JP6833567B2 - 防水構造及び防水施工方法 - Google Patents

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本発明は、エレベータの出入口の防水構造及び防水施工方法に関する。
従来、建物の防水性を確保するために、風雨に曝されるベランダや共用廊下等の外部床には防水構造が施されている。例えば、特許文献1には、ベランダやバルコニー等の出入口の下端部に設置して防水構造を形成するための防水部材が開示されている。
特開2015−135007号公報
ところで、共用廊下等の外部床に面したエレベータを備える集合住宅や公共建築物等の建物においては、エレベータの昇降路(昇降空間)内に雨水等が流れ込まないように、エレベータ出入口の前の外部床にも防水構造を施す必要がある。
このようなエレベータ出入口に面した外部床の防水工事は、エレベータの設置前に行う建物の全体的な防水工事(第1期防水工事)とは別に、エレベータ設置工程の後に第2期防水工事として行っている。そして、この第2期防水工事において、例えば、エレベータ出入口の開口枠を設置した後で、当該開口枠における左右の縦枠に対して位置を合わせるように防水層を形成する防水施工方法を行っていた。
ここで、上記のように2回に分けて防水工事を行う場合、第2期防水工事が完了するまでの間は、建物の防水性を完全に確保することができず内部の内装工事が行えないため、早期に第2期防水工事まで完了させたいという要望がある。早期に第2期防水工事まで完了させるためには、エレベータの設置工程を早期に行わなければならなかった。
しかしながら、エレベータの設置工程の実施時期を早めた場合、エレベータの設置前に昇降路に設けられ、資材を搬送可能な仮設リフトの使用期間が短くなってしまい、資材の運搬効率が低下する。その結果、建物の建築工事全体の効率を低下させてしまうという問題がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、外部床に面したエレベータを備える建物の建築工事における施工効率を高めることが可能な防水構造及び防水施工方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の防水構造は、建物のエレベータ出入口に面する外部床の防水構造であって、
前記外部床は、防水性を有する材料からなる防水層を備え、
該防水層が、前記エレベータ出入口の側方に位置する縦枠に平面視で重なるように該縦枠の下方に配置されていることを特徴とする。
なお、本発明の防水構造にあっては、前記防水層が、略平坦な底部と、該底部の外縁部から上方に突出する立上がり部と、を備えることが好ましい。
また、本発明の防水構造にあっては、前記立上がり部が、左右にそれぞれ設けられた側方立上がり部と、左右の該側方立上がり部を連結する中央立上がり部と、を備えることが好ましい。
また、本発明の防水構造にあっては、前記側方立上がり部が、前記縦枠の外側に間隔を空けて配置されていることが好ましい。
また、本発明の防水構造にあっては、前記防水層の底部が、前記縦枠の下端から下方に間隔を空けて形成されていることが好ましい。
また、本発明の防水構造にあっては、前記防水層の上方には、床部材が設けられており、前記縦枠の下端は、前記床部材の上面よりも下方に位置することが好ましい。
また、本発明の防水施工方法にあっては、上記の何れかの防水構造を形成する防水施工方法であって、
建物の躯体を設置する躯体設置工程の後で、エレベータを設置するエレベータ設置工程の前に、前記防水層を形成する防水層形成工程を含むことを特徴とする。
本発明によれば、外部床に面したエレベータを備える建物の建築工事における施工効率を高めることが可能な防水構造及び防水施工方法を提供することができる。
本発明の一実施形態にかかるエレベータ出入口の防水構造を備えた建物の一部を示す平面図である。 図1の建物における、A−A線に沿う断面図である。 図1の建物における、B−B線に沿う断面図である。 図1の建物における、C−C線に沿う断面図である。 図1の建物における、D−D線に沿う断面図である。 図1の建物におけるエレベータ出入口の正面図である。 従来技術におけるエレベータ出入口の防水構造を備えた建物の一部を示す平面図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において共通の構成には、同一の符号を付している。
図1は、本発明の一実施形態の防水構造を設けた建物における2階部分のエレベータ出入口を示す平面図である。また、図2は、図1のA−A線に沿った断面図であり、図3は、図1のB−B線に沿った断面図であり、図4は、図1のC−C線に沿った断面図であり、図5は、図1のD−D線に沿った断面図である。本実施形態における建物は、複数階を有するとともに各階に複数の住戸が設けられた集合住宅であり、角形鋼管からなる柱とH形鋼からなる梁で軸組みが構成された鉄骨造建物である。外壁及び床にはそれぞれ軽量気泡コンクリート(ALC)からなるパネル材が使用されている。
図1に示すように、エレベータ出入口1は、共用廊下である外部床2に面して設けられており、エレベータ出入口1の奥側はエレベータの昇降路3となっている。外部床2の周縁部の一部には腰壁が設けられており、外部床2は、外部空間と連なる屋根付空間の床である。エレベータ出入口1には、エレベータへの乗降時に開閉する乗降用扉4が配置されている。乗降用扉4は、住戸部の出入口用扉が設けられた共用廊下側の壁面5よりも、屋内側(昇降路3側)に後退した位置に設けられており、乗降用扉4の前には、壁面5から窪んだアルコーブ空間が形成されている。なお、図1に示す符号6は、ALCパネルからなる外壁パネル6である。
また、エレベータ出入口1の下部には、下枠7が配置されている。エレベータ出入口1の側方には、鉛直方向(上下方向)に延在する縦枠8が配置されている。本実施形態において縦枠8は、エレベータ出入口1の左右両側に配置されている。下枠7及び縦枠8は、例えば鋼板等の金属板を折り曲げて形成した枠体とすることができる。図1に示すように、縦枠8は、平面視で下枠7に対して直交するように配置されている。また、縦枠8は、乗降用扉4の前のアルコーブ空間の左右両側に配置されており、当該アルコーブ空間を区画形成している。縦枠8は、防水層12から独立しており、防水層12から独立した施工が可能となっている。なお、縦枠8の上端部には上枠11が連結されている(図6参照)。
本実施形態の防水構造は、エレベータ出入口1に面した外部床2に形成されており、防水性を有する材料からなる防水層12を備えている。防水層12は、平面視で縦枠8に重なるように、縦枠8の下方に配置されている。防水層12は、外部床2に流れ込んだ雨水等が、昇降路3を含めた建物の内部に流入しないようにする形状を有する構成である。すなわち、従来のように縦枠に対して防水層の立上がり部を位置合わせするのではなく、縦枠8の下方に位置するように防水層12を設けることにより、エレベータを設置するエレベータ設置工程の前から、エレベータ出入口1に面した外部床2の防水性を確保することが可能となる。
本実施形態における防水層12は、略平坦な底部13と、底部13の外縁部から上方に突出する立上がり部14と、を備えている。立上がり部14を設けることにより水をせき止め、屋内側への水の流入を確実に防止することができる。なお、底部13は完全に平坦な形状に限られず、凹凸を有していてもよい。また、底部13は完全に水平に配置される必要はなく、所定方向に排水し易いように水平面に対して傾斜して配置することができる。また、立上がり部14は鉛直方向に延在している場合に限らず、鉛直方向に対して傾斜していてもよい。本実施形態では、底部13に相当する平坦部と、立上がり部14に相当する立設部を備え、曲げ加工等により形成された金属製の板材としての防水鋼板と、防水鋼板の形状に沿って、表面に貼り付けられた防水シートと、により防水層12を形成している。すなわち本実施形態では、所謂「シート防水工法」により防水層12を形成している。防水シートは、軟質の合成樹脂を主材料とするシート状の部材とすることができるが、これに限らず、金属製のシートや樹脂と金属の複合材料からなるシート部材であってもよい。
なお、防水層12は、防水性を有していれば特に材料は限定されず、例えば、防水鋼板と防水シートの役割を兼ねるような適度な剛性を持った樹脂製の防水部材を用いてもよい。あるいは、底部13に相当する構成を、防水性を有する床パネル等の水平部材で構成したり、立上がり部14に相当する構成を、建物の壁面で構成したりすることも可能である。すなわち、底部13に対応する防水性を有する床パネル等の水平部材の周縁部を、防水性を有する外壁パネル等の鉛直な壁面に近接配置して、当該壁面と平坦な水平部材との相互間に形成される隙間を液密にシーリングすることで、底部と立上がり部を備えた防水層を構成することも可能である。
本実施形態において立上がり部14は、左右にそれぞれ設けられた側方立上がり部14aと、左右の側方立上がり部14aを連結する昇降路3側の中央立上がり部14b(図4、5参照)と、を備えている。
本実施形態において、防水層12の側方立上がり部14aが、縦枠8よりもエレベータ出入口1の幅方向における外側に配置されている。すなわち、左右両側の縦枠8は、側方立上がり部14aよりもエレベータ出入口1の幅方向内側に配置されていることとなる。側方立上がり部14aは、縦枠8から水平方向に間隔を空けた位置に配置され、外壁パネル6に対して位置合わせされている。なお、防水層12の何れか一部で躯体やパネル部材等に位置決め保持されている場合には、立上がり部14は外壁パネル6から離れた位置にあってもよい。
図2に示すように、防水層12は、ALCパネルからなる床パネル15の上方に形成されている。縦枠8は、防水層12の底部13の上面から間隔を空けて配置されている。
図2〜5に示すように、外部床2は、防水層12の底部13と立上がり部14によって区画される範囲に充填された床部材としてのモルタル17と、モルタル17の上部に配置された床仕上げ材としてのタイル18とを備えている。なお、モルタル17やタイル18に限らず、床面を形成可能な他の床部材を用いることも可能である。図2、3に示すように、縦枠8の下端8aは、床仕上げ面FL(床部材の上面)よりも低い高さになるように配置されている。すなわち、縦枠8の下端8aは外部床2の内部に埋まっており、外部から視認されない状態となり、縦枠8の下端8aと防水層12の底部13との間の隙間がモルタル17によって塞がれることとなる。床仕上げ面FLは、下枠7の上面及び後述するカバー部材22の上面と略同一の高さとすることが好ましい。これによれば、エレベータ出入口1に段差をなくし、使用者の転倒等を防止すると共にバリアフリー化を図ることができる。
図4に示すように、防水層12の下方には、床パネル15、及び梁20にボルト結合された金属製のモルタル受け部材21が設けられている。また、防水層12の中央立上がり部14bの上端から水平方向に延びるフランジ部14cの上方には、断面略コ字状の金属製のカバー部材22が設けられている。カバー部材22と下枠7との隙間にはシーリング25が施されている。なお、エレベータ出入口1の下枠7の上面は、防水層12の立上がり部14の上端よりも上方に位置している。図5に示すD−D断面においては、後述する後退壁部23と防水層12のフランジ部14cとの隙間にシーリング25が施されている。
図6は、エレベータ出入口1を屋外側(外部床2側)から見た正面図である。エレベータ出入口1の左右(エレベータ出入口1の幅方向)の一方側(本例では、図6における右側)には、後退壁部23が設けられている。後退壁部23には、エレベータが位置する階数及び移動方向等を表示する表示部24、並びに、押しボタン等が設けられる。
以下に、本発明の防水施工方法の一例について説明する。躯体設置工程において、柱や梁等の躯体を設置する。外部床2となる部分においては、躯体に対して床パネル15を配置する。また、図4に示す梁20に対してモルタル受け部材21を固定し、そのモルタル受け部材21の上方において防水層12の下面のレベルまでモルタルを充填する。その後、建物の防水工事に合わせて、防水層形成工程として、床パネル15及びモルタル受け部材21の上方に防水層12を形成する。これにより、建物の防水工事が1回で完了することとなる。この時点で、エレベータの設置工程は行われていない。エレベータを設置する前の昇降路3には、資材搬送用の仮設リフトを設置することができるため、資材の搬送効率を高め、工事全体の効率も高めることができる。その後、適切なタイミングでエレベータの下枠7、縦枠8、上枠11の設置工事を含めたエレベータ設置工程を行う。下枠7を設置した後で、防水層12のフランジ部14cの上方にカバー部材22を配置し、シーリング処理を行う。その後、防水層12により形成された凹部にモルタル17を充填し、タイル18を設置する。
ここで、例えば図7に示すように、従来の防水施工方法では、エレベータ設置工程を行った後で、エレベータ出入口1’の左右の縦枠8’に対して防水層の側方立上がり部14a’(立上がり部14’)を位置合わせするようにして防水構造を形成しており、そのために、エレベータの縦枠8’を設置した後で出入口1’の防水工事を行う必要があった。一方、本実施形態の防水構造にあっては、エレベータの縦枠8から独立して防水層12を形成する構成としたため、立上がり部14を縦枠8に対して位置合わせする必要がない。そのため、エレベータ設置工程の前に、エレベータ出入口1に面した外部床2の防水工事を完了することができ、建物の防水工事を2期に分ける必要がなくなる。また、エレベータ設置工程を早期に行う必要がなくなるため、エレベータ設置工程を従来よりも後半に行うことができる。これにより、エレベータの昇降路3に設置される資材搬送用の仮設リフトを長期にわたって使用することができる。その結果、資材の運搬効率を高めることができるとともに、作業者が階段等で資材を運搬する場合に比べて安全性も高めることが可能となる。
本発明に係る防水構造は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲で記載された内容を逸脱しない範囲で、様々な構成により実現することが可能である。例えば、本発明の防水構造を適用可能な建物は、集合住宅に限定されるものではなく、外部床に面したエレベータを備えていれば公共建築物等の種々の建物に採用可能である。また、エレベータ出入口に面した外部床であれば、例えば1階及び屋上階を含めた何れの階層でも適用可能である。また、防水層12は、金属製の板材と、金属製の板材の形状に沿って表面に貼り付けられた防水シートとで形成されるものに限らず、防水シートのみで形成されるものであってもよいし、金属製の板材のみで形成されるものであってもよい。あるいは、防水シートのみの部分と、金属製の板材のみの部分と、金属製の板材の表面に防水シートが貼り付けられた部分とを組み合わせた構成としてもよい。
1 エレベータ出入口
2 外部床
3 昇降路
4 乗降用扉
5 壁面
6 外壁パネル
7 下枠
8 縦枠
8a 縦枠の下端
9 連結用部材
10 枠固定用の柱
11 上枠
12 防水層
13 底部
14 立上がり部
14a 側方立上がり部
14b 中央立上がり部
14c フランジ部
15 床パネル
17 モルタル(床部材)
18 タイル
20 梁
21 モルタル受け部材
22 カバー部材
23 後退壁部
24 表示部
25 シーリング

Claims (4)

  1. 建物のエレベータ出入口に面する外部床の防水構造であって、
    前記外部床は、防水性を有する材料からなる防水層を備え、
    該防水層が、前記エレベータ出入口の側方に位置する縦枠に平面視で重なるように該縦枠の下方に配置され
    前記防水層は、略平坦な底部と、該底部の外縁部から上方に突出する立上がり部と、を備え、
    前記立上がり部は、左右にそれぞれ設けられた側方立上がり部と、左右の該側方立上がり部をエレベータの昇降路側で連結する中央立上がり部と、を備え、
    前記側方立上がり部が、前記縦枠の外側に間隔を空けて配置されている、防水構造。
  2. 前記防水層の底部は、前記縦枠の下端から下方に間隔を空けて形成されている、請求項に記載の防水構造。
  3. 前記防水層の上方には、床部材が設けられており、前記縦枠の下端は、前記床部材の上面よりも下方に位置する、請求項1又は2に記載の防水構造。
  4. 請求項1〜の何れかに記載の防水構造を形成する防水施工方法であって、
    建物の躯体を設置する躯体設置工程の後で、エレベータを設置するエレベータ設置工程の前に、前記防水層を形成する防水層形成工程を含む、防水施工方法。
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