JP6842101B2 - 医療用部材 - Google Patents

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Description

本発明は、医療用部材に関するものである。
シルクは優れた繊維材料として古くから利用されている生物資源材料の一つであり、手触り、光沢、保湿性、及び強度等の繊維としての優れた物理特性を有していることに加え、手術用の縫合糸に使用されていたことからも分かるように、優れた生体親和性を示すといった特徴も有している。これらの優れた特性に注目したシルクの利用研究が進められており、繊維形態での利用技術開発に加えて、近年では、シルクを構成する主成分であるフィブロイン、及びセリシンの各々に注目した研究開発も進められている。
シルクの利用形態は、繊維だけでなく、粉末、溶液、ゲル、フィルム、成形体、多孔質体等、多岐に渡っており、中でもシルクフィブロイン多孔質体は、シルクフィブロインの優れた生体親和性、保水性、及び触感をいかして、止血材、創傷被覆材、薬剤徐放担体等の医療用部材、化粧用部材、組織工学及び再生医工学における細胞培養支持体などへの用途展開が期待されている。
ところで、医療現場において止血は極めて重要な処置の一つであり、出血による患者の負担軽減、予後改善、外科医の負担軽減等の観点から、止血に要する時間を短縮し、止血に至るまでの出血量を最小限に抑え、かつ確実に止血することが要求される。従来から、出血箇所に止血材を押し当てる方法、いわゆる圧迫法に用いられる止血材として、脱脂綿、コットンのガーゼ等が使用されてきた。
また、止血効果を有する材料として、ウシ又は豚由来のアテロコラーゲンを原料としたコラーゲンのほか、ゼラチン、酸化セルロース、キチン誘導体等が知られている。コラーゲンは血液と接触して血小板を活性化し、該活性化された血小板がコラーゲンに付着し、凝集塊を形成することで止血を可能とするものである(例えば、特許文献1参照)。ゼラチンは、血液のような水分存在下においてゲルを形成し、出血部位の形状に沿って密着し得る柔軟性と、生体組織に対する高い接着性を示すことで、局所を圧迫して止血を可能とする止血材として用い得ることが知られており(例えば、特許文献2参照)、酸化セルロースは血液中のヘモグロビンと強い親和性を有するため、体内及び対外の創傷患部に施用することにより血液凝固作用、細胞拡張作用を促して止血治癒を図ることができ(例えば、特許文献3参照)、またキチン誘導体は、血小板を活性化させ、血液凝集を促すことで止血効果を発現することが知られている(例えば、特許文献4参照)。
特開平7−316070号公報 特開平7−163860号公報 特開2000−256958号公報 特開昭63−211232号公報
しかしながら、脱脂綿、ガーゼ等の従来から汎用される止血材は、多量の出血を即時止血できない上に、創傷部に対する固着力が大きいため、剥離するときに使用部位に多くの繊維を残してしまい、これらの繊維を取り除く必要があった。
特許文献1、2に記載のコラーゲン、ゼラチンを用いた止血材は、生体内分解性及び吸収性に優れる一方で、抗原性を有するテロペプチド部分の除去が困難であるという問題があり、また、プリオン混入等の動物由来の感染症の危険性があるため、生体に使用することは避けたほうがよいことが分かってきている。
特許文献3に記載の酸化セルロースを用いた止血材は、材料が生体由来の材料ではないため異物反応を誘発する問題があるとともに、水溶性があるため取り扱い性にも問題がある。また、特許文献4に記載のキチン誘導体を用いた止血材は、血液を吸液することにより膨潤ゲル化が進行するため、生体内で使用する場合に周辺組織を圧迫する危険性があるとともに、ゲル化したときに機械的強度が低下するという問題もある。
これらの止血材は生体に対する固着力が大きいため、止血部が治癒した後、又は止血部を再処理するため該止血材を剥離しようとすると、その固着力に起因して、脆弱な新生組織を傷つける二次損傷が生じてしまい、生体に損傷を与えることなく止血材を除去することが困難であった。これらの問題は、止血材に留まらず、創傷部位に直接用いられる創傷被覆材、薬剤徐放担体等の医療用部材に共通したものであり、医療用部材として、これらの問題点を解消したものが求められている。また、使用する場所によっては医療用部材に外部から圧力がかかる場合がある。この圧力印加時に部材に含まれる液体が部材表面に滲み出してしまう(液戻りとも称される)と、部材を止血材及び創傷被覆材として用いる場合は患部を適度な湿潤状態を保つことができず、また、部材を薬剤徐放担体として用いる場合は薬剤が過剰に徐放されてしまうといった問題が生じてしまい、患部の治癒の妨げとなってしまう。そのため、医療用部材には、圧力印加時の液戻り抑制性能が求められる。更に、医療用部材の使用状況は医療行為に応じて様々な状況が想定されるため、様々な状況に対応すべく、形態の多様性も求められる。
そこで、本発明の課題は、上記問題点に鑑み、生体に対する安全性に優れ、止血時間が短く止血効果に優れ、生体から容易に除去することが可能であり、機械的強度、柔軟性、及び圧力印加時の液戻り抑制性能に優れ、かつ様々な状況に対応しうる医療用部材を提供することにある。
本発明者は、前記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記の発明により当該課題を解決できることを見出した。
1.吸液体とフィブロイン多孔質体とを有する医療用部材。
2.更に粘着フィルムを有し、該粘着フィルムと吸液体とフィブロイン多孔質体とがこの順に積層するように、該粘着フィルムが該吸液体とフィブロイン多孔質体とを該吸液体の方から被覆するように備えられ、該フィブロイン多孔質体の該吸液体が積層される側とは反対側の面であって、該粘着フィルムとは反対側の面が露出してなる上記1に記載の医療用部材。
3.更にフィブロイン多孔質体を有し、吸液体がフィブロイン多孔質体に挟持されてなる上記1又は2に記載の医療用部材。
4.フィブロイン多孔質体の厚さが0.1〜50mmである上記1〜3のいずれか1項に記載の医療用部材。
5.吸液体の厚さが0.1〜50mmである上記1〜4のいずれか1項に記載の医療用部材。
6.フィブロイン多孔質体が、タンパク質換算分子量が110,000〜310,000であるフィブロインを含有してなるものである上記1〜5のいずれか1項に記載の医療用部材。
7.フィブロイン多孔質体が、シルクフィブロイン多孔質体である上記1〜6のいずれか1項に記載の医療用部材。
8.フィブロイン多孔質体が、分子量が1,000以下の水酸基含有化合物を20〜75質量%含むものである上記1〜7のいずれか1項に記載の医療用部材。
9.水酸基含有化合物が、グリセリン、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、乳酸、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、アルコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも一種である上記8に記載の医療用部材。
10.吸液体が、樹脂スポンジ、ゴムスポンジ、不織布及び吸液性高分子材料から選ばれる少なくとも一種である上記1〜9のいずれか1項に記載の医療用部材。
11.止血材、創傷被覆材、又は薬剤徐放担体に用いられる上記1〜10のいずれか1項に記載の医療用部材。
本発明によれば、生体に対する安全性に優れ、止血時間が短く止血効果に優れ、生体から容易に除去することが可能であり、機械的強度、柔軟性、及び圧力印加時の液戻り抑制性能に優れ、かつ、様々な状況に対応しうる医療用部材を得ることができる。
本発明の医療用部材の断面及び正面の一例を示す模式図である。 本発明の医療用部材の断面及び正面の一例を示す模式図である。 本発明の医療用部材の断面及び正面の一例を示す模式図である。 本発明の医療用部材の断面の一例を示す模式図である。 本発明の医療用部材の断面の一例を示す模式図である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
また、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。更に、本明細書において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
[医療用部材]
本発明の医療用部材は、吸液体とフィブロイン多孔質体とを有することを特徴とするものである。
(吸液体)
吸液体は、吸液性能を有するものであれば特に制限はなく、例えば、樹脂スポンジ、ゴムスポンジ、不織布、吸液性高分子材料等が好ましく挙げられる。樹脂スポンジとしては、ウレタンスポンジ、ポリオレフィンスポンジ、ポリビニルアルコールスポンジ、シリコーンスポンジ等が挙げられ、市販品として入手可能である。ゴムスポンジとしては、天然ゴム、ポリブタジエン等のジエン系ゴム、その他合成ゴム等のゴムからなるスポンジなどが挙げられ、市販品として入手可能である。また、不織布としては、コットン不織布、レーヨン不織布、シルク不織布、アクリルポリマー繊維不織布、それらの複合不織布等が挙げられ、市販品として入手可能である。
これらの材料は、所望の性能に応じて適宜選択すればよく、例えば、親水性の観点からはポリビニルアルコールスポンジが好ましく、構造制御、強度の観点からはポリエチレンスポンジ等のポリオレフィンスポンジ、ポリウレタンが好ましく、伸張性、強靭性の観点からはゴムスポンジが好ましく、撥水性、強靭性の観点からはシリコーンスポンジが好ましい。
また、吸液性高分子材料を構成する吸液性高分子としては、一般に吸水性樹脂として知られるもの、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸系の吸水性樹脂;デンプン−アクリロニトリルグラフト共重合体、デンプン−アクリル酸グラフト共重合体、デンプン−アクリルアミドグラフト共重合体等のデンプン系の吸水性樹脂;ポリビニルアルコール架橋体等のポリビニルアルコール系の吸水性樹脂;カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース誘導体などを用いることができる。
また、ポリアクリル酸系の吸水性樹脂、セルロース誘導体等の吸液体は、血液、浸出液等を吸収した際に、ゲル化するため、圧力印加時の液戻りを抑制しやすくする観点から好ましい。例えば、湿潤療法向け創傷被覆材用途においては、創部が圧迫された際に、吸収した浸出液等が創部に戻りづらく、適度な湿潤環境を提供することが可能となる。
吸液体の形態は、特に制限はなく、所望の用途に応じて適宜選択すればよく、例えば、フィルム状、シート状、ブロック状、管状、球状等の形態とすることができる。医療用部材としての使用態様を考慮すると、例えば、樹脂スポンジを用いる場合は市販品を所定の厚さにスライスしてフィルム状、シート状等にして用いることが好ましく、例えば、吸水性高分子材料を用いる場合は粒子状の材料をフィルム状、シート状等にならべて所定の厚さとして用いることが好ましい。
吸液体の大きさと形状は、特に制限はなく、所望の用途に応じて適宜選定すればよく、長さ及び幅が1〜30cm程度の略四角形、該四角形に内接する略円形、略楕円形、略三角形等が好ましく挙げられる。
また、吸液体の厚さにも特に制限はなく、所望の用途に応じて適宜選択すればよい。吸液容量を確保するという吸液体の機能に加え、医療用部材としての使い勝手、強度、取扱性等を考慮すると、その厚さは、0.1〜50mmが好ましく、0.2〜30mmがより好ましく、0.3〜15mmが更に好ましく、0.3〜5mmが特に好ましい。ここで、本発明における多孔質部の厚さとは、該多孔質部において、最大面積を有する面に直交する方向の距離(厚み)を任意の十点で測定した場合の平均値を意味する。
(フィブロイン多孔質体)
フィブロイン多孔質体は、フィブロインを含む材料自体が細孔を有する多孔質体であれば特に制限はない。例えば、スポンジは、該スポンジを構成する材料自体が細孔を有することで形成していることから本発明の多孔質体となり得るが、繊維、不織布は、糸状の材料を編むことで全体として細孔を有する形態となるものであり、本発明における多孔質体とは称しない。
本発明において、フィブロイン多孔質体は、生体に対する安全性、止血性能、生体からの除去容易性、更には機械的強度、柔軟性を考慮すると、タンパク質換算分子量が110,000〜310,000のフィブロインを含むことが好ましく、140,000〜310,000のフィブロインを含むことがより好ましく、180,000〜310,000のフィブロインを含むことが更に好ましい。また、同じ観点から、フィブロイン多孔質体は、シルクフィブロインを用いたシルクフィブロイン多孔質体であることが好ましい。
ここで、タンパク質換算分子量とは、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて得られる評価試料のクロマトグラムを、分子量マーカーとしてグルタミン酸脱水素酵素(分子量:290,000)、豚心筋乳酸脱水素酵素(分子量:142,000)、酵母エノラーゼ(分子量:67,000)を使用して作成した較正曲線を用いて、タンパク質の分子量に換算した分子量を意味し、より具体的には、実施例に記載の方法により測定することができる。
フィブロイン多孔質体中に含まれる上記のタンパク質換算分子量を有するフィブロインの含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは実質的に100質量%である。
また、シルクフィブロイン多孔質体は、より優れた生体に対する安全性、止血性能、生体からの除去容易性、更には機械的強度、柔軟性を得る観点から、分子量が1,000以下の水酸基含有化合物を含むことが好ましい。
上記水酸基含有化合物としては、1分子当り1つ以上の水酸基を有するものであればよく、1分子当り1〜10の水酸基を有するものが好ましく、1分子当り1〜4の水酸基を有するものがより好ましい。
また、水酸基含有化合物の分子量は、1,000以下であり、800以下あることが好ましく、500以下であることがより好ましい。水酸基含有化合物の分子量の下限は特に制限はないが、50以上であることが好ましく、80以上であることがより好ましい。
水酸基含有化合物の具体例としては、例えば、グリセリン、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、乳酸、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、アルコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。更にハンドリング性、スライス加工性、安全性を考慮すると、グリセリン、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、ポリグリセリン、乳酸、プロピレングリコール、ブチレングリコールが好ましい。これらの中でも、グリセリンは、肌を保湿する効果があるので、肌に貼り付けて使用する医療用部材用途にとって特に好ましい。
フィブロイン多孔質体中の水酸基含有化合物の含有量は、20〜75質量%が好ましく、25〜60質量%がより好ましく、25〜45質量%が更に好ましい。水酸基含有化合物の含有量が上記範囲内であると、より優れた柔軟性、加工性、ハンドリング性が得られる。より具体的には、20質量%以上であると柔軟性に優れ、乾燥時に割れにくく、脆くなることがなく、スライス加工時に割れにくく、また優れたハンドリング性が得られる。一方、75質量%以下であると柔軟性に優れ、凍結乾燥前後での収縮が小さく、多孔質材料の表面のタックが良好であり、スライス加工時にロールに巻きつきにくく、優れたハンドリング性が得られる。
また、フィブロイン多孔質体は、上記範囲内において含有量を変化させることで、その硬さを調整することができる。水酸基含有化合物の含有量を多くするほど、多孔質材料は柔軟になるので、用途に応じて適宜調整が可能である。
フィブロイン多孔質体の平均細孔径は、1〜500μmが好ましく、5〜300μmがより好ましく、10〜100μmが更に好ましい。平均細孔径が上記範囲内であると、より優れた生体に対する安全性、止血性能、生体からの除去容易性、更には機械的強度、及び柔軟性が得られる。
ここで、フィブロイン多孔質体の平均細孔径は、多孔質体断面の走査型電子顕微鏡写真を5枚撮影し、更に異なる日に作製した多孔質体断面の走査型電子顕微鏡写真を5枚撮影し、それら10枚の走査型電子顕微鏡写真を、画像解析ソフトを用いて画像処理し、算出した細孔径の平均値である。
フィブロイン多孔質体の形態、大きさと形状、厚さは、上記の吸液体について記載した内容と同じであり、吸液体との関係を考慮し適宜選択すればよい。この詳細については、後述する。
フィブロイン多孔質体は、適宜加工して用いればよく、その加工の方法に特に制限はなく、例えば、トムソン刃を使用した打ち抜き、バンドソーでのスライス加工等が挙げられる。
フィブロイン多孔質体の25%圧縮応力は、20〜25kPaであることが好ましく、20〜23kPaであることがより好ましい。25%圧縮応力が上記範囲のフィブロイン多孔質体は、柔軟性に優れている。
フィブロイン多孔質体の引裂き強さは、20〜50N/mmが好ましく、25〜45N/mmより好ましい。引裂き強さが上記範囲のフィブロイン多孔質体は、機械的強度、伸縮性及び柔軟性のバランスに優れる。
ここで、フィブロイン多孔質体の25%圧縮応力、及び引裂き強さは、実施例に記載の方法により測定することができる。
フィブロイン多孔質体の引張強さは、35〜75kPaが好ましく、40〜70kPaがより好ましい。引張強さが上記範囲のフィブロイン多孔質体は、機械的強度、伸縮性及び柔軟性のバランスに優れている。
フィブロイン多孔質体の引張ひずみは、52〜67%が好ましく、56〜65%がより好ましい。引張ひずみが上記範囲のフィブロイン多孔質体は、伸縮性に優れている。
ここで、引張強さ及び引張ひずみは、試験片を万能試験機等で引っ張った際に、試験片が破断したときの応力及びひずみを意味し、引張ひずみ(%)の値は、[〔(変形後の長さ−変形前の長さ)/(変形前の長さ)〕×100]で表される比率の値を意味する。
フィブロイン多孔質体の血液凝固時間は、速やかな止血を可能とする観点から、25分以下が好ましく、20分以下がより好ましく、15分以下が更に好ましい。
ここで、本発明において血液凝固時間は、下記の方法により測定された時間を意味し、より具体的には、実施例に記載の方法により測定することができる。
300mmのフィブロイン多孔質体を投入した試験管を2本用意し、これらを37℃に加温した後、採血直後の血液を1.5mL(200mm/mL)添加した。次いで、1本目の試験管を30秒毎に傾け、血液の流動性を目視にて観察し、該1本目の試験管で血液凝固が観察された後、2本目の試験管を30秒毎に傾け、血液の流動性を目視にて確認し、採血開始から2本目の試験管で血液凝固が観察されるまでの時間を血液凝固時間とした。
また、フィブロイン多孔質体の滲出液が発生する創部に対する固着力は、生体から容易に除去することを可能とする観点から、15g以下であることが好ましく、12g以下であることがより好ましく、10g以下であることが更に好ましい。ここで、固着力は、実施例に記載の方法により測定、算出される平均固着強さのことである。
(フィブロイン多孔質体の製造)
フィブロイン多孔質体は、例えば以下のフィブロイン原料を用いて製造することができる。
フィブロイン多孔質体の原料として用いられるフィブロイン原料は、例えばフィブロインに加え、セリシンを含む繭、生糸等の絹原料を精練し、セリシンを除去することで得られる。
使用する絹原料に特に制限はなく、繭、切繭、生糸等を使用することができる。蚕の品種にも特に制限はなく、例えば、家蚕、野蚕、天蚕等の天然蚕、トランスジェニック蚕などから産生されるシルクフィブロインなどを使用することができる。本発明においては、乾燥状態でも柔らかく、乾燥後の外観、スライス加工性に優れるフィブロイン多孔質体を得る観点から、シルクフィブロインを原料とすることが好ましい。
通常、絹原料の精練は、アルカリ剤を溶解した水溶液中に絹原料を入れ、加熱するという工程で行われる。精練の方法に特に制限はなく、吊練り、機械練り、袋練り、泡練り等の手法を用いることができる。
精練に用いるアルカリ剤に特に制限はなく、マルセル石鹸、炭酸ナトリウム、重曹等を使用することができるが、石鹸の残留が懸念されることから、炭酸ナトリウム、重曹を用いることが好ましく、分子量の制御が容易なことから、炭酸ナトリウムを用いることがより好ましい。
水溶液中のアルカリ剤の濃度は、15%owf〜25%owfであることが好ましい。アルカリ剤の濃度を上記範囲に設定することで、効率良くセリシンを除去することができるとともに、フィブロイン多孔質体の形成に適した分子量のフィブロイン原料を得ることができる。
精練時の浴比(フィブロイン原料の質量に対するアルカリ剤を溶解した水溶液の質量の比)は、20〜100倍であることが好ましい。精練時の浴比を上記範囲に設定することで、効率良くセリシンを除去することができる。
精練時の加熱温度は、セリシンを十分に除去可能であれば特に制限はないが、常圧の場合、85〜100℃が好ましい。温度を上記範囲に設定することで、効率良くセリシンを除去することができる。
精練の時間はセリシンを十分除去可能であれば特に制限はないが、3時間〜5時間であることが好ましい。精練の時間を上記範囲に設定することで、効率良くセリシンを除去することができるとともに、フィブロイン多孔質体の形成に適した分子量のフィブロイン原料を得ることができる。
精練後はフィブロイン原料に付着したアルカリ及びセリシンを除去するため、湯洗浄、水洗浄を行った後、脱水、乾燥することが好ましい。
フィブロイン原料は、タンパク質換算分子量が160,000〜410,000のものが好ましく、200,000〜360,000のものがより好ましく、240,000〜310,000のものが更に好ましい。上記範囲の分子量のフィブロイン原料を使用してフィブロイン多孔質体を作製することで、機械的強度及び柔軟性に優れるフィブロイン多孔質体が得られる。
以下、フィブロイン原料として好ましいシルクフィブロインを例にとって、シルクフィブロイン多孔質体の製造方法について詳述する。
シルクフィブロイン多孔質体は、その製造方法は問わないが、例えば、シルクフィブロイン水溶液を急速冷凍した後、結晶化溶媒に浸漬し、融解と結晶化を同時進行することによって得る方法(例えば、特開平8−41097号公報参照)、シルクフィブロイン水溶液を冷凍した後に長時間凍結状態を維持することで多孔質体を作製する手法(例えば、特開2006−249115号公報参照)、シルクフィブロイン水溶液に対して少量の水溶性液状有機物質を添加した後に、一定時間冷凍して融解することによって多孔質体を得る手法(例えば、特許第3412014号公報参照)等が挙げられる。
シルクフィブロイン多孔質体の製造に用いるシルクフィブロイン水溶液を得る方法としては、公知のいかなる手法を用いてもよいが、シルクフィブロインは水に対する溶解性が低いため、例えば、前記シルクフィブロインを溶解液に溶解した後、溶解に使用した薬剤を除去する方法が好適である。具体的には、例えば、臭化リチウム水溶液、塩化カルシウム/エタノール水溶液等の中性塩溶液に溶解し、透析により脱塩する手法、過酸化水素水に溶解後、乾熱乾燥し、過酸化水素を除去する方法、銅エチレンジアミンに溶解し、銅イオン乖離剤を添加した後に透析する手法等を使用することができる。これらの中でも、後処理及び分子量調節の容易さから、中性塩溶液に溶解し、脱塩する手法が好ましい。
使用する中性塩溶液としては、臭化リチウム水溶液、塩化カルシウム/エタノール水溶液が好ましい。中性塩溶液中の中性塩の濃度は、臭化リチウム水溶液の場合、8〜10mol/Lであることが好ましい。また、塩化カルシウム/エタノール水溶液の場合、塩化カルシウムとエタノールと水とをモル比1:2:8で混合した溶液を使用することが好ましい。中性塩の濃度を上記範囲に設定することで、シルクフィブロインを効率良く溶解することができる。
シルクフィブロインの溶解温度は、シルクフィブロインが溶解する温度であれば特に制限はないが、臭化リチウム水溶液の場合、10〜40℃が好ましい。また、塩化カルシウム/エタノール水溶液の場合、70〜90℃が好ましく、75〜85℃がより好ましい。溶解温度を上記範囲に設定することで、効率良くシルクフィブロインを溶解可能であるとともに、シルクフィブロイン多孔質体の形成に適した分子量のシルクフィブロイン水溶液を得ることができる。
シルクフィブロインの溶解時間に特に制限はないが、臭化リチウム水溶液の場合、3時間〜24時間が好ましく、5時間〜18時間がより好ましい。また、塩化カルシウム/エタノール水溶液の場合、10分〜60分が好ましく、15分〜40分がより好ましい。溶解時間を上記範囲に設定することで、シルクフィブロインが十分に溶解するとともに、シルクフィブロイン多孔質体の形成に適した分子量のシルクフィブロイン水溶液を得ることができる。
シルクフィブロイン水溶液中におけるシルクフィブロインの濃度は、溶解液に溶解可能な濃度であれば特に制限はないが、50g/L〜200g/Lが好ましく、100g/L〜150g/Lがより好ましい。シルクフィブロインの濃度を上記範囲に設定することで、シルクフィブロイン多孔質体の作製に適した濃度のシルクフィブロイン水溶液が得られる。シルクフィブロイン水溶液中のシルクフィブロインの濃度調整の方法としては、風乾による濃縮を経る手法が簡便で好ましい。
シルクフィブロインの濃度は、シルクフィブロイン水溶液を容器に入れて完全に乾燥し、その質量減少から次式のように求めることができる。
(シルクフィブロイン濃度(g/L))=(シルクフィブロイン水溶液の乾燥後質量(g))/(乾燥前のシルクフィブロイン水溶液の体積(L))
脱塩の手法に特に制限はなく、透析膜を使用した透析、限外ろ過等により脱塩することができる。透析膜又は限外ろ過膜の分画分子量は5,000〜40,000が好ましく、5,000〜10,000がより好ましい。上記範囲の分画分子量の透析膜又は限外ろ過膜を使用することで、脱塩効率とシルクフィブロインのロスの少なさとを両立することができる。
シルクフィブロイン水溶液中のシルクフィブロインのタンパク質換算分子量は、160,000〜410,000が好ましく、200,000〜350,000がより好ましく、240,000〜310,000が更に好ましい。上記範囲の分子量のシルクフィブロインを含むシルクフィブロイン水溶液を使用してシルクフィブロイン多孔質体を作製することで、機械的強度及び柔軟性に優れるシルクフィブロイン多孔質体が得られる。
また、シルクフィブロイン多孔質体は、シルクフィブロイン水溶液に特定の添加剤を加えて、該水溶液を凍結させ、次いで融解させることにより製造することが好ましい。ここで用いられる添加剤としては、カルボン酸類、アミノ酸、水溶性液状有機物質等が好ましく挙げられる。また、シルクフィブロイン多孔質体の製造において用いられるカルボン酸類としては、pKaが5.0以下のものが好ましく、3.0〜5.0のものがより好ましく、3.5〜5.0のものが更に好ましい。
カルボン酸類としては、少なくとも分子中に一つのカルボキシ基を有する有機酸であれば特に制限はないが、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸等が挙げられる。カルボン酸類としては、脂肪族カルボン酸類が好ましく、炭素数1〜6の脂肪族カルボン酸がより好ましく、炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸が更に好ましい。これらの脂肪族カルボン酸は飽和であってもよく、不飽和であってもよい。このようなカルボン酸として、具体的には、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、アクリル酸、2−ブテン酸等のモノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸等のジカルボン酸などが好ましく挙げられる。これらは単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。人体への安全性を考慮すると、酢酸、乳酸及びコハク酸がより好ましい。
アミノ酸としては、特に制限はなく、例えば、バリン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、アラニン、セリン、スレオニン、メチオニン等のモノアミノカルボン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等のモノアミノジカルボン酸(酸性アミノ酸)などの脂肪族アミノ酸;フェニルアラニン等の芳香族アミノ酸;ヒドロキシプロリン等の複素環を有するアミノ酸などが好ましく挙げられ、形状の調整が容易な観点から、酸性アミノ酸、及びヒドロキシプロリン、セリン、スレオニン等のオキシアミノ酸が好ましい。同様の観点から、酸性アミノ酸の中でもモノアミノカルボン酸がより好ましく、アスパラギン酸及びグルタミン酸が特に好ましく、オキシアミノ酸の中でもヒドロキシプロリンがより好ましい。これらのアミノ酸は、単独で、又は複数種を組み合わせて使用することができる。
アミノ酸には、L型とD型の光学異性体があるが、L型とD型を用いた場合に、得られる多孔質体に違いが見られないため、どちらのアミノ酸を用いてもよい。
水溶性液状有機物質は、常温(20℃)で液状であり、常温(20℃)で水と混合した際に、分離せずに溶解、又は混和するものをいう。水溶性液状有機物質としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール類;ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ピリジン、アセトン、アセトニトリルなどが好ましく挙げられる。これらは単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。人体への安全性を考慮すると、エタノール、ジメチルスルホキシド、グリセリン及びアセトンが好ましく、エタノール及びグリセリンがより好ましい。
シルクフィブロイン水溶液に添加剤を用いる場合の添加剤の含有量は、0.1〜18体積%が好ましく、0.1〜5.0体積%がより好ましく、0.5〜4.0体積%が更に好ましい。添加剤の含有量を上記範囲内に設定することで、十分な機械的強度を有するシルクフィブロイン多孔質体を製造することができる。
シルクフィブロイン多孔質体は、例えば、前記シルクフィブロイン水溶液を型又は容器に流し込み、一定時間凍結した後に融解することで好適に得られる。
凍結温度としては、−10〜−30℃が好ましく、−15〜−25℃がより好ましい。凍結時間としては、添加剤を加えたシルクフィブロイン水溶液が十分に凍結し、かつ凍結状態を一定時間保持できるよう、4時間以上が好ましく、6時間以上がより好ましい。また、特に−15〜−25℃の温度条件下、6時間〜100時間保持して凍結することが機械的強度に優れるシルクフィブロイン多孔質体を再現良く形成する観点から好ましい。
ここで、前記シルクフィブロイン水溶液を一気に凍結温度まで下げて凍結してもよいが、凍結の前に過冷却状態を経ることが、均一な構造のシルクフィブロイン多孔質体を得る上で好ましい。例えば、添加剤を加えたシルクフィブロイン水溶液を一旦、−5℃で2時間保持して、その後、凍結温度まで下げて凍結することで、均一な構造のシルクフィブロイン多孔質体を得ることができる。
上記の手法でシルクフィブロイン水溶液を凍結させた後、次いで融解することによって、シルクフィブロイン多孔質体が得られる。融解の方法としては、特に制限はなく、自然融解、恒温槽での保管等の方法が好ましく挙げられる。
このようにして得られたシルクフィブロイン多孔質体には添加剤が残存する。残存する添加剤は用途に応じてそのままの状態としてもよいし、除去してもよい。添加剤をシルクフィブロイン多孔質体から除去する方法としては、例えば、シルクフィブロイン多孔質体を純水中に浸漬して除去することが最も簡便な方法として挙げられる。
シルクフィブロイン多孔質体はスポンジ状の多孔質構造を有しており、通常このシルクフィブロイン多孔質体の多孔質内には凍結乾燥等により水を除去しなければ、上記の残存する添加剤と同様に、水が含まれた状態であり柔らかい構造物となっている。乾燥状態のシルクフィブロイン多孔質体が必要な場合、吸水状態のシルクフィブロイン多孔質体を乾燥すればよい。シルクフィブロイン多孔質体の乾燥の手法としては特に制限はないが、収縮を抑えるという意味で凍結乾燥が好ましい。凍結乾燥の場合、水分を完全に昇華させずに乾燥を終えると、残った氷が融解して水になり、その表面張力の影響で空孔が潰れてしまうため、水分が完全に昇華するまで乾燥することが好ましい。
シルクフィブロイン多孔質体は、シルクフィブロイン水溶液を流し込む容器を適宜選択することにより、シート状、ブロック状、管状等、目的に応じた形状とすることができる。
容器としては、シルクフィブロイン溶液が流出しない形状及び形態のものであれば制限はなく、その素材としては、鉄、ステンレス、アルミニウム、金、銀、銅等の熱伝導率が高い素材を用いることが、凍結に要する工程時間を短縮できる観点から好ましい。また、型や容器の壁の厚さは、その機能と凍結の際の膨張等による変形等を防止する観点から、0.5mm以上が好ましく、取り扱いが容易で、冷却効率的な観点から、より好ましくは1〜3mmである。
フィブロイン多孔質体に水酸基含有化合物を含有させる方法は特に限定されず、フィブロイン多孔質体を製造する際に、フィブロイン溶液に配合する方法や、フィブロイン多孔質体の作製後に、その全体が浸る程度の水酸基含有化合物を含む溶液に浸漬させる方法であってもよい。
フィブロイン溶液に水酸基含有化合物を含有させる場合、水酸基含有化合物の含有量は特に制限はなく、例えば、0.5〜20体積%が好ましく、1〜10体積%がより好ましい。含有量が上記範囲内であると、フィブロイン多孔質体中に水酸基含有化合物が十分に導入され、乾燥に適した水酸基含有化合物を含んだフィブロイン多孔質体が得られる。
フィブロイン多孔質体を、水酸基含有化合物を含む溶液に浸漬させる場合、浸漬時間も特に制限はないが、フィブロイン多孔質体内の水酸基含有化合物の濃度が均一になる時間であればよく、例えば、1〜48時間が好ましく、12〜36時間がより好ましい。浸漬時間が上記範囲内であると、フィブロイン多孔質体中に水酸基含有化合物が十分に導入され、またフィブロイン多孔質体内における濃度のばらつきが生じることがなく、均一に水酸基含有化合物が含まれた、均質な多孔質材料が得られる。
このようにして得られるフィブロイン多孔質体において、水酸基含有化合物は、該フィブロイン多孔質体の細孔内、及び該多孔質体自体を構成するように多孔質体の構造内に存在することで、可塑効果、保湿効果、吸水性が発現する。このような構成であることから、フィブロイン多孔質体は、乾燥状態でも柔らかく、乾燥後の外観及びスライス加工性に優れるものになっていると考えられる。
また、原料として用いるフィブロイン、水酸基含有化合物、及び添加剤の種類、またこれらの添加量を調節することで、フィブロイン多孔質体の内部構造と固さを調整することができ、種々の構造を有するフィブロイン多孔質体を得ることができる。
(医療用部材の構成)
本発明の医療用部材としては、吸液体とフィブロイン多孔質体とを有するものであり、例えば、図1に示される構成を有するものが挙げられる。図1に示される医療用部材10は、吸液体12とフィブロイン多孔質体11とを有するものである。吸液体12とフィブロイン多孔質体11とは図(1−a)で示されるように同じ大きさでもよく、また、図(1−b)に示されるように異なる大きさであってもよい。図(1−c)は、図(1−b)で示される医療用部材10を吸液体12側から見た模式図である。
本発明の医療用部材10を用いる場合、フィブロイン多孔質体11に患部等を触れるように用いることから、吸液体12と患部等が触れないことが好ましく、このような観点から、吸液体12とフィブロイン多孔質体11との大きさが異なる場合は、図(1−b)に示されるようにフィブロイン多孔質体11の方が大きいことが好ましい。この場合、吸液体と患部等が触れなければ、吸液体12とフィブロイン多孔質体11の形状は同じでもよいし、異なっていてもよい(図(1−c))。
図1で示される構成をとる場合は、そのまま用いてもよく、また、ドレッシングフィルム、包帯、粘着テープ等で固定して用いてもよい。
また、本発明の医療用部材としては、更に粘着フィルムを有し、該粘着フィルムと吸液体とフィブロイン多孔質体とがこの順に積層するように、該粘着フィルムが該吸液体とフィブロイン多孔質体とを該吸液体の方から被覆するように備えられ、該フィブロイン多孔質体の該吸液体が積層される側とは反対側の面であって、該粘着フィルムとは反対側の面が露出してなる、例えば図2に示される構成を有するものも挙げられる。
粘着フィルムとしては、止血材、創傷被覆材、薬液徐放担体等の医療用部材の固定に用いられるものであれば、特に制限はなく、例えば、伸張性に優れた軟質プラスチック等のいわゆるビニール素材、オレフィン不織布、ウレタン不織布、ナイロン不織布、ポリエステル不織布等の各種不織布、塩化ビニル、伸縮性綿布、スポンジシート、ウレタンフィルム、オレフィンフィルムなどの支持体に、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の粘着剤を、通常、10〜1000μmの厚さで塗布したものが好ましく用いられる。該粘着剤としては、皮膚刺激性の弱いものが好ましい。
図(2−a)に示される医療用部材10は、図(1−b)及び(1−c)で示される吸液体12とフィブロイン多孔質体11に、更に粘着フィルム13を有しており、該粘着フィルム13と吸液体12とフィブロイン多孔質体11とがこの順に積層したものである。そして、フィブロイン多孔質体11の吸液体12が積層される側とは反対側の面であって、粘着フィルム13が積層される側とは反対側の面が露出しており、医療用部材10を使用する際に患部等にフィブロイン多孔質体11が触れるような構成をとっている。図(2−b)は、図(2−a)で示される医療用部材10をフィブロイン多孔質体11側から見た模式図であり、吸液体12はフィブロイン多孔質体11と粘着フィルム13との間に存在し、フィブロイン多孔質体11に隠れるため図示していない。
図(1−b)で示されるフィブロイン多孔質体11が吸液体12よりも大きいものを用いることで、該フィブロイン多孔質体11と吸液体12とを接着剤等を用いて接着し、または圧着しなくても、該フィブロイン多孔質体11と吸液体12とは粘着フィルム13により保持される。そのため、図(1−b)に示される積層体を粘着フィルム13で被覆した図2に示される医療用部材10は、フィブロイン多孔質体11と吸液体12との界面に接着剤等の異物が存在せず、または圧着により細孔が潰れることがない。よって、図2に示される医療用部材10は、患部等から発生する血液等の液体を吸収する性能が求められる止血材、創傷被覆材として用いる場合、また、吸液体に薬液等の液体を含ませて多孔質体を介して患部に徐放する薬液徐放担体として用いる場合に、液体の往来を阻害することがなく好ましい態様の一例となる。
図2に示されるような、フィブロイン多孔質体11が吸液体12よりも大きい場合、フィブロイン多孔質体11の大きさは、部材の大きさにもよるが、粘着フィルム13との接着を考慮すると、吸液体12の大きさに対して、その周縁に1〜20mmの余白ができるような大きさが好ましく、1〜10mmの余白ができるような大きさがより好ましい。
図3に示される医療用部材10は、粘着フィルム13の一部がフィブロイン多孔質体11の周縁を覆うような形状を有しており、またフィブロイン多孔質体11と吸液体12とは同じ形状で同じ大きさである。図(3−a)は医療用部材10の断面の模式図であり、図(3−b)はこれに対応したフィブロイン多孔質体11側から見た模式図であり、吸液体12はフィブロイン多孔質体11に隠れるため図示していない。
図(3−a)に示される医療用部材10の場合、フィブロイン多孔質体11と吸液体12とは、該フィブロイン多孔質体11の周縁部を覆う粘着フィルム13により保持されるため、上記図2に示される医療用部材10と同様に、フィブロイン多孔質体11と吸液体12とを接着、又は圧着する必要がない。また、フィブロイン多孔質体11と吸液体12とを同じ形状、大きさとできるので、異なる大きさとなってしまう図2に示される医療用部材10と比べて外観は良好となるが、フィブロイン多孔質体11の周縁の一部が粘着フィルム13で覆われてしまうため(図(3−2)参照)、この点で図2に示される医療用部材10の方が優れているといえる。
粘着フィルムでフィブロイン多孔質体の周縁を保持する場合、部材の大きさにもよるが、粘着フィルムの保持する部位は、該周縁に沿って1〜20mmの幅が好ましく、1〜10mmの幅がより好ましい。粘着フィルムの保持する部位の幅は、上記範囲とすることで、フィブロイン多孔質体と吸液体をより確実に保持することができ、またフィブロイン多孔質体の露出面積への影響をより小さくすることができる。
本発明の医療用部材は、図4に示されるような構成をとり得る。フィブロイン多孔質体11と吸液体12とは、該フィブロイン多孔質体11が粘着フィルム13により保持されていないため、接着又は圧着により接合する必要がある。この場合、フィブロイン多孔質体11と吸液体12との接着又は圧着は、これらの界面における接着剤等の異物の存在、又は細孔の潰れによる、液体の往来の阻害を極力抑えつつ、最低限の接合力を確保することが肝要である。図4に示される医療用部材10は、フィブロイン多孔質体11、吸液体12の形状、大きさが同じであるため外観が良好となるが、フィブロイン多孔質体11と吸液体12との界面における液体の往来の性能については、接着又は圧着しないものに比べて劣ることになる。
フィブロイン多孔質体と吸液体とを接着剤により接着する場合、接着剤の使用量は極力抑えることが好ましく、例えば、接着面の一部にのみ接着剤を塗布した後、重ね合わせて接着すればよい。接着剤としては、通常市販される樹脂接着剤を用いることができる。また、例えば、フィブロイン水溶液を接着面に塗布して重ね合わせた後、凍結することによりフィブロインを接着剤のようにして用いることもできる。
圧着は、例えば、吸液体として樹脂スポンジを採用する場合等に、該樹脂スポンジのフィブロイン多孔質体と接合する面を所定の温度に熱し、該吸液体とフィブロイン多孔質体とを接合する方法、フィブロイン多孔質体と吸液体とを積層し、周縁をプレスすることで接合する方法等によって行うことができる。
周縁を常温でプレスする方法の場合、フィブロイン多孔質体の周縁に事前に適度な湿り気を与えておくことで、加熱等を行わずとも接合されやすくなる。湿り気を与える方法に特に制限はなく、例えば、霧吹き、刷毛等で水分を与える方法が挙げられる。この場合の吸液体の素材は、プレスによりフィブロイン多孔質体と圧着可能なものであれば特に制限はなく、例えば、コットン不織布が好ましい。
また、本発明の医療用部材は、図5に示されるような構成もとり得る、すなわち、本発明の医療用部材10は、更にフィブロイン多孔質体11bを有し、吸液体12がフィブロイン多孔質体11a及び11bに挟持されてなる構成もとり得る。この場合、吸液体12を挟むようにして、フィブロイン多孔質体11a及び11bの周縁同士を圧着させることになるので、フィブロイン多孔質体11と吸液体12との界面に接着剤等の異物が存在することなく、また、圧着による細孔の潰れが生じないので、液体の往来を阻害することがない。一方、フィブロイン多孔質体11を多く使用することになるので、コスト高となる場合がある。なお、図5においてフィブロイン多孔質体11aと11bとの区切りを明示していないが、圧着した部分の界面で区切られる。
図5に示される医療用部材10では、フィブロイン多孔質体11aと11bとを圧着した構成としているが、本発明においては、これらの多孔質体を圧着した構成に限られず、フィブロイン多孔質体11aと吸液体12とを接着又は圧着し、更に該吸液体12とフィブロイン多孔質体11bとを接着又は圧着した構成であってもよい。
図1〜4に示される医療用部材は、各々単数のフィブロイン多孔質体、及び吸液体により構成されているが、図5に示される医療用部材のように複数のフィブロイン多孔質体を有していてもよく、また、この複数のフィブロイン多孔質体は同じものでも異なったものでもよい。すなわち、フィブロイン多孔質体として同じものであって、形状、大きさ、厚さが同じもの、又は異なるものであってもよいし、また、多孔質体として異なるものであって、形状、大きさ、厚さが同じもの、又は異なるものであってもよい。また、吸液体も複数の吸液体を有していてもよく、同じものでも異なるものであってもよい。
本発明の医療用部材は、例えば図1〜5で示されるように、様々な構成をとることができるので、用途に応じて各々の構成の特長を活かした選択をすることで、止血材、創傷被覆材、薬液徐放担体等に求められる様々な状況に対応することができる。
本発明の医療用部材は、そのまま用いることもできるし、また、保湿剤を含ませて用いることもできる。保湿剤としては、グリセリン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等を使用することができる。なお、保湿剤を含ませた状態の場合には、使用直前まで、水分量を保った状態で、乾燥を防ぐように密閉状態にしておくことが好ましい。
本発明の医療用部材は、薬剤徐放担体として用いる場合、該部材に含ませることのできる薬剤としては、特に制限されるものではなく、例えば、動物体内において、特定の細胞の増殖や分化を促進する内因性のタンパク質、すなわち、上皮成長因子(EGF)、インスリン様成長因子(IGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、神経成長因子(NGF)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(b−FGF)、酸性線維芽細胞成長因子(a−FGF)等の線維芽細胞成長因子(FGF);肝細胞成長因子(HGF)等の成長因子;塩酸ジフェンヒドラジン、クロルフェニラミン、ジフェニルイミダゾール等の抗ヒスタミン剤;ハイドロコーチゾン、プレドニゾロン、パラメタゾン、ベクロメタゾンプロピオナート、フルメタゾン、ベータメタゾン、プロピオン酸ベクロメタゾン、デキサイタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニドアセテート、プロピオン酸クロベタゾール等のコルチコステロイド類;アセトアミノフェン、メフェナム酸、フルフェナミン酸、インドメタシン、ジクロフェナック、アルクロフェナック、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、イブプロフェン、フルルビブロフェン、サリチル酸、サリチル酸メチル、L−メントール、カンファー等の鎮痛消炎剤;ペニシリン、オキシテトラサイクリン、硫酸フラジオマイシン、エリスロマイシン、クロラムフェニコール、セファレキシン、テトラサイクリン等の抗生物質;ビタミンA、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、オクトチアミン、リボフラビン酪酸エステル等のビタミン剤;ベンゾカイン、リドカイン、アミノ安息香酸エチル等の麻酔剤などが好ましく挙げられる。これらの薬剤は、単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。
また、前記の薬剤に加えて、必要に応じて、吸収助剤、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N,N−ジエチル−m−トリアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ヒアルロン酸、サリチル酸、クロタミトン、ジエチルセバケート、ラウリルアルコール、ジメチルスルホキシド、デシメチルスルホキシド等を配合することができる。これらの吸収助剤を配合することにより、皮膚自身による障壁膜に対して薬剤吸収を促進するとともに、血液中への浸透を促進する機能を薬剤に付与することができる。
上記の薬剤は、吸液体及びフィブロイン多孔質体の少なくとも一方に添加することができ、添加する量に応じていずれか一方に添加してもよいし、両方に添加することもできる。
上記の薬剤の添加量としては、選択する薬剤により適宜決定されるものであるが、目安としては、薬剤徐放担体に対して約1μg〜300mg/12cm(厚さ2mm)の薬剤が吸収されるように添加されることが好ましい。
上記の薬剤は、吸液体及びフィブロイン多孔質体の少なくとも一方に含浸又は塗布することで、保持させることができる。また、これらの薬剤は単独又は複数種を組み合わせて使用することができる。
薬剤徐放担体から薬剤を徐放させるには、シルクフィブロイン多孔質体を湿潤状態としておくことが好ましい。滲出液のある創部で湿潤療法を行うような場合には、滲出液を介して、徐放された薬剤を患部へ浸透させることができる。滲出液のない場合には、生理食塩水などにより、湿潤状態にして使用することができる。
以下に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
〔フィブロイン原料の分子量測定準備〕
フィブロイン原料のタンパク質換算分子量を測定するために、下記の手法でフィブロイン水溶液(A)を調製した。
フィブロイン原料を20℃の9mol/L臭化リチウム水溶液に濃度が100g/Lになるよう投入し、10時間攪拌することで完全に溶解した。次いで、溶解液を遠心分離(回転数:12,000min−1、5分間)して、デカンテーションで沈殿物を除去した後、透析チューブ(商品名:Spectra/Por 1 Dialysis Membrane、MWCO6,000−8,000、Spectrum Laboratories,Inc.製)に注入し、超純水製造装置(PRO−0500及びFPC−0500(以上、型番)、オルガノ株式会社製)から採水した超純水5Lに対して12時間の透析を5回繰り返して脱塩した。次に、得られた溶液を再度遠心分離(回転数:12,000min−1、30分間)することで、フィブロイン水溶液(A)を得た。フィブロイン水溶液(A)中におけるフィブロイン濃度を前述の方法により測定した。得られたフィブロイン水溶液(A)をフィブロイン原料の分子量測定溶液とした。
〔フィブロイン水溶液(B)のタンパク質換算分子量の測定準備〕
フィブロイン水溶液(B)は、後述の実施例1に記載の方法により調製し、分子量測定溶液とした。
〔フィブロイン多孔質体に含まれるフィブロインの分子量測定準備〕
フィブロイン多孔質体に含まれるフィブロインの分子量を測定するために、下記の手法でフィブロイン水溶液(C)を調製した。
フィブロイン多孔質体を20℃の9mol/L臭化リチウム水溶液に濃度が100g/Lになるよう投入し、10時間攪拌することで完全に溶解した。次いで、溶解液を遠心分離(回転数:12,000min−1、5分間)して、デカンテーションで沈殿物を除去した後、透析チューブ(商品名:Spectra/Por 1 Dialysis Membrane、MWCO6,000−8,000、Spectrum Laboratories,Inc.製)に注入し、超純水製造装置(PRO−0500及びFPC−0500(以上、型番)、オルガノ株式会社製)から採水した超純水5Lに対して12時間の透析を5回繰り返して脱塩した。次に、得られた溶液を再度遠心分離(回転数:12,000min−1、30分間)することでフィブロイン水溶液(C)を得た。フィブロイン水溶液(C)中におけるフィブロイン濃度を前述の方法により測定した。得られたフィブロイン水溶液(C)をフィブロイン多孔質体に含まれるフィブロインの分子量測定溶液とした。
〔移動相の調製〕
ガラスビーカーに超純水を700mL入れ、そこに硫酸ナトリウム(無水物、和光純薬工業株式会社製、試薬特級)14.2gと尿素(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)120.1gを加えて得た溶液をビーカーごと超音波洗浄機に漬けて超音波処理し、完全に溶解させた。この溶液に更にリン酸緩衝剤粉末(1.15mol/L、pH7.0、和光純薬工業株式会社製、生化学用)20gを加え、再度超音波処理をして溶解した。次いで、溶解後の溶液をメスフラスコに移し、1Lにメスアップした後に攪拌して均一な溶液とした。この溶液を分子量測定に使用する移動相とした。
〔タンパク質換算分子量の測定〕
フィブロイン原料のタンパク質換算分子量を測定する場合はフィブロイン水溶液(A)を、フィブロイン水溶液(B)に含まれるフィブロインのタンパク質換算分子量を測定する場合はフィブロイン水溶液(B)自体を、フィブロイン多孔質体に含まれるフィブロインのタンパク質換算分子量を測定する場合はフィブロイン水溶液(C)を用いて、下記の方法により、それぞれのタンパク質換算分子量を測定した。
以下、フィブロイン水溶液(A)〜(C)を「分子量測定溶液」と称する。
分子量測定溶液にフィブロイン濃度が10g/Lになるよう超純水を加えて混合し、続いてそこに移動相を加えて5倍に希釈し、得られた溶液を0.45μmのフィルタ(東洋濾紙株式会社製、商品名:25HP045AN)に通してろ過し、クロマトグラフ評価試料とした。
測定には高速液体クロマトグラフ(HPLC)本体(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、商品名:Chromaster(登録商標))と、そのオプションであるUV検出器(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型番:5410)、ポンプ(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型番:5110)、オートサンプラ(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型番:5210)、カラムオーブン(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型番:5310)に加え、カラム(昭和電工株式会社製、商品名:SHODEX(登録商標) PROTEIN KW−804)を組み合わせたHPLC装置を使用した。測定条件は移動相流量0.5mL/sec、カラム温度30℃、検出波長UV220nmとした。
得られたクロマトグラムをタンパク質分子量に換算するための較正曲線の作成には、分子量マーカーとしてHPLC用分子量マーカータンパク質である酵母由来グルタミン酸脱水素酵素(分子量:290,000、Oriental Yeast Co.,LTD.製、商品名:MW−Marker(HPLC))、豚心筋由来乳酸脱水素酵素(分子量:142,000、Oriental Yeast Co.,LTD製、商品名:MW−Marker(HPLC))、酵母由来エノラーゼ(分子量:67,000、Oriental Yeast Co.,LTD製、商品名:MW−Marker(HPLC))を使用した。
HPLC装置に移動相を1時間流しベースラインが安定するのを待った。ベースライン安定後に、各分子量マーカーが水溶液中でそれぞれ0.05質量%となるように溶解した分子量マーカー水溶液を22μL注入して、得られたクロマトグラムのピークトップと分子量マーカーの分子量から較正曲線を作成した。較正曲線を図1に示す。次いで、クロマトグラフ評価試料を22μL注入して得られるクロマトグラムのピークトップの位置から較正曲線を使用してフィブロインのタンパク質換算分子量を測定した。
[フィブロイン多孔質体の製造]
実施例1
(アルカリ精錬)
炭酸ナトリウム水溶液2Lを精練液として使用し、表1に記載の条件で切繭の精練を行った。精練容器には3Lのガラスビーカーを使用し、精練の加熱はホットスターラー(アズワン株式会社製、商品名:CT−5HT)をK熱電対で温度制御しながら行い、攪拌はガラス棒で適宜行った。得られた精練後の切繭を60℃のお湯で十分に洗浄した後に、純水でも洗浄を行った。洗浄後の切繭を24℃の室内で2週間かけて自然乾燥し、完全に乾燥させて、フィブロイン原料とした。次いで練減率を下記式に従って算出した。結果を表1に示す。
練減率(質量%)=(精練前質量−精練後質量)÷精練前質量×100
また、得られたフィブロイン原料を用いて、前述の方法でフィブロイン水溶液(A)を調製し、フィブロイン原料のタンパク質換算分子量を測定した結果を表1に示す。
(フィブロイン水溶液(B)の調製)
フィブロイン水溶液(B)を調製するにあたって、まず、上記のアルカリ精練を行って得られたシルクフィブロイン原料を、20℃の9mol/L臭化リチウム水溶液1Lに濃度が100g/Lになるよう投入し、10時間攪拌することで完全に溶解した。次いで、溶解液を遠心分離(回転数:12,000min−1、5分間)して、デカンテーションで沈殿物を除去した後、透析チューブ(商品名:Spectra/Por(登録商標) 1 Dialysis Membrane、MWCO6,000−8,000、Spectrum Laboratories,Inc.製)に注入し、超純水製造装置(PRO−0500及びFPC−0500(以上、型番)、オルガノ株式会社製、)から採水した超純水5Lに対して12時間の透析を5回繰り返して脱塩した。次に、得られた溶液を再度遠心分離(回転数:12,000min−1、30分間)することでフィブロイン水溶液(B)を得た。フィブロイン水溶液(B)中におけるフィブロイン濃度を前述の方法により測定した。
また、前述の方法でフィブロイン水溶液(B)中のフィブロインのタンパク質換算分子量を測定した結果を表1に示す。
(フィブロイン多孔質体の作製)
フィブロイン水溶液(B)に、フィブロイン濃度30g/L、酢酸濃度2.0%(v/v)となるように酢酸及び超純水を加えた。次に、得られた溶液をアルミ板で作製した型(内側サイズ;400mm×300mm×10mm)に流し込み、予め−5℃に冷却しておいた液冷式低温恒温槽(株式会社前川製作所製)に入れて−5℃で2時間静置した。冷媒としてはナイブライン(登録商標)Z1(株式会社MORESCO製、商品名)を使用した。その後、−3℃/時間の速度で−20℃まで冷却し、そのままの温度で5時間保持して凍結した。
凍結した試料を自然解凍で室温に戻し、型から取り出した後、超純水に浸漬し、超純水を1日2回、3日間交換することによって、使用した酢酸を除去し、フィブロイン多孔質体を得た。得られたフィブロイン多孔質体に含まれるフィブロインのタンパク質換算分子量を前述の方法で測定した結果を表1に示す。
実施例2〜5、7及び8
実施例1において精練時間を、表1に示すとおりに変えた以外は実施例1と同様にして、フィブロイン多孔質体を得た。得られたフィブロイン原料、フィブロイン水溶液(B)及びフィブロイン多孔質体に含まれるフィブロインのタンパク質換算分子量を前述の方法で測定した結果を表1に示す。
実施例6
フィブロイン水溶液(B)の調製方法を以下に記載した方法とした以外は実施例1と同様にして、フィブロイン多孔質体を得た。得られたフィブロイン原料、フィブロイン水溶液(B)及びフィブロイン多孔質体に含まれるフィブロインのタンパク質換算分子量を前述の方法で測定した結果を表1に示す。
(フィブロイン水溶液(B)の調製−2)
フィブロイン水溶液(B)は、アルカリ精練を行って得られたシルクフィブロイン原料を20℃の塩化カルシウムとエタノールと水とをモル比1:2:8で混合した溶液1Lにフィブロインの濃度が100g/Lになるよう投入し、80℃で40分間加熱、攪拌することで完全に溶解した。次いで、溶解液を遠心分離(回転数:12,000min−1、5分間)して、デカンテーションで沈殿物を除去した後、透析チューブ(商品名:Spectra/Por 1 Dialysis Membrane、MWCO6,000−8,000、Spectrum Laboratories,Inc.製)に注入し、超純水製造装置(PRO−0500及びFPC−0500(以上、型番)、オルガノ株式会社製)から採水した超純水5Lに対して12時間の透析を5回繰り返して脱塩した。次に、得られた溶液を再度遠心分離(回転数:12,000min−1、30分間)することでフィブロイン水溶液(B)を得た。フィブロイン水溶液(B)中におけるフィブロイン濃度を前述の方法により測定した。
[機械的強度の評価]
上記で得られたフィブロイン多孔質体について、以下の条件により25%圧縮応力、引裂き強さ、引張強さ及び引張ひずみを測定した。結果を表1に示す。
(25%圧縮応力の測定)
フィブロイン多孔質体について、万能試験機(型番:EZ−(N)S、株式会社島津製作所製)を用い、ロードセルは50N、治具として直径8mmの円形の圧縮板を用いて、圧縮速度1mm/min、室温22℃の条件下で、材料の厚さの25%を圧縮板で押し込んだときのロードを測定し、以下の式により算出した値を25%圧縮応力(kPa)とした。
25%圧縮応力(kPa)=材料の厚さの25%を圧縮板で押し込んだときのロード/圧縮板の面積(mm)×1000
(引裂き強さの測定)
100mm×15mmの大きさで、かつ長さ40mmの切込みを入れた、トラウザ形に打ち抜いたフィブロイン多孔質体の試験片について、万能試験機(型番:EZ−(N)S、株式会社島津製作所製)を用い、ロードセルは50N、つかみ具は引張試験用の冶具を用い、引裂き速度200mm/min、初期つかみ具間距離40mm、室温22℃の条件下で、引裂き力の中央値を測定し、以下の式により算出した値を引裂き強度とした。
引裂き強さ=引裂き力の中央値(N)/試験片の厚さ(mm)
(引張強さ及び引張ひずみの測定)
50mm×5mmの大きさに打ち抜いたフィブロイン多孔質体の試験片について、万能試験機(型番:EZ−(N)S、株式会社島津製作所製)を用い、ロードセルは50N、つかみ具は引張試験用の冶具を用い、引張速度5mm/min、初期つかみ具間距離30mm、室温22℃の条件下で試験片を引張り、試験片が破断した時の応力とひずみをそれぞれ引張強さ、引張ひずみとした。
表1より、実施例1〜8においては、いずれも練減率は31質量%前後であり、セリシンがほぼ完全に除去されていることが分かった。
表1より、実施例1〜7においてフィブロイン多孔質体の25%圧縮応力は、分子量が高い実施例8と比べて低く、より柔軟性に優れていることが分かった。
表1より、実施例1〜6及び8においてはフィブロイン多孔質体の引裂き強さは、分子量が低い実施例7と比べて高く、より機械的強度に優れていることが分かった。
表1より、実施例1〜6及び8においてはフィブロイン多孔質体の引張強さは、分子量が低い実施例7と比べて高く、より機械的強度に優れていることが分かった。
表1より、実施例1〜6においてはフィブロイン多孔質体の引張ひずみは、分子量がより高い、または、低い実施例7、8と比べて高く、より伸縮性に優れていることが分かった。
表1より、実施例1〜6においてはフィブロイン原料及びフィブロイン水溶液のタンパク質換算分子量は168,000〜403,000であったが、精練時間の長い実施例7では126,000、精練時間の短い実施例8では731,000であり、精練時間が長くなるにつれ分子量が低下していることが分かった。
表1より、実施例1〜6においてはフィブロイン多孔質体のタンパク質換算分子量は119,000〜308,000であったが、精練時間の長い実施例7では92,000、精練時間の短い実施例8では592,000であり、精練時間が長くなるにつれ分子量が低下していることが分かった。
以上の結果から、タンパク質換算分子量が160,000〜410,000のフィブロイン原料を使用して作製したフィブロイン水溶液のタンパク質換算分子量は160,000〜410,000であり、またそのフィブロイン水溶液を使用して作製したフィブロイン多孔質体のタンパク質換算分子量は110,000〜310,000となること、またそのようなタンパク質換算分子量を有するフィブロイン多孔質体は、いずれも機械的強度、伸縮性及び柔軟性により優れていることが分かった。
[血液凝固時間の測定(止血性能の評価)]
実施例9、比較例1〜4
(1)被検物質
まず、実施例4で作製したフィブロイン多孔質体を3体積%グリセリン水溶液に48時間浸漬した後、−25℃の冷凍庫中で10時間静置して完全に凍結させた。凍結したフィブロイン多孔質体の水分を、凍結乾燥機を用いて完全に昇華させ、乾燥フィブロイン多孔質体(多孔質体A)を作製した。
被検物質として、この乾燥フィブロイン多孔質体(多孔質体A)、ゼラチンスポンジ(アステラス製薬株式会社製、商品名:スポンゼル)、キチンスポンジ(ニプロ株式会社製、商品名:ベスキチンF(N))、アルギン酸塩不織布(スミスアンドネフュー株式会社製、商品名:アルゴダームトリオニック)を準備した。
(2)試料血液
インフォームドコンセントを行い、健常者3人から、抗凝固剤の非存在下で約40mlの血液を採取し、採取された血液をそれぞれ血液A、B及びCとした。試料血液は保存せず、採血直後、速やかに使用した。
(3)血液凝固時間の測定
はじめに、4種類の被験物質から、それぞれ300mmの試料2セットを切り出し、シリコナイズ処理をした試験管2本に、それぞれの被験物質を1セットずつ入れた。また、空の試験管2本をブランクとして用いた。
あらかじめ、それぞれの試験管を37℃で加温した後、それぞれの試験管に採血直後の血液Aを1.5mL(200mm/mL)添加し、タイマーをスタートさせた。それぞれの被験物質1本目の試験管を30秒毎に傾け、血液の流動性を目視にて観察した。更に1本目の試験管で血液凝固が観察された後、2本目の試験管を30秒毎に傾け、血液の流動性を目視にて確認した。
採血開始から2本目の試験管で血液凝固が観察されるまでの時間を血液凝固時間とした。血液B及びCについても同様の操作を繰り返し、血液凝固時間を測定した。血液A〜Cの平均値を、各被験物質の血液凝固時間とした。結果を表2に示す。
表2より、本発明で用いられる多孔質体Aは、何らの多孔質体を用いなかった比較例1に比べて血液凝固時間を短縮できており、止血効果を有することが分かった。また、本発明で用いられる多孔質体Aは、ゼラチンスポンジより血液凝固時間が短く、キチンスポンジ、アルギン酸不織布と同等の止血効果を有しており、止血材として好適であることが分かった。これらの結果から、この多孔質体Aを出血部位と接する部分に配置することで、本発明の医療用部材は効果的に止血を行うことができ、優れた止血効果を有することが確認された。
[生体への固着力測定(生体からの除去容易性の評価)と創傷被覆材適性の評価]
実施例10、比較例5〜9
(1)被検物質
被検物質として、実施例9で作製した乾燥フィブロイン多孔質体(多孔質体A)、ウレタンスポンジ(スミスアンドネフュー株式会社製、商品名:ハイドロサイトプラス)、アルギン酸塩不織布(スミスアンドネフュー株式会社製、商品名:アルゴダームトリオニック)、非固着性ガーゼ(スミスアンドネフュー株式会社製、商品名:メロリン(滅菌済))、及びハイドロコロイドドレッシング(スリーエムジャパン株式会社製、商品名:テガダームハイドロコロイド、以下ハイドロコロイドと称する。)を準備した。
(2)試験方法(平均固着強さの測定)
(褥瘡モデルの作製)
ラット(Slc:SD(SPF)8週齢、日本エスエルシー株式会社)を試験に用いた。予め右第三転子上の皮膚を広範囲に電気バリカン(大東電機工業株式会社製、商品名:ELECTRIC CLIPPER MODEL5500)、及び電気シェーバー(セイコーエスヤード株式会社製、商品名:Cleancut ES−412)を用いて除毛した上記ラットに、ペントバルビタールナトリウム50mg/kgを腹腔内投与し、更にアロバルビタール20mg/kgを腹腔内投与して麻酔し、木製固定板上に腹位に固定した。大腿部と前記固定板との間にクッションとして脱脂綿を入れ、右第三転子上の皮膚に、ゴム栓(直径12mm)をつけた1.02〜1.03kgのステンレス棒(直径19mm、長さ50cm)をのせて、24時間圧負荷(902.3〜911.2g/cm)した。圧負荷時間中、ペントバルビタールナトリウム及びアロバルビタールの追加麻酔を施した。24時間後に圧負荷を解除し、5%のブドウ糖水溶液を経口投与した後、圧負荷解除2日後にイソフルラン麻酔下にて壊死した皮膚を外科的に除去し、褥瘡モデルとした。
(創部の処置及び被験物質の投与)
ラットに作製した褥瘡に2cm角に裁断した被検物質を被せ、その上から3cm角に裁断したガーゼ(白十字株式会社製)で覆い、4cm角に裁断したドレッシングフィルム(スミスアンドネフュー株式会社製、商品名:オプサイトジェントルロール)で固定した。更に、5cm角に裁断した伸縮性包帯エラストポアNo.50(ニチバン株式会社製)2枚を交叉して貼り、伸縮性包帯エラストポアNo.12(ニチバン株式会社製、1.2×60cm)で固定した。ハイドロコロイドドレッシングについては、離型紙を剥がし粘着面が創部に当たるように投与し、その上からガーゼを被せ、更に、伸縮性包帯で固定した。被検物質は褥瘡が完全に治癒するまでの間、2日ごとに新しいものに交換した。被検物質交換時には、以下の方法で創部への固着の強さを測定した。また、新しい被検物質を貼付する前には、生理食塩液(株式会社大塚製薬工場製)に浸した脱脂綿で創部を清拭した。また、創部が完全に上皮化したタイミングを治癒と判定し、各被検物質の貼付を始めた日から、創部が完全に上皮化した日までの日数を治癒日数とした。治癒日数を表3に示す。
(創部への固着の強さの測定)
被験物質の創部に対する固着の強さを、吊り秤(天衡商事製、高精度光デジタルフォースゲージ)で測定した。被験物質交換時に被検物質を剥がさないように固定している伸縮性包帯類を除去した後に、吊り秤で被検物質を垂直に引っ張って被検物質を剥がした。その時の重さの最大値を読み取って記録し、以下の式に従って、各被検物質の交換時の創部に対する平均固着強さを算出した。算出した平均固着強さを表3に示す。
平均固着強さ(g)=(褥瘡が治癒するまでの各被検物質交換時に吊り秤が示した重さの最大値の合計(g))/(各被検物質の交換回数)
表3より、多孔質体Aは、創部に対する固着力が小さく、生体から容易に除去することが可能であることが分かった。
本発明の医療用部材を貼付した場合、ガーゼ類を創部に貼付した場合と比較して、治癒に要する日数が短くなることが確認された。また、比較例で用いられる既存の湿潤療法向け創傷被覆材として知られる材料と比較しても遜色ないことが分かった。これらの結果から、この多孔質体Aを創部と接する部分に配置することで、本発明の医療用部材は、止血材としての性能である止血効果のみならず、創部に貼付することで、創傷治癒促進効果が期待でき、創傷被覆材としても好適であることが確認された。
実施例11、比較例10〜12
実施例9で作製した乾燥フィブロイン多孔質体(多孔質体A)中のグリセリンの含有量を下記の方法で評価したところ、41.9質量%であった。
(グリセリンの含有量の測定)
乾燥フィブロイン多孔質体中のグリセリンの含有量(質量%)は、乾燥フィブロイン多孔質体に導入されたグリセリンの質量を、グリセリンが導入された後の乾燥フィブロイン多孔質体の質量で割ったものとし、以下の式で算出した。
(乾燥フィブロイン多孔質体中のグリセリンの含有量(質量%))=((グリセリンを導入した乾燥フィブロイン多孔質体の質量)−(グリセリンの未導入の乾燥フィブロイン多孔質体の質量))/(グリセリンの導入後の乾燥フィブロイン多孔質体の質量)×100
(医療用部材の作製)
上記の乾燥フィブロイン多孔質体に、50mm×50mm×2mmに加工した高吸水性不織布(帝人株式会社製、商品名:K0230WHR、ベルオアシス(登録商標)使用の薄手不織布)を、該多孔質体の周縁部が5mmの余白となるよう重ね、次いで高吸水性不織布の側から粘着フィルム(スミスアンドネフュー株式会社製、商品名:ハイドロサイトジェントルロール)を該多孔質体と高吸水性不織布とを被覆するように積層し医療用部材を作製した。
実施例11で得られた医療用部材、比較例10として、見かけ体積が該医療用部材、及び不織布の合計と同じである、実施例9で作製した乾燥フィブロイン多孔質体を、比較例11として、比較例10と見かけ体積が同じアルギン酸塩不織布(スミスアンドネフュー株式会社製、商品名:アルゴダームトリオニック)を、比較例12として、比較例10と見かけ体積が同じ非固着ガーゼ(スミスアンドネフュー株式会社製、商品名:メロリン(滅菌済))を被検物質として、以下の条件により保水性試験、及び液戻り率の評価を行った。結果を表4に示す。
(保水性試験)
被検物質を秤量後(この時の質量を乾燥質量とする)、超純水中に1分間浸漬した。次いで2分間金網上で保持した後、再度秤量し(この時の質量を湿潤質量とする)、下式に従って見かけ体積あたりの吸水量を算出し、保水性を評価した。
見かけ体積あたりの吸水量(g/cm)=(湿潤質量(g)−乾燥質量(g))/被検物質の見かけ体積(cm
(液戻り率の評価)
アルミ板を地面と20℃の傾きになるように配置し、保水性試験で湿潤質量の秤量に用いたのと同様の状態の被検物質を該アルミ板上に静置した。次に、被検物質の上から直径65mmの2kg円柱状分銅を載せ、1分静置した。1分後にアルミ板を振って被検物質から出た水分を振り落とした後に、分銅を除去し、被検物質を秤量した(この時の質量を加圧後質量とする)。以下の式に従い、液戻り率を評価した。
液戻り率%=100−((加圧後質量−乾燥質量)/(湿潤質量−乾燥質量))
実施例11の結果から本発明の医療用部材は保水性が高いことが分かった。更に、実施例11の医療用部材は、圧力印加時の液戻りが少なく、使用中に外部から圧力がかかった場合に、血液や滲出液が液戻りすることがないため、創傷被覆材として用いる場合には、適度な湿潤状態を保つことができ、また、止血材としては創部に充填した際に血液が滲み出しにくくなる。これに対して、比較例10の多孔質体A単体のものでは、高吸水性不織布と組み合わせた実施例11には吸水量及び液戻り率は及ばず、本発明のフィブロイン多孔質体と吸液体との組み合わせによる優れた効果が確認された。また、比較例11及び12の部材も、吸水量及び液戻り率は本発明の医療用部材に及ばなかった。
本発明の医療用部材は、生体に対する安全性に優れ、止血時間が短く止血効果に優れ、生体から容易に除去することが可能であり、機械的強度、柔軟性、及び圧力印加時の液戻り抑制性能に優れ、かつ、様々な状況に対応しうるものである。よって、例えば、患部の圧迫等により止血する止血材として、また患部の治癒に用いられる創傷被覆材として、更には、患部に薬剤を徐々に供給する薬剤徐放担体としても好適に用いられる。
10.医療用部材
11.フィブロイン多孔質体
12.吸液体
13.粘着フィルム

Claims (10)

  1. 吸液体とフィブロイン多孔質体とを有し、該フィブロイン多孔質体が、20℃の9mol/L臭化リチウム水溶液に濃度が100g/Lになるよう溶解させた溶解液を、遠心分離(回転数:12,000min −1 、5分間)して、デカンテーションで沈殿物を除去した後、透析により脱塩し、得られた溶液を再度遠心分離(回転数:12,000min −1 、30分間)することでフィブロイン水溶液を得て、
    該フィブロイン水溶液をクロマトグラフ評価試料として、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて得られるクロマトグラムのピークトップを、分子量マーカーとして、グルタミン酸脱水素酵素(分子量:290,000)、豚心筋乳酸脱水素酵素(分子量:142,000)及び酵母エノラーゼ(分子量:67,000)を用いて作成したクロマトグラムのピークトップと分子量マーカーの分子量との較正曲線を用いて、タンパク質の分子量に換算したタンパク質換算分子量が110,000〜310,000である医療用部材。
  2. 更に粘着フィルムを有し、該粘着フィルムと吸液体とフィブロイン多孔質体とがこの順に積層するように、該粘着フィルムが該吸液体とフィブロイン多孔質体とを該吸液体の方から被覆するように備えられ、該フィブロイン多孔質体の該吸液体が積層される側とは反対側の面であって、該粘着フィルムとは反対側の面が露出してなる請求項1に記載の医療用部材。
  3. 更にフィブロイン多孔質体を有し、吸液体がフィブロイン多孔質体に挟持されてなる請求項1又は2に記載の医療用部材。
  4. フィブロイン多孔質体の厚さが0.1〜50mmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療用部材。
  5. 吸液体の厚さが0.1〜50mmである請求項1〜4のいずれか1項に記載の医療用部材。
  6. フィブロイン多孔質体が、シルクフィブロインで構成されるものである請求項1〜5のいずれか1項に記載の医療用部材。
  7. フィブロイン多孔質体が、該フィブロイン多孔質体中に、分子量が1,000以下の水酸基含有化合物を、該水酸基含有化合物の導入後の乾燥フィブロイン多孔質体の質量に対して、20〜75質量%含むものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の医療用部材。
  8. 水酸基含有化合物が、グリセリン、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、乳酸、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、アルコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも一種である請求項7に記載の医療用部材。
  9. 吸液体が、樹脂スポンジ、ゴムスポンジ、不織布及び吸液性高分子材から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜8のいずれか1項に記載の医療用部材。
  10. 止血材、創傷被覆材、又は薬剤徐放担体に用いられる請求項1〜9のいずれか1項に記載の医療用部材。
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