JP6832151B2 - ポリアセタール樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリアセタール樹脂組成物の製造方法に関する。
ポリアセタール樹脂は機械的特性、熱的特性、電気的特性、摺動性、成形性、耐衝撃性、成形品の寸法安定性等において優れた特性を持っており、構造材料や機構部品として電気機器、自動車部品、精密機械部品等に広く使用されている。そして、ポリアセタール樹脂の機械的特性、例えば強度や剛性を向上させるために、ガラス系無機充填材等の強化材を配合することが知られている。
しかしながら、ポリアセタール樹脂は活性に乏しく、またガラス系無機充填材も活性に乏しいため、単にポリアセタール樹脂にガラス系無機充填材を配合し溶融混練しただけでは両者の密着性は不十分なものとなり、期待するほどの機械的特性の向上が得られない場合が多い。そこで、ポリアセタール樹脂とガラス系無機充填材との密着性を向上させて機械的特性を改良するための各種の方法が提案されている。
例えば、ポリアセタール樹脂にガラス系無機充填材とホウ酸化合物とを添加すること、さらに該ガラス系無機充填材を特定のシラン化合物で表面処理すること(特許文献1参照)、ポリアセタール樹脂にブロック化イソシアネート、ポリウレタン系樹脂で表面処理されたガラス繊維を添加すること、さらに亜リン酸を用いてpHを調整すること(特許文献2、3参照)等が知られている。
特開平09−151298号公報 特開平03−79631号公報 特開2000−335942号公報
しかしながら、これらの手法は、いずれも、ガラス系無機充填材の化学的活性を高め、引張強さ、引張伸び、曲げ強さ等の機械的特性を得るものである。近年、これらの機械的特性に加え、耐衝撃性や、耐久性、とりわけクリープ特性を発揮するポリアセタール樹脂の提供が求められており、従来のポリアセタール樹脂では、クリープ特性等の耐久性の向上の点において、さらなる改良の余地がある。
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、引張強さ、引張伸び、曲げ強さ、耐衝撃性等の機械的特性に優れ、特にクリープ特性に優れたポリアセタール樹脂の製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた、その結果、ポリアセタール樹脂に対して、特定のガラス系無機充填材と少量で特定のハロゲン化物と特定のトリアジン誘導体を溶融混練することで、高い機械的特性を維持しつつ、クリープ特性を向上できる組成物を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は以下の通りである。
(1)(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、
(B)シランカップリング剤で表面処理されたガラス系無機充填材1質量部以上100質量部以下と、
(C)ハロゲン化マグネシウムおよびハロゲン化アンモニウムから選ばれる少なくとも一種のハロゲン化物0.0001質量部以上0.5質量部以下と
(D)含窒素官能基を有するトリアジン誘導体0.002質量部以上10質量部以下とを、溶融混練して製造するポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
(2)前記(B)ガラス系無機充填材が、さらにブロック化イソシアネート化合物及びポリウレタン樹脂とから選択される少なくとも一種の化合物で表面処理されたガラス系無機充填材である、前記(1)に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
(3)前記(C)ハロゲン化物は、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、塩化アンモニウム、および臭化アンモニウムから選択された一種である、前記(1)又は(2)に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
(4)(E)ホウ酸化合物0.001質量部以上1.0質量部以下をさらに含有する前記(1)から(3)のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
(5)前記(B)ガラス系無機充填材がガラスファイバーである、(1)から(4)のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
本発明によれば、引張強さ、引張伸び、曲げ強さ、耐衝撃性等の機械的特性に優れ、特に、クリープ特性に優れたポリアセタール樹脂を提供できる。
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではない。
<ポリアセタール樹脂組成物>
本発明のポリアセタール樹脂組成物の製造方法は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、(B)シランカップリング剤で表面処理されたガラス系無機充填材1質量部以上100質量部以下と、(C)ハロゲン化マグネシウムおよびハロゲン化アンモニウムから選ばれる少なくとも一種のハロゲン化物0.0001質量部以上0.5質量部以下と、(D)含窒素官能基を有するトリアジン誘導体0.002質量部以上10質量部以下とを、溶融混練して製造することを特徴とする。
≪(A)ポリアセタール樹脂≫
本発明の(A)ポリアセタール樹脂は、オキシメチレン基(−CHO−)を主たる構成単位とする高分子化合物で、ポリオキシメチレンホモポリマー、又はオキシメチレン基を主たる繰り返し単位とし、これ以外に他の構成単位、例えばエチレンオキサイド、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマール等のコモノマー単位を少量含有するコポリマー、ターポリマー、ブロックポリマーのいずれにてもよい。
また、ポリアセタール樹脂は、分子が線状のみならずグリシジルエーテル等を共重合させた分岐、架橋構造を有するものであってもよく、他の有機基を導入した公知の変性ポリオキシメチレンであってもよく、また線状樹脂と分岐、架橋構造を有する樹脂との混合物であってもよい。
ポリアセタール樹脂は、その重合度に関しても特に制限はなく、溶融成形加工性を有するもの(例えば、190℃、2160g荷重下でのメルトフロー値(MFR)が0.1g/10分以上100g/10分以下)であればよい。
≪(B)シランカップリング剤で表面処理されたガラス系無機充填剤≫
本発明の(B)ガラス系無機充填剤は、シランカップリング剤で表面処理されたものである。シランカップリング剤としては、官能基を有するもの(例えばビニルアルコキシシラン、エポキシアルコキシシラン、メルカプトアルコキシシラン、アリルアルコキシシラン、アミノシラン等)であれば本発明の効果を発揮することができるが、アミノシランカップリング剤が好ましい。アミノシランカップリング剤とは、一分子中にアルコキシ基が結合した珪素原子と、窒素原子を含有する官能基とを含有している化合物をいう。
具体的なアミノシランカップリング剤として、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’−ビス〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス〔3−(メチルジメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
上記アミノシランカップリング剤として、なかでも、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン及びN−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランが好ましく挙げられ、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びγ−アミノプロピルトリエトキシシランがより好ましく挙げられる。
また、これらのシランカップリング剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
本発明の(B)ガラス系無機充填剤としては、繊維状(ガラスファイバー)、粒状(ガラスビーズ)、粒状(ミルドガラスファイバー)、板状(ガラスフレーク)及び中空状の充填材が挙げられ、特に限定されるものではない。取り扱い上、ガラスファイバーであって、2〜8mm程度にカットされたチョップドストランドが好適である。また、ガラスファイバーの直径としては、通常は5〜15μm、好ましくは7〜13μmのものが好適に用いられる。
≪ブロック化イソシアネート化合物≫
本発明のブロック化イソシアネート化合物の原料であるイソシアネート化合物としては、一分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する多官能のイソシアネート化合物であれば特に制限なく使用できる。
例えば、脂肪族、脂環族(以下、「脂環式」ともいう。)及び芳香族のイソシアネート化合物を挙げることができるが、特に、ポリアセタール樹脂との相溶性や適合性の面から、脂肪族、脂環族イソシアネート化合物が好ましい。特に、2官能性の脂肪族又は脂環式ジイソシアネート、これらのジイソシアネートを多量化したポリイソシネートであることが好ましい。
脂肪族ジイソシアネートとしては、炭素数4以上30以下のものが好ましく、炭素数5以上10以下のものがより好ましい。具体的には、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレン−1,5−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等を挙げることができる。
また、脂環式ジイソシアネートとしては、炭素数8以上15以下のものが好ましく、炭素数10以上18以下のものがより好ましい。具体的には、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。さらに、芳香族時イソシアネートとしては、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
さらに、ポリイソシアネートとしては、一分子当たり少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物、例えば、トリレンジイソシアネートもしくはジフェニルメタンジイソシアネートの如き、各種の芳香族ジイソシアネート類;m−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−m−キシリレンジイソシアネートの如き、各種のアラルキルジイソシアネート類;ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートもしくはイソホロンジイシシアネートの如き、脂肪族ないしは脂環式ジイソシアネート類と、多価アルコール類とを付加反応せしめて得られるような、イソシアネート基含有プレポリマー類、前記の各種のジイソシアネート類を環化二量化せしめて得られるような、ウレイトジオン環を有するプレポリマー類、前記の各種のジイソシアネート類を環化三量化せしめて得られるような、イソシアヌレート環を有するプレポリマー類、あるいは前記の各種のジイソシアネート類と、水と反応せしめて得られるような、ビュレット構造を有するポリイソシアネート等が挙げられる。
なかでも、得られる組成物の耐衝撃性や耐久性、工業的入手の容易さの点から、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの環状二量体、又はヘキサメチレンジイソシアネートの環状三量体が好ましい。なお、上記化合物を2種以上併用することもできる。
また、本発明のブロック化イソシアネート化合物としては、上記イソシアネート化合物の反応基を、周知のブロック化剤で定法によりブロックしたものを、特に限定されることなく使用できる。
具体的なブロック化剤としては、例えば、メチルエチルケトオキシム、アセトキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム系ブロック化剤;m−クレゾール、キシレノール等のフェノール系ブロック化剤;メタノール、エタノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール系ブロック化剤;ε−カプロラクタム等のラクタム系ブロック化剤;マロン酸ジエチル、アセト酢酸エステル等のジケトン系;チオフェノール等のメルカプタン系ブロック化剤;チオ尿素等の尿素系ブロック化剤;ジメチルピラゾール等のピラゾール系ブロック化剤;イミダゾール系ブロック化剤;カルバミン酸系ブロック化剤;重亜硫酸塩等を挙げることができるが、これらに特に限定されない。なかでも、ラクタム系ブロック化剤、オキシム系ブロック化剤、ジケトン系ブロック化剤の使用が好ましい。
本発明のブロック化イソシアネートは、ガラス系無機充填剤100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下使用され、好ましくは0.3質量部以上3質量部以下である。
≪ポリウレタン樹脂≫
本発明のポリウレタン樹脂としては、集束性等の点から、特にキシリレンジイソシアネートを主とするポリイソシアネート成分とポリエステルポリオールを主とするポリオール成分から得られたものが好適である。ここで、キシリレンジイソシアネートとしては、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート及びこれらの混合物が挙げられるが、これらの中でm−キシリレンジイソシアネートが好ましい。
一方、ポリエステルポリオールとしては、例えば多価アルコールと多価カルボン酸との脱水縮合により得られた縮合系ポリエステルポリオール、多価アルコールをベースとしてラクトンの開環重合により得られたラクトン系ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールの末端をラクトンでエステル変性したエステル変性ポリオール及びこれらの共重合ポリエステルポリオール等が挙げられる。
上記縮合系ポリエステルポリオールにおいて用いられる多価アルコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられ、多価カルボン酸の例としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸等が挙げられる。
また、ラクトン系ポリエステルポリオールとしては、例えばポリ(ε−カプロラクトン)ポリオール等がある。これらのポリエステルポリオールは、重量平均分子量が500以上4000以下の範囲にあるものが好適である。なお、本明細書における樹脂の重量平均分子量は、GPC法によって測定し、かつ、標準ポリスチレン換算された値である。
前記ポリウレタン樹脂を製造するには、例えば、キシリレンジイソシアネートとポリエステルポリオールとを、30℃以上130℃以下程度で無溶媒下又は少量の有機溶媒存在下に加熱することにより行うことができる。
なお、加熱反応を行う際には、前記ポリエステルポリオールの説明で例示した多価アルコールを、鎖延長剤として適宜共存させてもよい。また、有機溶媒を使用する場合には、この有機溶媒としては、イソシアネートと反応せず、かつ水と混和性のあるものであればよく、特に制限はないが、例えばアセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド等を用いることができる。
本発明のポリウレタン樹脂は、ガラス系無機充填剤100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下使用され、好ましくは0.2質量部以上2質量部以下である。
本発明においては、アミノシランカップリング剤と、ブロック化イソシアネート化合物及び/或いはポリウレタン樹脂との組み合わせによる相乗効果が得られ易く、ポリアセタール樹脂とガラス系無機充填剤との接着性を向上させることができる。
ガラスファイバーは、ブロック化イソシアネート化合物及びポリウレタン樹脂から選ばれる少なくとも一種のイソシアネート化合物を併用する場合、アミノシランカップリング剤とで表面処理されていれば足り、表面処理するタイミングの先後は問わない。
すなわち、ガラスファイバーは、ブロック化イソシアネート化合物で表面処理された後に、その他の成分で表面処理されたものであってもよいし、アミノシランカップリング剤で表面処理された後、その他の成分で表面処理されたものであってもよい。
本発明のガラスファイバーに表面処理を行う際には、ブロック化イソシアネート化合物及びポリウレタン樹脂から選ばれる少なくとも一種のイソシアネート化合物と、アミノシランカップリング剤とを、有機溶剤中に溶解又は分散、或いは、水中に分散させ使用することが好ましい。特に、ポリウレタン樹脂を含む水性エマルジョンを製造する方法としては、自己乳化法、乳化剤を使用する方法が知られているが、これらを適当に組み合わせてもよい。
<ハロゲン化物>
本発明のハロゲン化物は、ハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化アンモニウムであり、ハロゲン元素としては、臭素、塩素が好ましい。特に塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、塩化アンモニウム及び臭化アンモニウムから選択された一種であることが好ましい。
本発明において、ハロゲン化物には、無水塩又は含水塩(二水塩、四水塩、六水塩、八水塩、十二水塩等)が含まれる。
本発明のハロゲン化物は、例えば特開2003−112952にもあるようにガラス集束剤としても知られるものである。
本発明のハロゲン化物は、0.0001質量部以上0.5質量部以下であり、クリープ特性の点から0.001質量部以上0.05質量部以下であることが好ましい。
<(D)含窒素官能基を有するトリアジン誘導体>
本発明では、(D)含窒素官能基を有するトリアジン誘導体を配合することが、好ましい。本発明に用いられる含窒素官能基を有するトリアジン誘導体(D)としては、具体的には、グアナミン、メラミン、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、N,N’,N−トリフェニルメラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン、アンメリン、2,4−ジアミノ−6−ベンジルオキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブトキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−シクロヘキシル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−クロロ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト−sym−トリアジン、6−アミノ−2,4−ジヒドロキシ−sym−トリアジン〔別称(アンメリド)〕、1,1−ビス(3,5−ジアミノ−2,4,6−トリアジニル)メタン、1,2−ビス(3,5−ジアミノ−2,4,6−トリアジニル)エタン〔別称(サクシノグアナミン)〕、1,3−ビス(3,5−ジアミノ−2,4,6−トリアジニル)プロパン、1,4−ビス(3,5−ジアミノ−2,4,6−トリアジニル)ブタン、メチレン化メラミン、エチレンジメラミン、トリグアナミン、メラミンシアヌレート、エチレンジメラミンシアヌレート、トリグアナミンシアヌレート等である。
これらのトリアジン誘導体は一種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくはグアナミン、メラミンであり、中でもメラミンが特に好ましい。
本発明おいてかかる含窒素官能基を有するトリアジン誘導体(D)を配合する場合、その配合量はポリアセタール樹脂100質量部に対して0.002質量部以上10質量部以下とするのが好ましく、より好ましくは0.01質量部以上2質量部以下、特に好ましくは0.03質量部以上1質量部以下である。
上記トリアジン誘導体(D)の含有量が0.002質量部以上であれば、ポリアセタール樹脂の熱安定性を向上することができ、10質量部以下であれば、ポリアセタール樹脂からの滲み出し等の問題がなく好ましい。
<(C)ホウ酸>
本発明では、ホウ酸を配合することが好ましい。種類は特に限定されるものでなく、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸等のいずれであってもよい。中でもオルトホウ酸が好ましい。(C)ホウ酸の配合量は、0.001質量部以上1.0質量部以下であり、機械特性から、好ましくは0.005質量部以上0.2質量部以下である。
<その他の各種安定剤・添加剤>
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、さらに公知の各種安定剤・添加剤を配合し得る。安定剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、含窒素塩基性化合物、アルカリ或いはアルカリ土類金属の水酸化物、無機塩、カルボン酸塩等のいずれか一種又は2種以上を挙げることができる。
添加剤としては、熱可塑性樹脂に対する一般的な添加剤、例えば染料、顔料等の着色剤、滑剤、核剤、離型剤、帯電防止剤、界面活性剤のいずれか一種又は2種以上を挙げることができる。
また、本発明の目的とする成形品の性能を大幅に低下させないような範囲であるならば、ガラス系無機充填剤以外の公知の無機、有機、及び金属等の繊維状、板状、粉粒状等の充填剤を一種又は2種以上複合させて配合することも可能である。このような充填剤の例としては、タルク、マイカ、ウォラストナイト、炭素繊維等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
<ポリアセタール樹脂組成物の製造>
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、従来の樹脂組成物製造法として一般に用いられる公知の方法により容易に製造される。例えば各成分を混合した後、1軸又は2軸の押出機により溶融練込み押出しして、ペレットを調製し、しかる後、成形する方法、一旦組成の異なるペレット(マスターバッチ)を調製し、そのペレットを所定量混合(稀釈)して成形に供し、成形後に目的組成の成形品を得る方法等、いずれも使用できる。
ポリアセタール組成物の製造において、基体であるポリアセタール樹脂の一部又は全部を粉砕し、これとその他の成分を混合した後、押出等を行うことは添加物の分散性を良くする上で好ましい方法である。
そして本発明の最も大きな特徴は、(A)、(B)、(C)、(D)成分をそれぞれ別々に調製した後に、溶融混練するところにある。(C)成分のハロゲン化物は、ガラス集束剤として知られていることから、一般にはガラスファイバーにあらかじめ表面処理して付着させたのち、(A),(B)成分と溶融混練するものであるが、本発明では別々に調製することに特徴を有する。こうすることにより(A)成分に対する(C)成分の量調整が容易となり、最終的に樹脂組成物のバリエーションを増やすことができる。
本発明においてクリープ特性向上と、別添加したハロゲン化物、ガラス系無機充填材及び樹脂構造との因果関係は不明であるが、ガラス集束剤としての相互作用以外の機能がハロゲン化物に存在しているものと推定している。
以下、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、特に記載のない限り各評価は、23℃55%RHの環境下で行った。
<ポリアセタール樹脂組成物の製造>
表1及び表2において、各種材料は次のとおりである。
〔(A)ポリアセタール樹脂〕
(A1)ポリアセタール樹脂(トリオキサン96.7質量%と1,3−ジオキソラン3.3質量%とを共重合させてなるポリアセタール共重合体(メルトインデックス(190℃,荷重2160gで測定):9g/10min)
〔(B)ガラス系無機充填材〕
(B0)アミノシランカップリング剤(γ−アミノプロピルトリエトキシシラン)0.02質量%で表面処理されたガラスファイバーの直径9μmのチョップドストランド。
(B1)アミノシランカップリング剤(γ−アミノプロピルトリエトキシシラン)0.02質量%、ポリウレタン樹脂0.6質量%で表面処理されたガラスファイバーの直径9μmのチョップドストランド。
(B2)メチルエチルケトオキシムでブロックされたヘキサメチレンジイソシアネートのブロック化イソシアネート1.2質量%、アミノシランカップリング剤(γ−アミノプロピルトリエトキシシラン)0.02質量%で表面処理されたガラスファイバーの直径10μmのチョップドストランド。
(B3)メチルエチルケトオキシムでブロックされたヘキサメチレンジイソシアネートの三量体のブロック化イソシアネート1.2質量%、アミノシランカップリング剤(γ−アミノプロピルトリエトキシシラン)0.02質量%で表面処理されたガラスファイバーの直径13μmのチョップドストランド。
(B4)メチルエチルケトオキシムでブロックされたヘキサメチレンジイソシアネートのブロック化イソシアネート1.0質量%、アミノシランカップリング剤(γ−アミノプロピルトリエトキシシラン)0.02質量%、ポリウレタン樹脂0.3質量%で表面処理されたガラスファイバーの直径10μmのチョップドストランド。
(B5)日本国特許特公平6−27204号公報の実施例1記載のブロック化イソシアネート1.0質量%、アミノシランカップリング剤0.02質量%、ポリウレタン樹脂0.3質量%で表面処理されたガラスファイバーの直径10μmのチョップドストランド。
〔(C)ハロゲン化物〕
(C1)塩化マグネシウム六水和物
(C2)塩化アンモニウム
(C3)臭化マグネシウム六水和物
(C4)臭化アンモニウム
〔(C’)他のハロゲン化物〕
(C’1)塩化ナトリウム
〔(D)含窒素官能基を有するトリアジン誘導体〕
(D1)メラミン
〔(E)ホウ酸化合物〕
(E1)オルトホウ酸
ポリアセタール樹脂100質量部に、ガラス系無機充填材、ハロゲン化物、含窒素官能基を有するトリアジン誘導体及びホウ酸化合物を、表1及び2に示す量で配合し、シリンダー温度200℃の押出機で溶融混練し、実施例及び比較例に係るペレット状のポリアセタール樹脂組成物を製造した。
なお、塩化アンモニウム及び臭化アンモニウムを用いた実施例では、ポリアセタール樹脂100重量部に対して、水2重量部に表の所定量のハロゲン化物を溶解した水溶液をポリアセタール樹脂と予め均一に混合し、ついで、120℃で乾燥した。
<物性評価>
実施例及び比較例に係るペレット状の組成物から射出成形機を用い、試験片を成形した。そして、ISO527−1,2に準拠した引張強さ・引張伸び、ISO178に準拠した曲げ強さ、ISO179・1eAに準拠したシャルピー衝撃強さ(ノッチ付、23℃)の測定を実施した。
<耐クリープ性評価>
ISO3167に準拠した引張試験片を用い、クリープ試験機で高温高荷重条件として大気中80℃、40MPaの荷重を掛け、試験片が破断するまでの時間を測定した。
上記評価結果を表1及び2に示す。
Figure 0006832151
Figure 0006832151
上記表1及び2から、本発明のポリアセタール樹脂組成物はクリープ特性に優れ、かつ引張強さ、引張伸び、曲げ強さ、シャルピー衝撃強度の機械的特性に優れたものであることが明らかである。

Claims (5)

  1. (A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、
    (B)シランカップリング剤で表面処理されたガラス系無機充填材1質量部以上100質量部以下と、
    (C)ハロゲン化マグネシウムから選ばれる少なくとも一種のハロゲン化物0.0001質量部以上0.5質量部以下と
    (D)含窒素官能基を有するトリアジン誘導体0.002質量部以上10質量部以下とを、溶融混練して製造するポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
  2. 前記(B)ガラス系無機充填材が、さらにブロック化イソシアネート化合物及びポリウレタン樹脂とから選択される少なくとも一種の化合物で表面処理されたガラス系無機充填材である、請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
  3. 前記(C)ハロゲン化物は、塩化マグネシウムおよび臭化マグネシウムから選択された一種である、請求項1又は2に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
  4. (E)ホウ酸化合物0.001質量部以上1.0質量部以下をさらに含有する、請求項1〜3のいずれかの項に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
  5. 前記(B)ガラス系無機充填材がガラスファイバーである、請求項1〜4のいずれかの項に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
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