一般に、直列共振負荷に接続する電源装置として、インバータ装置が知られている。なお、直列共振負荷としては、例えば、誘導加熱用の加熱コイルと共振コンデンサとを直列接続して構成される直列共振回路である誘導加熱回路などが挙げられる。
従来、こうしたインバータ装置においては、インバータ回路を有するインバータ部を制御するインバータ制御部として、位相同期(PLL:Phase Locked Loop)回路により構成されるインバータ制御部が用いられており、このインバータ制御部によりインバータ部が制御されていた。
ここで、図1(a)(b)を参照しながら、PLL回路を用いたインバータ制御部により制御される従来より公知のインバータ装置について説明する。
なお、図1(a)には、PLL回路を用いたインバータ制御部により制御されるとともに直列共振負荷に接続されたインバータ装置の全体の構成をあらわす構成説明図が示されている。
また、図1(b)には、図1(a)に示すインバータ装置におけるインバータ制御部の詳細な構成説明図があらわされている。
図1(a)に示すように、インバータ装置100は、交流(AC)電源102から供給される交流電圧を所望の電圧の高周波交流電圧に変換して、誘導加熱回路などのような直列共振負荷200へ供給するものである。
なお、交流電源102としては、例えば、商用交流電源を用いることができ、その場合には、インバータ装置100は、商用交流電圧を高周波交流電圧に変換して直列共振負荷200へ供給する。
より詳細には、インバータ装置100は、交流電源102から供給される交流電圧を入力して直流(DC)電圧に変換して出力するコンバータ回路を有するコンバータ部104と、コンバータ部104から出力された直流電圧を入力して高周波交流電圧に逆変換して出力するインバータ回路を有するインバータ部106と、インバータ部106からの出力(ここで、インバータ部106からの「出力」とは、インバータ部106から出力される電圧たる「出力電圧Vh」、または、インバータ部106から出力される電流たる「出力電流Ih」、または、インバータ部106から出力される電力たる「出力電力」である。)を検出してその検出結果を出力センサー信号として出力する出力センサー108と、外部からインバータ部106の出力を設定する信号たる出力設定信号と出力センサー108から出力された出力センサー信号とに基づいてコンバータ部104が変換する直流電圧をフィードバック制御するコンバータ制御部110と、出力センサー108から出力された出力センサー信号に基づいてインバータ部106の動作をフィードバック制御するPLL回路112a(図1(b)を参照する。)を有するインバータ制御部112とを有して構成されている。
ここで、コンバータ部104のコンバータ回路は、例えば、サイリスタ整流回路やチョッパ回路などにより構成されている。こうしたコンバータ部104は、交流(AC)電源102から交流電圧を供給されると、コンバータ制御部110から出力された信号に応じて交流電圧を直流電圧に変換する制御を行う。
また、インバータ部106は、例えば、トランジスタにより構成されるインバータ回路を備えている。こうしたインバータ部106は、コンバータ部104から出力された直流電圧を入力して、入力した直流電圧をトランジスタのON(オン)/OFF(オフ)のスイッチング動作により高周波交流電圧に逆変換して出力する制御を行う。
インバータ部106の出力段に設けられた出力センサー108は、図1に示す例においては、出力電圧Vhまたは出力電流Ihを検出して、その検出結果を出力センサー信号としてコンバータ制御部110とインバータ制御部112とに出力する。
これにより、インバータ装置100においては、インバータ部106の出力(電流または電圧)が出力設定信号が示す設定レベルとなるように、コンバータ部104の出力直流電圧値が可変制御される。
また、上記したように、インバータ制御部112はPLL回路112aを備えており、PLL回路112aによりインバータ部106の出力を直列共振負荷200の共振周波数に自動制御する。
ここで、図1(b)には、インバータ制御部112の詳細な構成が示されている。インバータ制御部112においては、PLL回路112aに入力された出力センサー信号に応じて、PLL回路112aがインバータ部106を駆動するインバータ駆動信号である矩形波インバータ駆動信号Q、NQを出力する。
なお、本明細書および本特許請求の範囲においては、「矩形波インバータ駆動信号Q、NQ」について、単に「インバータ駆動信号」と適宜に称する。
以上の構成において、インバータ装置100においては、商用交流電源などの交流電源102から、交流電圧がコンバータ部104に入力される。
交流電源102から交流電圧を入力されたコンバータ部104は、コンバータ制御部110からの制御信号により直流電圧を可変制御して、インバータ部106へ出力する。
インバータ部106は、コンバータ部104から出力されて入力した直流電圧を、インバータ回路を構成するトランジスタのON(オン)/OFF(オフ)のスイッチング動作により高周波電圧に変換して出力する。
インバータ装置100におけるインバータ部106の出力段には、上記したように出力センサー108が設けられており、出力センサー108はインバータ部106からの出力(出力電圧Vhまたは出力電流Ihまたは出力電力である。)を検出して、その検出結果を出力センサー信号としてコンバータ制御部110とインバータ制御部112とへ出力する。
コンバータ制御部110は、インバータ部106の出力を出力設定信号により指示された設定レベルにするように、コンバータ部104の出力である直流電圧値を可変する制御を行う。
ここで、インバータ制御部112は、PLL回路112aにより、インバータ部106の出力の周波数が直列共振負荷200の共振周波数となるように自動制御する。
ところで、直列共振負荷に接続するインバータ装置においては、高周波電圧と高周波電流との位相制御を用いた出力制御回路に関して、上記した従来のインバータ装置100において示した構成の他にいくつかの手法が用いられている。
しかしながら、従来より用いられているいずれの手法においても、出力制御を行うとインバータ部の出力の周波数が直列共振負荷の共振周波数からずれていく特性となり、実用上の課題となっていたという問題点があった。
一方、低電力機器に用いるインバータ装置においては、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)制御方式による出力制御も用いられている。
ここで、図2には、PWM制御方式により出力制御が行われるとともに直列共振負荷に接続されたインバータ装置の全体の構成をあらわす構成説明図が示されている。
なお、以下の説明においては、図1(a)(b)を参照しながら説明した構成ならびに作用と同一あるいは相当する構成ならびに作用については、図1(a)(b)において用いた符号と同一の符号をそれぞれ付して示すことにより、その詳細な構成ならびに作用の説明は省略する。
図2に示すように、インバータ装置300は、交流電源102から供給される交流電圧を所望の電圧の高周波交流電圧に変換して、誘導加熱回路などのような直列共振負荷200へ供給するものである。
なお、交流電源102としては、上記したインバータ装置100と同様に、例えば、商用交流電源を用いることができ、その場合には、インバータ装置10は、商用交流電圧を高周波交流電圧に変換して直列共振負荷200へ供給する。
より詳細には、インバータ装置300は、交流電源102から供給される交流電圧を入力してダイオードによる整流により直流電圧に変換して出力するコンバータ部302と、コンバータ部302から出力された直流電圧を入力して高周波交流電圧に逆変換して出力するインバータ回路を有するインバータ部106と、インバータ部106からの出力(ここで、インバータ部106からの「出力」とは、インバータ部106から出力される電流たる「出力電流Ih」、または、インバータ部106から出力される電力たる「出力電力」である。)を検出してその検出結果を出力センサー信号として出力する出力センサー108と、外部からインバータ部106の出力を設定する信号たる出力設定信号と出力センサー108から出力された出力センサー信号とに基づいてインバータ部106をフィードバック制御するPWM制御部304とを有して構成されている。
以上の構成において、図3(a)(b)(c)に模式的に示す波形図を参照しながら、インバータ装置300の動作について説明する。
ここで、図3(a)(b)(c)において、
波形A:インバータ部106の出力(出力電流Ih)
波形B:インバータ部106の出力(出力電流Ih)
波形C:インバータ部106の出力(出力電流Ih)
T:インバータ部106の出力(出力電圧Vhまたは出力電流Ih)の基本波成分の1周期
T/4:インバータ部106の出力(出力電圧Vhまたは出力電流Ih)の基本波成分の1/4周期
tw:インバータ駆動信号のパルス幅
である。
インバータ装置300においては、PWM制御部304のPWM制御により駆動開始時(スタート時)はパルス幅twの狭いインバータ駆動信号(矩形波インバータ駆動信号Q、NQ)により共振周波数近傍で駆動させ(図3(a))、インバータ部106の出力を可変制御するにはPWM制御部304のPWM制御によりパルス幅twを可変させて、インバータ部106の出力を可変制御する。
例えば、インバータ部106の出力を上昇するには、図3(b)ならびに図3(c)に示すように、PWM制御部304のPWM制御によりパルス幅twを広げることになる。
即ち、従来のインバータ装置300においては、PWM制御部304のPWM制御により、スタート時からPLL回路などを用いて直列共振負荷200の共振周波数近傍で駆動を制御され、その周波数帯でPWM制御を行っていた。
このため、従来のインバータ装置300は、共振周波数が変動する直列共振負荷200への追尾特性に劣るという問題点があった。
また、出力電流Ihの波形Aならびに波形Bのように、インバータ駆動信号のパルス幅twが狭い場合には、サイン波形が崩れて正確なゼロクロス点の検出ができなくなるという問題点があった。
なお、本願出願人が特許出願のときに知っている先行技術は、文献公知発明に係る発明ではないため、本願明細書に記載すべき先行技術文献情報はない。
以下、添付の図面を参照しながら、本発明によるインバータ装置およびインバータ装置の制御方法の実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
なお、以下の「発明を実施するための形態」の項の説明においては、図1(a)(b)、図2ならびに図3(a)(b)(c)の各図を参照しながら説明した構成ならびに作用、あるいは、図4以下の各図を参照しながら説明する構成ならびに作用と同一あるいは相当する構成ならびに作用については、図1(a)(b)、図2ならびに図3(a)(b)(c)あるいは図4以下において用いた符号と同一の符号をそれぞれ付して示すことにより、その詳細な構成ならびに作用の説明は省略する。
(I)本発明の第1の実施の形態
(I−1)構成
図4には、本発明の実施の形態の一例によるインバータ装置(第1の実施の形態)の構成説明図があらわされている。なお、図4には、制御部により制御されるとともに直列共振負荷に接続されたインバータ装置の全体の構成があらわされている。
また、図5には、図4に示すインバータ装置における制御部の詳細な構成説明図があらわされている。
これら図4ならびに図5を参照しながら、本発明の第1の実施の形態によるインバータ装置について説明する。
本発明の第1の実施の形態によるインバータ装置10は、直列共振負荷200に接続するPWM制御の電圧形インバータである。
直列共振負荷200は、共振コンデンサ202と直列共振インダクタ204とを直列接続することにより構成されている。
なお、共振コンデンサ202はインバータ装置10の内部側に位置し、一方、直列共振インダクタ204はインバータ装置10の外部側に位置している。
インバータ装置10は、インバータ部106における電圧型インバータ回路のPWM制御により、交流電源102から供給される交流電圧を所望の電圧の高周波交流電圧に変換して可変パルス幅で出力し、共振コンデンサ202を通して直列共振インダクタ204へ出力することにより、誘導加熱回路などのような直列共振負荷200へ高周波交流電圧を供給するものである。
なお、交流電源102としては、従来のインバータ装置100と同様に、例えば、商用交流電源を用いることができ、その場合には、インバータ装置10は、商用交流電圧を高周波交流電圧に変換して直列共振負荷200へ供給する。
一般に、商用交流電源として用いられる電源としては、単相交流電源または3相交流電源がある。
より詳細には、インバータ装置10は、交流電源102から供給される交流電圧を入力してダイオードによる整流により直流電圧に変換して出力するコンバータ部302を備えている。
即ち、インバータ装置10のコンバータ部302は、コンバータ制御部を使用しないダイオード整流回路で構成されており、交流電源102から交流電圧が入力され、入力された交流電圧を直流電圧に変換してインバータ部106へ出力する。
インバータ部106は、コンバータ部302から出力された直流電圧を入力して高周波交流電圧に逆変換して出力する。
インバータ装置10は、インバータ部106の動作を制御する制御手段として制御部12を備えている。
図5に示すように、制御部12は、PWM制御部12aと、PWM制御部12aを制御する周波数シフト制御部12bとを有して構成されている。
インバータ部106の出力段には、インバータ部106から出力される電流たる出力電流を検出して、その検出結果を電流レベル信号として制御部12のPWM制御部12aへ出力する電流センサー14が設けられている。
また、直列共振負荷200の共振コンデンサ202には、共振コンデンサ202における電圧の位相を検出して、その検出結果を共振コンデンサ電圧位相信号として制御部12の周波数シフト制御部12bへ出力する電圧センサー16が設けられている。
制御部12は、外部からインバータ部106の出力を設定する信号たる出力設定信号と、電流センサー14から出力された電流レベル信号と、電圧センサー16から出力された共振コンデンサ電圧位相信号とに基づいて、インバータ部106をフィードバック制御するものである。
即ち、制御部12は、インバータ部106からの出力が出力設定信号の示す出力設定値となるように、周波数シフト制御部12bによる制御を受けるPWM制御部12aのPWM制御によって、インバータ部106を構成する電圧型インバータ回路のトランジスタを駆動するインバータ駆動信号たる矩形波インバータ駆動信号Q、NQのパルス幅を可変して、インバータ部106で変換される高周波交流電圧の出力を可変する。
なお、インバータ部106からの出力は、電流センサー14を介して直列共振負荷200に入力される。
(I−2)動作
以上の構成において、インバータ装置10の制御部12は、本発明の実施の関連する動作として、以下に説明する動作を行う。
即ち、インバータ装置10からの出力を開始する駆動開始時(スタート時)は、直列共振負荷200の共振周波数の周期より十分に短いパルス幅、例えば、外部からの出力設定信号が示す設定値の最低設定出力値(出力電圧または出力電流または出力電力である。)となるパルス幅(本明細書および本特許請求においては、「外部からの出力設定信号が示す設定値の最低設定出力値となるパルス幅」を「最低パルス幅」と適宜に称する。)であって、かつ、直列共振負荷200の共振周波数より十分に離れた周波数を起点とした矩形波インバータ駆動信号Q、NQにより駆動開始(スタート)させる。
また、周波数シフト制御部12bには、電圧センサー16から出力された共振コンデンサ電圧位相信号が入力されている。
従って、直列共振負荷200の共振周波数が変動しても、駆動開始時(スタート時)から制御部12の周波数シフト制御部12bは、共振コンデンサ電圧位相信号に基づいて矩形波インバータ駆動信号Q、NQの周波数を共振周波数へシフトする周波数シフトを行い、変動する直列共振負荷200の共振周波数への自動追尾が可能になる。
そして、インバータ装置10においては、制御部12のPWM制御部12aが、矩形波インバータ駆動信号Q、NQの周波数が直列共振負荷200の共振周波数(共振点)または共振周波数近傍になった後に、外部からの出力設定信号が示す設定値の出力になるように、PWM制御により矩形波インバータ駆動信号Q、NQのパルス幅を広げる。
即ち、インバータ装置10は、インバータ駆動信号である矩形波インバータ駆動信号Q、NQとして、外部からの出力設定信号が示す設定値の最低設定出力値(出力電圧または出力電流または出力電力である。)を出力するとともに直列共振負荷200の共振周波数の周期より十分に短いパルス幅(例えば、上記した最低パルス幅である。)のパルス信号(狭幅パルス信号)を用い、その狭幅パルス信号を直列共振負荷200の共振周波数より十分に離れた周波数を起点にスタートさせてから、共振コンデンサ電圧位相信号を用いて共振周波数または共振周波数近傍まで周波数をシフトさせた後に、周波数制御により直列共振負荷200の略共振周波数に制御する。
その後に、インバータ装置10は、PWM制御により狭幅パルス信号のパルス幅を広くして、外部からの出力設定信号が示す設定値の出力(出力電圧または出力電流または出力電力である。)になるようにする。
(I−3)作用効果
従って、上記において説明したインバータ装置10によれば、出力電流のゼロクロス点検出を正確にするとともに、出力制御を行ってもインバータ部の出力の周波数が直列共振負荷200の共振周波数からずれることがなく、また、共振周波数が変動する直列共振負荷200への追尾特性を改善することができる。
また、上記において説明したインバータ装置10においては、インバータ部106において出力制御ができるため、従来の技術のようにコンバータ部のコンバータ回路としてサイリスタ整流回路やチョッパ回路を使用することがない。
このため、インバータ装置10は、サイリスタ整流回路やチョッパ回路を使用する従来の技術と比較すると、電源力率の改善、出力応答速度の大幅な改善(本願発明者の実験によれば、応答速度は、従来の技術における100msから10msに大幅に改善された。)、部品点数の大幅削減によるコスト低減ならびに信頼性向上を図ることができるようになる。
また、インバータ装置10は、インバータ駆動信号の駆動開始時(スタート時)の周波数たるスタート周波数を直列共振負荷200の共振周波数より十分に離れた周波数とし、それからインバータ駆動信号の周波数を直列共振負荷200の共振周波数に近づけるように周波数シフトさせるため、共振周波数が変動する直列共振負荷200への追尾特性が大幅に改善され、また、共振周波数の異なる複数の直列共振負荷200を切り替えて接続する場合にも問題なく対応することができる。
ここで、周波数シフト制御部12bにより周波数シフトする領域(周波数シフト領域)は、インバータ回路に最適なダイオード逆回復特性を考慮した誘導性領域に決定することが好ましい。
換言すれば、スタート周波数は、周波数シフト領域がインバータ回路のダイオード逆回復特性に基づく誘導性領域となるように決定することが好ましい。
本願発明者による実験によれば、インバータ駆動信号の駆動開始時(スタート時)の周波数たるスタート周波数としては、直列共振負荷200の共振周波数の周波数に対して5%以上離れた周波数(例えば、直列共振負荷200の共振周波数が20kHzであるとすると、直列共振負荷200の共振周波数の周波数に対して5%以上離れた周波数は19kHz以下の周波数または21kHz以上の周波数となる。)とすると良好な結果が得られた。
なお、スタート周波数を直列共振負荷200の共振周波数の周波数に対して5%以上離れた周波数とする際、即ち、スタート周波数を直列共振負荷200の共振周波数の周波数から5%以上離す際には、直列共振負荷200の共振周波数の低域側(直列共振負荷200の共振周波数よりも低い周波数方向)に離してもよいし(例えば、直列共振負荷200の共振周波数が20kHzであるとすると、直列共振負荷200の共振周波数の低域側に5%以上離れた周波数は19kHz以下の周波数となる。)、あるいは、直列共振負荷200の共振周波数の高域側(直列共振負荷200の共振周波数よりも高い周波数方向)に離してもよい(例えば、直列共振負荷200の共振周波数が20kHzであるとすると、直列共振負荷200の共振周波数の高域側に5%以上離れた周波数は21kHz以上の周波数となる。)。
なお、本願発明者の知見によれば、上記した本発明によるインバータ装置10のように、スタート周波数を直列共振負荷200の共振周波数の周波数から離すようにして(例えば、直列共振負荷200の共振周波数の周波数に対して5%以上離すようにする。)、当該スタート周波数から狭幅パルス信号によりインバータ部106の駆動を開始した後に、当該狭幅パルス信号を直列共振負荷200の共振周波数へ周波数シフトさせ、その後に直列共振負荷200の共振周波数で狭幅パルス信号のパルス幅を広げるPWM制御を開始させるような従来の技術は存在しない。
(II)本発明の第2の実施の形態
次に、本発明の第2の実施の形態によるインバータ装置およびインバータ装置の制御方法について説明する。
この本発明の第2の実施の形態によるインバータ装置およびインバータ装置の制御方法は、上記において説明した本発明の第1の実施の形態によるインバータ装置およびインバータ装置の制御方法とは、周波数シフト制御部12bによる周波数シフトの制御の手法が異なる。
即ち、本発明の第2の実施の形態によるインバータ装置は、構成要素としては本発明の第1の実施の形態によるインバータ装置10と同様な構成を備えているため、以下の説明においては、本発明の第1の実施の形態によるインバータ装置10とは異なる点についてのみ説明する。
本発明の第2の実施の形態によるインバータ装置およびインバータ装置の制御方法は、インバータ駆動信号の駆動開始時(スタート時)の周波数たるスタート周波数を、直列共振負荷200の共振周波数の高域側(直列共振負荷200の共振周波数よりも高い周波数方向)に離すようにしたものである(例えば、直列共振負荷200の共振周波数が20kHzであるとすると、直列共振負荷200の共振周波数の高域側に5%以上離れた周波数は21kHz以上の周波数となる。)。
つまり、直列共振負荷200を構成する直列共振回路においては、直列共振回路の共振周波数より周波数が高い範囲では誘導性になる特性がある。
一方、インバータ部106を構成する電圧型インバータ回路は、インバータ素子に並列に接続されているダイオードの電流の逆回復特性により、誘導性でのスイッチング動作は容量性でのスイッチング動作と比較するとより安定している。
従って、第2の実施の形態によるインバータ装置およびインバータ装置の制御方法においては、直列共振負荷200を構成する直列共振回路の共振周波数より高い周波数(例えば、5%以上高い周波数である。)をスタート周波数として周波数シフトさせて周波数を降下させて、直列共振負荷200を構成する直列共振回路の共振周波数でロック(固定)するようにした。
(III)本発明の第3の実施の形態
(III−1)構成
図6には、本発明の実施の形態の一例によるインバータ装置(第3の実施の形態)の構成説明図があらわされている。なお、図6には、制御部により制御されるとともに直列共振負荷に接続されたインバータ装置の全体の構成があらわされている。
図6を参照しながら、本発明の第3の実施の形態によるインバータ装置について説明すると、本発明の第3の実施の形態によるインバータ装置20は、直列共振負荷200に接続されている。
ところで、直列共振負荷200では、直列共振負荷200を構成する直列共振回路の共振周波数より周波数が高い範囲では誘導性になる特性があり、一方、インバータ部106たる電圧型インバータは、インバータ素子に並列に接続されているダイオードの電流の逆回復特性より、誘導性でのスイッチング動作は容量性に比較して安定なことが分かっている。
従って、本発明の第3の実施の形態によるインバータ装置20は、直列共振回路200の共振周波数よりも高い周波数(例えば、直列共振回路200の共振周波数より5%以上高い周波数である。)をインバータ駆動信号のスタート周波数とし、このスタート周波数から周波数シフトさせてインバータ駆動信号の周波数を直列共振回路200の共振周波数まで下降し、直列共振回路200の共振周波数でインバータ駆動信号の周波数をロックさせるようにしている。
以下に、インバータ装置20について説明すると、符号22は、インバータ部106を構成する電圧型インバータ回路のトランジスタを駆動するインバータ駆動信号たる矩形波インバータ駆動信号Q、NQのパルス幅を可変制御して、インバータ部106へ出力する制御部である。
制御部22は、周波数シフト回路30と、電圧制御発振器(VCO:Voltage−controlled oscillator)回路32と、狭幅パルス信号発生回路34と、出力回路36と、位相比較回路38と、遅れ補正回路40と、ロック完了回路42と、検波回路44と、誤差アンプ・フィルタ46と、三角波発生回路48と、PWM回路50とを有して構成されている。
ここで、遅れ補正回路40は、その構成要素としてT/2遅れ補正回路40aを有して構成されている。
なお、後において詳述するように、「T/2」は「インバータ部106の出力電圧の基本波成分の1/2周期」を意味する。この本発明の第3の実施の形態によるインバータ装置20においては、より具体的には、電圧センサー16から出力された共振コンデンサ電圧波形の1/2周期」を意味する。
インバータ装置20は、本発明の実施に関連して制御部22が、周波数シフト回路30を備えていてインバータ駆動信号の周波数を周波数シフトする点と信号切換の点、ならびに、T/2遅れ補正回路40aを有して構成される遅れ補正回路40を備えている点を除いて、従来より公知のインバータ装置の技術を適用することができるので、インバータ駆動信号の周波数を周波数シフトする点と信号切換の点ならびに遅れ補正の点を除く他の構成に関する詳細な説明は省略する。
(III−2)動作
以上の構成において、インバータ装置20の動作について、本発明の実施に関連する制御部22の動作を中心に説明する。
このインバータ装置20は、電圧センサー16により直列共振負荷200を構成する直列共振回路の共振コンデンサ202の電圧波形の位相を検出して、その検出結果である共振コンデンサ電圧位相信号を制御部22の位相比較回路38への一方の入力とする。
また、制御部22の位相比較回路38への他方の入力は、VCO回路32の出力信号を遅れ補正回路40へ入力して遅れ補正した出力信号である。
制御部22の位相比較回路38は、上記した遅れ補正した出力信号を比較信号として、直列共振負荷200の直列共振周波数に追尾させるようにしている。
ここで、遅れ補正回路40により補正される遅れ時間は、インバータ駆動信号たる矩形波インバータ駆動信号Q、NQのパルスの位相中心位置から1/2周期遅れた共振コンデンサ202の電圧波形のゼロクロス点までの遅れ時間td(td=T/2+Δt)にほぼ等しい値である。
なお、後において詳述するように、「Δt」は、「インバータ部106を構成するインバータ回路の回路遅れ」を意味する。
また、制御部22の検波回路44は、電流レベル信号を入力して検波した後に誤差アンプ・フィルタ46へ出力し、一方、誤差アンプ・フィルタ46は出力設定信号を入力する。
そして、誤差アンプ・フィルタ46において電流レベル信号が出力設定信号のレベルとなるように、PWM回路50により矩形波インバータ駆動信号Q、NQのパルス幅を制御する。
より詳細には、インバータ装置20の制御部22においては、外部からの出力オン(ON)信号を周波数シフト回路30に入力し、直列共振負荷200の共振周波数より高い周波数(例えば、直列共振負荷200の共振周波数より5%以上高い周波数である。)からインバータ部106の駆動を開始するようにVCO回路32に信号を出力し、VCO回路32の出力からの周波数信号は狭幅パルス信号発生回路34に入力され、VCO回路32の出力の周波数の狭幅パルス信号が狭幅パルス信号発生回路34により発生されて出力回路36に出力される。
出力回路36では、ロック完了回路42の信号により、狭幅パルス信号発生回路34の信号からPWM回路50の信号に切り換える。
ここで、狭幅パルス信号発生回路34により発生される狭幅パルス信号のパルス幅は、インバータ部106から出力される出力値が、外部からの出力設定信号が示す設定値の最低設定出力値(出力電圧または出力電流または出力電力である。)となるように設定することが好ましい。
なお、狭幅パルス信号発生回路34により発生される狭幅パルス信号のパルス幅は、一定でなくてもよく、例えば、周期の最低割合で決めてもよい。
即ち、狭幅パルス信号のパルス幅を一定(固定)にすると、周波数が高いほど出力割合が大きくなり、最低レベルが増大するため、周期の最低割合としておく方が好ましい。
図7(a)(b)(c)(d)(e)には、インバータ装置20における動作を模式的に示す波形図があらわされている。
なお、図7(a)(b)(c)(d)(e)のそれぞれにおいて、波形D、波形E、波形F、波形Gならびに波形Hは、電圧センサー16により検知された共振コンデンサ電圧波形である。
また、図7(a)(b)(c)(d)(e)のそれぞれにおいて、波形I、波形J、波形K、波形Lならびに波形Mは、電流センサー14により検知された電流(出力電流)波形である。
図7(a)は、駆動開始時(スタート時)のスタート周波数における、インバータ駆動信号たる狭幅パルス信号の波形(狭幅パルス駆動信号波形)と、インバータ部106の出力として電流センサー14により検知された出力電流波形(波形I)と、インバータ部106の出力として電圧センサー16により検知された共振コンデンサ電圧波形(波形D)との位相差を示す。
インバータ装置20に直列共振負荷200が接続されている場合には、共振コンデンサ電圧は出力電流よりT/2(90°)位相が遅れ、また、直列共振負荷200の共振周波数以上の周波数領域においては、出力電流位相は狭幅パルス駆動信号波形の位相中心位置より位相が遅れることがわかっている。
ここで、位相比較回路38では、インバータ駆動信号である狭幅パルス駆動信号波形の位相中心位置からの周期の1/2遅れパルスである位相検波パルス位置をA点とし、比較する共振コンデンサ電圧波形のゼロクロス点をB点として(図7(a)(b)を参照する。)、A点とB点との位相差を比較し、位相差がゼロ(0)または予め設定されている位相差となった周波数でロックする(図7(c)を参照する。)。
一方、VCO回路32からの周波数信号は、遅れ補正回路40を構成するT/2遅れ補正回路40aに入力され、直列共振負荷200を構成する直列共振回路の共振コンデンサ電圧の位相の遅れ分を補正された後に位相比較回路38に入力される。
位相比較回路38は、入力された共振コンデンサ電圧位相信号と遅れ補正回路40により遅れ補正されたVCO回路32からの周波数信号との位相を比較して、VCO回路32からの出力が直列共振負荷200の共振周波数となるように、VCO回路32の周波数をフィードバック制御する。
具体的には、直列共振負荷200の共振周波数から離れた周波数、例えば、共振周波数より5%以上高い周波数をスタート周波数とした狭幅パルス信号のインバータ駆動信号によりインバータ部106の駆動を開始し(図7(a)を参照する。)、当該インバータ信号の周波数を周波数シフトして下降させる(図7(b)を参照する。)。
そして、位相比較回路38によりインバータ駆動信号の周波数を直列共振負荷200の共振周波数でロックさせ(図7(c)を参照する。)、ロック完了回路42がロック完了を検知して出力回路36へ信号を出力する。
この信号により、狭幅パルス信号による動作からPWM動作に移行し、出力回路36からは、狭幅パルス信号からPWM制御によりパルス幅twが広がったインバータ駆動信号が出力され、インバータ部106の出力が出力設定信号によって設定された設定値の出力まで上昇(アップ)する(図7(d)(e)を参照する。)。
(IV)本発明の第4の実施の形態
図8には、本発明の実施の形態の一例によるインバータ装置(第4の実施の形態)の構成説明図があらわされている。なお、図8には、制御部により制御されるとともに直列共振負荷に接続されたインバータ装置の全体の構成があらわされている。
図8を参照しながら、本発明の第4の実施の形態によるインバータ装置60について説明すると、本発明の第4の実施の形態によるインバータ装置60は、制御部62における遅れ補正回路40がT/2遅れ補正回路40aとΔt遅れ補正回路40bとを有して構成されている点において、本発明の第3の実施の形態によるインバータ装置20と異なる。
ここで、インバータ部106を構成するインバータ回路では、回路遅れΔtが発生することが知られている。
このため、本発明の第4の実施の形態によるインバータ装置60においては、こうしたインバータ部106を構成するインバータ回路の回路遅れΔtを補正するために、遅れ補正回路40にΔt遅れ補正回路40bを設け、遅れ補正回路40がT/2遅れ補正回路40aとΔt遅れ補正回路40bとを有するように構成している。
図9(b’)(c’)は、回路遅れΔtがある場合の波形を示しており、こうした回路遅れΔtをΔt遅れ補正回路40bにより補正する。
なお、図9(b’)は図7(b)において回路遅れΔtがある場合の波形図を示し、また、図9(c’)は図7(c)において回路遅れΔtがある場合の波形図を示している。
(V)本発明の第5の実施の形態
次に、本発明の第5の実施の形態によるインバータ装置およびインバータ装置の制御方法について説明する。
この本発明の第5の実施の形態によるインバータ装置およびインバータ装置の制御方法は、上記において説明した本発明の第3の実施の形態によるインバータ装置およびインバータ装置の制御方法とは、位相比較回路38における位相差の検出の手法について異なっている。
即ち、本発明の第5の実施の形態によるインバータ装置は、構成要素としては本発明の第3の実施の形態によるインバータ装置20と同様な構成を備えているため、以下の説明においては、本発明の第3の実施の形態によるインバータ装置20とは異なる点についてのみ説明する。
本発明の第5の実施の形態によるインバータ装置においては、電圧センサー16により直列共振負荷200を構成する直列共振回路の共振コンデンサ202の電圧波形の位相を検出して、その検出結果である共振コンデンサ電圧位相信号を位相比較回路38への一方の入力とする。
また、位相比較回路38への他方の入力は、VCO回路32の出力信号を遅れ補正回路40へ入力して遅れ補正した出力信号である。
ここで、遅れ補正回路40により補正される遅れ時間は、インバータ駆動信号たる矩形波インバータ駆動信号Q、NQのパルスの位相中心位置から、この位相中心位置に隣接する共振コンデンサ202の電圧波形のゼロクロス点までの遅れ時間td(td=Δt)にほぼ等しい値である。
ここで、図10(a)(b)(c)(d)(e)には、本発明の第5の実施の形態によるインバータ装置における動作を示す模式的な波形図があらわされている。
なお、図10(a)(b)(c)(d)(e)のそれぞれにおいて、波形D’、波形E’、波形F’、波形G’ならびに波形H’は、電圧センサー16により検知された共振コンデンサ電圧波形である。
また、図10(a)(b)(c)(d)(e)のそれぞれにおいて、波形I’、波形J’、波形K’、波形L’’ならびに波形M’は、電流センサー14により検知された電流(出力電流)波形である。
本発明の第3の実施の形態によるインバータ装置20においては共振コンデンサ202の電圧は振動しているため、図10(a)(b)(c)(d)(e)に示すように、図7(a)(b)(c)(d)(e)に示すB点よりもT/2だけ早い点であるB’点のゼロクロス点を検知しても、実用上は不都合なことはない。なお、A’点は、パルス位相中心である。
具体的には、直列共振負荷200の共振周波数から離れた周波数、例えば、直列共振負荷200の共振周波数より5%以上高い周波数をスタート周波数とした狭幅パルス信号のインバータ駆動信号によりインバータ部106の駆動を開始し(図10(a)を参照する。)、当該インバータ信号の周波数を周波数シフトして下降させる(図10(b)を参照する。)。
そして、位相比較回路38によりインバータ駆動信号の周波数を直列共振負荷200の共振周波数でロックさせ(図10(c)を参照する。)、ロック完了回路42がロック完了を検知して出力回路36へ信号を出力する。
この信号により、狭幅パルス信号による動作からPWM動作に移行し、出力回路36からは、狭幅パルス信号からPWM制御によりパルス幅twが広がったインバータ駆動信号が出力され、インバータ部106の出力が出力設定信号によって設定された設定値の出力まで上昇(アップ)する(図10(d)(e)を参照する。)。
(VI)本発明の第6の実施の形態
次に、本発明の第6の実施の形態によるインバータ装置およびインバータ装置の制御方法について説明する。
この本発明の第6の実施の形態によるインバータ装置およびインバータ装置の制御方法は、上記において説明した本発明の第4の実施の形態によるインバータ装置およびインバータ装置の制御方法とは、位相比較回路38における位相差の検出の手法のみが異なる。
ここで、位相比較回路38における位相差の検出の手法については、上記において説明した本発明の第5の実施の形態によるインバータ装置およびインバータ装置の制御方法と同様であるので、上記した「(V)本発明の第5の実施の形態」における説明を援用することによりその詳細な説明は省略する。
本発明の第6の実施の形態によるインバータ装置およびインバータ装置の制御方法は、遅れ補正回路40がT/2遅れ補正回路40aとΔt遅れ補正回路40bとを有していて回路遅れΔtを補正する点において、本発明の第5の実施の形態によるインバータ装置およびインバータ装置の制御方法と異なる。
上記において説明したように、インバータ部106を構成するインバータ回路では、回路遅れΔtが発生することが知られている。
こうしたインバータ部106を構成するインバータ回路の回路遅れΔtは、遅れ補正回路40を構成するΔt遅れ補正回路40bで補正すればよい。
図11(b’)(c’)は、回路遅れΔtがある場合の波形を示しており、こうした回路遅れΔtをΔt遅れ補正回路40bにより補正する。
なお、図11(b’)は図10(b)において回路遅れΔtがある場合の波形図を示し、また、図11(c’)は図107(c)において回路遅れΔtがある場合の波形図を示している。また、A’’点は、狭幅パルス信号波形の位相中心位置である。
(VII)本発明の第7の実施の形態
図12には、本発明の実施の形態の一例によるインバータ装置(第7の実施の形態)における制御部の構成説明図があらわされている。
なお、この本発明の第7の実施の形態によるインバータ装置70は、制御部72を除く他の構成については、上記した本発明の第4の実施の形態によるインバータ装置60の構成と異なるところがないので、制御部72を除く他の構成の図示ならびに詳細な説明は省略する。
この本発明の第7の実施の形態によるインバータ装置70の制御部72は、上記した本発明の第4の実施の形態によるインバータ装置60における制御部62と比較すると、制御部62における構成に加えて最低レベル検知回路74を備えており、この点において両者は異なる。
本発明の第4の実施の形態によるインバータ装置60においては、周波数が直列共振負荷200の直列共振周波数から離れると、共振コンデンサ電圧または出力電流レベルが低下して、インバータ部106の出力から正確な位相検知ができなくなる。
このため、この本発明の第7の実施の形態によるインバータ装置70においては、制御部72に最低レベル検知回路74を設け、インバータ部106の出力が最低レベル検知回路74で位相検知が可能になる出力レベルになったことを検知して、位相比較を開始するようにした。
即ち、本発明の第7の実施の形態によるインバータ装置70においては、パルス駆動信号による直列共振負荷200の共振コンデンサ電圧または出力電流レベルを検波するように制御部72の検波回路44を構成し、検波回路44から出力を最低レベル検知回路74
を入力する。
最低レベル検知回路74は、インバータ駆動信号たるパルス駆動信号による直列共振負荷200の共振コンデンサ電圧または出力電流レベルを検知して、予め設定されたレベル以上になった場合に直列共振負荷200の共振周波数近傍に周波数シフトする制御を行うように、位相比較回路38を動作開始させるものである。
(VIII)本発明の第8の実施の形態
図13には、本発明の実施の形態の一例によるインバータ装置(第8の実施の形態)におけるインバータ部の拡大説明図があらわされている。
この本発明の第8の実施の形態によるインバータ装置は、図4乃至図11を参照しながら説明した本発明の第1乃至第7の実施の形態によるインバータ装置の構成と比較すると、インバータ部106に代えてインバータ部406を備えている点において両者は異なっている。
図13に示すように、インバータ装置のインバータ部406は、インバータスイッチング素子406aにおける環流ダイオード(フリーホイールダイオード)406bとしてSiCダイオードを用いるようにしたものである。
より詳細には、図13に示すように、インバータ部406のインバータスイッチング素子406aにおいて、半導体スイッチング素子406cと逆向き並列に接続されたフリーホイールダイオード406bとして、SiCダイオードを用いるようにしている。
この本発明の第8の実施の形態によるインバータ装置においては、最低設定出力値(出力電流または出力電力である。)が確保できる十分に短いインバータ駆動信号たるパルス駆動信号の周波数を共振周波数よりも高い周波数(例えば、共振周波数より5%以上高い周波数である。)を起点にスタートさせ、共振周波数近傍まで周波数を下降する周波数シフトによる周波数制御を行って、インバータ駆動信号たるパルス駆動信号の周波数を共振周波数に制御する。
即ち、上記した本発明の第8の実施の形態によるインバータ装置においては、インバータスイッチング素子406aのフリーホイールダイオード406bとして、SiCダイオードを用いている。
このため、その特性から電流回生時のリカバリー時間がほとんどないので、直列共振回路でのPWMスイッチングオン時のダイオードリカバリーショート電流を防止でき、さらには、インバータノイズの低減やインバータ損失の低減が可能になる。
(IX)本発明の第9の実施の形態
本発明による第9の実施の形態によるインバータ装置は、上記した本発明の各実施の形態(第1乃至第8の実施の形態)における直列共振負荷200を構成する直列共振回路が、誘導加熱用の加熱コイルと共振コンデンサとからなる直列共振回路により構成されるようにしたものである。
即ち、上記において説明した本発明の各実施の形態(第1乃至第8の実施の形態)によるインバータ装置を含む本発明によるインバータ装置に接続する直列共振負荷200としては各種の構成のものを用いることができ、例えば、図14に示すような誘導加熱用直列共振負荷を本発明によるインバータ装置に接続するようにしてもよい。
ここで、図14には、本発明の実施の形態の一例によるインバータ装置の第9の実施の形態として、直列共振負荷の一例である誘導加熱用の加熱コイル(誘導加熱コイルL)と共振コンデンサCとを直列接続した誘導加熱用の直列共振回路よりなる誘導加熱用共振負荷を接続した場合を示す構成説明図があらわされている。
なお、誘導加熱の場合には、出力電流が大きくなるため、出力に整合トランスを入れてもよい。
(X)その他の実施の形態および変形例の説明
なお、上記した実施の形態は例示に過ぎないものであり、本発明は他の種々の形態で実施することができる。即ち、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
例えば、上記した実施の形態は、以下の(X−1)乃至(X−4)に示すように変形するようにしてもよい。
(X−1)上記した実施の形態において、スタート周波数を直列共振負荷200の共振周波数から離す際に、具体的には直列共振負荷200の共振周波数から5%以上離すことを例示した。
しかしながら、本発明は、直列共振負荷200の共振周波数から5%以上離すことに限られるものではなく、直列共振負荷200の共振周波数から5%未満離すようにしてもよい。
即ち、「5%」との数値は本願発明者が実験により実証的に求めた好適な数値ではあるが、本発明は「5%」の数値に限られものではなく、スタート周波数が直列共振負荷200の共振周波数から離れていればよい。
スタート周波数を直列共振負荷200の共振周波数から離すことにより、直列共振負荷200側の共振周波数がいかようにずれても、周波数シフトにより自動で直列共振負荷200の共振周波数を探し当てることが可能となる。
ここで、周波数シフトする領域(周波数シフト領域)は、インバータ回路に最適なダイオード逆回復特性を考慮した誘導性領域に決定することが好ましく、本願発明者が実験によれば共振周波数から5%以上の領域であった。
(X−2)上記した実施の形態においては、各構成における具体的な回路構成などは説明を省略したが、各構成に対応する従来より公知の回路構成を用いてよいことは勿論である。
(X−3)上記した実施の形態においては、各構成における具体的な回路定数などの説明を省略したが、各構成に対応する従来より公知の回路定数を用いてよいことは勿論である。
(X−4)上記した各実施の形態ならびに上記した(X−1)乃至(X−3)に示す各実施の形態は、適宜に組み合わせるようにしてもよいことは勿論である。