、主鎖に脂環式構造を有する重合体、及び、側鎖に脂環式構造を有する重合体のいずれであってもよい。中でも、機械的強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有する重合体が好ましい。
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などが挙げられる。中でも、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下の範囲であるときに、機械強度、耐熱性、及びフィルムの成形性が高度にバランスされ、好適である。
脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択しうるが、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合がこの範囲にあると、フィルムの透明性および耐熱性の観点から好ましい。
脂環式構造含有重合体としては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び、これらの水素化物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン系重合体は、透明性と成形性が良好なため、好適に用いることができる。
ノルボルネン系重合体としては、例えば、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体、若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との開環共重合体、又はそれらの水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体、若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との付加共重合体、又はそれらの水素化物;等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環(共)重合体水素化物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適に用いることができる。「(共)重合体」とは、重合体及び共重合体のことをいう。
ノルボルネン構造を有する単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。また、これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
極性基の種類としては、例えば、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン酸基などが挙げられる。
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類およびその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエンおよびその誘導体;などが挙げられる。ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な他の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体、およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との開環共重合体は、例えば、単量体を公知の開環重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより得ることができる。
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素数2〜20のα−オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な他の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体、およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との付加共重合体は、例えば、単量体を公知の付加重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより得ることができる。
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環を有する環状オレフィン系モノマーの付加重合体を挙げることができる。
環状共役ジエン系重合体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン系モノマーの付加重合体を環化反応して得られる重合体;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系モノマーの1,2−または1,4−付加重合体;およびこれらの水素化物;などを挙げることができる。
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン等のビニル脂環式炭化水素系モノマーの重合体およびその水素化物;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族炭化水素系モノマーを重合してなる重合体に含まれる芳香環部分を水素化してなる水素化物;ビニル脂環式炭化水素系モノマー、またはビニル芳香族炭化水素系モノマーとこれらビニル芳香族炭化水素系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーとのランダム共重合体若しくはブロック共重合体等の共重合体の、芳香環の水素化物;等を挙げることができる。前記のブロック共重合体としては、例えば、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体またはそれ以上のマルチブロック共重合体、並びに傾斜ブロック共重合体等を挙げることもできる。
炭化水素重合体の分子量は使用目的に応じて適宜選定されるが、溶媒としてシクロヘキサンを用いて(但し、試料がシクロヘキサンに溶解しない場合にはトルエンを用いてもよい)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常10,000以上、好ましくは15,000以上、より好ましくは20,000以上であり、通常100,000以下、好ましくは80,000以下、より好ましくは50,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、フィルムの機械的強度および成型加工性が高度にバランスされ好適である。
炭化水素重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は通常1.2以上、好ましくは1.5以上、更に好ましくは1.8以上であり、通常3.5以下、好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.7以下である。炭化水素重合体の分子量分布が3.5を超えると低分子成分が増すため緩和時間の短い成分が増加し、一見同じ面内レターデーションReを有するフィルムであっても高温暴露時の緩和が短時間で大きくなることが推定され、フィルムの安定性が低下するおそれがある。一方、分子量分布が1.2を下回るようなものは炭化水素重合体の生産性の低下とコスト増につながりうる。
炭化水素重合体のガラス転移温度は、使用目的に応じて適宜選択しうるが、好ましくは130℃以上、より好ましくは135℃以上であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは145℃以下である。ガラス転移温度が130℃を下回ると高温下における耐久性が悪化する可能性があり、150℃を上回るものは耐久性は向上するが通常の加工が困難となる可能性がある。
炭化水素重合体は、光弾性係数の絶対値が10×10−12Pa−1以下であることが好ましく、7×10−12Pa−1以下であることがより好ましく、4×10−12Pa−1以下であることが特に好ましい。光弾性係数Cは、複屈折をΔn、応力をσとしたとき、「C=Δn/σ」で表される値である。炭化水素重合体の光弾性係数が10×10−12Pa−1を超えると、得られる光学フィルムの正面位相差のバラツキが大きくなるおそれがある。
炭化水素重合体の飽和吸水率は、好ましくは0.03重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下である。飽和吸水率が上記範囲であると、フィルムの正面位相差Re及び厚さ方向位相差Rthの経時変化を小さくすることができる。また、得られる光学フィルムを備える偏光板及び液晶表示装置の劣化を抑制でき、長期的にディスプレイの表示を安定で良好に保つことができる。
飽和吸水率は、試験片を一定温度の水中に一定時間浸漬して増加した重量を、浸漬前の試験片の重量に対する百分率で表した値である。通常は、23℃の水中に24時間、浸漬して測定される。脂環式構造含有重合体における飽和吸水率は、例えば、脂環式構造含有重合体中の極性基の量を減少させることにより、前記の範囲に調節することができる。飽和吸水率をより低くする観点から、脂環式構造含有重合体は、極性基を有さないことが好ましい。
熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、脂環式構造含有重合体等の重合体に加えて、それ以外の任意成分を含んでいてもよい。任意成分の例を挙げると、顔料、染料等の着色剤;蛍光増白剤;分散剤;熱安定剤;光安定剤;紫外線吸収剤;耐電防止剤;酸化防止剤;滑剤;などの添加剤が挙げられる。なお、任意成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。ただし、熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂は、脂環式構造含有重合体等の重合体を、一般的には約50%〜100%、または約70%〜100%含むことが好ましい。
熱可塑性樹脂のフィルムを、熱可塑性樹脂層を構成するフィルムとマスキングフィルムとを重ね合わせて調製する場合において、かかる熱可塑性樹脂層を構成するフィルムは、樹脂を公知のフィルム成形法で成形することによって得られる。フィルム成形法としては、例えば、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などが挙げられる。中でも、溶剤を使用しない溶融押出法の方が、残留揮発成分量を効率よく低減させることができ、地球環境や作業環境の観点、及び製造効率に優れる観点から好ましい。溶融押出法としては、ダイスを用いるインフレーション法などが挙げられるが、生産性や厚さ精度に優れる点でTダイを用いる方法が好ましい。得られたフィルムは、そのまま熱可塑性樹脂層を構成するフィルムとして用いることができ、または必要に応じて延伸等の処理を施し、光学異方性を有するフィルムとしてから用いてもよい。さらに、得られたフィルムの表面上に、任意に易滑層、帯電防止層等の任意の層を形成し、これを用いてもよい。
〔1.3.マスキングフィルム〕
熱可塑性樹脂のフィルムを、熱可塑性樹脂層を構成するフィルムとマスキングフィルムとを重ね合わせて調製する場合において、マスキングフィルムとしては、熱可塑性樹脂層を構成するフィルムに着脱可能に貼り合わせうるフィルムを用いうる。このようなマスキングフィルムとしては、通常、樹脂フィルムを用いる。特に、マスキングフィルムは、透明性、機械的強度、熱安定性及び水分遮蔽性に優れる樹脂により形成することが好ましい。このような樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース等の酢酸セルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;鎖状ポリオレフィン樹脂;ノルボルネン系の脂環式オレフィン樹脂;アクリル樹脂;メタクリル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
配向規制力を修復する工程の意義を高める観点からは、マスキングフィルム剥離に伴う配向規制力低下の程度が少ないことが好ましく、マスキングフィルムを熱可塑性樹脂層を構成するフィルムから剥離するために要する剥離力は、通常5N/25mm以下である。前記の剥離力は、下記の測定方法により測定しうる。
熱可塑性樹脂のフィルムを用意し、20mm×100mmの短冊状に切り出して、サンプルを用意する。このサンプルの、熱可塑性樹脂層とマスキングフィルムとの間の剥離力を、引っ張り試験機(島津製作所社製「オートグラフィー」)を用いて、剥離速度0.3mm/min、剥離角度180°の条件で測定する。この時の測定条件は、JIS Z−0237に準拠する。
マスキングフィルムの厚みは任意であるが、通常5μm以上であり、通常500μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは150μm以下である。
マスキングフィルムとしては、市販品を用いてもよい。市販のマスキングフィルムの例としては、トレテガー社製の「FF1025」「FF1035」;サンエー化研社製の「SAT116T」、「SAT2038T−JSL」及び「SAT4538T−JSL」;藤森工業社製の「NBO−0424」、「TFB−K001」、「TFB−K0421」及び「TFB−K202」;日立化成社製の「DT−2200−25」及び「K−6040」;寺岡製作所社製の「6010#75」、「6010#100」、「6011#75」及び「6093#75」;などが挙げられる。
〔1.4.打痕緩和工程〕
打痕緩和工程では、熱可塑性樹脂のフィルムを、特定の条件による打痕緩和処理に供する。即ち、打痕緩和工程では、打痕を有する熱可塑性樹脂のフィルムについて処理を行う工程である。
打痕緩和工程では、熱可塑性樹脂のフィルムを、
条件(i):張力50N/m以上〜200N/m以下
条件(ii):処理温度(Tg−80)℃〜(Tg−30)℃
条件(iii):処理時間30〜200秒
の条件による打痕緩和処理に供する。条件(ii)におけるTgは、熱可塑性樹脂のガラス転移温度(℃)である。
条件(i)の張力は、好ましくは60N/m以上、より好ましくは80N/m以上であり、一方好ましくは150N/m以下、より好ましくは130N/m以下である。条件(ii)の処理温度は、好ましくはTg−75℃以上、より好ましくはTg−65℃以上であり、一方好ましくはTg−45℃以下、より好ましくはTg−55℃以下である。また、条件(iii)の処理時間は、好ましくは60秒以上、より好ましくは90秒以上であり、一方好ましくは180秒以下、より好ましくは150秒以下である。本発明者が見出したところによれば、このような条件での打痕緩和処理を行うことにより、熱可塑性樹脂のフィルムの異方性を変化させずに、高い緩和率の、打痕の緩和を達成することができる。
条件(i)〜(iii)を満たす打痕緩和処理は、例えば、フィルムの延伸に通常使用される延伸機を含む装置を用いうる。具体的には例えば、長尺状のフィルムを搬送しながら連続的に延伸工程を行いうる延伸機と、当該延伸機の延伸工程を行う部分を囲繞するオーブンを有する処理装置を用いて、処理温度及び処理時間が調節された態様で張力を付加し、これにより、打痕緩和工程を行いうる。
張力の付加の方向は、特に限定されず、フィルムの面内の任意の一の方向としうる。例えば、長尺状のフィルムを処理する場合、長尺状のフィルムの長手方向に対する張力付加方向は、平行方向、直交方向、又はそれ以外の任意の方向としうる。特に、長尺状のフィルムの長手方向に対して平行に張力を付加する方式を採用した場合、縦延伸機、あるいは単に長尺方向に張力を付加するロール等の、比較的単純で汎用される装置による効率的な延伸が可能となるため、特に好ましい。
〔1.5.打痕緩和率〕
本発明の光学フィルムの製造方法では、好ましくは、打痕緩和工程により0.2以上の打痕緩和率が達成される。打痕緩和率は、下記式(1)で求められる値である。
打痕緩和率=1.0−(打痕緩和処理後の打痕高さ/打痕緩和処理前の打痕高さ)・・・式(1)
打痕緩和率は、より好ましくは0.35以上、さらにより好ましくは0.5以上である。打痕緩和処理前の打痕高さ及び打痕緩和処理後の打痕高さは、同じ打痕の緩和処理前後の高さを測定し、その比率から打痕緩和率を求める。より具体的には、打痕緩和処理前の打痕について、その高さを測定し且つフィルム面内の打痕の位置を記録し、打痕緩和処理後に、同じ位置の打痕の高さを測定し、これらの値に基づいて、打痕緩和率を求める。打痕緩和処理後に、打痕が消失している場合は、高さがゼロであるものとして計算を行う。このような計算を、打痕処理前にランダムに抽出した複数の打痕について行い、平均を求めることにより、信頼性の高い打痕緩和率を求めることができる。打痕緩和率は、条件(i)〜(iii)の1以上を適宜調節することにより、所望の高い値とすることができる。具体的には、条件(i)の張力を高い値に設定し、条件(ii)の処理温度を高い値に設定し、条件(iii)の処理時間を長い時間とすることにより、打痕緩和率を高めることができる。
〔1.6.正面位相差変化量〕
本発明の光学フィルムの製造方法では、好ましくは、1.0nm以下に抑制された正面位相差変化量が達成される。正面位相差変化量は、下記式(2)で求められる値である。
正面位相差変化量=|打痕緩和処理前の正面位相差−打痕緩和処理後の正面位相差|・・・式(2)
正面位相差変化量は、より好ましくは0.5nm以下である。打痕緩和処理前の正面位相差とは、打痕緩和処理前の熱可塑性樹脂のフィルムの正面位相差であり、打痕緩和処理後の正面位相差とは、打痕緩和処理後の熱可塑性樹脂のフィルムの正面位相差である。
フィルムの正面位相差Reは、Re=(nx−ny)×dで表される値である。また、厚さ方向位相差Rthは、{((nx+ny)/2)−nz}×dで表される値である。ここで、nxは、フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、フィルムの前記面内方向であってnxの方向に垂直な方向の屈折率を表す。nzは、フィルムの厚み方向の屈折率を表す。dは、フィルムの厚みを表す。正面位相差及び厚さ方向位相差は、既知の位相差測定装置(例えば、王子計測機器社製、「KOBRA−21ADH」、フォトニックラティス社製、「WPA−micro」)あるいはセナルモン法を用いて測定しうる。位相差の測定波長は、通常は550nmである。
正面位相差変化量は、条件(i)〜(iii)の1以上を適宜調節することにより、所望の低い値とすることができる。具体的には、条件(i)の張力を低い値に設定し、条件(ii)の処理温度を低い値に設定し、条件(iii)の処理時間を短い時間とすることにより、正面位相差変化量を低減することができる。本発明の製造方法では、条件(i)の張力の付加と条件(ii)の加温とを同時に行う打痕緩和処理を行うことにより、正面位相差変化量を低い値に抑制しながら、且つ高い打痕緩和率を達成しうる。
〔2.光学フィルム〕
打痕緩和処理工程を経た熱可塑性樹脂のフィルムは、そのまま、又は必要に応じてさらなる処理を経て、製品たる光学フィルムとしうる。例えば、緩和処理工程後のフィルムがマスキングフィルムを含む場合は、そのまま、又は必要に応じて当該マスキングフィルムを剥離してから、製品としうる。
好ましい態様において、光学フィルムは、表面に存在する打痕高さが、1μm未満である。このような光学フィルムは、打痕緩和工程における打痕緩和率を、条件(i)〜(iii)の1以上を適宜調節して高めることにより、容易に得ることができる。このような打痕高さの低い光学フィルムは、各種の光学用途に有用に用いうる。
光学フィルムは、光学部材としての機能を発揮する観点から、通常は高い透明性を有していることが好ましい。具体的には、フィルムの全光線透過率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。ここで、全光線透過率は、JIS K7105に準拠して、日本電色工業社製「濁度計 NDH−2000」を用いて、5箇所測定し、それから求めた平均値である。このような高い透明性を有する光学フィルムは、熱可塑性樹脂の材料を適宜選択することにより得ることができる。
また、光学フィルムは、通常、ヘイズが小さいことが好ましい。具体的には、フィルムのヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは2%以下である。ヘイズを低い値とすることにより、光学フィルムを例えば表示装置に組み込んだ場合に、その表示装置の表示画像の鮮明性を高めることができる。ここで、ヘイズは、日本電色工業社製の濁度計「NDH2000」を用いて測定できる。
光学フィルムの具体的な用途は、特に限定されず、光学的性能を発揮することが求められる各種用途に用いうる。好ましい態様において、光学フィルムは、偏光板の保護フィルムとして用いうる。
〔3.偏光板の製造方法〕
本発明の偏光板の製造方法は、前記本発明の光学フィルムの製造方法により得られた光学フィルムと、偏光子とを貼合する工程を含む。得られる偏光板において、光学フィルムは、偏光板の保護フィルムとして機能しうる。光学フィルムと偏光子との貼合は、具体的には、長尺状の光学フィルムと偏光子とをロール・トゥ・ロールで貼合する等の操作により行いうる。
偏光子としては、液晶表示装置、及びその他の光学装置等の装置に用いられている既知の偏光子を用いうる。偏光子は、直線偏光子であってもよく、特定の円偏光を選択的に透過する円偏光子であってもよい。
直線偏光子の例としては、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させた後、ホウ酸浴中で一軸延伸することによって得られるもの、及びポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させ延伸しさらに分子鎖中のポリビニルアルコール単位の一部をポリビニレン単位に変性することによって得られるものが挙げられる。直線偏光子の他の例としては、グリッド偏光子、多層偏光子、コレステリック液晶偏光子などの偏光を反射光と透過光に分離する機能を有する偏光子が挙げられる。これらのうちポリビニルアルコールを含有する偏光子が好ましい。本発明に用いる偏光子の偏光度は特に限定されないが、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。偏光子の平均厚みは好ましくは5〜80μmである。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。また、以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、特に断らない限り重量基準である。以下に述べる操作は、特に断らない限り、常温常圧の環境において行った。
〔測定方法〕
〔打痕の高さ測定〕
ある一つの打痕のある位置及びその周辺において、干渉式の反射顕微鏡(ZYGO Canon社製)にてフィルムの表面形状を観察し、フィルムの基準面に対する打痕の最大高さを求め、これを、当該打痕の高さとした。
〔正面位相差〕
フィルムの正面位相差は、「KOBRA−21ADH」 王子計測機器社製を用いて測定した。
〔打痕の視認性〕
厚み80μmのポリビニルアルコールフィルムを、0.3%のヨウ素水溶液中で染色した。その後、染色したポリビニルアルコールフィルムを4%のホウ酸水溶液及び2%のヨウ化カリウム水溶液中で5倍まで延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、偏光子を製造した。
光学フィルムそれぞれに、上記偏光子を貼合した積層体を黒板上に静置させ、光を当てて反射光が反射する表面を目視で観察し、視認しうる打痕の有無を、下記の基準に基づいて評価した。なお、加圧処理複層物の打痕の数も上記方法と同様の方法により評価を行った。
良:打痕が視認されなかった。
不良:打痕が視認された。
〔実施例1〕
(1−1.加圧処理複層物の調製)
熱可塑性樹脂層及びマスキングフィルム層を有する複層物を、図1に概略的に示す態様で加圧処理し、加圧処理複層物を調製した。
厚さ13μmでTg138℃の熱可塑性樹脂の長尺状のフィルム(日本ゼオン株式会社製、ノルボルネン系重合体のフィルム、幅1330mm)を、長尺状のマスキングフィルム(商品名「FF1035」、トレデガー製、ポリエチレン系のフィルム、厚さ27μm、幅1350mm)と、長尺方向を揃えて連続的に重ね合わせ、熱可塑性樹脂層111及びマスキングフィルム112からなる複層物110を得た。
複層物110を、矢印A1の方向に搬送し、ゴムロール121及び金属ロール122との間に導き、圧力0.35MPaで加圧処理し、加圧処理複層物130を得た。この際、複層物110は、熱可塑性樹脂層111側の面がゴムロール121に接し、マスキングフィルム112側の面が金属ロール122に接するよう導いた。また、ゴムロール121に接したクリーニングロール123を併せて設け、ゴムロール121の周面上の異物を除去した。フィルム製造の工程はクリーンルーム内において行い、異物の存在量をなるべく少なくしたが、金属ロール122とマスキングフィルム112との間に入る異物129が存在し、その結果、加圧処理複層物130には不所望な打痕139が形成された。加圧処理複層物130の表面における打痕の数は、3個/mであり、打痕高さの平均は2μmであった。
(1−2.打痕緩和工程)
(1−1)で得られた加圧処理複層物130の正面位相差を測定した。また、加圧処理複層物130の表面上の打痕をランダムに3箇所選び、位置を記録し、打痕139の高さHを測定した。その後、縦延伸機及びオーブンを有する処理装置に搬送し、張力100N、温度70℃で、60秒間処理し、打痕緩和工程を行ない、光学フィルムを得た。
(1−3.評価)
得られた光学フィルムについて、再び正面位相差を測定し、正面位相差変化量を求めた。また、(1−2)で打痕の高さを測定した位置において、再び打痕の高さを測定し、打痕緩和率を求めた。また、打痕の視認性を評価した。
〔実施例〜5〕
(1−2)の打痕緩和工程の条件を、表1に示す通り変更した他は、実施例1と同様にして、光学フィルムを得て評価した。
〔実施例7〕
(1−1)で、厚さ13μmでTg138℃の熱可塑性樹脂の長尺状のフィルムに代えて、厚さ13μmでTg158℃の熱可塑性樹脂の長尺状のフィルム、日本ゼオン株式会社製、ノルボルネン系重合体のフィルム、幅1330mm)を用い、(1−2)の打痕緩和工程の条件を、表1に示す通り変更した他は、実施例1と同様にして、光学フィルムを得て評価した。
〔実施例8〕
(1−1)で、厚さ13μmでTg138℃の熱可塑性樹脂の長尺状のフィルムに代えて、厚さ50μmでTg158℃の熱可塑性樹脂の長尺状のフィルム、日本ゼオン株式会社製、ノルボルネン系重合体のフィルム、幅1330mm)を用い、(1−2)の打痕緩和工程の条件を、表1に示す通り変更した他は、実施例1と同様にして、光学フィルムを得て評価した。
〔比較例1〜4〕
(1−2)の打痕緩和工程の条件を、表2に示す通り変更した他は、実施例1と同様にして、光学フィルムを得て評価した。
〔比較例5〕
(1−1)で、厚さ13μmでTg138℃の熱可塑性樹脂の長尺状のフィルムに代えて、厚さ13μmでTg158℃の熱可塑性樹脂の長尺状のフィルム(商品名「ゼオノア1430」、日本ゼオン株式会社製、ノルボルネン系重合体のフィルム、幅1330mm)を用い、(1−2)の打痕緩和工程の条件を、表2に示す通り変更した他は、実施例1と同様にして、光学フィルムを得て評価した。
実施例及び比較例の概要及び評価結果を表1〜表2に示す。
Figure 0006476779
Figure 0006476779
表1に示す通り、本願に規定する所定の条件を満たした緩和処理工程を行った実施例においては、比較例に比べて、打痕緩和率の高さ及び位相差変化の低さの両方において、バランスよく良好な結果が得られた。
110:加圧処理前の複層物
111:熱可塑性樹脂の長尺状のフィルム
112:長尺状のマスキングフィルム
121:ゴムロール
122:金属ロール
130:加圧処理複層物
131:加圧処理後の熱可塑性樹脂の長尺状のフィルム
131U:加圧処理複層物の平滑な面
132:加圧処理後のマスキングフィルム
123:クリーニングロール
139:打痕

Claims (6)

  1. 1層以上の、熱可塑性樹脂層を含む光学フィルムの製造方法であって、
    可塑性樹脂のフィルムを、
    (i)張力50N/m以上〜200N/m以下
    (ii)処理温度(Tg−80)℃〜(Tg−30)℃、但しTgは前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度(℃)、
    (iii)処理時間30〜200秒
    の条件による打痕緩和処理に供する打痕緩和工程を含む、光学フィルムの製造方法。
  2. 前記打痕緩和工程による下記式(1)で求められる打痕緩和率が0.2以上であり、下記式(2)で示される正面位相差変化量が1.0nm以下である、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
    打痕緩和率=1.0−(打痕緩和処理後の打痕高さ/打痕緩和処理前の打痕高さ) ・・・式(1)
    正面位相差変化量=|打痕緩和処理前の正面位相差−打痕緩和処理後の正面位相差| ・・・式(2)
  3. 得られる光学フィルムが長尺状フィルムである、請求項1又2に記載の光学フィルムの製造方法。
  4. 前記熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂が、脂環式構造含有重合体を含有する樹脂である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  5. 偏光板の製造方法であって、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法により得られた光学フィルムと、偏光子とを貼合する工程を含む、製造方法。
  6. 得られる光学フィルム表面に存在する打痕高さが、1μm未満である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法
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