JP6834923B2 - セレクタブルワンウェイクラッチ - Google Patents

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Description

本発明は、セレクタブルワンウェイクラッチに関する。
従来、車両に搭載されるワンウェイクラッチとして、ポケットプレートとノッチプレートとの間に配置されたセレクタプレートにより、ポケットプレートの係合片であるストラットと、ノッチプレートの係合凹部であるノッチとを係合状態または解放状態に切り替えることが可能なセレクタブルワンウェイクラッチが知られている。このようなセレクタブルワンウェイクラッチでは、セレクタプレートと、ポケットプレートまたはノッチプレートとが相対的に摺動するため、その摺動面に潤滑油を供給することにより、各プレートをスムーズに動作させている。
また、特許文献1には、各プレート間に潤滑油を供給したセレクタブルワンウェイクラッチにおいて、ノッチプレートの回転方向を切り替えるセレクタプレートを操作するために、セレクタプレートの外縁部にアームを連結した構成が開示されている。
特許文献1に開示されたセレクタブルワンウェイクラッチは、リターンスプリングを備えるアクチュエータのプランジャによって、セレクタプレートに連結されたアームを移動させることにより、係合状態と解放状態とを切り替えるように構成されている。このように構成されたセレクタブルワンウェイクラッチにおいて、例えばエンジンの始動前は、トルクを伝達する必要がないため、ポケットプレートとノッチプレートとが解放状態となるように、リターンスプリングの付勢力によって、アーム部材が解放方向に付勢される。
特開2016−121750号公報
特許文献1に開示されたセレクタブルワンウェイクラッチにおいては、解放状態から係合状態に切り替えるときに、リターンスプリングの付勢力よりも大きい力をアクチュエータによって発生させる必要がある。そのため、アクチュエータを小型化したい場合には、リターンスプリングの付勢力を弱くすることによって、解放状態から係合状態に切り替えるときにプランジャを吸引するのに必要な力を小さくすることが考えられる。
しかしながら、リターンスプリングの付勢力を弱くすると、以下の問題が生じやすくなる。一般に、低温環境下においては、セレクタブルワンウェイクラッチ内の潤滑油が高粘度になるため、この状態でエンジンを始動すると、セレクタプレートが高粘度の潤滑油に引きずられて回転し、セレクタプレートが係合状態となり解放状態のはずであるポケットプレートとノッチプレートとが誤係合するおそれがある。特に、アクチュエータの小型化のためにリターンスプリングの付勢力を弱くすると、上述したような低温環境下での誤係合がより発生しやすくなる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、アクチュエータの小型化と、低温環境下での誤係合の発生の抑制とを両立することができるセレクタブルワンウェイクラッチを提供することである。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るセレクタブルワンウェイクラッチは、固定プレートと、前記固定プレートに回転軸方向で対向する回転プレートと、前記回転軸方向で前記固定プレートと前記回転プレートとの間に配置され、所定角度だけ該回転プレートの中心軸まわりに回転することによって、係合手段により前記固定プレートと前記回転プレートとが係合する係合状態と、前記係合手段による前記固定プレートと前記回転プレートとの係合がなされない解放状態とを切り替える切り替えプレートと、一端部が支持部材に揺動可能に支持された第1アーム部材と、一端部が操作軸部材に接続され、他端部が前記切り替えプレートに接続された第2アーム部材と、アクチュエータ本体及び前記操作軸部材を有し、前記係合状態となる係合位置に前記第1アーム部材及び前記第2アーム部材を移動させるアクチュエータと、前記解放状態となる解放位置に前記第1アーム部材及び前記第2アーム部材を移動させるような付勢力を、前記第1アーム部材及び前記第2アーム部材に付勢する弾性部材とを備え、前記固定プレートと前記切り替えプレートとの間、及び、該切り替えプレートと前記回転プレートとの間に潤滑油を介在させたセレクタブルワンウェイクラッチであって、前記解放状態から前記係合状態に切り替えるときの前記切り替えプレートの回転方向にて、前記第2アーム部材の一端部よりも上流側に前記第1アーム部材が位置し、前記第2アーム部材の他端部よりも下流側に前記第1アーム部材の他端部が位置しており、前記解放状態のときに、前記操作軸部材の軸線方向にて、前記第2アーム部材の一端部と前記第1アーム部材との間には第1スペースが形成されており、前記第1アーム部材の他端部と前記第2アーム部材の他端部との間には第2スペースが形成されており、前記第2スペースは前記第1スペースよりも大きいことを特徴とするものである。
また、上記において、前記第1アーム部材の一端部から前記操作軸部材の軸線までの距離をaとし、前記第1アーム部材の一端部から前記第2アーム部材の他端部までの距離をbとしたとき、前記操作軸部材の軸線方向における、前記第2スペースの大きさが前記第1スペースの大きさの(b/a)倍以上としてもよい。
これにより、切り替えプレートが誤作動したときに、第1アーム部材の他端部と第2アーム部材の他端部とが接触しないような十分な大きさの第2スペースを確保することができる。
本発明に係るセレクタブルワンウェイクラッチにおいては、第2スペースが設けられていることによって、切り替えプレートが誤作動したときに、第1アーム部材の他端部と第2アーム部材の他端部とが接触せず、弾性部材が第2アーム部材の一端部によって押される。これにより、操作軸部材が縮むように動くのを止めるために必要な弾性部材の保持力を低減させることができる。よって、解放状態から係合状態に切り替えるときに必要なアクチュエータの駆動電流が小さくなるため、アクチュエータ本体の小型化、ひいては、アクチュエータの小型化を図ることができる。したがって、本発明に係るセレクタブルワンウェイクラッチは、アクチュエータの小型化と、低温環境下での誤係合の発生の抑制とを両立することができるという効果を奏する。
図1は、実施形態における車両の駆動装置を示すスケルトン図である。 図2は、実施形態に係るSOWCの全体構成を示した図である。 図3は、実施形態に係るSOWCの分解図である。 図4は、第1アーム部材、第2アーム部材及び止め輪を示した斜視図である。 図5は、解放状態における第1アーム部材と第2アーム部材との状態を示した図である。 図6は、係合状態における第1アーム部材と第2アーム部材との状態を示した図である。 図7は、誤作動時における第1アーム部材と第2アーム部材との状態を示した図である。 図8(a)は、従来例のSOWCにおける、セレクタプレートの誤作動による操作荷重と、リターンスプリングの保持力との関係を示した模式図である。図8(b)は、本実施形態に係るSOWCにおける、セレクタプレートの誤作動による操作荷重と、リターンスプリングの保持力との関係を示した模式図である。
以下に、本発明を適用した実施形態に係るセレクタブルワンウェイクラッチを備える車両について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
図1は、実施形態における車両の駆動装置を示すスケルトン図である。車両Veの駆動装置100は、動力源としてエンジン1と、第1モータジェネレータMG1と、第2モータジェネレータMG2とを備えている。エンジン1は、周知の内燃機関により構成されている。各モータジェネレータMG1,MG2は、モータ機能と発電機能とを有しており、インバータを介してバッテリ(いずれも図示せず)に電気的に接続されている。
駆動装置100は、動力分割機構としての第1遊星歯車機構10と、変速部としての第2遊星歯車機構20と、セレクタブルワンウェイクラッチ(以下「SOWC」という)30と、カウンタギヤ機構40と、デファレンシャルギヤ機構50とを備えている。エンジン1が出力した動力は第1遊星歯車機構10によって第1モータジェネレータMG1側と駆動輪2側とに分割される。第1モータジェネレータMG1側に分割された機械的な動力によって、第1モータジェネレータMG1を発電機として機能させ、第1モータジェネレータMG1で発電した電力をバッテリに充電し、もしくはインバータを介して第2モータジェネレータMG2に供給する。その電力によって第2モータジェネレータMG2をモータジェネレータとして機能させる。さらに、エンジントルクが駆動輪2に伝達される際、SOWC30がエンジン反力を受け持つ機構として機能することによって、第2遊星歯車機構20は増速機として機能する。
エンジン1のクランクシャフトは、図示しないダンパを介して入力軸3に連結されている。入力軸3と同一軸線上には、第1遊星歯車機構10、第1モータジェネレータMG1、第2遊星歯車機構20、SOWC30が配置されている。第2モータジェネレータMG2は、クランクシャフトとは別軸線上に配置されている。
第1遊星歯車機構10は、シングルピニオン型の遊星歯車機構によって構成されており、三つの回転要素として、第1サンギヤSと、第1サンギヤSに対して同心円上に配置された第1リングギヤRと、第1サンギヤSと第1リングギヤRとに噛み合っているピニオンギヤを自転可能かつ公転可能に保持している第1キャリアCとを有する。
第1サンギヤSには第1モータジェネレータMG1が連結されており、第1モータジェネレータMG1のロータ軸4と第1サンギヤSとは一体回転する。第1キャリアCにはエンジン1が連結されており、エンジン1のクランクシャフトと入力軸3と第1キャリアCとは一体回転する。第1リングギヤRには、第1遊星歯車機構10から駆動輪2側へトルクを伝達する出力ギヤ5が一体化されている。第1リングギヤRはエンジン1から出力されたトルクを駆動輪2へ出力する出力要素であり、出力ギヤ5と第1リングギヤRとは一体回転する。
出力ギヤ5は、カウンタギヤ機構40を介してデファレンシャルギヤ機構50に連結されている。デファレンシャルギヤ機構50には、左右のドライブシャフト6を介して駆動輪2が連結されている。
また、エンジン1から駆動輪2に伝達されるトルクに、第2モータジェネレータMG2が出力したトルクを付加できる。第2モータジェネレータMG2のロータ軸7は、入力軸3と平行に配置されている。ロータ軸7には、カウンタギヤ機構40のカウンタドリブンギヤと噛み合っているリダクションギヤ8が一体回転するように取り付けられている。
第2遊星歯車機構20は、ダブルピニオン型の遊星歯車機構によって構成されており、三つの回転要素として、第2サンギヤSと、第2サンギヤSに対して同心円上に配置された第2リングギヤRと、第1ピニオンギヤ及び第2ピニオンギヤを自転可能かつ公転可能に保持している第2キャリアCとを有する。なお、第1ピニオンギヤは第2サンギヤSと噛み合っており、第2ピニオンギヤは第1ピニオンギヤ及び第2リングギヤRと噛み合っている。
第2サンギヤSには第1モータジェネレータMG1が連結されており、第1遊星歯車機構10の第1サンギヤSと第1モータジェネレータMG1のロータ軸4と第2サンギヤSとは一体回転する。第2キャリアCにはエンジン1が連結されており、第1遊星歯車機構10の第1キャリアCと入力軸3と第2キャリアCとは一体回転する。第2リングギヤRは、選択的に回転不能に固定される反力要素であり、ロック機構として機能するSOWC30に連結されている。その第2リングギヤRはSOWC30のノッチプレート32と一体回転する。
SOWC30は、第2リングギヤRを選択的に回転不能にロックする係合機構(ハイギヤロック機構)である。SOWC30は、ケースに固定された固定プレートであるポケットプレート31と、回転プレートであるノッチプレート32とを有し、第2リングギヤRの回転方向を一方向のみに規制する係合状態と、第2リングギヤRが両方向に回転可能となる非係合状態である解放状態とを選択的に切り替える。SOWC30が係合している場合、第2リングギヤRが正回転することは規制され、第2リングギヤRが負回転することは許容される。正回転とは、エンジン走行中にクランクシャフトが回転する方向と同一方向に回転することを意味する。負回転とは、正回転に対して逆方向に回転することを意味する。
ハイギヤロック状態では、反力要素である第2リングギヤRがSOWC30によって正回転不能にロックされているために、出力要素である第1リングギヤRの回転数が入力要素である第1キャリアC及び第2キャリアCの回転数よりも大きいオーバードライブ状態となる。つまり、SOWC30がエンジントルクの反力受け機構として機能し、第2遊星歯車機構20が増速機として機能する。
次に、SOWC30の詳細構成を説明する。図2は、実施形態に係るSOWC30の全体構成を示した図である。図3は、実施形態に係るSOWC30の分解図である。
本実施形態に係るSOWC30は、固定プレートである環状のポケットプレート31と、回転プレートである環状のノッチプレート32と、ポケットプレート31とノッチプレート32との係合状態と解放状態とを切り替える切り替えプレートであるセレクタプレート33と、スナップリング34と、係合片であるストラット35とを備えている。
ポケットプレート31は、円盤状のプレート部311を有し、プレート部311の外周部分から軸方向に伸びる円筒部313が一体成形されている。プレート部311の一方の面は、軸方向でセレクタプレート33及びノッチプレート32と対向する面であり、ストラット35を収容するポケット312が周方向で所定間隔を空けた位置に複数設けられている。ポケット312は、プレート部311の板厚方向に窪んだ形状を有する。ポケット312の底部とストラット35との間には、ストラット35をノッチプレート32側に付勢する図示しない付勢ばねが設けられている。
ノッチプレート32は、ポケットプレート31及びセレクタプレート33に対して相対回転可能な環状のプレートである。ノッチプレート32のうち、セレクタプレート33及びポケットプレート31と軸方向で対向する面には、ポケットプレート31のポケット312に対応する位置に、ストラット35が係合する係合凹部であるノッチ321が複数設けられており、ストラット35とノッチ321とで係合手段を構成している。図2では、ノッチ321が1つのみ示されているが、ノッチプレート32にはポケット312及びストラット35と対応する位置に複数のノッチ321が設けられている。また、図2に示すように、ノッチプレート32はセレクタプレート33とともにポケットプレート31の円筒部313内に収容され、その円筒部313の内周部に嵌合させたスナップリング34によってポケットプレート31から抜け落ちないように構成されている。また、SOWC30内における、ポケットプレート31、セレクタプレート33及びノッチプレート32のそれぞれのプレート間には潤滑油が介在している。
セレクタプレート33は、回転軸方向でプレート部311とノッチプレート32との間に配置され、ポケットプレート31及びノッチプレート32に対して相対回転可能な環状のプレートである。図2に示すように、セレクタプレート33には、ポケットプレート31のポケット312に対応する位置に複数の窓孔331が設けられている。窓孔331は、板厚方向に貫通したストラット開閉窓であり、ポケット312及びストラット35と同数設けられている。
セレクタプレート33は、窓孔331の位置がポケット312の位置と周方向で略一致する係合プレート位置と、窓孔331の位置がポケット312の位置と周方向にずれている解放プレート位置との間で、ノッチプレート32の中心軸まわりに所定角度だけ、ポケットプレート31に対して相対回転することにより、係合状態と解放状態とが切り替えられる。
図3に示すように、ポケットプレート31の円筒部313には差し込み孔314が形成されており、図2に示すような、アクチュエータ37から出力された力をセレクタプレート33に伝達するための部材である第1アーム部材36A及び第2アーム部材36Bが、差し込み孔314に差し込まれる。
アクチュエータ37は、図2に示すように、アクチュエータ本体371と、アクチュエータ本体371から突出している操作軸部材であるプランジャ372とで構成されており、プランジャ372を直線的に動作させる直動アクチュエータである。プランジャ372は、第1アーム部材36A及び第2アーム部材36Bをセレクタプレート33の周方向に沿って移動させることによって、係合状態となる係合位置と、解放状態となる解放位置とに、第1アーム部材36A及び第2アーム部材36Bを移動させるためのものである。
プランジャ372は、アクチュエータ本体371から突出している軸部372aと、軸部372aから径方向に広がるフランジ373と、円柱状の小径部374aと円板状の大径部374bとからなり軸部372aに固定された止め輪374とを有している。
軸部372aの根元側端部は、アクチュエータ本体371の内部に挿入されており、軸部372aの先端側端部は、ケースに設けられた支持部材60の貫通孔61に挿入されてプランジャ軸線方向に往復移動可能に支持されている。フランジ373には、プランジャ軸線方向でアクチュエータ本体371側を向く面である第1壁面373aが形成されている。また、止め輪374の大径部374bには、プランジャ軸線方向でフランジ373側を向く面である第2壁面374cが形成されている。第1アーム部材36A、第2アーム部材36B、フランジ373及び止め輪374は、プランジャ軸線方向で軸部372aの先端側からアクチュエータ本体371側に、フランジ373、第1アーム部材36A、第2アーム部材36B、止め輪374の順で並んで配置されている。
図4は、第1アーム部材36A、第2アーム部材36B及び止め輪374を示した斜視図である。図4に示すように、第1アーム部材36Aの一端部には、円形状の支点部361Aが設けられており、ケースに設けられた支持部材70の軸穴71で支点部361Aが揺動可能に支持されている。第1アーム部材36Aの他端部には、第2アーム部材36Bの後述するピン部363Bと接触することによって、第1アーム部材36Aの所定方向の揺動を規制するためのフォーク部362Aが設けられている。また、第1アーム部材36Aの長手方向で支点部361Aとフォーク部362Aとの間には、アクチュエータ37のフランジ373の第1壁面373aと接触可能な半円状の操作部363Aが設けられている。
また、図4に示すように、第2アーム部材36Bの一端部には、U字形状部361Bが設けられている。このU字形状部361Bには、第2アーム部材36Bに対してアクチュエータ軸線方向でアクチュエータ本体371側から止め輪374の小径部374aが嵌り込み、止め輪374の第2壁面374cとU字形状部361Bとが接触可能となっている。第2アーム部材36Bの他端部には、セレクタプレート33と接続される接続部362Bと、セレクタプレート33の軸方向でノッチプレート32側に突出した円柱状のピン部363Bとが設けられている。
第1アーム部材36Aは、第2アーム部材36BのU字形状部361Bよりも、図2に示した係合方向で上流側(図2のプランジャ軸線方向で軸部372aの先端側)に位置している。また、第1アーム部材36Aのフォーク部362Aは、第2アーム部材36Bのピン部363Bよりも、図2に示した係合方向で下流側(図2のプランジャ軸線方向でアクチュエータ本体371側)に位置している。
図2に示すように、軸部372aにおける止め輪374とアクチュエータ本体371との間には、係合位置から解放位置に向かって第1アーム部材36A及び第2アーム部材36Bを移動させるような付勢力を、止め輪374を介して第1アーム部材36A及び第2アーム部材36Bに付勢するための弾性部材であるリターンスプリング38が設けられている。
図5は、解放状態における第1アーム部材36Aと第2アーム部材36Bとの状態を示した図である。図6は、係合状態における第1アーム部材36Aと第2アーム部材36Bとの状態を示した図である。図7は、誤作動時における第1アーム部材36Aと第2アーム部材36Bとの状態を示した図である。
図5に示した解放状態から図6に示した係合状態への切り替え動作では、アクチュエータ37に通電し駆動させてプランジャ372を吸引する。これにより、プランジャ372が縮むように直線的に動くことによって、第1アーム部材36Aは、フランジ373によって操作部363Aが押されて支点部361Aを中心に図中反時計回りに回転し、第2アーム部材36BのU字形状部361Bと接触する。そして、第1アーム部材36Aがリターンスプリング38の付勢力に抗して第2アーム部材36Bを押すことによって、セレクタプレート33は、セレクタプレート回転中心Oで係合方向に回転し、所定角度だけ係合方向に回転してから係合プレート位置で停止する。
また、第1アーム部材36Aと第2アーム部材36Bとが接触した後は、第1アーム部材36Aの支点部361Aを中心に第2アーム部材36Bが第1アーム部材36Aと一体で回転移動することによって、セレクタプレート33が係合方向に回転する。そのため、解放状態から係合状態への切り替え動作時には、第2アーム部材36Bの接続部362Bでのアクチュエータ軸線方向におけるセレクタプレート33の移動量よりも、フランジ373によって第1アーム部材36Aの操作部363Aを押してプランジャ372を縮むように移動させるストローク量を小さくすることができる。
セレクタプレート33が係合プレート位置にある場合、ストラット35は、図示しない付勢ばねによって押され窓孔331を通じてノッチプレート32側に立ち上がる。この場合、ノッチプレート32の回転方向に応じて、ストラット35がノッチ321に係合する場合である係合状態と、ストラット35がノッチ321に係合しない場合であるオーバーラン状態とに分けられる。係合状態では、係合方向にノッチプレート32が回転することが規制される。オーバーラン状態では、オーバーラン方向にノッチプレート32が回転している。
一方、図6に示した係合状態から図5に示した解放状態への切り替え動作では、アクチュエータ37に通電せず停止させる。これにより、止め輪374を介して第2アーム部材36Bがリターンスプリング38の付勢力によって付勢され、第2アーム部材36Bが第1アーム部材36Aを押すことにより、フランジ373が第1アーム部材36Aに押されて、プランジャ372が伸びるように直線的に動く。また、この際、セレクタプレート33は、リターンスプリング38によって付勢されて移動する第2アーム部材36Bに連動して、セレクタプレート回転中心Oで解放方向に回転し、第2アーム部材36Bがストッパ部材39に突き当たって第2アーム部材36Bの移動が止められることにより、解放プレート位置で停止する。
セレクタプレート33が解放プレート位置にある場合には、セレクタプレート33の窓孔331間の板部分332によってストラット35がポケット312の内部に押し込まれている。板部分332は、ストラット35をポケット312内に収容させる部材として機能し、ストラット35が立ち上がらないようにポケット312の開口を閉じる。この場合、ストラット35とノッチ321とが係合しないため、ノッチプレート32は両方向に回転可能な状態である解放状態となる。
ここで、SOWC30においては、低温環境下などSOWC30内の潤滑油の粘度が高い状態でエンジン1が始動され、ノッチプレート32が係合方向に回転した際に、潤滑油を介してセレクタプレート33にトルクが作用し、セレクタプレート33がノッチプレート32の回転に引きずられて係合方向に回転して誤作動する場合がある。この場合、セレクタプレート33の係合方向への回転に連動して、第2アーム部材36Bもセレクタプレート回転中心Oを回転中心として係合方向に回転する。
本実施形態に係るSOWC30においては、上述したように、第1アーム部材36Aの支点部361Aが支持部材70の軸穴71に揺動可能に支持されており、第2アーム部材36BのU字形状部361Bがプランジャ372の軸部372aに止め輪374を介して接続されている。そして、図5に示すように、SOWC30が解放状態のときには、プランジャ軸線方向にて、第2アーム部材36BのU字形状部361Bと第1アーム部材36Aとの間には第1スペースである隙間Cが形成されており、第1アーム部材36Aのフォーク部362Aと第2アーム部材36Bのピン部363Bとの間には第2スペースである隙間Dが形成されている。そして、この隙間Dは隙間Cよりも大きく、例えば、支点部361Aの中心からプランジャ軸線までの距離をaとし、支点部361Aの中心からピン部363B(接続部362B)の中心までの距離をbとしたとき、隙間Dの大きさが隙間Cの(b/a)倍以上となっている。
これにより、セレクタプレート33が誤作動したときには、図7に示すように、第2アーム部材36Bが係合方向に回転しても、ピン部363Bとフォーク部362Aとが係合方向で接触せずに、セレクタプレート33の誤作動による操作荷重によって、U字形状部361B及び止め輪374を介してリターンスプリング38が押されるようにすることが可能となる。
この際、セレクタプレート33の誤作動による操作荷重によって、第2アーム部材36BのU字形状部361Bが止め輪374を介してリターンスプリング38を押す力が、リターンスプリング38の保持力よりも大きいと、プランジャ372が縮むように動く。そのため、セレクタプレート33が誤作動し始めても、それを止めることができない。このようにセレクタプレート33の誤作動が止められず、セレクタプレート33が係合プレート位置に位置してしまうと、ポケットプレート31とノッチプレート32とが誤係合して、エンジン始動に失敗するおそれがある。
図8(a)は、従来例のSOWC30における、セレクタプレート33の誤作動による操作荷重Fと、リターンスプリング38の保持力Fとの関係を示した模式図である。図8(b)は、本実施形態に係るSOWC30における、セレクタプレート33の誤作動による操作荷重Fと、リターンスプリング38の保持力Fとの関係を示した模式図である。
図8(a)に示した従来例のSOWC30においては、1つのアーム部材360を用いて、セレクタプレート33を係合プレート位置と解放プレート位置との間で回転移動させるように構成されている。アーム部材360の一端部には、支持部材80に揺動可能に支持される支点部301が設けられている。アーム部材360の他端部には、セレクタプレート33と接続される接続部302が設けられている。また、アーム部材360の長手方向で支点部301と接続部302との間には、アクチュエータ37の軸部372aに設けられたフランジ373と接触可能な操作部303が設けられている。そして、セレクタプレート33が誤作動した際には、セレクタプレート33の誤作動による操作荷重Fが、アーム部材360の接続部302に対して係合方向に作用する。また、セレクタプレート33の誤作動による操作荷重Fによって、アーム部材360がリターンスプリング38の付勢力に抗するような力で止め輪374を押す。
そして、図8(a)に示すように、支点部301からプランジャ軸線までの距離をaとし、支点部301から接続部302までの距離をbとすると、セレクタプレート33が誤作動し始めた際、プランジャ372が縮むように動くのを止めるために必要なリターンスプリング38の保持力Fは、F>(b/a)×Fの関係を満たす必要がある。
これに対して、本実施形態に係るSOWC30においては、図8(b)に示すように、セレクタプレート33が誤作動し始めた際に必要なリターンスプリング38の保持力Fを、F>Fの関係を満たすようにすればよい。
よって、本実施形態に係るSOWC30においては、従来例のSOWC30よりもリターンスプリング38の保持力Fを小さくすることができる分、解放状態から係合状態にするときにプランジャ372を吸引するために必要なアクチュエータ37の吸引力を小さくすることができる。そのため、従来例に係るSOWC30よりも吸引力を発生させるために必要なアクチュエータ37の駆動電流が小さくなる分、アクチュエータ本体371を小型化、ひいては、アクチュエータ37の小型化を図ることができる。
したがって、本実施形態に係るSOWC30においては、アクチュエータ37の小型化と、低温環境下での誤係合の発生の抑制とを両立することができる。
1 エンジン
10 第1遊星歯車機構
20 第2遊星歯車機構
30 セレクタブルワンウェイクラッチ(SOWC)
31 ポケットプレート
32 ノッチプレート
33 セレクタプレート
35 ストラット
36A 第1アーム部材
36B 第2アーム部材
37 アクチュエータ
38 リターンスプリング
70 支持部材
71 軸穴
80 支持部材
100 駆動装置
301 支点部
302 接続部
303 操作部
311 プレート部
312 ポケット
313 円筒部
360 アーム部材
361A 支点部
362A フォーク部
363A 操作部
361B U字形状部
362B 接続部
363B ピン部
371 アクチュエータ本体
372 プランジャ
372a 軸部
373 フランジ
373a 第1壁面
374 止め輪
374a 小径部
374b 大径部
374c 第2壁面

Claims (2)

  1. 固定プレートと、
    前記固定プレートに回転軸方向で対向する回転プレートと、
    前記回転軸方向で前記固定プレートと前記回転プレートとの間に配置され、所定角度だけ該回転プレートの中心軸まわりに回転することによって、係合手段により前記固定プレートと前記回転プレートとが係合する係合状態と、前記係合手段による前記固定プレートと前記回転プレートとの係合がなされない解放状態とを切り替える切り替えプレートと、
    一端部が支持部材に揺動可能に支持された第1アーム部材と、
    一端部が操作軸部材に接続され、他端部が前記切り替えプレートに接続された第2アーム部材と、
    アクチュエータ本体及び前記操作軸部材を有し、前記係合状態となる係合位置に前記第1アーム部材及び前記第2アーム部材を移動させるアクチュエータと、
    前記解放状態となる解放位置に前記第1アーム部材及び前記第2アーム部材を移動させるような付勢力を、前記第1アーム部材及び前記第2アーム部材に付勢する弾性部材とを備え、
    前記固定プレートと前記切り替えプレートとの間、及び、該切り替えプレートと前記回転プレートとの間に潤滑油を介在させたセレクタブルワンウェイクラッチであって、
    前記解放状態から前記係合状態に切り替えるときの前記切り替えプレートの回転方向にて、前記第2アーム部材の一端部よりも上流側に前記第1アーム部材が位置し、前記第2アーム部材の他端部よりも下流側に前記第1アーム部材の他端部が位置しており、
    前記解放状態のときに、前記操作軸部材の軸線方向にて、前記第2アーム部材の一端部と前記第1アーム部材との間には第1スペースが形成されており、前記第1アーム部材の他端部と前記第2アーム部材の他端部との間には第2スペースが形成されており、
    前記第2スペースは前記第1スペースよりも大きいことを特徴とするセレクタブルワンウェイクラッチ。
  2. 前記第1アーム部材の一端部から前記操作軸部材の軸線までの距離をaとし、前記第1アーム部材の一端部から前記第2アーム部材の他端部までの距離をbとしたとき、前記操作軸部材の軸線方向における、前記第2スペースの大きさが前記第1スペースの大きさの(b/a)倍以上であることを特徴とする請求項1に記載のセレクタブルワンウェイクラッチ。
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