JP4507084B2 - アポトーシス誘導性ペプチド及びその利用 - Google Patents

アポトーシス誘導性ペプチド及びその利用 Download PDF

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Description

本発明は、天然には存在しない形態の独立したペプチド鎖から成るアポトーシス誘導性オリゴペプチド又はポリペプチド(以下これらを総称して「アポトーシス誘導性ペプチド」という。)及びその利用、特に該ペプチドを含むアポトーシス誘導剤(組成物)に関する。
細胞のアポトーシス(細胞死)は、生体組織を正常な状態に保つうえで重要な現象である。例えばガン細胞は、アポトーシスの機構が正常に機能せずに無限に分裂増殖を行う細胞と規定することができる。
アポトーシス(細胞死)は、種々の物質によって誘導されることが知られている。従って、そのような物質を標的細胞(例えばガン細胞、ウイルス感染細胞)に付与することによって人為的にアポトーシスを誘導し、当該標的細胞を死滅させることが可能である。
例えば、特許文献1には、アポトーシスを誘導し得る物質としてデング熱ウイルス由来のタンパク質が紹介されている。特許文献2には、クサリヘビ科のヘビの毒腺由来のアポトーシス誘導性タンパク質が紹介されている。特許文献3には、細胞表面レセプターであるFasを介した細胞のアポトーシス誘導を増強し得るポリペプチドが紹介されている。また、特許文献4には、ランダムに作製された約6万種の合成ペンタペプチドのライブラリー中から、所定の細胞に対してアポトーシスを誘導し得ると評価されて単離された38種類のペンタペプチドのアミノ酸配列が記載されている。
国際公開第WO2001/096376号パンフレット 特開平11−1496号公報 特開2001−193号公報 特開2002−53596号公報 ユウコ・ショウヤら(Yuko Shoya et al.)、ジャーナル・オブ・ヴァイロロジー(JOURNAL OF VIROLOGY)、72巻12号、1998年、pp.9755−9762 ケン・フシン・ランら(Keng-Hsin Lan et al.)、オンコジーン (Oncogene)、21巻、2002年、pp.4801−4811
しかしながら、特許文献1〜3に記載のアポトーシス誘導性物質は、分子量が比較的大きなタンパク質(ポリペプチド)であることから、その使用形態には制限がある。他方、特許文献4に記載のペンタペプチドはアポトーシス誘導活性が低く(特許文献4の実施例参照)、実用的ではない。
そこで本発明は、上記公報に記載されているような従前の物質とは異なるアミノ酸配列から成り、優れたアポトーシス誘導性を示す人為的に設計されたペプチド及び該ペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供することを目的とする。また、そのようなアポトーシス誘導性ペプチドを主成分とするアポトーシス誘導剤(薬学上の組成物)の提供を他の目的とする。
本発明者は、従来アポトーシス誘導性との関連性が全く認められていなかったアミノ酸配列から成るタンパク質の一部である部分アミノ酸配列に優れたアポトーシス誘導活性があることを見出し、ここに提供する種々の発明を完成するに至った。本発明によって提供されるアポトーシス誘導性ペプチドは、自然界においてアポトーシス誘導性ペプチドとして知られたポリペプチドとは異なるポリペプチドに含まれる、部分的なアミノ酸配列を利用して創出されたアポトーシス誘導性ペプチドである。
ここで開示される典型的なペプチドは、少なくとも1種の細胞に対してアポトーシスを誘導し得るペプチドであって、以下の2種類のアミノ酸配列:
(a)PRPRKIPR ;
(b)PPRKKRTVV;
のうちのいずれかのアミノ酸配列又は該アミノ酸配列に部分的な改変が施された配列を含む人為的に合成されたペプチドである。
本明細書において「人為的に合成されたペプチド」とは、そのペプチド鎖がそれのみで独立して自然界に存在するものではなく、人為的な化学合成或いは生合成(即ち遺伝子工学的手法による生産)によって製造されたペプチド断片をいう。
本明細書において「アポトーシスを誘導し得るペプチド」及び「アポトーシス誘導性ペプチド」とは、少なくとも1種の細胞に対してアポトーシスの誘導活性を示し、複数のペプチド結合を有するアミノ酸ポリマーを指す用語であり、当該アミノ酸ポリマーの存在形態(例えば塩の形態)や各アミノ酸残基における修飾の有無によって限定されない。アミノ酸残基数が10程度までのオリゴペプチド或いはそれ以上のアミノ酸残基から成るポリペプチドも本明細書におけるアポトーシス誘導性ペプチドに包含され得る。ここで「アポトーシス」とは、従来から当業者に理解される自発的な細胞死をいい、特定の現象に限定されない。核の分断、細胞の急激な萎縮や断片化(アポトーシス小体形成)、DNAラダーの検出等は、ここでいうアポトーシスに包含される典型的な現象である。
本明細書において「アミノ酸残基」とは、特に言及する場合を除いて、ペプチド鎖のN末端アミノ酸及びC末端アミノ酸を包含する用語である。
本明細書において所定のアミノ酸配列に対して「部分的な改変が施された配列(アミノ酸配列)」とは、アポトーシス誘導活性を保持しつつ当該所定のアミノ酸配列について1個、2個または3個程度のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加(挿入)されて形成されたアミノ酸配列をいう。例えば、1個〜数個のアミノ酸残基が保守的に置換したいわゆる同類アミノ酸置換(conservative amino acid replacement)によって生じた配列(例えば1〜数個の塩基性アミノ酸残基が別の塩基性アミノ酸残基に置換して成る配列、或いは1〜数個のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基(典型的には化学構造の類似する他のアミノ酸残基)に置換して成る配列)、或いは、所定のアミノ酸配列に1個又は数個(一般には2〜3個程度)のアミノ酸残基が付加(挿入)された配列等は、本明細書でいう「部分的な改変が施された配列」に包含され得る典型例である。
本発明者は、核移行性配列(nuclear localization signal sequence:NLS)として知られるアミノ酸配列のうち、ウイルス由来のプロリン残基に富むいくつかのNLSから成るペプチドにおいて優れたアポトーシス誘導活性があることを見出し、本発明を完成するに至った。その典型例としてここで開示される上記(a)に示すアミノ酸配列(配列番号1)は、ボルナ病ウイルス(Borna Disease Virus;BDV)のPタンパク質(phosphoprotein)のN末端側に存在するNLSである(上記非特許文献1参照)。また、上記(b)に示すアミノ酸配列(配列番号2)は、C型肝炎ウイルス(Hepatitis C Virus;HCV)のNS5Aタンパク質に存在するNLSである(上記非特許文献2参照)。
ここで開示されるアポトーシス誘導性ペプチドは、ペプチド鎖の主要構成要素として上記(a)若しくは(b)のアミノ酸配列又は該配列において部分的な改変が施されて成る改変配列(以下「改変配列」と略称する。)を包含することによって、少なくとも1種の細胞に対して実用的なアポトーシス誘導活性を発揮し得る。
好ましい典型的なアポトーシス誘導性ペプチドは、前記(a)に示すアミノ酸配列及び(b)に示すアミノ酸配列のうちのいずれかのアミノ酸配列で構成される、人為的に合成されたペプチドであることを特徴とする。
ここで開示されるアポトーシス誘導性ペプチドとしては、少なくとも一つのアミノ酸残基がアミド化されているものが好ましい。アミノ酸残基(典型的にはペプチド鎖のC末端アミノ酸残基)のカルボキシル基のアミド化により、アポトーシス誘導性ペプチドの構造安定性(例えばプロテアーゼ耐性)を向上させることができる。
また、アポトーシス誘導性ペプチドは、ペプチド鎖を構成する全アミノ酸残基数が15以下であることが特に好ましい。このような鎖長の短いペプチドは、化学合成が容易であり、アポトーシス誘導剤の主成分たるアポトーシス誘導性ペプチドとして使用し易い。
また、本発明は、ここで開示されるアポトーシス誘導性ペプチドの製造方法を提供する。すなわち、本発明によって提供されるアポトーシス誘導性ペプチド製造方法は、(1) 前記(a)に示すアミノ酸配列及び(b)に示すアミノ酸配列のうちのいずれかのアミノ酸配列又は該アミノ酸配列に部分的な改変が施された配列を含み且つ少なくとも1種の細胞に対してアポトーシスを誘導し得るペプチド鎖を設計すること、および、(2)前記設計したペプチド鎖を合成すること、を包含する。全アミノ酸残基数が15以下となるように前記ペプチド鎖の設計をすることが好ましい。
また、本発明は、ここで開示される少なくとも1種のアポトーシス誘導性ペプチドを主成分として含むアポトーシス誘導剤(典型的にはアポトーシス誘導性ペプチドと薬学的に許容され得る担体とを含む医療分野又は衛生分野において使用し得る組成物)を提供する。全アミノ酸残基数が15以下のアポトーシス誘導性ペプチドを主成分とするアポトーシス誘導剤が好ましい。例えば、前記(a)又は(b)に示すアミノ酸配列又はその改変配列から実質的に構成される短い鎖長のペプチドを含むアポトーシス誘導剤は取扱いが容易であり、生体内及び/又は生体外での利用に好適なアポトーシス誘導剤となり得る。
また、本発明は、ここで開示されるいずれかのアポトーシス誘導性ペプチドをコードするヌクレオチド配列及び/又は該配列と相補的なヌクレオチド配列を含む天然に存在しない人為的に設計されたポリヌクレオチド(例えばそれらヌクレオチド配列から実質的に構成されるポリヌクレオチド)を提供する。
本明細書において「ポリヌクレオチド」とは、複数のヌクレオチドがリン酸ジエステル結合で結ばれたポリマー(核酸)を指す用語であり、種々の長さのDNAフラグメント及びRNAフラグメントがここでいうポリヌクレオチドに包含される。また、「天然に存在しない人為的に設計されたポリヌクレオチド」とは、そのヌクレオチド鎖(全長)がそれ単独で自然界に存在するものではなく、化学合成或いは生合成(即ち遺伝子工学に基づく生産)によって人為的に合成されたポリヌクレオチドをいう。
好ましいポリヌクレオチドとして、配列番号1または2のいずれかに示されるアミノ酸配列(または該配列において部分的な改変が施されて成る改変配列)をコードするヌクレオチド配列及び/又は該配列と相補的なヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド(例えばそれら配列から実質的に構成されるポリヌクレオチド)が挙げられる。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えばアポトーシス誘導性ペプチドの一次構造や鎖長)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えばペプチド合成、ポリヌクレオチド合成、ペプチドを成分とするアポトーシス誘導剤(薬剤組成物)の調製に関するような一般的事項)は、有機化学、生化学、遺伝子工学、タンパク質工学、分子生物学、薬学、医学、衛生学等の分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、以下の説明では、アミノ酸をIUPAC-IUBガイドラインで示されたアミノ酸に関する命名法に準拠した1文字表記(但し配列表では3文字表記)で表す。
本明細書において開示されるアポトーシス誘導性ペプチドは、天然に存在しない人為的に設計されたペプチドであり、少なくとも(a)PRPRKIPR、及び(b)PPRKKRTVVのうちのいずれかのアミノ酸配列又は該アミノ酸配列に部分的な改変が施された配列(以下これらを総称して「アポトーシス誘導関連配列」という。)を有するか該配列から成る比較的短いポリペプチドまたはオリゴペプチドである。好ましくは全アミノ酸残基数が15以下である。特に好ましくは全アミノ酸残基数が10以下である。即ちここで開示される好適なアポトーシス誘導性ペプチドは、ペプチド鎖を構成する全アミノ酸残基数の50%以上が上記アポトーシス誘導関連配列で構成されるペプチド断片という点で、天然に存在する種々のポリペプチド(ペプチド鎖)と明確に区別される物質である。
全体のアミノ酸配列に対するアポトーシス誘導関連配列の占める割合(即ちペプチド鎖を構成する全アミノ酸残基数に占めるアポトーシス誘導関連配列を構成するアミノ酸残基数の個数%)が80%以上であることが好ましく90%以上であることが特に好ましい。
なお、本発明のアポトーシス誘導性ペプチドとしては、全てのアミノ酸残基がL型アミノ酸であるものが好ましいが、アポトーシス誘導活性を失わない限りにおいて、アミノ酸残基の一部又は全部がD型アミノ酸に置換されているものであってもよい。また、ペプチドのコンホメーション(立体構造)については、使用する環境下でアポトーシス誘導能を発揮する限りにおいて特に限定されるものではないが、免疫原(抗原)になり難いという観点から直鎖状又はへリックス状のものが好ましい。このような形状のペプチドはエピトープを構成し難い。かかる観点からもアポトーシス誘導剤に適用するアポトーシス誘導性ペプチドとしては、直鎖状であり比較的低分子量(例えばアミノ酸残基数:8〜15、例えばアミノ酸残基数:9〜12)のものが好適である。
本発明のアポトーシス誘導性ペプチド(ペプチド鎖)を設計するためのアポトーシス誘導関連配列としては、ウイルス由来の比較的プロリン残基に富むNLS、典型的にはBDVのPタンパク質に含まれるNLS(PRPRKIPR)、或いは、HCVのNS5Aタンパク質に含まれるNLS(PPRKKRTVV)の一部又は全部をそのまま採用するか、或いは若干の改変(例えば1〜数個(典型的には2、3個程度)のアミノ酸残基の置換、欠失、及び/又は付加)を施した配列を採用することにより、アポトーシス誘導性ペプチド(ペプチド鎖)を容易に設計することができる。
本発明のアポトーシス誘導性ペプチドは、所望されるアポトーシス誘導活性を失わない限りにおいて、アポトーシス誘導関連配列以外の部分的な配列を含み得る。特に限定するものではないが、かかる部分配列としてはペプチド鎖におけるアポトーシス誘導関連配列部分の3次元形状を該配列のみから成るペプチド鎖と同様の状態に維持し得る配列が好ましい。
ここで開示されるアポトーシス誘導性ペプチドは、一般的な化学合成法に準じて容易に製造することができる。例えば、従来公知の固相合成法又は液相合成法のいずれを採用してもよい。アミノ基の保護基としてBoc(t-butyloxycarbonyl)或いはFmoc(9-fluorenylmethoxycarbonyl)を適用した固相合成法が好適である。例えば、市販のペプチド合成機(例えば、PerSeptive Biosystems社、Applied Biosystems社等から入手可能である。)を用いた固相合成法により、所望するアミノ酸配列や修飾(C末端アミド化等)部分を有するペプチド鎖を合成することができる。
或いは、遺伝子工学的手法に基づいてアポトーシス誘導性ペプチドを生合成してもよい。すなわち、所望するアポトーシス誘導性ペプチドのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(ATG開始コドンを含む。)のDNAを合成する。そして、このDNAと該アミノ酸配列を宿主細胞内で発現させるための種々の調節エレメント(プロモーター、リボゾーム結合部位、ターミネーター、エンハンサー、発現レベルを制御する種々のシスエレメントを包含する。)とから成る発現用遺伝子構築物を有する組換えベクターを、宿主細胞に応じて構築する。
一般的な技法によって、この組換えベクターを所定の宿主細胞(例えばイースト、昆虫細胞、植物細胞、動物(哺乳類)細胞)に導入し、所定の条件で当該宿主細胞又は該細胞を含む組織や個体を培養する。このことにより、目的とするアポトーシス誘導性ペプチドのアミノ酸配列を含むポリペプチドを細胞内で発現、生産させることができる。そして、宿主細胞(分泌された場合は培地中)から目的のポリペプチドを単離し、精製することによって、所望するアポトーシス誘導性ペプチドを得ることができる。なお、組換えベクターの構築方法及び構築した組換えベクターの宿主細胞への導入方法等は、当該分野で従来から行われている方法をそのまま採用すればよく、かかる方法自体は特に本発明を特徴付けるものではないため、詳細な説明は省略する。
例えば、宿主細胞内で効率よく大量に生産させるために融合タンパク質発現システムを利用することができる。すなわち、目的のアポトーシス誘導性ペプチドのアミノ酸配列をコードする遺伝子(DNA)を化学合成し、該合成遺伝子を適当な融合タンパク質発現用ベクター(例えばノバジェン社から提供されているpETシリーズおよびアマシャムバイオサイエンス社から提供されているpGEXシリーズのようなGST(Glutathione S-transferase)融合タンパク質発現用ベクター)の好適なサイトに導入する。そして該ベクターにより宿主細胞(典型的には大腸菌)を形質転換する。得られた形質転換体を培養して目的の融合タンパク質を調製する。次いで、該タンパク質を抽出及び精製する。次いで、得られた精製融合タンパク質を所定の酵素(プロテアーゼ)で切断し、遊離した目的のペプチド断片(即ち、設計したアポトーシス誘導性ペプチド)をアフィニティクロマトグラフィー等の方法によって回収する。このような従来公知の融合タンパク質発現システム(例えばアマシャムバイオサイエンス社により提供されるGST/Hisシステムを利用し得る。)を用いることによって、本発明のアポトーシス誘導性ペプチドを製造することができる。
或いは、無細胞タンパク質合成システム用の鋳型DNA(即ちアポトーシス誘導性ペプチドのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む合成遺伝子断片)を構築し、ペプチド合成に必要な種々の化合物(ATP、RNAポリメラーゼ、アミノ酸類等)を使用し、いわゆる無細胞タンパク質合成システムを採用して目的のポリペプチドをインビトロ合成することができる。無細胞タンパク質合成システムについては、例えばShimizuらの論文(Shimizu et al., Nature Biotechnology, 19, 751-755(2001))、Madinらの論文(Madin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97(2), 559-564(2000))が参考になる。これら論文に記載された技術に基づいて、本願出願時点において既に多くの企業がポリペプチドの受託生産を行っており、また、無細胞タンパク質合成用キット(例えば、日本の東洋紡績(株)から入手可能なPROTEIOS(商標)Wheat germ cell-free protein synthesis kit)が市販されている。
従って、上述のようにして、利用するアミノ酸配列をひとたび決定し、ペプチド鎖を設計しさえすれば、そのアミノ酸配列に従って無細胞タンパク質合成システムによって目的のアポトーシス誘導性ペプチドを容易に合成・生産することができる。例えば、日本の(株)ポストゲノム研究所のピュアシステム(登録商標)に基づいて本発明のアポトーシス誘導性ペプチドを容易に生産することができる。
本発明によると、新規なアミノ酸配列のアポトーシス誘導性ペプチドと該ペプチドをコードするヌクレオチド配列及び/又は該ヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供し得る。
例えば、配列番号1又は配列番号2で示されるアポトーシス誘導関連配列から実質的に構成されるペプチドと該ペプチドをコードするヌクレオチド配列及び/又は該ヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を含む(又はそのようなヌクレオチド配列から実質的に構成された)天然に存在しない人為的に設計されたポリヌクレオチドが提供される。或いは、配列番号1又は配列番号2で示されるアポトーシス誘導関連配列のうちの1若しくは複数(例えば2〜3個)のアミノ酸残基が欠失及び/又は置換(例えば同類アミノ酸置換)された改変アミノ酸配列又は1若しくは複数(例えば2〜3個)のアミノ酸残基が該アポトーシス誘導関連配列に付加されたような改変アミノ酸配列から実質的に構成されるペプチドと該ペプチドをコードするヌクレオチド配列及び/又は該配列と相補的なヌクレオチド配列を含む(又はそのようなヌクレオチド配列から実質的に構成された)天然に存在しない人為的に設計されたポリヌクレオチドが提供される。
ここで開示されるアポトーシス誘導性ペプチドをコードするヌクレオチド配列及び/又は該配列と相補的なヌクレオチド配列を含む(又はそのようなヌクレオチド配列から実質的に構成された)一本鎖又は二本鎖のポリヌクレオチドは、従来公知の方法によって容易に製造(合成)することができる。すなわち、設計したアミノ酸配列を構成する各アミノ酸残基に対応するコドンを適宜選択することによって、アポトーシス誘導性ペプチドのアミノ酸配列に対応するヌクレオチド配列(更には該配列と相補的なヌクレオチド配列)が容易に決定され、提供される。そして、ひとたびヌクレオチド配列が決定されれば、DNA合成機等を利用して、所望するヌクレオチド配列に対応するポリヌクレオチド(一本鎖)を容易に得ることができる。さらに得られた一本鎖DNAを鋳型として用い、種々の酵素的合成手段(典型的にはPCR)を採用して目的の二本鎖DNAを得ることができる。
本発明によって提供されるポリヌクレオチドは、DNAの形態であってもよく、RNA(mRNA等)の形態であってもよい。DNA等は二本鎖又は一本鎖で提供され得る。一本鎖で提供される場合は、コード鎖(センス鎖)であってもよく、それと相補的な配列の非コード鎖(アンチセンス鎖)であってもよい。
本発明によって提供されるポリヌクレオチドは、上述のように、種々の宿主細胞中で又は無細胞タンパク質合成システムにて、アポトーシス誘導性ペプチド生産のための組換え遺伝子(発現カセット)を構築するための材料として使用することができる。
本発明のアポトーシス誘導性ペプチドは少なくとも一種の細胞に対して高いアポトーシス誘導活性を有し得る。従って、アポトーシス誘導剤の主成分として好適に用いることができる。
本発明によって提供されるアポトーシス誘導剤は、生体内又は生体外において、標的細胞(例えばヒトその他の哺乳動物細胞)にアポトーシスを起こすために用いられ得る組成物(薬剤)であり得る。例えば、種々のガン細胞、自己免疫性T細胞等をアポトーシス誘導の標的細胞とすることにより、各種のガン或いは自己免疫疾患の治療剤として利用することができる。
アポトーシス誘導性ペプチドの他、アポトーシス誘導剤に含まれる担体すなわち副次的成分(典型的には用途に応じて薬学的に許容され得るもの)としては、アポトーシス誘導剤の用途や形態に応じて適宜異なり得るが、水(例えば生理食塩水、種々の緩衝液であり得る。)、有機溶媒、種々の充填剤、増量剤、結合剤、滑剤、付湿剤、表面活性剤、賦形剤、着色剤、保存剤、緩衝剤、香料等が挙げられる。
アポトーシス誘導剤の形態に関して特に限定はない。内用剤若しくは外用剤の典型的な形態として、軟膏、液剤(例えば点眼薬、注射液)、懸濁剤、乳剤、エアロゾル(スプレー剤)、泡沫剤、顆粒剤、粉末剤、錠剤、カプセル、ゲル、等が挙げられる。かかる誘導剤(組成物)の形態に応じて、主成分たるペプチドと組み合わせるべき担体その他の副次的成分の内容(種類)は異なり得る。例えば、注射等に用いるため、使用直前に生理食塩水又は適当な緩衝液(例えばPBS)等に溶解して薬液(注射液等)を調製するための凍結乾燥物、造粒物とすることもできる。
なお、アポトーシス誘導性ペプチド(主成分)及び種々の担体(副成分)を材料にして種々の形態の薬剤(組成物)を調製するプロセス自体は従来公知の方法に準じればよく、かかる製剤方法自体は本発明を特徴付けるものでもないため詳細な説明は省略する。処方に関する詳細な情報源として、例えばComprehensive Medicinal Chemistry, Corwin Hansch監修,Pergamon Press刊(1990)が挙げられる。
本発明によって提供されるアポトーシス誘導剤は、その形態及び目的に応じた方法や用量で使用することができる。例えば、液剤として、静脈内、筋肉内、皮下、皮内若しくは腹腔内への注射或いは灌腸によって患者に投与することができる。或いは、錠剤等の固体形態のものは経口投与することができる。また、体外において使用する場合は、適量のアポトーシス誘導性ペプチドを含有する液剤を対象物(皮膚表面の患部等)の表面に直接スプレーするか、或いは、当該液剤で濡れた布や紙で対象物の表面を拭くとよい。これらは例示にすぎず、従来のアポトーシス誘導剤と同じ形態及び/又は使用方法を適用することができる。また、DDS(ドラッグデリバリーシステム)の適用により、標的とする患部(器官、組織、細胞等)に、アポトーシス誘導性ペプチド又はアポトーシス誘導剤を局所的に高濃度に供給することが可能となる。
なお、アポトーシス誘導剤(薬剤)の用量は、投与方法、投与の目的、疾患の種類、症状、患者の性別、体重、年齢等に応じて個々に設定されればよく、特に限定されない。
また、本発明によって提供されるアポトーシス誘導性ペプチド及びアポトーシス誘導剤(アポトーシス誘導性ペプチドを含む組成物)は、生体内又は生体外において、標的細胞についてのアポトーシス関連物質(典型的にはアポトーシスを誘導可能な物質、或いはアポトーシスを抑制若しくは阻害する物質)をスクリーニングするために使用することができる。即ち、本発明によると、ここで開示されるアポトーシス誘導性ペプチド(即ち該ペプチドを含むアポトーシス誘導剤)を使用することを特徴とする、アポトーシス関連物質(典型的にはアポトーシス誘導性物質、或いはアポトーシス抑制(若しくは阻害)性物質)のスクリーニング方法が提供される。
このスクリーニング方法では、例えば、標的細胞内にアポトーシス誘導性ペプチドを導入する工程、或いは該アポトーシス誘導性ペプチドと共に標的細胞をインキュベートする工程の他、スクリーニング対象の物質を標的細胞に接触させる工程或いは標的細胞内に導入する工程と、該スクリーニング対象物質及びアポトーシス誘導性ペプチドの存在下における標的細胞のアポトーシスの有無及び/又は度合いを検出する工程を包含する。かかるスクリーニング方法によると、種々の標的細胞(又は該細胞から成る生体組織や器官)について本発明に係るアポトーシス誘導性ペプチドで誘導され得るアポトーシスを抑制又は阻害し得る物質をスクリーニング即ち選別し得、同定(単離)することができる。
また、ここで開示されるアポトーシス誘導関連配列の情報は、該配列から成るペプチド鎖に対して特異的な抗体(典型的にはモノクローナル抗体)を生産するのに利用することができる。そのような抗体は、ここで開示されるアポトーシス誘導性ペプチド及び該ペプチドと関連する他のアポトーシス誘導性ペプチド、又はその他のアポトーシス関連性物質(典型的にはタンパク質)をスクリーニングする材料として好適に使用し得る。なお、抗体の生産プロセス自体は従来のプロセスと同様でよく、特に本発明を特徴付ける要素はない。
また、ここで開示されるアポトーシス誘導性ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、いわゆる遺伝子治療に使用する素材として用い得る。例えば、アポトーシス誘導性ペプチドをコードする遺伝子(典型的にはDNAセグメント、或いはRNAセグメント)を適当なベクターに組み込み、標的とする患部(器官、組織、細胞等)に導入することにより、生体(細胞)内で本発明に係るアポトーシス誘導性ペプチドを発現させることが可能となる。従って、本発明のアポトーシス誘導性ペプチドをコードするポリヌクレオチド(DNAセグメント、RNAセグメント等)は、生体内における標的細胞に対してアポトーシスを誘導させる薬剤又はアポトーシスの異常に関連づけられる疾病(ガン、自己免疫疾患等)の治療剤として有用である。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
<実施例1:ペプチド合成>
計4種類のポリペプチド(サンプル1、サンプル2、比較サンプル1、比較サンプル2)を後述するペプチド合成機を用いて製造した。即ち、サンプル1は、上記(a)配列で示される計8アミノ酸残基から成るペプチド(分子量:約1019)であり、サンプル2は、上記(b)配列で示される計9アミノ酸残基から成るペプチド(分子量:約1080)である。他方、比較サンプル1は、ウシラクトフェリンのN末端側の部分アミノ酸配列と等しいアミノ酸配列(配列番号3):APRKNVRWCTISQで示される計13アミノ酸残基から成るペプチド(分子量:約1559)であり、比較サンプル2は、ショウジョウバエ(Drosophila spp.)由来のNLSと等しいアミノ酸配列(配列番号4):KKKKRKREKで示される計9アミノ酸残基から成るペプチド(分子量:約1229)である。
なお、いずれのサンプル及び比較サンプルも、C末端アミノ酸のカルボキシル基(−COOH)はアミド化(−CONH)されている。
上述した各ペプチドは、市販のペプチド合成機(PEPTIDE SYNTHESIZER 9050、PerSeptive Biosystems社製品)を用いて固相合成法(Fmoc法)により合成した。なお、縮合剤としてHATU(Applied Biosystems社製品)を使用し、固相合成法に用いた樹脂及びアミノ酸はNOVA biochem社から購入した。アミノ酸配列のC末端をアミド化するため、固相担体として「Rink Amide resin (100〜200 mesh)」 を使用した。
而して、上記ペプチド合成機の合成プログラムに準じて脱保護基反応及び縮合反応を反復して樹脂に結合するFmoc−アミノ酸からペプチド鎖を伸長していき、目的の鎖長の合成ペプチドを得た。具体的には、20%ピペリジン/ジメチルホルムアミド(DMF)(ペプチド合成用グレード、関東化学(株)製品)によって、アミノ酸のアミノ保護基であるFmocを切断除去し、DMFで洗浄し、Fmoc−アミノ酸(-OH)各4eqを反応させ、DMFで洗浄する操作を反復した。そして、ペプチド鎖の伸長反応が全て終了した後、20%ピペリジン/DMFによりFmoc基を切断し、DMF、メタノールの順で上記反応物を洗浄した。
固相合成後、合成したペプチド鎖を樹脂と共に遠沈管に移し、エタンジオール1.8mL、m-クレゾール0.6mL、チオアニソール3.6mL及びトリフルオロ酢酸24mLを加え、室温で2時間撹拌した。その後、ペプチド鎖に結合していた樹脂を濾過して除去した。
次いで、濾液に冷却エタノールを加え、氷冷水で冷却してペプチド沈澱物を得た。その後、遠心分離(2500rpmで5分間)によって上澄みを廃棄した。沈殿物に冷ジエチルエーテルを新たに加えて十分に撹拌した後、上記と同じ条件で遠心分離を行った。この撹拌と遠心分離の処理を計3回反復して行った。
得られたペプチド沈殿物を真空乾燥し、高速液体クロマトグラフ(Waters 600:Waters社製品)を用いて精製を行った。
具体的には、プレカラム(日本ウォーターズ(株)製品、Guard-Pak Delta-pak C18 A300)及びC18逆相カラム(日本ウォーターズ(株)製品、XTerra(登録商標)カラム、MS C18、5μm、4.6×150mm)を使用し、0.1%トリフルオロ酢酸水溶液と0.1%トリフルオロ酢酸アセトニトリル溶液との混合液を溶離液に用いた。すなわち、溶離液に含まれる上記トリフルオロ酢酸アセトニトリル溶液の分量を経時的に増大させつつ(容積比で10%から80%への濃度勾配を設ける)、1.5mL/分の流速で上記カラムを用いて30〜40分間の分離精製を行った。なお、逆相カラムから溶離したペプチドは紫外線検出器(490E Detector:Waters社製品)を用いて波長:220nmで検出され、記録チャート上にピークとして示される。
また、溶離したペプチド(サンプル2)の分子量をPerSeptive Biosystems社製のVoyager DE RP(商標)を用いてMALDI-TOF/MS(Matrix-Assisted Laser Desorption Time of Flight Mass Spectrometry:マトリックス支援レーザーイオン化−飛行時間型−質量分析)に基づいて決定した。その結果、目的のペプチドが合成・精製されていることが確認された。
<実施例2:合成ペプチドのアポトーシス誘導活性>
上記実施例1で合成したペプチド(サンプル1,2、比較サンプル1,2)について、アポトーシス誘導活性の有無を市販の細胞死検出ELISAキットPLUS(ロシュ・ダイアグノスティックス社製品:カタログ番号1774425)を使用して調べた。
即ち、4.0×10cells/mLの濃度のHL−60(human leukemic HL-60)細胞培養液(10%ウシ胎児血清を含むイーグル培地、等)を100μLずつ上記キットに含まれる96穴プレート(ストレプトアビジンでコーティング済み)の各穴(ウェル)に添加した。
一方、上記実施例1で得られた各ペプチドサンプルを本実施例に係る担体である滅菌生理食塩水に溶解し、所定の濃度の薬剤(アポトーシス誘導剤)を調製した。具体的には、適当容量のエッペンドルフ(登録商標)チューブに適当量のペプチドサンプルを入れ、これを滅菌した生理食塩水で溶かして2mMの薬剤(ペプチド溶液)を調製するとともに該薬剤を更に生理食塩水で適宜希釈することによって一連の濃度のペプチド溶液を調製し、以後の試験に供した。
上記細胞懸濁液を添加後2時間経過したウェルに、ウェル中のペプチド濃度が1.6、8、40又は200μMとなるように上記適宜希釈して得た所定濃度のペプチド溶液の何れかをそれぞれ添加した。各濃度(実験区分)について2ウェル使用した。また、ポジティブコントロールとして、ウェル中の濃度が0.1%又は0.5%となるように、所定濃度のアクチノマイシン溶液をウェルに適量添加した。さらにネガティブコントロールとして、ウェル中の濃度が1.1%となるように所定濃度のDMSOをウェルに適量添加した。これら薬剤を添加後、37℃、5%COの条件下で24時間培養した。
次いで、各実験区分の2ウェル分の液を合わせて遠心チューブに回収し、2000rpm、5分間の遠心分離を行った。遠心分離終了後、上清を別のチューブに移した。そして、遠心チューブに残った沈殿物(細胞)に培地1mLを添加して混合後、同様に遠心分離を行い、上清を除いた。その後、再び培地500μLをチューブに添加し、細胞を懸濁した。そして、細胞数として約6×10個となる量の懸濁液を別チューブに移した。これを同様に遠心分離し、上清を除いた。次いで、沈殿物に上記キットに含まれる細胞溶解用緩衝液(Lysis buffer)を500μL添加した。よく混合した後、細胞を溶解するために4℃で30分間静置した。
次いで、細胞溶解液を15000rpmで10分間遠心分離した。遠心分離後、沈殿物(即ち核や高分子量の分断されていないDNAを含むペレット)を崩さないように慎重に上清(即ち細胞質分画)を約400μL採取し、上記キットに含まれるインキュベーション用緩衝液(Incubation buffer)で10倍に希釈した。
そして、上記キットのプロトコールに従って、ヒストンとDNAに対してそれぞれ特異性を有する2種のマウスモノクローナル抗体(一次抗体:ビオチン標識抗ヒストン抗体、二次抗体:POD標識抗DNA抗体)を用いたサンドイッチ酵素免疫法に基づいて該希釈液中のヌクレオソーム量を検出した。そして、各実験区分の吸光度(A405nm−A492nm)を測定するとともに、該測定した吸光度の値に基づき、DMSO添加区の細胞生存率を100としたときの各実験区分における細胞生存率(%)を求めた。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、サンプル1及びサンプル2のペプチドを200μMの濃度で添加した区分では、細胞死の割合が顕著に高くなった。かかる傾向は、比較サンプル1のペプチドを添加した区分では認められなかった。従って、所定濃度以上の濃度(ここでは200μM)のサンプル1及びサンプル2のペプチドが細胞死を誘導することが確かめられた。
次に、上記細胞死がアポトーシスによるものであることを市販のQuick Apoptotic DNA Ladder Detection Kit(バイオビジョン社製品)を使用することによって、DNAレベルで確認した。
即ち、4.0×10cells/mLの濃度のHL−60(human leukemic HL-60)細胞培養液(10%ウシ胎児血清を含むイーグル培地、等)を3mLずつ6穴マイクロタイタープレートの各穴(ウェル)に添加した。
次いで、上記のようにして調製した各ペプチド溶液又はアクチノマイシン溶液を添加した。具体的には、ウェル中の濃度が200μMとなるように、各ペプチド溶液を添加した。また、ポジティブコントロールとして、ウェル中の濃度が0.5μMとなるようにアクチノマイシン溶液を添加した。さらにネガティブコントロールとして、ウェル中の濃度が1%となるようにDMSOを添加した。
これら薬剤を添加後、上記キットに添付のプロトコールに従って処理を行い、各実験区 分の細胞懸濁液からDNA溶液を得た。但し、Proteinase K を含むEnzyme B溶液での処理は37℃で一晩とした。また、DNAの溶解性を高めるために一般的なフェノール・クロロホルム処理を追加した。尚、1試料(1ウェル)から抽出したDNAは、DNA溶解バッファー20μLに溶解した。そのうちの12μLを1μg/mLのエチジウムブロミドを含む1.2%アガロースゲル電気泳動(100V、30分間)に供した。結果を図1(ゲル写真)に示す。図中のゲルのレーン1はサイズマーカー(1kb)であり、レーン2は0.5μMのアクチノマイシンで処理した試料のDNA泳動パターンであり、レーン3は200μMのサンプル1で処理した試料のDNA泳動パターンであり、レーン4は200μMのサンプル2で処理した試料のDNA泳動パターンであり、レーン5は200μMの比較サンプル1で処理した試料のDNA泳動パターンであり、レーン6は200μMの比較サンプル2で処理した試料のDNA泳動パターンであり、レーン7は1%DMSOで処理した試料のDNA泳動パターンである。
このアガロースゲル電気泳動の結果から明らかなように、レーン2〜4ではDNAラダーが検出された。他方、レーン5〜7では、かかるDNAラダーは認められなかった。このことは、サンプル1及びサンプル2のペプチドが、アクチノマイシンと同様、アポトーシスを誘導し得るペプチドであることを示している。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
<配列表フリーテキスト>
配列番号1 C末端にアミド基を含む合成ペプチド。
配列番号2 C末端にアミド基を含む合成ペプチド。
配列番号3 C末端にアミド基を含む合成ペプチド。
配列番号4 C末端にアミド基を含む合成ペプチド。
アガロースゲル電気泳動後のDNAの泳動パターンを示すアガロースゲルの写真である。

Claims (6)

  1. 少なくとも1種の細胞の細胞死を誘導するペプチドを主成分とする、細胞死を起こすために用いられる組成物であって、
    前記ペプチドは、以下のアミノ酸配列:
    PRPRKIPR ;
    を含み、ペプチド鎖を構成する全アミノ酸残基数が15以下である人為的に合成されたペプチドである、組成物。
  2. 前記ペプチドは、以下のアミノ酸配列:
    PRPRKIPR ;
    で構成されるペプチドである、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記ペプチドの少なくとも一つのアミノ酸残基がアミド化されている、請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 標的とする細胞の細胞死を起こす方法であって、
    前記細胞に、以下のアミノ酸配列:
    PRPRKIPR ;
    を含み、ペプチド鎖を構成する全アミノ酸残基数が15以下である人為的に合成されたペプチドを供給することを特徴とする、方法。
  5. 前記ペプチドは、以下のアミノ酸配列:
    PRPRKIPR ;
    で構成されるペプチドである、請求項4に記載の方法。
  6. 前記ペプチドの少なくとも一つのアミノ酸残基がアミド化されている、請求項4又は5に記載の方法。
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