本発明の無機粒子分散体は、無機粒子及び分散媒を含み、前記分散媒の温度25℃における粘度が6mPa・s以上であり、且つ下記式で表される粘度変化率が2.0以上であることを特徴とする。
粘度変化率=(液温25℃でのせん断速度1s-1におけるせん断粘度)/(液温25℃でのせん断速度100s-1におけるせん断粘度)
無機粒子分散体の全光線透過率は、好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは65%以上であり、高いほど好ましいが、例えば99%以下、さらには80%以下であることも許容される。
全光線透過率は、濁度計(例えば、日本電色工業(株)製、「NDH−5000」等)を用い、JIS K7361−1(1997)に準拠して測定することができる。
無機粒子の濃度は、分散体100質量%中、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上であり、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下であってもよい。
無機粒子分散体において、前記粘度変化率(液温25℃でのせん断速度1s-1におけるせん断粘度)/(液温25℃でのせん断速度100s-1におけるせん断粘度)は、2.0以上、好ましくは3.0以上、より好ましくは4.0以上であり、好ましくは50.0以下、より好ましくは30.0以下、さらに好ましくは15.0以下である。
液温25℃でのせん断速度1s-1又は100s-1における無機粒子分散体のせん断粘度は、コーンプレート方式の粘度計を用いて測定することができ、具体的には、以下の方法により測定できる。
[せん断粘度の測定方法]
無機粒子分散体を25℃の空気雰囲気下で24時間静置する。次いで、コーンプレート方式の粘度計において、測定部を25℃に調整し、該測定部に、25℃の空気雰囲気下で24時間静置しておいた無機粒子分散体を収容する。コーンプレートの円すい部分と測定部との隙間を無機粒子分散体で満たした状態でコーンプレートを回転させ、そのせん断速度を1s-1又は100s-1に維持する。コーンプレートとしては、無機粒子分散体の粘度に応じて、以下のコーンプレートA、B、Cのいずれかを用いる。
コーンプレートA 直径25mm,コーン角 0.1rad
コーンプレートB 直径25mm,コーン角 0.02rad
コーンプレートC 直径50mm,コーン角 0.02rad
コーンプレートのせん断速度を1s-1又は100s-1に維持し始めてから5分経過した時点における粘度を、液温25℃でのせん断速度1s-1又は100s-1における無機粒子分散体のせん断粘度とする。
無機粒子分散体の粘度は、液温25℃、せん断速度1s-1の条件で測定した場合、好ましくは2,500mPa・s以上、より好ましくは5,000mPa・s以上、さらに好ましくは10,000mPa・s以上であり、好ましくは1,000,000mPa・s以下、より好ましくは500,000mPa・s以下である。
無機粒子分散体の密度は、液温25℃の条件で測定した場合、好ましくは1.2g/cm3以上、より好ましくは1.5g/cm3以上、さらに好ましくは2g/cm3以上であり、好ましくは7g/cm3以下、より好ましくは6g/cm3以下、さらに好ましくは5.5g/cm3以下である。
前記無機粒子分散体は、25℃において流動性を有していれば、実用上十分な流動性を有するといえる。25℃における流動性は、以下の方法で評価することができる。
[流動性の評価方法]
無機粒子分散体45mLを外径30mmの試験管に注ぎ、垂直にした状態で25℃雰囲気下で24時間放置する。必要に応じて、試料を試験管に流し込むのに必要な最低限の流動性を得るまで加熱する。続いて、試料が温度25℃に調整されていることを確認後、水平にして5秒間保ち状態を観察する。試料が動く場合を流動性あり、全く動かない場合を流動性なしとして評価する。
無機粒子分散体に含まれる無機粒子は、金属粒子又は金属酸化物粒子であることが好ましく、金属酸化物粒子であることが好ましい。無機粒子を構成する金属としては、例えばTi、Al、Zr、In、Zn、Sn、La、Y、Ce、Mg、Ba、Ca等が挙げられ、無機粒子(特に金属酸化物粒子)の屈折率を高める観点からTi、Al、Zr、Zn、Sn及びCeよりなる群から選択される少なくとも1種(特にZr)が好ましい。無機粒子が金属酸化物粒子である場合、該金属酸化物は、単一金属の酸化物であってもよいし、2種以上の酸化物の固溶体であってもよいし、複合酸化物であってもよい。単一金属酸化物には、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化インジウム(In2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、酸化ランタン(La2O3)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化セリウム(CeO2)、酸化マグネシウム(MgO)が含まれる。2種以上の酸化物の固溶体としては、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズアンチモン(ATO)等が挙げられる。複合酸化物としては、例えばチタン酸バリウム(BaTiO3)、灰チタン石(CaTiO3)、スピネル(MgAl2O4)等が挙げられる。
無機粒子の結晶子径は、好ましくは20nm以下、より好ましくは15nm以下、さらに好ましくは10nm以下であり、通常1nm以上である。結晶子径が小さいほど、無機粒子分散体の透過率を向上できる。
無機粒子の結晶構造は、立方晶、正方晶、単斜晶等であることが好ましく、複数の結晶構造が存在していてもよい。屈折率を向上する観点から、結晶構造全体の50%以上が正方晶であることが好ましい。また、単斜晶に対する正方晶の割合(正方晶/単斜晶)は、好ましくは0.8以上、より好ましくは1.0以上、さらに好ましくは1.1以上である。また正方晶単独とすることも可能である。
無機粒子の結晶子径及び結晶構造は、X線回折法により特定することができる。
無機粒子は、粒状、楕円球状、立方体状、直方体状、ピラミッド状、針状、柱状、棒状、筒状、りん片状、板状、薄片状等であってもよく、分散媒への分散性等の観点から、球状、粒状、柱状であることが好ましい。
無機粒子の体積平均粒子径(dv)は、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは20nm以下であり、好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上である。無機粒子の体積平均粒子径が前記範囲にあると、無機粒子分散体の透明性を高めやすくなる。
前記無機粒子の体積平均粒子径(dv)は動的光散乱法により測定することができる。
また、無機粒子の個数平均一次粒子径(dn)は、個数基準で、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは20nm以下であり、好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上である。無機粒子の個数平均一次粒子径が前記範囲にあると、無機粒子分散体の透明性を高めやすくなる。
無機粒子の個数平均一次粒子径(dn)は、無機粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)、電界放射型透過電子顕微鏡(FE−TEM)、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)等で拡大観察し、無作為に100個の粒子を選択してその長軸方向の長さを測定し、その算術平均を求めることで決定できる。
無機粒子の体積平均粒子径(dv)と、個数平均一次粒子径(dn)との比(dv/dn)は、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下であり、好ましくは1以上である。
無機粒子は、表面修飾剤により表面修飾された無機粒子(以下、「被覆型無機粒子」という場合がある。)及び表面無修飾の無機粒子のいずれも用いることができ、市販品を用いてもよい。なお無機粒子が被覆型無機粒子である場合、被覆型無機粒子の質量には、表面修飾剤の質量も含めるものとする。
無機粒子分散体は、無機粒子の表面修飾剤として有機酸、シランカップリング剤、界面活性剤及びチタンカップリング剤の少なくとも1種を含むことが好ましく、少なくとも有機酸を含むことが好ましい。有機酸を含むことで、分散性を高めることができる。通常、高密度の無機粒子は、分散媒との密度や親疎水性の点で大きく異なっているため、高濃度で分散させることが困難であるものの、表面修飾することで、高濃度分散することが容易となり、チクソトロピー性を向上しやすくなる。
有機酸としては、カルボキシ基を有する化合物(以下、「カルボン酸化合物」という場合がある。)が好ましく、該カルボン酸化合物は、カチオン(例えばアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン等の金属カチオン;アンモニウムイオン等の分子性カチオン)と塩を形成していてもよい。また有機酸は、無機粒子の表面を被覆していることが好ましい。有機酸は、無機粒子に化学結合するか、カルボン酸の状態又は塩を形成した状態で無機粒子に付着しているため、本発明において「被覆」とは、有機酸等が無機粒子に化学的に結合した状態及び有機酸等が金属酸化物に物理的に付着した状態の両方を包含する。さらに、表面修飾剤として有機酸を用いる場合、有機酸は、組成物の成分としての機能と表面修飾剤としての機能を発揮しうる。
前記カルボン酸化合物としては、(メタ)アクリル酸類;エステル基、エーテル基、アミド基、チオエステル基、チオエーテル基、カーボネート基、ウレタン基及びウレア基からなる群より選ばれる1以上の置換基(以下、「特定置換基」という場合がある。)を有するカルボン酸;直鎖状カルボン酸(直鎖状脂肪族カルボン酸、好ましくは直鎖状飽和脂肪族カルボン酸等)、分枝鎖状カルボン酸(分岐鎖状脂肪族カルボン酸、好ましくは分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸等)、環状カルボン酸(脂環式カルボン酸、好ましくは不飽和二重結合を有さない脂環式カルボン酸等)及び芳香族カルボン酸等から選ばれる1つ以上(好ましくは1つ)であるカルボキシ基を有する炭素数4〜20の化合物;が好ましく採用される。
前記カルボン酸化合物としては、(メタ)アクリル酸類(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、3−アクリロキシプロピオン酸等の(メタ)アクリロキシC1-6アルキルカルボン酸等);C3-9脂肪族ジカルボン酸の(メタ)アクリロキシC1-6アルキルアルコールによるハーフエステル類(例えば、2−アクリロキシエチルコハク酸、2−メタクリロキシエチルコハク酸等)、C5-10脂環式ジカルボン酸の(メタ)アクリロキシC1-6アルキルアルコールによるハーフエステル類(例えば、2−アクリロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロキシエチルヘキサヒドロフタル酸等)、C8-14芳香族ジカルボン酸の(メタ)アクリロキシC1-6アルキルアルコールによるハーフエステル類(例えば、2−アクリロキシエチルフタル酸、2−メタクリロキシエチルフタル酸等)等のエステル基を有するカルボン酸;酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ステアリン酸等の直鎖状カルボン酸;ピバリン酸、2,2−ジメチル酪酸、3,3−ジメチル酪酸、2,2−ジメチル吉草酸、2,2−ジエチル酪酸、3,3−ジエチル酪酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、3−メチルヘキサン酸、3−エチルヘキサン酸、2−メチルヘプタン酸、4−メチルオクタン酸、ネオデカン酸等の分枝鎖状カルボン酸;ナフテン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の環状カルボン酸;等が挙げられる。
前記カルボン酸化合物としては、少なくとも(メタ)アクリル酸類;又は、特定置換基を有するカルボン酸を用いることが好ましい。以下(メタ)アクリル酸類及び特定置換基を有するカルボン酸を総称して「第1のカルボン酸化合物」という場合がある。
第1のカルボン酸化合物としては、1種又は2種以上を用いることができ、(メタ)アクリル酸であるか、又は特定置換基を1種以上有するカルボン酸であればよい。特定置換基を有するカルボン酸は、同種又は異種の特定置換基を複数有してもよく、特定置換基以外の置換基をさらに有してもよい。特定置換基としては、エステル基、エーテル基又はアミド基が好ましく、エステル基又はエーテル基がより好ましい。特定置換基の個数は1分子中に1個以上であればよく、上限は特に限定されないが、好ましくは20個以下、より好ましくは10個以下、さらに好ましくは5個以下である。
第1のカルボン酸化合物としては市販品を用いてもよいし、公知の合成方法により合成したものを用いてもよい。該合成方法としては、例えば、各種アルコール化合物と二塩基酸又は酸無水物の反応によりエステル化合物(ハーフエステル化合物等)を得る方法、エポキシ化合物又はグリジシル化合物と二塩基酸の反応によりエステル化合物(ハーフエステル化合物等)を得る方法、アミン化合物と二塩基酸又は酸無水物の反応によりアミド化合物を得る方法、チオール化合物と二塩基酸又は酸無水物の反応によりチオエステル化合物を得る方法等を挙げることができる。
第1のカルボン酸化合物のカルボキシ基のα炭素は2級炭素、3級炭素、4級炭素、又は芳香族炭素の何れであってもよい。また第1のカルボン酸化合物に含まれるカルボキシ基の個数は1個でも複数でもよいが、粒子間架橋を抑制する観点から、好ましくは3個以下、より好ましくは2個以下、さらに好ましくは1個である。
第1のカルボン酸化合物としては、好ましくはアクリル酸、2−アクリロキシエチルコハク酸、2−アクリロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロキシエチルフタル酸が挙げられ、より好ましくは2−アクリロキシエチルコハク酸が挙げられる。
前記第1のカルボン酸化合物の含有量は、無機粒子100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上、よりいっそう好ましくは5質量部以上、特に好ましくは10質量部以上、最も好ましくは15質量部以上であり、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。第1のカルボン酸化合物が多いほど、無機粒子の分散性を向上することができる。
前記無機粒子分散体は、有機酸としてカルボン酸化合物を2種以上含むことが好ましい。2種以上のカルボン酸化合物で被覆された被覆型金属酸化物粒子は、各種媒体への分散性が極めて良好なものとなり、様々な用途への応用が可能となる。特にレジストに代表される精密微細構造を形成する用途には際立って有用であり、分散ムラや現像残渣の改善が可能となる等の効果が期待できる。
カルボン酸化合物を2種以上含む場合、少なくとも(メタ)アクリル酸類及び特定置換基を有するカルボン酸(第1のカルボン酸化合物)を含むことが好ましく、第1のカルボン酸化合物と、直鎖状カルボン酸、分枝鎖状カルボン酸、環状カルボン酸及び芳香族カルボン酸等から選ばれる1つ以上(好ましくは1つ)であるカルボキシ基を有する炭素数4〜20の化合物(これらを総称して「第2のカルボン酸化合物」という場合がある。)とを含むことがより好ましい。この場合、第1のカルボン酸化合物及び第2のカルボン酸化合物が無機粒子を被覆していることが好ましい。
第2のカルボン酸化合物としては、1種又は2種以上を用いることができ、分枝鎖状カルボン酸が好ましく、2−メチルヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、3−メチルヘキサン酸、3−エチルヘキサン酸がより好ましい。分枝鎖状カルボン酸を用いることで、金属酸化物粒子の凝集を効率的に抑制することが可能となる。
前記第2のカルボン酸化合物の含有量は、無機粒子100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上であり、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下、よりいっそう好ましくは10質量部以下、特に好ましくは5質量部以下であってもよい。第2のカルボン酸化合物の含有量が多いほど、無機粒子の分散性を高めることができる。
有機酸として第1のカルボン酸化合物と第2のカルボン酸化合物の両方を含む場合、第1及び第2のカルボン酸化合物の含有量の質量比(第1のカルボン酸化合物/第2のカルボン酸化合物)は、好ましくは1/99〜99/1、より好ましくは50/50〜99/1、さらに好ましくは60/40〜97/3、特に好ましくは65/35〜90/10であってもよい。第1及び第2のカルボン酸化合物の含有量が前記範囲にあることで、親水性・疎水性等様々な特性を有する分散媒との親和性を向上しやすくなる。
第1のカルボン酸化合物のpKa(pKa1)と第2のカルボン酸化合物のpKa(pKa2)との差(pKa1−pKa2)は、好ましくは−0.1以下、より好ましくは−0.2以下、更に好ましくは−0.3以下である。pKa1とpKa2の差が小さいほど、第1のカルボン酸化合物を第2のカルボン酸化合物で置換することが容易であるため、第1及び第2のカルボン酸化合物で被覆された無機粒子が得られやすくなる。
第1のカルボン酸化合物のpKa1は、4.8以下が好ましく、4.7以下がより好ましく、更に好ましくは4.6以下であり、2以上であってもよく、さらには3以上であってもよい。また第2のカルボン酸化合物のpKa2は、例えば、4.0〜6.0程度、好ましくは4.2〜5.5程度、さらに好ましくは4.5〜5.0程度である。カルボン酸化合物のpKaは計算化学ソフトACD/pKa version10.01(Advanced Chemistry Development, Inc社製)により算出される値を採用できる。
また、カルボン酸化合物(例えば第1及び第2のカルボン酸化合物)は、重合性二重結合(特に重合性炭素−炭素二重結合)を有することが好ましい。無機粒子が重合性二重結合を有するカルボン酸化合物で被覆されていると、無機粒子表面に重合性二重結合が存在することとなり、他の配合成分と重合が可能となるため硬化時の凝集やブリードアウトといった問題を生じることなく、硬化物においても良好な分散状態を維持することが容易となる。第1及び第2のカルボン酸化合物が含まれる場合、第1及び第2のカルボン酸化合物のどちらが重合性二重結合を有していてもよく、第1及び第2のカルボン酸化合物の両方が重合性二重結合を有していてもよく、第1のカルボン酸化合物が重合性二重結合を有し、第2のカルボン酸化合物が重合性二重結合を有しないことが好ましい。また第1又は第2のカルボン酸化合物を2種以上用いる場合には、第1又は第2のカルボン酸化合物のうち少なくとも1種が重合性二重結合を有すればよい。
カルボン酸化合物の合計(第1及び第2のカルボン酸化合物を含む場合、第1及び第2のカルボン酸化合物の合計)の含有量は、無機粒子分散体100質量部中、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上、よりいっそう好ましくは5質量部以上、特に好ましくは7質量部以上、最も好ましくは10質量部以上であってもよく、好ましくは40質量部以下、より好ましくは35質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。
無機粒子分散体にシランカップリング剤が含まれる場合、無機粒子がシランカップリング剤で表面修飾されていることも好ましい。無機粒子がシランカップリング剤で表面修飾されていると、初期透過率を改善できるだけでなく、透過率を長時間維持することが容易となる。前記シランカップリング剤としては、1種又は2種以上を用いることができ、加水分解性基−Si−OR9(ただし、R9はメチル基又はエチル基)を有する化合物が好ましい。シランカップリング剤としては、官能基を有するシランカップリング剤や、アルコキシシラン等が挙げられる。
官能基を有するシランカップリング剤としては、下記式(3):
[X−(CH2)m]4-n−Si−(OR9)n …(3)
(式中、Xは官能基、R9は前記に同じ、mは0〜4の整数、nは1〜3の整数を表す。)で表されるシランカップリング剤が挙げられる。
Xとしては、ビニル基、アミノ基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基、グリシドキシ基等が挙げられる。シランカップリング剤を具体的に例示すると、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等の官能基Xがビニル基であるシランカップリング剤;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン等の官能基Xがアミノ基であるシランカップリング剤;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等の官能基Xが(メタ)アクリロキシ基であるシランカップリング剤;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等の官能基Xがメルカプト基であるシランカップリング剤;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等の官能基Xがグリシドキシ基であるシランカップリング剤;等が挙げられる。
また、アルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等のアルキル基がアルコキシシランのケイ素原子に直接結合しているアルキル基含有アルコキシシラン;フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等の芳香環がアルコキシシランのケイ素原子に直接結合しているアリール基含有アルコキシシラン;等が挙げられる。
シランカップリング剤としては官能基Xが(メタ)アクリロキシ基であるシランカップリング剤及びアルキル基含有アルコキシシランが好ましく、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシランがより好ましい。
前記シランカップリング剤の量(被覆量)は、無機粒子全体100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上、よりいっそう好ましくは4質量部以上であり、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下よりいっそう好ましくは12質量部以下である。シランカップリング剤の含有量を上記範囲とすることで、無機粒子の屈折率を維持することができる。
表面修飾剤として有機酸及びシランカップリング剤を含む場合、シランカップリング剤と有機酸との質量比(シランカップリング剤/有機酸)は、好ましくは0.1〜2.0、より好ましくは0.2〜1.5、さらに好ましくは0.3〜0.95である。シランカップリング剤の量が前記範囲内であれば、無機粒子の分散性が良好である。
無機粒子の表面修飾剤としては、界面活性剤及び/又はチタンカップリング剤を用いてもよい。該界面活性剤としては、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性イオン界面活性剤等のイオン性界面活性剤、あるいは非イオン系界面活性剤が挙げられる。陰イオン系界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム等の脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸エステルスルホン酸ナトリウム等の脂肪酸系;アルキルリン酸エステルナトリウム等のリン酸系;アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム等のオレフィン系;アルキル硫酸ナトリウム等のアルコール系;アルキルベンゼン系等が挙げられる。陽イオン系界面活性剤としては、塩化アルキルメチルアンモニウム、塩化アルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム等が挙げられる。両性イオン界面活性剤としては、アルキルアミノカルボン酸塩等のカルボン酸系;フォスフォベタイン等のリン酸エステル系等が挙げられる。非イオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の脂肪酸系;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
前記チタンカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ドデシル)ベンゼンスルホニルチタネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ−トリ(ジオクチル)ホスフェイトチタネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ−トリネオドデカノイルチタネート等が挙げられる。
無機粒子を表面修飾剤により修飾する場合、表面修飾された無機粒子(被覆型無機粒子)は、上記表面修飾剤により表面無修飾の無機粒子を表面修飾したものであってもよく、水熱合成により合成したものであってもよい。
水熱合成により被覆型無機粒子(特に表面修飾された金属酸化物粒子)を合成する場合、例えば、水存在下で、水熱反応により金属又は金属酸化物(特に金属酸化物)を生成しうる化合物(以下、「無機粒子前駆体」という場合がある)及び第2のカルボン酸化合物(ただし無機粒子前駆体と第2のカルボン酸化合物とが塩を形成していてもよい)を水熱反応させることで、第2のカルボン酸化合物で被覆された被覆型無機粒子aを製造することができ(水熱工程)、さらに被覆型無機粒子aを被覆する第2のカルボン酸化合物の少なくとも一部を第1のカルボン酸化合物で置換することで(置換工程)、第1及び第2のカルボン酸化合物で被覆された被覆型無機粒子bを製造できる。また、第2のカルボン酸化合物の全てが第1のカルボン酸化合物で置換されるまで置換工程を実施することで、第1のカルボン酸化合物で被覆された被覆型無機粒子を製造できる。
前記無機粒子前駆体は、Ti、Al、Zr、Zn、Sn及びCeから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、Ti、Zrを含むことがより好ましく、Zrを含むことが更に好ましい。
前記無機粒子前駆体は、水熱反応により金属酸化物を生成する化合物であることが好ましく、具体的には各種金属及び各種金属の水酸化物、塩化物、オキシ塩化物、オキシ酢酸塩、オキシ硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、有機酸塩、アルコキシド等が含まれ、金属と第2のカルボン酸化合物との塩であってもよい。例えばジルコニウムでの例では、水酸化ジルコニウム;塩化ジルコニウム;オキシ塩化ジルコニウム;オキシ酢酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム;硫酸ジルコニウム;オクタン酸ジルコニウム、2−エチルヘキサン酸ジルコニウム、オレイン酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム;テトラブトキシジルコニウム等のジルコニウムアルコキシド等が挙げられる。また、チタンでの例では、水酸化チタン;塩化チタン;オキシ塩化チタン、オキシ酢酸チタン、オキシ硝酸チタン;硫酸チタン;オクタン酸チタン、オレイン酸チタン、酢酸チタン、ステアリン酸チタン、ラウリン酸チタン;テトラブトキシチタン(例えば、テトラ−n−ブトキシチタン)等のチタンアルコキシド等が挙げられる。
前記第2のカルボン酸化合物としては、上記した直鎖状カルボン酸、分枝鎖状カルボン酸、環状カルボン酸、芳香族カルボン酸が挙げられ、具体的には、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ステアリン酸などの直鎖状カルボン酸;2−エチルヘキサン酸、2−メチルヘプタン酸、4−メチルオクタン酸、ネオデカン酸、ピバリン酸、2,2−ジメチル酪酸、3,3−ジメチル酪酸、2,2−ジメチル吉草酸、2,2−ジエチル酪酸、3,3−ジエチル酪酸などの分枝鎖状カルボン酸;ナフテン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの環状カルボン酸などを挙げることができる。
水熱反応に供する無機粒子前駆体及び第2のカルボン酸化合物の組合せ(ただし無機粒子前駆体と第2のカルボン酸化合物とが塩を形成していてもよい)としては、以下の(i)〜(iii)から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
(i)無機粒子前駆体と第2のカルボン酸化合物との塩
(ii)第2のカルボン酸化合物の金属塩
(iii)無機粒子前駆体及び第2のカルボン酸化合物
(i)無機粒子前駆体と第2のカルボン酸化合物と無機粒子前駆体とが塩を形成した状態とすることで、各種金属の塩化物(特にオキシ塩化物)や硝酸塩(特にオキシ硝酸)塩等の、水溶性且つ腐食性の高い原料を用いることが可能となる。ここで、塩には、無機粒子前駆体とカルボン酸と無機粒子前駆体との量論比で構成される単種類の化合物や、複合塩、さらには未反応の無機粒子前駆体又はカルボン酸が存在する組成物も含まれる。
無機粒子前駆体と第2のカルボン酸化合物との塩は、第2のカルボン酸化合物と、前記無機粒子を構成する金属との塩であることが好ましい。該塩は、第2のカルボン酸化合物をアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属により中和度が0.1〜0.8となる範囲に中和して得られる組成物(以下、「カルボン酸塩含有組成物」という場合がある。)と無機粒子前駆体とを反応させることで得ることができる。
前記中和度は0.1〜0.8が好ましく、0.2〜0.7がより好ましい。中和度が前記範囲にあると、塩の形成が容易であり、被覆型無機粒子の収率も良好である。前記カルボン酸塩含有組成物を得るために用いるアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属としては、水溶性の高いカルボン酸塩を形成する金属が好ましく、アルカリ金属がより好ましく、ナトリウム及びカリウムがさらに好ましい。
前記カルボン酸塩含有組成物と前記無機粒子前駆体との割合は、無機粒子前駆体1モルに対してカルボキシ基が1モル〜20モルであることが好ましく、1.2〜18モルがより好ましく、1.5〜15モルがさらに好ましい。
前記カルボン酸塩含有組成物と前記無機粒子前駆体とを反応させる際には、水溶液同士を混合させるのが好ましい。反応温度は水溶液を保持できる温度であれば特に問わないが、室温から100℃が好ましく、40℃〜80℃がより好ましい。
前記カルボン酸塩含有組成物と前記無機粒子前駆体とを反応させて得られた塩は、そのまま水熱反応に供してもよく、水熱反応の前に不溶性の副生物を濾過等により取り除いておくことが好ましい。
(ii)第2のカルボン酸化合物の金属塩は、既に塩となっている点(すなわち塩形成反応が不要である点)で(i)と相違する。この第2のカルボン酸化合物の金属塩としては、第2のカルボン酸化合物と、Ti、Al、Zr、Zn、Sn、及びCeから選ばれる少なくとも1種との塩を用いることができる。
前記金属塩としては、2−エチルヘキサン酸チタン、3,3−ジメチル酪酸チタン、オクタン酸チタン、オレイン酸チタン、ステアリン酸チタン、ラウリン酸チタン、オクタン酸アルミニウム、オクタン酸ジルコニウム、2−エチルヘキサン酸ジルコニウム、オレイン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、オクタン酸亜鉛、オクタン酸スズ、オクタン酸セリウム等が挙げられる。
(iii)第2のカルボン酸化合物及び無機粒子前駆体のうち、前記無機粒子前駆体としては、上記した各種金属及び各種金属の水酸化物、塩化物、オキシ塩化物、オキシ酢酸塩、オキシ硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、有機酸塩、アルコキシド等が挙げられる。
前記無機粒子前駆体と前記第2のカルボン酸化合物とは、水存在下で混合することが好ましい。この時、加熱や減圧下で行うことにより、前記無機粒子前駆体に含まれる低沸点の化合物(アンモニアや酢酸等)を系外へ追い出すことができ、次工程の水熱反応での圧上昇を抑制できる。後述の有機溶媒を添加した溶液中で混合を行ってもよい。
無機粒子前駆体及び第2のカルボン酸化合物を水熱反応に供する際、粘度が高く水熱反応が効率的に進行しない場合には、無機粒子前駆体及び又は第2のカルボン酸化合物に対して良好な溶解性を示す有機溶媒を添加するとよい。
前記有機溶媒としては、炭化水素、ケトン、エーテル、アルコール等を用いることができる。水熱反応時の気化を抑制する観点から、該有機溶媒の常圧下での沸点は、好ましくは120℃以上、より好ましくは180℃以上、さらに好ましくは210℃以上である。具体的には、デカン、ドデカン、テトラデカン、オクタノール、デカノール、シクロヘキサノール、テルピネオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、メタントリメチロール、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が例示され、ドデカン、テトラデカンが好ましい。
前記有機溶媒の添加により2層に分離した場合には、界面活性剤等を添加して均一相状態や懸濁乳化状態にしてもよいが、通常は2層のまま水熱反応に供することが出来る。
前記組成物は原料に由来する十分な量の水を含有している場合もあるが、原料中に含まれる水分がない又は少ない場合には、水熱反応に供する前に水分を添加する必要がある。
水熱反応の系内に存在する水分量は、系内に存在する無機粒子前駆体のモル数に対する水のモル数(水のモル数/無機粒子前駆体のモル数)で4/1〜100/1が好ましく、8/1〜50/1がより好ましい。水分量が前記範囲にあると、水熱反応に要する時間を抑制でき、得られる無機粒子の粒径を抑制することができる。
反応容器の空間部を窒素などの不活性ガスで置換すると、前記有機カルボン酸や添加した有機溶媒の酸化等による副反応が抑制されるので好ましい。
水熱反応の際の圧力は、好ましくは0.1MPaG、より好ましくは0.2MPaGであり、例えば2MPaG以下である。圧力が前記範囲にあると、反応が進行しやすく、無機粒子の粒径や結晶系の制御が容易である。
反応温度は、水の飽和蒸気圧を考慮すると、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下であり、反応時間を抑制する観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上である。なお加熱前に加圧状態にすると、十分な反応温度に到達する前に高圧になってしまうので、加熱前に常圧以上に加圧するのは好ましくない。
反応時間は、反応温度や圧力と収率の関係から調整可能であり、通常は0.1〜50時間であり、好ましくは1〜20時間である。
前記水熱反応により、第2のカルボン酸化合物で被覆された被覆型無機粒子を得ることができ、さらに精製してもよい。例えば、該被覆型無機粒子をろ別した後、トルエン等の溶媒に溶解させ、不溶物をろ別してから減圧濃縮などによりトルエン等の溶媒を除去することで、精製することができる。
前記水熱反応時には塩基性化合物を用いることが好ましい。塩基性化合物は水に溶解させた時に塩基性を示すものであればよく、ブレンステッド塩基やルイス塩基等形態は特に問わず、無機化合物、有機化合物いずれでもよい。中でも、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及び1〜3級アミンから選ばれる少なくとも1種以上の塩基性化合物であることが好ましく、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、カルボン酸のアルカリ金属塩、1〜3級アミンがより好ましく、特にアルカリ金属の水酸化物、1〜3級アミンが好ましい。塩基性化合物が存在することで、生成する被覆型無機粒子aの収率が向上する。さらに、広範な種類のカルボン酸を原料として利用可能となり、従来方法では製造が難しかった種類の有機基で被覆された被覆型無機粒子aが得られる。
前記塩基性化合物の量は、該工程で用いられる金属酸化物前駆体1モルに対して0.03モル以上1.5モル以下であることが好ましい。前記範囲の塩基性化合物を添加することで、被覆型無機粒子aの収率がより向上する。
前記水熱反応で得られた被覆型無機粒子aの第2のカルボン酸化合物の少なくとも一部を第1のカルボン酸化合物で置換することによって、第1及び第2のカルボン酸化合物で被覆された被覆型無機粒子bが得られる。第2のカルボン酸化合物を第1のカルボン酸化合物で置換するためには、被覆型無機粒子aと第1のカルボン酸化合物とを含む混合物(特に混合液)を撹拌すればよい。第1のカルボン酸化合物と被覆型無機粒子aの質量比(第1のカルボン酸化合物/被覆型無機粒子a)は、好ましくは5/100〜200/100であり、が好ましい。より好ましくは10/100〜150/100である。
前記混合物(特に混合液)の調製に使用する溶媒は前記水熱反応時の溶媒をそのまま用いてもよく、他の溶媒を用いてもよい。溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の変性エーテル類(好ましくはエーテル変性及び/又はエステル変性エーテル類、さらに好ましくはエーテル変性及び/又はエステル変性アルキレングリコール類);ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ミネラルスピリット等の炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;水;鉱物油、植物油、ワックス油、シリコーン油等の油類が挙げられる。この様な溶媒中で被覆型無機粒子bを調製すると、組成物中での親和性がより向上し、分散ムラをより高度に防止できる。
撹拌温度は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜70℃、更に好ましくは20〜50℃であり、混合液中の被覆型無機粒子aの濃度は5〜80質量%が好ましく、より好ましくは10〜60質量%である。またボールミル等を用いて無溶媒やより高濃度での処理も可能である。反応時間は10分〜5時間が好ましく、より好ましくは20分〜2時間である。
溶媒中で被覆型無機粒子bを調製する場合、被覆型無機粒子bは、溶媒中に溶解していることが好ましい。この場合、濃縮などによって被覆型無機粒子と溶媒とを分離できる。また適当な貧溶媒(例えば、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒)を加えることで、被覆型無機粒子を析出させてもよい。析出物は適当な固液分離法(濾過法、遠心分離法など)によって溶媒と分離できる。濃縮と貧溶媒の添加とを組み合わせることも可能である。
上記方法により得られた本発明の被覆型無機粒子は洗浄することが好ましい。洗浄することにより副生成物や未反応の第1のカルボン酸化合物や置換された第2のカルボン酸化合物が組成物中から除去され、後記の各種用途に用いたときに悪影響を及ぼすことがなくなる。洗浄溶媒としては、特に限定されないが、アセトン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、メタノール、エタノールが好ましく用いられる。
無機粒子の表面修飾剤として有機酸及びシランカップリング剤を用いる場合、例えば前記水熱反応で得られた被覆型無機粒子aとシランカップリング剤とを混合し、得られた混合物を65〜100℃の条件で0.5〜2h程度反応させて分散液を得て、該分散液と第1のカルボン酸化合物とを含む混合物(混合液)を置換工程の原料として用いるとよい。
本発明の無機粒子分散体で用いる分散媒は、温度25℃における粘度が6mPa・s以上であればよい。分散媒の温度25℃における粘度は、好ましくは8mPa・s以上、より好ましくは9mPa・s以上であり、好ましくは5000mPa・s以下、より好ましくは3000mPa・s以下、さらに好ましくは2500mPa・s以下である。
無機粒子分散体の透明性を高める観点から、分散媒の屈折率は、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.3以上、さらに好ましくは1.4以上であり、2以下であってもよく、さらには1.8以下であってもよい。
分散媒としては、1種又は2種以上を用いることができ、少なくとも、1分子中に芳香族環を2以上含む化合物又は1分子中に橋かけ環を1以上含む化合物(以下、これらを総称して「特定含環化合物」という場合がある。)を含むことが好ましい。また、特定含環化合物は、重合性二重結合を1又は2以上有することが好ましく、(メタ)アクリロイル基を1又は2以上有することがより好ましい。
前記芳香族環は、芳香族炭化水素環であっても芳香族複素環であってもよく、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族炭化水素環であることが好ましい。1分子中に芳香族環を2以上含む化合物としては、ビフェニルメチル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、m−フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニルフェノール(メタ)アクリレート(オキシエチレン単位の合計は、好ましくは1〜30、より好ましくは2〜20)、エトキシ化クミルフェノール(メタ)アクリレート(オキシエチレン単位の合計は、好ましくは1〜30、より好ましくは2〜20)、2−(1−ナフチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ナフチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、ナフチルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、N−ビニルカルバゾール等の1分子中に重合性二重結合を1つと芳香族環を2以上含む化合物;ジビニルナフタレン、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(オキシエチレン単位の合計は、好ましくは2〜30、より好ましくは5〜20。オキシプロピレン単位の合計は、好ましくは2〜30、より好ましくは5〜20)、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(オキシエチレン単位の合計は、好ましくは2〜40、より好ましくは3〜30)、エトキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート(オキシエチレン単位の合計は、好ましくは2〜40、より好ましくは3〜30)、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(オキシプロピレン単位の合計は、好ましくは2〜40、より好ましくは3〜30)、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ジフェン酸ジアリル、2,3−ナフタレンジカルボン酸ジアリルエステル等の1分子中に重合性二重結合を2つと芳香族環を2以上含む化合物;等が挙げられる。
上記化合物に含まれるRx1−O−(Rx2−O−)n−単位(Rx1は、フェニルフェニル基、クミルフェニル基、ナフチル基又は(メタ)アクリロイル基を表す。Rx2はエチレン基又はプロピレン基を表す。nは、整数を表す。nが2以上の場合、Rx2は同一でも異なっていてもよい。)は、Rx1−(O)tx−Lx−単位(txは0又は1の整数を表し、Lxは単結合、後述する式(a1)〜式(a3)のいずれかで表される連結基又は後述する式(a1)〜式(a3)で表される連結基のうち2以上を組み合わせた連結基を表す。)に置換されていてもよく、Rx1−O−(CH2CH2−O−)nx−単位(nxは1〜30の整数を表す。)であることが好ましい。
前記橋かけ環としては、飽和又は不飽和の橋かけ環が挙げられ、飽和の橋かけ環が好ましい。1分子中に橋かけ環を1以上含む化合物としては、イソボルニル(メタ)アクリレート等の1分子中に重合性二重結合を1つと橋かけ環を1つ含む化合物;トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の1分子中に重合性二重結合を2つと橋かけ環を1つ含む化合物;等が挙げられ、1分子中に重合性二重結合を1つと橋かけ環を1つ含む化合物が好ましい。
特定含環化合物の含有量は、分散媒の合計100質量部中、好ましくは90質量部以上、より好ましくは95質量部以上、特に好ましくは99質量部以上であり、上限は100質量部である。
分散媒は、特定含環化合物以外に、その他の溶媒及び/又はモノマーを含んでいてもよい。前記溶媒としては、1種又は2種以上を用いることができ、上記混合液の調製に使用した溶媒と同一であっても異なっていてもよく、上記したアルコール類;ケトン類;エステル類;エーテル類;変性エーテル類(好ましくはエーテル変性及び/又はエステル変性エーテル類、さらに好ましくはエーテル変性及び/又はエステル変性アルキレングリコール類);炭化水素類;ハロゲン化炭化水素類;アミド類;水;油類を用いることができる。取扱性の面から、常圧(1013hPa)での沸点が40℃以上、250℃以下程度の溶媒が好適である。
前記モノマーとしては、1種又は2種以上を用いることができ、単官能単量体及び架橋性単量体が挙げられる。
前記単官能単量体は、重合可能な炭素−炭素二重結合を1つ有する化合物であればよく、1種又は2種以上を用いることができ、(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−クロロメチルスチレン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸等のカルボキシ基含有単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体等が挙げられる。上記の(メタ)アクリル酸エステルとしては、具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;2,4−ジブロモ−6−sec−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、2,4−ジブロモ−6−イソプロピルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,6−トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;ベンジル(メタ)アクリレート、ペンタブロモベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ−2−メチルエチル(メタ)アクリレート、2,4,6−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4−ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、1−ナフチルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−ナフチルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ−2−メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等のアリールオキシ単位を有する(メタ)アクリル酸エステル;フェニルチオエチル(メタ)アクリレート、1−ナフチルチオエチル(メタ)アクリレート、2−ナフチルチオエチル(メタ)アクリレート等のアリールチオオキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
上記化合物に含まれるRy1−O−(Ry2−O−)n−単位(Ry1は、メチル基、フェニル基を表す。Ry2はエチレン基を表す。nは、整数を表す。)は、Ry1−(O)ty−Ly−単位(tyは0又は1の整数を表し、Lyは単結合、後述する式(a1)〜式(a3)のいずれかで表される連結基又は後述する式(a1)〜式(a3)で表される連結基のうち2以上を組み合わせた連結基を表す。)に置換されていてもよく、Ry1−O−(CH2CH2−O−)ny−単位(nyは1〜30の整数を表す。)であることが好ましい。
架橋性単量体は、炭素−炭素二重結合を複数含有する化合物であればよい。該架橋性単量体としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のネオペンチルグリコールポリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等のトリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレート;グリセリルトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート等のグリセリルポリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン等の多官能スチレン系単量体;ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の多官能アリルエステル系単量体;2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート;ウレタンアクリレートオリゴマー(例えば、紫光(登録商標)シリーズ(日本合成化学工業(株)製)、CNシリーズ(サートマー社製)、ユニディック(登録商標)シリーズ(DIC(株)製)、KAYARAD(登録商標) UX シリーズ(日本化薬(株)製)等);等が挙げられる。
上記化合物に含まれるRz1−O−(Rz2−O−)n−単位(Rz1は、(メタ)アクリロイル基を表す。Rz2はエチレン基又はプロピレン基を表す。nは、整数を表す。)は、Rz1−(O)tz−Lz−単位(tzは0又は1の整数を表し、Lzは単結合、後述する式(a1)〜式(a3)のいずれかで表される連結基又は後述する式(a1)〜式(a3)で表される連結基のうち2以上を組み合わせた連結基を表す。)に置換されていてもよく、Rz1−O−(CH2CH2−O−)nz−単位(nzは1〜30の整数を表す。)であることが好ましい。
分散媒と上記水熱反応時の溶媒又は混合液の調製に用いた溶媒(反応溶媒)とが異なる場合、反応溶媒を溶媒交換することにより分散媒に置き換えればよい。例えば、無機粒子、被覆型無機粒子と反応溶媒とを含む混合液と、分散媒とを混合し、反応溶媒を減圧等により除去することで、溶媒交換することができる。
本発明の無機粒子分散体は、さらに、有機リン化合物若しくはその塩(以下、単に「有機リン化合物」という場合がある)、及び/又は有機硫黄化合物若しくはその塩(以下、単に「有機硫黄化合物」という場合がある)を含むことが好ましい。有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物に含まれる水酸基が粒子の分散性や該粒子を含む分散体の貯蔵安定性を改善することにより、無機粒子分散体における分散性が向上すると考えられる。有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物を用いることで、高濃度分散することがいっそう容易となり、チクソトロピー性を向上しやすくなる。
前記有機リン化合物は、リン酸化合物、亜リン酸化合物、ホスホン酸化合物又はこれらのエステルであって、炭化水素基又は有機官能基を有する化合物を意味し、有機リン化合物としては、分散体の貯蔵安定性をより向上できることから、リン酸エステルが好ましい。有機リン化合物は、式(1)で表される化合物であることが好ましい。
[式(1)中、R
1は、炭素数1〜50の飽和又は不飽和炭化水素基、(メタ)アクリロイル基又は炭素数6〜100の芳香族含有炭化水素基を表す。
a及びbは、それぞれ1又は2の整数を表し、a及びbの合計は3である。cは、0又は1の整数を表す。t1は0又は1の整数を表す。
L
1は、単結合、式(a1)〜式(a3)のいずれかで表される連結基又は式(a1)〜式(a3)で表される連結基のうち2以上を組み合わせた連結基を表し、式(a1)〜(a3)で表される連結基のいずれかを含む場合、式(a1)〜(a3)で表される連結基の酸素原子側でリン原子と結合する。
(式(a1)〜(a3)中、R
2〜R
4は、炭素数1〜18の飽和又は不飽和炭化水素基又は炭素数6〜30の芳香族含有炭化水素基を表し、R
2〜R
4を構成する水素原子は、エーテル基で置換されていてもよい。
p1、q1及びr1は、それぞれ1〜200の整数を表し、p1、q1及びr1の合計は1〜200である。)]
式(1)において、式(a1)〜(a3)で表される連結基の連結順は特に限定されず、同じ単位が繰り返すブロック構造を有していてもよく、異なる複数の単位が無秩序に結合するランダム構造であってもよく、他の連結基を有していてもよい。
式(1)で表される化合物としては、式(1−1)〜式(1−3)のいずれかで表される化合物が挙げられ、式(1−1)で表される化合物が好ましい。
[式(1−1)〜(1−3)中、R
1、L
1、a、b、t1は上記と同義である]
R1で表される飽和又は不飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ステアリル基等の直鎖又は分岐のアルキル基;ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ノネニル基、デセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、オクタデカジエニル基等の直鎖又は分岐のアルケニル基;が挙げられ、より好ましくは炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基又は炭素数2〜4の直鎖又は分岐のアルケニル基であり、特に好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基(n−プロピル基、iso−プロピル基など)、ブチル基(n−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基など)、オクチル基(n−オクチル基、メチルヘプチル基、ジメチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基など)、デシル基、ビニル基、プロペニル基(2−メチルアリル基、2−メチルアリル基など)、ブテニル基であり、最も好ましくは、メチル基、エチル基、オクチル基、デシル基、1−メチルビニル基である。
飽和又は不飽和炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜25、より好ましくは1〜18、さらに好ましくは1〜12である。飽和炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜25、より好ましくは1〜18、さらに好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜10であり、不飽和炭化水素基の炭素数は、好ましくは2〜25、より好ましくは2〜18、さらに好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜4である。
R1で表される飽和又は不飽和炭化水素基の水素原子は、炭素数6〜100の芳香族含有炭化水素基に置換されていてもよい。該芳香族含有炭化水素基は、好ましくはフェニル基、ナフチル基であり、より好ましくはフェニル基である。芳香族含有炭化水素基で置換された飽和又は不飽和炭化水素基としては、例えば、以下の基が挙げられる(*は隣接する酸素原子との結合部位を示す)。
R1で表される芳香族含有炭化水素基又はR1で表される飽和又は不飽和炭化水素基の置換基としての芳香族含有炭化水素基は、1〜5環(より好ましくは1〜3環)を有することが好ましく、2環以上の場合は縮環していてもよい。なお2環以上の場合、少なくとも1つの環は芳香環である。また芳香環が2つ以上の場合、これらは縮環していてもよく、シグマボンドにより直接結合していてもよい。
芳香族含有炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ペンタレニル基、インデニル基、アントラセニル基、フェナントリル基、フルオレニル基、ビフェニリル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基又はナフチル基であり、より好ましくはフェニル基である。
前記芳香族含有炭化水素基(アリール基など)の水素原子は、炭素数1〜50のアルキル基、炭素数1〜50のアルケニル基又は炭素数7〜50のアラルキル基で置換されていてもよい。
前記炭素数1〜50のアルキル基としては、直鎖又は分岐のアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜25のアルキル基;より好ましくは炭素数5〜15のアルキル基;特に好ましくはノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基である。
前記炭素数1〜50のアルケニル基としては、直鎖又は分岐のアルケニル基が挙げられ、好ましくは炭素数2〜4の直鎖又は分岐のアルケニル基;より好ましくはビニル基、プロペニル基(アリル基、1−メチルビニル基など)、ブテニル基(1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチルアリル基、2−メチルアリル基など)である。
前記炭素数7〜50のアラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基等が挙げられ、好ましくはベンジル基、フェニルエチル基;より好ましくはフェニルエチル基;さらに好ましくは1−フェニルエチル基である。
炭素数1〜50のアルキル基、炭素数1〜50のアルケニル基、炭素数7〜50のアラルキル基を有する芳香族含有炭化水素基としては以下の群Aに含まれる基が挙げられる。
p1、q1、r1は、それぞれR1−(O)t1−L1−単位1モルに対するモル比であって、それぞれ1〜200であり、好ましくは1〜100、より好ましくは1〜50、さらに好ましくは1〜30である。p1、q1及びr1の合計は1〜200であり、好ましくは1〜100、より好ましくは1〜50、さらに好ましくは1〜30である。t1は1であることが好ましい。
R2〜R4で表される炭素数1〜18の2価の炭化水素基としては、飽和又は不飽和炭化水素基であってよく、飽和炭化水素基であることが好ましい。該2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、シクロペンチレン基、ヘキシレン基、シクロヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、イソオクタデシレン基等の直鎖、分岐又は環構造含有のアルキレン基が挙げられ、好ましくはメチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、iso−プロピレン基、n−ブチレン基、tert−ブチレン基、sec−ブチレン基であり、より好ましくはエチレン基、iso−プロピレン基である。2価の炭化水素基の炭素数は1〜8であることが好ましい。
R2〜R4で表される2価の炭化水素基の水素原子は、炭素数6〜100の芳香族含有炭化水素基で置換されていてもよい。該芳香族含有炭化水素基としては、R1で表される芳香族炭化水素基として例示した基と同様の基が挙げられ、好ましくはフェニル基、ナフチル基であり、より好ましくはフェニル基である。芳香族含有炭化水素基で置換された炭化水素基としては、1−フェニルエタン−1,2−ジイル基が好ましい。
R2〜R4で表される炭素数6〜30の2価の芳香族含有炭化水素基は、1〜5環(より好ましくは1〜3環)を有することも好ましく、2環以上の場合は縮環していてもよい。2価の芳香族含有炭化水素基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ペンタレニレン基、インデニレン基、アントラセニレン基、フェナントリレン基、フルオレニレン基、ビフェニリレン基等が挙げられる。
芳香族含有炭化水素基の水素原子は、炭素数1〜18のアルキル基で置換されていてもよい。該アルキル基としては、R1で表される飽和又は不飽和炭化水素基として例示したアルキル基のうち、炭素数1〜18の基が挙げられる。該芳香族含有炭化水素基の炭素数は、好ましくは6〜18、より好ましくは6〜8である。
前記R2〜R4を構成する水素原子はエーテル基で置換されていてもよい。前記エーテル基としては、(メタ)アクリロイル基;炭素数1〜50の飽和又は不飽和炭化水素基、又は炭素数6〜100の芳香族含有炭化水素基の結合部位に、−O−が結合した基等が挙げられる。該飽和又は不飽和炭化水素基及び芳香族炭化水素基としては、R1で表される飽和又は不飽和炭化水素基及び芳香族炭化水素基と同様の基が挙げられる。エーテル基としては、飽和又は不飽和炭化水素基に、−O−が結合した基が好ましく、*−O−CnH2n-1(式中、nは1〜18の整数である)がより好ましい。
式(a1)で表される連結基としては、下記式で表される連結基の少なくとも1種を含むことが好ましい(式中、p11〜p15はp1と同義である)。
式(a2)で表される連結基としては、下記式で表される連結基の少なくとも1種を含むことが好ましい(式中、q11〜q14はq1と同義である。)。
式(a3)で表される連結基としては、下記式で表される連結基の少なくとも1種を含むことが好ましい(式中、r11〜r12はr1と同義である)。
p11〜p15、q11〜q14、r11〜r12は、それぞれ好ましくは1〜200、より好ましくは1〜100、さらに好ましくは1〜50、よりいっそう好ましくは1〜30である。
L1は、式(a1)で表される連結基を含むことが好ましく、式(a1−1)及び式(a1−2)で表される連結基のいずれか、又は両方を含むことが特に好ましい。この場合、p11及びp12の合計は、1〜200が好ましく、より好ましくは1〜100であり、更に好ましくは1〜50であり、最も好ましくは1〜30である。
有機リン化合物としては、例えば、ニューコール1000−FCP(日本乳化剤社製)、アントックスEHD−400(日本乳化剤社製)、Phoslexシリーズ(SC有機化学社製)、ライトアクリレートP−1A(共栄社化学社製)、ライトアクリレートP−1M(共栄社化学社製)、TEGO(登録商標) Dispers651、655、656(エボニック社製)、DISPERBYK−110、111、180(ビックケミー・ジャパン社製)、KAYAMERPM−2、KAYAMERPM−21(日本化薬社製)等を用いることができる。
有機リン化合物としては、下記式で表される化合物が挙げられる。式中、aは1又は2であり、1であることが好ましい。p11、p12、r1、r12は上記と同義である。
上記式中、p11、p12、p15は、4〜15であってもよい。p11、p12及びp15の合計は、好ましくは1〜100、より好ましくは1〜50、更に好ましくは1〜30である。r1、r12は、1〜20であることが特に好ましい。
本発明では、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルなどのように構造が異なる2種以上の有機リン化合物又はその塩を、それぞれ単独で、またはこれらを組み合わせて使用してもよい。
前記有機硫黄化合物は、置換基を有していてもよいスルホン酸化合物であり、式(2)で表される化合物であることが好ましい。
[式(2)中、R
5は、炭素数1〜50の飽和若しくは不飽和炭化水素基、(メタ)アクリロイル基又は炭素数6〜100の芳香族含有炭化水素基を表す。
t2は、0又は1の整数を表す。
L
2は、単結合、式(b1)〜(b3)で表される連結基又は式(b1)〜(b3)で表される連結基の2以上を組み合わせた連結基を表し、式(b1)〜(b3)で表される連結基のいずれかを含む場合、式(b1)〜(b3)で表される連結基の酸素原子側で硫黄原子と結合する。
(式(b1)〜(b3)中、R
6〜R
8は、炭素数1〜18の炭化水素基又は炭素数6〜30の芳香族含有炭化水素基を表し、R
6〜R
8を構成する水素原子は、エーテル基で置換されていてもよい。
p2、q2及びr2は、それぞれ1〜200であり、p2、q2及びr2の合計は1〜200である。)]
式(b1)中、R5で表される飽和又は不飽和炭化水素基、(メタ)アクリロイル基又は芳香族含有炭化水素基としては、R1で表される飽和又は不飽和炭化水素基、(メタ)アクリロイル基、芳香族含有炭化水素基と同様のものから選択できる。R5で表される飽和又は不飽和炭化水素基の水素原子は、炭素数6〜100の芳香族含有炭化水素基で置換されていてもよく、R5で表される芳香族含有炭化水素基の水素原子は、炭素数1〜50のアルキル基、炭素数1〜50のアルケニル基、炭素数7〜50のアラルキル基等の置換基で置換されていてもよい。これらの炭素数1〜50のアルキル基、炭素数1〜50のアルケニル基、炭素数7〜50のアラルキル基としては、R1で表される芳香族含有炭化水素基に含まれる水素原子を置換していてもよい炭素数1〜50のアルキル基、炭素数1〜50のアルケニル基、炭素数7〜50のアラルキル基として例示した基とそれぞれ同様の基が挙げられる。
R5としては、炭素数1〜50の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数2〜50の直鎖又は分岐のアルケニル基、(メタ)アクリロイル基又は炭素数6〜20の芳香族含有炭化水素基が好ましく、炭素数1〜30の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数2〜30の直鎖又は分岐のアルケニル基、又は炭素数6〜20の芳香族含有炭化水素基がより好ましく、炭素数1〜25の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数2〜25の直鎖又は分岐のアルケニル基、又は炭素数6〜10の芳香族含有炭化水素基が更に好ましく、ビニル基、プロペニル基(アリル基、1−メチルビニル基など)、ブテニル基(1−メチルアリル基、2−メチルアリル基など)、置換基を有していてもよいフェニル基がよりいっそう好ましく、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基及び上記群Aに含まれる基が特に好ましい。
p2、q2及びr2はそれぞれR5−(O)t2−L2−単位1モルに対するモル比であって、それぞれ1〜200であり、好ましくは1〜50である。t2は0であることが好ましい。またR6、R7、R8については前記R2、R3、R4とそれぞれ同じ構造が好ましい。
R5−(O)t2−L2−単位は、上記式(a1−1)及び式(a1−2)で表される連結基のいずれか、又は両方を含むことが好ましい。この場合、p11及びp12は、それぞれ好ましくは1〜200、より好ましくは1〜100、さらに好ましくは1〜50、特に好ましくは1〜30である。p11及びp12の合計は、好ましくは1〜200、より好ましくは1〜100、さらに好ましくは1〜50、特に好ましくは1〜30である。
有機硫黄化合物としては、例えば、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、メチルスルホン酸、エチルスルホン酸、及び下記式で表される各種有機硫黄化合物等が挙げられる(式中、p11は上記と同義であり、Rは任意の置換基を表す。)。
有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物は、塩であってもよく、該塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;第四級アンモニウム塩;等が挙げられる。
有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物の含有量は、分散体100質量%中、合計で好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%、更に好ましくは0.7〜3質量%である。前記範囲であると、屈率を維持しつつ貯蔵安定性やモノマー相溶性を向上しやすくなる。
有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物の含有量は、無機粒子100質量%に対して30質量%以下であることが好ましく、光学用途においては、0.05〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%であり、更に好ましくは1〜5質量%である。有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物の含有量が前記範囲内であれば、金属酸化物粒子を凝集させることなく、優れた貯蔵安定性を発揮することができる。
無機粒子分散体が有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物を含む場合、分散体への添加タイミングは、例えば、(i)乾燥した無機粒子、分散媒、並びに、有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物を全て仕込むことにより有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物を添加する方法や、(ii)予め無機粒子を分散媒に分散した液と、有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物を接触させることにより有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物を添加する方法等が挙げられる。
有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物を分散体に添加する際の温度は特に限定されるものではなく、0〜80℃程度が好ましく、20〜60℃程度がより好ましい。また有機リン化合物及び/又は有機硫黄化合物を分散体に添加する際の圧力も特に限定されず、0.9〜1.1atm程度の常圧下が好ましい。
本発明の無機粒子分散体は、さらにポリマー(樹脂)を含んでいてもよい。以下ポリマー(樹脂)を含む無機粒子分散体を樹脂組成物という場合がある。前記樹脂組成物は、ポリマー(樹脂)とモノマーとを含んでいてもよい。
前記ポリマー(樹脂)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば6−ナイロン、66−ナイロン、12−ナイロンなどのポリアミド類;ポリイミド類;ポリウレタン類;ポリエチレン、ポロプロピレンなどのポリオレフィン類;PET、PBT、PENなどのポリエステル類;ポリ塩化ビニル類;ポリ塩化ビニリデン類;ポリ酢酸ビニル類;ポリスチレン類;(メタ)アクリル樹脂系ポリマー;ABS樹脂;フッ素樹脂;フェノール・ホルマリン樹脂;クレゾール・ホルマリン樹脂などのフェノール樹脂;エポキシ樹脂;尿素樹脂;メラミン樹脂;グアナミン樹脂などのアミノ樹脂;ポリビニルブチラール系樹脂;ポリウレタン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂;エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体系樹脂などの軟質樹脂や硬質樹脂;等が挙げられる。上記した中で、ポリイミド類、ポリウレタン類、ポリエステル類、(メタ)アクリル樹脂系ポリマー、フェノール樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂がより好ましい。
また、本発明の無機粒子分散体には、本発明の効果を損なわない範囲において、界面活性剤、硬化剤、硬化促進剤、着色剤、内部離型剤、カップリング剤、反応性希釈剤、可塑剤、安定化剤、難燃助剤、架橋剤、低収縮剤、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、揺変化剤、増粘剤等の他の添加成分が含まれていてもよい。これらの添加成分の含有量は、無機粒子及び分散媒の合計100質量部に対し、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは0〜3質量部である。
さらに、本発明の無機粒子分散体は、前記以外の添加成分が含まれていてもよい。前記以外の添加成分の含有量は、無機粒子及び分散媒の合計100質量部に対し、好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、よりいっそう好ましくは1質量部以下、特に好ましくは0質量部である。
<好ましい用途>
本発明の無機粒子分散体は、分散体を成型又は硬化した物品等に代表される各種用途への展開が可能となる。例えば、レジスト用途、光学用途、塗布用途、接着用途が挙げられ、光学レンズ、光学フィルム用粘着剤、光学フィルム用接着剤、ナノインプリント用樹脂組成物、マイクロレンズアレイ、透明電極に使用する反射防止層、反射防止フィルムや反射防止剤、光学レンズの表面コート、有機EL光取り出し層、各種ハードコート材、TFT用平坦化膜、カラーフィルター用オーバーコート、反射防止フィルム等の各種保護膜および、光学フィルター、タッチセンサー用絶縁膜、TFT用絶縁膜、カラーフィルター用フォトスペーサー、タッチパネル用保護膜等の光学材料に好適に用いられる。特に本発明の被覆型金属酸化物粒子は顕著な分散性に加え、高屈折率、高硬度、高安定性を有するため、光学レンズ、光学レンズの表面コート、各種ハードコート材、タッチセンサー用絶縁膜、TFT用絶縁膜、タッチパネル用保護膜に使用することが好ましい。
さらに本発明の被覆型金属酸化物粒子は光学用途以外に、その高い誘電率を生かして半導体のゲート絶縁膜やDRAM等のメモリー用キャパシタ絶縁膜への適用が可能である。このような高誘電率な絶縁膜を得る方法として、有機金属前駆体を用いてCVD(Chemical Vapor Deposition)法やALD(Atomic Layer Deposition)法等の気相成長法で蒸着後、酸化処理する方法が知られている。所望の高誘電率の金属酸化物を得るには600℃以上の高温処理を必要とするが、その影響により、ピニング現象を始めとする半導体層の動作不安定化をもたらす現象が生じる。本発明の被覆型金属酸化物粒子は高温処理が不要で、生成時点ですでに高い誘電率を有し、数nmの単一粒子であることから今後の半導体微細化に対応できる積層化が可能であると同時に、高温処理不要なことからプラスチック基板上での半導体製造への適用も可能である。
以下実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
実施例で開示される物性及び特性は、以下の方法により測定した。
(1)粘度変化率
無機粒子分散体として、25℃の空気雰囲気下で24時間静置したものを使用した。レオメータ(TA Instruments社製 ARES−G2)を用いて無機粒子分散体の1s-1と100s-1におけるせん断粘度を測定した。その際、コーンプレートの円すい部分と測定部との隙間を無機粒子分散体で満たした状態でコーンプレートを回転させた。コーンプレートは無機粒子分散体の粘度に応じて、
A「直径25mm,コーン角 0.1rad」
B「直径25mm,コーン角 0.02rad」
C「直径50mm,コーン角 0.02rad」
の3種類から選定し測定した。測定部を25℃に温調し、せん断速度を1s-1または100s-1の定値で測定し、開始5分後の値をせん断粘度とした。
下記式に基づいて粘度変化率を算出し、2.0以上を○、2.0未満を×として評価した。
粘度変化率=(液温25℃でのせん断速度1s-1におけるせん断粘度)/(液温25℃でのせん断速度100s-1におけるせん断粘度)
(2)全光線透過率
無機粒子分散体の全光線透過率は、濁度計(日本電色工業社製 NDH7000)を用いて測定した。セルは光路長1cmの石英セルを用いた。
全光線透過率50%以上を○、50%未満を×として評価した。
(3)流動性
無機粒子分散体45mLを外径30mmの試験管に注ぎ、垂直にした状態で25℃雰囲気下で24時間放置した。必要に応じて、試料を試験管に流し込むのに必要な最低限の流動性を得るまで加熱した。続いて、試料が温度25℃に調整されていることを確認後、水平にして5秒間保ち状態を観察した。試料が動く場合を○、全く動かない場合を×として評価した。
(4)質量減少率の測定
TG−DTA(熱重量−示差熱分析)装置により、空気雰囲気下、室温から800℃まで10℃/分で被覆型酸化ジルコニウム粒子を昇温し、該粒子の質量減少率を測定した。この質量減少率により、金属酸化物粒子を被覆しているカルボキシレート化合物の割合、及び金属酸化物の割合を知ることができる。
製造例1
2−エチルヘキサン酸及び/又は2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートで被覆された被覆型酸化ジルコニウムナノ粒子(被覆型ZrO 2 粒子1)の製造
2−エチルヘキサン酸ジルコニウムミネラルスピリット溶液(782g、2−エチルヘキサン酸ジルコニウム含有率44質量%、第一希元素化学工業社製)に純水(268g)を混合した。得られた混合液を、攪拌機付きオートクレーブ内に仕込み、該オートクレーブ内の雰囲気を窒素ガスで置換した。その後、混合液を180℃まで加熱し、該温度で16時間保持(オートクレーブ内圧力は0.94MPa)して反応させ、酸化ジルコニウム粒子を生成した。続いて、反応後の混合液を取り出し、底部に溜まった沈殿物を濾別してアセトンで洗浄した後に、乾燥した。乾燥後の前記沈殿物(100g)をトルエン(800mL)に分散させたところ、白濁溶液となった。次に、精製工程として、定量濾紙(アドバンテック東洋社製、No.5C)にて再度濾過し、沈殿物中の粗大粒子などを除去した。さらに、濾液を減圧濃縮してトルエンを除去することで白色の酸化ジルコニウムナノ粒子(被覆型ZrO2粒子1)を回収した。
得られた被覆型ZrO2粒子1の結晶構造を確認したところ、正方晶と単斜晶に帰属される回折線が検出され、回折線の強度から、正方晶と単斜晶の割合は54/46で、その粒子径(結晶子径)は5nmであった。
電子顕微鏡により測定して得られた被覆型ZrO2粒子1の平均粒子径(個数基準の平均一次粒子径)は、12nmであった。また、得られた被覆型ZrO2粒子1を、赤外吸収スペクトルによって分析したところ、C−H由来の吸収と、COOH由来の吸収が確認できた。当該吸収は、被覆型ZrO2粒子1に被覆されている2−エチルヘキサン酸及び/又は2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートに起因するものと考えられる。
さらに上記した「(4)質量減少率の測定」に従って測定した被覆型ZrO2粒子1の質量減少率は、12質量%だった。従って、被覆型ZrO2粒子1を被覆する2−エチルヘキサン酸及び/又は2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートは、被覆型ZrO2粒子1全体の12質量%であることが分かった。
製造例2
2−エチルヘキサン酸及び/又は2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートと2−アクリロイルオキシエチルサクシネートと3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで被覆された酸化ジルコニウムナノ粒子(被覆型ZrO 2 粒子2)の製造
上記製造例1で得られた被覆型ZrO2粒子1(10g)を、メチルイソブチルケトン(40g)に分散させて白濁スラリーを調製した。当該溶液に表面処理剤として3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(2.0g、信越化学工業社製、KBM−503)、水(0.9g)を添加し、80℃で1時間加熱還流することで透明分散溶液を得た。次いで、50℃まで降温し、その後2−アクリロイルオキシエチルサクシネート(1.8g)を添加して30分撹拌混合し、酸化ジルコニウム分散液を得た。
次いでn−ヘキサンを添加することで分散粒子を凝集させて溶液を白濁させた。白濁液から凝集粒子を濾紙により分離後、室温で加熱乾燥し、2−エチルヘキサン酸及び/又は2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートと2−アクリロイルオキシエチルサクシネートと3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで被覆された酸化ジルコニウムナノ粒子(被覆型ZrO2粒子2)を調製した。
「(4)質量減少率の測定」に従って測定した被覆型ZrO2粒子2の質量減少率は、17質量%であった。このことから被覆型ZrO2粒子2の有機分量が17質量%であることが確認された。
また、当該被覆型ZrO2粒子2を蛍光X線分析装置により分析し、Zr、Si含有量を測定することで3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン量は被覆型ZrO2粒子2に対し8質量%であることがわかった。
得られた被覆型ZrO2粒子2を重クロロホルムに分散させて測定試料とし、1H−NMRによる分析を行なった。その結果、2−エチルヘキサン酸及び/又は2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートと3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランと2−アクリロイルオキシエチルサクシネートの存在モル比率が27:35:38であることがわかった。
上記、TG−DTA、蛍光X線分析、1H−NMRによる分析結果から勘案して2−エチルヘキサン酸及び/又は2−エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートと3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランと2−アクリロイルオキシエチルサクシネートは被覆型ZrO2粒子2全体(100質量%)の、それぞれ3質量%、8質量%、7質量%であることがわかった。
製造例3
製造例2で得られた被覆型ZrO2粒子2(7g)、メチルエチルケトン(3g)、アントックスEHD−400(日本乳化剤社製、0.14g)を配合し、均一撹拌することで、酸化ジルコニウム分散液を得た。
実施例1
製造例3で得られた酸化ジルコニウム分散液70g(酸化ジルコニウムの個数平均一次粒子径11nm、粒子含有率70%のメチルエチルケトン分散液)、分散媒としてエトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート12.3g(新中村化学工業社製 NKエステルA−LEN−10)を配合し均一撹拌した後、ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンを減圧除去することで、無機粒子分散体を得た。評価結果を表1に示す。なおせん断粘度の測定にはコーンプレートBを使用した。
実施例2〜3、比較例1〜3
エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート12.3gを表1に示す通りに変更した以外は実施例1と同様にして、無機粒子分散体を得た。評価結果を表1に示す。せん断粘度の測定の際、実施例2ではコーンプレートBを使用し、実施例3ではコーンプレートAを使用し、比較例1〜3ではコーンプレートCを使用した。