JP6839431B2 - 細菌増殖抑制剤 - Google Patents

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本発明は、黒麹菌由来の細菌増殖抑制剤に関する。
近年、惣菜類、おにぎり類、弁当類、生菓子類、パン類、飲料等様々な種類の加工食品が多数販売されている。斯かる加工食品や飲料にとって、酵母、細菌、カビ等の微生物による腐敗を防止し、長期保存可能にすることは重要である。代表的な殺菌又は保存方法として、保存料や日持ち向上剤と称される添加物を添加し、食品中の微生物の増殖を抑えることが挙げられ、一般に、安息香酸、ソルビン酸、デヒドロ酢酸、サリチル酸などの合成化合物が使用される場合が多い。しかしながら、これらは、微生物の生育阻止効果は優れているものの、食品衛生上の安全性が懸念されるため、その使用量や使用範囲などが厳しく制限されている。
そこで、近年、より安全性の高い天然由来の食品用日持ち保存料や抗菌性物質の探索が行われ、例えば、茶又は茶抽出物(特許文献1)や柑橘類抽出物(特許文献2)等が使用可能であることが報告されている。しかしながら、当該食品へ添加した際の風味や嗜好性、抗菌スペクトルや抗菌力の点で、必ずしも十分とは云えない。
一方、麹菌の培養物に抗菌性物質が含まれることが報告され、例えばアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)由来の抗菌性物質が、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)等に抗菌性を有すること(特許文献3)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)および、近年、学名がアスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)からアスペルギルス・ルチュエンシス(Aspergillus luchuenshis )へと変更された黒麹菌が、歯周病菌の増殖を阻害すること(特許文献4)等が報告されている。
しかしながら、黒麹菌アスペルギルス・ルチェエンシスの培養物を加熱処理することにより、新たに細菌、特に胞子形成細菌に対する抗菌物質が生ずることは全く報告されていない。
特開平8−38133号公報 特開平11−332534号公報 特開2003−26693号公報 国際公開第2012/043743号
本発明は、食品中の微生物の増殖を抑えることができ、かつ、安全性の高い細菌増殖抑制剤、特に胞子形成細菌に極めて有効な増殖抑制剤を提供するものである。
本発明らは、麹菌について検討したところ、加熱処理した黒麹菌培養物を、食中毒や食品腐の原因となる、黄色ブドウ球菌や胞子形成細菌であるバチルス・セレウス(Bacillus cereus) 等の培養液に添加すると、それら細菌に対する生育阻止効果が発現することを発見し、当該加熱処理物が細菌増殖抑制剤、或いは食品用日持ち向上剤となり得ることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の1)〜5)に係るものである。
1)黒麹菌培養物の加熱処理物又はその抽出物を有効成分とする細菌増殖抑制剤。
2)黒麹菌培養物の加熱処理物又はその抽出物を有効成分とする食品用日持ち向上剤。
3)加熱処理物が、60〜90℃で1〜12時間、又は100〜120℃で20〜60分間の加熱処理物である上記1)の細菌増殖抑制剤又は上記2)の食品用日持ち向上剤。
4)上記1の細菌増殖抑制剤又は上記2)の食品用日持ち向上剤を用いて食品を処理することを特徴とする食品の日持ち向上方法。
5)穀類を含む液体培地で黒麹菌を培養し、得られた培養物を60〜90℃で1〜12時間又は100〜120℃で20〜60分間加熱処理することを特徴とする黒麹菌培養物の加熱処理物の製造方法。
本発明の細菌増殖抑制剤及び食品用日持ち向上剤によれば、食品の安全性や品質を害することなく、食品を汚染する細菌(バチルス・ズブチリス、バチルス・セレウス、バチルス・コアギュランス、スタフィロコッカス・アウレウス、スタフィロコッカス・エピデルミディス、リステリア・モノサイトゲネス等)の増殖を抑制できることから、食品を長期間の保存を可能とし、かつ、食中毒の発症を防止または抑制することができる。中でも、好気性の耐熱性芽胞形成桿菌であるバチルス・セレウスは、下痢や嘔吐を誘発する毒素を産生する場合、食中毒の原因菌であり、また院内感染症細菌としても懸念されていることから、バチルス・セレウスに対して栄養細胞増殖阻害作用のみならず芽胞発芽阻害作用を有する本発明の細菌増殖抑制剤及び食品用日持ち向上剤は、有用性が極めて高い。
シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる分画物の抗菌活性(阻止円)。 精製活性画分のHPLCの溶出ピーク。 精製活性画分の飛行時間型質量分析による解析結果。 精製活性画分のB.cereusに対する栄養増殖阻害活性。 精製活性画分のB.cereusに対する芽胞発芽阻害活性。
本発明の黒麹菌培養物の加熱処理物は、穀類を含む液体培地で黒麹菌を培養し、得られた培養物を加熱処理してなるものである。
本発明において用いられる「黒麹菌」としては、アスペルギルス・ルチュエンシス(Aspergillus luchuensis)、アスペルギルス・ウサミ(Aspergillus usamii)、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)、アスペルギルス・ニーガ(Aspergillus niger)、アスペルギルス・グラウカス(Aspergillus glaucus)等が挙げられ、このうち、アスペルギルス・ルチュエンシスが好ましい。アスペルギルス・ルチュエンシスは、旧分類では、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)とされていたもので、一般にアワモリコウジカビ(焼酎用コウジカビ)として広く知られているものである。
また、アスペルギルス・ルチュエンシスとしては、例えばAspergillus luchuensis SH―41株(株式会社樋口松之助商店)を好適に用いることができる。
本発明において、黒麹菌の培養は、抗菌活性の点から、炭素源として少なくとも穀類が用いられる。例えば、可溶性でんぷんのみを炭素源として用いた場合には抗菌活性が認められない。
ここで、「穀類」としては、米、大麦、小麦、そば、ヒエ、アワ、キビ、コウリャン、トウモロコシ等を挙げられ、このうち米が好ましい。
当該穀類は、未精白の穀類から、穀皮が穀粒の表面にある程度残されているのが好ましく、精白歩合(穀類を精白して残った穀類の割合)が、3〜30%であるのが好ましい。穀類として米を用いる場合、精米歩合は、3〜30%が好ましく、約30%であることがより好ましい。尚、30%精米歩合とは、玄米の周囲を30%削り落とした米粒のことである。
穀類を含む液体培地は、水に穀類を加えて調製される。例えば、水に対して穀類を1〜20%(w/vol)、好ましくは、1〜5%(w/vol)、より好ましくは、1.5〜3(w/vol)添加して調製される。
斯かる液体培地には、無機塩、有機物等の麹菌の培養に一般に使用されている栄養源を添加することができ、無機塩としてはアンモニウム塩、硝酸塩、カリウム塩、酸性リン酸塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等の水溶性の化合物の1種又は2種以上を挙げることができる。ここで、無機塩としては0.1〜1%(w/vol)添加するのが好ましい。
なお、有機物としては米糠、小麦麩、コーンスティープリカー、大豆粕、脱脂大豆等が挙げられる。
好適な培地としては、例えば、2(w/v)%炭素源(精米歩合3〜30%の米粒)を添加したミネラル添加培地(NaNO 0.3(w/v)%,KHPO 0.1(w/v)%,MgSO 0.05(w/v)%,KCl 0.05%(w/v)%,FeSO・7HO 0.001(w/v)%)が挙げられる。
黒麹菌は、分生子(胞子)又は前培養により得られる菌糸のどちらの形態のものを用いてもよいが、分生子を用いるのが好ましい。
黒麹菌の液体培地への接種量には特に制限はないが、液体培地1ml当り、胞子であれば1×10〜1×10個程度、菌糸であれば前培養液を0.1〜10%程度接種することが好ましい。
培養温度は、生育に影響を及ぼさない限り特に限定されないが、好ましくは25〜40℃、より好ましくは37℃で行なうのがよい。培養時間は、好ましくは48〜168時間、より好ましくは72〜144時間、より好ましくは96〜120時間である。
培養装置は液体培養を行なうことができるものであればよいが、酸素や空気を培地中に供給できる好気的条件下で行われ、培養中は培地中の原料、酸素、及び麹菌が装置内に均一に分布するように、撹拌をするのが好ましい。撹拌条件や通気量については、培養環境を好気的に保つことができる条件であればいかなる条件でもよく、培養装置、培地の粘度等により適宜選択すればよい。
培養終了後、培養物が加熱処理に付されるが、この場合、培養物そのものを加熱処理に付してもよいが、培養物を濾過又は遠心分離等することにより得られる培養上清物又は培養濾液を加熱処理に付すのが好ましい。
加熱処理条件としては、60〜120℃で行うことができ、例えば60〜90℃で1〜12時間、好ましくは6〜12時間、100〜120℃で20〜60分間、好ましくは100℃で20〜60分間、120℃で20〜30分間である。
黒麹菌培養物の加熱処理物の抽出法としては、当該加熱処理物を有機又は無機溶媒で抽出し得られる抽出物、好ましくは有機溶媒による抽出物、さらに当該抽出物をクロマトグラフィー等で分画した分画物、さらにはその精製物が包含される。
抽出に用いる溶媒は、黒麹菌培養物の加熱処理物に含有される抗菌物質を抽出できる溶媒である限り、特に限定されるものではなく、例えば、水、メタノール、エタノール、エーテル、酢酸エチル、クロロホルム、ヘキサン、又はこれらの混合物(例えば、クロロホルムとメタノールとの混合液)等を挙げることができるが、酢酸エチル、クロロホルム、ヘキサン等の非プロトン性溶媒であるのが好ましく、低極性溶媒であるのがより好ましい。
好適な抽出法としては、Bligh-Dyer法又はこれに準ずる方法が採用できる。すなわち、加熱処理物に対し、適量のNaClを加え、クロロホルム−メタノール溶液を加えて撹拌した後、さらにクロロホルムを加えて撹拌し、クロロホルム層を回収することにより黒麹菌培養物の加熱処理物の抽出物を得ることができる。
抽出条件は、使用する溶剤によっても異なるが、例えば、加熱処理物1質量部に対して1〜10質量部の溶剤を用い、0〜50℃、好ましくは25〜37℃の温度で、10〜120分抽出するのが好ましい。
分画物としては、カラムクロマトグラフィーを用いて、溶出・分離して得られる分画物、さらにはその精製物が挙げられる。
クロマトグラフィーに用いる担体としては、特に限定されないが、充填剤としてシリカゲルが好ましく、シリカゲル60がより好ましい。カラムのサイズは、特に限定されない。
以下に、活性画分の取得法について、その一例を示す。
上記で得られた加熱処理物の溶媒抽出物をシリカゲルカラムに吸着後、溶媒としてn−ヘキサン:ジエチルエーテル:酢酸=40:60:1で、ベッドボリームごとに溶出させ、画分1から画分6までを得、さらにアセトニトリルを用いてシリカゲルカラムを洗浄したものを画分7とする。このうち、画分3と4を合わせたものを、抗菌活性を示す画分(「活性画分」と称する)として回収し、濃縮することにより純度の高い黒麹菌培養物の加熱処理物の抽出物を得ることができる。
上記で得られた活性画分は、限外濾過膜(例えば、10K又は3Kのメンブランフィルター(Amicon Ultracel-10, Millipore))、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて精製することができる。後記実施例で示すように、活性画分を10Kフィルターで濾過した際の濾液をYMC Hydroshere C18カラムを用いたHPLCで精製した精製活性画分には、1.67分付近に溶出されるピークに抗菌活性が認められ、また、飛行時間型質量分析計「AutoFlex-T2」を用いて当該精製画分の分子量を測定すると、600Da〜1300Da付近に主ピークが確認される(図1)。その際の m/zは、1279.852、1070.532、860.858、651.235の規則的な等間隔のピークが観測される。
斯くして得られる黒麹菌培養物の加熱処理物又はその抽出物は、そのまま、或いは濃縮若しくは希釈、乾燥等の処理を適宜施し、固形状、懸濁液状、ペースト状等の任意の形態とし、本発明の細菌増殖抑制剤或いは食品用日持ち向上剤として用いることができる。
後記実施例に示すとおり、黒麹菌培養物の加熱処理物又はその抽出物は、食品腐敗、食中毒或いは感染症の原因となる有害菌であるバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、に対して抗菌活性を有する。
また、黒麹菌培養物の加熱処理物又はその抽出物は、バチルス・セレウスに対する栄養細胞増殖阻害作用のほか、芽胞発芽阻害作用を有する。バチルス・セレウスは芽胞形成細菌であり、物理化学的抵抗性が非常に強く、加熱調理食品においても保存や取扱いに欠陥があると発芽・増殖し、食中毒発症菌量に達することがあることから、発芽阻害作用有することは、食中毒発症抑制に有用である。
したがって、黒麹菌培養物の加熱処理物又はその抽出物は、細菌増殖抑制剤(細菌増殖阻害剤を包含する)或いは食品用日持ち向上剤として、主として食品中の微生物の増殖を抑制するため、食中毒の発症を抑制するために使用することすることができる。特に、食品工場ではバチルス・セリウスによる汚染が多数報告されていることから、食品工場における食品汚染の抑制に有用である。
本発明において、「食品用日持向上剤」とは、微生物の増殖を抑制するためのものであって、食品に添加されて使用され、該食品の日持ちを、即ち該食品を安全に食することができる期間を数日間程度延長可能とする食品添加剤(日持ち保存料)を意味する。
本発明の細菌増殖抑制剤又は食品用日持ち向上剤には、本発明の効果を阻害しない範囲で、酸化防止剤、香料、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、pH調整剤、品質安定剤、多糖増粘剤、かん水や結着剤等の製造用剤等を含有してもよい。その形態としては、粉末、顆粒、錠剤、氷等の固体、ペースト状等の半固体、調味料や浸漬液等の液体であってもよい。
本発明において、食品とは、食用肉、魚介、野菜、果物、卵、穀物、乳等の何れでもよく、そのまま又はそれをカッティングした未加工品の他、これらを混和した加工品や予め加熱処理した加工品でもよい。加工品としては、例えば、食肉惣菜、中華惣菜、煮物、菓子、パン類、弁当、水産食品、発酵食品、飲料が挙げられる。
本発明の食品の日持ち向上方法による食品の処理としては、例えば、本発明の細菌増殖抑制剤又は食品用日持ち向上剤を、食品表面に直接塗布すること、食品内部に浸透させること、又は食品と混合すること等が挙げられる。
実施例1 黒麹菌培養加熱処理物及びその抽出物の調製
(1)30%精米2g(100粒)に100mLの純水を添加し、さらに、NaNO(0.3w/v%)、KHPO(0.1w/v%)、MgSO(0.05w/v%)、KCl(0.05w/v%)、FeSO・7HO(0.01w/v%)を所定の濃度となるように添加して液体培地を作製した。
作製した液体培地に対し、1白金耳(2mg)の黒麹菌(Aspergillus luchuensis SH-41株)の分生子を接種後、往復振機培養装置を用いて100rpm、37℃で、120時間培養した。
培養終了後、pHを7.0に調整し、0.2μmポアサイズのメンブランフィルターにて濾過し、その濾液を120℃、20分の高圧滅菌(オートクレーブ)処理に供し、黒麹菌培養物の加熱処理物を得た。
(2)(1)で得られた加熱処理物160mLに対し、最終濃度が5MになるようにNaClを加えた。その混合液にクロロホルム:メタノール(1:2)溶液を750mL加え、分液ロートを用いて10分間撹拌した。さらにクロロホルム250mLを加えた後、分液ロートを用いて1分間撹拌を行ない、クロロホルム層を回収した。溶媒を留去し、黒麹菌培養物の加熱処理物の抽出物を得た。
試験例1 抗菌活性の測定(1)
供試菌として、Staphylococcus aureus IFO 12732、Staphylococcus epidermidis NBRC 12993、Listeria monocytogenes ATCC 7644、Bacillus cereus ATCC 11778、Bacillus cereus HK 51-16-1838、Bacillus coagulans IFO 12583、Bacillus subtilis ATCC 6633を用い、実施例1(2)で得られた加熱処理物の抽出物を10%DMSOに溶解後、50μLを寒天ウェルに入れ、寒天拡散法により、供試菌に対する抗菌活性を評価した。結果を表1に示す。尚、加熱処理を行わない黒麹菌培養物の抽出物には、抗菌作用は認められなかった。
実施例2 黒麹菌培養物の加熱処理物抽出物の分画
(1)シリカゲルカラムに対して、実施例1で得られた抽出物を吸着させた後、溶媒としてn−ヘキサン:ジエチルエーテル:酢酸=40:60:1で、ベッドボリームごとに溶出させ、画分1から6を得た。さらに、アセトニトリルを用いてシリカゲルカラムを洗浄したものを画分7とした。その際、抗菌活性は画分3と4に認められた。この両画分を合わせて抗菌活性を示す画分(活性画分)として算出したところ、培養液1リットルから35.8mgの活性物質を得ることができた。
(2)抗菌活性の測定
供試菌として、Bacillus coagulans IFO12583を用い、試験例1と同様の方法により、(1)で得られた画分1〜7について、それぞれの抗菌活性を測定した。結果を図1に示す。
その結果、画分4に最も強い抗菌活性があり、次が画分3であった。それ以外の画分には抗菌活性が認められなかった。
(3)活性画分の精製
(1)で得られた活性画分について、限外濾過膜及び高速液体クロマトグラフィー法を用いて精製を行った。すなわち、10Kフィルターで限外濾過した際の濾液を、YMC Hydroshere C18を用いたHPLCに適用し、以下の条件で溶出させた。
カラム:YMC hydrosphere C18(株式会社ワイエムシー)
溶出:水+0.1%トリフルオロ酢酸、およびアセトニトリル+0.1%トリフルオロ酢酸を用いたリニアグラジエント(0−30%)、
流量:1.0 mL/min
その結果、図2に示すように、1.67分後に溶出されるピークが認められ、そのピーク画分のみに抗菌活性が認められた。
尚、限外濾過を3Kのメンブランフィルターを用いて行った場合には、濾液とフィルター上の両者に抗菌活性が認められた。
(4)分子量の測定
(3)で得られた精製活性画分について、飛行時間型質量分析計((MALDI-TOF MS))「AutoFlex-T2」(BRUKER DALTONICS)を用いて分子量を測定したところ、600Da〜1300Da付近に主ピークが確認された。また、その際のm/zは、1279.852、1070.532、860.858、651.235の規則的な等間隔のピークが観測された(図3)。
試験例2 抗菌活性の測定(2)
供試菌として、Staphylococcus aureus IFO 12732、Staphylococcus epidermidis NBRC 12993、Listeria monocytogenes ATCC 7644、Bacillus cereus ATCC 11778、Bacillus cereus HK 51-16-1838、Bacillus coagulans IFO 12583、Bacillus subtilis ATCC 6633を用い、実施例2(3)で得られた精製活性画分を、10%DMSOに溶解後、50μLを寒天ウェルに入れ、寒天ウェル拡散法により、供試菌に対する抗菌活性を評価した。
その結果、バチルス属細菌に広い抗菌スペクトルを示した。とくに、バチルス・コアグランスIFO12583に対し強い抗菌作用を示した。
試験例3 栄養細胞増殖阻害活性の測定
抗菌効果を評価するために、タイム−キリング−アッセイ(time-killing-assay)法を用いて栄養細胞の増殖に与える影響を評価した。
得られた実施例2(3)で得られた精製活性画分を、10%DMSOを含むPBS(−)緩衝液に溶解して培地とした。
37℃で一晩培養したB.cereus ATCC11778をPBS(−)緩衝液で2回洗浄後、OD600 mm=0.75になるように調整して菌液とした。上記培養液にその菌液を10μL添加し37℃でインキュベートした。それを、一定時間ごとに一定量を採取し、LB寒天平板培地上に塗布し、37℃、24時間培養後、観察されるコロニー数から生菌数を測定した。図4より、活性画分の濃度依存的に栄養増殖阻害活性が認められた。
試験例4 B. cereus芽胞発芽に対する活性の測定
B.cereus ATCC11778株を芽胞形成培地(DSM:Difco sporulation用培地)にて4日間振盪培養し、最終的に成熟芽胞を抽出した。実施例2(3)で得られた精製活性画分及び発芽誘発物質(L−Alanine)を添加したリン酸緩衝液(pH7.0)に、65℃で30分間加温した芽胞を懸濁し、吸光度600nmにて細胞数の変動を経時的に測定した(図5)。なお、芽胞を分離できたか否かはウイルツ法に従って芽胞染色し確認した。
その結果,無添加培地では2時間後に濁度が20%程度低下するが、精製活性画分を添加した場合、その低下率が減少した。このことから、当該画分が芽胞の発芽過程に何らかの影響を与え、芽胞の発芽を阻害することが推測された。

Claims (5)

  1. 黒麹菌を炭素源として少なくとも穀類を用いて培養した培養上清物又は培養濾液の加熱処理物のクロロホルム−メタノール抽出物を有効成分とする細菌増殖抑制剤。
  2. 細菌が、バチルス・ズブチリス、バチルス・セレウス、バチルス・コアギュランス、スタフィロコッカス・エピデルミディス及びリステリア・モノサイトゲネスから選ばれる1種以上である、請求項1記載の細菌増殖抑制剤。
  3. 黒麹菌を炭素源として少なくとも穀類を用いて培養した培養上清物又は培養濾液の加熱処理物のクロロホルム−メタノール抽出物を有効成分とする食品用日持ち向上剤。
  4. 加熱処理物が、60〜90℃で1〜12時間、又は100〜120℃で20〜60分間の加熱処理物である請求項1又は2記載の細菌増殖抑制剤又は請求項3記載の食品用日持ち向上剤。
  5. 請求項1又は2記載の細菌増殖抑制剤又は請求項3記載の食品用日持ち向上剤を用いて食品を処理することを特徴とする食品の日持ち向上方法。
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