JP6843548B2 - 研磨パッド及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、研磨パッド及びその製造方法に関する。
従来、半導体ウエハ、半導体デバイス用シリコーンウエハ、各種記録用ディスクの基板及び液晶ディスプレイ用ガラス基板等の被研磨物の精密平面研磨を行う場合には、研磨パッドを用いて研磨加工する。より良好な研磨性能を得るために、研磨パッドに対して様々な検討がなされている。
例えば、特許文献1には、被研磨物の平坦性を改善するとともに、端面だれを抑制することを目的として、被研磨物に圧接される研磨層を有する研磨パッドであって、研磨層は、独立気泡と連続気泡とを有する発泡体からなり、独立気泡と連続気泡とを併せた気泡全体の体積に占める独立気泡の体積の割合である独立気泡率が、0.3%以上10%以下であることを特徴とする研磨パッドが開示されている。
特許5385714号公報
ここで、特許文献1に記載されるような研磨パッドには、研磨性能の各種特性を満足させるために、研磨面の材質としてポリウレタン発泡体が選択されることが多い。研磨面がポリウレタン発泡体で形成された研磨パッドにおいて、研磨時に用いられるスラリの拡散性を高めるためには、ポリウレタン発泡体中により多くの気泡を形成させることが有効である。これにより、スラリが研磨面だけでなく、気泡内でもより有効に流動することができるため、スラリの拡散性が高まる。しかしながら、特許文献1に記載されているような研磨パッドにおいて、単にポリウレタン発泡体中の気泡を所定量以上多く形成させた場合には、少数の発泡が連結しているに過ぎない気泡も連続気泡と見なしているため、スラリの拡散性が不充分である。加えて、上記のように少数の発泡が連結しているに過ぎない連続気泡からなるスラリ流路内に研磨屑が堆積することに起因して、ポリウレタン発泡体が研磨層内部から劣化していき、製品寿命が短くなる。また、特許文献1には発泡剤である水の添加量及び撹拌速度のみで気泡の形成を制御する例が記載されているが、このように整泡剤を使用せずに気泡を形成しても、実際には気泡径のバラツキが大きくなり、比較的小さい径の気泡にスラリや研磨屑が不可逆的に捕集され、製品寿命が短くなる。さらに、単に気泡を多く形成させ空隙率を増加させた場合には、連続気泡からなるスラリ流路内に研磨屑が堆積することは抑制できるが、耐摩耗性が低下し、製品寿命が短くなる。
そこで、本発明は、スラリの拡散性に優れ、かつ製品寿命が長い研磨パッドを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来技術の課題を解決すべく鋭意検討した結果、被研磨物を研磨するための研磨面を有し、ポリウレタン発泡体からなるポリウレタン樹脂シートを備え、そのポリウレタン樹脂シートが、当該ポリウレタン発泡体中に複数の気泡を有しかつ該複数の気泡の少なくとも一部が互いに連結した所定体積以上の連結気泡であり、当該気泡の比表面積が特定範囲内にある研磨パッドを用いることで、スラリの拡散性に優れ、かつ製品寿命が長いことを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
被研磨物を研磨するための研磨面を有し、ポリウレタン発泡体からなるポリウレタン樹脂シートを備え、
前記ポリウレタン樹脂シートは、前記ポリウレタン発泡体中に複数の気泡を有し、かつ、該複数の気泡の少なくとも一部が互いに連結した連結気泡であり、
前記ポリウレタン樹脂シートにおいて、CTスキャンによって測定される最大連結気泡の体積が、前記気泡の総体積に対して、90%以上であり、かつ、CTスキャンによって測定される前記気泡の比表面積が、前記ポリウレタン樹脂シートの見掛け体積に対して、25mm2/mm3以上50mm2/mm3以下である、
研磨パッド。
[2]
前記気泡の平均開口径が、60μm以上120μm以下である、
[1]に記載の研磨パッド。
[3]
前記ポリウレタン樹脂シートの開孔面積率が、50%以上75%以下である、
[1]又は[2]に記載の研磨パッド。
[4]
前記ポリウレタン樹脂シートのA硬度が、60度以上90度以下であり、かつ
前記ポリウレタン樹脂シートの圧縮率が、0.5%以上2.5%以下である、
[1]〜[3]のいずれかに記載の研磨パッド。
[5]
前記ポリウレタン樹脂シートの密度が、0.30g/cm3以上0.60g/cm3以下である、
[1]〜[4]のいずれかに記載の研磨パッド。
[6]
ポリウレタン樹脂原料と、水と、該水1質量部に対して1.0質量部以上4.0質量部以下のシリコーン系整泡剤と、を混合し、樹脂シートを得る工程を含み、
前記シリコーン系整泡剤は、11以上18以下のHLB値を有するものであり、
前記ポリウレタン樹脂シートにおいて、CTスキャンによって測定される最大連結気泡の体積が、前記気泡の総体積に対して、90%以上であり、かつ、CTスキャンによって測定される前記気泡の比表面積が、前記ポリウレタン樹脂シートの見掛け体積に対して、25mm2/mm3以上50mm2/mm3以下である、研磨パッドの製造方法。
本発明に係る研磨パッドの一例を模式的に示す断面図である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明は下記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
〔研磨パッド〕
本実施形態の研磨パッドは、被研磨物を研磨するための研磨面を有し、ポリウレタン発泡体からなるポリウレタン樹脂シートを備える。当該ポリウレタン樹脂シートは、上記ポリウレタン発泡体中に複数の気泡を有し、かつ、該複数の気泡の少なくとも一部が互いに連結した連結気泡である。また、上記ポリウレタン樹脂シートにおいて、CTスキャンによって測定される最大連結気泡(以下、単に「最大連結気泡」ともいう。)の体積が、気泡の総体積(100%)に対して、90%以上であり、かつ、CTスキャンによって測定される気泡の比表面積が、上記ポリウレタン樹脂シートの見掛け体積に対して、25mm2/mm3以上50mm2/mm3以下である。ここで、「最大連結気泡」とは、ポリウレタン樹脂シートをCTスキャンで測定して得られる3D画像を3D構造解析することにより求められる、ポリウレタン樹脂シートが有する各連結気泡の体積の中で、最も体積の大きな連結気泡を意味する。また、「最大連結気泡の体積率が90%以上であ」るということは、全気泡の90体積%以上が相互に連通することで形成されたスラリ流路を有していることを示す。
図1は、本実施形態に係る研磨パッドの一例を示す模式断面図である。研磨パッド300は、研磨面Sを有するポリウレタン樹脂シート(以下、単に「樹脂シート」という。)310と、研磨機の研磨用定盤に研磨パッドを固定するための両面テープ120とをこの順に積層して含む。この例では、両面テープ120の一方の接着面に樹脂シート310を、もう一方の接着面には離型紙130が積層されている。
<樹脂シート>
樹脂シート310は、両面テープ120側とは反対側に研磨面Sを有する。樹脂シート310は、マトリックス樹脂112と、そのマトリックス樹脂中に存在する複数の気泡(図示しない。)214bを有するポリウレタン発泡体からなるものであり、その複数の気泡214bの少なくとも一部が互いに連結した連結気泡(以下、単に「連結気泡」という。)である。また、図1に示す研磨パッド300では、気泡214bに起因する開孔部214cが研磨面Sに形成されている。連結気泡を形成するためには、例えば、樹脂シート310を所謂湿式成膜法や乾式成型法(モールド法ともいう)で形成すればよいが、本発明の目的をより有効かつ確実に達成する観点から、好ましくは乾式成型法により形成すればよい。
樹脂シート310は、研磨加工時に被研磨物の被研磨面(加工面)にスラリ(研磨液)を介して当接する研磨面Sを有している。樹脂シート310は、イソシアネート基含有化合物と、活性水素化合物と、連結気泡を含む複数の気泡を形成するための発泡成分とを少なくとも混合した混合液から形成されたポリウレタン樹脂発泡体に、スライス処理やバフ等の表面研削処理を施すことで形成される。
連結気泡は、その形状は特に限定されないが、例えば、複数の気泡が互いに重なるように連結した形状であってもよく、複数の独立した気泡の間を、筒状の空洞で連結した形状であってもよい。
本実施形態の樹脂シート310の最大連結気泡の体積は、樹脂シート310が有する気泡の総体積(100%)に対して、90%以上であり、95%以上であると好ましく、97%以上であるとより好ましい。最大連結気泡の体積が90%以上である樹脂シートを得るためには、例えば後述する整泡剤のHLB値や含有量及び発泡剤の含有量を調整すればよい。最大連結気泡の体積は、CTスキャンによって測定され、より具体的に、後述する実施例に記載する方法に準じて測定される。
本実施形態の樹脂シート310が有する気泡の比表面積は、樹脂シート310の見掛け体積に対して、25mm2/mm3以上50mm2/mm3以下であり、30mm2/mm3以上50mm2/mm3以下であると好ましく、35mm2/mm3以上50mm2/mm3以下であるとより好ましい。比表面積が25mm2/mm3以上50mm2/mm3以下である樹脂シートを得るためには、例えば後述する整泡剤のHLB値や含有量及び発泡剤の含有量を調整すればよい。ここで、「見掛け体積」とは、樹脂シートの厚さと幅と長さとの積により算出される体積をいい、樹脂シート中の気泡の体積をも含むものをいう。比表面積は、最大連結気泡の体積と同様にCTスキャンによって測定され、より具体的に、後述する実施例に記載する方法に準じて測定される。
樹脂シート310は、最大連結気泡の体積が90%以上であり、気泡の比表面積が、25mm2/mm3以上50mm2/mm3以下であることに主に起因して、スラリの拡散性に優れ、かつ製品寿命が長い研磨パッドを得ることができる。この要因は、次のように推察される(ただし、要因はこれに限定されない。)。従来の研磨パッドは、優れたスラリの拡散性を確保する観点から、樹脂シートに連続気泡を形成させていた。しかし、気泡の数や体積が増大すればするほど、スラリの拡散性は研磨面に形成される気泡に捕集されることに起因して優れていくものの、研磨層の脆性が必要以上に高まり、製品寿命が低下してしまうと考えられていた。また、全気泡中の連続気泡の割合(連続気泡率)を高くしても、少数(例えば、2つ)の気泡が連結している程度の連続気泡が多く含まれていると、このような連続気泡はスラリの流動性になんら寄与せず、スラリの拡散性としては不充分であった。それどころか、連続気泡からなるスラリ流路の各々が独立して多数存在していると、研磨層内部でスラリや研磨屑が不可逆的に滞留し、却って研磨層を硬質化及び劣化させてしまうと考えられていた。一方、本実施形態の研磨パッド300は、最大の連結気泡の体積が90%以上であることを特徴とする。言い換えれば、気泡からなるスラリ流路の90体積%以上が相互に連通しているため、スラリや研磨屑が研磨層内部で滞留することを抑制することができる。さらに、本実施形態の研磨パッド300は、樹脂シートの最大連結気泡の体積が90%以上であっても、樹脂シートにおける気泡の比表面積が、25mm2/mm3以上50mm2/mm3以下であることにより、スラリの拡散性と、製品寿命の長さとを両立することができる。ここで、樹脂シートにおける気泡の比表面積とは、樹脂シートの体積に対する樹脂シートの内部における樹脂壁の面積の割合であり、気泡の大きさや気泡間の連結状態、気泡の量(空隙率)によって変動する。具体的には、同じ空隙率であっても、気泡の径のバラツキが大きくなると気泡の比表面積は減少する。また、樹脂シートの最大連結気泡の体積が90%以上となる程度に気泡を連結させるにはある程度の空隙率が必要となるが、そのような樹脂シートでは空隙率が高いほど樹脂シートの内部における樹脂壁が減少するため、気泡の比表面積は低下する。一方、同じ空隙率であっても、平均気泡径が小さい(気泡が微細になる)ほど比表面積は増加する。また、気泡間を連結する連結孔が小さいほど、連続発泡からなるスラリ流路の比表面積が増加する。本実施形態の研磨パッド300は、気泡の比表面積が25mm2/mm3以上であること、言い換えれば樹脂シート中での気泡の配置及び気泡の径のバラツキが小さくなることにより、研磨面におけるスラリを捕集する力が均一化されることに起因して、研磨面にスラリが捕捉されることを抑制する。また、気泡の径のバラツキが小さくなることにより、比較的小さい径の気泡に起因するスラリや研磨屑の不可逆的な捕集も抑制される。さらに、気泡の比表面積が25mm2/mm3以上となる程度に樹脂壁を有する樹脂シートとすることで、樹脂シートの空隙率が高すぎることにより、研磨層の脆性が必要以上に高まり、耐久性が低下することを抑制する。他方、気泡の比表面積が50mm2/mm3以下であること、言い換えれば樹脂シート中の気泡同士が連結している形状がスラリを可逆的に捕集しやすい形状、より具体的には、連続発泡からなるスラリ流路の平均径が過度に微細であること、あるいは、発泡間を連結する連結孔の径が過度に微細であるようなボトルネック部が少ないことに起因して、研磨層内部にスラリや研磨屑が不可逆的に捕捉されることを抑制する。
本実施形態の樹脂シート310の厚さは、特に限定されないが、0.2mm以上5.0mm以下であることが好ましく、0.3mm以上2.0mm以下であることがより好ましい。樹脂シート310の厚さは、JIS K 6550(1994)に記載された測定方法に準拠して測定される。つまり、樹脂シート310の厚み方向に初荷重として1cm2当たり480gの荷重をかけた(負荷した)ときの厚さである。
本実施形態の樹脂シート310の密度(かさ密度)は、特に限定されないが、25℃において0.30g/cm3以上0.60g/cm3以下であると好ましく、0.35g/cm3以上0.60g/cm3以下であるとより好ましく、0.35g/cm3以上0.55g/cm3以下であるとさらに好ましい。この密度が0.30g/cm3以上であることにより、樹脂シート310の耐摩耗性が向上する傾向にあり、また、0.60g/cm3以下であることにより、樹脂シート310の全体に亘って被研磨物をより均一に研磨しやすくなる傾向にある。加えて、スラリの捕集性が向上する傾向にある。かさ密度は、後述する実施例に記載する方法に準じて測定される。
本実施形態の樹脂シート310のA硬度は、特に限定されないが、60度以上90度以下であると好ましく、65度以上90度以下であるとより好ましい。A硬度が60度以上であることにより、研磨レートをより高めることができると共に、研磨加工後の被研磨物における被研磨面のグローバル平坦性をより向上することができる傾向にある。また、A硬度が90度以下であることにより、被研磨物の微小欠陥をより低減することができる傾向にある。A硬度は、25℃におけるものであり、日本工業規格(JIS K 6253)に準拠して測定される。より詳しくは、寸法が30mm×30mmの試料について、JIS K 7311に従って、ショアA デュロメータを用いて測定される。
本実施形態の樹脂シート310の圧縮率は、特に限定されないが、0.5%以上2.5%以下であると好ましく、0.8%以上2.2%以下であるとより好ましい。圧縮率が上記範囲内にあることにより、研磨パッド300が、研磨加工時に被研磨物上に存在する研磨屑等を、適度に拭き取って除去することができる傾向にある。したがって、特にスラリの凝集物に起因する微小欠陥を抑制することができる傾向にある。圧縮率は、例えば、樹脂シート310における、研磨面Sに通じた開孔の大きさや数を調整することにより制御することができる。圧縮率は、下記の方法に準じて測定される。
樹脂シート310の圧縮率は、JIS−L1021−6に準拠して、ショッパー型厚み測定器(加圧面:直径1cmの円形)を用いて求める。具体的には、室温において、無荷重の状態から初荷重を30秒間かけた後の厚みt0を測定し、次に厚みt0の状態から最終圧力をかけて、そのまま1分間放置後の厚みt1を測定する。これらから、圧縮率を下記式:
圧縮率(%)=(t0−t1)/t0×100
により算出する。このとき、初荷重は300g/cm2、最終圧力は1800g/cm2
する。
樹脂シート310において、研磨面に開孔した気泡の平均開口径は、60μm以上120μm以下であると好ましく、65μm以上120μm以下であるとより好ましく、70μm以上110μm以下であるとさらに好ましい。気泡の平均開口径が60μm以上であることにより、スラリの保持性をより高めることができることに起因して、研磨レートの低下を抑制することができる傾向にあり、スラリの研磨面Sへの捕捉を抑制できる傾向にある。また、気泡の平均開口径が120μm以下であることにより、平坦性に優れる傾向にある。
研磨レートの向上と耐摩耗性の両立の観点から、研磨面に開孔した気泡の面積率(以下、「開孔面積率」ともいう)は、50%以上75%以下であると好ましく、55%以上70%以下であるとより好ましい。ここで、開孔面積率は、発泡量の指標とすることができる。開孔面積率が50%以上であることにより、発泡量が所定量以上であり、連結気泡が所定量以上となることに起因して、スラリの拡散性に優れる傾向にある。また、開孔面積率が75%以下であることにより、樹脂シート310の耐摩耗性に優れる傾向にある。
気泡の平均開口径及び開孔面積率が上述した範囲にある樹脂シート310を得るためには、上述した発泡を形成する際に、整泡剤の種類や含有量、水の添加量、を調整すればよい。そのほかの手段としては、ポリウレタン樹脂原料の温度(粘度)、撹拌の回転数、硬化時の温度(金型の温度)等を制御することが挙げられる。気泡の平均開口径と開孔面積率は、SEM画像を2値化処理して算出することができ、より具体的に、後述する実施例に記載の方法により測定する。
樹脂シート310は、樹脂以外に、本発明の課題解決を阻害しない範囲で、研磨パッドの樹脂シートに通常用いられる材料(難燃剤、親水化剤、疎水化剤、耐光剤、酸化防止剤、帯電防止剤、染料、顔料等)を含んでもよい。また、炭化ケイ素、珪酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、シリカ、アルミナ、ダイヤモンド等の公知の砥剤をさらに含んでもよい。
樹脂シート310において、繊維の含有量が、樹脂シート310の総量に対して、1質量%以下であると好ましく、0.1質量%以下であるとより好ましい。繊維の含有量が1質量%以下であることにより、樹脂シート310からの繊維の脱落により被研磨物にスクラッチを発生させることを抑制できる傾向にある。繊維の含有量は、公知の方法で測定できる。
また、研磨パッド300には、樹脂シート310に基材層又はクッション層を貼り合わせて2層とした積層シートとしてもよい。
なお、研磨パッド300は、研磨機の研磨用定盤へ固定するための両面テープ120を有していることが好ましい。両面テープ120は、基材の両面に接着剤又は粘着剤を含む接着層を有し、一方の接着層が樹脂シート310と貼り合わされている。他方の接着層は、研磨機の研磨用定盤に研磨パッド300を貼り合わせて装着するためのものであり、離型紙130をさらに有していてもよい。両面テープ120は、従来の研磨パッドに使用されているものであってもよい。研磨機の研磨用定盤へ固定するための手段は両面テープに限定されず、基材を有さない接着剤フィルムや接着剤スプレーの噴霧、面ファスナー等、公知のいずれの手段でもよい。
〔研磨パッドの製造方法〕
次に、本実施形態の研磨パッドの製造方法の一例について説明する。なお、樹脂シート310の作製方法は、これに限定されない。この製造方法では、樹脂と、水と、該水1質量部に対して、1.0質量部以上4.0質量部以下のシリコーン系整泡剤とを含み、ポリウレタン発泡体からなる樹脂シート310を得る工程(準備工程)と、樹脂シート310に両面テープ120を積層して研磨パッド300を得る工程(積層工程)とを有する。ここで、準備工程で用いられるシリコーン系整泡剤は、11以上18以下のHLB値を有するものであり、得られる樹脂シート310は、ポリウレタン発泡体中に複数の気泡を有し、かつ、該複数の気泡の少なくとも一部が互いに連結した連結気泡である。また、樹脂シート310において、CTスキャンによって測定される最大連結気泡の体積が、気泡の総体積に対して、90%以上であり、かつ、CTスキャンによって測定される気泡の比表面積が、樹脂シート310の見掛け体積に対して、25mm2/mm3以上50mm2/mm3以下である。以下、各工程について説明する。
(準備工程)
本実施形態の準備工程は、少なくともポリウレタン樹脂原料と、発泡剤としての水と、シリコーン系整泡剤とを含む、樹脂シート310を得る工程である。具体的には、これらを混合・硬化成型し、所望の形状のシートに加工し、樹脂シートを得る。準備工程は、より具体的には、後述する注型・硬化工程、及びスライス・裁断工程にさらに分けることができる。
準備工程においては、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、予めポリオール化合物に発泡剤としての水とシリコーン系整泡剤とを分散希釈させた分散液と、硬化剤としてポリアミン化合物とをそれぞれ準備する。
ポリイソシアネート化合物としては、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有していれば特に制限されるものではない。例えば、分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物としては、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソチオシアネート、キシリレン−1,4−ジイソチオシアネート、及びエチリジンジイソチオシアネートが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
ポリオール化合物としては、ジオール化合物、トリオール化合物等の化合物であればよく、例えば、エチレングリコール、ブチレングリコール等の低分子量のポリオール化合物、および、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)等のポリエーテルポリオール化合物、エチレングリコールとアジピン酸との反応物やブチレングリコールとアジピン酸との反応物等のポリエステルポリオール化合物、ポリカーボネートポリオール化合物、ポリカプロラクトンポリオール化合物等の高分子量のポリオール化合物のいずれも使用することができる。これらは、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
上記ポリイソシアネート化合物と、上記ポリオール化合物とは、予め反応させることでイソシアネート基含有化合物、すなわち、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー(以下、「プレポリマー」と略記する。)を生成させてもよい(プレポリマー法)。また、後述の注型・硬化工程において他の原料と合わせて一度に注型・反応させるワンショット法でもよいが、研磨パッドに要求される製造精度を考慮すると、プレポリマー法が好ましい。以下、プレポリマー法による製造方法について説明する。
プレポリマーは、温度30〜80℃における粘度を2000〜20000mPa・sの範囲に設定することが好ましい。例えば、プレポリマーの分子量(重合度)を変えることで粘度を設定することができる。プレポリマーは、30〜80℃程度に加熱され流動可能な状態とされる。
分散液の調製に用いられるポリオール化合物は、イソシアネート基含有化合物のイソシアネート基と反応することで、研磨加工時の溶出、ひいては、研磨性能に対する悪影響を抑制することができる。分散液では、発泡に関与しないポリオール化合物に水および整泡剤、触媒、その他必要に応じて添加される添加剤等が分散されることで、混合される際の混合斑を低減する役割を果たす。ポリオール化合物としては、ジオール化合物、トリオール化合物等の化合物であればよく、例えば、エチレングリコール、ブチレングリコール等の低分子量のポリオール化合物、PTMG、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)等の高分子量のポリオール化合物のいずれも使用することができる。イソシアネート基含有化合物やポリアミン化合物の溶液の粘度と同程度にすることで混合工程において混合斑を低減させるため、数平均分子量500〜5000のポリオール化合物を用いることが好ましい。本例では、数平均分子量約3000のPTMGを使用する。分散液の調製時には、一般的な攪拌装置を使用して攪拌混合すればよく、略均等に分散希釈されていればよい。
<水>
水としては、特に制限はないが、不純物等の混入を回避するため、蒸留水を使用することが好ましい。水の使用量は、準備工程に用いられる原料の総量(100質量部)に対して、好ましくは0.05質量部以上2.0質量部以下、より好ましくは0.10質量部以上1.0質量部以下とすることで、より確実に本実施形態の研磨パッドが得られ易くなる傾向にある。該使用量が0.05質量部以上であると、発泡量自体が少なくなり過ぎず、発泡が独立化しにくく、本実施形態で規定する最大連結気泡の体積を満たす傾向にある。一方、該使用量が2.0質量部以下であると、発泡量(発泡空隙率)が高くなり過ぎず、気泡の比表面積の低下を抑制する傾向にあることに加え、耐摩耗性(製品寿命)の低下を抑制する傾向にある。
<シリコーン系整泡剤>
シリコーン系整泡剤は、その種類及び使用量によって、分散力、相溶性、発泡の安定化力が異なるため、その種類及び使用量をコントロールすることで、連結気泡の形状や大きさ等を制御することが可能である。
シリコーン系整泡剤としては、HLB値が11以上18以下のものであれば特に限定されないが、シリコーン系界面活性剤が好ましい。シリコーン系界面活性剤の市販品として、例えば、シリコーン整泡剤SF2937F、SF2938F、SZ−1642、SZ−1671、SZ−1718(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を例示することができる。
シリコーン系整泡剤のHLB値は、11以上18以下であり、好ましくは11以上16以下、より好ましくは10以上15以下である。HLB値がこのような範囲内にあることにより、発泡剤である水が適度に分散することで、より確実に本実施形態の研磨パッドを得られ易くなる。ここで、HLB値とは、化合物の親水性を評価する値であり、下記式により求められる値をいう。HLB値が上述した範囲にあることにより、得られるポリウレタン樹脂シートの最大連結気泡及び気泡の比表面積を上述した範囲に制御することが容易となる。具体的には、発泡が微細化して最大連結気泡の体積が低下した場合は、HLB値がより高いシリコーン系整泡剤を使用することで本発明の研磨パッドが得られる。一方、発泡が凝集して独立化した結果により最大連結気泡の体積が低下した場合は、HLB値がより低いシリコーン系整泡剤を使用することで本実施形態の研磨パッドを得ることができる。
HLB値=曇数A×0.89+1.11
ここで、曇数Aは、以下の方法に準じて測定される。まず、無水の試料2.5gを秤量し、98%エタノールを加え25mLに定容(25mLメスフラスコ使用)する。次に、これを5mLホールピペットで分取し、50mLビーカーに入れ25℃の定温に保ち攪拌(マグネティックスターラー使用)しながら、2%フェノール水溶液で25mLビュレットを使用して滴定する。液が乳白色を呈したところを終点とし、この滴定に要した2%フェノール水溶液のmL数を曇数Aとする。
シリコーン系整泡剤の使用量は、水の使用量により調整され、水1質量部に対して、1.0〜4.0質量部であれば、より確実に実施形態の研磨パッドを得られ易くなる。整泡剤の使用量が1.0質量部以上であることにより、ポリウレタン樹脂に対する水の分散性に優れ、発泡形状および発泡の分布が均一になる。また、整泡剤の使用量が4.0質量部以下であることにより、ポリウレタン発泡体に形成される連結気泡が増大し、スラリに対する馴染みに優れる樹脂シート310を製造できる。
準備工程では、ポリアミン化合物をさらに混合してもよい。ポリアミン化合物は、イソシアネート基含有化合物のイソシアネート基と反応する。
ポリアミン化合物としては、脂肪族や芳香族のポリアミン化合物を使用することができるが、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(以下、「MOCA」と略記する。)、MOCAと同様の構造を有するポリアミン化合物等が挙げられる。また、ポリアミン化合物が水酸基を有していてもよく、このようなアミン系化合物として、例えば、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、及びジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミンが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。本実施形態では、MOCAを約120℃に加熱し、溶融させた状態で用いる例で説明をする。
なお、上記では発泡剤として水を用いたが、それに限定されない。すなわち、発泡剤としては、常温で固体であり、好ましくは100℃〜260℃で熱分解して分解ガスを発生する化学発泡剤、水を保持させた水溶性物質及び水からなる群より選択される少なくとも1種の成分が用いられる。ポリウレタン発泡体の形成時に、発泡成分の分解や気化等で発生するガスにより複数の気泡が形成される。空気、窒素、酸素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを機械的に撹拌・混合する方法(機械的発泡法)により発泡を形成してもよく、複数の発泡形成手段を組み合わせてもよいが、本発明の目的をより有効かつ確実に達成する観点から、少なくとも水を用いることが好ましい。
化学発泡剤としては、例えば、バリウムアゾジカルボキシレート、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、炭酸水素ナトリウム、アゾジカルボンアミド、4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド及びヒドラゾジカルボンアミドからなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。化学発泡剤の熱分解温度が100℃以上であると、ポリウレタン発泡体の形成時に早期の分解がより抑制され、気泡の分散状態をより均等かつ均一にすることができ、260℃以下であると、ポリウレタン発泡体の形成時に更に良好に分解して、気泡をより容易に形成することができる。
水溶性物質としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルキチン、デキストリン及びシクロデキストリン等の水溶性多糖類並びにその誘導体、キトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ショ糖及びブドウ糖等のオリゴ糖や単糖類、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、酢酸カリウム、硝酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム及びリン酸カリウム等のアルカリ成分又は中性塩、脂肪族アミン塩及び脂肪族アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩、スルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩及びリン酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤、エーテル型、エーテルエステル型及びエステル型等の非イオン系界面活性剤、アミノ酸、タンパク質、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルスルホン酸、並びに、ポリ(メタ)アクリル酸が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの水溶性物質は、水分を保持しやすいため、ポリウレタン成形体の形成時に水溶性物質に保持された水分がイソシアネート基含有化合物と反応することによりガスを発生し、気泡114bが形成される。
(注型・硬化工程)
注型・硬化工程では、混合液を型枠に注入し、さらに、型枠内で混合液中のイソシアネート基含有化合物と活性水素化合物とを反応及び硬化させると共に、発泡剤により複数の気泡を形成することで、ブロック状のポリウレタン発泡体を得る。このとき、イソシアネート基含有化合物が活性水素化合物との反応(高分子化又は架橋)により硬化し、マトリックス樹脂を有するポリウレタン発泡体が成型される。
混合液中のイソシアネート基含有化合物の含有割合は、特に限定されないが、本発明による効果をより有効かつ確実に奏する観点から、モル比(当量比)として、活性水素化合物に対して0.8〜1.2であると好ましく、0.9〜1.1であるとより好ましい。
上記の準備工程は、ポリウレタン発泡体を得るための従来知られている装置を用いて、連続的に行われてもよい。
(スライス・裁断工程)
スライス・裁断工程では、得られたポリウレタン発泡体を所望の厚みにスライスして、円形等の所望の形状に裁断して樹脂シート310を形成する。スライス工程では、公知のスライス機を使用することができる。また、スライス処理を表面研削処理に代えてもよく、スライスした樹脂シートを表面研削処理によって厚さを調整してもよい。裁断工程では、所望の形状の型で打ち抜いてもよく、公知の裁断機を使用してもよい。
(積層工程)
積層工程では、樹脂シート310の研磨面Sとは反対側の面に、離型紙130を有する両面テープ120を積層して研磨パッド300を得る。積層する手段に制限はなく、公知のラミネート機を使用してもよい。
(溝加工工程)
溝加工工程では、樹脂シート310の研磨面S側に研磨加工時のスラリの供給や研磨屑の排出等を考慮して所望の形状の溝を形成する。溝加工工程では、公知の研削機またはエンボス機を使用することができる。溝を有していない研磨パッドとしてもよいが、溝を有していることが好ましい。本実施形態では、格子状の溝を有する研磨パッドとした。
以上、本実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記本実施形態に限定されるものではない。例えば、樹脂シート310はスラリを保持するための貫通孔を有していてもよく、研磨加工状態を光学的に検出するための光透過部を有していてもよい。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定
されるものではない。以下、特に明記しない場合は、「部」や「%」は、「質量部」及び「質量%」を意味する。
(実施例1)
2,4−TDI(トリレンジイソシアネート)と、数平均分子量約1000のPTMG(ポリテトラメチレンエーテルグリコール)およびジエチレングリコールとを反応させ、55℃に加熱し減圧下で脱泡し、プレポリマーを得た。このプレポリマーは、イソシアネート含有量が9.6%であった。
数平均分子量約3000のPTMG(ポリテトラメチレンエーテルグリコール)、水、触媒(トヨキャットET、東ソー株式会社製)、シリコーン系整泡剤(SZ−1642、HLB値:11、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を5.0部/0.2部/0.1部/0.2部の割合で配合し、分散液を得た。この分散液では、シリコーン系界面活性剤の配合割合が、水1質量部あたりに換算すると、1.0質量部となる。
プレポリマー、MOCA(3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン)、分散液を減圧下で脱泡した後、78.7部/18.2部/3.1部の割合となるように混合槽に供給し、樹脂溶液を調製した。この樹脂溶液では、水の添加量は全質量に対して0.11質量部となる。得られた混合液を型枠に注型し70℃で40分加熱して硬化させた後、形成されたポリウレタン発泡体を型枠から抜き出し、厚さ1.3mmのシート状にスライスし、樹脂シートを作製した。
次に、樹脂シートの研磨面に対して反対側の面に、PET製の基材の両面に接着層(材質:アクリル系樹脂)を有し、更に片面に剥離紙を有する両面テープを、その剥離紙とは反対側の接着層で貼り合わせ、直径800mmの円形状に切り出し、研磨パッドを得た。
上記樹脂シート及び研磨パッドについて、かさ密度、圧縮率、A硬度、平均開口径、開孔面積率、最大連結気泡の体積、比表面積を測定した。
(かさ密度)
かさ密度の測定では、樹脂シートを試料片(10cm×10cm)に切り出し、電子天秤(型式メトラ−AJ−180)にて重量W0(単位:g)を測定し、ダイアルゲージにて厚さt(単位:mm)を測定した。厚さtおよび重量W0から、下記式によりかさ密度(単位:g/cm3)を算出した。測定結果を表1に示す。
かさ密度(ρ)=W0/t/10
(圧縮率)
樹脂シートの圧縮率は、日本工業規格(JIS L 1021)に従い、ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を用いて測定して求めた。具体的には次の通りである。無荷重状態から初荷重を30秒間かけた後の厚さt0(単位:mm)を測定し、次に、厚さt0の状態から最終圧力を300秒間かけた後の厚さt1(単位:mm)を測定した。また、上記初荷重は300g/cm2、上記最終圧力は1800g/cm2であった。その後、下記式から圧縮率を算出した。なお、toとt1の単位は同一である。
圧縮率(%)=100×(t0−t1)/t0
なお、圧縮率は、その架橋部を除く5箇所で各々測定して求めた圧縮率の平均値として求めた。
(A硬度)
樹脂シートのA硬度は、日本工業規格(JIS K 7311)に従って、ショアAデュロメータを用いて測定した。ここで、試料は、少なくとも総厚さ4.5mm以上になるように、必要に応じて枚数の樹脂シートを重ねることで得た。
(平均開口径、開孔面積率)
平均開口径及び貫通孔面積率は、マイクロスコープ(KEYENCE社製の商品名「VH−6300」)で研磨パッド表面の約1.3mm四方の範囲を175倍に拡大して観察し、得られた画像を画像処理ソフト(ニコン社製の商品名「Image Analyzer V20LAB Ver. 1.3」)により二値化処理して気泡個数を確認し、また、各々の気泡の面積から円相当径及びその平均値(平均開口径)及び開孔面積率を算出した。なお、開口径のカットオフ値(下限)を10μmとし、ノイズ成分を除外した。
(最大連結気泡の体積、比表面積)
最大連結気泡の体積及び比表面積は、樹脂シートの溝部及び表面を含まない樹脂シート内部における特定領域(4mm×4mm×1mm)を対象とし、CTスキャン(ヤマト科学社製の商品名「TDM1000H−II(2K)」)で3D画像を撮影し、解析ソフト(
VGStudio、ボリュームグラフィックス社製)で構造解析を行って求めた。このとき、CTスキャンの撮影間隔(スライス厚み)は8.4μmであり、撮影精度は477×477×120pixelとした。構造解析により、連結した気泡を一つの気泡とした上で、各気泡の体積、及び各気泡の表面積が得られ、連結した気泡の体積が最も大きい気泡(最大連結気泡)について、下記式から最大連結気泡の体積を求めた。なお、各気泡の表面積は、気泡の形状が真球であり、その真球の表面積が4×円周率×(半径の二乗)であると仮定して算出した。
最大連結気泡の体積(%)=100×最大連結気泡の体積/気泡の体積の総量
また、比表面積は、下記式から求めた。樹脂シートの見掛け体積は、樹脂シートの厚さと幅と長さとの積により算出した。
比表面積(mm2/mm3)=気泡の表面積の総和(mm2)/樹脂シートの見掛け体積(mm3
(製品寿命)
また、各実施例および比較例の研磨パッドについて、以下の研磨条件にてシリコーンウエハの研磨加工を行い、研磨性能を評価した。すなわち、研磨装置の上下定盤に研磨パッドをそれぞれ貼り付け、シリコーンウエハの研磨加工を行った。研磨パッドが使用不可能と判断されるまでに研磨加工できたシリコーンウエハの枚数を製品寿命として、実施例1を基準に3段階の相対評価をした。評価結果を表1に示す。
(研磨条件)
被研磨物:直径300mmφシリコーンウエハ
研磨装置:不二越機械工業社製両面研磨装置
研磨液:株式会社フジミインコーポレーテッド、コロイダルシリカタイプ(pH:11.5)
スラリ流量:200mL/分
研磨速度(定盤回転数):70rpm
研磨ヘッド回転数:71rpm
研磨圧力:150g/cm2
キャリア:金属製
(実施例2、3)
シリコーン系整泡剤(SZ−1642、HLB値:11、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を、HLB値が14及び18であるシリコーン系整泡剤に代え、最大連結気泡の体積が90%以上、且つ、気泡の比表面積が、ポリウレタン樹脂シートの見掛け体積に対して、25〜50mm2/mm3になるように、水及びシリコーン系整泡剤の添加量を調整した以外は実施例1と同様にして研磨パッドを作製し、各測定及び評価を行った。このとき、水の添加量は全原料重量に対して0.05質量部〜2.0質量部であり、整泡剤の添加量は該水1質量部に対して1.0質量部〜4.0質量部の範囲内であった。実施例で作成した研磨パッドの各測定及び評価の結果を表1に示す。実施例1〜3の研磨パッドは、研磨層が摩耗し、スラリの拡散に最低限必要な溝深さが確認できなくなった時点で使用不可能と判断し、評価を終了した。
(比較例1)
シリコーン系整泡剤(SZ−1642、HLB値:11、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を、HLB値が10であるシリコーン系整泡剤に替え、最大連結気泡の体積が90%以上になるように水及び整泡剤の添加量を調整した以外は実施例1と同様にして研磨パッドを作製し、各測定及び評価を行った。なお、最大連結気泡の体積が90%以上、且つ、気泡の比表面積が、ポリウレタン樹脂シートの見掛け体積に対して、25〜50mm2/mm3になるように調整することは困難であった。各測定及び評価の結果を表1に示す。研磨パッドの研磨面に、スラリによる目詰まりに起因すると思われる硬化部が確認された段階で使用不可能と判断し、評価を終了した。なお、評価を終了した時点での研磨パッドの摩耗の程度については、スラリの拡散に最低限必要な溝深さが充分に残っている状態であった。
(比較例2)
シリコーン系整泡剤(SZ−1642、HLB値:11、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を、HLB値が19であるシリコーン系整泡剤に替え、気泡の比表面積が、ポリウレタン樹脂シートの見掛け体積に対して、25〜50mm2/mm3になるように水及び整泡剤の添加量を調整した以外は実施例1と同様にして研磨パッドを作製し、各測定及び評価を行った。なお、最大連結気泡の体積が90%以上を維持しつつ、気泡の比表面積が、ポリウレタン樹脂シートの見掛け体積に対して、25〜50mm2/mm3になるように調整することは困難であった。各測定及び評価の結果を表1に示す。研磨パッドの研磨面に、スラリによる目詰まりに起因すると思われる硬化部が確認された段階で使用不可能と判断し、評価を終了した。なお、評価を終了した時点での研磨パッドの摩耗の程度については、スラリの拡散に最低限必要な溝深さが残っている状態であった。
(比較例3)
シリコーン系整泡剤(SZ−1642、HLB値:11、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を、HLB値が14であるシリコーン系整泡剤に替え、気泡の比表面積が、ポリウレタン樹脂シートの見掛け体積に対して25mm2/mm3未満になるように水及び整泡剤の添加量を調整した以外は実施例1と同様にして研磨パッドを作製し、各測定及び評価を行った。各測定及び評価の結果を表1に示す。研磨層が摩耗し、スラリの拡散に最低限必要な溝深さが確認できなくなった時点で使用不可能と判断し、評価を終了した。この研磨パッドでは、実施例1と比較して研磨層の摩耗が速く、製品寿命としては劣るものであった。
(比較例4)
シリコーン系整泡剤(SZ−1642、HLB値:11、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を、HLB値が18であるシリコーン系整泡剤に替え、気泡の比表面積が、ポリウレタン樹脂シートの見掛け体積に対して25mm2/mm3未満になるように水及び整泡剤の添加量を調整した以外は実施例1と同様にして研磨パッドを作製し、各測定及び評価を行った。各測定及び評価の結果を表1に示す。研磨パッドの研磨面に、スラリによる目詰まりに起因すると思われる硬化部が確認された段階で使用不可能と判断し、評価を終了した。なお、評価を終了した時点での研磨パッドの摩耗の程度については、スラリの拡散に最低限必要な溝深さが残っている状態であった。
(比較例5)
整泡剤を添加せずに、水の添加量及び撹拌の回転数及び硬化時の温度を制御することで最大連結気泡の体積が90%以上となるように調整した以外は実施例1と同様にして研磨パッドを作成し、各測定及び評価を行った。なお、最大連結気泡の体積が90%以上、且つ、気泡の比表面積が、ポリウレタン樹脂シートの見掛け体積に対して、25〜50mm2/mm3になるように調整することは困難であった。各測定及び評価の結果を表1に示す。研磨パッドの研磨面に、スラリによる目詰まりに起因すると思われる硬化部が確認された段階で使用不可能と判断し、評価を終了した。なお、評価を終了した時点での研磨パッドの摩耗の程度については、スラリの拡散に最低限必要な溝深さが残っている状態であった。
本発明に係る研磨パッドは、半導体、半導体デバイス用シリコーンウエハ、各種記録用ディスクの基板、液晶ディスプレイ用ガラス基板等を被研磨物とする研磨加工に好適には用いられるので、それらの用途に産業上の利用可能性がある。
300…研磨パッド、310…樹脂シート、112…マトリックス樹脂、214b…気泡、214c…開孔部、S…研磨面、120…両面テープ、130…離型紙。

Claims (6)

  1. 被研磨物を研磨するための研磨面を有し、ポリウレタン発泡体からなるポリウレタン樹脂シートを備え、
    前記ポリウレタン樹脂シートは、前記ポリウレタン発泡体中に複数の気泡を有し、かつ、該複数の気泡の少なくとも一部が互いに連結した連結気泡であり、
    Tスキャンによって測定される最大連結気泡の体積が、前記気泡の総体積に対して、90%以上であることによって、前記ポリウレタン樹脂シートは、前記気泡が相互に連通することで形成されたスラリ流路を有しており、かつ、
    前記ポリウレタン樹脂シートにおいて、CTスキャンによって測定される前記気泡の比表面積が、前記ポリウレタン樹脂シートの見掛け体積に対して、25mm2/mm3以上50mm2/mm3以下である、
    研磨パッド。
  2. 前記気泡の平均開口径が、60μm以上120μm以下である、
    請求項1に記載の研磨パッド。
  3. 前記ポリウレタン樹脂シートの開孔面積率が、50%以上75%以下である、
    請求項1又は2に記載の研磨パッド。
  4. 前記ポリウレタン樹脂シートのA硬度が、60度以上90度以下であり、かつ
    前記ポリウレタン樹脂シートの圧縮率が、0.5%以上2.5%以下である、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨パッド。
  5. 前記ポリウレタン樹脂シートの密度が、0.30g/cm3以上0.60g/cm3以下である、
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の研磨パッド。
  6. ポリウレタン樹脂原料と、水と、該水1質量部に対して1.0質量部以上4.0質量部以下のシリコーン系整泡剤と、を混合し、ポリウレタン発泡体からなるポリウレタン樹脂シートを得る工程を含み、
    前記シリコーン系整泡剤は、11以上18以下のHLB値を有するものであり、
    前記ポリウレタン樹脂シートは、前記ポリウレタン発泡体中に複数の気泡を有し、かつ、該複数の気泡の少なくとも一部が互いに連結した連結気泡であり、
    Tスキャンによって測定される最大連結気泡の体積が、前記気泡の総体積に対して、90%以上であることによって、前記ポリウレタン樹脂シートは、前記気泡が相互に連通することで形成されたスラリ流路を有しており、かつ、
    前記ポリウレタン樹脂シートにおいて、CTスキャンによって測定される前記気泡の比表面積が、前記ポリウレタン樹脂シートの見掛け体積に対して、25mm2/mm3以上50mm2/mm3以下である、
    研磨パッドの製造方法。
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