JPWO2008081812A1 - 抗腫瘍ペプチド及びその利用 - Google Patents

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Abstract

本発明によって提供される抗腫瘍ペプチドは、そのペプチド鎖に(a)p53タンパク質のMDM2結合ドメインを構成するアミノ酸配列から選択される少なくとも9個の連続するアミノ酸残基から成る、p53関連部分アミノ酸配列;(b)細胞膜通過ドメインを構成するアミノ酸配列から成る、膜通過関連部分アミノ酸配列;および(c)核移行性シグナル(NLS)を構成するアミノ酸配列から成る、NLS関連部分アミノ酸配列;が含まれる。

Description

本発明は、腫瘍細胞の増殖を抑制し得る人為的に合成された抗腫瘍ペプチドとその利用に関する。
本願は2006年12月28日に出願された日本国特許出願第2006−356345号に基づく優先権を主張しており、当該日本国出願の全内容は本明細書中に参照として援用されている。
腫瘍(がん)の進行を抑制するための治療法として、腫瘍抑制遺伝子として知られるp53を利用した遺伝子治療が注目されている。例えば、正常なp53遺伝子をアデノウイルス等の適当なウイルスベクターに組み込み、ターゲット細胞(腫瘍細胞)に導入するような遺伝子治療法の研究が行われている。
しかし、ウイルスベクターを用いる遺伝子治療では、深刻な炎症反応或いはベクターそのものに対する免疫反応を引き起こすリスクがあり、治療法として確立させるためにはクリアすべき安全性のハードルが高い。
一方、種々の腫瘍の治療目的にp53遺伝子にコードされるp53タンパク質を直接利用するアプローチの研究も進められている。例えば以下の非特許文献1及び2には、ヒト由来のp53タンパク質のN末端側に存在する領域であって、MDM2(Murine Double Minute clone 2)タンパク質に結合する領域(以下「MDM2結合ドメイン」という。)から選択される一部のアミノ酸配列(アミノ酸残基数:9〜15)から成る合成ペプチドを種々の腫瘍細胞に導入することにより、当該腫瘍細胞に細胞毒性を誘発し得ることが記載されている。
PNAS、98巻、2001年、pp.12438−12443 オンコジーン(Oncogene)、22巻、2003年、pp.1431−1444
しかしながら、上記文献等に記載されるような既存の配列構成のp53ベースの合成ペプチドでは細胞毒性の誘発レベルが低く、種々の腫瘍細胞の増殖を効果的に抑制し得る程の性能を有するとは言えなかった。
そこで本発明は、上記従来のp53ベースの合成ペプチドよりも腫瘍細胞の増殖を抑制(阻害)する機能に優れる新たなアミノ酸配列から成るペプチドの提供を目的として創出されたものであり、そのようなペプチドを有効成分とする抗腫瘍剤(薬学的組成物)の提供を他の一つの目的とする。また、そのようなペプチドを設計することを他の一つの目的とする。また、そのようなペプチド(即ち、抗腫瘍剤)を使用して種々の腫瘍細胞の増殖を抑制(換言すれば腫瘍の増大を阻害)する方法の提供を他の一つの目的とする。
本発明によって提供される抗腫瘍ペプチドは、人為的に設計されたアミノ酸配列を有し、それ単独で自然界に存在するものではない人為的に合成された機能性ペプチドである。
本発明者は、p53タンパク質のN末端側に存在するMDM2結合ドメインから選択されるアミノ酸配列と、細胞膜通過ドメインを構成するアミノ酸配列と、更に種々の生物種やウイルスで見つかった核移行性シグナル(Nuclear Localization Signal:NLS)を構成するアミノ酸配列とを連結させたペプチドが、種々の腫瘍細胞の増殖を好適に抑制し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
ここで開示される抗腫瘍ペプチドは、少なくとも一種の腫瘍細胞の増殖を抑制し得る人為的に合成されたペプチドである。
そして該ペプチドのペプチド鎖には以下の3種のアミノ酸配列:
(a)p53タンパク質のMDM2結合ドメインを構成するアミノ酸配列から選択される少なくとも9個の連続するアミノ酸残基から成る、p53関連部分アミノ酸配列(該配列に部分的な改変が施されたアミノ酸配列を包含する。以下同じ。);
(b)細胞膜通過ドメインを構成するアミノ酸配列から成る、膜通過関連部分アミノ酸配列(該配列に部分的な改変が施されたアミノ酸配列を包含する。以下同じ。);および
(c)核移行性シグナル(NLS)を構成するアミノ酸配列から成る、NLS関連部分アミノ酸配列(該配列に部分的な改変が施されたアミノ酸配列を包含する。以下同じ。);が含まれる。
また、好適には該ペプチド鎖を構成する全アミノ酸残基数は100以下である。
ここで開示されるペプチドの好ましい一態様では、上記(a)p53関連部分アミノ酸配列として、PPLSQETFSDLWKLL(配列番号82)から選択される少なくとも9個の連続するアミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を含む。
また、ここで開示されるペプチドの好ましい他の一態様では、上記(b)膜通過関連部分アミノ酸配列として、連続する7〜11個のアルギニン残基から構成されるアミノ酸配列(即ちポリアルギニン)を含む。
また、ここで開示されるペプチドの好ましい他の一態様では、上記(c)NLS関連部分アミノ酸配列として、PKKKRKV(配列番号4)から構成されるアミノ酸配列を含む。
また、ここで開示されるペプチドの特に好ましい一態様では、ペプチド鎖のN末端側に(c)NLS関連部分アミノ酸配列が配置され、そのNLS関連部分アミノ酸配列よりもC末端側に(a)p53関連部分アミノ酸配列が配置され、そのp53関連部分アミノ酸配列よりもC末端側に(b)膜通過関連部分アミノ酸配列が配置されていることを特徴とする。
また、本発明は、ここで開示されるいずれかの抗腫瘍ペプチドをコードするヌクレオチド配列及び/又は該配列と相補的なヌクレオチド配列を含む、天然に存在しない人為的に設計されたポリヌクレオチド(例えばそれら配列により実質的に構成されるポリヌクレオチド)を提供する。
好ましいポリヌクレオチドの例示として、配列番号88,90,91,92および93のうちのいずれかに示されるアミノ酸配列(または該配列において部分的な改変が施されて成る改変配列)をコードするヌクレオチド配列及び/又は該配列と相補的なヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド(例えばそれら配列により実質的に構成されるポリヌクレオチド)が挙げられる。
また本発明は、ここで開示される少なくとも一種の抗腫瘍ペプチドを含有する抗腫瘍剤を提供する。
即ち、ここで開示される抗腫瘍剤は、少なくとも一種の腫瘍細胞の増殖を抑制し得る人為的に合成された抗腫瘍ペプチドであって、該ペプチドのペプチド鎖には以下の3種のアミノ酸配列:
(a)p53タンパク質のMDM2結合ドメインを構成するアミノ酸配列から選択される少なくとも9個の連続するアミノ酸残基から成る、p53関連部分アミノ酸配列;
(b)細胞膜通過ドメインを構成するアミノ酸配列から成る、膜通過関連部分アミノ酸配列;および
(c)核移行性シグナル(NLS)を構成するアミノ酸配列から成る、NLS関連部分アミノ酸配列;が含まれており且つ該ペプチド鎖を構成する全アミノ酸残基数が100以下であるペプチドと、薬学的に許容され得る担体とを含む。
本発明の抗腫瘍剤に含まれる有効成分たる抗腫瘍ペプチドは、上述のとおり、上記(a)(b)及び(c)に規定される3種の部分アミノ酸配列を含む合成ペプチドであるため容易に製造することができる。
ここで開示される抗腫瘍剤は、好ましくは主成分たる抗腫瘍ペプチドが上記(a)p53関連部分アミノ酸配列としてPPLSQETFSDLWKLL(配列番号82)から選択される少なくとも9個の連続するアミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を含む。また好ましくは、抗腫瘍ペプチドが上記(b)膜通過関連部分アミノ酸配列として連続する7〜11個のアルギニン残基から構成されるアミノ酸配列(即ちポリアルギニン)を含む。また好ましくは、抗腫瘍ペプチドが上記(c)NLS関連部分アミノ酸配列としてPKKKRKV(配列番号4)から構成されるアミノ酸配列を含む。
また、ここで開示される抗腫瘍剤の好ましい一態様では、ペプチド鎖のN末端側に(c)NLS関連部分アミノ酸配列が配置され、そのNLS関連部分アミノ酸配列よりもC末端側に(a)p53関連部分アミノ酸配列が配置され、そのp53関連部分アミノ酸配列よりもC末端側に(b)膜通過関連部分アミノ酸配列が配置されていることを特徴とするペプチドを含む。
また、本発明は他の側面として、ここで開示される抗腫瘍ペプチドを製造する方法を提供する。即ち、少なくとも一種の腫瘍細胞の増殖を抑制し得るペプチドを製造する方法であって、以下の3種のアミノ酸配列:
(a)p53タンパク質のMDM2結合ドメインを構成するアミノ酸配列から選択される少なくとも9個の連続するアミノ酸残基から成る、p53関連部分アミノ酸配列;
(b)細胞膜通過ドメインを構成するアミノ酸配列から成る、膜通過関連部分アミノ酸配列;および
(c)核移行性シグナル(NLS)を構成するアミノ酸配列から成る、NLS関連部分アミノ酸配列;が含まれるペプチド鎖を設計すること、および、該設計したペプチド鎖を合成すること、を包含する。
好ましくは、ペプチド鎖を構成する全アミノ酸残基数が100以下となるように該ペプチド鎖を設計する。
また、本発明は他の側面として、ここで開示される抗腫瘍ペプチドを利用する種々の方法を提供する。
その一つとして本発明は、ここで開示される少なくとも一種の抗腫瘍ペプチドを、標的とする腫瘍細胞または該腫瘍細胞を含む組織に供給することを特徴とする、腫瘍細胞の増殖を抑制する方法を提供する。
本方法では、目的(標的)の腫瘍細胞或いは組織に適当量の抗腫瘍剤を投与することにより、標的腫瘍細胞の増殖を抑制(阻害)することができる。
<配列表フリーテキスト>
配列番号84 合成ペプチド
配列番号87 合成ペプチド
配列番号88 合成ペプチド
配列番号89 合成ペプチド
配列番号90 合成ペプチド
配列番号91 合成ペプチド
配列番号92 合成ペプチド
配列番号93 合成ペプチド
図1は、一実施例に係る合成ペプチドの3種の骨肉腫細胞に対する抗腫瘍活性を示すグラフである。 図2は、一比較例に係る合成ペプチドの3種の骨肉腫細胞に対する抗腫瘍活性を示すグラフである。 図3は、一実施例に係る合成ペプチドの1種の神経膠腫細胞に対する抗腫瘍活性を示すグラフである。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、抗腫瘍ペプチドの一次構造や鎖長)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えばペプチド合成、ポリヌクレオチド合成、ペプチドを成分とする薬剤組成物の調製に関するような一般的事項)は、医学、薬学、有機化学、生化学、遺伝子工学、タンパク質工学、分子生物学、衛生学等の分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、以下の説明では、場合に応じてアミノ酸をIUPAC-IUBガイドラインで示されたアミノ酸に関する命名法に準拠した1文字表記(但し配列表では3文字表記)で表す。
また、本明細書中で引用されている全ての文献の全ての内容は本明細書中に参照として組み入れられている。
本明細書において「腫瘍」とは、広義に解釈される用語であり、癌腫及び肉腫を含む腫瘍一般をいう。また、「腫瘍細胞」とは、そのような腫瘍を形成する細胞であって、典型的には周辺の正常組織とは無関係に異常に増殖を行うに至った細胞(所謂がん化した細胞)をいう。
また、本明細書において「人為的に合成されたペプチド」とは、そのペプチド鎖がそれのみで独立して自然界に安定的に存在するものではなく、人為的な化学合成或いは生合成(即ち遺伝子工学に基づく生産)によって製造されるペプチド断片をいう。
本明細書において「ペプチド」とは、複数のペプチド結合を有するアミノ酸ポリマーを指す用語であり、ペプチド鎖に含まれるアミノ酸残基の数によって限定されない。従ってアミノ酸残基数が10程度までのオリゴペプチド或いはそれ以上のアミノ酸残基から成るポリペプチドも本明細書における「抗腫瘍ペプチド」に包含される。
本明細書において「アミノ酸残基」とは、特に言及する場合を除いて、ペプチド鎖のN末端アミノ酸及びC末端アミノ酸を包含する用語である。
また、本明細書において所定のアミノ酸配列(即ち(a)p53関連部分アミノ酸配列、(b)膜通過関連部分アミノ酸配列、(c)NLS関連部分アミノ酸配列)に対して「部分的な改変が施されたアミノ酸配列(改変アミノ酸配列)」とは、当該所定のアミノ酸配列が有する特徴的機能または作用を損なうことなく、1個または数個(例えば5個以下、好ましくは1,2又は3個程度)のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加(挿入)されて形成されたアミノ酸配列をいう。例えば、1個又は数個(典型的には2個又は3個)のアミノ酸残基が保守的に置換したいわゆる同類置換(conservative amino acid replacement)によって生じた配列(例えばネイティブなNLS関連部分アミノ酸に含まれる塩基性アミノ酸残基を別の塩基性アミノ酸残基に置換した配列)、或いは、所定のアミノ酸配列について1個又は数個(典型的には2個又は3個)のアミノ酸残基が付加(挿入)した若しくは欠失した配列等は、本明細書でいう「部分的な改変が施された配列(改変アミノ酸配列)」に包含される典型例である。
また、本明細書において「ポリヌクレオチド」とは、複数のヌクレオチドがリン酸ジエステル結合で結ばれたポリマー(核酸)を指す用語であり、ヌクレオチドの数によって限定されない。種々の長さのDNAフラグメント及びRNAフラグメントが本明細書におけるポリヌクレオチドに包含される。また、「人為的に設計されたポリヌクレオチド」とは、そのヌクレオチド鎖(全長)がそれ単独で自然界に存在するものではなく、化学合成或いは生合成(即ち遺伝子工学に基づく生産)によって人為的に合成されたポリヌクレオチドをいう。
ここで開示されるペプチドは、腫瘍細胞に対し細胞毒性(細胞障害性)を誘発し得るp53タンパク質N末端側に存在するMDM2結合領域(ドメイン)から選択した少なくとも9個の連続するアミノ酸残基から成るアミノ酸配列と、細胞膜通過ドメインを構成するアミノ酸配列と、NLSを構成するアミノ酸配列とを含む。
ここで(a)p53関連部分アミノ酸配列としては、p53タンパク質の上記MDM2結合領域(ドメイン)から選択した少なくとも9個の連続するアミノ酸残基から成るアミノ酸配列(該配列に部分的な改変が施されたアミノ酸配列を包含する。)であればよい。ヒト由来p53タンパク質のN末端から第12位〜第26位までのアミノ酸配列、具体的には第12位から第26位までのアミノ酸残基がPPLSQETFSDLWKLL(配列番号82)である配列から選択した少なくとも9個の連続するアミノ酸残基から成るアミノ酸配列(若しくはその改変アミノ酸配列)を好ましく採用することができる。
例えばヒトp53タンパク質の第12位(配列番号82のN末端(左端)のプロリン)から第20位(セリン)までのアミノ酸配列(合計9アミノ酸残基)若しくはその改変アミノ酸配列、同第17位(配列番号82ではグルタミン酸)〜第26位(配列番号82のC末端(右端)のロイシン)までのアミノ酸配列(合計10アミノ酸残基)若しくはその改変アミノ酸配列、同第12位〜第26位までのアミノ酸配列(即ち配列番号82に示される全15アミノ酸残基)若しくはその改変アミノ酸配列が好適例として挙げられる(上記非特許文献1及び2参照)。
(b)膜通過関連部分アミノ酸配列としては、いわゆる細胞膜通過ドメイン(タンパク質導入ドメイン:Protein Transduction Domain)を構成するアミノ酸配列であればよい。多くの好適な細胞膜通過ドメイン(ペプチド断片)が知られているが、それらのうちの好適な幾つかの例を配列番号83〜87に示した。配列番号83は、HIVのTATに含まれるタンパク質導入ドメインのアミノ酸配列を示している。配列番号84は、前記TATを改変したタンパク質導入ドメイン(PTD4)のアミノ酸配列を示している。配列番号85〜86は、ショウジョウバエ(Drosophila)の変異体AntennapediaのANTの関連アミノ酸配列を示している。配列番号87は、11個のアルギニン残基から成るポリアルギニンである。なお、ポリアルギニンは11個の残基に限定されず、例えば7〜10個のアルギニン残基から成るポリアルギニンであり得る。また、12個以上のアルギニン残基が連続して配列していてもよい(即ち11×R+数個のR)。
(c)NLS関連部分アミノ酸配列としては、従来、各種の生物やウイルスから発見されたネイティブなNLSの何れかを選択し、その配列のまま利用することができる。具体例として配列番号1〜配列番号81にそれぞれ示されるNLSが挙げられる。例えば、SV40(Simian virus 40)由来のNLSを好適に使用し得る。
特に限定するものではないが、塩基性アミノ酸残基の含有率が高いものが好ましい。例えば、40%以上(更に好ましくは50%以上)のアミノ酸残基が塩基性アミノ酸残基(リジン及び/又はアルギニン)であるものが好適である。5〜25個程度のアミノ酸残基で1単位を構成するNLSが好適である。例えば、RRMKWKK(配列番号1)、RVHPYQR(配列番号2)、PKKKRKV(配列番号4)、GKKRSKA(配列番号5)、RGRRRRQR(配列番号7)、RKKRRQRRR(配列番号20)及びPRRRK(配列番号26)のような5アミノ酸残基以上で構成されるNLS関連部分アミノ酸配列を1単位又は2単位以上含むペプチドが好ましい。なお、RKRR(配列番号27)のような、1単位が4アミノ酸残基以下である場合には、同種又は異なるNLSと組み合わせ、全体で5アミノ酸残基以上となるアミノ酸配列を設計することが好ましい。すなわち、1単位が4アミノ酸残基以下のNLSを2単位以上(典型的には2単位、3単位又は4単位)含むNLS関連部分アミノ酸配列を設計するとよい。例えばNLSとしてRKRR(配列番号27)を選択した場合、その配列を二単位タンデムに繋いだ8アミノ酸残基から成る配列(即ちRKRR+RKRR)をNLS関連部分アミノ酸配列とすることができる。2単位又は3単位以上のNLSを含むようにNLS関連部分アミノ酸配列を設計する場合、好ましくは、これらNLSがペプチド鎖中で隣接して配置されるように設計する。この場合、隣接する一方のNLSのC末端アミノ酸と他方のNLSのN末端アミノ酸とが直接結合した形態が好ましい。或いは、隣接する二つのNLSの間にリンカーとして1〜数個程度のアミノ酸残基(例えば1〜数個のグリシン残基)が介在したものもNLS関連アミノ酸配列として好ましい。
ここで開示される抗腫瘍ペプチドでは、好ましい抗腫瘍活性(腫瘍細胞の増殖抑制活性)を発揮し得る限りにおいて、ペプチド鎖中におけるp53関連部分アミノ酸配列、膜通過関連部分アミノ酸配列及びNLS関連部分アミノ酸配列の存在位置は特に限定されない。ペプチド鎖のN末端側から順に、NLS関連部分アミノ酸配列:p53関連部分アミノ酸配列:膜通過関連部分アミノ酸配列と配置されたペプチドが好ましい。
ペプチド鎖中においてこれら3種の部分アミノ酸配列は相互に隣接して連なる形態でもよく、或いは、隣接する二つの部分アミノ酸配列間にリンカーとして1〜数個程度のアミノ酸残基(例えば1〜数個のグリシン残基)が介在した形態でもよい。
本発明によって提供される抗腫瘍ペプチドは、少なくとも一つのアミノ酸残基がアミド化されているものが好ましい。アミノ酸残基(典型的にはペプチド鎖のC末端アミノ酸残基)のカルボキシル基のアミド化により、ペプチドの構造安定性(例えばプロテアーゼ耐性)を向上させ得る。
また、ここで開示される抗腫瘍ペプチドとしては、ペプチド鎖を構成する全アミノ酸残基数が100以下(好適には50以下、特に好ましくは30以下)であるものが望ましい。このような鎖長の短いペプチドは、化学合成が容易であり、容易に抗腫瘍ペプチドを提供することができる。なお、ペプチドのコンホメーション(立体構造)については、使用する環境下で抗腫瘍活性を発揮する限りにおいて、特に限定されるものではないが、免疫原(抗原)になり難いという観点から直鎖状又はへリックス状のものが好ましい。このような形状のペプチドはエピトープを構成し難い。かかる観点から、抗腫瘍剤に適用する抗腫瘍ペプチドとしては、直鎖状であり比較的低分子量(典型的には100以下(好適には50以下、特に好ましくは30以下)のアミノ酸残基数)のものが好適である。また、ここで開示される抗腫瘍ペプチドは、抗腫瘍活性を失わない限りにおいて、上記(a)(b)(c)の3種の部分アミノ酸配列に含まれないアミノ酸残基を含み得る(例えば上記リンカーとしてのアミノ酸残基)。
ここで開示される抗腫瘍ペプチドのうちペプチド鎖の比較的短いものは、一般的な化学合成法に準じて容易に製造することができる。例えば、従来公知の固相合成法又は液相合成法のいずれを採用してもよい。アミノ基の保護基としてBoc(t-butyloxycarbonyl)或いはFmoc(9-fluorenylmethoxycarbonyl)を適用した固相合成法が好適である。
ここで開示される抗腫瘍ペプチドは、市販のペプチド合成機(例えば、PerSeptive
Biosystems社、Applied Biosystems社等から入手可能である。)を用いた固相合成法により、所望するアミノ酸配列、修飾(C末端アミド化等)部分を有するペプチド鎖を合成することができる。
或いは、遺伝子工学的手法に基づいて抗腫瘍ペプチドを生合成してもよい。このアプローチは、ペプチド鎖の比較的長いポリペプチドを製造する場合に好適である。すなわち、所望する抗腫瘍ペプチドのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(ATG開始コドンを含む。)のDNAを合成する。そして、このDNAと該アミノ酸配列を宿主細胞内で発現させるための種々の調節エレメント(プロモーター、リボゾーム結合部位、ターミネーター、エンハンサー、発現レベルを制御する種々のシスエレメントを包含する。)とから成る発現用遺伝子構築物を有する組換えベクターを、宿主細胞に応じて構築する。
一般的な技法によって、この組換えベクターを所定の宿主細胞(例えばイースト、昆虫細胞、植物細胞、動物(哺乳類)細胞)に導入し、所定の条件で当該宿主細胞又は該細胞を含む組織や個体を培養する。このことにより、目的とするポリペプチドを細胞内で発現、生産させることができる。そして、宿主細胞(分泌された場合は培地中)からポリペプチドを単離し、精製することによって、目的の抗腫瘍ペプチドを得ることができる。一般的な技法によって、この組換えベクターを所定の宿主細胞(例えばイースト、昆虫細胞、植物細胞、哺乳類細胞)に導入し、所定の条件で当該宿主細胞又は該細胞を含む組織や個体を培養する。このことにより、目的とするポリペプチドを細胞内で発現、生産させることができる。そして、宿主細胞(分泌された場合は培地中)からポリペプチドを単離し、精製することによって、目的の抗腫瘍ペプチドを得ることができる。
なお、組換えベクターの構築方法及び構築した組換えベクターの宿主細胞への導入方法等は、当該分野で従来から行われている方法をそのまま採用すればよく、かかる方法自体は特に本発明を特徴付けるものではないため、詳細な説明は省略する。
例えば、宿主細胞内で効率よく大量に生産させるために融合タンパク質発現システムを利用することができる。すなわち、目的の抗腫瘍ペプチドのアミノ酸配列をコードする遺伝子(DNA)を化学合成し、該合成遺伝子を適当な融合タンパク質発現用ベクター(例えばノバジェン社から提供されているpETシリーズおよびアマシャムバイオサイエンス社から提供されているpGEXシリーズのようなGST(Glutathione S-transferase)融合タンパク質発現用ベクター)の好適なサイトに導入する。そして該ベクターにより宿主細胞(例えば大腸菌)を形質転換する。得られた形質転換体を培養して目的の融合タンパク質を調製する。次いで、該タンパク質を抽出及び精製する。次いで、得られた精製融合タンパク質を所定の酵素(プロテアーゼ)で切断し、遊離した目的のペプチド断片(設計した抗腫瘍ペプチド)をアフィニティクロマトグラフィー等の方法によって回収する。このような従来公知の融合タンパク質発現システム(例えばアマシャムバイオサイエンス社により提供されるGST/Hisシステムを利用し得る。)を用いることによって、本発明の抗腫瘍ペプチドを製造することができる。
或いは、無細胞タンパク質合成システム用の鋳型DNA(即ち抗腫瘍ペプチドのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む合成遺伝子断片)を構築し、ペプチド合成に必要な種々の化合物(ATP、RNAポリメラーゼ、アミノ酸類等)を使用し、いわゆる無細胞タンパク質合成システムを採用して目的のポリペプチドをインビトロ合成することができる。無細胞タンパク質合成システムについては、例えばShimizuらの論文(Shimizu et al., Nature Biotechnology, 19, 751-755(2001))、Madinらの論文(Madin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97(2), 559-564(2000))が参考になる。これら論文に記載された技術に基づいて、本願出願時点において既に多くの企業がポリペプチドの受託生産を行っており、また、無細胞タンパク質合成用キット(例えば、日本の東洋紡績(株)から入手可能なPROTEIOS(商標)Wheat germ cell-free protein synthesis kit)が市販されている。
従って、上述のようにして、利用する3種の部分アミノ酸配列(p53関連部分アミノ酸配列、膜通過関連部分アミノ酸配列、NLS関連部分アミノ酸配列)をひとたび決定し、ペプチド鎖を設計しさえすれば、そのアミノ酸配列に従って無細胞タンパク質合成システムによって目的の抗腫瘍ペプチドを容易に合成・生産することができる。例えば、日本の(株)ポストゲノム研究所のピュアシステム(登録商標)に基づいて本発明の抗腫瘍ペプチドを容易に生産することができる。
ここで開示される抗腫瘍ペプチドをコードするヌクレオチド配列及び/又は該配列と相補的なヌクレオチド配列を含む一本鎖又は二本鎖のポリヌクレオチドは、従来公知の方法によって容易に製造(合成)することができる。すなわち、設計したアミノ酸配列を構成する各アミノ酸残基に対応するコドンを選択することによって、抗腫瘍ペプチドのアミノ酸配列に対応するヌクレオチド配列が容易に決定され、提供される。そして、ひとたびヌクレオチド配列が決定されれば、DNA合成機等を利用して、所望するヌクレオチド配列に対応するポリヌクレオチド(一本鎖)を容易に得ることができる。さらに得られた一本鎖DNAを鋳型として用い、種々の酵素的合成手段(典型的にはPCR)を採用して目的の二本鎖DNAを得ることができる。
本発明によって提供されるポリヌクレオチドは、DNAの形態であってもよく、RNA(mRNA等)の形態であってもよい。DNAは、二本鎖又は一本鎖で提供され得る。一本鎖で提供される場合は、コード鎖(センス鎖)であってもよく、それと相補的な配列の非コード鎖(アンチセンス鎖)であってもよい。
本発明によって提供されるポリヌクレオチドは、上述のように、種々の宿主細胞中で又は無細胞タンパク質合成システムにて、抗腫瘍ペプチド生産のための組換え遺伝子(発現カセット)を構築するための材料として使用することができる。
本発明によると、新規なアミノ酸配列の抗腫瘍ペプチドをコードするヌクレオチド配列及び/又は該配列と相補的なヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドが提供される。例えば、ペプチド鎖を構成する全アミノ酸残基数が100以下(好ましくは50以下、特に好ましくは30以下)であって、配列番号1〜81のいずれかで示されるNLS関連部分アミノ酸配列、配列番号82で示されるp53関連部分アミノ酸配列及び配列番号83〜87のいずれかで示される膜通過関連部分アミノ酸配列を含むペプチド鎖をコードするヌクレオチド配列及び/又は該配列と相補的なヌクレオチド配列を含む(又はそれら配列から実質的に構成された)人為的に設計されたポリヌクレオチドが提供される。
好適な本発明の抗腫瘍ペプチドは少なくとも一種の腫瘍細胞に対して高い増殖抑制(阻害)活性を有する。このため、抗腫瘍剤の有効成分として好適に使用し得る。なお、抗腫瘍剤に含有される抗腫瘍ペプチドは、抗腫瘍活性を損なわない限りにおいて、塩の形態であってもよい。例えば、常法に従って通常使用されている無機酸又は有機酸を付加反応させることにより得られ得る該ペプチドの酸付加塩を使用することができる。或いは、抗腫瘍活性を有する限り、他の塩(例えば金属塩)であってもよい。
抗腫瘍剤は、有効成分である抗腫瘍ペプチドの他、使用形態に応じて医薬(薬学)上許容され得る種々の担体(媒体)を含み得る。希釈剤、賦形剤等としてペプチド医薬において一般的に使用される担体(媒体)が好ましい。抗腫瘍剤の用途や形態に応じて適宜異なり得るが、典型的には、水、生理学的緩衝液、種々の有機溶媒が挙げられる。適当な濃度のアルコール(エタノール等)水溶液、グリセロール、オリーブ油のような不乾性油であり得る。或いはリポソームであってもよい。また、抗腫瘍剤に含有させ得る副次的成分としては、種々の充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、表面活性剤、色素、香料、等が挙げられる。
抗腫瘍剤の形態に関して特に限定はない。例えば、典型的な形態として、液剤、懸濁剤、乳剤、エアロゾル、泡沫剤、顆粒剤、粉末剤、錠剤、カプセル、軟膏が挙げられる。また、注射等に用いるため、使用直前に生理食塩水又は適当な緩衝液(例えばPBS)等に溶解して薬液を調製するための凍結乾燥物、造粒物とすることもできる。
なお、抗腫瘍ペプチド(主成分)及び種々の担体(副成分)を材料にして種々の形態の薬剤(組成物)を調製するプロセス自体は従来公知の方法に準じればよく、かかる製剤方法自体は本発明を特徴付けるものでもないため詳細な説明は省略する。処方に関する詳細な情報源として、例えばComprehensive Medicinal Chemistry, Corwin Hansch監修,Pergamon Press刊(1990)が挙げられる。
本発明によって提供される抗腫瘍剤は、従来のペプチド製剤と同様、その形態及び目的に応じた方法や用量で使用することができる。例えば、液剤として、静脈内、筋肉内、皮下、皮内若しくは腹腔内への注射によって患者(即ち生体)の患部(典型的には悪性腫瘍組織)に所望する量だけ投与することができる。或いは、錠剤等の固体形態のものは経口投与することができる。経口投与の場合は、消化管内での消化酵素分解を抑止すべくカプセル化や保護(コーティング)材の適用が好ましい。
また、本発明の抗腫瘍ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、いわゆる遺伝子治療に使用する素材として用い得る。例えば、抗腫瘍ペプチドをコードする遺伝子(典型的にはDNAセグメント、或いはRNAセグメント)を適当なベクターに組み込み、目的とする部位に導入することにより、常時、生体(細胞)内で本発明に係る抗腫瘍ペプチドを発現させることが可能である。従って、本発明の抗腫瘍ペプチドをコードするポリヌクレオチド(DNAセグメント、RNAセグメント等)は、腫瘍(特に悪性腫瘍)の増大や組織・細胞のがん化を防止し或いは進行を抑制する薬剤として有用である。
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
<実施例1:ペプチド合成>
サンプルペプチドとして配列番号88に示される全35アミノ酸残基のペプチド(PKKKRKV−G−PPLSQETFSDLWKLL−G−RRRRRRRRRRR)を後述するペプチド合成機を用いて製造した。
このペプチドは、N末端側にNLS関連部分アミノ酸配列としてSV40(Simian virus 40)由来のNLS配列(PKKKRKV:配列番号4)を有し、リンカー(ヒンジ部)として1個のグリシン残基を挟んでそのC末端側にp53関連部分アミノ酸配列であるPPLSQETFSDLWKLL(配列番号82)を有し、更にリンカー(ヒンジ部)として1個のグリシン残基を挟んでそのC末端側に細胞膜通過ドメインであるポリアルギニン(RRRRRRRRRRR:配列番号87)を有している。
また、対照ペプチドとして、配列番号89に示される全27アミノ酸残基のペプチド(PPLSQETFSDLWKLL−G−RRRRRRRRRRR)も同様にペプチド合成機を用いて製造した。
このペプチドは、N末端側にNLS関連部分アミノ酸配列を含んでおらず、N末端側に配置されるp53関連部分アミノ酸配列と1個のグリシン残基(リンカー)を挟んでそのC末端側に配置される細胞膜通過ドメインとから構成される。
なお、サンプルペプチド及び対照ペプチドのC末端アミノ酸のカルボキシル基(−COOH)はいずれもアミド化(−CONH)されている。
上記ペプチドは、市販のペプチド合成機(アプライドバイオシステム社製品 433A)を用いて固相合成法(Fmoc法)により合成した。なお、縮合剤としてHATU(Applied Biosystems社製品)を使用し、固相合成法に用いた樹脂及びアミノ酸はNOVA biochem社から購入した。アミノ酸配列のC末端をアミド化するために固相担体として「Rink Amide resin (100〜200 mesh)」 を使用した。
而して、上記ペプチド合成機の合成プログラムに準じて脱保護基反応及び縮合反応を反復して樹脂に結合するFmoc−アミノ酸からペプチド鎖を伸長していき、目的の鎖長の合成ペプチドを得た。具体的には、20%ピペリジン/ジメチルホルムアミド(DMF)(ペプチド合成用グレード、関東化学(株)製品)によって、アミノ酸のアミノ保護基であるFmocを切断除去し、DMFで洗浄し、Fmoc−アミノ酸(-OH)各4eqを反応させ、DMFで洗浄する操作を反復した。そして、ペプチド鎖の伸長反応が全て終了した後、20%ピペリジン/DMFによりFmoc基を切断し、DMF、メタノールの順で上記反応物を洗浄した。
固相合成後、合成したペプチド鎖を樹脂と共に遠沈管に移し、エタンジオール1.8mL、m-クレゾール0.6mL、チオアニソール3.6mL及びトリフルオロ酢酸24mLを加え、室温で2時間撹拌した。その後、ペプチド鎖に結合していた樹脂を濾過して除去した。
次いで、濾液に冷却エタノールを加え、氷冷水で冷却してペプチド沈澱物を得た。その後、遠心分離(2500rpmで5分間)によって上澄みを廃棄した。沈殿物に冷ジエチルエーテルを新たに加えて十分に撹拌した後、上記と同じ条件で遠心分離を行った。この撹拌と遠心分離の処理を計3回反復して行った。
得られたペプチド沈殿物を真空乾燥し、高速液体クロマトグラフ(Waters 600:Waters社製品)を用いて精製を行った。
具体的には、プレカラム(日本ウォーターズ(株)製品、Guard-Pak Delta-pak C18 A300)及びC18逆相カラム(日本ウォーターズ(株)製品、XTerra(登録商標)カラム、MS C18、5μm、4.6×150mm)を使用し、0.1%トリフルオロ酢酸水溶液と0.1%トリフルオロ酢酸アセトニトリル溶液との混合液を溶離液に用いた。即ち、溶離液に含まれる上記トリフルオロ酢酸アセトニトリル溶液の分量を経時的に増大させつつ(容積比で10%から80%への濃度勾配を設ける)、1.5mL/分の流速で上記カラムを用いて30〜40分間の分離精製を行った。なお、逆相カラムから溶離したペプチドは紫外線検出器(490E Detector:Waters社製品)を用いて波長:220nmで検出され、記録チャート上にピークとして示される。
また、溶離した各ペプチドの分子量をPerSeptive Biosystems社製のVoyager DE RP(商標)を用いてMALDI-TOF/MS(Matrix-Assisted Laser Desorption Time of Flight Mass Spectrometry:マトリックス支援レーザーイオン化−飛行時間型−質量分析)に基づいて決定した。その結果、目的のペプチド(サンプルペプチド及び対照ペプチド)が合成・精製されていることが確認された。
<実施例2:合成ペプチドの抗腫瘍活性評価試験(1)>
上記実施例1で得られた2種類のペプチドについて、骨肉腫(osteosarcoma)細胞の樹立細胞株(cell line)を用いて抗腫瘍活性(腫瘍細胞増殖阻害活性)を調べた。
供試骨肉腫細胞として、以下の3種のセルラインを使用した。
(1).HOS(Health Science Research Resources Bank (Japan Health Sciences Foundation, Osaka, Japan)より入手)。
(2).MG−63(the Cell Resource Center for Biomedical Research (Tohoku University, Sendai, Japan)より入手)。
(3).Saos−2(RIKEN BRC CELL BANK (Riken, Ibaragi, Japan)より入手)。
これら骨肉腫細胞は5%CO、37℃条件下の加湿インキュベータ内で培養した。なお、HOSの培養には10%FBS及び非必須アミノ酸を含むMEM(Eagle's minimal essential)培地を用いた。MG−63の培養には10%FBSを含むMEM培地を用いた。Sao−2の培養には10%FBSを含むMcCoy5A培地を用いた。
而して、平底96ウェルプレートの各ウェルに、ほぼ均等な細胞数(約1×10cells)となるように対数増殖期の細胞を播種し、各ペプチド濃度(0μM:コントロール、0.1μM、1μM、10μM)でインキュベーションを行った。インキュベーション開始から6時間経過時点でウェル中の培地をペプチド非含有の新鮮培地と交換した。引き続きインキュベーションを継続し、インキュベーション開始から24時間後、細胞生存性試験を行った。この試験には、Promega社製品である「CellTiter-Glo(商標)Luminescent Cell Viability Assay」キットを供給元から出されているマニュアルブックに準拠して用いた。そしてルミノメーターで各ウェルの発光量(RLU)を測定した。このキットでは細胞数に応じて発光シグナルが生成されるため、発光量の比較により抗腫瘍活性(腫瘍細胞増殖阻害活性)を評価することができる。結果をサンプルペプチドについては図1に、対照ペプチドについては図2に示す。グラフの縦軸は発光量(RLU×1000)、横軸は供試骨肉腫細胞種である。各細胞種の4つのヒストグラムは左からペプチド濃度が0μM(コントロール)、0.1μM、1μM、10μMの場合での結果を示す。
これらグラフから明らかなように、対照ペプチドと比較して上記NLS関連部分アミノ酸配列を備えるサンプルペプチドには顕著な抗腫瘍活性(腫瘍細胞増殖阻害活性)が認められた。
<実施例3:合成ペプチドの抗腫瘍活性評価試験(2)>
上記実施例2と同様の抗腫瘍活性評価試験を、神経膠種(glioma)細胞の樹立細胞株であるU87を用いて行った。また、上記骨肉腫細胞と同様、5%CO、37℃条件下の加湿インキュベータ内で培養した。なお、U87の培養には10%FBSを含むDMEM培地を用いた。
而して、6ウェルプレートの各ウェルにほぼ均等な細胞数(約1×10cells)となるように指数関数的増殖期の細胞を播種し、サンプルペプチドを所定の濃度(0μM(コントロール)、1μM、5μM、10μM)となるように添加してインキュベーションを行った。インキュベーション開始から1日(24時間)、2日(48時間)、3日(72時間)、6日(144時間)経過時点でいくつかのウェルから細胞を回収し、細胞数を市販の細胞計数装置を用いて計測した。結果を図3に示す。
グラフの縦軸は計測された細胞数(×10)であり、横軸はインキュベーション時間(日)を表す。図中の菱形のプロットがペプチド濃度0μM(コントロール区)、四角プロットがペプチド濃度1μM、三角プロットがペプチド濃度5μM、×のプロットがペプチド濃度10μMの結果を示す。
このグラフから明らかなように、上記NLS関連部分アミノ酸配列を備えるサンプルペプチドにはU87神経膠種細胞に対しても顕著な抗腫瘍活性(腫瘍細胞増殖阻害活性)が認められた。特に10μMの濃度では、腫瘍細胞の増殖をほぼ完全に阻害することができた。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したがこれらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。上記サンプルペプチドの他、種々のアミノ酸配列のペプチドが本発明により提供される。
例えば、上記サンプルペプチドのアミノ酸配列の改変配列として配列番号90〜93に示す種々のペプチドが抗腫瘍ペプチドとして提供される。
簡単に説明すれば、配列番号90に示すペプチドは、上記サンプルペプチド(配列番号88)から二つのリンカー(計2箇所のグリシン残基)を外した改変アミノ酸配列であり、1単位ずつのNLS関連部分アミノ酸配列、p53関連部分アミノ酸配列および膜通過関連部分アミノ酸配列のみから成る抗腫瘍ペプチドである。
また、配列番号91に示すペプチドは、上記サンプルペプチド(配列番号88)のN末端のアミノ酸残基であるプリンをアルギニンに置換した改変NLS配列を含むアミノ酸配列から成る抗腫瘍ペプチドである。
また、配列番号92に示すペプチドは、上記サンプルペプチド(配列番号88)のp53関連部分アミノ酸配列を、ヒトp53タンパク質の第12位(プロリン)から第20位(セリン)までの短いアミノ酸配列(合計9アミノ酸残基)に換えた抗腫瘍ペプチドである。
また、配列番号93に示すペプチドは、上記サンプルペプチド(配列番号88)のp53関連部分アミノ酸配列を、ヒトp53タンパク質の第17位(グルタミン酸)から第26位(ロイシン)までの短いアミノ酸配列(合計10アミノ酸残基)に換えた抗腫瘍ペプチドである。

Claims (12)

  1. 少なくとも一種の腫瘍細胞の増殖を抑制し得る人為的に合成された抗腫瘍ペプチドであって、該ペプチドのペプチド鎖には以下の3種のアミノ酸配列:
    (a)p53タンパク質のMDM2結合ドメインを構成するアミノ酸配列から選択される少なくとも9個の連続するアミノ酸残基から成る、p53関連部分アミノ酸配列;
    (b)細胞膜通過ドメインを構成するアミノ酸配列から成る、膜通過関連部分アミノ酸配列;および
    (c)核移行性シグナル(NLS)を構成するアミノ酸配列から成る、NLS関連部分アミノ酸配列;
    が含まれており、
    該ペプチド鎖を構成する全アミノ酸残基数が100以下である、抗腫瘍ペプチド。
  2. 前記p53関連部分アミノ酸配列として、PPLSQETFSDLWKLL(配列番号82)から選択される少なくとも9個の連続するアミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
  3. 前記膜通過関連部分アミノ酸配列として、連続する7〜11個のアルギニン残基から構成されるアミノ酸配列を含む、請求項2に記載のペプチド。
  4. 前記NLS関連部分アミノ酸配列として、PKKKRKV(配列番号4)から構成されるアミノ酸配列を含む、請求項3に記載のペプチド。
  5. ペプチド鎖のN末端側に前記NLS関連部分アミノ酸配列が配置され、そのNLS関連部分アミノ酸配列よりもC末端側に前記p53関連部分アミノ酸配列が配置され、そのp53関連部分アミノ酸配列よりもC末端側に前記膜通過関連部分アミノ酸配列が配置されている、請求項1〜4のいずれかに記載のペプチド。
  6. 少なくとも一種の腫瘍細胞の増殖を抑制し得る人為的に合成された抗腫瘍ペプチドであって、該ペプチドのペプチド鎖には以下の3種のアミノ酸配列:
    (a)p53タンパク質のMDM2結合ドメインを構成するアミノ酸配列から選択される少なくとも9個の連続するアミノ酸残基から成る、p53関連部分アミノ酸配列;
    (b)細胞膜通過ドメインを構成するアミノ酸配列から成る、膜通過関連部分アミノ酸配列;および
    (c)核移行性シグナル(NLS)を構成するアミノ酸配列から成る、NLS関連部分アミノ酸配列;
    が含まれており、該ペプチド鎖を構成する全アミノ酸残基数が100以下である抗腫瘍ペプチドと、
    薬学的に許容され得る担体と、
    を含む、抗腫瘍剤。
  7. 前記ペプチドは、前記p53関連部分アミノ酸配列としてPPLSQETFSDLWKLL(配列番号82)から選択される少なくとも9個の連続するアミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の抗腫瘍剤。
  8. 前記ペプチドは、前記膜通過関連部分アミノ酸配列として連続する7〜11個のアルギニン残基から構成されるアミノ酸配列を含む、請求項7に記載の抗腫瘍剤。
  9. 前記ペプチドは、前記NLS関連部分アミノ酸配列としてPKKKRKV(配列番号4)から構成されるアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の抗腫瘍剤。
  10. 前記ペプチドは、ペプチド鎖のN末端側に前記NLS関連部分アミノ酸配列が配置され、そのNLS関連部分アミノ酸配列よりもC末端側に前記p53関連部分アミノ酸配列が配置され、そのp53関連部分アミノ酸配列よりもC末端側に前記膜通過関連部分アミノ酸配列が配置されている、請求項6〜9のいずれかに記載の抗腫瘍剤。
  11. 少なくとも一種の腫瘍細胞の増殖を抑制し得る抗腫瘍ペプチドを製造する方法であって、
    以下の3種のアミノ酸配列:
    (a)p53タンパク質のMDM2結合ドメインを構成するアミノ酸配列から選択される少なくとも9個の連続するアミノ酸残基から成る、p53関連部分アミノ酸配列;
    (b)細胞膜通過ドメインを構成するアミノ酸配列から成る、膜通過関連部分アミノ酸配列;および
    (c)核移行性シグナル(NLS)を構成するアミノ酸配列から成る、NLS関連部分アミノ酸配列;
    が含まれるペプチド鎖を設計すること、
    および
    前記設計したペプチド鎖を合成すること、
    を包含する方法。
  12. ペプチド鎖を構成する全アミノ酸残基数が100以下となるように該ペプチド鎖を設計する、請求項11に記載の方法。
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