本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討を行い、基材上に、金属ナノ粒子を含有する金属光沢層と、トナー画像と、を積層された積層体によれば、従来よりも光輝性が高い画像を形成し得ることを着想し、さらに検討および研究を重ね、本発明を完成させた。
つまり、金属ナノ粒子は、特許文献1などに記載のような薄片状の光輝性顔料と比較して、球形により近い形状を有する。そのため、金属ナノ粒子は、顔料を配向させるための特段の工夫をせずとも、光輝性の高い画像の形成を可能とする。
また、金属ナノ粒子は、その名の通り、ナノメートルオーダーの粒子径を有する。そのため、金属ナノ粒子は、粒子径が比較的大きい特許文献2などに記載の光輝性顔料を用いる場合と異なり、金属光沢層の表面の凹凸差をより小さくして、上記凹凸に由来する光輝性の低下を抑制できる。
また、金属ナノ粒子は粒子径が小さく、インクジェットヘッドのノズルを通過できるため、金属ナノ粒子を含む金属光沢層は、インクジェット法などのデジタル印刷技術を用いて作製可能である。そのため、上記積層体は、金属光沢層およびトナー画像の双方を、デジタル印刷技術を用いて作製可能であり、アナログ印刷技術を用いて光輝性顔料含有層を作製する特許文献2に記載の方法などと比べて、より高精細な画像をより簡易に作製することを可能とする。
1.積層体
1−1.基材
基材は特に限定されず、アート紙、コート紙、軽量コート紙、微塗工紙およびキャスト紙などを含む塗工紙ならびに非塗工紙を含む吸収性の基材(紙基材)、ポリエステル(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリウレタン(PU)、ポリプロピレン(PP)、アクリル樹脂(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリブタジエンテレフタレート(PBT)などを含むプラスチックで構成される非吸収性の基材(プラスチック基材)、ならびに金属類およびガラスなどを含む非吸収性の無機媒体を用いることができる。
1−2.金属光沢層
金属光沢層は、金属ナノ粒子を含む層である。金属光沢層は、バインダー樹脂をさらに含んでもよい。金属ナノ粒子は、分散剤に吸着されていてもよい。
金属光沢層の反射率をより高める観点からは、金属光沢層は、上記分散剤が吸着した金属ナノ粒子および上記バインダー樹脂以外の成分を実質的に含まないことが好ましい。上記分散剤が吸着した金属ナノ粒子および上記バインダー樹脂の含有量の合計は、金属光沢層の全質量に対して90質量%以上100質量%以下であることが好ましく、95質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
金属光沢層の膜厚は特に限定されないが、上記バインダー樹脂によって膜厚になることによる金属光沢層の表面の粗面化を抑制して、金属光沢を十分に発現させる観点からは、0.005μm以上10μm以下であることが好ましく、0.01μm以上1.0μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上1.0μm以下であることがさらに好ましく、0.1μm以上0.5μm以下であることが特に好ましい。
なお、金属光沢層は、公知の導電剤などの電気抵抗を大きく変動させ得る化合物を実質的に含まないことが好ましい。
1−2−1.金属ナノ粒子
金属ナノ粒子は、平均粒子径が1000nm未満の金属粒子である。
金属ナノ粒子を形成する金属は、金属光沢層を形成したときに金属光沢を発現するものであればよい。
上記金属の例には、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金、アルミニウム、亜鉛、クロム、鉄、コバルト、モリブデン、ジルコニウム、ルテニウム、イリジウム、タンタル、水銀、インジウム、スズ、鉛、およびタングステンなどが含まれる。これらのうち、高い光沢を発現可能であり、かつ、安価であることから、金、銀、銅、ニッケル、コバルト、スズ、鉛、クロム、亜鉛およびアルミニウムが好ましく、金、銀、銅、スズ、クロム、鉛およびアルミニウムがより好ましく、金および銀がさらに好ましい。さらに、金属光沢の波長依存性をより少なくする観点からは、銀が特に好ましい。これらの金属は、1種を単独で、または2種類以上を合金または混合物として用いることができる。また、金属の種類または組成が異なる2種類以上の金属ナノ粒子を組み合わせて用いてもよい。金属ナノ粒子は、これらの金属を主成分とすればよく、不可避的に含まれる他の成分を微量に含んでいてもよいし、分散安定性を高めるためにクエン酸などで表面処理されていてもよい。また、これらの金属は、酸化物を含有してもよい。
金属ナノ粒子の平均粒子径(D50)は、特に限定されないが、金属ナノ粒子に由来する金属光沢層の表面への凹凸の形成を抑制して、金属光沢層の光沢をより高める観点からは、200nm以下であることが好ましく、また、金属光沢層を作製するための組成物中での分散安定性および保存安定性を高める観点からは、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。一方で、金属ナノ粒子の平均粒子径は、金属ナノ粒子に金属光沢を十分に発現させる観点からは、3nm以上であることが好ましく、また、金属ナノ粒子で生成する表面プラズモンによる光の吸収を抑制して、金属ナノ粒子に金属光沢を十分に発現させる観点からは、15nm以上であることがより好ましい。金属ナノ粒子の平均粒子径は、積層体を撮像して得た走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像して得られたSEM画像から任意に選択した300個の金属粒子の粒子径の平均値を求めて得られる体積平均粒子径とすることができる。
特に、金属ナノ粒子を用いて金属光沢層を形成すると、金属光沢層中に金属ナノ粒子をより密に充填させることができ、用いるバインダー樹脂の量をより少なくすることができる。これに対し、より粒子径が大きい光輝性顔料を用いて金属光沢層を形成すると、光輝性顔料間の隙間も多く形成されるため、光輝性顔料を保持するためのバインダー樹脂の量(光輝性顔料に対するバインダー樹脂の量)もより多くする必要がある。そのため、金属ナノ粒子を用いて形成した金属光沢層では、バインダー樹脂の量を少なくしてバインダー樹脂による光の吸収も少なくできるため、バインダー樹脂が光を吸収することによる光輝性の低減を抑制して、積層体の光輝性をより高くすることができる。
金属光沢層中の上記金属ナノ粒子の含有量は特に限定されないが、金属ナノ粒子の基材への密着性を十分に高める観点からは、金属光沢層の総質量に対して、60質量%以上100質量%以下であることが好ましく、70質量%以上97質量%以下であることがより好ましく、80質量%以上95質量%以下であることがさらに好ましい。
1−2−2.分散剤
分散剤は、金属光沢層を作製するための組成物中で、金属ナノ粒子の表面に吸着し、かつ、バインダー樹脂と相互作用して、金属ナノ粒子を分散させやすくし、かつ金属ナノ粒子の基材への密着性を高める。分散剤は、バインダー樹脂との親和性をより高める観点から、高分子分散剤であることが好ましい。分散剤は、1種を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
高分子分散剤は、金属ナノ粒子の表面に吸着可能な吸着基を有する樹脂である。吸着基の例には、カルボキシル基およびチオール基などが含まれる。つまり、本発明において、分散剤が金属ナノ粒子の表面に吸着しているかどうかは、分散剤が吸着基を有し、かつ、金属ナノ粒子の凝集が少なく、金属光沢層中で良好に分散しているかどうかによって判断することができる。
高分子分散剤を構成する樹脂は、親水性モノマーの単独重合体または共重合体が好ましい。親水性モノマーの共重合体は、親水性モノマーと疎水性モノマーとの共重合体であってもよい。
親水性モノマーの例には、カルボキシル基または酸無水物基を含有するモノマー((メタ)アクリル酸、マレイン酸などの不飽和多価カルボン酸、ならびに無水マレイン酸など)、ならびにアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリル酸エステルモノマー(エチレンオキサイド変性(メタ)アクリル酸アルキルエステルなど)などが含まれる。なお、本発明において、(メタ)アクリルとは、アクリルおよびメタクリルの双方またはいずれかを意味する。
疎水性モノマーの例には、(メタ)アクリル酸メチルおよび(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、スチレン、α−メチルスチレンおよびビニルトルエンなどのスチレン系モノマー、エチレン、プロピレン、および1−ブテンなどのα−オレフィン系モノマー、ならびに、酢酸ビニルおよび酪酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル系モノマーなどが含まれる。
高分子分散剤は、共重合体である場合、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体およびくし型共重合体などとすることができる。中でも、金属ナノ粒子の分散性をより高める観点からは、高分子分散剤は、くし型ブロック共重合体であることが好ましい。
くし型ブロック共重合体とは、主鎖を形成する直鎖状のポリマーと、主鎖を構成するモノマー由来の構成単位に対してグラフト重合した別の種類のポリマーとを含むコポリマーを意味する。くし型ブロック共重合体の好ましい例には、主鎖が(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を含み、かつ、側鎖がポリオキシアルキル基(エチレンオキサイド-プロピレンオキサイド共重合基などを含む長鎖ポリオキシアルキル基)を含む、くし型ブロック共重合体が含まれる。くし型ブロックコポリマーは、グラフト重合した側鎖が立体障害を生じるため、金属ナノ粒子同士の凝集をより高度に抑制しうる。それにより、金属ナノ粒子の分散性が高まるので、凝集した金属ナノ粒子による吐出不良をより抑制しやすい。
分散剤の酸価は、1mgKOH/g以上80mgKOH/g以下であることが好ましい。酸価が1mgKOH/g以上であると、分散剤は親水性の傾向を有するため、インク(特に水系インク)中での分散性を高めやすい。酸価が80mgKOH/g以下であると、金属光沢層中で分散剤が膨潤することによる、金属光沢層の耐久性の低下を抑制しやすい。分散剤の酸価は、1mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることがより好ましく、2mgKOH/g以上40mgKOH/g以下であることがさらに好ましく、3mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることがさらに好ましく、5mgKOH/g以上20mgKOH/g以下であることが特に好ましい。
酸価は、JIS K 0070に準じて測定することができる。具体的には、分散剤の酸価は、フーリエ変換赤外分光光法(FT−IR)により、分散剤の種類(たとえば、積層体の作製に用いた高分子分散剤の製品名など)を特定し、同一の分散剤の酸価をJIS K 0070に準じて測定すればよい。また、1H−NMRおよびガスクロマトグラフィー−質量分析法(GC/MS)によって分散剤の種類を特定してもよい。
分散剤の重量平均分子量は、1000以上100000以下であることが好ましく、2000以上50000以下であることがより好ましい。分散剤の重量平均分子量は、GPCにて測定されたスチレン換算分子量とすることができる。
市販の分散剤の例には、ソルスパース24000、ソルスパース24000GR、ソルスパース32000、ソルスパース44000、およびソルスパース46000(ルーブリゾール社製、「ソルスパース」は同社の登録商標)、アジスパーPB822、アジスパーPB821、およびアジスパーPB711(味の素ファインテクノ社製、「アジスパー」は味の素株式会社の登録商標)、DISPERBYK−102、DISPERBYK−187、DISPERBYK−194N、DISPERBYK−190、DISPERBYK−191、DISPERBYK−199、DISPERBYK−2000、DISPERBYK−2001、DISPERBYK−2015、DISPERBYK−2050、DISPERBYK−2150、およびDISPERBYK−2069(いずれもビックケミー社製、「DISPERBYK」は同社の登録商標)、ディスパロンED−152、ディスパロンED−211、ディスパロンED−212、ディスパロンED−213、ディスパロンED−214、およびディスパロンED−251(楠本化成社製、「ディスパロン」は同社の登録商標)、PLAADシリーズ(楠本化成社製)、EFKA 6220(BASF社製、「EFKA」は同社の登録商標)、ならびにフローレンTG−750W(共栄社化学社製)などが含まれる。
金属光沢層中の分散剤の含有量は特に限定されないが、金属ナノ粒子の基材への密着性を十分に高める観点からは、金属ナノ粒子の総質量に対して、1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、2質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上8質量%以下であることがさらに好ましい。
1−2−3.バインダー樹脂
バインダー樹脂は、金属ナノ粒子の表面に吸着した分散剤と相互作用して、金属ナノ粒子の基材への密着性を高めうる。バインダー樹脂は、分散剤との親和性が高い樹脂であることが好ましく、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(たとえばポリ塩化ビニル重合体、および塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体など)、エポキシ樹脂、ポリシロキサン樹脂、フッ素樹脂、スチレン共重合体(たとえばスチレン−ブタジエン共重合体、およびスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)、ならびに酢酸ビニル共重合体(たとえばエチレン−酢酸ビニル共重合体など)などが含まれる。金属光沢層の耐水性をより高める観点から、バインダー樹脂は、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリシロキサン樹脂、フッ素樹脂、スチレン共重合体)、および酢酸ビニル共重合体が好ましく、ウレタン樹脂および(メタ)アクリル樹脂がより好ましい。これらのバインダー樹脂は、1種を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
ウレタン樹脂は、例えばスルホン酸塩含有ポリオール(a1)と有機ポリイソシアネート(a2)とをイソシアネート基過剰の雰囲気で反応させた後、低分子ポリオール(a3−1)と水系溶媒とを加えてさらに反応させてイソシアネート基末端プレポリマーの乳化液を得て、上記乳化液に低分子ポリアミン(a3−2)を加えてさらに反応させたものとすることができる。
スルホン酸塩含有ポリオール(a1)の例には、スルホン酸塩含有ポリエステルポリオール、スルホン酸塩含有ポリエーテルポリオール、およびスルホン酸塩含有ポリカーボネートポリオールなどが含まれる。
有機ポリイソシアネート(a2)の例には、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、および1,4−テトラメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、およびp−キシレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ジイソシアネート、ならびにイソホロンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネートが含まれる。
低分子ポリオール(a3−1)および低分子ポリアミン(a3−2)は、鎖延長剤として機能する。低分子ポリオール(a3−1)の例には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、および1,4−ブタンジオールなどが含まれる。低分子ポリアミン(a3−2)の例には、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、およびジエチレントリアミンなどが含まれる。
水系溶媒は、N−メチルピロリドン(NMP)およびプロピレングリコールジメチルエーテル(DMPDG)などの有機溶媒と水との混合溶媒とすることができる。
(メタ)アクリル樹脂は、高分子乳化剤(b3)を含む水溶液中で、モノマー(b1)を、水溶性開始剤(b2)を用いて重合させたものとすることができる。
モノマー(b1)の例には、メチル(メタ)アクリレートおよびエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、メトキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、スチレンおよびα−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物、ビニルトリエトキシシランなどの加水分解性シラン基含有ビニル化合物、ならびにN−メチロールアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド化合物などが含まれる。
水溶性開始剤(b2)の例には、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、および過硫酸アンモニウムなどが含まれる。
高分子乳化剤(b3)は、水溶性樹脂であればよく、カルボキシル基含有ポリマーなどとすることができる。カルボキシル基含有ポリマーは、カルボキシ基含有不飽和モノマーの単独重合体または共重合体である。カルボキシ基含有不飽和モノマーの例には、(メタ)アクリル酸が含まれる。カルボキシル基含有ポリマーは、共重合体であるとき、上記カルボキシ基含有不飽和モノマーと上述したモノマー(b)との共重合体とすることができる。
バインダー樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が30℃以上の樹脂であることが好ましい。積層体は、金属光沢層を形成した後にトナー画像を形成して、作製される。このとき、バインダー樹脂の耐熱性が低いと、トナー画像を形成するときにトナー粒子を熱定着させると、バインダー樹脂が崩れて金属光沢層が変形し、たとえば金属光沢層の厚みが不均一になってしまうことがある。このような、トナー画像を形成するときの金属光沢層の変形を抑制する観点から、バインダー樹脂は耐熱性が高いことが望ましく、Tgが30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましく、60℃以上であることが特に好ましい。バインダー樹脂のTgの上限は特に限定されないが、たとえば、100℃以下とすることができ、80℃以下であることが好ましい。
バインダー樹脂が光を吸収および散乱などすることによる積層体の光輝性の低下を抑制する観点からは、バインダー樹脂の含有量(全質量)は、たとえば金属ナノ粒子が銀ナノ粒子であるときは、金属ナノ粒子の全質量に対して1/5以下であることが好ましく、1/7以下であることがより好ましく、1/10以下であることがさらに好ましい。
1−3.トナー画像
トナー画像は、トナーを用いて形成された画像である。トナー画像は、表面を光学顕微鏡などで観察したときに、その下の層(金属光沢層および後述するガスバリア層など)に定着した粒子状の画素(トナー粒子に由来する画素)が観察されるものをいう。
トナー粒子の種類は特に限定されず、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック、ならびにグリーン、レッド、オレンジおよびブルーなどの特色トナーを含む着色トナー、ならびに色材を含まないクリアトナーなどを用いることができる。これらのトナーは、1種を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
トナー粒子は、通常、トナー母体粒子と、その表面に付着した外添剤と、を含有する。
トナー母体粒子は、結着樹脂を含有する。トナー母体粒子の全質量に対する結着樹脂の含有量は、例えば75質量%以上100質量%以下とすることができる。
結着樹脂は、トナーの結着樹脂に用いられる通常の樹脂とすることができる。結着樹脂の例には、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体、およびオレフィン系樹脂などを含むビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、カーボネート樹脂、ポリエーテル、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリスルフォン、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ならびに尿素樹脂などが含まれる。これらの結着樹脂は、1種を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
トナー母体粒子は、積層体の光輝性を顕著に低下させない限りにおいて、結着樹脂以外の他の成分をさらに含有していてもよい。上記他の成分の例には、色材、離型剤および帯電制御剤が含まれる。これらの成分は、1種を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
色材は、カラートナーの色材に用いられる公知の無機または有機色材とすることができる。色材の例には、カーボンブラック、磁性体、顔料および染料が含まれる。これらの色材は、1種を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
カーボンブラックの例には、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックおよびランプブラックが含まれる。
磁性体の例には、鉄やニッケル、コバルトなどの強磁性金属、これらの金属を含む合金、および、フェライトやマグネタイトなどの強磁性金属の化合物、が含まれる。
顔料の例には、C.I.ピグメントレッド(以下、単に「PR」ともいう。)2、PR3、PR5、PR7、PR15、PR16、PR48:1、PR48:3、PR53:1、PR57:1、PR81:4、PR122、PR123、PR139、PR144、PR149、PR166、PR177、PR178、PR208、PR209、およびPR222、C.I.ピグメントオレンジ(以下、単に「PO」ともいう。)31、およびPO43、C.I.ピグメントイエロー(以下、単に「PY」ともいう。)3、PY9、PY14、PY17、PY35、PY36、PY65、PY74、PY83、PY93、PY94、PY98、PY110、PY111、PY138、PY139、PY153、PY155、PY180、PY181、およびPY185、C.I.ピグメントグリーン(以下、単に「PG」ともいう。)7、ならびに、C.I.ピグメントブルー(以下、単に「PB」ともいう。)15:3、PB15:4、およびPB60などが含まれる。
上記染料の例には、C.I.ソルベントレッド(以下、単に「SR」ともいう。)1、SR3、SR14、SR17、SR18、SR22、SR23、SR49、SR51、SR52、SR58、SR63、SR87、SR111、SR122、SR127、SR128、SR131、SR145、SR146、SR149、SR150、SR151、SR152、SR153、SR154、SR155、SR156、SR157、SR158、SR176、およびSR179、C.I.ソルベントイエロー(以下、単に「SY」ともいう。)19、SY44、SY77、SY79、SY81、SY82、SY93、SY98、SY103、SY104、SY112、およびSY162、ならびに、C.I.ソルベントブルー(以下、単に「SB」ともいう。)25、SB36、SB60、SB70、SB93、およびSB95などが含まれる。
離型剤(ワックス)の例には、炭化水素系ワックスおよびエステルワックスが含まれる。炭化水素系ワックスの例には、低分子量ポリエチレンワックス、低分子量ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックスおよびパラフィンワックスなどが含まれる。また、エステルワックスの例には、カルナウバワックス、ペンタエリスリトールベヘン酸エステル、ベヘン酸ベヘニルおよびクエン酸ベヘニルなどが含まれる。
帯電制御剤の例には、ニグロシン系染料、ナフテン酸および高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、ならびに、サリチル酸金属塩またはその金属錯体などが含まれる。
トナー粒子の大きさおよび形状は、適宜に決めることが可能である。たとえば、トナー粒子の平均粒子径(D50)は、トナー中でのトナー粒子の流動性および画質を高める観点から、4.0μm以上10.0μm以下であることが好ましく、4.5μm以上8.0μm以下であることがより好ましく、5.0μm以上7.5μm以下であることがさらに好ましい。トナー粒子の平均粒子径は、積層体を撮像して得たSEM画像から任意に選択した300個のトナー粒子の粒子径の平均値を求めて得られる体積平均粒子径とすることができる。
なお、トナー粒子の大きさは、トナー母体粒子のそれらと同じか、わずかに異なる程度である。よって、トナー母体粒子の大きさからトナー粒子の大きさをそのままあるいは近似的に求めてもよいし、トナー粒子の大きさからトナー母体粒子の大きさをそのままあるいは近似的に求めてもよい。
上記トナー母体粒子の製造方法は、粉砕法でも重合法でもよい。上記トナー母体粒子の製造方法は、上記トナー粒子の大きさおよび形状の適切な制御の観点から、粉砕法よりも重合法が好ましい。当該重合法の例には、乳化会合凝集法および懸濁重合が含まれる。より好ましくは乳化会合凝集法である。
上記乳化会合凝集法は、ビルドアップ型のトナー製造方法の一種であり、例えば、水系媒体中に分散された結着樹脂の粒子と色材の粒子とを凝集・融合してトナー母体粒子を製造する方法である。当該乳化会合凝集法によるトナー母体粒子の製造方法は、例えば、以下に示す工程を含む。
(a)水系媒体中において、結着樹脂による結着樹脂粒子を形成して当該結着樹脂粒子が分散されてなる結着樹脂粒子分散液を調製する工程
(b)水系媒体において、結着樹脂を凝集させてトナー母体粒子となる樹脂粒子を得る工程(凝集・融着工程)
(c)冷却工程
(d)濾過、洗浄、乾燥工程
上記製造方法は、特に、ミニエマルジョン重合法により多段重合した樹脂粒子を会合(凝集/融着)するトナー製法であることが好ましい。
外添剤は、トナー粒子の流動性および帯電性などを調整できる化合物とすることができる。外添剤の例には、シリカ粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、酸化亜鉛粒子、酸化クロム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アンチモン粒子、酸化タングステン粒子、酸化スズ粒子、酸化テルル粒子、酸化マンガン粒子および酸化ホウ素粒子などが含まれる。これらの外添剤は、1種を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
トナー粒子の全質量に対する、外添剤の含有量は、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上3.0質量%以下であることがより好ましい。
1−4.その他の層
積層体は、上述した金属光沢層以外の層を含んでもよい。たとえば、積層体は、上記金属光沢層への気体の進入を防ぐガスバリア層を有してもよい。また、積層体は、金属ナノ粒子の基材への密着性をより高めるため、金属光沢層より基材側にプライマー層を有してもよいし、金属光沢層より表層側(基材の反対側)に、保護層を有していてもよい。
1−4−1.ガスバリア層
ガスバリア層は、気体(特には金属ナノ粒子を酸化して変色させる酸素、または金属ナノ粒子を硫化させて変色させる気体状の硫化物(硫化水素および二酸化硫黄など))の透過性が低い材料から形成される層とすることができる。たとえば、ガスバリア層は、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリシロキサン樹脂、マレイン酸樹脂、ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシスチレン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、酢酸セルロース、エチルセルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、およびアルキド樹脂などの樹脂を含む層とすることができる。
ガスバリア層の位置は特に限定されず、金属光沢層およびトナー画像をより外側から被覆してもよいし、金属光沢層とトナー画像との間に配置されてもよい(以下、これらの位置をまとめて単に「金属光沢層より外側」ともいう。)。また、基材を透過した気体による金属ナノ粒子の変色を抑制するため、ガスバリア層は、金属光沢層と基材との間に配置されてもよいし、金属光沢層およびトナー画像が形成されない基材の裏側(以下、これらの位置をまとめて「金属光沢層より基材側」ともいう。)に配置されてもよい。特に、基材が紙基材およびポリプロピレン(PP)などの気体の透過性が高い材料から形成されるときは、金属光沢層より基材側にガスバリア層が配置されることが好ましい。ガスバリア層は、これらの複数の位置に配置されてもよく、特に、基材が気体の透過性が高い材料から形成されるときは、金属光沢層より外側および金属光沢層より基材側の両方に配置されることが好ましい。
1−4−2.プライマー層
プライマー層は、金属ナノ粒子を含む顔料などの基材への密着性を高めるために従来から用いられている材料から形成される層とすることができる。たとえば、プライマー層は、定着用の樹脂を含む。
プライマー層の膜厚は特に限定されないが、金属光沢層の基材への密着性を十分に高める観点からは、0.05μm以上100μm以下であることが好ましく、0.1μm以上50μm以下であることがより好ましく、0.5μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。
上記定着用の樹脂は、金属ナノ粒子などを含む顔料の基材への密着性を高めるために従来から用いられている樹脂であればよく、上述したバインダー樹脂と同様の樹脂であってもよい。
上記定着用の樹脂の例には、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリシロキサン樹脂、マレイン酸樹脂、ポリオレフィン樹脂、ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシスチレン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、酢酸セルロース、エチルセルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、およびアルキド樹脂などが含まれる。これらの定着用の樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
定着用の樹脂の基材表面への付量は、金属光沢層の基材への密着性を十分に高める観点からは、0.01g/m2以上100g/m2以下であることが好ましく、0.05g/m2以上50g/m2以下であることがより好ましく、0.1g/m2以上10g/m2以下であることがさらに好ましい。
1−4−3.保護層
上記保護層は、金属光沢層の耐擦過性などを高めて、積層体からの金属ナノ粒子の離脱を抑制する層である。
上記保護層は、金属光沢層が含むバインダー樹脂およびプライマー層が含む定着用の樹脂と同様の樹脂を含む層とすることができる。上記保護層は、これらの樹脂を、1種単独で含んでいてもよいし、2種類以上を組み合わせて含んでいてもよい。
なお、上記ガスバリア層が金属光沢層より外側に配置されるときは、ガスバリア層が保護層としても機能しうる。
2.積層体の製造方法
上述した積層体は、金属光沢層が形成された基材の、上記金属光沢層が形成された領域にトナー画像を形成して、製造することができる。
2−1.金属光沢層の形成
金属光沢層は、上述した金属ナノ粒子を含むインク組成物を、基材表面に付与して、形成することができる。上記金属ナノ粒子は、上述した高分子分散剤に吸着されていてもよい。上記インク組成物は、上述したバインダー樹脂をさらに含んでもよい。
上記インク組成物は、基材のうち、少なくとも金属光沢色を発する領域とすべき位置に付与される。
インク組成物の付与方法は特に限定されず、ロールコーターやスピンコーターなどを用いて上記インク組成物を基材の表面に塗布してもよいし、スプレー塗布、浸漬法、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷などの方法で上記インク組成物を基材の表面に付与してもよいし、インクジェット法で上記インク組成物を基材の表面に着弾させてもよい。これらのうち、上記金属光沢色を発する領域がより精細に構成された記録物を形成する観点からは、インクジェット法が好ましい。
インク組成物の付与量は特に限定されないが、金属光沢層の表面の粗面化を抑制して、金属光沢を十分に発現させる観点からは、形成される金属光沢層の膜厚が0.005μm以上10μm以下になる量であることが好ましく、0.01μm以上1.0μm以下になる量であることがより好ましく、0.1μm以上0.5μm以下になる量であることがさらに好ましい。上記膜厚は、インク組成物が含有する上記バインダー樹脂の含有量などをもとに算出することができる。
インクジェット法を用いるとき、上述した高分子分散剤が吸着した金属ナノ粒子、バインダー樹脂および溶媒を含むインクジェットインク組成物をインクジェットヘッドのノズルから吐出して、基材の表面に着弾させればよい。
上記インク組成物の付与後に、上記インク組成物を乾燥させてもよい。このときの乾燥温度は、100℃未満であることが好ましく、80℃未満であることがより好ましい。
なお、光輝性顔料を含有するトナーを用いて金属光沢層を形成すると、トナー粒子が含有する結着樹脂が金属光沢層中に多く含まれることになるため、金属ナノ粒子の量に対する樹脂(バインダー樹脂)の量の比を小さくすることが困難であり、金属光沢層の光輝性を十分に高めることが難しい。
また、光輝性顔料を含有するトナーを用いて金属光沢層を形成すると、トナー粒子が含有する結着樹脂によって金属光沢層の膜厚が10μm以上程度に大きくなるため、金属光沢層の表面が粗面化しやすく、金属光沢層の光輝性を十分に高めることが難しい。
2−1−1.インク組成物
上記インク組成物は、上述した高分子分散剤が吸着した金属ナノ粒子およびバインダー樹脂を含む。
上述した高分子分散剤が吸着した金属ナノ粒子の含有量は、特にインクジェットインク組成物とするときにインクジェットヘッドのノズルからの吐出性を高める観点からは、インク組成物の全質量に対して1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、3質量%以上12.5質量%以下であることがより好ましく、4質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。
上述したバインダー樹脂の含有量(全質量)は、たとえば金属ナノ粒子が銀ナノ粒子であるときは、金属ナノ粒子の全質量に対して1/5以下であることが好ましく、1/7以下であることがより好ましく、1/10以下であることがより好ましい。
上記インク組成物の溶媒は、水でも有機溶媒でもよいが、人体への安全性や処理の容易さから水であることが好ましい。ただし、溶媒として水を用いるときも、粘度調整などのために任意に公知の有機溶媒を含んでいてもよい。有機溶媒の例には、多価アルコール、多価アルコール誘導体、アルコール、アミド、ケトン、ケトアルコール、エーテル、含窒素溶剤、含硫黄溶剤、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、および1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが含まれる。前記多価アルコールの例には、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロプレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、1,5−ペンタンジオール、および1,2,6−ヘキサントリオールなどが含まれる。前記多価アルコール誘導体の例には、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコール−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコール−n−ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコール−n−プロピルエーテル、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコール−n−プロピルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコール−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコール−n−プロピルエーテル、およびトリプロピレングリコール−n−ブチルエーテルなどが含まれる。前記アルコールの例には、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、およびベンジルアルコールなどが含まれる。上記アミドの例には、ジメチルホルムアミド、およびジメチルアセトアミドなどが含まれる。上記ケトンの例には、アセトンなどが含まれる。上記ケトアルコールの例には、ジアセトンアルコールなどが含まれる。上記エーテルの例には、テトラヒドロフラン、およびジオキサンなどが含まれる。上記窒素溶剤の例には、ピロリドン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、およびトリエタノールアミンなどが含まれる。上記含硫黄溶剤の例には、チオジエタノール、チオジグリコール、チオジグリセロール、スルホラン、およびジメチルスルホキシドなどが含まれる。
これらのうち、インクジェットヘッド近傍でのインクの乾燥を防ぎ、インクジェットヘッドからの吐出性を高める観点からは、上記インク組成物は、沸点が150℃以上である有機溶媒を含むことが好ましい。沸点が150℃以上である有機溶媒の例には、グリセリンおよびトリエチレングリコールモノメチルエーテルなどが含まれる。
また、上述した高分子分散剤が吸着した金属ナノ粒子およびバインダー樹脂などの分散性をより高める観点からは、上記有機溶媒は、上記多価アルコール誘導体であることが好ましい。
また、上記インク組成物は、公知の界面活性剤(表面調整剤)を含んでいてもよい。界面活性剤の例には、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類および脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類およびポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類および第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤、ならびにシリコーン系やフッ素系の界面活性剤が含まれる。
シリコーン系の界面活性剤の市販品の例には、KF−351A、KF−352A、KF−642およびX−22−4272、信越化学工業製、BYK307、BYK345、BYK347およびBYK348、ビッグケミー製(「BYK」は同社の登録商標)、ならびにTSF4452、東芝シリコーン社製が含まれる。
界面活性剤の含有量は、たとえば、上記インク組成物の全質量に対して、0.001質量%以上1.0質量%未満とすることができる。
ただし、金属光沢層の反射率をより高める観点からは、上記インク組成物は、実質的に上記高分子分散剤が吸着した金属ナノ粒子、上記バインダー樹脂および溶媒、ならびに任意に必要量の界面活性剤からなることが好ましい。上記高分子分散剤が吸着した金属ナノ粒子、上記バインダー樹脂および溶媒の含有量の合計は、上記インク組成物の全質量に対して90質量%以上100質量%以下であることが好ましく、95質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
上記インク組成物がインクジェット法による画像形成が可能なインクジェットインク組成物であるとき、ノズルからの吐出安定性をより高める観点からは、上記インクジェットインク組成物の粘度は1cP以上100cP未満であることが好ましく、1cP以上50cP以下であることがより好ましく、1cP以上15cP以下であることがさらに好ましい。
2−2.トナー画像の形成
トナー画像は、トナー粒子を用いる通常の画像形成方法と同様に形成することができる。
具体的には、トナー画像は、像保持体の表面を帯電する工程と、帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する工程と、前記静電潜像をトナー粒子でトナー像として現像する工程と、上記トナー像を記録媒体の表面に転写する工程と、熱圧力の印加により上記トナー像を前記記録媒体の表面に定着させる工程と、を含む方法で、形成することができる。
トナー画像は、基材のうち、少なくとも金属光沢層が形成された領域に形成される。これにより、金属光沢層が反射する光のうち、特定の波長の反射が減衰して、積層体はメタリックカラーを呈する。このとき、トナー粒子の量や、トナー粒子が含有する色材の種類を変更することで、色調および階調が変化した記録物を形成することができる。また、トナー画像を、基材のうち、金属光沢層が形成された領域および金属光沢層が形成されない領域の双方に形成することで、金属光沢色を発する領域および金属光沢色を発しない領域の双方を有する記録物を形成することもできる。
2−3.その他の層の形成
上記金属光沢層は、より基材側に形成されたガスバリア層またはプライマー層に接して形成されてもよい。また、上記金属光沢層のより外側に、ガスバリア層または保護層を形成してもよい。また、基材の裏側に、ガスバリア層を形成してもよい。
上記プライマー層は、上述したプライマー層が含む樹脂を含む樹脂組成物を、上記金属光沢層が形成される前の基材に付与して、形成することができる。上記樹脂組成物の付与後に、上記樹脂組成物を加熱などにより乾燥させて上記定着用の樹脂を成膜させてもよい。このときの乾燥温度は、100℃未満であることが好ましい。
また、上記プライマー層は、光重合性官能基を有する光硬化性のモノマーまたはオリゴマーを含む樹脂組成物を、上記金属光沢層が形成される前の基材に付与して、光照射により上記定着用の樹脂を成膜させて、形成することができる。このとき、上記樹脂組成物は、公知の光重合開始剤をさらに含んでいてもよい。
上記ガスバリア層は、上述したガスバリア層が含む樹脂を含む樹脂組成物を、上記金属光沢層を形成する前または後に基材に付与して、形成することができる。上記樹脂組成物の付与後に、上記樹脂組成物を加熱などにより乾燥させて上記定着用の樹脂を成膜させてもよい。このときの乾燥温度は、100℃未満であることが好ましい。
また、上記ガスバリア層は、光重合性官能基を有する光硬化性のモノマーまたはオリゴマーを含む樹脂組成物を、上記金属光沢層を形成する前または後に基材に付与して、光照射により上記樹脂組成物を成膜させて、形成することができる。このとき、上記樹脂組成物は、公知の光重合開始剤をさらに含んでいてもよい。
上記保護層は、上述した保護層が含む樹脂を含む樹脂組成物を、上記金属光沢層が形成された後の基材に付与して、形成することができる。上記樹脂組成物の付与後に、上記樹脂組成物を加熱などにより乾燥させて上記定着用の樹脂を成膜させてもよい。このときの乾燥温度は、100℃未満であることが好ましい。
また、上記保護層は、光重合性官能基を有する光硬化性のモノマーまたはオリゴマーを含む樹脂組成物を、上記金属光沢層が形成される前の基材に付与して、光照射により上記定着用の樹脂を成膜させて、形成することができる。このとき、上記樹脂組成物は、公知の光重合開始剤をさらに含んでいてもよい。
上記各樹脂組成物の付与方法は特に限定されず、ロールコーターやスピンコーターなどを用いて上記樹脂組成物を基材の表面に塗布してもよいし、スプレー塗布、浸漬法、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷などの方法で上記樹脂組成物を基材の表面に付与してもよいし、インクジェット法で上記樹脂組成物の液滴をノズルから吐出して基材の表面に着弾させてもよい。これらのうち、より精細な記録物を形成する観点からは、インクジェット法が好ましい。
上記各樹脂組成物は、これらの樹脂組成物から形成される各層が積層体を構成する順番に沿って、より基材側の層からより外側の層へと順に形成されるように、基材に付与すればよい。ガスバリア層を基材の裏側に形成するときは、上記基材の裏側のガスバリア層は、上記の各層を形成する前に形成してもよいし、上記の各層を形成した後に形成してもよいし、上記の各層を形成する間に(たとえば、基材の金属光沢層にガスバリア層を形成するときに同時に)形成してもよい。
3.積層体の用途
上記積層体は、金属光沢の発現が求められる用途に好ましく用いることができる。たとえば、上記積層体は、記録物に用いることができる。上記記録物は、単一の文字または文字の集合であってもよく、図形、絵、写真などの画像であってもよい。
以下、本発明より具体的に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではない。
1.金属インクの調製
1−1.銀ナノ粒子分散液
1−1−1.原料
以下の原料を用いて、銀ナノ粒子分散液1〜銀ナノ粒子分散液4を調製した。
・硝酸銀(東洋化学工業社製)
・DISPERBYK190(ビックケミー社製)
・ジメチルアミノエタノール(和光純薬社製)
1−1−2.銀ナノ粒子分散液1の作製
平板状の撹拌翼と邪魔板を有する、1Lのセパラブルフラスコに、7.2gのDISPERBYK−190、および252gのイオン交換水を投入し、撹拌を行ってDISPERBYK−190を溶解させた。続いて、上記セパラブルフラスコに、252gのイオン交換水に溶解させた60gの硝酸銀を攪拌しながら投入した。その後、上記セパラブルフラスコをウォーターバスに入れ、溶液の温度が70℃に安定するまで加熱撹拌した。その後、シリンジポンプを使用して、157gのジメチルアミノエタノールを45分掛けてセパラブルフラスコに滴下し、更に70℃に保ちながら1時間攪拌を続け、銀ナノ粒子を含む反応液を得た。
得られた反応液をステンレスカップに入れて、さらに2Lのイオン交換水を加えてから、ポンプを稼働して限外濾過を行った。ステンレスカップ内の溶液が減少したら、再びイオン交換水を入れて、ろ液の伝導度が100μS/cmになるまで精製を繰り返し行った。その後、ろ液を濃縮して、固形分30wt%の銀ナノ粒子分散液1を得た。
なお、限外濾過装置は、限外濾過モジュールAHP1010(旭化成株式会社製、分画分子量:50000、使用膜本数:400本)、チューブポンプ(Masterflex社製)をタイゴンチューブでつないだものを使用した。
得られた溶液中の銀ナノ粒子は、SEMにより粒子径の観察を行い、画像処理ソフトImageJを用いて体積換算で算出したD50で40nmだった。
1−1−3.銀ナノ粒子分散液2の作製
銀ナノ粒子分散液1の作製において、硝酸銀の添加量を65g、ジメチルアミノエタノールの添加に掛けた時間を50分に変更した以外は、同様にして行った。得られた溶液中の銀ナノ粒子は、SEMにより粒子径の観察を行い、画像処理ソフトImageJを用いて体積換算で算出したD50で80nmだった。
1−1−4.銀ナノ粒子分散液3の作製
銀ナノ粒子分散液1の作製において、硝酸銀の添加量を65g、分散剤を6.5g、ジメチルアミノエタノールの添加を50分に変更した以外は、同様にして行った。得られた溶液中の銀ナノ粒子は、SEMにより粒子径の観察を行い、画像処理ソフトImageJを用いて体積換算で算出したD50で150nmだった。
1−1−5.銀ナノ粒子分散液4の作製
銀ナノ粒子分散液1の作製において、硝酸銀の添加量を70g、分散剤を6.7g、ジメチルアミノエタノールの添加を60分に変更した以外は、同様にして行った。得られた溶液中の銀ナノ粒子は、SEMにより粒子径の観察を行い、画像処理ソフトImageJを用いて体積換算で算出したD50で230nmだった。
1−2.金属インク
1−2−1.原料
以下の材料を用いて、金属インク1〜金属インク16を調製した。
(銀ナノ粒子分散液)
Ag−1: 銀ナノ粒子分散液1(固形分濃度:30wt%、平均粒径:40nm)
Ag−2: 銀ナノ粒子分散液2(固形分濃度:30wt%、平均粒径:80nm)
Ag−3: 銀ナノ粒子分散液3(固形分濃度:30wt%、平均粒径:150nm)
Ag−4: 銀ナノ粒子分散液4(固形分濃度:30wt%、平均粒径:230nm)
(アルミニウム粒子分散液)
Al: アルミペースト2173(東洋アルミニウム社製、固形分濃度:65wt%、平均粒径:6μm)
(マイカ粒子)
Mica: MG−2100R(日本光研工業社製、平均粒径:10〜60μm)
(ウレタン樹脂)
PU−1: スーパーフレックス210(第一工業製薬社製、固形分濃度:35.0wt%)
PU−2: F−2170D(第一工業製薬社製、固形分濃度:25.3wt%)
PU−3: スーパーフレックス170(第一工業製薬社製、固形分濃度:33.0wt%)
PU−4: スーパーフレックス650(第一工業製薬社製、固形分濃度:26.0wt%)
(アクリル樹脂)
AR−1: BE−7500(星光PMC社製、固形分濃度:29.8wt%)
AR−2: BE−7650(星光PMC社製、固形分濃度:29.8wt%)
AR−3: M−141(星光PMC社製、固形分濃度:46.0wt%)
(溶媒)
H2O: 水
Gly: グリセリン
TEGME: トリエチレングリコールモノメチルエーテル
(界面活性剤)
BYK−348(ビックケミー社製)
1−2−2.金属インク1〜金属インク16の作製
表1に記載の組成に従い、各成分を混合した後、ADVATEC社製テフロン(「テフロン」はデュポン社の登録商標)3μmメンブランフィルターで濾過し、金属インク1〜金属インク16を調製した。なお、各成分の量は、質量%で示す。
2.積層体の作製
2−1.金属光沢層の作製
金属インク1〜金属インク16を用いて、以下の基材に金属光沢層を形成した。
コート紙:ラミーコーポレーション製、WRG3−36
2−1−1.インクジェット法(金属インク1〜金属インク14、金属インク16)
ピエゾ型インクジェットノズルを有するインクジェット画像形成装置を用いて、上記基材に画像を形成した。上記インクジェット画像形成装置は、インクタンク、インク供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、およびピエゾ型のインクジェットヘッドを、インクが流通する上流側から下流側に向けて、この順で有していた。上記インクジェットヘッドは、液滴量14pl、印字速度0.5m/sec、射出周波数10.5kHzとなる条件で駆動して、金属インク1〜金属インク14および金属インク16の液滴を上記基材に吐出して着弾させた。着弾後、60℃で10分ほど乾燥させて、印字率を10%〜100%に10%おきに変更したベタ画像状の金属光沢層、および太さが異なる線状の金属光沢層を形成した。
なお、金属インク14および金属インク16は、インクジェットヘッドからの安定した吐出ができず、印字率100%の金属光沢層を形成することができなかった。
2−1−1.ワイヤーバー(金属インク15)
金属インク15を上記基材に付与し、ワイヤーバーで引き延ばして、ベタ画像状の金属光沢層を形成した。なお、このとき、印字率を10%おきに変更することはできず、また、線状の金属光沢層を形成することもできなかった。
2−2.トナー画像の作製
基材上に形成した金属光沢層上に、magicolor 1600W(コニカミノルタ社製)を用いて、magicolor 1600W用トナーカートリッジ(YMCK)により、階調が異なる複数の1cm四方の色画像から構成される画像を作製して、画像1〜画像16とした。
3. 評価
以下の基準で、金属インク1〜金属インク16を評価した。
3−1.反射率
金属インク1〜金属インク16から作製した、トナー画像を作製する前の、印字率が100%であるベタ画像状の金属光沢層の、450nm、550nmおよび650nmの反射率を、分光光度計U4100(日立ハイテクノロジー社製)にて測定した。測定された反射率の平均値をもとに、下記基準で反射率を評価した。
〇:反射率は40%以上である
△:反射率は30%以上40%未満である
×:反射率は30%未満である
3−2.画質
画像1〜画像16を作製する際のトナー画像の形成前後における、金属光沢層の変化を目視で観察し、下記基準でトナー画像作成後の画質を評価した。
○:金属光沢層に変化はみられない
△:画像の一部に、金属光沢層の光沢が失われた部分が存在するが、実用上は問題ない
×:画像の広範囲に、金属光沢層の光沢が失われた部分が存在する
3−3.吐出安定性
上記インクジェット画像形成装置のインク供給タンクに金属インク1〜金属インク14および金属インク16のインクを充填して、常温で、液滴量42pl、印字速度0.5m/sec、射出周波数10.5kHz、印字率100%となる条件で、液滴を8時間連続して吐出して基材に着弾させた。
8時間の連続吐出中、基材にドット抜け、飛行曲がりおよびインクの飛散が発生した回数を目視で観察し、その合計回数をもとに、以下の基準でインク組成物の吐出安定性を評価した。
○:ドット抜け、飛行曲がりおよびインクの飛散の回数は20回未満だった
×:ドット抜け、飛行曲がりおよびインクの飛散の回数は20回以上だった
評価の結果を表2に示す。
基材と、金属ナノ粒子を含有する金属光沢層と、トナー画像と、が積層された積層体からなる画像1〜画像13は、反射率および画質が高く、これらの画像を形成するために用いた金属インク1〜金属インク13は、吐出安定性が高かった。
特に、金属ナノ粒子の平均粒子径が200μm以下である画像1〜画像3、画像5〜画像10、画像12および画像13は、反射率がより高かった。これは、金属光沢層の凹凸を小さくして、金属光沢層の表面における光の散乱および拡散を抑制できたためと考えられる。
また、樹脂のガラス転位温度が30℃以上である画像1〜画像6、および画像8〜画像12は、トナー画像の作成により画質(光沢)の低下が小さかった。これは、トナー粒子の熱定着時に樹脂(バインダー樹脂)が崩れにくく、トナー粒子の熱定着による金属光沢層の変形が生じにくかったためと考えられる。
一方で、平均粒子径がマイクロメートルサイズであるアルミニウム粒子またはマイカを顔料として含む金属インク14および金属インク16は、インクジェットヘッドから吐出できなかった。これは、顔料の粒子径がインクジェットヘッドのノズルに比べて大きすぎためと考えられる。
また、平均粒子径がマイクロメートルサイズであるアルミニウム粒子を含む金属インク15を用いてワイヤーバーで金属光沢層を形成し、その上にトナー画像を形成したところ、反射率がさほど高くならなかった。これは、金属光沢層に含まれる樹脂に対してアルミニウム粒子の量が少ないうえ、粒子径の大きいアルミニウム粒子では、金属光沢層の凹凸が大きくなり、拡散反射が増加するため、十分な反射を有する塗膜が形成できなかったと考えられる。また、上記の塗膜ではアルミニウム粒子の含有量が少ないため、透過光を抑制して基材の色味を無視するには、実施例におけるナノ粒子を含む金属光沢層に比べ、非常に厚い膜厚が必要となったためと考えられる。
また、金属ナノ粒子を用いて金属光沢層を形成することで、インクジェット法での金属光沢層の形成が可能となり、印字率(光沢)が異なる部分および細線状の部分などを有する画像も容易に形成することができた。さらに、その上にトナー画像を形成することで、階調が異なる部分などを有する画像も容易に形成することができた。