JP6830651B2 - ペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、形質転換体、NFκB阻害剤、及びNFκB亢進性疾患の治療剤 - Google Patents

ペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、形質転換体、NFκB阻害剤、及びNFκB亢進性疾患の治療剤 Download PDF

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Description

本開示は、NFκB(nuclear factor-kappa B)阻害作用を有する新規なペプチド、該ペプチドをコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含むベクター、該ベクターが導入された形質転換体、並びに該ペプチドを有効成分として含むNFκB阻害剤及びNFκB亢進性疾患の治療剤に関する。
炎症反応には種々のサイトカインや細胞接着分子の発現も関わっていることが知られている。この炎症性サイトカインがそれぞれに対応した受容体と結合することによって細胞内で各種分子のリン酸化が生じる。このリン酸化のカスケードは最終的に、核内の転写因子であるNFκBを活性化し、各種炎症物質の転写が促進されると考えられている。このように、炎症反応は最終的にNFκBの活性化に集約されており、このNFκBの活性を効果的に阻害する薬剤として、ステロイド薬が広く用いられている。
ステロイド薬は非常に強力な効果を有する一方で、重篤な副作用を引き起こすことも知られている。このため、ステロイド薬に代わるNFκB阻害剤が望まれていた。
このような背景の下、本発明者は、ステロイド薬と同様にNFκBの転写促進活性を直接阻害することができる一方、ステロイド薬のようなホルモン作用を有しない新規なペプチドとして、MTI−IIを発見している(例えば、特許第4874798号公報を参照)。
MTI−IIは、102個のアミノ酸残基からなる小さなペプチドであり、その中でNFκB阻害作用を有する部分は、32番目から75番目までのアミノ酸配列に対応する酸性アミノ酸領域であると考えられている。本発明者は、36番目から75番目までのアミノ酸配列からなるペプチドのC末端に8個のアルギニン残基からなる膜透過ペプチドを融合したペプチド(MPAID(MTI peptide anti-inflammatory drug)とも称する)を化学合成し、HeLa細胞に添加したところ、NFκBの転写促進活性が阻害されることが確認された(例えば、「日本ビタミン学会第66回大会、ビタミン、第88巻第4号、第260頁」及び「第87回日本生化学会大会、生化学、第86巻臨時増刊号、第101頁「4T13a−04」、第136頁「3P−006」」を参照)。また、このペプチドをアトピー性皮膚炎モデル動物に塗布投与したところ、in vivoでの抗炎症効果が確認された(例えば、「第87回日本生化学会大会、生化学、第86巻臨時増刊号、第101頁「4T13a−04」、第136頁「3P−006」」を参照)。
上記の「日本ビタミン学会第66回大会、ビタミン、第88巻第4号、第260頁」及び「第87回日本生化学会大会、生化学、第86巻臨時増刊号、第101頁「4T13a−04」、第136頁「3P−006」」で用いられているペプチドは、膜透過性ペプチドを含めて48個のアミノ酸残基からなる小さなペプチドであるが、抗原性、生産性等を考慮すると、ペプチド長のより短いペプチドが望まれる。しかし、本発明者の実験によれば、酸性アミノ酸領域のN末端側の断片である36番目から65番目までのアミノ酸配列からなるペプチド、中央部分の断片である41番目から70番目までのアミノ酸配列からなるペプチド、及びC末端側の断片である46番目から75番目までのアミノ酸配列からなるペプチド、のいずれもNFκB阻害作用を示さなかった。
そこで、本発明は、NFκB阻害作用を有する新規なペプチド、該ペプチドをコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含むベクター、該ベクターが導入された形質転換体、並びに該ペプチドを有効成分として含むNFκB阻害剤及びNFκB亢進性疾患の治療剤を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
<1> NFκB阻害作用を有する、下記(a)〜(e)から選ばれるいずれか1種のペプチド:
(a)配列番号1〜5のいずれか1つのアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)配列番号1〜5のいずれか1つにおいて1個若しくは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、NFκB阻害作用を有するペプチド、
(c)配列番号1〜5のいずれか1つのアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、NFκB阻害作用を有するペプチド、
(d)上記(a)〜(c)から選ばれるいずれか1種のペプチドに膜透過ペプチドが融合されたペプチド、
(e)上記(a)〜(d)から選ばれるいずれか1種のペプチドのN末端にMet残基、MetAla残基、又はAla残基が付加されたペプチド。
<2> 上記(b)のペプチドが、配列番号1又は2において1個〜4個のアミノ酸残基が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、NFκB阻害作用を有するペプチドである、上記<1>に記載のペプチド。
<3> 上記(b)のペプチドが、配列番号3〜5のいずれか1つにおいて1個又は2個のアミノ酸残基が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、NFκB阻害作用を有するペプチドである、上記<1>に記載のペプチド。
<4> 上記(d)のペプチドが、上記(a)〜(c)から選ばれるいずれか1種のペプチドのC末端に膜透過ペプチドが融合されたペプチドである、上記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のペプチド。
<5> 上記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のペプチドを有効成分として含むNFκB阻害剤。
<6> 上記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のペプチドを有効成分として含むNFκB亢進性疾患の治療剤。
<7> 上記NFκB亢進性疾患が炎症性疾患である、上記<6>に記載のNFκB亢進性疾患の治療剤。
<8> 上記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のペプチドをコードするポリヌクレオチド。
<9> 上記<8>に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
<10> 上記<9>に記載のベクターが導入された形質転換体。
<11> 上記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のペプチドを有効成分として含む医薬組成物を投与することを含むNFκB亢進性疾患の治療方法。
本発明によれば、NFκB阻害作用を有する新規なペプチド、該ペプチドをコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含むベクター、該ベクターが導入された形質転換体、並びに該ペプチドを有効成分として含むNFκB阻害剤及びNFκB亢進性疾患の治療剤を提供することができる。
実施例1のペプチドを発現するベクターをHeLa細胞にトランスフェクトしたときのTNFα誘導NFκB転写促進活性の阻害作用を示す図である。 実施例1のペプチドを発現するベクターをHeLa細胞にトランスフェクトしたときのTNFα誘導NFκB転写促進活性の阻害作用を示す図である。 実施例1のペプチドを発現するベクターをHeLa細胞にトランスフェクトしたときのTNFα誘導NFκB転写促進活性の阻害作用を示す図である。 20A5675(配列番号24)を発現するペプチド発現ベクターをHeLa細胞にトランスフェクトしたときの、TNFα添加後のCOX2量及びGAPDH量の変化を示す図である。 12A5162(配列番号27)を発現するペプチド発現ベクターをHeLa細胞にトランスフェクトしたときの、TNFα添加後のCOX2量及びGAPDH量の変化を示す図である。 実施例4のペプチドを発現するベクターをHeLa細胞にトランスフェクトしたときのTNFα誘導NFκB転写促進活性の阻害作用を示す図である。 実施例6のペプチドを発現するベクターをHeLa細胞にトランスフェクトしたときのTNFα誘導NFκB転写促進活性の阻害作用を示す図である。 12A5162−pep(配列番号39)又は6A5661−pep(配列番号40)のペプチドの存在下でHeLa細胞を培養したときのTNFα誘導NFκB転写促進活性の阻害作用を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
アミノ酸配列の記載は左側がN末端側であり、アミノ酸残基は本技術分野で周知の一文字表記(例えば、アラニン残基であれば「A」)又は三文字表記(例えば、アラニン残基であれば「Ala」)で表記する。
<NFκB阻害作用を有するペプチド>
本開示のペプチドは、下記(a)〜(e)から選ばれるいずれか1種である。
(a)配列番号1〜5のいずれか1つのアミノ酸配列からなるペプチド。
(b)配列番号1〜5のいずれか1つにおいて1個若しくは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、NFκB阻害作用を有するペプチド。
(c)配列番号1〜5のいずれか1つのアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、NFκB阻害作用を有するペプチド。
(d)上記(a)〜(c)から選ばれるいずれか1種のペプチドに膜透過ペプチドが融合されたペプチド。
(e)上記(a)〜(d)から選ばれるいずれか1種のペプチドのN末端にMet残基、MetAla残基、又はAla残基が付加されたペプチド。
本開示のペプチドの作製手法は、遺伝子工学的手法及び有機合成化学的手法のいずれであってもよい。遺伝子工学的手法の場合、後述する本開示の形質転換体を利用することができる。
上記(a)のペプチドは、詳細には以下のいずれか1つのアミノ酸配列からなる(アミノ酸残基は一文字表記で示す)。
GEDDDEGDEEDEEEEEEEDE(配列番号1)
ETAEDGEDDDEG(配列番号2)
EDGEDD(配列番号3)
GEDDDE(配列番号4)
DEEDEE(配列番号5)
配列番号1のアミノ酸配列は、MTI−IIの56番目から75番目までのアミノ酸配列に対応する。また、配列番号2のアミノ酸配列は、MTI−IIの51番目から62番目までのアミノ酸配列に対応する。また、配列番号3のアミノ酸配列は、MTI−IIの54番目から59番目までのアミノ酸配列に対応する。また、配列番号4のアミノ酸配列は、MTI−IIの56番目から61番目までのアミノ酸配列に対応する。また、配列番号5のアミノ酸配列は、MTI−IIの63番目から68番目までのアミノ酸配列に対応する。
MTI−IIの中でNFκB阻害作用を有する部分は、32番目から75番目までのアミノ酸配列に対応する酸性アミノ酸領域であると考えられている。しかし、本発明者の実験によれば、酸性アミノ酸領域のN末端側の断片である36番目から65番目までのアミノ酸配列からなるペプチド、中央部分の断片である41番目から70番目までのアミノ酸配列からなるペプチド、及びC末端側の断片である46番目から75番目までのアミノ酸配列からなるペプチド、のいずれもNFκB阻害作用を示さなかった。配列番号1〜5のようにより短い断片であるペプチドがNFκB阻害作用を示すことは驚くべきことである。
上記(b)のペプチドは、配列番号1〜5のいずれか1つにおいて1個若しくは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、NFκB阻害作用を有するペプチドである。
置換、欠失、及び/又は付加されるアミノ酸残基の数は、NFκB阻害作用が維持される限り特に限定されない。置換、欠失、及び/又は付加されるアミノ酸残基の数は、例えば、1個〜4個であってもよく、1個〜3個であってもよく、1個又は2個であってもよく、1個であってもよい。
任意のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換する場合、置換前後でアミノ酸側鎖の性質が保存されていることが望ましい。アミノ酸側鎖の性質によってアミノ酸を分類する場合、例えば、親水性アミノ酸(D、E、K、R、H、S、T、N、Q);疎水性アミノ酸(A、G、V、I、L、F、Y、W、M、C、P);酸性アミノ酸(D、E);塩基性アミノ酸(K、R、H);脂肪族側鎖を有するアミノ酸(A、G、V、I、L);芳香族基含有側鎖を有するアミノ酸(F、Y、W);硫黄含有側鎖を有するアミノ酸(M、C);等に分類することができる(括弧内のアルファベットはアミノ酸の一文字表記を示す)。
アミノ酸残基が置換、欠失、及び/又は付加される位置は、NFκB阻害作用が維持される限り特に限定されない。
例えば、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドの場合、C末端側に酸性アミノ酸残基が13個連続した領域が存在するため、この領域の1個又は数個のアミノ酸残基を他の酸性アミノ酸残基に置換してもよく、この領域の1個又は数個のアミノ酸残基を欠失させてもよく、この領域に1個又は数個の酸性アミノ酸残基を付加してもよい。
また、配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドの場合、N末端側から7番目〜11番目に酸性アミノ酸残基が5個連続した領域が存在するため、この領域の1個又は数個のアミノ酸残基を他の酸性アミノ酸残基に置換してもよく、この領域の1個又は数個のアミノ酸残基を欠失させてもよく、この領域に1個又は数個の酸性アミノ酸残基を付加してもよい。
また、配列番号3又は4のアミノ酸配列からなるペプチドの場合、1個のグリシン残基を除いて酸性アミノ酸残基で構成されるため、1個又は2個の酸性アミノ酸残基を他の酸性アミノ酸残基に置換してもよく、1個又は2個の酸性アミノ酸残基を付加してもよい。
また、配列番号5のアミノ酸配列からなるペプチドの場合、酸性アミノ酸残基で構成されるため、1個又は2個の酸性アミノ酸残基を他の酸性アミノ酸残基に置換してもよく、1個又は2個の酸性アミノ酸残基を付加してもよい。
上記(b)のペプチドの具体例としては、以下のアミノ酸配列からなるペプチドが挙げられる(アミノ酸残基は一文字表記で示す)。
GEDDDEGDEEDEEEEEDDDE(配列番号6)
ETAEDGEDDDG(配列番号7)
ETAEDGEDDDDG(配列番号8)
ETAEDGDEDDEG(配列番号9)
EDGDED(配列番号10)
GEDDDD(配列番号11)
GDEDDE(配列番号12)
DEEDED(配列番号13)
配列番号6のペプチドは、配列番号1のN末端側から17番目及び18番目のグルタミン酸残基をアスパラギン酸残基に置換したものである。
配列番号7のペプチドは、配列番号2のN末端側から11番目のグルタミン酸残基を欠失させたものである。
配列番号8のペプチドは、配列番号2のN末端側から11番目のグルタミン酸残基をアスパラギン酸残基に置換したものである。
配列番号9のペプチドは、配列番号2のN末端側から7番目のグルタミン酸残基をアスパラギン酸残基に置換するとともに、N末端側から8番目のアスパラギン酸残基をグルタミン酸残基に置換したものである。
配列番号10のペプチドは、配列番号3のN末端側から4番目のグルタミン酸残基をアスパラギン酸残基に置換するとともに、N末端側から5番目のアスパラギン酸残基をグルタミン酸残基に置換したものである。
配列番号11のペプチドは、配列番号4のC末端のグルタミン酸残基をアスパラギン酸残基に置換したものである。
配列番号12のペプチドは、配列番号4のN末端側から2番目のグルタミン酸残基をアスパラギン酸残基に置換するとともに、N末端側から3番目のアスパラギン酸残基をグルタミン酸残基に置換したものである。
配列番号13のペプチドは、配列番号5のC末端のグルタミン酸残基をアスパラギン酸残基に置換したものである。
なお、上記(b)のペプチドがこれらの例に限定されるものでないことは勿論である。
上記(c)のペプチドは、配列番号1〜5のいずれか1つのアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、NFκB阻害作用を有するペプチドである。
配列番号1〜5のいずれか1つのアミノ酸配列との相同性は、NFκB阻害作用が維持される限り特に限定されないが、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、98%以上が特に好ましい。
上記(c)のペプチドの具体例としては、配列番号6〜13のいずれか1つのアミノ酸配列からなるペプチドが挙げられる。なお、上記(c)のペプチドがこれらの例に限定されるものでないことは勿論である。
上記(d)のペプチドは、上記(a)〜(c)から選ばれるいずれか1種のペプチドに膜透過ペプチドが融合されたペプチドである。膜透過ペプチドが融合されることにより、細胞内への導入が促進されて、NFκBの転写促進活性を効果的に阻害することができる。
膜透過ペプチドとしては、細胞膜透過性を付与することができるペプチドであれば特に制限されない。膜透過ペプチドの具体例としては、オリゴアルギニン(Rn;nはアルギニン残基の数であり6〜12)、HIV−TAT(配列番号14)、HSV/VP22(配列番号15)、ANTENNAPEDIA(配列番号16)等が挙げられる。この中でも、オリゴアルギニン(Rn;nはアルギニン残基の数であり6〜12)が好ましい。なお、オリゴアルギニンは核移行シグナルとしても機能する。
膜透過ペプチドの融合位置は、NFκB阻害作用が維持される限り特に限定されない。例えば、上記(a)〜(c)から選ばれるいずれか1種のペプチドのN末端側又はC末端側に膜透過ペプチドが融合されていてもよい。また、上記(a)〜(c)から選ばれるいずれか1種のペプチドの途中に膜透過ペプチドが融合され、上記(a)〜(c)から選ばれるいずれか1種のペプチドが膜透過ペプチドによって分断されていてもよい。NFκB阻害作用を維持する観点から、膜透過ペプチドの融合位置は、上記(a)〜(c)から選ばれるいずれか1種のペプチドのC末端側であることが好ましい。
上記(a)〜(c)から選ばれるいずれか1種のペプチドのN末端側又はC末端側に膜透過ペプチドが融合される場合、膜透過ペプチドは、上記(a)〜(c)から選ばれるいずれか1種のペプチドに直接融合されたものであってもよく、リンカーを介して融合されたものであってもよい。リンカーとしては、例えば1個〜10個のアミノ酸残基からなるものが挙げられる。
なお、本開示のペプチドが膜透過ペプチドを含まない場合であっても、リポソーム等の公知の細胞導入手段を用いて、本開示のペプチドを細胞内に導入することが可能である。
上記(e)のペプチドは、上記(a)〜(d)から選ばれるいずれか1種のペプチドのN末端にMet残基、MetAla残基、又はAla残基が付加されたペプチドである。
本開示のペプチドを遺伝子工学的手法で作製する場合、ポリヌクレオチドの5’末端に開始コドンが付加されることにより、Met残基がN末端に付加した状態のペプチドが得られることがある。また、後述する実施例に示すように、Met残基に対応する開始コドン(ATG)を発現ベクターの制限酵素サイトの開始部位(Nco I、CCATGG)に合わせるため、MetAla残基に対応するヌクレオチド配列(ATGGCG)がポリヌクレオチドの5’末端に付加されることにより、MetAla残基がN末端に付加した状態のペプチドが得られることもある。後者の場合、Met残基が翻訳後切断される結果、Ala残基がN末端に付加した状態のペプチドが得られることもある。本開示のペプチドは、このようにN末端にMet残基、MetAla残基、又はAla残基が付加されたペプチドであってもよい。
本開示のペプチドを構成するアミノ酸残基は、NFκB阻害作用が維持される限り、L体及びD体のいずれであってもよい。生体内でのペプチドの分解を抑制する観点からは、本開示のペプチドを構成するアミノ酸残基の少なくとも一部をD体とすることが好ましい。
また、本開示のペプチドを構成するアミノ酸残基は、用途に応じて種々の修飾が施されていてもよい。このようなアミノ酸修飾としては、アミノ基修飾(ビオチン化、ミリストイル化、パルミトイル化、アセチル化、マレイミド化等);カルボキシ基修飾(アミド化、エステル化等);チオール基修飾(ファルネシル化、ゲラニル化、メチル化、パルミトイル化等);水酸基修飾(リン酸化、硫酸化、オクタノイル化、パルミトイル化等);各種蛍光標識;PEG化(ポリエチレングリコール化);等が挙げられる。
本開示のペプチドは、ステロイド薬と同様にNFκBの転写促進活性を直接阻害することができる一方、ステロイド薬のようなホルモン作用を有しないため、副作用の懸念が少ない。また、既報のMTI−IIやその酸性アミノ酸領域のペプチドと比較してペプチド長が非常に短いため、抗原性が低く、かつ、多量生産にも適している。
<ポリヌクレオチド>
本開示のポリヌクレオチドは、本開示のペプチドをコードするものである。該ポリヌクレオチドは、DNA、RNA、DNA/RNAキメラのいずれであってもよい。また、該ポリヌクレオチドは、二本鎖であっても一本鎖であってもよい。二本鎖の場合、二本鎖DNA、二本鎖RNA、DNA及びRNAのハイブリッドのいずれであってもよい。
本開示のポリヌクレオチドは、公知の配列情報に基づき、公知の遺伝子組換え技術を利用することにより容易に製造することができる。例えば、配列情報に基づき適当なプライマーを設計し、本開示のペプチドをコードするDNAをPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)によって増幅し、DNAフラグメントをリガーゼ等の適切な酵素を用いて連結することにより、本開示のポリヌクレオチドを製造することができる。また、配列情報に基づいて、ポリヌクレオチド合成装置により本開示のポリヌクレオチドを合成してもよい。
取得された本開示のポリヌクレオチドは、必要に応じて制限酵素で消化するかリンカーを付加した後に使用してもよく、そのまま使用してもよい。
<ベクター>
本開示のベクターは、本開示のポリヌクレオチドを含むものである。このベクターは、本開示のポリヌクレオチドをベクター中のプロモーターの下流に機能的に連結することにより作製することができる。
ベクターの種類としては、プラスミドベクター、ウイルスベクター等があり、用いる宿主に応じて適宜選択することができる。プラスミドベクターとしては、大腸菌由来のプラスミドベクター、枯草菌由来のプラスミドベクター、酵母由来のプラスミドベクター等が挙げられる。ウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、パピローマウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、SV40ベクター等が挙げられる。
プロモーターとしては、trpプロモーター、lacプロモーター、T7プロモーター、CMVプロモーター、SRαプロモーター等があり、用いる宿主に応じて適宜選択することができる。
本開示のベクターは、必要に応じて、エンハンサー、スプライシングシグナル、選択マーカー等を、それぞれ機能可能な態様で含んでいてもよい。選択マーカーとしては、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等が挙げられる。
<形質転換体>
本開示の形質転換体は、本開示のベクターが導入されたものである。
ベクターが導入される宿主としては、細菌、酵母、昆虫細胞、哺乳動物細胞等がある。細菌としては、エシェリヒア属菌(Escherichia coli等)、バチルス属菌(Bacillus subtilis等)等が挙げられる。哺乳動物細胞としては、HeLa細胞、COS−7細胞、CHO細胞、CV−1細胞等が挙げられる。
宿主にベクターを導入する方法としては、リポフェクション法、リン酸カルシウム法、マイクロインジェクション法、プロトプラスト融合法、エレクトロポレーション法、DEAEデキストラン法、遺伝子銃法等が挙げられる。
なお、本開示のベクターとして発現ベクターを用い、この発現ベクターを適切な宿主に導入した場合、得られる形質転換体は本開示のペプチドを発現し得る。したがって、形質転換体を宿主の種類に応じた方法で培養し、培養物から本開示のペプチドを単離することにより、本開示のペプチドを製造することができる。本開示のペプチドを単離又は精製するには、例えば、菌体溶解液や培養上清を、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等に供すればよい。
<NFκB阻害剤>
本開示のNFκB阻害剤は、本開示のペプチドを有効成分として含むものである。上記のとおり本開示のペプチドはNFκB阻害作用を有するため、本開示のペプチドを用いることにより、NFκB阻害剤を製造することができる。
本開示のNFκB阻害剤は、使用態様に応じて本開示のペプチド以外の成分を含んでいてもよい。本開示のペプチド以外の成分としては、薬剤の調製に一般に用いられる媒質及び製剤用添加物を挙げることができる。媒質及び製剤用添加物の種類は特に制限されない。媒質としては、固体媒質(例えば、ゼラチン、乳糖)及び液体媒質(例えば、アルコール、水、生理食塩水)が挙げられる。製剤用添加物としては、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、緩衝剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、懸濁化剤、乳化剤、増粘剤、湿潤剤、防腐剤等が挙げられる。
本開示のNFκB阻害剤の形態は特に制限されず、固体組成物及び液体組成物のいずれであってもよい。
<NFκB亢進性疾患の治療剤>
本開示のNFκB亢進性疾患の治療剤(以下、単に「治療剤」ともいう。)は、本開示のペプチドを有効成分として含むものである。上記のとおり本開示のペプチドはNFκB阻害作用を有するため、本開示のペプチドを用いることにより、NFκB亢進性疾患の治療剤(医薬組成物)を製造することができる。
NFκB亢進性疾患は、NFκB阻害作用が有効な疾患であれば特に制限されない。具体的には、関節リウマチ、膠原病、全身性エリテマトーデス、アトピー性皮膚炎、乾癬、乾燥性角結膜炎(ドライアイ)、花粉症、気管支喘息、肺炎、肝炎、腎炎、炎症性腸疾患、痛風、悪性腫瘍(がん)等が挙げられる。本開示の治療剤は、例えば炎症性疾患の治療に好適に用いられる。
なお、「治療」には、NFκB亢進性疾患に起因する症状を消失又は軽減させることのほか、症状の進行の度合いを抑制することも含まれる。
本開示の治療剤は、使用態様に応じて本開示のペプチド以外の成分を含んでいてもよい。本開示のペプチド以外の成分としては、薬剤の調製に一般に用いられる媒質及び製剤用添加物を挙げることができる。媒質及び製剤用添加物の種類は特に制限されない。媒質としては、固体媒質(例えば、ゼラチン、乳糖)及び液体媒質(例えば、アルコール、水、生理食塩水)が挙げられる。製剤用添加物としては、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、緩衝剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、懸濁化剤、乳化剤、増粘剤、湿潤剤、防腐剤等が挙げられる。
本開示の治療剤の剤形は特に制限されず、注射剤、点眼剤、点鼻剤、外用剤等の非経口投与に適した剤形;錠剤、カプセル剤、液剤等の経口投与に適した剤形;等のいずれであってもよい。
本開示の治療剤をNFκB亢進性疾患の患者に投与することにより、NFκB亢進性疾患の治療方法が提供される。すなわち、本開示のペプチドを有効成分として含む医薬組成物を投与することを含むNFκB亢進性疾患の治療方法が提供される。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
配列番号17〜29のアミノ酸配列からなる13種類のペプチドをコードするDNAを合成し、このDNAをpTriEx−4ベクター(Novagen社製、カタログ番号:70824-3)のNco I−EcoR I部位に組み込むことによって、各ペプチドを発現するペプチド発現ベクターを構築した。
実施例1における13種類のペプチドと、MTI−IIの酸性アミノ酸領域(MTI−IIの36番目から75番目までのアミノ酸配列;AR(36−75))との位置関係を表1に示す。
表1に示す13種類のペプチドはいずれも、MTI−IIの断片であるペプチドのN末端にMetAla残基を付加し、C末端に膜透過ペプチドであるオリゴアルギニン(RRRRRR)を付加したものである。ペプチドの名称中、「A」の前の2桁の数字は、MTI−IIの断片であるアミノ酸残基の残基数を示す。また、「A」の後の4桁の数字は、MTI−IIの断片のN末端側の位置(前半2桁)及びC末端側の位置(後半2桁)を示す。例えば、「30A3665」は、MTI−IIの36番目から65番目までの30アミノ酸残基からなるペプチドのN末端にMetAla残基を付加し、C末端にオリゴアルギニン(RRRRRR)を付加したペプチドを示す。
ポジティブコントロール用プラスミド(pTri−MTI)は、pTriEx−4ベクターのNco I−EcoR I部位にMTI−II(Gene Bank Accession No. M24398)のcDNAを組み込むことによって構築した。
ネガティブコントロール用プラスミド(pTri−NC)は、pTriEx−4ベクターをXcm I、EcoR Iで切断し、切断断片を除去した後にセルフライゲーションを行うことによって構築した。
なお、NFκB依存性ホタルルシフェラーゼレポーターベクターとしては、pGL4.32(プロメガ社製、カタログ番号:E8491)を準備した。
<実施例2>
本開示のペプチドのNFκB阻害作用を確認するため、以下のようなルシフェラーゼアッセイを行った。
まず、HeLa細胞(DS Pharma Biomedical社製、カタログ番号:03-117)を、48ウェルマイクロプレート(IWAKI社製、カタログ番号:3830-048)に1ウェル当たり0.12×10細胞となるように播種し、10%ウシ胎児血清(ハイクローン社製、カタログ番号:SH30070.03)及びペニシリン−ストレプトマイシン(Sigma社製、カタログ番号:P0781)を添加したDMEM培地(Sigma社製、カタログ番号:D6047)中で5%CO及び37℃の条件下で培養した。18時間後に、培地中の種々のホルモンを除く目的で、チャコール・デキストラン処理した10%ウシ胎児血清(ハイクローン社製、カタログ番号:SH30068.03)入りのDMEM培地に換えた。
次いで、NFκB依存性ホタルルシフェラーゼレポーターベクター(1ウェル当たり60ng)と、各ペプチド発現ベクター、pTri−MTI、及びpTri−NCから選ばれる1種(1ウェル当たり120ng)とを混合した後、トランスフェクション試薬(プロメガ社製FuGENE HD、カタログ番号:E2311)(FuGENEは登録商標)を加え、DNA/トランスフェクション試薬混合液を調製した。このDNA/トランスフェクション試薬混合液を培地交換24時間後の細胞に添加してインキュベートすることにより、各DNAをHeLa細胞にトランスフェクトした。
次いで、DNA/トランスフェクション試薬混合液の添加48時間後の細胞に、終濃度1ng/mLとなるようにTNFα(Sigma社製、カタログ番号:T0157)を添加した。TNFαの添加4時間後に、1ウェル当たり50μLの細胞溶解剤(プロメガ社製、カタログ番号:E1941)を添加して細胞をウェル中で溶解した後、細胞溶解液を回収した。そして、細胞溶解液中のNFκB依存性ホタルルシフェラーゼ発現量(発光量)を、デュアル・ルシフェラーゼ定量試薬(プロメガ社製、カタログ番号:E1980)を用い、ルミノメーター(プロメガ社製TD-20/20、カタログ番号:E2351)で測定した。結果を図1〜3に示す。図1〜3の縦軸はNFκBの転写促進活性に依存したルシフェラーゼ発現量(発光量)を示す。
図1〜3に示されるとおり、20A5675又は12A5162を発現するペプチド発現ベクターをHeLa細胞にトランスフェクトした場合には、TNFαを添加したときのルシフェラーゼ発現量(発光量)が顕著に抑制されていた。すなわち、TNFα誘導性のNFκB転写促進活性が顕著に阻害されていた。これに対して、他のペプチドを発現するペプチド発現ベクターをHeLa細胞にトランスフェクトした場合には、NFκB転写促進活性の阻害効果は確認できなかった。
<実施例3>
本開示のペプチドのNFκB阻害作用をルシフェラーゼアッセイ以外の方法で確認するため、NFκBにより誘導されるCOX2と誘導されないGAPDHとについて、TNFα添加後の発現量の変化をウエスタンブロット法により解析した。
まず、HeLa細胞(DS Pharma Biomedical社製、カタログ番号:03-117)を、48ウェルマイクロプレート(IWAKI社製、カタログ番号:3830-048)に1ウェル当たり0.12×10細胞となるように播種し、10%ウシ胎児血清(ハイクローン社製、カタログ番号:SH30070.03)及びペニシリン−ストレプトマイシン(Sigma社製、カタログ番号:P0781)を添加したDMEM培地(Sigma社製、カタログ番号:D6047)中で5%CO及び37℃の条件下で培養した。18時間後に、培地中の種々のホルモンを除く目的で、チャコール・デキストラン処理した10%ウシ胎児血清(ハイクローン社製、カタログ番号:SH30068.03)入りのDMEM培地に換えた。
次いで、20A5675を発現するペプチド発現ベクター、12A5162を発現するペプチド発現ベクター、及びpTri−NCから選ばれる1種(1ウェル当たり120ng)をトランスフェクション試薬(プロメガ社製FuGENE HD、カタログ番号:E2311)(FuGENEは登録商標)と混合し、DNA/トランスフェクション試薬混合液を調製した。このDNA/トランスフェクション試薬混合液を培地交換24時間後の細胞に添加してインキュベートすることにより、各DNAをHeLa細胞にトランスフェクトした。
次いで、DNA/トランスフェクション試薬混合液の添加48時間後の細胞に、終濃度1ng/mLとなるようにTNFα(Sigma社製、カタログ番号:T0157)を添加した。TNFαの添加0〜10時間後に、1ウェル当たり50μLの細胞溶解剤(プロメガ社製、カタログ番号:E1941)を添加して細胞をウェル中で溶解した後、細胞溶解液を回収した。そして、細胞溶解液50μLに10μLの6×SDSバッファを添加後、100℃で10分間の加熱を行い、SDS処理サンプルを得た。このSDS処理サンプルを12.5%アクリルアミドゲルにて電気泳動し、泳動後のゲルからタンパク質をPVDF膜に転写した。タンパク質を転写したPVDF膜上のCOX2及びGAPDHを、抗COX2抗体(アブカム社製、COX2 rabbit polyclonal antibody (ab52237))、抗GAPDH抗体(アブカム社製、GAPDH rabbit polyclonal antibody (ab9485))及びHRP(ワサビペルオキシダーゼ)標識抗ウサギIgG抗体(ミリポア社製、12−348)で検出した。検出には、GEヘルスケア社製のECL-plus化学発光試薬を用いた。
20A5675を発現するペプチド発現ベクターをHeLa細胞にトランスフェクトしたときの、TNFα添加後のCOX2量及びGAPDH量の変化を図4に示す。また、12A5162を発現するペプチド発現ベクターをHeLa細胞にトランスフェクトしたときの、TNFα添加後のCOX2量及びGAPDH量の変化を図5に示す。図4、5の横軸はTNFα添加後の経過時間を示し、縦軸はTNFα添加0時間後のCOX2又はGAPDHの量を100としたときの相対量を示す。
図4、5に示されるとおり、20A5675又は12A5162を発現するペプチド発現ベクターをHeLa細胞にトランスフェクトした場合には、NFκBによるCOX2の誘導が阻害されたが、GAPDH量には影響を与えなかった。このことから、20A5675及び12A5162はNFκBの転写促進活性を阻害することが分かる。
<実施例4>
配列番号30〜33のアミノ酸配列からなる4種類のペプチドをコードするDNAを合成し、このDNAをpTriEx−4ベクター(Novagen社製、カタログ番号:70824-3)のNco I−EcoR I部位に組み込むことによって、各ペプチドを発現するペプチド発現ベクターを構築した。
実施例4における4種類のペプチドと、MTI−IIの酸性アミノ酸領域(MTI−IIの36番目から75番目までのアミノ酸配列;AR(36−75))との位置関係を表2に示す。
20AEEDDは、20A5675のN末端側から19番目及び20番目のグルタミン酸残基をアスパラギン酸残基に置換したものである。
12AdelEは、12A5162のN末端側から13番目のグルタミン酸残基を欠失させたものである。
12AEDは、12A5162のN末端側から13番目のグルタミン酸残基をアスパラギン酸残基に置換したものである。
12AEDDEは、12A5162のN末端側から9番目のグルタミン酸残基をアスパラギン酸残基に置換するとともに、N末端側から10番目のアスパラギン酸残基をグルタミン酸残基に置換したものである。
ポジティブコントロールとしては、20A5675又は12A5162を発現するペプチド発現ベクターを準備した。
ネガティブコントロールとしてはpTri−NCを準備し、NFκB依存性ホタルルシフェラーゼレポーターベクターとしてはpGL4.32(プロメガ社製、カタログ番号:E8491)を準備した。
<実施例5>
実施例4で構築したペプチド発現ベクターを用い、ポジティブコントロールとして20A5675又は12A5162を発現するペプチド発現ベクターを用いた以外は、実施例2と同様にしてルシフェラーゼアッセイを行った。結果を図6に示す。図6の縦軸はNFκBの転写促進活性に依存したルシフェラーゼ発現量(発光量)を示す。
図6に示されるとおり、20AEEDDを発現するペプチド発現ベクターをHeLa細胞にトランスフェクトした場合には、TNFαを添加したときのルシフェラーゼ発現量(発光量)が顕著に抑制されていた。すなわち、TNFα誘導性のNFκB転写促進活性が顕著に阻害されていた。また、12AdelE、12AED、又は12AEDDEを発現するペプチド発現ベクターをHeLa細胞にトランスフェクトした場合には、TNFαを添加したときのルシフェラーゼ発現量(発光量)が有意に抑制されていた。すなわち、TNFα誘導性のNFκB転写促進活性が有意に阻害されていた。
<実施例6>
配列番号34〜38のアミノ酸配列からなる5種類のペプチドをコードするDNAを合成し、このDNAをpTriEx−4ベクター(Novagen社製、カタログ番号:70824-3)のNco I−EcoR I部位に組み込むことによって、各ペプチドを発現するペプチド発現ベクターを構築した。
実施例6における5種類のペプチドと、MTI−IIの酸性アミノ酸領域(MTI−IIの36番目から75番目までのアミノ酸配列;AR(36−75))との位置関係を表3に示す。
表3に示す5種類のペプチドはいずれも、MTI−IIの断片であるペプチドのN末端にMetAla残基を付加し、C末端に膜透過ペプチドであるオリゴアルギニン(RRRRRR)を付加したものである。
ポジティブコントロールとしてはpTri−MTIを準備し、ネガティブコントロールとしてはpTri−NCを準備した。また、NFκB依存性ホタルルシフェラーゼレポーターベクターとしてはpGL4.32(プロメガ社製、カタログ番号:E8491)を準備した。
<実施例7>
実施例6で構築したペプチド発現ベクターを用いた以外は、実施例2と同様にしてルシフェラーゼアッセイを行った。結果を図7に示す。図7の縦軸はNFκBの転写促進活性に依存したルシフェラーゼ発現量(発光量)を示す。
図7に示されるとおり、6A5661を発現するペプチド発現ベクターをHeLa細胞にトランスフェクトした場合には、TNFαを添加したときのルシフェラーゼ発現量(発光量)が顕著に抑制されていた。すなわち、TNFα誘導性のNFκB転写促進活性が顕著に阻害されていた。また、6A5459又は6A6368を発現するペプチド発現ベクターをHeLa細胞にトランスフェクトした場合には、TNFαを添加したときのルシフェラーゼ発現量(発光量)が有意に抑制されていた。すなわち、TNFα誘導性のNFκB転写促進活性が有意に阻害されていた。これに対して、6A5156又は6A5762を発現するペプチド発現ベクターをHeLa細胞にトランスフェクトした場合には、NFκB転写促進活性の阻害効果は確認できなかった。
<実施例8>
化学合成した本開示のペプチドのNFκB阻害作用を確認するため、表4に示す2種類のペプチドを化学合成した。
上記の2種類のペプチドを用いて、以下のようなルシフェラーゼアッセイを行った。
まず、HeLa細胞(DS Pharma Biomedical社製、カタログ番号:03-117)を、48ウェルマイクロプレート(IWAKI社製、カタログ番号:3830-048)に1ウェル当たり0.12×10細胞となるように播種し、10%ウシ胎児血清(ハイクローン社製、カタログ番号:SH30070.03)及びペニシリン−ストレプトマイシン(Sigma社製、カタログ番号:P0781)を添加したDMEM培地(Sigma社製、カタログ番号:D6047)中で5%CO及び37℃の条件下で培養した。18時間後に、培地中の種々のホルモンを除く目的で、チャコール・デキストラン処理した10%ウシ胎児血清(ハイクローン社製、カタログ番号:SH30068.03)入りのDMEM培地に換えた。
次いで、NFκB依存性ホタルルシフェラーゼレポーターベクター(1ウェル当たり60ng)とトランスフェクション試薬(プロメガ社製FuGENE HD、カタログ番号:E2311)(FuGENEは登録商標)とを混合し、DNA/トランスフェクション試薬混合液を調製した。このDNA/トランスフェクション試薬混合液を培地交換24時間後の細胞に添加してインキュベートすることにより、ルシフェラーゼレポーター遺伝子をHeLa細胞にトランスフェクトした。
次いで、DNA/トランスフェクション試薬混合液の添加10時間後に、12A5162−pep(終濃度1.5mg/mL又は3.0mg/mL)又は6A5661−pep(終濃度1.5mg/mL又は3.0mg/mL)と、チャコール・デキストラン処理した10%ウシ胎児血清(ハイクローン社製、カタログ番号:SH30068.03)とを添加したDMEM培地に換えた。ネガティブコントロール(NC)としては、ペプチドの代わりにPBS(リン酸緩衝生理食塩水)を添加した。
次いで、培地交換38時間後の細胞に、終濃度1ng/mLとなるようにTNFα(Sigma社製、カタログ番号:T0157)を添加した。TNFαの添加4.5時間後に、1ウェル当たり50μLの細胞溶解剤(プロメガ社製、カタログ番号:E1941)を添加して細胞をウェル中で溶解した後、細胞溶解液を回収した。そして、細胞溶解液中のNFκB依存性ホタルルシフェラーゼ発現量(発光量)を、デュアル・ルシフェラーゼ定量試薬(プロメガ社製、カタログ番号:E1980)を用い、ルミノメーター(プロメガ社製TD-20/20、カタログ番号:E2351)で測定した。結果を図8に示す。図8の縦軸はNFκBの転写促進活性に依存したルシフェラーゼ発現量(発光量)を示す。
図8に示されるとおり、12A5162−pep又は6A5661−pepの存在下でHeLa細胞を培養した場合には、TNFαを添加したときのルシフェラーゼ発現量(発光量)が濃度依存的に抑制されていた。すなわち、TNFα誘導性のNFκB転写促進活性が濃度依存的に阻害されていた。
2014年12月19日に出願された日本出願2014−257827の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。

Claims (7)

  1. NFκB阻害作用を有する、下記(a)〜(b)から選ばれるいずれか1種のペプチド:
    (a)配列番号1〜のいずれか1つのアミノ酸配列からなるペプチドのC末端に膜透過ペプチドが融合されたペプチド、
    (b)前記(a)から選ばれるいずれか1種のペプチドのN末端にMet残基、MetAla残基、又はAla残基が付加されたペプチド。
  2. 請求項1に記載のペプチドを有効成分として含むNFκB阻害剤。
  3. 請求項1に記載のペプチドを有効成分として含むNFκB亢進性疾患の治療剤。
  4. 前記NFκB亢進性疾患が炎症性疾患である、請求項3に記載のNFκB亢進性疾患の治療剤。
  5. 請求項1に記載のペプチドをコードするポリヌクレオチド。
  6. 請求項5に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
  7. 請求項6に記載のベクターが導入された形質転換体。
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