以下に、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態1]
以下、図面を参照して、実施形態1について詳細に説明する。
(劣化判定システムの構成例)
図1は、実施形態1にかかる劣化判定システム2の構成の一例をエレベータ1の概略構成とともに示す図である。
図1に示すように、エレベータ1は、昇降路110、乗りかご120、ガイドレール121、巻上機130、滑車132、メインロープ141、カウンタウェイト151、機械室160、ロープ長測定装置21、及び制御盤200を備える。また、劣化判定システム2は、ロープ長測定装置21及び制御盤200を備える。すなわち、ロープ長測定装置21及び制御盤200は、エレベータ1の構成要素であるとともに、劣化判定システム2の構成要素でもある。
昇降路110は、建物の複数の階床に亘って設けられている。昇降路110の上方には機械室160が設けられている。機械室160には、巻上機130、滑車132、ロープ長測定装置21、及び制御盤200が設置されている。
巻上機130は、双方向に回転可能なシーブ131と、シーブ131を回転させる駆動装置とを備える。巻上機130のシーブ131及び滑車132には、メインロープ141が架け渡され、巻上機130及び滑車132を覆うカバー130aが設けられている。
メインロープ141は、例えば樹脂被覆ロープである。巻上機130から延びるメインロープ141の一端は乗りかご120の上面に取り付けられている。メインロープ141の他端は、滑車132を介して下方に延び、カウンタウェイト151に取り付けられている。
ロープ長測定装置21は、例えば巻上機130の近傍の機械室160の床に設置されている。ロープ長測定装置21は、例えばカメラ等であり、カバー130aの隙間から、巻上機130のシーブ131とともにメインロープ141を観測可能に構成される。メインロープ141には、例えば所定間隔ごとにマークが付けられている。ロープ長測定装置21は、2つのマーク間のメインロープ141の長さを判別可能な撮像画像等の情報を取得する。
制御盤200は、乗りかご120、巻上機130、及びロープ長測定装置21等のエレベータ1の各部を制御する。制御盤200の詳細の構成については後述する。
乗りかご120は、巻上機130がメインロープ141の一端または他端を巻き上げることにより、昇降路110内を昇降可能に構成される。これにより、乗りかご120は、目的階の乗り場に移動することができる。乗りかご120は、制御ケーブル及び電源ケーブル等を内装したテールコードを介して制御盤200に接続されている。
ガイドレール121は、昇降路110内に、昇降路110の壁面に沿って設けられている。乗りかご120は、上下動可能にガイドレール121に連結され、ガイドレール121に導かれて昇降路110内を昇降する。
図2は、実施形態1にかかる劣化判定システム2が備える制御盤200の構成の一例を示すブロック図である。
劣化判定装置としての制御盤200は、通常の形式の双方向コモン・バスにより相互に連結されたCPU(中央演算処理装置)、所定の制御プログラム等を予め記憶しているROM(Read Only Memory)、及びCPUの演算結果を一時記憶するRAM(Random Access Memory)を少なくとも有するマイクロコンピュータを備える。
図2に示すように、制御盤200は、例えばROMの記憶する制御プログラム等が実行されることにより、機能概念的に、運行情報取得部210、曲げ回数カウント部220、閾値設定部230、運転速度設定部240、ロープ伸び値算出部250、判定部260、出力部270、及び記憶部280を備える。
運行情報取得部210は、乗りかご120、巻上機130、及びロープ長測定装置21等のエレベータ1の各部の動作状況から、エレベータ1の運行情報を取得する。エレベータ1の運行情報には、例えば乗りかご120の所定階から他の階への移動回数、巻上機130の駆動状況、巻上機130が有するシーブ131の回転数、及びロープ長測定装置21からのメインロープ141の長さ情報等が含まれる。
曲げ回数カウント部220は、巻上機130により巻き上げられることで生じるメインロープ141の曲げ回数をカウントする。ここで、メインロープ141の曲げ回数と、エレベータ1の運行回数とは実質的に一致する。つまり、例えば乗りかご120が2階から3階へと移動した場合、メインロープ141の曲げ回数は1回である。また例えば、乗りかご120が3階から1階へと移動した場合にも、メインロープ141の曲げ回数は1回となる。曲げ回数カウント部220は、カウントしたメインロープ141の曲げ回数を、記憶部280の曲げ回数情報格納部281に格納する。
閾値設定部230は、記憶部280の設定情報格納部283を参照して適正な閾値を取得し、メインロープ141の伸び値に対する閾値を設定する。このとき、閾値設定部230は、記憶部280の曲げ回数情報格納部281を参照して、メインロープ141の曲げ回数に応じて異なる閾値を設定する。
一例として、閾値設定部230は、メインロープ141の曲げ回数が20万回未満であれば、メインロープ141の伸び値に対する閾値を、マークの付された所定区間内において例えば5mmとする。また、閾値設定部230は、メインロープ141の曲げ回数が20万回以上40万回未満であれば、メインロープ141の伸び値に対する閾値を、マークの付された所定区間内において例えば4mmとする。また、閾値設定部230は、メインロープ141の曲げ回数が40万回超であれば、メインロープ141の伸び値に対する閾値を、マークの付された所定区間内において例えば3mmとする。
ところで、メインロープ141の伸び値を得るには、まず、ロープ長測定装置21からメインロープ141の長さ情報を取得する。制御盤200は、乗りかご120を運転させた状態で、ロープ長測定装置21により、マークの付された区間ごとにメインロープ141の長さを判別可能な情報を取得させる。
運転速度設定部240は、記憶部280の設定情報格納部283を参照して適正な運転速度を取得し、ロープ長測定装置21がメインロープ141の長さ情報を取得する際の乗りかご120の運転速度を設定する。このとき、運転速度設定部240は、記憶部280の曲げ回数情報格納部281を参照して、メインロープ141の曲げ回数に応じて異なる運転速度を設定する。
一例として、運転速度設定部240は、メインロープ141の曲げ回数が20万回未満であれば、メインロープ141の長さ測定時の乗りかご120の運転速度を例えば45m/分とする。また、運転速度設定部240は、メインロープ141の曲げ回数が20万回以上40万回未満であれば、メインロープ141の長さ測定時の乗りかご120の運転速度を例えば30m/分とする。また、運転速度設定部240は、メインロープ141の曲げ回数が40万回超であれば、メインロープ141の長さ測定時の乗りかご120の運転速度を例えば15m/分とする。
ロープ伸び値算出部250は、ロープ長測定装置21から得られたメインロープ141の長さを判別可能な情報に基づき、マークの付された区間ごとにメインロープ141の伸び値を算出する。つまり、ロープ伸び値算出部250は、マークの付された所定区間について算出したメインロープ141の長さから、ロープ長情報格納部284から取得したその区間の初期状態におけるメインロープ141の長さを差し引いて、その区間におけるメインロープ141の伸び値を算出する。ロープ伸び値算出部250は、算出したメインロープ141の伸び値を、記憶部280のロープ伸び情報格納部282に格納する。
判定部260は、算出された所定区間ごとのメインロープ141の伸び値を、メインロープ141の曲げ回数に応じて設定された閾値と比較する。判定部260は、いずれかの区間において、メインロープ141の伸び値が閾値を超えていた場合には、そのメインロープ141は劣化していると判定する。
出力部270は、判定部260によりメインロープ141が劣化しているという判定がなされると、メインロープ141が劣化したことを示す劣化情報を出力する。劣化情報には、その他、メインロープ141の劣化箇所、及びメインロープ141に対して劣化判定がなされるまでのメインロープ141の曲げ回数等の情報が含まれていてもよい。劣化情報の出力手法としては、例えば制御盤200が備える図示しない表示部に劣化情報を表示させたり、制御盤200の図示しない音声出力部からアラームを発報させたり、保守作業員の携帯端末に劣化情報の通知を送信したりといった各種態様が考えられる。
記憶部280は、制御盤200がエレベータ1を制御するのに必要な各種プログラム及びパラメータを記憶する。また、記憶部280は、曲げ回数情報格納部281、ロープ伸び情報格納部282、設定情報格納部283、及びロープ長情報格納部284を有する。
曲げ回数情報格納部281には、曲げ回数カウント部220がカウントしたメインロープ141の曲げ回数の情報が格納されている。
ロープ伸び情報格納部282には、ロープ伸び値算出部250が算出した所定区間ごとのメインロープ141の伸び値の情報が格納されている。
設定情報格納部283には、メインロープ141の伸び値に対する閾値情報、及びメインロープ141の長さ測定時の乗りかご120の運転速度情報が格納されている。閾値情報は、メインロープ141の曲げ回数に応じて異なる閾値を含む。運転速度情報は、メインロープ141の曲げ回数に応じて異なる運転速度を含む。
ロープ長情報格納部284には、メインロープ141の所定区間ごとの初期長さの情報が格納されている。ロープ長情報格納部284には、メインロープ141の全長から算出した所定区間における平均長さが格納されていてもよい。
(劣化判定システムの劣化判定処理例)
次に、図3及び図4を用いて、実施形態1の劣化判定システム2による劣化判定処理の例について説明する。図3は、実施形態1にかかる劣化判定システム2による劣化判定処理の手順の一例を示すフロー図である。
劣化判定システム2による劣化判定処理は、例えば保守作業員の指示にしたがって実行される。劣化判定処理の実行に際して、記憶部280の曲げ回数情報格納部281には、曲げ回数カウント部220がカウントしたメインロープ141の曲げ回数の情報が格納されているものとする。
図3に示すように、閾値設定部230は、曲げ回数情報格納部281を参照して、メインロープ141の曲げ回数の情報を取得し、メインロープ141の曲げ回数が20万回以上か(ステップS101)、メインロープ141の曲げ回数が40万回以上か(ステップS102)等の判定を行う。
閾値設定部230は、メインロープ141の曲げ回数が20万回未満である場合には(ステップS101:No)、記憶部280の設定情報格納部283を参照して、メインロープ141の伸び値に対する閾値を例えば5mmに設定する(ステップS103)。
閾値設定部230は、メインロープ141の曲げ回数が20万回以上40万回未満である場合には(ステップS101:Yes、ステップS102:No)、設定情報格納部283を参照して、メインロープ141の伸び値に対する閾値を例えば4mmに設定する(ステップS104)。
閾値設定部230は、メインロープ141の曲げ回数が40万回超である場合には(ステップS101:Yes、ステップS102:Yes)、設定情報格納部283を参照して、メインロープ141の伸び値に対する閾値を例えば3mmに設定する(ステップS105)。
ロープ伸び値算出部250は、メインロープ141の伸び値を算出する(S106)。ロープ伸び値算出部250は、算出したメインロープ141の伸び値を記憶部280のロープ伸び情報格納部282に格納する。
なお、運転速度設定部240によるメインロープ141の曲げ回数に応じた運転速度の設定、及び設定された運転速度でのロープ長測定装置21によるメインロープ141の長さ情報の取得等のメインロープ141の伸び値を算出する詳細方法については後述する。
判定部260は、所定区間ごとに、算出されたメインロープ141の伸び値と設定された閾値とを比較する(ステップS107)。
判定部260は、少なくともいずれかの区間において、算出された伸び値が設定された閾値を超えていた場合には(ステップS107:Yes)、メインロープ141が劣化しているものと判定する(ステップS108)。
判定部260は、いずれの区間においても、算出された伸び値が設定された閾値以下であった場合には(ステップS107:No)、メインロープ141は劣化していないものと判定する(ステップS109)。
判定部260によりメインロープ141が劣化しているという判定がなされると、出力部270は、メインロープ141が劣化したことを示す劣化情報を出力する(ステップS110)。
以上により、実施形態1の劣化判定システム2による劣化判定処理が終了する。
図4は、実施形態1にかかる劣化判定システム2によるメインロープ141の伸び値を算出する処理の手順の一例を示すフロー図である。すなわち、図4は、上述の図3におけるステップS106の処理の詳細を説明するフロー図である。
図4に示すように、運転速度設定部240は、記憶部280の曲げ回数情報格納部281を参照して、メインロープ141の曲げ回数の情報を取得し、メインロープ141の曲げ回数が20万回以上か(ステップS111)、メインロープ141の曲げ回数が40万回以上か(ステップS112)等の判定を行う。
運転速度設定部240は、メインロープ141の曲げ回数が20万回未満である場合には(ステップS111:No)、記憶部280の設定情報格納部283を参照して、乗りかご120の運転速度を例えば45m/分に設定する(ステップS113)。
運転速度設定部240は、メインロープ141の曲げ回数が20万回以上40万回未満である場合には(ステップS111:Yes、ステップS112:No)、設定情報格納部283を参照して、乗りかご120の運転速度を例えば30m/分に設定する(ステップS114)。
運転速度設定部240は、メインロープ141の曲げ回数が40万回超である場合には(ステップS111:Yes、ステップS112:Yes)、設定情報格納部283を参照して、乗りかご120の運転速度を例えば15m/分に設定する(ステップS115)。
制御盤200は、設定された運転速度で乗りかご120を上昇または下降させつつ、ロープ長測定装置21により、所定区間ごとのメインロープ141の長さが判別可能な情報を取得させる(ステップS116)。一例として、ロープ長測定装置21が例えばカメラ等である場合には、ロープ長測定装置21は、メインロープ141が巻上機130のシーブ131を通過する際に、マークの付された所定区間ごとにメインロープ141を撮像する。
ロープ伸び値算出部250は、ロープ長測定装置21からの、メインロープ141の長さが判別可能な情報に基づき、所定区間ごとのメインロープ141の現在の長さを算出する。メインロープ141の長さ情報が例えばメインロープ141の撮像画像である場合には、撮像画像中の2つのマーク間のメインロープ141の長さを算出する。メインロープ141の長さは、一般的な画像処理技術を用いて算出することができる。
また、ロープ伸び値算出部250は、メインロープ141の長さの算出に、巻上機130のシーブ131の回転数を利用してもよい。すなわち、所定区間を示す最初のマークが検出されてから、所定区間の終端部を示すマークが検出されるまでにシーブが回転した距離を用いて、上述の画像処理により得られたメインロープ141の長さを補正するなどしてもよい。
ロープ伸び値算出部250は、記憶部280のロープ長情報格納部284を参照して、所定区間ごとのメインロープ141の初期長さを取得する。そして、ロープ伸び値算出部250は、所定区間ごとのメインロープ141の現在の長さから、所定区間ごとのメインロープ141の初期長さを差し引いて、所定区間ごとのメインロープ141の伸び値を算出する(ステップS117)。
以上により、実施形態1の劣化判定システム2によるメインロープ141の伸び値を算出する処理が終了する。
なお、所定区間ごとのメインロープ141の長さは、乗りかご120を上昇させつつ取得したメインロープ141の長さと、乗りかご120を下降させつつ取得したメインロープ141の長さとの平均を取るなどしてもよい。
エレベータのメインロープは、巻上機により巻き上げられることにより、繰り返し折り曲げられて劣化する。このようなメインロープの劣化を精度よく判定し、適時、交換する必要がある。
メインロープの劣化を判定するために、曲げ回数が所定回数を超えた場合にメインロープが劣化したものと判定する手法が考えられる。また、メインロープ長が所定の伸び値を超えた場合にメインロープが劣化したものと判定する手法が考えられる。しかしながら、メインロープの曲げ回数とメインロープの伸び値とを独立させて劣化判定に用いると、判定精度が劣る場合がある。
実施形態1の劣化判定方法によれば、メインロープ141の曲げ回数に応じて異なる閾値を設定し、メインロープ141の伸び値と閾値との相対関係に基づき、メインロープ141が劣化したか否かを判定する。これにより、メインロープ141の伸び値に基づく劣化判定の精度を向上させることができる。
実施形態1の劣化判定方法によれば、メインロープ141の曲げ回数が多くなるほど小さな値の閾値を設定する。つまり、メインロープ141の曲げ回数が少なく劣化の可能性が低いときに比べ、メインロープ141の曲げ回数が増加して劣化の可能性が高まったときにはより厳しい判定値を用いる。これにより、メインロープ141の伸び値に基づく劣化判定を適正に行うことができる。
実施形態1の劣化判定方法によれば、メインロープ141の長さを測定する場合には、メインロープ141の曲げ回数が多くなるほど、乗りかご120の運転速度を遅くする。これにより、メインロープ141の曲げ回数が少なく劣化の可能性が低いときには、乗りかご120の運転速度を速めて長さ測定に要する時間を短縮することができる。一方、メインロープ141の曲げ回数が増加して劣化の可能性が高まったときには、乗りかご120の運転速度を遅くしてより精密な長さ測定を行うことができる。
実施形態1の劣化判定方法によれば、巻上機130の近傍に配置されたロープ長測定装置21により、巻上機130に架け渡されたメインロープ141の長さを測定する。メインロープ141のうち、巻上機130に直接的に巻き上げられる箇所は、より劣化しやすい個所である。上記のように、ロープ長測定装置21を巻上機130の近傍に配置し、巻上機130のシーブ131を通過する際のメインロープ141の長さを測定することで、より劣化しやすい個所の伸び値を把握することができ、劣化判定の精度を向上させることができる。また、メインロープ141とともに巻上機130のシーブ131を観測することで、シーブ131の状態をも監視することができる。
なお、上述の実施形態1では、メインロープ141の曲げ回数とエレベータ1の運行回数とは実質的に一致することとしたが、これに限られない。例えば、例えば乗りかごが2階と3階との間を移動した場合にはメインロープの曲げ回数を1回とし、乗りかごが1階と3階との間を移動した場合にはメインロープの曲げ回数を3回などとしてもよい。また、この場合において、乗りかごが上昇する場合と下降する場合とを分けてカウントし、乗りかごの上昇時の曲げ回数と下降時の曲げ回数とに異なる重みづけをしたうえで合計の曲げ回数を求めてもよい。
また、上述の実施形態1では、所定区間ごとのメインロープ141の伸び値を算出し、そのうちの1箇所でも閾値を超えていた場合には、メインロープ141が劣化しているものと判定した。しかしながら、例えば、所定区間ごとのメインロープ141の伸び値の平均値と閾値とを比較して、劣化判定を行ってもよい。
(変形例1)
次に、図5及び図6を用いて、実施形態1の変形例1の劣化判定システムについて説明する。変形例1の劣化判定システムでは、ロープ長測定装置21a,21bの配置場所が、上述の実施形態1とは異なる。
図5及び図6は、実施形態1の変形例1にかかる劣化判定システムの構成の一例をエレベータの概略構成とともに示す図である。図5及び図6に示すように、変形例1のエレベータは、上述の実施形態1のような機械室160を有さない。
変形例1のエレベータにおいて、巻上機130及び滑車132は、昇降路110内に設けられたマシンベッド160a上に設置される。マシンベッド160aは、昇降路110内の壁面の少なくとも一辺に接合して設けられる。
図5の例において、ロープ長測定装置21aは、例えば巻上機130の近傍のマシンベッド160aの上面に設定される。これにより、ロープ長測定装置21aは、カバー130aの隙間から巻上機130のシーブ131とともにメインロープ141を観測可能である。ロープ長測定装置21aの構成および機能は、上述の実施形態1のロープ長測定装置21と同様である。
図6の例において、ロープ長測定装置21bは、例えば昇降路110のガイドレール121の上端部付近から巻上機130の近傍へと延びる支持具に支えられた状態で配置される。マシンベッド160aは、ロープ長測定装置21bを設置する充分なスペースを有さない場合がある。このような場合でも、ロープ長測定装置21bは、カバー130aの隙間から巻上機130のシーブ131とともにメインロープ141を観測可能である。ロープ長測定装置21bの構成および機能は、上述の実施形態1のロープ長測定装置21と同様である。
図5及び図6の例に示すように、劣化判定装置としての制御盤200a,200bは、例えば昇降路110の底部付近に設置される。ただし、制御盤200a,200bは、保守作業員等が立ち入り可能な区域であれば、どこに設置されてもよい。制御盤200a,200bの構成および機能は、上述の実施形態1の制御盤200と同様である。
(変形例2)
エレベータには、上述のメインロープ以外にも種々のロープが用いられる場合がある。上述の実施形態1の構成は、これらのロープの劣化判定にも適用することが可能である。以下に、他のロープへの劣化判定の適用例について説明する。
図7は、実施形態1の変形例2にかかる劣化判定システムの構成の一例をエレベータの概略構成とともに示す図である。図7に示すように、変形例2のエレベータは、メインロープ141に加え、コンペンロープ142を備えている。
コンペンロープ142は、昇降路110の底部に設けられたコンペンシーブ133に架け渡され、一端が乗りかご120の下面に取り付けられ、他端がカウンタウェイト151に取り付けられている。コンペンロープ142は、乗りかご120が昇降路110内を昇降することに伴って生じるメインロープ141の重量バランスの変化を相殺する。
コンペンロープ142の一端および他端は、乗りかご120及びカウンタウェイト151の上昇に伴ってそれぞれ牽引される。コンペンロープ142が牽引されると、コンペンロープ142との摩擦力によってコンペンシーブ133が回転する。
すなわち、コンペンロープ142もまた、コンペンシーブ133により繰り返し折り曲げられることによって劣化しうる。
変形例2の劣化判定システムは、ロープ長測定装置21,21c及び制御盤200cを備える。
ロープ長測定装置21cは、例えばコンペンシーブ133の近傍の昇降路110の底部に設置されている。ロープ長測定装置21cは、例えばカメラ等であり、コンペンシーブ133とともにコンペンロープ142を観測可能に構成される。コンペンロープ142には、例えば所定間隔ごとにマークが付けられている。ロープ長測定装置21cは、2つのマーク間のコンペンロープ142の長さを判別可能な撮像画像等の情報を取得する。
劣化判定装置としての制御盤200cは、ロープ長測定装置21からメインロープ141の長さ情報を取得するとともに、ロープ長測定装置21cからコンペンロープ142の長さ情報を取得する。制御盤200cは、コンペンロープ142の長さ情報に基づき、コンペンロープ142の劣化判定を行う。制御盤200cのそれ以外の構成および機能は、上述の実施形態1の制御盤200と同様である。
(変形例3)
図8は、実施形態1の変形例3にかかる劣化判定システムの構成の一例をエレベータの概略構成とともに示す図である。図8に示すように、変形例3のエレベータは、メインロープ141に加え、ガバナロープ143を備えている。なお、図8においてはガイドレール121が省略されている。
ガバナロープ143は、機械室160に設置されるガバナ134のシーブと、昇降路110内に配置されるテンションシーブ135との間に架け渡されている。テンションシーブ135にはウェイト152が吊り下げられている。
ガバナロープ143は、また、連結部材122により乗りかご120と連結されている。乗りかご120が昇降路110を昇降すると、これと連動して連結部材122が昇降し、ガバナロープ143を乗りかご120の昇降方向に駆動する。つまり、ガバナロープ143は、乗りかご120の走行によって上下方向に牽引される。
ガバナ134が備えるシーブは、牽引されるガバナロープ143との摩擦力によって回転する。これにより、ガバナ134のシーブは、乗りかご120の昇降方向の移動に応じて回転駆動される。
すなわち、ガバナロープ143もまた、ガバナ134のシーブにより繰り返し折り曲げられることによって劣化しうる。ガバナロープ143は、テンションシーブ135により繰り返し折り曲げられることによっても劣化しうる。
ガバナ134は、また、ガバナスイッチを有する。ガバナスイッチは、乗りかご120の昇降速度が所定の速度を超えると作動する。乗りかご120の昇降速度は、例えばガバナ134のシーブの回転数に基づき判定される。ガバナスイッチが作動すると、巻上機130に対する電源の供給を遮断することなどにより、乗りかご120が停止される。また、ガバナ134は、ガバナロープ143を挾持することによって乗りかご120を制動することが可能に構成されていてもよい。
このように、ガバナ134は、乗りかご120の速度が規定値以上になったことを検出し、減速制御を実行し、もしくは非常止め装置を動作させる調速器として機能する。
変形例3の劣化判定システムは、ロープ長測定装置21,21d及び制御盤200dを備える。
ロープ長測定装置21dは、例えば機械室160内のガバナ134の近傍に設置されている。ロープ長測定装置21dは、例えばカメラ等であり、ガバナ134のシーブとともにガバナロープ143を観測可能に構成される。ガバナロープ143には、例えば所定間隔ごとにマークが付けられている。ロープ長測定装置21dは、2つのマーク間のガバナロープ143の長さを判別可能な撮像画像等の情報を取得する。
劣化判定装置としての制御盤200dは、ロープ長測定装置21からメインロープ141の長さ情報を取得するとともに、ロープ長測定装置21dからガバナロープ143の長さ情報を取得する。制御盤200dは、ガバナロープ143の長さ情報に基づき、ガバナロープ143の劣化判定を行う。制御盤200dのそれ以外の構成および機能は、上述の実施形態1の制御盤200と同様である。
なお、変形例3の劣化判定システムにおいては、ガバナロープ143は、ガバナ134のシーブによる折れ曲がりと、テンションシーブ135による折れ曲がりとにより劣化しうるため、テンションシーブ135による折れ曲がりも考慮したうえで、劣化判定をしてもよい。例えば、変形例3のエレベータの運行に伴う曲げ回数に、テンションシーブ135による曲げ回数を加味してもよい。
[実施形態2]
以下、図面を参照して、実施形態2について詳細に説明する。実施形態2の劣化判定システムでは、メインロープ141の曲げ回数の増加率と、メインロープ141の伸び値の増加率とからメインロープ141の劣化判定をする点が、上述の実施形態1とは異なる。
(劣化判定システムの構成例)
図9は、実施形態2にかかる劣化判定システムが備える制御盤300の構成の一例を示すブロック図である。
劣化判定装置としての制御盤300は、通常の形式の双方向コモン・バスにより相互に連結されたCPU、所定の制御プログラム等を予め記憶しているROM、及びCPUの演算結果を一時記憶するRAMを少なくとも有するマイクロコンピュータを備える。
図9に示すように、制御盤300は、例えばROMの記憶する制御プログラム等が実行されることにより、機能概念的に、運行情報取得部310、曲げ回数カウント部320、運転速度設定部340、ロープ伸び値算出部350、判定部360、出力部370、曲げ回数増加率算出部391、伸び値増加率算出部392、及び記憶部380を備える。
運行情報取得部310、曲げ回数カウント部320、運転速度設定部340、ロープ伸び値算出部350、及び出力部370は、上述の実施形態1の運行情報取得部210、曲げ回数カウント部220、運転速度設定部240、ロープ伸び値算出部250、及び出力部270と同様の機能を備える。
曲げ回数増加率算出部391は、曲げ回数カウント部320がカウントしたメインロープ141の曲げ回数から、所定期間内におけるメインロープ141の曲げ回数の増加率を算出する。所定期間内におけるメインロープ141の曲げ回数の増加率Ibは、例えば以下の式で求められる。
曲げ回数の増加率Ib
=(今回判定時の曲げ回数―前回判定時の曲げ回数)/前回判定時の曲げ回数
このとき、曲げ回数増加率算出部391は、記憶部380の設定情報格納部383を参照し、メインロープ141の曲げ回数の増加率の算出に使用する適正な係数を取得して、上記の式にその適正な係数を掛け合わせるなどしてもよい。その場合の曲げ回数の増加率Ibの式は以下のようになる。
曲げ回数の増加率Ib
=a1*(今回判定時の曲げ回数―前回判定時の曲げ回数)/前回判定時の曲げ回数−b1
上記の式において、係数a1は正の数値であり、切片b1はゼロを含む正負のいずれかの数値である。
曲げ回数増加率算出部391は、算出したメインロープ141の曲げ回数の増加率を、記憶部380の曲げ回数情報格納部381に格納する。
伸び値増加率算出部392は、ロープ伸び値算出部350が算出したメインロープ141の伸び値から、メインロープ141の所定区間ごとに、所定期間内におけるメインロープ141の伸び値の増加率を算出する。所定期間内におけるメインロープ141の伸び値の増加率Ieは、例えば以下の式で求められる。
伸び値の増加率Ie
=(今回判定時の伸び値―前回判定時の伸び値)/前回判定時の伸び値
このとき、伸び値増加率算出部392は、記憶部380の設定情報格納部383を参照し、メインロープ141の伸び値の増加率の算出に使用する適正な係数を取得して、上記の式にその適正な係数を掛け合わせるなどしてもよい。その場合の伸び値の増加率Ieの式は以下のようになる。
伸び値の増加率Ie
=a2*(今回判定時の伸び値―前回判定時の伸び値)/前回判定時の伸び値−b2
上記の式において、係数a2は正の数値であり、切片b2はゼロを含む正負のいずれかの数値である。
伸び値増加率算出部392は、算出したメインロープ141の伸び値の増加率を、記憶部380のロープ伸び情報格納部382に格納する。
判定部360は、メインロープ141の所定区間ごとに、メインロープ141の曲げ回数の増加率とメインロープ141の伸び値の増加率とを比較して、メインロープ141の劣化判定を行う。判定部360は、いずれかの区間において、メインロープ141の伸び値の増加率が、メインロープ141の曲げ回数の増加率を超えていた場合には、そのメインロープ141は劣化していると判定する。
記憶部380は、制御盤300が実施形態2のエレベータを制御するのに必要な各種プログラム及びパラメータを記憶する。また、記憶部380は、曲げ回数情報格納部381、ロープ伸び情報格納部382、設定情報格納部383、及びロープ長情報格納部384を有する。
曲げ回数情報格納部381には、曲げ回数カウント部320がカウントしたメインロープ141の曲げ回数の情報が格納されている。また、曲げ回数情報格納部381には、曲げ回数増加率算出部391が算出したメインロープ141の曲げ回数の増加率の情報が格納されている。
ロープ伸び情報格納部382には、ロープ伸び値算出部350が算出した所定区間ごとのメインロープ141の伸び値の情報が格納されている。また、ロープ伸び情報格納部382には、伸び値増加率算出部392が算出したメインロープ141の伸び値の増加率の情報が格納されている。
設定情報格納部383には、メインロープ141の長さ測定時の乗りかご120の運転速度情報が格納されている。運転速度情報は、メインロープ141の曲げ回数に応じて異なる運転速度を含む。設定情報格納部383には、メインロープ141の曲げ回数の増加率の算出に用いる適正な係数等が格納されていてもよい。設定情報格納部383には、メインロープ141の伸び値の増加率の算出に用いる適正な係数等が格納されていてもよい。
ロープ長情報格納部384には、メインロープ141の所定区間ごとの初期長さの情報が格納されている。ロープ長情報格納部384には、メインロープ141の全長から算出した所定区間における平均長さが格納されていてもよい。
図10は、実施形態2にかかる劣化判定システムにおいて、メインロープ141の曲げ回数の増加率とメインロープ141の伸び値の増加率とを比較するグラフである。グラフの横軸は、メインロープ141の曲げ回数の増加率である。グラフの縦軸は、メインロープ141の伸び値の増加率である。
メインロープ141の曲げ回数の増加率とメインロープ141の伸び値の増加率とをこのようなグラフにプロットすると、メインロープ141の劣化が無い場合には、プロットは例えばX=Yの線上に乗る。あるいは、メインロープ141の曲げ回数の増加率とメインロープ141の伸び値の増加率とのうち、少なくともいずれかに適正な係数がかけ合されるなどして、メインロープ141の曲げ回数の増加率とメインロープ141の伸び値の増加率とのプロットが、X=Yの線上に乗るよう調整されている。
しかしながら、メインロープ141が劣化すると、メインロープ141の曲げ回数の増加率とメインロープ141の伸び値の増加率とのプロットは、X=Yの線上から外れる。すなわち、メインロープ141の曲げ回数の増加率に比べ、メインロープ141の伸び値の増加率が、X=Yの線上を外れて増大する。
図10の例では、1回目にメインロープ141の劣化判定をしたときには、メインロープ141の曲げ回数の増加率とメインロープ141の伸び値の増加率とのプロットは、X=Yの線上に乗っており、上述の判定部360は、メインロープ141は劣化していないと判定する。2回目〜4回目の劣化判定においても同様である。
しかしながら、5回目の劣化判定においては、メインロープ141の曲げ回数の増加率とメインロープ141の伸び値の増加率とのプロットが、X=Yの線上から外れており、判定部360は、メインロープ141が劣化したと判定する。
(劣化判定システムの劣化判定処理例)
次に、図11を用いて、実施形態2の劣化判定システムによる劣化判定処理の例について説明する。図11は、実施形態2にかかる劣化判定システムによる劣化判定処理の手順の一例を示すフロー図である。
実施形態2の劣化判定システムによる劣化判定処理は、例えば保守作業員の指示にしたがって実行される。劣化判定処理の実行に際して、記憶部380の曲げ回数情報格納部381には、曲げ回数カウント部320が前回の劣化判定時と今回カウントした、メインロープ141の曲げ回数の情報が格納されているものとする。また、記憶部380のロープ伸び情報格納部382には、ロープ伸び値算出部350が前回の劣化判定時と今回の判定に向けて算出した、メインロープ141の伸び値の情報が格納されているものとする。
なお、運転速度設定部340によるメインロープ141の曲げ回数に応じた運転速度の設定、及び設定された運転速度でのロープ長測定装置によるメインロープ141の長さ情報の取得等のメインロープ141の伸び値を算出する方法については、実施形態1と同様の手法が用いられる。
図11に示すように、曲げ回数増加率算出部391は、前回判定時から今回までの間におけるメインロープ141の曲げ回数の増加率を算出する(ステップS201)。
すなわち、曲げ回数増加率算出部391は、記憶部380の曲げ回数情報格納部381を参照して、曲げ回数カウント部320がカウントした前回判定時のメインロープ141の曲げ回数と、現在のメインロープ141の曲げ回数とを取得する。そして、曲げ回数増加率算出部391は、取得したこれらの曲げ回数からメインロープ141の曲げ回数の増加率を算出する。
曲げ回数増加率算出部391は、算出したメインロープ141の曲げ回数の増加率を、記憶部380の曲げ回数情報格納部381に格納する。
伸び値増加率算出部392は、前回判定時から今回までの間におけるメインロープ141の伸び値の増加率を算出する(ステップS202)。
すなわち、伸び値増加率算出部392は、記憶部380のロープ伸び情報格納部382を参照して、ロープ伸び値算出部350が算出した前回判定時のメインロープ141の伸び値と、現在のメインロープ141の伸び値とを取得する。そして、伸び値増加率算出部392は、取得したこれらの伸び値からメインロープ141の伸び値の増加率を算出する。
伸び値増加率算出部392は、算出したメインロープ141の伸び値の増加率を、記憶部380のロープ伸び情報格納部382に格納する。
判定部360は、前回判定時から今回までの間におけるメインロープ141の曲げ回数の増加率と、前回判定時から今回までの間におけるメインロープ141の伸び値の増加率とを比較して、メインロープ141が劣化しているか否かを判定する(ステップS203)。
判定部360は、メインロープ141の曲げ回数の増加率に比してメインロープ141の伸び値の増加率が大きかった場合には(ステップS203:Yes)、メインロープ141は劣化していると判定する(ステップS204)。
判定部360は、メインロープ141の伸び値の増加率がメインロープ141の曲げ回数の増加率以下であった場合には(ステップS203:No)、メインロープ141は劣化していないと判定する(ステップS205)。
判定部360によりメインロープ141が劣化しているという判定がなされると、出力部370は、メインロープ141が劣化したことを示す劣化情報を出力する(ステップS206)。
以上により、実施形態2の劣化判定システムによる劣化判定処理が終了する。
実施形態2の劣化判定方法によれば、所定期間内におけるメインロープ141の曲げ回数の増加率と伸び値の増加率とを比較して、メインロープ141の劣化判定を行う。これにより、メインロープ141の伸び値に基づく劣化判定の精度を向上させることができる。
[実施形態3]
以下、図面を参照して、実施形態3について詳細に説明する。実施形態3の劣化判定システムでは、建物の各階床に対応するロープ位置ごとに劣化判定を行う点が、上述の実施形態1とは異なる。
(劣化判定システムの構成例)
図12は、実施形態3にかかる劣化判定システムが備える制御盤400の構成の一例を示すブロック図である。
実施形態3の劣化判定システムにおいては、所定の階床ごとに、乗りかご120がその階床位置を昇降するときに巻上機130により曲げの生じるメインロープ141の位置が対応付けられている。つまり、乗りかご120が所定の階床を昇降しているとき、メインロープ141において巻上機130のシーブ131を通過中のロープ位置が、その階床に対応するロープ位置である。なお、メインロープ141に付されるマークは、階床ごとに対応するそれぞれのロープ位置に対応しているものとする。
劣化判定装置としての制御盤400は、通常の形式の双方向コモン・バスにより相互に連結されたCPU、所定の制御プログラム等を予め記憶しているROM、及びCPUの演算結果を一時記憶するRAMを少なくとも有するマイクロコンピュータを備える。
図12に示すように、制御盤400は、例えばROMの記憶する制御プログラム等が実行されることにより、機能概念的に、運行情報取得部410、曲げ回数カウント部420、閾値設定部430、運転速度設定部440、ロープ伸び値算出部450、判定部460、出力部470、及び記憶部480を備える。
運行情報取得部410は、上述の実施形態1の運行情報取得部210と同様の機能を備える。
曲げ回数カウント部420は、メインロープ141における、階床ごとに対応するそれぞれのロープ位置の曲げ回数をカウントする。つまり、例えば乗りかご120が2階から3階へと移動した場合、メインロープ141の2階に対応するロープ位置と、3階に対応するロープ位置との曲げ回数がそれぞれ1回となる。また例えば、乗りかご120が3階から1階へと移動した場合、メインロープ141の各階に対応するそれぞれのロープ位置の曲げ回数は1回ずつとなる。曲げ回数カウント部420は、カウントしたメインロープ141のそれぞれの位置における曲げ回数を、記憶部480の曲げ回数情報格納部481に格納する。
閾値設定部430は、記憶部480の曲げ回数情報格納部481を参照して、メインロープ141の階床ごとに対応するそれぞれのロープ位置における曲げ回数に応じて、異なる閾値を設定する。
一例として、曲げ回数が20万回未満での閾値が1階床分のロープ長あたり5mmであり、曲げ回数が20万回以上40万回未満での閾値が1階床分のロープ長あたり4mmであり、曲げ回数が40万回超での閾値が1階床分のロープ長あたり3mmであるとする。この場合、閾値設定部430は、所定のロープ位置における曲げ回数が20万回未満であれば、そのロープ位置における閾値として5mmを設定する。また、閾値設定部430は、他のロープ位置における曲げ回数が40万回超であれば、そのロープ位置における閾値として3mmを設定する。このように、閾値設定部430は、異なるロープ位置に対して、それぞれ異なる閾値を設定しうる。
運転速度設定部440は、記憶部480の曲げ回数情報格納部481を参照して、メインロープ141の階床ごとに対応するそれぞれのロープ位置における曲げ回数に応じて、ロープ長測定における乗りかご120の運転速度として、異なる運転速度を設定する。
一例として、曲げ回数が20万回未満での長さ測定時の乗りかご120の運転速度が45m/分であり、曲げ回数が20万回以上40万回未満での長さ測定時の乗りかご120の運転速度が30m/分であり、曲げ回数が40万回超での長さ測定時の乗りかご120の運転速度が15m/分であるとする。この場合、運転速度設定部440は、所定のロープ位置における曲げ回数が20万回未満であれば、そのロープ位置におけるロープ長測定時には、乗りかご120の運転速度を45m/分に設定する。また、運転速度設定部440は、他のロープ位置における曲げ回数が40万回超であれば、そのロープ位置におけるロープ長の測定時には、乗りかご120の運転速度を15m/分に設定する。このように、運転速度設定部440は、異なるロープ位置に対して、それぞれ異なる運転速度を設定しうる。
ロープ伸び値算出部450は、メインロープ141における、階床ごとに対応するそれぞれのロープ位置について伸び値を算出する。つまり、制御盤400は、階床ごとに対応するそれぞれのロープ位置に対して設定された運転速度で乗りかご120を上昇または下降させつつ、ロープ長測定装置により、階床ごとに対応するそれぞれのロープ位置において長さが判別可能な情報を取得させる。ロープ伸び値算出部450は、階床ごとに対応するそれぞれのロープ位置の長さを算出し、これと対応するロープ位置の初期長さを記憶部480のロープ長情報格納部484から取得し、これらの数値を用いて、階床ごとに対応するそれぞれのロープ位置の伸び値を算出する。
判定部460は、階床ごとに対応するそれぞれのロープ位置の伸び値を、そのロープ位置に対して設定された閾値と比較する。判定部460は、いずれかのロープ位置において、伸び値が閾値を超えていた場合には、そのメインロープ141は劣化していると判定する。
出力部470は、上述の実施形態1の出力部270と同様の機能を備える。
記憶部480は、制御盤400が実施形態2のエレベータを制御するのに必要な各種プログラム及びパラメータを記憶する。また、記憶部480は、曲げ回数情報格納部481、ロープ伸び情報格納部482、設定情報格納部483、及びロープ長情報格納部484を有する。
曲げ回数情報格納部481には、メインロープ141において、階床ごとに対応するそれぞれのロープ位置における曲げ回数の情報が格納されている。
ロープ伸び情報格納部482には、メインロープ141において、階床ごとに対応するそれぞれのロープ位置における伸び値の情報が格納されている。
設定情報格納部483は、実施形態1の設定情報格納部283と同様の構成を備える。
ロープ長情報格納部484には、階床ごとに対応するそれぞれのロープ位置における初期長さの情報が格納されている。ロープ長情報格納部484には、メインロープ141の全長から算出した各ロープ位置における初期長さが格納されていてもよい。
(劣化判定システムの劣化判定処理例)
次に、図13を用いて、実施形態3の劣化判定システムによる劣化判定処理の例について説明する。図13は、実施形態3にかかる劣化判定システムによる劣化判定処理の手順の一例を示すフロー図である。
実施形態3の劣化判定システムによる劣化判定処理は、例えば保守作業員の指示にしたがって実行される。劣化判定処理の実行に際して、記憶部480の曲げ回数情報格納部481には、曲げ回数カウント部420がカウントしたメインロープ141の各ロープ位置における曲げ回数の情報が格納されているものとする。
図13に示すように、閾値設定部430は、所定の階床に対応するメインロープ141のロープ位置を選択し、曲げ回数情報格納部481を参照して、そのロープ位置の曲げ回数が20万回以上か(ステップS301)、そのロープ位置の曲げ回数が40万回以上か(ステップS302)等の判定を行う。
閾値設定部430は、メインロープ141の選択したロープ位置における曲げ回数が20万回未満である場合には(ステップS301:No)、記憶部480の設定情報格納部483を参照して、選択したロープ位置の伸び値に対する閾値を例えば5mmに設定する(ステップS303)。
閾値設定部430は、メインロープ141の選択したロープ位置における曲げ回数が20万回以上40万回未満である場合には(ステップS301:Yes、ステップS302:No)、設定情報格納部483を参照して、選択したロープ位置の伸び値に対する閾値を例えば4mmに設定する(ステップS304)。
閾値設定部430は、メインロープ141の選択したロープ位置における曲げ回数が40万回超である場合には(ステップS301:Yes、ステップS302:Yes)、設定情報格納部483を参照して、選択したロープ位置の伸び値に対する閾値を例えば3mmに設定する(ステップS305)。
ロープ伸び値算出部450は、メインロープ141の選択したロープ位置における伸び値を算出する(S306)。ロープ伸び値算出部450は、算出した伸び値を記憶部480のロープ伸び情報格納部482に格納する。
なお、運転速度設定部440によるメインロープ141の曲げ回数に応じた運転速度の設定、及び設定された運転速度でのロープ長測定装置によるメインロープ141の長さ情報の取得等については、階床ごとに対応するそれぞれのロープ位置について実施される。
判定部460は、メインロープ141の選択したロープ位置における伸び値と、そのロープ位置に対して設定された閾値とを比較する(ステップS307)。
判定部460は、選択したロープ位置における伸び値が設定された閾値を超えていた場合には(ステップS307:Yes)、メインロープ141が劣化しているものと判定する(ステップS308)。
判定部460によりメインロープ141の所定位置が劣化しているという判定がなされると、出力部470は、メインロープ141が劣化したことを示す劣化情報を出力して(ステップS309)処理を終了する。
判定部460は、選択したロープ位置における伸び値が設定された閾値以下であった場合には(ステップS307:No)、メインロープ141の選択したロープ位置は劣化していないものと判定する(ステップS310)。
閾値設定部430は、全階床に対応するロープ位置について処理が終了したか否かを判定する(ステップS311)。全階床に対応するロープ位置について処理が終了していた場合には(ステップS311:Yes)、閾値設定部430は劣化判定処理を終了させる。全階床に対応するロープ位置について処理が終了していない場合には(ステップS311:No)、閾値設定部430は、次の階床に対応するロープ位置を選択して(ステップS312)ステップS301からの処理を繰り返す。
以上により、実施形態3の劣化判定システムによる劣化判定処理が終了する。
実施形態3の劣化判定方法によれば、メインロープ141について、階床ごとに対応するロープ位置に対して劣化判定を行う。これにより、メインロープ141の伸び値に基づく劣化判定の精度をいっそう向上させることができる。
なお、上述の実施形態3の例に依らず、乗りかごが上昇した時の曲げ回数と、乗りかごが下降した時の曲げ回数とを分けてカウントしてもよい。そして、乗りかごの上昇時の曲げ回数と下降時の曲げ回数とに異なる重みづけをしたうえで、階床ごとに対応するそれぞれのロープ位置について合計の曲げ回数を求めてもよい。
(変形例)
エレベータにおいては、メインロープが複数のシーブに架け渡される場合がある。上述の実施形態3の構成は、このようなメインロープの劣化判定に好適である。以下に、複数のシーブに架け渡されたメインロープへの劣化判定の適用例について説明する。
図14は、実施形態3の変形例にかかる劣化判定システムの構成の一例をエレベータの概略構成とともに示す図である。図14に示すように、変形例のエレベータでは、メインロープ141eが、巻上機130eのシーブ131eの他、複数のシーブ136〜138に架け渡されている。なお、図14においてはガイドレール121が省略されている。
メインロープ141eの両端は、昇降路110の天井部分に固定されている。メインロープ141eは、一端側から、乗りかご120の底面に配置されるシーブ137,138を介して、昇降路110の天井部分に固定されている巻上機130eのシーブ131eに架け渡され、カウンタウェイト151eを吊り下げた状態で昇降路110下方に配置されるシーブ136を介して他端側に至る。
これにより、乗りかご120は、下面のシーブ137,138を介してメインロープ141eに支持される。また、巻上機130eのシーブ131eが、巻上機130eが有する駆動装置により回転駆動されることで、メインロープ141eが巻き上げられて、昇降路110内で乗りかご120を昇降させる。
上記構成において、メインロープ141eは、複数のシーブ131e,136〜138により繰り返し折り曲げられることによって劣化しうる。
変形例の劣化判定システムは、ロープ長測定装置21e及び制御盤400eを備える。
変形例の劣化判定システムにおいては、所定の階床ごとに、乗りかご120がその階床位置を昇降するときに、各シーブ130e,136〜138により曲げの生じるメインロープ141の位置がそれぞれ対応付けられている。つまり、乗りかご120が所定の階床を昇降しているとき、メインロープ141eにおいて、シーブ130eを通過中のロープ位置、シーブ136を通過中のロープ位置、シーブ137を通過中のロープ位置、及びシーブ138を通過中のロープ位置のそれぞれが、その階床に対応するロープ位置である。このように、所定の階床に対応するロープ位置は例えばシーブ130e,136〜138の数だけ存在する。なお、メインロープ141eに付されるマークは、階床ごとに対応するそれぞれのロープ位置に対応しているものとする。
ロープ長測定装置21eは、例えば巻上機130eの近傍の昇降路110の天井部分に固定されている。ロープ長測定装置21eは、例えばカメラ等であり、巻上機130eのシーブ131eとともにメインロープ141eを観測可能に構成される。ロープ長測定装置21eは、階床ごとに対応するそれぞれのロープ位置におけるメインロープ141eの長さを判別可能な撮像画像等の情報を取得する。
また、上記のロープ長測定装置21eとは異なるロープ長測定装置が、シーブ136〜138の近傍に、シーブ136〜138とともにシーブ136〜138を通過するメインロープ141eが観測可能に設けられていてもよい。これらのロープ長測定装置により、ロープ長測定装置21eによるシーブ130e位置におけるメインロープ141eの長さ情報と併せて、シーブ136〜138位置におけるメインロープ141eの長さ情報が取得されてもよい。
劣化判定装置としての制御盤400eは、所定の階床ごとに対応する複数のロープ位置において、各シーブ130e,136〜138による曲げ回数をそれぞれカウントする。そして、各ロープ位置での伸び値を算出し、それらを各ロープ位置での曲げ回数に応じた閾値と比較して、各ロープ位置における劣化判定を行う。制御盤400eのそれ以外の構成および機能は、上述の実施形態3の制御盤400と同様である。
以上のように、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。