JP6835632B2 - 保持パッド及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、保持パッド及びその製造方法に関する。
従来、半導体デバイス、電子部品等の材料、特に、Si基板(シリコンウェハ)、GaAs(ガリウム砒素)基板、ガラスやLCD(液晶ディスプレイ)用基板等の薄型基板(被研磨物)の表面(加工面)では、平坦性が求められるため、研磨パッドをスラリーと共に用いる化学機械研磨加工が行われている。
このような研磨加工、中でも片面研磨加工においては、被研磨物を保持するための保持パッドが使用されることがある。保持パッドは、被研磨物を保持するための樹脂シート(保持部)と、必要に応じて、当該樹脂シート上に、被研磨物の横ずれを抑制するための枠材が貼り合わせられた構造を有する。より具体的に、特許文献1には、保持面の表面精度が高く、被研磨材の吸着性に優れる積層シートを提供することを目的として、基材シートと、略球状の連続気泡を有するポリウレタン発泡層と、を備える積層シートが開示されている。
特開2007−245571号公報
近年、パワーデバイスなどに適用され得る材料、例えば、サファイア、SiC、GaN及びダイヤモンドなど、研磨加工の困難な難加工材料を研磨する需要が増えている。このような難加工材料を被研磨物として研磨する場合、保持パッドには、高研磨圧で、強アルカリ又は強酸性で酸化剤を含むスラリーの存在下、数時間に及ぶ長時間研磨に耐えることのできる耐薬品性と耐久性が要求される。
特許文献1に記載の連続気泡を有するポリウレタン発泡層を有する保持パッドは、クッション性が良好であり被研磨物を傷つけにくく、また、水等の液体を介してその表面張力の作用により容易に被研磨物を吸着保持することができるという利点を有する。しかしながら、研磨に伴い加えられる研磨圧により気泡が押しつぶされて塑性変形(いわゆる、ヘタリ)してしまうという問題がある。このような保持パッドでは、特に長時間の研磨では平坦性が大きく低下してしまい、それに起因して被研磨物が脱離したり破損したりするおそれがある。また、スラリーが気泡内を浸食して保持パッドが化学的に劣化したりするという問題もある。それに加えて、従来の保持パッドとして、湿式凝固法により形成される、略涙型の気泡と保持面にスキン層と呼ばれる平滑な高密度層とを有する発泡ポリウレタンシートも挙げられる。この場合、上記の問題に加えて、気泡をきっかけにして保持パッドのスキン層が物理的又は化学的に破損するという問題がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、被研磨物の保持力に優れ、塑性変形しにくいことによる高耐久性を有し、耐薬品性にも優れる保持パッド及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、保持部として、所定の無発泡樹脂を用いることにより、上記課題が解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
被研磨物を保持する保持部を備え、
前記保持部が、25℃における角周波数0.1rad/sに対する6.3rad/sの損失弾性率比(E”[6.3]/E”[0.1])が2.00〜6.50である無発泡樹脂シートである、
保持パッド。
〔2〕
前記無発泡樹脂シートが、無発泡ポリウレタン樹脂シートである、
〔1〕に記載の保持パッド。
〔3〕
前記無発泡樹脂シートのゲル分率が、5%〜30%である、
〔1〕又は〔2〕に記載の保持パッド。
〔4〕
前記保持部の前記被研磨物を保持する面とは反対側の面に、発泡樹脂からなるクッション層を備えない、
〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の保持パッド。
〔5〕
前記保持部の前記被研磨物を保持する面とは反対側の面に、発泡樹脂からなるクッション層を備える、
〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の保持パッド。
〔6〕
前記無発泡樹脂シートのショアA硬度が、10〜60°である、
〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の保持パッド。
〔7〕
前記無発泡樹脂シートが、炭素数が10〜30であるダングリング鎖を有する、
〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の保持パッド。
〔8〕
前記保持部の前記被研磨物を保持する面に、貫通孔及び溝を有しない、
〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の保持パッド。
〔9〕
少なくとも、プレポリマーと、鎖伸長剤と、を混合して混合液を得る工程と、
得られた前記混合液を硬化させて、25℃における角周波数0.1rad/sに対する6.3rad/sの損失弾性率比(E”[6.3]/E”[0.1])が2.00〜6.50である無発泡樹脂シートを形成する工程と、を有し、
前記鎖伸長剤が、炭素数10〜30の飽和又は不飽和脂肪族基のダングリング鎖を有する化合物を含む、
保持パッドの製造方法。
〔10〕
前記プレポリマーが、ポリウレタンプレポリマーであり、前記鎖伸長剤がジオール化合物及び/又はポリオール化合物である、
〔9〕に記載の保持パッドの製造方法。
本発明であれば、被研磨物の保持力に優れ、塑性変形しにくいことによる高耐久性を有し、耐薬品性にも優れる保持パッド及びその製造方法を提供することができる。
本実施形態の保持パッドの一態様を表す概略断面図である。 本実施形態の保持パッドを用いて被研磨物の研磨を行う方法を示す模式図である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
〔保持パッド〕
本実施形態の保持パッドは、被研磨物を保持する保持部を備え、前記保持部が、25℃における、角周波数0.1rad/sに対する6.3rad/sの損失弾性率比(E”[6.3]/E”[0.1])が2.00〜6.50である無発泡樹脂シートである。なお、保持部が被研磨物と接する面を「保持面」ともいう。
保持部に発泡体を用いる従来の保持パッドは、クッション性が良好であり被研磨物を傷つけにくく、また、水等の液体を介してその表面張力の作用により容易に被研磨物を吸着保持することができるという利点を有する一方で、気泡を有することにより、塑性変形や破損が起こりやすく、耐薬品性にも劣るという問題がある。これに対して、本実施形態の保持パッドは、無発泡樹脂シートを用いることにより、気泡に起因する塑性変形、破損、耐薬品性の低下を解消することができる。また、通常、無発泡樹脂シートを用いると、クッション性が低下し、被研磨物との密着性の悪化により保持力が低下するが、本実施形態の保持パッドは、損失弾性率比(E”[6.3]/E”[0.1])が2.00〜6.50である無発泡樹脂シートを用いることで、クッション性及び被研磨物の保持力にも優れるものとなる。
また、従来の湿式凝固法によって形成される保持パッドでは、保持面側にスキン層と呼ばれる数μm程度の平滑な高密度層を設けることで、液体の表面張力の作用により強力に被研磨物を吸着保持することができる構成とすることがあるが、一方で、研磨後に被研磨物を脱離させる際には、強い吸着力が原因となりスキン層が剥離して破損する恐れがあった。すなわち、気泡をきっかけにして保持パッドのスキン層が物理的に破損する恐れがあった。これに対して、本実施形態の保持パッドでは、無発泡樹脂シートを用いることで、被研磨物を脱離させる際の破損もより抑制できるものとなる。
さらに、従来の湿式凝固法によって形成される保持パッドでは、溶媒に溶解させた樹脂溶液を基材シートに塗布し、水で溶媒を置換処理することにより得られる発泡体を用いる。このようにして得られる発泡体は溶媒に溶解する樹脂からなるものであるため、製造条件の制約から、十分な耐久性を確保することが難しいという問題がある。これに対して、本実施形態の保持パッドは、発泡を形成する必要がないため、このような製造条件上の制約を考慮する必要がないという利点もある。
図1に、本実施形態の保持パッドの一態様を表す概略断面図を示す。図1に示す保持パッド10は、基材12と、被研磨物Wを保持する保持部11と、該保持部11により保持された被研磨物Wを囲むように形成された枠部13と、被研磨物の保持面とは反対側に設けられた接着層14と、を備える。
〔保持部〕
保持部は、所定の無発泡樹脂シートである。なお、本実施形態において、「無発泡樹脂」とは、実質的に発泡を有しない樹脂の層をいう。より具体的には、開孔面積率が3%以下、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下であるものをいう。このような構造を有することにより、発泡体を用いる保持パッドと比較して塑性変形や気泡に由来する破損の発生が抑制されるため耐久性がより向上し、また、耐薬品性もより向上する。以下、無発泡樹脂の構成についてより詳細に説明する。
本実施形態の保持パッドは、保持部の保持面に被研磨物を押し付けることで、保持面と被研磨物の表面との相互作用により被研磨物を保持することができる。なお、本実施形態の保持パッドにおいては、被研磨物を保持させる際に水等の液体を介在させなくてもよいが、液体を介在させる使用態様を排除するものではない。また、真空吸着法等の公知の保持手段と併用してもよい。保持部の保持面は、被研磨物を保持しやすいように被研磨物よりやや大きく設計されていてもよい。さらに、保持部は、複数の被研磨物を同時に保持できるよう構成されていてもよい。
保持部を構成する無発泡樹脂シートの25℃における損失弾性率比(E”[6.3]/E”[0.1])は、2.00〜6.50であり、好ましくは2.50〜6.50であり、より好ましくは3.00〜6.50であり、特に好ましくは3.50〜6.50である。無発泡樹脂シートの損失弾性率比(E”[6.3]/E”[0.1])が上記範囲内であることにより、耐久性、保持力(密着力)、クッション性を両立することができる。無発泡樹脂シートの損失弾性率比(E”[6.3]/E”[0.1])は、例えば、ウレタン樹脂の場合は後述の飽和又は不飽和脂肪族基を含むポリオール化合物の導入量により制御することができる。また、無発泡樹脂シートの損失弾性率比(E”[6.3]/E”[0.1])は、実施例に記載の方法により測定することができる。
つまり、本実施形態の保持パッドは、耐久性を向上させるために無発泡体でありながら、保持力(密着力)及びクッション性を向上させるために、保持部を構成する樹脂の粘性を向上させることを特徴とする。ここで、粘性を評価する指標として、トップリングの回転数(60rpm)に対応した6.3rad/sにおける損失弾性率E”[6.3]が挙げられるが、この数値は樹脂の組成や硬度等にも影響され、特に、高硬度の樹脂シートでもE”[6.3]は高くなる傾向にある。そこで、低周波数領域として0.1rad/sにおける損失弾性率E”[0.1]で除算し無次元化することで、樹脂の組成や硬度等に依存しない損失弾性率比(E”[6.3]/E”[0.1])を設定した。また、保持部への被研磨物の着脱時、及び運搬時の温度に準拠して、損失弾性率は室温(25℃)における測定値とした。
従来の保持パッドを用いて、水等の液体を介して被研磨物を保持する場合、液体の量によって表面張力が不足したり、被研磨物が浮き上がって保持力が不足するため、その調整は極めて繊細なものである。一方、保持部を構成する無発泡樹脂シートの25℃における損失弾性率比(E”[6.3]/E”[0.1])が2.50〜6.50であれば、保持面と被研磨物との密着性がより向上するため、水等の液体を介さずとも被研磨物を保持できる傾向にある。また、損失弾性率比(E”[6.3]/E”[0.1])が3.00〜6.50であれば、より確実に水等の液体を介さずとも被研磨物を保持できる傾向にあり、3.50〜6.50であれば、保持力(密着力)やクッション性をより確実に向上できる傾向にある。
保持部は、損失弾性率比(E”[6.3]/E”[0.1])が2.00〜6.50である無発泡樹脂シートであれば特に限定はないが、耐熱性、耐薬品性の観点及び、損失弾性率比(E”[6.3]/E”[0.1])やA硬度等の各物性の調整の容易性を考慮すると、ポリウレタン樹脂とすることが好ましい。ポリウレタン以外の樹脂としては、エポキシ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、ABS、ナイロン、シリコン、メラミン、アクリル、ブタジエン、スチレンブタジエン、エチレンプロピレン、フッ素、ポリアミド、ポリケトン、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、フェノール等の公知の樹脂でもよく、2種類以上の樹脂を組み合わせてもよい。
保持部は、損失弾性率比(E”[6.3]/E”[0.1])が2.00〜6.50である無発泡樹脂シートであれば特に限定はないが、例えば、炭素数が10〜30であるダングリング鎖を有する無発泡ポリウレタン樹脂シートとすることができる。具体的には、本実施形態の無発泡ポリウレタン樹脂シートは、ポリウレタンの架橋構造中に、下記式(1)で表される繰り返し単位を有するものとすることができる。ここで、ダングリング鎖は、R”で示されるものであり、無発泡ポリウレタン樹脂シートの原料であるポリウレタンプレポリマー(イソシアネート基を2以上有する化合物)と、飽和又は不飽和脂肪族基を含むジオール化合物とが反応することでポリウレタンの架橋構造中に導入されるものである。なお、ダングリング鎖は以下に限定されず、飽和又は不飽和脂肪族基を含むポリオール化合物によっても導入することができる。なお、「ダングリング鎖」とは、片末端が架橋体と結合しており、他の末端が架橋体と結合していない部分鎖をいう。
(式中、R及びR’は、ポリウレタンの主鎖を構成する有機基を示し、R”は、Rに結合したダングリング鎖を示す。)
被研磨物の保持力や、保持部のクッション性を向上させるためには、無発泡ポリウレタン樹脂シートは、一定の軟質性を有することが望まれる。そのため、本実施形態においては、ポリウレタンの架橋構造に上記ダングリング鎖を導入し、軟質性を確保する。ダングリング鎖を導入することで、ポリウレタンが強固な架橋構造を形成することを阻害し、片末端が架橋構造に結合しておらず自由に運動できる長鎖(ダングリング鎖)を有していることで架橋構造に粘体としての性質を付与することができる。これにより、結果として、被研磨物の保持力や、保持部のクッション性を確保することが可能となる。
なお、ダングリング鎖としては、後述する、グリセリン飽和脂肪酸エステル、グリセリン不飽和脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルにおける飽和脂肪酸残基や不飽和脂肪酸残基が挙げられる。ダングリング鎖の炭素数は、10〜30であり、好ましくは15〜25であり、より好ましくは16〜24である。ダングリング鎖の炭素数が上記範囲内であることにより、クッション性がより向上する。なお、また、クッション性をより向上させるために、ダングリング鎖は側鎖を有さないことが好ましい。このようなダングリング鎖は、後述する鎖伸長剤として、飽和又は不飽和脂肪族基のダングリング鎖を有するジオール化合物及び/又はポリオール化合物(以下、単に「ジオール化合物」、「ポリオール化合物」ともいう。なお、単に「ジオール化合物」、「ポリオール化合物」と記載した場合には、炭素数10〜30の飽和又は不飽和脂肪族基を有しないものは含まれないものとする)を用いることにより、導入することができ、その導入量は鎖伸長剤中のこれら化合物の使用割合により制御することができる。
なお、ポリウレタンの架橋構造へのダングリング鎖の導入量は、ポリウレタン樹脂の種類にもよるが、後述する無発泡ポリウレタン樹脂シートのA硬度又はゲル分率が好ましい範囲となるような量が好ましい。
上記ポリウレタン樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、及びポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中では、本発明の目的をより有効且つ確実に奏する観点から、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂が好ましい。無発泡ポリウレタン樹脂シートは、後述する方法により製造することができる。
無発泡樹脂シートのゲル分率は、好ましくは5%〜30%であり、より好ましくは5%〜25%であり、さらに好ましくは5%〜20%である。ゲル分率は無発泡樹脂シートの架橋度(有効網目鎖構造の多寡、硬化の度合い)の指標として解釈することが可能である。無発泡樹脂シートのゲル分率が5%以上であることにより、耐久性がより向上する傾向にある。また、無発泡樹脂シートのゲル分率が30%以下であることにより、架橋体に結合していないゾル分が増加する。ゾル分は流動性を示し、無発泡樹脂シートの粘性の向上等に寄与し得る。そのため、無発泡樹脂シートのゲル分率が30%以下であることにより、無発泡樹脂シートのクッション性がより向上し、被研磨物に対する粘性(保持力)がより向上する傾向にある。なお、無発泡樹脂シートのゲル分率は、ダングリング鎖の導入や、プレポリマーと鎖伸長剤の種類や比率の調整、又は硬化(加熱)時間等により制御することができる。また、保持部のゲル分率は実施例に記載の方法により測定することができる。
無発泡樹脂シートのショアA硬度は、好ましくは10〜60°であり、より好ましくは15〜55°であり、さらに好ましくは20〜55°であり、特に好ましくは25〜55°である。無発泡樹脂シートのショアA硬度が10°以上であることにより、耐久性がより向上する傾向にある。また、無発泡樹脂シートのショアA硬度が60°以下であることにより、クッション性がより向上し、また、被研磨物と保持面とが密着することで保持力がより向上する上、耐久性がより向上する傾向にある。無発泡樹脂シートのショアA硬度は、プレポリマー、鎖伸長剤、それらの種類や比率、ダングリング鎖の導入量等により制御することができる。また、無発泡樹脂シートのショアA硬度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
また、損失弾性率比(E”[6.3]/E”[0.1])が3.00〜6.50で、且つ、ショアA硬度が25〜55°であることがより好ましい。損失弾性率比(E”[6.3]/E”[0.1])及びショアA硬度を前記範囲内であることにより、耐久性、保持力(密着力)、クッション性がそれぞれ向上する傾向にある。
無発泡樹脂シートの圧縮率は、0.3〜2.0%であり、好ましくは0.4〜1.7%であり、より好ましくは0.5〜1.4%である。無発泡樹脂シートの圧縮率が0.3%以上であることにより、研磨時の衝撃に由来する研磨物表面の研磨傷の発生をより抑制できる。また、無発泡樹脂シートの圧縮率が2.0%以下であることにより、研磨レートがより向上する。圧縮率は、例えば、無発泡樹脂シートの作製に用いるプレポリマーの種類や比率により調整することができる。また、保持部の圧縮率は、ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を用いて、日本工業規格(JIS L 1021)に準拠して、測定することができる。具体的には、初荷重で30秒間加圧した後の厚さt0を測定し、次に最終圧力のもとで1分間放置後の厚さt1を測定し、下記数式(1)で圧縮率を算出することができる。このとき、初荷重は300g/cm2、最終圧力は1800g/cm2とする。
数式(1):圧縮率(%)=(t0−t1)/t0×100
無発泡樹脂シートは完全に気泡を有しない樹脂シートに限定されず、実質的に発泡を有しないものであればよく、実際の製造工程上で混入し得る程度の気泡を有していてもよいが、気泡はより少ないことが好ましい。具体的には、開孔面積率が3%以下、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下であればよい。開孔面積率は、例えば、保持面を175倍に拡大して観察し、得られた画像を画像処理ソフト(Image Analyzer V20LAB Ver. 1.3、ニコン製)により二値化処理して気泡個数を測定し、また、各々の気泡の面積(開孔径)を測定して、単位面積当たりの開孔面積率を算出することができる。
無発泡樹脂シートの厚さは、特に制限されないが、研磨工程中に被研磨物が無発泡樹脂シートに沈み込み、加工精度が低下するのを抑制するために、好ましくは3mm以下であり、より好ましくは2.0mm以下であり、さらに好ましくは1.0mm以下である。また、無発泡樹脂シートの厚さの下限は、特に限定されないが10μm以上が好ましい。無発泡樹脂シートの厚さが上記範囲内であることにより、厚さ精度を十分に確保することができる傾向にある。厚さは、日本工業規格(JIS K 6505)に準拠して測定される。
本実施形態の保持パッドは、保持部の被研磨物を保持する面(保持面)に、貫通孔及び溝を有しないことが好ましい。貫通孔及び溝を有しないことにより、特に難加工材料の研磨において保持部の経時劣化をより抑制できる傾向にある。一方で、保持パッドに貫通孔加工を設けて、公知の真空吸着法と併用して使用してもよいし、そのほかの保持方法と併用してもよい。
〔枠部〕
本実施形態の保持パッドは、保持部により保持された被研磨物を囲む枠部を有していてもよい。枠部は、研磨加工中に被研磨物が横ずれを起こして、保持部の保持面から飛び出すことを防止する(横ずれ範囲を規制する)ものである。そのため、枠部の形状及び寸法は、被研磨物が研磨領域から飛び出さないようなものであれば特に限定されず、例えば、内径が被研磨物の外径より大きくなるように形成されていてもよい。
また、枠部の厚さは、特に限定されず、被研磨物の厚さ以下、あるいは被研磨物の厚さと同等としてもよい。例えば、枠部の厚さが被研磨物の厚さと同等である場合には、研磨時において、枠部は、研磨パッドを押し付けるように接することとなる。枠部で研磨パッドを押し付けることにより、被研磨物に接する研磨パッド面の平坦性が向上し、結果として端部形状を良化させる傾向にある。
さらに、枠部は、保持部に向かって広がるテーパー状に設けられていてもよい。枠部がそのようなテーパー状に設けられていることにより、被研磨物の脱着がより容易となる。
〔クッション層〕
本実施形態の保持パッドは、保持部の被研磨物を保持する面とは反対側の面に、発泡樹脂からなるクッション層を備えてもよいし、当該クッション層を備えなくてもよい。クッション層を備えない場合、クッション層における変形が生じ得ないため、保持パッドの平坦性がより向上する傾向にある。また、クッション層を備える場合、保持パッドのクッション性が向上し、保持定盤の硬さに由来する被研磨物の損傷をより抑制することができる傾向にある。なお、いずれの場合も、保持部は、無発泡樹脂であるため、スラリーが保持部に侵食することを回避することができる。
〔接着層〕
本実施形態の保持パッドは、保持定盤側の面に、保持パッドを保持定盤に固定するための両面テープや面ファスナーのような接着層や粘着層の固定手段を有していてもよい。
〔保持パッドの製造方法〕
本実施形態の保持パッドの製造方法は、プレポリマーと、鎖伸長剤と、を混合して混合液を得る工程と、得られた前記混合液を硬化させて、角周波数0.1rad/sに対する6.3rad/sの損失弾性率比(E”[6.3]/E”[0.1])が2.50〜6.50である無発泡樹脂シートを形成する工程と、を有し、鎖伸長剤が、炭素数10〜30の飽和又は不飽和脂肪族基のダングリング鎖を有する化合物を含む。ここで、耐熱性、耐薬品性の観点及び、損失弾性率比(E”[6.3]/E”[0.1])やA硬度等の各物性の調整の容易性を考慮すると、プレポリマーはポリウレタンプレポリマーとすることが好ましく、鎖伸長剤はジオール化合物及び/又はポリオール化合物であることが好ましい。
本実施形態の保持パッドの製造方法の具体的態様としては、特に限定されないが、例えば、プレポリマーと、炭素数10〜30の飽和又は不飽和脂肪族基のダングリング鎖を有する化合物を含む鎖伸長剤と、を混合して混合液を得る工程と、基材上に混合液を塗布して硬化させる工程と、を有する方法A;プレポリマーと、炭素数10〜30の飽和又は不飽和脂肪族基を有する化合物を含む鎖伸長剤と、を混合して混合液を得る工程と、混合液を目標厚みより厚いブロック状に硬化させる工程と、硬化させたブロックを複数枚のシート状に切り出す工程と、を有する方法B;プレポリマーと、炭素数10〜30の飽和又は不飽和脂肪族基のダングリング鎖を有するジオール化合物を含む鎖伸長剤と、を混合して混合液を得る工程と、混合液を金型内でシート状、且つ目標厚みに硬化させる工程とを有する方法Cが挙げられる。
方法Aは、方法B及びCと比較して、スクリーン印刷に代表される公知の印刷技術を採用することができ、厚み精度を向上させつつ製造コストを抑制できるという点において、好ましい。また、公知のコーター設備を用いて連続生産してもよく、その場合も製造コストを抑制できるという点において、好ましい。方法Cは、方法Bと比較して、硬化させたブロックをシート状に切り出す工程を含まず、最初から目標厚みに硬化させる点で異なる。この場合、シート状に切り出す際に、保持面に微細な凹凸が形成され、保持力が低下することを抑制できるという点において、好ましい。以下、プレポリマーがポリウレタンプレポリマーであり、鎖伸長剤がジオール化合物及び/又はポリオール化合物である場合における、無発泡ポリウレタン樹脂シートを得るための混合液の成分について説明する。
〔プレポリマー〕
ウレタンプレポリマーとしては、当業界でよく用いられるような、ポリイソシアネート化合物と(ウレタンプレポリマー用)ポリオール化合物との反応により調製されるイソシアネート基含有化合物が使用できる。また、市販されている多様なウレタンプレポリマーを使用してもよい。
(ポリイソシアネート化合物)
ポリイソシアネート化合物としては、特に限定されないが、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、4,4’−メチレン−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソチオシアネート、キシリレン−1,4−ジイソチオシアネート、エチリジンジイソチオシアネート等が挙げられる。
(ポリオール化合物)
ウレタンプレポリマー用のポリオール化合物としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのジオール;ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリエーテルポリオール;エチレングリコールとアジピン酸との反応物やブチレングリコールとアジピン酸との反応物等のポリエステルポリオール;ポリカーボネートポリオール;ポリカプロラクトンポリオール;等が挙げられる。
ウレタンプレポリマーのNCO当量は、好ましくは300〜600であり、より好ましくは350〜550であり、さらに好ましくは400〜500である。ウレタンプレポリマーのNCO当量が上記範囲内であることにより、被研磨物の保持力及びクッション性がより向上する傾向にある。なお、本明細書中において、「NCO当量」とは、該当樹脂溶液中のウレタンプレポリマーの平均NCO当量を意味する。また、NCO当量は周知の方法で測定でき、例えばJIS K 7301(1995)に準拠して測定することができる。
〔鎖伸長剤〕
鎖伸長剤としては、炭素数10〜30の飽和又は不飽和脂肪族基のダングリング鎖を有する化合物を含む鎖伸長剤であれば特に限定されない。例えば、保持面を構成する無発泡樹脂シートを無発泡ポリウレタン樹脂シートとする場合は、炭素数10〜30の飽和又は不飽和脂肪族基のダングリング鎖を有するジオール化合物及び/又は水酸基を2つ以上有するポリオール化合物を含むものであればよく、その他のイソシアネート基と反応する活性水素基を2以上有する活性水素化合物を併用することもできる。鎖伸長剤の水酸基などの活性水素基は、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基と反応し、ウレタン結合を形成する。この際に、ジオール化合物の炭素数10〜30の飽和又は不飽和脂肪族基は、炭素数10〜30のダングリング鎖となる。ジオール化合物及び/又はポリオール化合物を用いることにより、得られるポリウレタンの分子量の低下を防止でき、ジオール化合物及び/又はポリオール化合物の分子数に比例してダングリング鎖を導入することができる。
ジオール化合物としては、例えば、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
HO−(R(R”))−OH (2)
(ここで、式中、R及びR”は式(1)におけるものと同義であり、R”はより具体的には炭素数10〜30の1価の飽和又は不飽和脂肪族基を示す。)
ジオール化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、カプリン酸グリセリル、ラウリン酸グリセリル、ミリスチン酸グリセリル、ペンタデシル酸グリセリル、パルミチン酸グリセリル、マルガリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、アラキジン酸グリセリル、ヘンイコシル酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、リグノセリン酸グリセリル、セロチン酸グリセリル、モンタン酸グリセリル、メリシン酸グリセリルのようなグリセリン飽和脂肪酸エステル;パルミトレイン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、オレイン酸グリセリル、バクセン酸グリセリル、リノール酸グリセリル、リノレン酸グリセリル、エレオステアリン酸グリセリル、アラキジン酸グリセリル、アラキドン酸グリセリル、ネルボン酸グリセリルのようなグリセリン不飽和脂肪酸エステルが挙げられる。
ポリオール化合物としては、上記式(2)におけるR”を有するポリオール化合物が挙げられ、より具体的には、特に限定されないが、例えば、モノオレイン酸ジグリセリル、トリオレイン酸デカグリセリルのようなポリグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。
ジオール化合物及び/又はポリオール化合物における脂肪族基(例えば上記R”)の炭素数は、好ましくは10〜30であり、より好ましくは15〜25であり、さらに好ましくは16〜24である。ジオール化合物の脂肪族基の炭素数が上記範囲内であることにより、被研磨物の保持力及びクッション性がより向上する傾向にある。
ジオール化合物及び/又はポリオール化合物の含有量は、混合液の総量に対して、好ましくは5〜30質量%であり、より好ましくは10〜30質量%であり、さらに好ましくは10〜25質量%である。鎖伸長剤としては、ジオール化合物及び/又はポリオール化合物のみを使用してもよいが、その他のイソシアネート基と反応する活性水素基を2以上有する活性水素化合物を併用することもできる。鎖伸長剤の総量に対して、ジオール化合物及び/又はポリオール化合物の配合比率は、鎖伸長剤中の活性水素基(水酸基、アミノ基など)の当量比として、好ましくは65〜100mol%であり、より好ましくは70〜99mol%であり、さらに好ましくは80〜98mol%である。ジオール化合物及び/又はポリオール化合物の含有量が上記範囲内であることにより、被研磨物の耐久性、保持力及びクッション性がより向上する傾向にある。
イソシアネート基と反応する活性水素基を有する活性水素化合物としては、特に限定されないが、例えば、アミノ基を2以上有するポリアミン化合物、水酸基を2以上有するポリオール化合物(ただし、上記の炭素数10〜30の飽和又は不飽和脂肪族基を含むポリオール化合物を除く。)が挙げられる。
活性水素化合物が有する活性水素基は、好ましくは2〜5であり、より好ましくは2〜3である。鎖伸長剤が有する活性水素基が上記範囲内であることにより、被研磨物の保持力及びクッション性がより向上する傾向にある。
ウレタンプレポリマーと鎖伸長剤との配合比率は、ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基と、鎖伸長剤中の活性水素基(水酸基、アミノ基など)の当量比(以下、「R値」ともいう。)で表すことができる。R値は、0.7以上1.2未満であり、好ましくは0.7以上1.0未満であり、より好ましくは0.78以上0.92以下である。R値が上記範囲内であることにより、被研磨物の保持力及びクッション性がより向上する傾向にある。
〔その他の添加剤〕
なお、必要に応じてその他の添加剤を用いてもよい。その他の添加剤としては、シリコーン消泡剤等が挙げられる。
消泡剤の含有量は、混合液の総量に対して、好ましくは0.1〜3質量%であり、より好ましくは0.3〜2.5質量%であり、さらに好ましくは0.5〜2.0質量%である。消泡剤の含有量が上記範囲内であることにより、気泡の発生をより抑制することができる傾向にある。
〔その他の工程〕
接着層を形成する方法としては、PET等の芯材と芯材の片面に接着層を配した片面接着テープの、芯材に直接無発泡樹脂シートを形成する方法;上記のようにして得られた無発泡樹脂シートの被研磨物を保持する面とは反対側に、両面接着テープを別途貼り合せる方法;両面接着テープの接着剤層上に直接無発泡樹脂シートを形成する方法等が挙げられる。前記の通り、接着層に代えて面ファスナーや粘着層等を採用してもよいが、軟質な保持パッドを取り扱う際の作業性の観点から、少なくともPET等の芯材が積層されている形態であることが好ましい。
〔研磨物の製造方法〕
本実施形態の研磨物の製造方法は、上記保持パッドにより保持した被研磨物を、研磨パッドを用いて研磨し、研磨物を得る研磨工程を有する。研磨工程は、一次研磨(粗研磨)であってもよく、二次研磨(仕上げ研磨)であってもよく、それら両方の研磨を兼ねるものであってもよい。このなかでも、化学機械研磨に用いられることが好ましい。一方で、研削や切削等の機械加工工程において、被加工物の保持に用いることもできる。以下、化学機械研磨を例に本実施形態の研磨物の製造方法を説明するが、本実施形態の研磨物の製造方法は以下に限定されない。
図2に、本実施形態の保持パッド10を用いて被研磨物Wの研磨を行う場合の模式図を示す。まず、研磨機の保持定盤1に保持パッド10を装着し、被研磨物Wを保持させる。次いで、保持パッド10の保持部に被研磨物Wを保持した状態で、研磨装置の研磨用定盤3に設置された研磨パッド2を回転することにより、被研磨物Wを研磨することができる。
保持定盤1に保持パッド10を装着する方法としては、特に限定されないが、保持パッド10が両面テープを備えている場合には、両面テープの剥離紙を取り除き、露出した接着層で保持面が下方に向くように保持定盤1に接着固定する。また、保持パッド10が両面テープを備えていない場合は、別に用意した接着剤又は粘着剤で保持パッド10を保持定盤1に接着固定してもよい。
次に、保持パッド10における枠部の略中央部に露出している保持部に、被研磨物Wを押し付けることで、被研磨物Wが無発泡樹脂シートの粘性(相互作用)、並びに、水を用いた場合は水の表面張力により保持部に保持される。このとき、被研磨物Wの被研磨面(加工面)が下方に向くよう被研磨物Wを保持する。
一方、保持定盤1の下方で保持定盤1と対向するように配置された研磨用定盤3に、表面に研磨パッド2(研磨布)を研磨面が上方に向くように装着する。
次に、被研磨物Wの被研磨面が研磨パッド2の研磨面に接触するように、保持定盤1を研磨用定盤3の方へ移動させ被研磨物Wを搬送する。そして、被研磨物Wと研磨パッド2との間にスラリーを供給する。スラリーは、被研磨物や研磨条件等に応じて、水、過酸化水素に代表される酸化剤などの化学成分、添加剤、砥粒(研磨粒子;例えば、SiC、SiO2、Al23、CeO2)等を含んでいてもよく、スラリーは循環しながら供給してもよい。それと共に、保持定盤1で被研磨物Wを研磨パッド2側に押圧しながら、保持定盤1と研磨用定盤3とを相対的に回転させることで、被研磨物Wの加工面が研磨パッド2で化学機械研磨(CMP)により研磨加工される。保持定盤1と研磨用定盤3は、互いに異なる回転速度で同方向に回転しても、異方向に回転してもよい。また、被研磨物Wは、研磨加工中に、枠部の内側で移動(自転)しながら研磨加工されてもよい。
被研磨物としては、特に限定されないが、例えば、半導体デバイス、電子部品等の材料、特に、Si基板(シリコンウェハ)、SiC(シリコンカーバイト)基板、GaAs(ガリウム砒素)基板、ガラスやLCD(液晶ディスプレイ)用基板等の薄型基板(被研磨物)が挙げられる。このなかでも、本実施形態の研磨物の製造方法は、パワーデバイスなどに適用され得る材料、例えば、サファイア、SiC、GaN、及びダイヤモンドなど、研磨加工の困難な難加工材料の製造方法として好適に用いることができる。
以上、本実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記本実施形態に限定されるものではない。例えば、上記本実施形態では、無発泡樹脂シートと基材との接合に接着層を用いているが、それらの接合は接着層を用いることに限定されない。さらに、本発明の保持パッドは、基材を備えていなくてもよいが、保持パッドの取扱い性の観点から、基材を備えることが好ましい。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
〔ゲル分率の測定方法〕
得られた保持パッドの保持部を30mm×30mmサイズの試料片に切り分けた。得られた各試料片を過剰量のジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する。)に常温常湿条件下(温度20±2℃、湿度65±5%)で24時間浸漬した。その後、DMFから試料片を取り出し、真空乾燥機にて試料片から溶媒を除去して乾燥重量を測定した。浸漬前の試料片の重量と、乾燥後の試料片の重量に基づいて、下記算出式によりゲル分率を算出した。なお、サンプルが溶解し、シート形状を維持できなくなった場合は0%とした。
ゲル分率%=(乾燥後の重量)/(浸漬前の重量)×100(%)
〔ショアA硬度〕
バネを介して厚さ4.5mm以上の試験片表面に押針(測定子)を押し付け30秒後の押針の押し込み深さから、保持パッドにおける保持部のA硬度を測定した。測定装置としては、デュロメータ タイプAを用いた。これを3回行って相加平均からA硬度を求めた。具体的には、保持パッドの保持部を10cm×10cmに切り出し、試験片とし、厚さ4.5mm以上になるように複数枚重ねて測定した。
〔ショアD硬度〕
D型硬度計(テクロック社製)を用いて、JIS K 6253(2012)に準拠して、保持パッドにおける保持部のショアD硬度を測定した。具体的には、保持パッドの保持部を10cm×10cmに切り出し、試験片とし、厚さ6mm以上になるように複数枚重ねて設定した。
〔損失弾性率比(E”[6.3]/E”[0.1])〕
損失弾性率比(E”[6.3]/E”[0.1])は、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン RSAIIIにより、25℃、初期荷重1g、荷重モード50g、歪範囲0.1%、角周波数0.1rad/s及び6.3rad/s、圧縮モードにおける、損失弾性率E”を測定し、その比(E”[6.3]/E”[0.1])を算出することで求めた。
〔研磨試験〕
接着層として両面テープを用いて保持パッドを研磨定盤の所定位置に設置し固定した。次いで、水等を用いず、保持パッドに被研磨物として2インチ径のサファイヤウェハ3枚をそのまま保持させた。なお、保持できなかった場合は、純水を介して保持させた。被研磨物に対して、下記条件にて研磨加工を施す研磨試験を行った。
(研磨条件)
装置条件
使用研磨機 :不二越機械工業社製 片面研磨装置
研磨パッド :含浸不織布研磨パッド(フジボウ愛媛社製 品番:FPK7000C2(LD))
研磨条件
荷重 :330gf/cm2
研磨速度 :トップリング60rpm/定盤回転数60rpm
スラリー :フジミインコーポレーテッド社製
COMPOLEX−3
スラリー流量 :5cc/分(循環)
研磨時間 :1時間/バッチ
〔耐久性〕
上記研磨後における保持パッドの状態から耐久性を下記評価基準により評価した。
(評価基準)
○:保持部の表面の劣化または破損等が認められない。
×:保持部の表面の劣化または破損等が認められる。
−:研磨試験自体ができず、評価できない。
〔被研磨物の保持力〕
ワーク吸着性は下記評価基準により評価した。
(評価基準)
○:研磨前後の運搬時を含め、研磨終了時まで被研磨物が脱落しない。
△:運搬時に脱落する、又は、保持できないが、保持面と被研磨物との間に純水を介在させた後は、研磨終了時まで被研磨物が脱落しない。
×:純水を介在させても、運搬時に脱落する、又は、保持できない。
(保持部の厚さ)
ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を用いて、日本工業規格(JIS K 6505)に準拠して、保持部の厚さを測定した。具体的には、保持部を10cm×10cmに切り出した試料片3枚用意し、各試料片毎に、厚さ測定器の所定位置にセットした後、480g/cm2の荷重をかけた加圧面を試料片の表面に載せ、5秒経過後に厚さを測定する。1枚の試料片につき、5箇所の厚さを測定し相加平均を算出し、さらに3枚の試料片の相加平均を求めた。
〔実施例1〕
R値が0.8となるように、ウレタンプレポリマー(NCO当量:424、三菱樹脂社製、製品名UP−162)43.7質量部と、水酸基を3つ有するポリオール(三洋化成社製、プライムポール、OH当量1700)44.8質量部と、モノオレイン酸グリセリル(日光ケミカルズ社製、NIKKOL MGO、OH当量178)10.0質量部と、シリコーン系消泡剤(東レ・ダウコーニング社製、71 ADDITIVE)1.5質量部と、を均一に混合し、混合液を得た。得られた混合液を、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、厚さが均一となるように塗布し、80℃で1時間維持することより硬化させて実施例1の保持パッドを得た。得られた保持パッドは、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、保持部として厚さ0.8mmの無発泡ポリウレタン層を有するものであった。
〔実施例2〜4〕
R値を0.8、シリコーン系消泡剤の使用量を1.5質量部に、維持したまま、モノオレイン酸グリセリルの添加量をそれぞれ15.0質量部、20.0質量部、25.0質量部となるように調整した混合液を用いたほかは、実施例1と同様にして実施例2〜4の保持パッドを得た。
〔実施例5〕
R値を0.8、シリコーン系消泡剤の使用量を1.5質量部に、維持したまま、モノオレイン酸グリセリルを添加しない混合液を用いたほかは、実施例1と同様にして比較例1の保持パッドを得た。
〔比較例1〕
涙型気泡を有し、保持面側がスキン層で覆われているスムースタイプの保持パッドを比較例1の保持パットとして用いた。具体的には、まず、ポリウレタン樹脂として、100%モジュラスが10MPaのポリエステルMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)ポリウレタン樹脂を用いた。このポリウレタン樹脂のDMF溶液100質量部に対して、粘度調整用のDMF45質量部、顔料のカーボンブラックを30%含むDMF分散液の40質量部、疎水性活性剤の2質量部を混合してポリウレタン樹脂溶液を調製した。調製したポリウレタン樹脂溶液を、ナイフコータによりPET基材に略均一に塗布したのち、水を主成分とする凝固液が満たされた凝固槽に浸漬することでポリウレタン樹脂を凝固再生させ、洗浄後乾燥させて、比較例1の保持パッドを得た。
〔比較例2〕
鎖伸長剤として3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(メチレンビス−o−クロロアニリン)(以下、「MOCA」ともいう。)と数平均分子量が約1000のポリテトラメチレングリコールと、を1:1の質量比で均一に混合し、NH2当量が189である液状の混合物(以下、「MOCA溶液」ともいう。)を得た。
ウレタンプレポリマー(NCO当量:532、日本ポリウレタン工業社製、製品名DC−6912)75.1質量部と、MOCA溶液24.0質量部と、シリコーン系消泡剤(東レ・ダウコーニング社製、71 ADDITIVE)0.9質量部と、を均一に混合して混合液を得た。得られた混合液を、型枠に注型して、65〜75℃にて硬化させた。形成された熱硬化性ポリウレタン成形体を型枠から抜き出し、スライス処理を施し、厚さ0.8mmの無発泡ポリウレタン樹脂シートを得た。得られた無発泡ポリウレタン樹脂シートを比較例2の保持パットとして用いた。
本発明は、研磨加工分野の被研磨物の保持パッド及び機械加工分野の被加工物の保持パッドとして産業上の利用可能性を有する。

Claims (10)

  1. 被研磨物を保持する保持部を備え、
    前記保持部が、25℃における、角周波数0.1rad/sに対する6.3rad/sの損失弾性率比(E”[6.3]/E”[0.1])が2.00〜6.50である無発泡樹脂シートである、
    保持パッド。
  2. 前記無発泡樹脂シートが、無発泡ポリウレタン樹脂シートである、
    請求項1に記載の保持パッド。
  3. 前記無発泡樹脂シートのゲル分率が、5%〜30%である、
    請求項1又は2に記載の保持パッド。
  4. 前記保持部の前記被研磨物を保持する面とは反対側の面に、発泡樹脂からなるクッション層を備えない、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の保持パッド。
  5. 前記保持部の前記被研磨物を保持する面とは反対側の面に、発泡樹脂からなるクッション層を備える、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の保持パッド。
  6. 前記無発泡樹脂シートのショアA硬度が、10〜60°である、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載の保持パッド。
  7. 前記無発泡樹脂シートが、炭素数が10〜30であるダングリング鎖を有する、
    請求項1〜6のいずれか1項に記載の保持パッド。
  8. 前記保持部の前記被研磨物を保持する面に、貫通孔及び溝を有しない、
    請求項1〜7のいずれか1項に記載の保持パッド。
  9. 少なくとも、プレポリマーと、鎖伸長剤と、を混合して混合液を得る工程と、
    得られた前記混合液を硬化させて、25℃における角周波数0.1rad/sに対する6.3rad/sの損失弾性率比(E”[6.3]/E”[0.1])が2.00〜6.50である無発泡樹脂シートを形成する工程と、を有し、
    前記鎖伸長剤が、炭素数10〜30の飽和又は不飽和脂肪族基のダングリング鎖を有する化合物を含む、
    保持パッドの製造方法。
  10. 前記プレポリマーが、ポリウレタンプレポリマーであり、前記鎖伸長剤がジオール化合物及び/又はポリオール化合物である、
    請求項9に記載の保持パッドの製造方法。
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