以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る湧水圧又は湧水流量の測定装置及び測定方法について説明する。
(第1実施形態)
まず、図1から図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る湧水圧又は湧水流量の測定装置100及び測定方法について説明する。
図1は、測定装置100の模式断面図であり、地山1に削孔されたボーリング穴2に設置した状態を示す。図1に示す状態では、ボーリング穴2は、地山1における湧水帯3に達している。
図1に示すように、測定装置100は、ボーリング穴2を削孔するための削孔管10と、削孔管10の末端に着脱可能に取り付けられる端末管20と、端末管20に取り付けられる測定部としての測定ユニット30と、を備える。
削孔管10の先端には、削孔ビット40が取り付けられる。削孔ビット40は、筒状のケーシング41を介して削孔管10に回転可能に支持される軸部42と、軸部42に固定されるヘッド部43と、を有する。ヘッド部43の先端にはカッタ44が設けられており、ヘッド部43の回転によりカッタ44が地山1にボーリング穴2を削孔する。
削孔管10は、直列に接続された複数の管体11からなる。管体11は、例えば鋼管である。管体11の一方の端部の内周面には雌ねじ11aが形成され、他方の端部の外周面には雄ねじ11bが形成される。雌ねじ11a及び雄ねじ11bは、正ねじ(右ねじ)であり、隣り合う管体11どうしは、一方の管体11の雌ねじ11aと他方の管体11の雄ねじ11bとの螺合により互いに接続されている。
削孔ビット40のカッタ44の最大外径は、管体11の外径よりも大きい。そのため、ボーリング穴2は、管体11の外径よりも大きい内径で削孔され、ボーリング穴2と管体11との間には隙間2aが形成される。湧水帯3から流出する湧水は、この隙間2aに導かれる。なお、隙間2aは、説明の便宜上大きく図示しているが、実際は、隙間2aの径方向寸法は、7mm程度と小さい。
削孔管10のうち先端の管体11には、外周面に開口する複数の貫通孔12が形成される。そのため、湧水は、貫通孔12を通じて管体11の内部、つまり削孔管10の内部に導かれる。このように、湧水は、先端の管体11の外周面とボーリング穴2の内周面との隙間2aから削孔管10の内部に導かれる。なお、貫通孔12は、先端の管体11だけでなく、他の管体11に形成されていてもよい。
端末管20は、削孔管10のうち末端の管体11に着脱可能に取り付けられる。端末管20の一方の端部の内周面には雌ねじ21aが形成される。雌ねじ21aは正ねじであり、雌ねじ21aと末端の管体11の雄ねじ11bとの螺合により端末管20が削孔管10の末端に接続される。また、雌ねじ21aと雄ねじ11bとの螺合を解除することにより、端末管20は削孔管10から取り外される。
なお、端末管20は、螺合により削孔管10に着脱可能に取り付けられる形態に限られない。例えば、工具を用いることなく互いに着脱可能な雄型ジョイント部材と雌型ジョイント部材とからなるワンタッチジョイントを介して端末管20を削孔管10に着脱可能に取り付けてもよい。
端末管20の外径は、削孔管10の管体11の外径と略等しい。そのため、端末管20の外周面とボーリング穴2の内周面との間にも隙間2aが形成される。
端末管20の外周にはパッカ部22が設けられる。パッカ部22は、環状のゴムからなり、端末管20の外周を覆うように固定される。パッカ部22は、その内部にエア又は水が供給装置53(図2(D)参照)から供給されると拡張し、その内部からエア又は水が排出されると収縮する。このように、パッカ部22は、拡縮可能に形成される。図1では、パッカ部22がボーリング穴2に挿入され拡張された状態が示されている。
端末管20は、例えば鋼管であり、パッカ部22にエア又は水が送られても変形しないような強度を有する。したがって、パッカ部22の拡張時に端末管20が変形するのを防止することができる。なお、端末管20は、鋼管に限られず、パッカ部22の拡張時に変形しないような強度を有していれば、アルミニウムや他の材料から形成されていてもよい。
測定ユニット30は、端末管20に接続される測定管31と、測定管31に収容される圧力計32及び流量計33と、を有する。測定管31は、ねじの螺合によって端末管20に接続されるが、他の手段により端末管20に接続されてもよい。測定管31が端末管20に接続された状態では、端末管20から湧水が測定管31に導かれる。
圧力計32は、測定管31内の湧水圧を測定する。流量計33は、測定管31を流れる湧水流量を測定する。圧力計32及び流量計33によって測定された測定値は、有線通信又は無線通信によりコンピュータ35に送信される。なお、圧力計32及び流量計33は、測定値を測定ユニット30の近傍で直接確認できるものであってもよい。
測定ユニット30の測定管31には開閉弁34が設けられる。開閉弁34は、閉じた状態では、測定管31の流路を閉塞し湧水の流れを遮断し、開いた状態では、測定管31の流路を開放し湧水の流れを許容する。このように、開閉弁34は、測定管31における湧水の流れの許容と遮断とを切り換える。
次に、第1実施形態に係る湧水圧又は湧水流量の測定方法について、図2及び図3を参照して説明する。
図2(A)は、ボーリング穴2を削孔する第1削孔工程を示している。第1削孔工程は、削孔管10に端末管20が取り付けられていない状態で行われる。ボーリング穴2を削孔する際には、削孔ビット40は、削孔管10に挿入されるインナーロッド51を介して削孔機50に連結され、削孔管10は、ガイド部材52を介して削孔機50に支持される。
削孔機50は、トンネルを掘削する際に用いられる車両であるドリルジャンボに搭載される。削孔機50の駆動により、削孔ビット40が回転駆動され、地山1にボーリング穴2が削孔される。また、削孔管10は、削孔ビット40がボーリング穴2を削孔するのに伴って、削孔機50によってボーリング穴2内に送られる。
削孔機50は、削孔ビット40を回転駆動してボーリング穴2を削孔するロータリータイプの削孔機であってもよいし、削孔ビット40を回転駆動しつつ地山1に削孔ビット40を打撃してボーリング穴2を削孔するロータリーパーカッションタイプの削孔機であってもよい。
また、削孔機50は、インナーロッド51の内部に形成される通路(図示省略)を通じて削孔ビット40に水を供給する。削孔機50から供給される水により、削孔ビット40が冷却される。削孔機50から供給される水は、削孔ビット40に形成される噴出口(図示省略)から噴出され、削孔ビット40に形成される移送通路(図示省略)及び削孔管10の内部を通じてボーリング穴2から土砂と共に排出される。なお、図2では、削孔機50から供給される水の図示を省略している。
ボーリング穴2の削孔に伴って、削孔管10の末端に新たな管体11を継ぎ足し、削孔管10を延長する。これにより、ボーリング穴2を削孔しつつボーリング穴2の全長に渡って穴崩れを防ぐことができる。削孔管10の延長に伴い、インナーロッド51も継ぎ足す。このようにして、例えば削孔長が20〜30mのボーリング穴2が削孔される。
管体11の継ぎ足しは、削孔管10の全体がボーリング穴2に挿入される前、つまり、削孔管10の後端側がボーリング穴2から突出している状態で行われる。そのため、末端の管体11に新たな管体11を容易に螺合させることができる。
図2(B)は、ボーリング穴2が湧水帯3に達した状態を示している。ボーリング穴2が湧水帯3に達したか否かは、ボーリング穴2から排出される湧水の流量の増加で判断することができる。
図2(B)に示すように、ボーリング穴2が湧水帯3に達したところで、端末管20の雌ねじ21a(図1参照)と末端の管体11の雄ねじ11b(図1参照)とを螺合させて、削孔管10の末端に端末管20を取り付ける(取付工程)。このとき、削孔管10の後端側がボーリング穴2から突出しているので、端末管20を削孔管10の末端に容易に取り付けることができる。また、端末管20は、ボーリング穴2に挿入されている削孔管10に同軸上に取り付けられるため、端末管20をボーリング穴2に対して位置合わせすることができる。
その後、端末管20が取り付けられた削孔管10を用いて再びボーリング穴2を削孔する(第2削孔工程)。ボーリング穴2の削孔に伴って削孔管10をボーリング穴2内に送ることによって、ボーリング穴2に対する端末管20の位置を維持したまま端末管20をボーリング穴2内に挿入することができる。このとき、端末管20は、ガイド部材52を介して削孔機50に支持される。第2削孔工程は、端末管20のパッカ部22がボーリング穴2に挿入されるまで行われる(図2(C)参照)。
このように、本実施形態では、端末管20をボーリング穴2に対して容易に位置合わせできると共に、ボーリング穴2の削孔によって、ボーリング穴2に対する端末管20の位置を維持したままボーリング穴2に端末管20を挿入することができる。端末管20は削孔管10の末端に連結されて、削孔管10の先端には削孔ビット40が取り付けられている。削孔ビット40がボーリング穴2を掘進するのに伴い、削孔管10はボーリング穴2に沿って地山1中に挿入される。端末管20も削孔管10に連結されボーリング穴2(地山1中)に挿入される。したがって、端末管20をボーリング穴2に挿入する際にパッカ部22の外周面とボーリング穴2の内周面とが接触するのを防止することができ、パッカ部22の損傷を防止することができる。
なお、インナーロッド51と削孔管10又は端末管20との間隔を保持するスペーサ(図示省略)を削孔管10又は端末管20の内部に配置してもよい。この場合には、スペーサによって、ボーリング穴2内での削孔管10又は端末管20の位置が保持されるので、パッカ部22の損傷を更に好適に防止することができる。
また、第2削孔工程では、端末管20が、ボーリング穴2の削孔に伴って削孔管10に続いてボーリング穴2内に挿入される。したがって、ボーリング穴2の崩落をその全長に渡って防止することができる。
次に、図2(D)に示すように、供給装置53を用いてパッカ部22へエア又は水を送り、パッカ部22を拡張させる(拡張工程)。これにより、パッカ部22の外周面がボーリング穴2の内周面に密着し、端末管20の外周面とボーリング穴2の内周面との隙間2aがパッカ部22により閉塞される。その結果、この隙間2aからの湧水の流出が止まる。
図2(D)に示される状態では、インナーロッド51が削孔ビット40から取り外され、削孔管10及び端末管20から抜き出されている。インナーロッド51の抜き出しは、パッカ部22を拡張させる前に行ってもよいし、パッカ部22を拡張させた後に行ってもよい。
次に、図3(A)に示すように、測定ユニット30を端末管20に取り付ける。具体的には、測定ユニット30の測定管31を端末管20に接続する。これにより、削孔管10及び端末管20を通じて測定ユニット30に湧水が導かれる。
図3(A)に示す状態では、測定ユニット30の開閉弁34は開いている。測定ユニット30を端末管20に取り付ける際には、開閉弁34は閉じられていてもよい。
次に、図3(B)に示すように、開閉弁34を閉じた状態で、測定ユニット30の圧力計32(図1参照)を用いて、測定ユニット30の測定管31内の湧水圧、すなわち、ボーリング穴2内の湧水圧を測定する(圧力測定工程)。このとき、パッカ部22が拡張し端末管20の外周面とボーリング穴2の内周面との隙間2aを閉塞しているので、ボーリング穴2における湧水の流れは止まっている。そのため、圧力計32によって検出される圧力は、湧水帯3の圧力(より具体的には、測定管31の高さと同じ高さでの湧水帯3の圧力)と略一致する。したがって、圧力計32を用いてボーリング穴2内の湧水圧を測定することにより、湧水帯3の圧力を高精度で測定することができる。
なお、圧力測定工程で測定する圧力は、測定管31内の湧水圧に限られず、ボーリング穴2内の湧水圧であればよい。具体的には、端末管20内の湧水圧、削孔管10内の湧水圧、又は削孔管10の外周面とボーリング穴2の内周面との隙間2aの湧水圧を測定してもよい。測定ユニット30の圧力計32の位置(図1参照)は、湧水圧の測定位置に応じて適宜変更可能である。
次に、開閉弁34を開け、測定ユニット30の流量計33(図1参照)を用いて、測定ユニット30の測定管31内の湧水流量、すなわち、ボーリング穴2内の湧水流量を測定する(流量測定工程)。流量測定工程における測定装置100の状態は、図3(A)に示す状態と略同じであるため、ここではその図示を省略する。流量測定工程においても、パッカ部22が拡張し端末管20の外周面とボーリング穴2の内周面との隙間2aを閉塞しているので、測定管31から流出する湧水流量は、湧水帯3からボーリング穴2に流入する湧水流量に略一致する。したがって、湧水帯3からボーリング穴2に流入する湧水流量を高精度で測定することができる。
湧水圧及び湧水流量の測定は、例えば所定のモニタリング期間、必要に応じて行われる。
図3(C)及び図3(D)は、端末管20をボーリング穴2から抜き出す手順を示している。まず、図3(C)に示すように、パッカ部22からエア又は水を抜き、パッカ部22を収縮させる(収縮工程)。
次に、末端の管体11と端末管20との螺合を解除して削孔管10から端末管20を取り外す(取外工程)。その後、端末管20をボーリング穴2から抜き出す。このとき、パッカ部22は収縮しているため、パッカ部22の外周面をボーリング穴2の内周面に接触させることなく端末管20をボーリング穴2から抜き出すことができる。したがって、パッカ部22の損傷を防止することができ、端末管20を再利用することができる。
なお、収縮工程及び取外工程では、開閉弁34は閉じていてもよいし開いていてもよい。また、収縮工程は、測定ユニット30を端末管20に取り付けた状態で行ってもよいし、測定ユニット30を端末管20から取り外した後に行ってもよい。同様に、取外工程は、測定ユニット30を端末管20に取り付けた状態で行ってもよいし、測定ユニット30を端末管20から取り外した後に行ってもよい。
以上の第1実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
パッカ部22が設けられる端末管20は、ボーリング穴2から突出している削孔管10の末端に取り付けられ軸方向に並んで位置するため、端末管20をボーリング穴2に対して容易に位置合わせすることができる。また、端末管20が取り付けられた削孔管10を用いてボーリング穴2を削孔するため、ボーリング穴2に対する端末管20の位置を維持したままボーリング穴2の削孔に伴ってボーリング穴2に端末管20を挿入することができる。したがって、パッカ部22の外周面とボーリング穴2の内周面との接触を防止しつつ端末管20を容易にボーリング穴2に挿入することができ、湧水圧及び湧水流量を容易に測定することができる。
また、端末管20は、削孔管10に着脱可能に取り付けられる。そのため、圧力測定及び流量測定終了後に端末管20を削孔管10から取り外すことができ、端末管20をボーリング穴2から抜き出して再利用することができる。
(第1実施形態の変形例)
次に、第1実施形態の変形例について説明する。
第1実施形態では、端末管20は、正ねじにより削孔管10に取り付けられる。これに代えて、本変形例では、端末管20は、逆ねじ(左ねじ)により削孔管10に取り付けられる。つまり、図1において、末端の管体11の雄ねじ11bは逆ねじであり、端末管20の雌ねじ21aも逆ねじである。そのため、圧力測定及び流量測定終了後に削孔管10から端末管20を取り外す(取外工程)際には、削孔管10に対して端末管20を右回りに回転させて逆ねじの螺合を解除することになる。
一方で、隣り合う管体11どうしは、正ねじにより接続される。そのため、取外工程において端末管20と削孔管10との逆ねじによる螺合を解除するために端末管20に加えられる右回りの力は、隣り合う管体11どうしの正ねじによる螺合を強める方向に作用する。したがって、隣り合う管体11どうしの螺合を緩めることなく端末管20と削孔管10の螺合を解除することができる。このように、端末管20を削孔管10から容易に取り外すことができ、端末管20をボーリング穴2から容易に抜き出すことができる。
また、削孔管10への端末管20の取り付け(図2(B)参照)は、削孔管10がボーリング穴2から突出している状態で行われる。これにより、削孔管10への端末管20の逆ねじによる取り付けは、ボーリング穴2の外側に位置している末端の管体11を把持した状態で行うことができる。したがって、端末管20と末端の管体11とを逆ねじにより螺合させる際に、隣り合う管体11どうしの正ねじの螺合が緩むことはない。なお、末端の管体11が雌ねじの逆ねじであり、端末管20の先端側が雄ねじの逆ねじであってもよい。
(第2実施形態)
次に、図4及び図5を参照して、本発明の第2実施形態に係る湧水圧又は湧水流量の測定装置200及び測定方法について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を主に説明し、第1実施形態で説明した構成と同一の構成又は相当する構成については、図中に第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
図4に示すように、測定装置200では、端末管220は、接続管250を介して削孔管10の末端に取り付けられる。換言すれば、接続管250が末端の管体11に接続され、端末管220が接続管250に接続される。接続管250は、削孔管10の管体11と比較して長さが短い。
接続管250の一方の端部の内周面には雌ねじ250Rが形成される。雌ねじ250Rは正ねじであり、接続管250は、雌ねじ250Rと末端の管体11の雄ねじ11bとの螺合により管体11に接続される。つまり、接続管250と削孔管10とを接続する着脱機構は、隣り合う管体11どうしを接続する着脱機構と同じ正ねじである。
一方、接続管250と端末管220とは、正ねじとは異なる着脱機構であるワンタッチジョイント260により接続される。ワンタッチジョイント260は、その軸方向に相対移動させることにより互いに着脱可能な雄型ジョイント部261と雌型ジョイント部262とからなり、接続管250の他方の端部に雄型ジョイント部261が形成され、端末管220の一方の端部に雌型ジョイント部262が形成される。端末管220と接続管250とは、ワンタッチジョイント260により接続されているため、端末管220と接続管250とをその軸方向に相対移動させることにより互いの接続を解除することができる。なお、接続管250の他方の端部に雌型ジョイント部262が形成され、端末管220の一方の端部に雄型ジョイント部261が形成されていてもよい。
このように、接続管250は、削孔管10に対しては、隣り合う管体11どうしの接続と同じ正ねじにより接続される一方で、端末管220に対しては正ねじとは異なる着脱機構であるワンタッチジョイント260により接続される。
次に、第2実施形態に係る湧水圧又は湧水流量の測定方法について、図5を参照して説明する。本実施形態に係る測定方法も、第1実施形態に係る測定方法と同様に、第1削孔工程、取付工程、第2削孔工程、拡張工程、圧力測定工程、流量測定工程、収縮工程及び取外工程を含む。第1削孔工程、第2削孔工程、拡張工程、圧力測定工程、流量測定工程及び収縮工程は、第1実施形態と略同じであるため、ここではそれらの説明を省略する。
図5(A)は、端末管220を接続管250を介して削孔管10の末端に取り付ける取付工程を示している。取付工程は、ボーリング穴2が湧水帯3に達したところで行われる。
取付工程では、接続管250を端末管220にワンタッチジョイント260(図4参照)により予め接続し一体化した状態で、接続管250の雌ねじ250R(図4参照)と末端の管体11の雄ねじ11b(図4参照)とを螺合させる。接続管250と末端の管体11とは、隣り合う管体11どうしの接続と同じ正ねじにより接続されるため、末端の管体11への端末管220の取り付けは、ボーリング穴2の削孔に伴う管体11の継ぎ足しと同じ要領で行うことができる。したがって、末端の管体11に端末管220を接続管250を介して容易に取り付けることができる。
また、末端の管体11への接続管250の取り付けは、末端の管体11がボーリング穴2から突出している状態で行われるため、末端の管体11に接続管250を容易に螺合させることができる。
なお、削孔管10の末端に接続管250を接続した後に、接続管250に端末管220をワンタッチジョイント260により接続してもよい。
その後、第2削孔工程が行われる。第2削孔工程は、端末管220のパッカ部222がボーリング穴2に挿入されるまで行われる(図5(B)参照)。
次に、図5(C)に示すように、パッカ部22を拡張させる(拡張工程)。その後、測定ユニット30を端末管220に取り付け、湧水圧及び湧水流量の測定を行う。
端末管220をボーリング穴2から抜き出す際には、まず、パッカ部22を収縮させる(収縮工程)。その後、端末管220と接続管250との接続を解除して接続管250から端末管220を取り外す(取外工程)。
端末管220と接続管250とは、ワンタッチジョイント260(図4参照)により互いに接続される。そのため、取外工程において端末管220と接続管250とのワンタッチジョイント260による接続を解除するために端末管220に加えられるその軸方向の力は、隣り合う管体11どうしの正ねじの螺合及び末端の管体11と接続管250との正ねじの螺合を緩める方向には作用しない。したがって、隣り合う管体11どうしの螺合及び末端の管体11と接続管250との螺合を緩めることなく端末管220と接続管250との接続を容易に解除することができる。このように、端末管220を接続管250から容易に取り外すことができ、端末管220をボーリング穴2から容易に抜き出すことができる。
接続管250は、削孔管10と共にボーリング穴2内に残置され、回収されない。そのため、第1実施形態と比較して、接続管250のコスト分、湧水圧及び湧水流量の測定にかかるコストが増加する。しかし、接続管250は、削孔管10と端末管220を接続するための必要最小限の長さを有する。したがって、湧水圧及び湧水流量の測定にかかるコストの増加を軽減することができる。
以上の第2実施形態によれば、第1実施形態が奏する効果に加えて、以下の効果を奏する。
端末管220と接続管250とは、ワンタッチジョイント260(図4参照)により互いに接続される。そのため、取外工程において端末管220に加えられるその軸方向の力は、隣り合う管体11どうしの螺合及び末端の管体11と接続管250との螺合を緩める方向には作用しない。したがって、端末管220と接続管250との接続を容易に解除することができ、端末管220をボーリング穴2から容易に抜き出すことができる。
また、接続管250と削孔管10とは、隣り合う管体11どうしの接続と同じ正ねじにより接続される。そのため、削孔管10への接続管250の接続は、ボーリング穴2の削孔に伴う管体11の継ぎ足しと同じ要領で行うことができる。したがって、末端の管体11に端末管220を接続管250を介して容易に取り付けることができる。
また、接続管250は、管体11と比較して長さが短く、削孔管10と端末管220を接続するための必要最小限の長さを有する。したがって、湧水圧及び湧水流量の測定にかかるコストの増加を軽減することができる。
(第2実施形態の変形例)
次に、第2実施形態の変形例について説明する。
第2実施形態では、端末管220は、ワンタッチジョイント260により接続管250に接続される。これに代えて、本変形例では、端末管220は、逆ねじにより接続管250に接続される。つまり、接続管250と端末管220とを接続する着脱機構は、逆ねじである。したがって、圧力測定及び流量測定終了後に接続管250から端末管220を取り外す(取外工程)際には、接続管250に対して端末管220を右回りに回転させて逆ねじの螺合を解除することになる。
一方で、隣り合う管体11どうし、及び削孔管10と接続管250とは正ねじにより接続される。そのため、取外工程において端末管220と接続管250との逆ねじの螺合を解除するために端末管220に加えられる右回りの力は、隣り合う管体11どうしの正ねじの螺合及び末端の管体11と接続管250との正ねじの螺合を強める方向に作用する。したがって、隣り合う管体11どうしの螺合及び末端の管体11と接続管250との螺合を緩めることなく端末管220と接続管250の螺合を解除することができる。このように、端末管220を接続管250から容易に取り外すことができ、端末管220をボーリング穴2から容易に抜き出すことができる。
また、ボーリング穴2の削孔に伴う管体11の継ぎ足し、接続管250を介しての削孔管10への端末管220の取り付け、及び接続管250からの端末管220の取り外しは、全て同じ方向(右回り)への捻りで可能になる。したがって、端末管220を接続管250を介して削孔管10に容易に取り付けることができると共に接続管250から端末管220を容易に取り外すことができる。
ところで、第1実施形態の変形例のように一端にのみ逆ねじが形成された末端の管体11は特殊な部材であり高価である。しかし、湧水圧及び湧水流量の測定後には、このような特殊な部材である末端の管体11は、他の管体11と同様にボーリング穴2内に残置され、回収されない。本変形例では、一端にのみ逆ねじが形成された接続管250は、削孔管10と端末管220を接続するための必要最小限の長さを有する。したがって、湧水圧及び湧水流量の測定にかかるコストを低減することができる。
また、湧水帯3の位置を予測することは難しいため、削孔管10への端末管220の取り付けは、ボーリング穴2が湧水帯3に達した段階で行われる。そのため、第1実施形態の変形例のように末端の管体11の雄ねじ11bを逆ねじとする場合、ボーリング穴2が湧水帯3に達してから、一端に逆ねじが形成された管体11を継ぎ足し、その後、この管体11に端末管20を取り付ける。この場合、ボーリング穴2が湧水帯3に達してから、末端の管体11の長さ分、ボーリング穴2を更に削孔する必要があり、ボーリング穴2が湧水帯3に達してからボーリング穴2にパッカ部22を挿入して湧水圧及び湧水流量を測定するまでに時間がかかる。
本変形例では、接続管250が削孔管10の管体11と比較して短いため、短い削孔長で端末管220のパッカ部22をボーリング穴2に挿入することができる。したがって、ボーリング穴2が湧水帯3に達してから湧水圧及び湧水流量を測定するまでの時間を短くすることができる。
(第3実施形態)
次に、図6及び図7を参照して、第3実施形態に係る湧水圧又は湧水流量の測定装置300及び測定方法について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を主に説明し、第1実施形態で説明した構成と同一の構成又は相当する構成については、図中に第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
図6に示すように、測定装置300では、端末管320は、肉厚が両端部よりも薄い中間部322を有する。中間部322が塑性変形して拡張することにより、端末管320の外周面とボーリング穴2の内周面との間が閉塞される。換言すれば、中間部322がパッカ部として機能する。端末管320は、肉厚が均一の中空部材の中間部を切削加工等により薄くすることにより製造される。
端末管320の一方の端部の内周面には雌ねじ321aが形成される。雌ねじ321aは正ねじであり、雌ねじ321aと末端の管体11の雄ねじ11bとの螺合により端末管320が削孔管10の末端に接続される。
中間部322の外周には、弾性部材としてのゴム323が設けられる。中間部322が拡張した状態では、ゴム323は、ボーリング穴2の内周面の凹凸に合わせて変形し密着する。
なお、ゴム323は必須ではなく、中間部322が拡張時にボーリング穴2の内周面に密着し隙間2aからの湧水の流出を十分に止めることができる場合には、ゴム323を中間部322の外周に設けなくても良い。
次に、第3実施形態に係る湧水圧又は湧水流量の測定方法について、図7を参照して説明する。本実施形態に係る測定方法は、第1削孔工程、取付工程、第2削孔工程、拡張工程、圧力測定工程及び流量測定工程を含む。第1削孔工程、取付工程、第2削孔工程、圧力測定工程及び流量測定工程は、第1実施形態と略同じであるため、ここではそれらの説明を省略する。
図7(A)は、端末管320が取り付けられた削孔管10を用いてボーリング穴2を削孔する第2削孔工程を示している。第2削孔工程は、端末管320の中間部322がボーリング穴2に挿入されるまで行われる。
第2削孔工程後、インナーロッド51を削孔ビット40から取り外し、削孔管10及び端末管320から抜き出す。その後、図7(B)に示すように、端末管320に、中間部322を拡張させる拡張機360を挿入する。
拡張機360は、端末管320に挿入可能に形成される管体361と、管体361の外周に設けられる拡張部362と、を有する。拡張部362は、環状のゴムからなり、管体361の外周を覆うように管体361に固定される。拡張部362は、その内部にエア又は水が供給装置53(図7(C)参照)から供給されると拡張し、その内部からエア又は水が排出されると収縮する。このように、拡張部362は拡縮可能に形成される。
管体361は、例えば鋼管であり、拡張部362にエア又は水が送られても変形しないような強度を有する。したがって、拡張部362の拡張時に管体361が変形するのを防止することができる。なお、管体361は、鋼管に限られず、拡張部362の拡張時に変形しないような強度を有していれば、アルミニウムや他の材料から形成されていてもよい。
拡張機360は、拡張部362が端末管320の中間部322と対向する位置まで挿入される。
次に、図7(C)に示すように、供給装置53を用いて拡張部362へエア又は水を送り、拡張部362を拡張させる。これにより、拡張部362は、端末管320の中間部322を塑性変形させて拡張させる(拡張工程)。その結果、端末管320のゴム323(図6参照)がボーリング穴2の内周面に密着し、湧水の流出が止まる。
次に、図7(D)に示すように、拡張部362からエア又は水を抜き、拡張部362を収縮させる。その後、拡張機360を端末管320から抜き出す。これにより、拡張機360を再利用することができる。
次に、測定ユニット30(図6参照)を端末管320に取り付け、湧水圧及び湧水流量の測定を行う。湧水圧及び湧水流量のモニタリングの終了後、測定ユニット30を端末管320から取り外す。端末管320は、削孔管10と共にボーリング穴2内に残置される。
なお、上記の説明では、測定ユニット30は端末管320に取り付けられるが、図7(C)に示す状態において測定ユニット30を拡張機360の管体361に取り付けて湧水圧及び湧水流量の測定を行ってもよい。
以上の第3実施形態によれば、第1実施形態が奏する効果に加えて、以下の効果を奏する。
端末管320の一部である中間部322がパッカ部として機能するため、端末管320の外周に設けられるパッカ部が不要になり、パッカ部は、端末管320の外周から突出することなく端末管320に設けられる。そのため、ボーリング穴2の内周面とパッカ部の外周面との接触をより確実に防止しつつ端末管320を容易にボーリング穴2に挿入することができる。したがって、湧水圧及び湧水流量を容易に測定することができる。
また、中間部322の外周には、弾性部材としてのゴム323が設けられる。中間部322が拡張した状態では、ゴム323は、ボーリング穴2の内周面の凹凸に合わせて変形し密着する。そのため、端末管320による止水性を高めることができる。
(第3実施形態の変形例)
次に、第3実施形態の変形例について、図8を参照して説明する。図8は、変形例に係る端末管320の中間部322の横断面図であり、図8(A)は拡張前の中間部322を示し、図8(B)は拡張後の中間部322を示す。
図8(A)に示すように、拡張前の中間部322の外周には複数の窪み322aが形成されると共に内周には複数の突条322bが形成されており、中間部322は周方向に凹凸が繰り返される波状断面を有する。このような断面形状を有す端末管320は、丸管から冷間引き抜き法によって製造される。
中間部322の拡張時には、図8(B)に示すように、窪み322a及び突条322bが縮小するように中間部322が塑性変形し、中間部322の外径が拡大する。これにより、中間部322の外周面がボーリング穴2の内周面に密着し、中間部322の外周面とボーリング穴2の内周面との隙間が閉塞される。
本変形例に係る端末管320によれば、中間部322は、窪み322a及び突条322bが縮小するように塑性変形することによって拡張するので、拡張時における肉厚の減少を軽減することができる。したがって、中間部322の強度の低下を防止することができ、止水性を高めることができる。
なお、第3実施形態と同様に、中間部322の外周に弾性部材としてのゴムが設けられていてもよい。
(第4実施形態)
次に、図9及び図10を参照して、第4実施形態に係る湧水圧又は湧水流量の測定装置400及び測定方法について説明する。以下では、第1及び第3実施形態と異なる点を主に説明し、第1及び第3実施形態で説明した構成と同一の構成又は相当する構成については、図中に第1及び第3実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
図9に示すように、測定装置400は、肉厚が両端部よりも薄い中間部422を有する閉塞管420を備える。閉塞管420は、中間部422が塑性変形して拡張することにより、ボーリング穴2の内周面との間を閉塞する。換言すれば、中間部422がパッカ部として機能する。閉塞管420は、第3実施形態に係る端末管320(図6参照)と同様に、肉厚が均一の中空部材の中間部を切削加工等により薄くすることにより製造される。
閉塞管420は、削孔管10の末端から離間し、削孔管10に接続されていない。閉塞管420は、削孔管10とは別にボーリング穴2へ挿入される。
中間部422の外周には、弾性部材としてのゴム423が設けられる。中間部422が拡張した状態では、ゴム423がボーリング穴2の内周面の凹凸に合わせて変形し密着する。
なお、肉厚が両端部よりも薄い中間部422を有する閉塞管420に代えて、第3実施形態の変形例で説明した端末管320(図8参照)を用いてボーリング穴2の内周面との間を閉塞することも可能である。
次に、第4実施形態に係る湧水圧又は湧水流量の測定方法について、図10を参照して説明する。
図10(A)は、削孔管10を用いてボーリング穴2を削孔する削孔工程を示している。本実施形態では、ボーリング穴2が湧水帯3に達しても、管体11の継ぎ足しや削孔管10の末端への端末管320の取り付けを行うことなく、削孔を継続し、削孔管10の全体をボーリング穴2内に挿入する。
次に、インナーロッド51を削孔ビット40から取り外し、削孔管10から抜き出す。その後、図10(B)に示すように、閉塞管420をボーリング穴2内に挿入する。次に、図10(C)に示すように、閉塞管420に拡張機360を挿入し、拡張部362を拡張させる。これにより、閉塞管420の中間部422が塑性変形して拡張する(拡張工程)。その結果、閉塞管420の外周面とボーリング穴2の内周面との間が閉塞され、湧水の流出が止まる。またこのとき、閉塞管420は、その中心軸がボーリング穴2の中心軸に一致するように移動する。
次に、図10(D)に示すように、拡張部362を収縮させ、拡張機360を閉塞管420から抜き出す。次に、測定ユニット30(図9参照)を端末管320に取り付け、湧水圧及び湧水流量の測定を行う。湧水圧及び湧水流量のモニタリングの終了後、測定ユニット30を閉塞管420から取り外す。閉塞管420は、削孔管10と共にボーリング穴2内に残置される。
なお、上記の説明では、測定ユニット30は閉塞管420に取り付けられるが、図10(C)に示す状態において測定ユニット30を拡張機360の管体361に取り付け湧水圧及び湧水流量の測定を行ってもよい。
以上の第4実施形態によれば、以下の効果を奏する。
閉塞管420の一部である中間部422がパッカ部として機能するため、閉塞管420の外周に設けられるパッカ部が不要になり、パッカ部は、閉塞管420の外周から突出することなく閉塞管420に設けられる。閉塞管420の外周からパッカ部が突出しないので、ボーリング穴2に対して閉塞管420を正確に位置合わせしなくてもパッカ部の外周面とボーリング穴2の内周面との接触を防止しつつボーリング穴2に容易に挿入することができる。したがって、湧水圧及び湧水流量を容易に測定することができる。
なお、本第4実施形態では、削孔管10を用いてボーリング穴2を削孔する方法とは異なる方法でボーリング穴2を削孔してもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
上述の異なる実施形態で説明した構成どうしを組み合わせたり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせることも可能である。例えば、削孔ビット40、管体11、端末管20,220,320の雄ねじ、雌ねじの配置を相互に違えた構成としてもよい。
上記各実施形態では、測定装置100,200,300,400は、湧水圧及び湧水流量を測定するが、湧水圧又は湧水流量のいずれか一方を測定するものであってもよい。例えば、湧水圧を、測定装置100,200,300,400を用いて測定し、湧水流量は別の装置を用いて測定してもよい。同様に、湧水流量を、測定装置100,200,300,400を用いて測定し、湧水圧は別の装置を用いて測定してもよい。