JP7175617B2 - 研磨加工用パッド及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の研磨加工用パッドは、研磨パッド又は保持パッドとして用いられる。
本発明の研磨加工用パッドは、湿式成膜により形成された複数の気泡を内在するポリウレタン気泡シートから構成される。即ち、湿式成膜されたポリウレタン気泡シートは、例えば図1に示す如く、研磨パッドの研磨面又は保持パッドの保持面から厚み方向に遠ざかるにつれて拡大する略涙形状の気泡(涙形気泡)を有し、また、一部の気泡同士が連結した多孔質構造に形成されるため、略球状の独立気泡を有する硬質パッドと比べて柔軟性が高いことから、研磨パッドにおいては被研磨物に対する研磨傷の発生を抑制でき、保持パッドにおいては被研磨物の平坦性向上に寄与する。
(a)研磨加工用パッドにおいて、ポリウレタン気泡シートの三次元計測X線CTにより測定した表面から深さ100μm(図1参照)の断層画像における16.4mm2の測定領域内で、気泡空間を海部としたときに当該海部上に存在する島部の個数が70個以下であるものにした(図4(B)、図6参照)。これにより、ポリウレタン気泡シートの表面から該シートにおける気泡空間の奥深い位置に存在するバフ粉が低減される。従来のブラシロールを伴うポリウレタン気泡シートの表面洗浄では除去できずに残留するバフ粉を低減できる。尚、島部の個数は測定領域面積に比例しており、例えば、測定領域が10mm2であれば、島部の個数は43個以下である。
(c)研磨加工用パッドの製造方法として、湿式成膜されたポリウレタン気泡シートのスキン層に、該シートの送り方向に対し逆方向に回転するバフローラーを接触させ、該シートの表面に気泡空間を開口させるバフィング処理工程を含む(図2参照)。これにより、バフローラーの回転方向がポリウレタン気泡シートの送り方向に対して逆方向になり、バフローラーによりポリウレタン気泡シートのスキン層から削り取られたバフ粉が、該シートのバフィング処理された表面の側に付着しにくい。即ち、バフ粉は該シートのバフィング処理によって開口された気泡空間に侵入し難く、該気泡空間への残留を上述(a)、(b)の如くに低減できる。
本発明の研磨加工用パッドを製造する方法として、代表的な方法を以下に説明する。該方法は、少なくとも以下の構成:
準備工程
塗布工程
凝固再生工程
洗浄・乾燥工程
基材貼り合せ工程
バフィング処理工程
を含んでいる。
準備工程では、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂を溶解可能な水混和性の有機溶媒のN、N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する。)及び添加剤を混合してポリウレタン樹脂を溶解させる。水混和性の有機溶媒としては、水と任意の割合で混ざり合う有機溶媒であれば良く、DMF以外に、例えばN,N-ジメチルアセトアミド等を用いても良い。ポリウレタン樹脂には、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系等の樹脂から数平均分子量が5,000~100,000の範囲のものを選択して用い、例えば、ポリウレタン樹脂が30重量%となるようにDMFに溶解させる。ポリウレタン樹脂の分子量を制限することにより、凝固再生工程において、ポリウレタン樹脂の分子移動を円滑にすることができる。添加剤としては、気泡の平均厚さ方向の長さや単位体積あたりの個数を制御するため、カーボンブラック等の顔料、気泡の形成を促進させる親水性添加剤及びポリウレタン樹脂の凝固再生を安定化させる疎水性添加剤等を用いることができる。得られた溶液を減圧下で脱泡してポリウレタン樹脂溶液を得る。
塗布工程では、準備工程で得られたポリウレタン樹脂溶液を常温下でナイフコータ等により帯状の成膜基材に略均一となるように、連続的に塗布する。このとき、ナイフコータ等と成膜基材との間隙(クリアランス)を調整することで、ポリウレタン樹脂溶液の塗布厚さ(塗布量)が調整される。成膜基材にはPET樹脂等の樹脂製の不織布やフィルムを用いることができるが、本例では、成膜基材としてPET製フィルムが用いられる。
凝固再生工程では、成膜基材に塗布されたポリウレタン樹脂溶液が、ポリウレタン樹脂に対して貧溶媒である水を主成分とする凝固液(水系凝固液)に案内される。本例では、凝固液として、水を用いている。凝固液中では、まず、ポリウレタン樹脂溶液の表面側に緻密な微細孔が形成されスキン層が形成される。その後、ポリウレタン樹脂溶液中のDMFと凝固液との置換の進行によりポリウレタン樹脂が成膜基材上にシート状に凝固再生されて気泡が形成された樹脂シートが形成される。ポリウレタン樹脂溶液からDMFが脱溶媒し、DMFと水とが置換することで、気泡及び微細孔が網目状に連通する。
洗浄・乾燥工程では、凝固再生工程で凝固再生したシート状のポリウレタン樹脂(成膜樹脂)を成膜基材から剥離し、水等の洗浄液中で洗浄してポリウレタン樹脂中に残留するDMFを除去する。洗浄後、成膜樹脂をシリンダ乾燥機で乾燥させる。シリンダ乾燥機は内部に熱源を有するシリンダを備えている。成膜樹脂がシリンダの周面に沿って通過することで乾燥する。乾燥後の成膜樹脂は、ポリウレタン気泡シートとしてロール状に巻取られる。
基材貼り合せ工程では、洗浄及び乾燥されてロール状に巻取られたポリウレタン気泡シートのスキン層と反対の面側に略平坦な支持材としてのシート基材が接着剤或いは両面粘着テープを介して貼り合わされる。シート基材には、PET製シート、不織布、ポリウレタン樹脂含浸不織布が用いられる。シート基材が貼り合わされたポリウレタン気泡シートはロール状に巻取られる。
バフィング処理工程では、バフ機によってポリウレタン気泡シートのスキン層に回転するバフローラーを接触させて研削処理を施す。これにより、ポリウレタン気泡シートの厚みが均一化され、該シートの表面に気泡空間が開口される。
(1)実施例1及び比較例1、2の研磨加工用パッドを製造した。
(実施例1)
実施例1では、ポリウレタン樹脂として、100%モジュラスが10MPaのポリエステルMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)ポリウレタン樹脂を用いた。このポリウレタン樹脂のDMF溶液100部に対して、粘度調整用のDMFの45部、顔料のカーボンブラックを30%含むDMF分散液の40部、界面活性剤(大日本インキ株式会社製、商品名:クリスボンSD-11)の2部を混合してポリウレタン樹脂溶液45を調製し、湿式成膜法で厚さ1mmのポリウレタン気泡シートを得た。このポリウレタン気泡シートのスキン層と反対面側に感熱タイプの粘着剤を介し不織布基材を貼り合せ、巻取った。得られたポリウレタン気泡シート巻取体のスキン層側をバフ番手♯180のサンドペーパーを用いたバフローラーにより、バフ量60μmでバフィング処理した。このとき、バフローラーの回転方向をポリウレタン気泡シートの送り方向に対し逆方向とし、ポリウレタン気泡シートの送り速度(1.4m/min)に対するバフローラーの回転速度(1440.5m/min)の比を1030とした。
比較例1では、バフローラーの回転方向をポリウレタン気泡シートの送り方向と同じにする以外、実施例1と同じ条件でバフィング処理した。
比較例2では、比較例1と同じ条件でバフィング処理した後、そのバフィング処理面に500rpmで回転しているブラシロールによってブラシ掛けするとともに、水圧3MPa、水量500L/minの高圧水流を吹付けて洗浄後、乾燥させた。
管電圧:25kV
管電流:0.2mA
画素数:512×512pixel
視野サイズ: 4.32mm×4.32mm
X線CTにより得られた画像データを8bit画像に変換し、閾値設定アルゴリズムをDefault設定にして輝度閾値を設定し気泡内の微小物を分割した。複数の画像を同一位置、サイズとなるよう測定領域を切り取った。測定領域の面積は4002.25μm×4097.75μm(16.4mm2)である。
実施例1及び比較例1、2において、ポリウレタン気泡シートの表面から50μm深さ、100μm深さの図3(A)、図3(B)、図4(A)、図4(B)に示した各海島画像における島部個数の検出結果は、図5、図6に示す通りとなった。
・使用研磨機:不二越株式会社製、商品名「MCP-150X」
・回転数:(研磨用定盤)100rpm、(保持用定盤(トップリング))75rpm
・研磨圧力(押圧力):330g/cm2
・研磨スラリ:Nalco社製、品番2350(2350原液:水=1:9の混合液を使用)
・被研磨物:8インチφシリコンウエハ(厚さ:750μm)
・研磨時間:15分/枚
スクラッチの評価では、研磨試験の被研磨物として600枚の基板を研磨し、被研磨物の処理枚数が初期段階の100枚目から、300枚目、更には600枚目の終了段階までの各研磨段階における被研磨物の表面をパターンなしウエハ表面検査装置(KLAテンコール社製、Surfscan SP1DLS)の高感度測定モードにて測定し、被研磨物の表面におけるスクラッチの発生について、損傷が0~4カ所確認された場合を「○」、損傷が5~9カ所確認された場合を「△」、損傷が10カ所以上確認された場合を「×」として評価した。
11 送出ローラー
13 圧接ローラー
14 バフローラー
Claims (4)
- 湿式成膜により形成された複数の気泡を内在し、表面に開口を有するポリウレタン気泡シートであって研磨パッドや保持パッドとして用いられる研磨加工用パッドにおいて、
ポリウレタン気泡シートの三次元計測X線CTにより測定した表面から深さ100μmの断層画像における16.4mm2の測定領域内で、気泡空間を海部としたときに当該海部上に存在する島部の個数が29個以下であることを特徴とする研磨加工用パッド。 - 前記ポリウレタン気泡シートの三次元計測X線CTにより測定した表面から深さ50μmの断層画像における16.4mm2の測定領域内で、気泡空間を海部としたときに当該海部上に存在する島部の個数が34個以下である請求項1に記載の研磨加工用パッド。
- 湿式成膜により形成された複数の気泡を内在するポリウレタン気泡シートからなる研磨加工用パッドの製造方法において、
湿式成膜されたポリウレタン気泡シートのスキン層に、該シートの送り方向に対し逆方向に回転するバフローラーを接触させ、該シートの表面に気泡空間を開口させるバフィング処理工程を含むものであり、
前記ポリウレタン気泡シートにバフィング処理を施す前に、該シートのスキン層に対する反対面に粘着剤を介し基材を貼り付けるとともに、
前記ポリウレタン気泡シートの送り速度に対するバフローラーの速度の比が500乃至2000である研磨加工用パッドの製造方法。 - 前記ポリウレタン気泡シートを送り出す送出ローラーとバフローラーに対向する圧接ローラーの間の該シートに作用する張力が10N乃至50Nである請求項3に記載の研磨加工用パッドの製造方法。
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