JP6826040B2 - 安全かつ効果的な血栓溶解(Thrombolysis)のための方法および組成物 - Google Patents

安全かつ効果的な血栓溶解(Thrombolysis)のための方法および組成物 Download PDF

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Description

本発明は、安全かつ効果的な血栓溶解(Thrombolysis)のための方法および組成物に関する。
背景
血栓症は、血管内に血栓(血栓(thrombus))が生じ、その血栓が、循環系を通る血流を妨げる場合に発症する。血管が傷つけられると、身体は、血小板とフィブリンを使って血栓を形成して傷ついた血管をふさぎ、失血を防ぐ。この過程を止血と呼ぶ。血管が傷ついていない場合であっても、ある状況の下で、体内に血栓が生じることがある。血栓は、主として、凝集した血小板と架橋フィブリンのメッシュとからなり、フィブリンは、血液中のフィブリノーゲンの天然高分子である。血栓が、組織への血流を減少させるほど大きい場合、低酸素症または無酸素症を発症し、組織の損傷または組織の壊死につながる場合がある。動脈系の場所、すなわち、心臓、脳、または脚、に依存して、血栓は、心臓発作、脳卒中、または末梢性壊疽を誘発し得る。静脈循環において、同様の過程が、血栓静脈炎(深部静脈血栓症)または肺塞栓症の原因となり得る。同時に、これらの心血管系疾患は、先進諸国において、主要な死因および身体障害の原因となっている。
血栓溶解は、たいていの場合、血栓溶解薬を使用して、疾病を引き起こしている血栓を溶解し、血流を回復させることを必要とする。血栓溶解薬、例えば、現在用いられているtPAおよびその誘導体は、プロ酵素であるプラスミノーゲンを活性化してプロテアーゼであるプラスミンにすることによって機能し、このプラスミンが、血栓中のフィブリンメッシュを分解して血栓を可溶化し、その結果、閉塞した血管を通る血流を回復させる。しかしながら、現在の血栓溶解薬は、傷口をふさぐ止血フィブリンの分解も引き起こし、また、血漿中に、3種の凝固因子、すなわちフィブリノーゲン、第5因子、および第7因子(血友病因子)、を分解するプラスミンも生じさせる。よって、現在の血栓溶解療法は、血友病様の副作用による出血または止血フィブリンの分解による出血を生じさせるリスクを抱えている。このことによって、治療に対する適格患者の数に重大な制約が課され、血栓溶解薬の使用可能用量が制限されている。その結果、脳卒中患者のうち治療を受けるのはわずか約5%だけであり、この治療の有効性は限定的である。
脳卒中は、脳内の血栓、または脳内の出血血管のいずれかによって引き起こされ得る。しかしながら、脳卒中の特異的原因を適切に診断するためには、CTスキャンまたはMRIが必要であり、これらがすぐに利用できない場合には、治療が遅れる可能性がある。このような適切な診断がない場合、組織プラスミノーゲン活性化因子(「tPA」)などの血栓溶解剤の投与は、非常に危険である可能性がある。仮に、偶然、原因が血栓ではなく出血であった場合、脳出血を起こしている患者へのtPAまたは他の血栓溶解性薬剤の投与は、致命的な結果となり得る。
概要
本開示は、少なくとも部分的には、tPAとプロウロキナーゼ変異体(「proUK変異体」または「mproUK」)の特異性が異質で異なるということが、それぞれを少ない用量で併用すると、例えば、脳卒中(stoke)または急性心筋梗塞(「AMI」)の治療において、どちらか一方を単独で(単剤療法)、高用量(最大の血栓溶解速度が得られるが、出血性合併症のリスクが高い)で用いた場合に可能な速さと安全性に比べて、より速く、より安全な(すなわち、より特異的で、出血性合併症の発生率がより低い)血栓溶解が引き起こすことを意味する、という発見に基づく。
MproUKは、プロウロキナーゼの300番目のアミン酸位置における、リジンからヒスチジンへの置換(Lys300→His)を含んでいてもよく、本明細書において「M5」と呼ばれる。mproUKは、proUKと同様に、プロ酵素、すなわち、活性酵素の不活性な前駆体である。mproUKは、その酵素形態である変異ウロキナーゼまたはmUKが、ウロキナーゼ(UK)とは異なり、血漿インヒビター、すなわちC1インヒビターによって阻害されるという点でproUKとは異なり、このことが、必要な用量がより低いことに加えて、pro−UKで見られる出血性の副作用(これは、UKに起因し、血漿中には、UKに対する十分な量のインヒビター(プラスミノーゲン活性化因子インヒビター−1、別名PAI−1)が存在しない)の低減を助長する。
脳卒中またはAMIの患者にとって、血栓溶解および再灌流に要する時間は、臨床成績および生存率に重大な意味がある。このことは、治療には、予備的な診断試験を行うことなく、病院外で行うのに十分な安全性がなければならないことを意味する。しかしながら、これは、本明細書に記載されている新たな方法による場合のように、出血性のリスクが大幅に減少しているか、出血性のリスクが解消している場合にのみ可能であり、前記した本明細書に記載されている新たな方法には、低用量のtPA(例えば、5.0mg未満のボーラス、例えば、4.5mg以下、4.0mg以下、3.5mg以下、3.0mg以下、2.5mg以下、または2.0mg以下のボーラス)と、低用量のmproUK(例えば、60〜90分間(例えば、60分間、70分間、80分間、または90分間)にわたる、60〜120mg/時の速度での注入、例えば、60〜90mg/時、例えば、60mg/時、65mg/時、70mg/時、75mg/時、80mg/時、85mg/時、または90mg/時の速度での注入)との併用投与が含まれる。
所与の患者において、内因性のC1インヒビター濃度が不十分である場合、C1インヒビターを、新たな方法において、有効量のC1インヒビター、例えば、CINRYZE(登録商標)、CETOR(登録商標)、BERINERT(登録商標)、およびRUCONEST(登録商標)などの市販のC1インヒビターを投与することによって補うことができる。C1インヒビターは、mproUKから変異UKへの何らかの程度の変換が起こる場合に備える追加的な予防措置であるが、必要とされるmproUKが低用量であること、およびC1インヒビターが急性期反応物質であり、心臓発作または脳卒中の直後に身体によって自発的に上昇することから、C1インヒビターは必須ではないことがあり得る。
第1の態様において、本発明は、対象の、例えば、脳卒中または急性心筋梗塞(AMI)の症状があるヒト患者の、付随する出血性副作用が最小であると同時に、血栓溶解速度が最大である処置方法を提供し、該方法は、(a)脳卒中の原因を決定することなしに、脳卒中またはAMIの1つまたは複数の症状を観察することによって、脳卒中またはAMIを起こしている可能性がある対象を特定すること、および(b)小用量、すなわち、5mg未満の組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)を含有する、例えば、2.0mg、2.5mg、3.0mg、3.5mg、4.0mg、または4.5mgのtPAを含有する第1の組成物のボーラスを対象に投与し、続いて、低用量のプロウロキナーゼ変異体(mproUK)を含有する第2の組成物を、60〜90分間にわたり、例えば、60分間、65分間、70分間、75分間、80分間、85分間、または90分間にわたり、60〜120mg/時の低投与速度で、例えば、60mg/時、70mg/時、75mg/時、80mg/時、85mg/時、90mg/時、100mg/時、または120mg/時で注入することで、静脈内注入することを含み、該方法において、付随する出血性副作用が最小であることと同時に、最大の血栓溶解速度が達成される。
これらの方法のいくつかの実施形態において、付随する出血性副作用が最小であることは、対象の血液におけるフィブリノーゲンの分解度が約30%未満であること、例えば、27.5%未満、25%未満、22.5%未満、または20%未満であること、として決定することができる(これに対して、いずれかの組成物単独による単剤療法では、フィブリノーゲンの分解度は、約50〜約80%である)。いくつかの実施形態において、最大の血栓溶解速度が達成されたことは、心筋梗塞における血栓溶解(TIMI)が2以上であることによって示される。他の実施形態において、最大の血栓溶解速度が達成されたことは、対象における少なくとも1つの血栓の質量の約50%の溶解が、75分以内、例えば、70分以内、60分以内、50分以内、40分以内、30分以内に実現したことによって示される。
これらの方法において、プロウロキナーゼ変異体は、プロウロキナーゼの300番目のアミン酸位置における、リジンからヒスチジンへの置換(Lys300→His)を含んでいてもよい。本方法は、第1の組成物の投与後、5分間以内、10分間以内、または15分間以内に第2の組成物の投与を開始することを含んでもよい。いくつかの実施形態において、第1の組成物と第2の組成物とは、一緒になって、対象における少なくとも1つの血栓の質量の50%を、1時間未満で溶解する。
ある実施形態において、本方法は、C1インヒビターのボーラスを含む第3の組成物を、対象に投与することをさらに含んでもよい。第3の組成物は、第2の組成物の投与前、または第2の組成物の投与とほぼ同時に、例えば、5分以内に、対象に投与してもよい。ある実施形態において、第3の組成物は、対象の血液中のC1インヒビター濃度が約500〜約750μg/mlに到達するのに十分な量で投与される。いくつかの実施形態において、第3の組成物は、C1インヒビターの、500〜1500mgのボーラスである。
これらのいくつかの方法において、第1の組成物と第2の組成物とは、一緒になって、C1インヒビター存在下、tPA単独またはプロウロキナーゼ単独のいずれか一方の単剤療法と比較して、フィブリノーゲンの分解が30%未満の状態で、血栓を溶解する。
別の態様において、本開示は、キットを提供し、該キットは、第1の容器に入った、2〜5mgの組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)を含有する第1の組成物と、第2の容器に入った、60〜120mgのプロウロキナーゼの300番目のアミン酸位置において、リジンからヒスチジンへの置換(Lys300→His)を有するプロウロキナーゼ変異体(mproUK)を含有する第2の組成物とを含む。これらのキットにおいて、第1の組成物は、ボーラスとしての投与に適するように製剤化されていてもよく、および/または第2の組成物は、静脈内注入に適するように製剤化されていてもよい。ある実施形態において、キットは、500〜1500mgのC1インヒビターを含有する、例えば、ボーラスとしての投与に適するように製剤化された、第3の組成物をさらに含んでもよい。
別の態様において、本開示は、本明細書に記載されたいずれかの方法で使用するための組成物を提供する。ある実施形態において、該組成物は、脳卒中または急性心筋梗塞(AMI)の症状がある対象に、付随する出血性副作用が最小であると同時に、血栓溶解速度が最大である処置を施すために使用するためのものである。これらの組成物は、5mg未満の組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)を含有する第1の組成物を含み、該第1の組成物は、ボーラスの投与レジメンで対象に投与され、または投与するために調製され、かつプロウロキナーゼ変異体(mproUK)を含有する第2の組成物を含み、前記第2の組成物は、第1の組成物の投与に続き、60〜120mg/時で60〜90分間にわたる投与レジメンで、静脈内注入によって対象に投与され、または投与するために調製される。ここで、該対象は、第1の組成物の投与に先立って、脳卒中の原因を決定することなしに、脳卒中またはAMIの1つまたは複数の症状を観察することによって、脳卒中またはAMIを起こしている可能性があるものと特定され、付随する出血性副作用が最小であることと同時に、最大の血栓溶解速度が達成される。これらの組成物は、本明細書に記載された全ての特徴および要素を含み得る。
用語「処置」または「治療処置」は、1種または複数の医薬の対象への投与、または対象の身体に対する医学的処置の実行を意味する。用語「治療処置」には、対象が摂取していることができる1種または複数の医薬の用量または頻度の調整(例えば、増加または減少)、1種または複数の新たな医薬の対象への投与、または対象の治療計画からの1種または複数の医薬の除去も含まれる。
本明細書で用いられる場合、「対象」または「患者」は、ヒトである。
本明細書で用いられる「有効量」は、重大な出血性の副作用または血友病様の副作用を引き起こすことなく、血栓溶解を実現するのに十分な量をいう。有効量は、1もしくは複数の投与、1もしくは複数の適用、または1もしくは複数の用量で投与し得る。医薬組成物の治療有効量(すなわち、有効な用量)は、選択された医薬組成物に依存する。
血栓の「最大溶解速度」は、本明細書において、tPA、proUK、またはmproUKを最大有効用量(すなわち、追加薬を加えても、より速い血栓溶解が実現できない薬物の用量であり、例えば、最大有効用量では血栓溶解速度のプラトーが見られる)で用いた単剤療法によって実現し得る血栓溶解速度と少なくとも同等の速さであり、いかなる付随する出血性副作用も伴わない血栓溶解速度と定義される。例えば、tPAまたはM5を用いた単剤療法によって実現される最大溶解速度は、例えば、30%を超えるフィブリノーゲンの分解度によって示されるように、患者に重大な出血を生じさせるであろうことに留意することが重要である。驚くべきことに、本治療方法は、出血性副作用を伴わずに(フィブリノーゲンの分解度が30%未満であることによって示され得る)最大溶解速度を実現し、過剰な出血を伴わないであろうし、臨床上許容されるであろう。
別段の定めがないかぎり、本明細書で用いられる全ての専門用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者が一般に理解している通りの意味を有する。本明細書に記載された方法および材料と類似または同等の方法および材料を、本発明の実施および試験に使用しうるが、適切な方法および材料を以下に説明する。本明細書で言及する全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合、定義を含めて、本明細書が優先する。加えて、材料、方法、および実施例は例示にすぎず、限定を意図するものではない。
本発明のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から、および特許請求の範囲から明らかであろう。
図1Aは、3つの用量(1μg/ml、2μg/ml、または3μg/ml)のtPAによる、フルオレセイン標識凝固血漿の溶解を示す折れ線グラフである。飽和用量において、tPAが50%の凝固血漿を溶解するのに要した時間は、60分間である。 図1Bは、血栓溶解終了時に残存したフィブリノーゲンを示す棒グラフであり、ベースライン(BL)に対する割合(パーセント)として表す。 図2Aは、3つの用量(10μg/ml、12.5μg/ml、または15μg/ml)のmproUK(M5)による、フルオレセイン標識凝固血漿の溶解を示す折れ線グラフである。飽和用量において、M5が50%の凝固血漿を溶解するのに要した時間は、50分間である。 図2Bは、血栓溶解終了時に残存したフィブリノーゲンを示す棒グラフであり、ベースライン(BL)に対する割合(パーセント)として表す。 図2Cは、mproUK(M5)がフルオレセイン標識凝固血漿を溶解するのに要する時間が、C1インヒビター(750μg/ml)の影響を受けなかったことを示す折れ線グラフである。 図2Dは、M5によるフィブリノーゲンの溶解が、C1インヒビター(750μg/ml)によって阻害されたことを示す棒グラフである。 図3は、tPA(0.2μg/ml)と、M5(6μg/ml)との組み合わせ(丸)による最大の血栓溶解速度を示す折れ線グラフである。この組み合わせは、0.2μg/mlのtPA(四角)単独、または6μg/mlのM5(三角)単独の場合よりも、はるかに速い血栓溶解を引き起こした。結果は、3連で行った1回の実験の代表例である。 図4Aは、tPA(0.2μg/ml)と、M5(6μg/ml)との組み合わせ(丸)による血栓溶解を示す折れ線グラフである。この組み合わせは、0.2μg/mlのtPA(四角)単独、または6μg/mlのM5(三角)単独の場合よりも、はるかに速い血栓溶解を引き起こした。 図4Bは、血栓溶解終了時に残存した血漿フィブリノーゲンを示す棒グラフであり、ベースライン(BL)の血漿フィブリノーゲンに対する割合(パーセント)として表す。結果は、3連で行った10回の実験の代表例である。 図5Aは、C1インヒビター(750μg/ml)を加えた場合の、tPA(0.2μg/ml)と、M5(6μg/ml)との組み合わせによる最大の血栓溶解速度を示す折れ線グラフである。前記の組み合わせにC1インヒビターを加えることによって、溶解は阻害されなかったが、tPA単独による溶解は阻害された。 図5Bは、血栓溶解終了時に残存した血漿フィブリノーゲンを示す棒グラフであり、ベースライン(BL)の血漿フィブリノーゲンに対する割合(パーセント)として表す。C1インヒビターは、フィブリノーゲンの溶解を減衰させた。 図6は、0.2μg/mlより高用量のtPAが、6μg/mlのM5と組み合わせた場合に、血栓溶解速度のさらなる促進をしないことを示す折れ線グラフである。 図7は、0.2μg/mlのtPAと、6μg/mlのM5との組み合わせ(「tPA+M5」)、0.2μg/mlのtPA(「tPA 0.2」)、6μg/mlのM5(「M5 6」)、15μg/mlのM5(「M5 15」)、および3μg/mlのtPA(「tPA 3」)によって、50%の凝固血漿を溶解するために必要とされる時間(平均)を示す棒グラフである。データは、多数の実験(実験回数を、各バーの上に示す)から収集した。 図8は、異なる試験条件における、0.2μg/mlのtPAと、6μg/mlのM5との組み合わせによる血栓溶解終了時に残存したフィブリノーゲン(%BL)を示す棒グラフであり、該試験条件は、(1)2mlの血漿中、(2)2mlの血漿+C1インヒビター(500μg/ml)、および(3)5mlの血漿中、である。血漿量(体積)が増加すると、フィブリノーゲンの分解は自然に減少するため(ヒト対象中の血漿量(体積)は、平均約3000mlである)、in vivoではC1インヒビターを使用する必要はないと思われるが、in vitro試験においては、in vivoの条件により近似させるために、C1インヒビターの使用は有用である。 図9は、血栓が存在しない場合には、0.2μg/mlのtPAと、6μg/mlのM5との組み合わせによるフィブリノーゲンの溶解が、少なくとも3時間は起こらないことを示す折れ線グラフであり、これは、in vivoにおいて、血栓が存在しない場合には、前記の組み合わせもまた不活性であろうことを示唆する。 図10Aは、ラットモデルにおける、脳内出血後の血腫量を示す棒グラフである。血腫量は、投薬後2時間におけるヘモグロビン量によって測定した。C1インヒビター/M5を投薬した動物と、生理食塩水/生理食塩水を投薬した動物との間に有意差がない(p=0.5194)ことが確認された。ラットが、M5/UKのインヒビターであるC1インヒビターを欠いているため、C1インヒビターが加えられた。 図10Bは、ラットモデルにおける、脳内出血後の出血量に関する組織学的な定量の棒グラフである。C1インヒビター/M5を投薬した動物と、生理食塩水/生理食塩水を投薬した動物との間に、出血量に関して有意差がない(p=0.6899)ことが確認された。
詳細な説明
本開示は、少なくとも部分的には、小用量の組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)と、低用量のプロウロキナーゼ変異体(「pro−UK変異体」または「mproUK」)(例えば、プロウロキナーゼの300番目のアミン酸位置において、リジンからヒスチジンへの置換(Lys300→His)を含むmproUKであり、本明細書において「M5」と呼ばれる)との併用投与によって、最大の血栓溶解速度で血栓溶解(例えば、約75分間以内に、心筋梗塞における血栓溶解(TIMI)スコアが2以上)を実現して血流増加を達成することができ、かつ予期される出血性のリスクを伴わないという発見に基づく。脳卒中または急性心筋梗塞の患者にとって、血栓溶解および再灌流に要する時間は、臨床成績および生存率に重大な意味がある。これを可能にするためには、処置には、患者が入院加療を受ける前に処置を受けられるように、十分な安全性もなければならない。本発明は、脳卒中または急性心筋梗塞を起こしている可能性がある対象の処置方法を提供する。
これらの方法は、時間のかかる診断手順による遅れなしに、脳卒中または急性心筋梗塞の症状がある患者の処置に使用することができ、それによって、そのような患者の臨床成績および生存率が向上する可能性が増大する。小用量のtPAと、低用量のmproUKとの併用によってフィブリン溶解を実現することができるため、高用量のプラスミノーゲン活性化因子レジメンに伴う非特異的なプラスミノーゲンの活性化および血友病様の副作用が最低レベルまで低減される一方で、なおも最大の血栓溶解速度が実現される。また、本発明は、tPAを含有する第1の組成物と、mproUKを含有する第2の組成物とを含む、本明細書に記載された方法に使用するためのキットも提供する。
血栓は、プロテアーゼであるプラスミン(これは、プラスミノーゲンの活性化した形態である)によって、3つのステップで溶解される。ステップ1:血漿中に存在するプラスミノーゲンが、インタクトなフィブリン塊の、tPA結合サイトに隣接するDドメインにある、特異的な結合サイトに結合する。tPAが、いわゆる「三重複合体」(これは、フィブリン、プラスミノーゲン、およびtPAから構成される)のプラスミノーゲンを活性化し、フィブリン溶解を惹起する。ステップ2:プラスミンが、フィブリンを、リジン残基の後ろで優先的に切断し、新たなプラスミノーゲン結合サイトであるカルボキシ末端リジンを生じさせる。これらの新たに生じた結合サイトの1つは、フィブリンのEドメインにあるC末端の3個のリジンからなる高親和性の結合サイトである。プラスミノーゲンが、フィブリンのEドメインにあるこのサイトに結合した場合、プラスミノーゲンは特別な立体構造変化を受け、それによってpro−UKおよびmproUKが有する固有の触媒活性による活性化を受けることが可能となる。ステップ3:pro−UK/mproUKによるプラスミノーゲンの活性化は、プラスミンによる、互恵的な、pro−UK/mproUKの、酵素であるウロキナーゼ(UK)/mUKへの活性化を伴う。UK/mUKは、次いで、残りのフィブリン結合プラスミノーゲンを活性化し、それによってフィブリン溶解を完了させる(米国特許第5,055,295号明細書;米国特許第5,472,692号明細書;米国特許第5,626,841号明細書;米国特許第5,759,542号明細書;米国特許第7,074,401号明細書;米国特許第7,837,992号明細書;米国特許第8,187,592号明細書;Pannell、J.Clin.Invest.81:853〜859、1988;Zarich、J Am Coll Cardiol 1995;26:374〜379;Lee、AJNR Am J Neuroradiol 25:1470〜1475、2004、を参照のこと)。
本発明者は、本明細書に記載された新たな併用療法の方法が、どのようにして上記のフィブリン溶解ステップによって裏付けられるのかを発見した。フィブリンに結合するのはtPAだけなので、tPAだけが、効率的にステップ1を遂行することができ、プラスミノーゲンと共に三重の複合体を形成し、これはインタクトなフィブリンによって、またはフィブリンフラグメントDによって特異的に促進される。Pro−UK/mproUKは、通常の条件下では、in vivoでフィブリンに結合しない(すなわち、Pro−UK/mproUKは、非常に高い、非特異的な用量においてのみフィブリンに結合できる)。よって、ステップ2は、pro−UK/mproUKによってのみ効率的に遂行される。これは、pro−UK/mproUKは、プラスミノーゲンが、分解されたフィブリンのフィブリンEドメインに結合した場合に形成するプラスミノーゲンの立体構造(confirmation)に対して、高い基質親和性を有するためである。フィブリンフラグメントEは、tPAに対して作用を及ぼさず(tPAは、フィブリンEドメインに結合しない)、proUK/mproUKによるプラスミノーゲンの活性化を促進するだけである。よって、ステップ3もまた、pro−UK/mproUKによってのみ促進される。これは、proUKが、フィブリンのEドメインに結合したプラスミノーゲンを活性化した場合、互恵的な、プラスミンによる、proUKのUKへの活性化が起こり、UKが、残りのフィブリン結合プラスミノーゲンを活性化することによって、溶解を完了させるためである(対照的に、tPAは活性化を受けないが、これは、その1本鎖または2本鎖形態が同じ活性を有するためである)。tPAがステップ2および3を遂行し得る手段は、高い出血リスクを伴う、高くて非特異的な用量によるものだけである。
本発明者は、小用量のtPA(標準的な用量である100mgのわずか2〜5%)と、低用量のmproUK、例えば、M5(単剤療法の用量の40〜50%)との組み合わせによって、最大の血栓溶解速度と、約30%未満(例えば、約25%未満または約20%未満)という最小限のフィブリノーゲン分解度で、フィブリン溶解を達成することができることを発見した。このtPA−mproUKの組み合わせは、tPAまたはmproUKの極量での単剤療法によって実現し得る溶解の最大速度と少なくとも同等の最大溶解速度で、しかしながら、安全で臨床上許容される、はるかに低いフィブリノーゲン分解度(このような低い分解度では出血のリスクが生じないためである)で、フィブリン溶解を実現し、これは知られている単剤療法では実現することができない。よって、本明細書に記載された本方法は、主張されているあらゆる相乗効果的な組み合わせ(それらは、新たに発見された、最大の血栓溶解速度と共に、患者にとって最大限の安全性、すなわち、付随する出血性副作用が最小である、という二重の利点を含まないであろう)よりも明らかに優れた血栓溶解を提供する。
血栓の「最大溶解速度」は、本明細書において、tPA、proUK、またはmproUKを最大有効用量(すなわち、追加薬を加えても、より速い血栓溶解が実現できない薬物の用量であり、例えば、最大有効用量では血栓溶解速度のプラトーが見られる)で用いた単剤療法によって実現し得る血栓溶解速度と少なくとも同等の速さである血栓溶解速度と定義される。しかしながら、例えば、tPAまたはM5を用いた単剤療法によって実現される最大溶解速度は、例えば、30%を超えるフィブリノーゲンの分解度によって示されるように、患者に重大な出血を生じさせるであろうことに留意することが重要である。驚くべきことに、本明細書に記載された新たな方法によって実現される「最大限の安全性」は、フィブリノーゲンの分解度が30%未満であることと定義され、それは過剰な出血を伴わないであろうし、臨床上許容されるであろう。
例えば、tPA−mproUKの組み合わせは、少なくとも1つの血栓、例えば複数の血栓の質量の50%を、1時間未満、例えば、48分間、50分間、55分間、60分間、65分間、70分間、75分間、または80分間で溶解することができる。この組み合わせは、使用する用量を著しく低くすることも可能にし、はるかにフィブリン特異的であり、より安全で、かつより経済的である。mproUK、例えば、M5は、ネイティブのpro−UK代わりに用いられる。なぜなら、mproUKは、治療用量において血漿中でより安定であり、フィブリンに特異的なプロ酵素形態のまま残るのに対して、ネイティブのpro−UKは、自然発生的にウロキナーゼに変換する傾向があり、このウロキナーゼは、出血性合併症の原因となり得る非特異的なプラスミノーゲン活性化因子であるためである。これは、pro−UKが,ヨーロッパでEMEAにより販売承認を拒絶された理由であり、その後、pro−UKの開発は、米国でも中止された。
以下の実施例に示すように、血栓が存在しない血漿中でインキュベートした場合、ごく小用量で用いられたtPA−mproUKの組み合わせにおいて、フィブリノーゲンの分解は、全く誘発されず、したがって、前記の組み合わせは、凝固または創傷の治癒に対して、影響がほとんど、または全くないであろうことが予期される。加えて、M5はプロ酵素であり、活性化にはフィブリンが必要であることから、出血がみられる場合であっても、例えば、出血性の脳卒中の間でも、安全であることが予期される。さらに、C1インヒビター(薬剤として入手可能である)は、必要であれば、フィブリン溶解の間(in vitroで行われる試験中ならびにin vivoにおける治療中)に形成され得るあらゆるmUKの、あらゆる非特異的な活性をクエンチするために使用し得る(Pannell,J Thromb Haemost.5(5):1047〜54,2007)。このC1インヒビターの効果は、UKとは共通するものではなく、proUK変異体に特有のものである。
臨床的に、前記のtPA−mproUK併用療法は、時間のかかる診断手順(これは、脳卒中の治療におけるtPAの使用に伴う重大な出血のリスクために、現在では必須である)による遅れなしに、脳卒中または心臓発作の症状がある患者の処置に使用することができる。処置は、疑わしい状況、または救急車内で施すことができる。このような患者の生存および臨床成績において、時間には極めて高い重要性があるため、本併用療法は、現在承認されており利用できる唯一の療法である単剤療法としてのtPAよりも、高い効力と予後をもたらす。脳卒中の治療におけるtPA単剤療法の有用性については、依然議論があり、その認可には近年疑問がだされている(Sandercock P,Lancet.2014 Aug 23;384(9944):660〜1)。mproUKは、「悪性」の閉塞性の血栓におけるプラスミノーゲンを優先的に活性化する一方、「良性」の創傷をふさぐ血栓におけるプラスミノーゲンをスペアリングする。したがって、止血部位を開放してしまうリスクはほとんどない。対照的に、tPAは、上記のステップ1に記載されているフィブリン溶解のように、インタクトなフィブリンから作られているこのような部位を標的にする。血漿中のフリーなプラスミノーゲンは、C1インヒビターの作用によっても保護されているため、血友病様の状態を誘発するリスクはより小さい。
本方法の最大の血栓溶解速度は、in vivoで決定することができ、例えば、血管の再開通を評価するための標準的な技法によって決定することができる。例えば、血管閉塞のグレードは、心筋梗塞における血栓溶解(TIMI)スコアの類推によって評価することができ、0というTIMIスコアは完全な閉塞であり、1というTIMIは最小限の血流であり、2というTIMIは部分的な血流(再開通)であり、3というTIMIスコアは完全な血流である。TIMI研究グループは、梗塞した動脈のコントラスト不透明化速度の視覚的な評価に基づいて、この冠動脈の血流に関するグレード付けスコアを開発した(例えば、The TIMI Study Group.The Thrombolysis in Myocardial Infarction(TIMI)trial:phase I findings.N Engl J Med.1984;33:523〜530、およびThe TIMI Study Group.Comparison of invasive and conservative strategies after treatment with intravenous tissue plasminogen activator in acute myocardial infarction:results of the Thrombolysis in Myocardial Infarction(TIMI)phase II trial.N Engl J Med.1989;320:618〜627(これらは、TIMIグレード付けスコアの説明に関して、参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。
TIMIフローグレードは、冠動脈再灌流療法の前後における心筋血流の半定量的評価のための、ならびに脳卒中の療法決定のための、標準となっている。TIMIフローグレード2と3は、どちらも、再灌流が成功したことを示すと考えられている。よって、本明細書で用いられる場合、最大の血栓溶解速度は、ヒト対象または患者において、約75分以内またはそれ未満で、例えば、70分以内、65分以内、60分以内、55分以内、50分以内、45分以内、40分以内、35分以内、または30分以内に、2以上のTIMIスコアを実現することを伴うことが予期される。
プラスミノーゲンの立体構造、ならびに「良性」の血栓と「悪性」の血栓との差異
プラスミノーゲンは、活性なプラスミンに変換する前に、少なくとも3種の異なる立体構造を取り得る。第1の立体構造は、ネイティブな「閉構造」の立体構造であり、すなわち、フィブリンには全く結合しておらず、プラスミノーゲンは、血液中に、この第1の立体構造で存在する。ウロキナーゼは、この第1の立体構造を取っているプラスミノーゲンを活性化することができ、非特異的な出血性素因、すなわち、血友病様の状態を生じさせ得る。pro−UKは治療用量で不安定であり、治療濃度で容易にウロキナーゼに変換するため、pro−UKもまた、血友病様の副作用を生じさせ得る。
フィブリンに結合した場合、プラスミノーゲンは、2種または3種の異なる「開」構造の立体構造を取ることができ、良性の創傷治癒性の血栓と、悪性の閉塞性の血栓とを見分けるための基準をもたらす。これらの第1番目は、インタクトなフィブリンのDドメイン内にある内部リジンにプラスミノーゲンが結合した場合に生じる、プラスミノーゲンの立体構造である。これらの第2番目は、ステップ2に記載されているフィブリン溶解のように、あるフィブリン分解の後にのみ露出するフィブリンフラグメントEにある、C末端の3個のリジンにプラスミノーゲンが結合した場合に生じる、プラスミノーゲンの立体構造である。
止血フィブリンが形成されて負傷をふさぐ場合、止血フィブリンは、包帯のようにふるまい、血流の障害を引き起こすことはない。このような止血作用のある血栓中のインタクトなフィブリンは、Dドメイン内に位置する内部プラスミノーゲン結合サイトのみを有し、それによってフィブリンに結合したこれらの第1番目の立体構造が生じる。この立体構造において、プラスミノーゲンは、tPA(そのフィブリン結合サイトは隣接している)による活性化を受けやすいが、pro−UKでは活性化されず、このpro−UKは、フィブリンに結合せず、フィブリンのEドメインによって生じる第2番目の立体構造によって基質に結合する。
血管内に血栓が形成された場合、血流を妨げ、または血流を止め、閉塞した血管壁からの局所的なtPA放出を誘発し、フィブリンの分解を引き起こす。フィブリンの分解によって、フィブリンフラグメントE上の、新たなプラスミノーゲン結合サイトが露出する。プラスミノーゲンが、フィブリンフラグメントE上の、この新たな結合サイトに結合する。Pro−UKは、フィブリンフラグメントEに結合したプラスミノーゲンを優先的に活性化する。
「良性」のフィブリン塊と、「悪性」のフィブリン塊との、この重要な差異を利用することによって、傷をふさぐ止血血栓を保護しながら、血栓溶解を効果的に実現することが可能となる。Pro−UK変異体は、pro−UKと同様の作用様式を有している。
第3番目のフィブリン結合プラスミノーゲンの立体構造は、プラスミノーゲンが単一のC末端サイトに結合した場合に現れ、フィブリンのγ鎖上に存在すると考えられている。
組織プラスミノーゲン活性化因子
組織プラスミノーゲン活性化因子は、血管壁を覆う内皮細胞に蓄えられているセリンプロテアーゼである。血栓が血管をふさいだ場合、血管壁からtPAが放出され、フィブリン塊を溶解する。
今日、ほとんどの治療的な血栓溶解は、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)およびその誘導体を使用して行われているが、tPAは、出血性副作用を引き起こし得る。例えば、150mgという用量の組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)は、優れた冠動脈血栓溶解をもたらすことが示されているが、容認できない頭蓋内出血の発生を伴うことから、より効果の低い、100mgという用量の採用を余儀なくされている(Braunwald,J Amer Coll Cardiol.9:467,1987;Grossbard,J Amer Coll Cardiol.9:467,1987)。急性心筋梗塞(AMI)患者の比較臨床試験において、経皮冠動脈インターベンション(PCI)の結果は、tPAの静脈内投与よりも著しく優れていたが、PCIは、よりコストがかかり、技術的な要求が厳しく、多くの時間を必要とする。この臨床成績は驚くべきものであったが、以下に示すtPAの特性によって説明することができる、(1)tPAの治療用量は、合併症である頭蓋内出血によって制限されている、および(2)tPAの効能は、比較的高い冠動脈再血栓率によって害されており、これにはトロンビン生成という血液学的な証拠がある(Verheugt,J Am Coll Cardiol 1996、27:766〜773;Gurewich、Circulation 1993、87:1759−1761;Rapold、Blood 1991、78:1490〜1495;Gulba、Lancet 1988、2:97;Gulba、Circulation 1991、83:937〜944)。
虚血性脳卒中において、AMIにおいて用いられる用量(Hacke,JAMA 1995,274:1017〜1025)と同等の用量のtPAを投与した場合、合併症である頭蓋内出血が20%発生するため、用量のさらなる減量が必要であった。AMIにおいてtPAと共にヘパリンが使用されるが、脳卒中においては再閉塞率が14〜31%であると報告されているため、ヘパリンの使用は排除される(Alexandrov、Neurology 2002,59:862〜867;Rubiera、Stroke 2005、36:1452〜1456;Saqqur、Stroke 2007;38:69〜74)。最終的には、アメリカ合衆国において、虚血性脳卒中患者のうち、tPAで治療を受けるのは、約2〜約5%だけである結果となっている(Kleindorfer、Stroke 2008;39:924〜928)。
tPAによって引き起こされる出血は、第一に、血管壁の負傷部位の修復に必要な止血フィブリンの溶解に関係すると考えられており、この出血は、通常潜在性で予測できず、しかしtPA用量に依存的である。proUK/M5は、上記したように、異なる作用様式に相応して、これらのサイトを温存する。
プロウロキナーゼおよびプロウロキナーゼ変異体
プロウロキナーゼ(pro−UK)は、血栓溶解薬としてはあまりよく知られていないが、急性心筋梗塞において、フェーズ3臨床試験が完了している(Michels R,J Thromb Thrombolysis 1995,2:117〜124;PRIMI Trial Study Group.Lancet 1989,1:863〜867;Tebbe U,J Am Coll Cardiol 1998,31:487〜493)。これらの試験において、Pro−UKは、冠動脈再血栓症を、ほとんど(5%)または全く誘発せず、トロンビン生成という血液学的な証拠は得られなかった(PRIMI Trial Study Group、Lancet 1989、1:863〜867;Weaver、J Am Coll Cardiol 1994、241:242〜1248)。残念なことに、pro−UKは、治療用量において、血漿中で、自然発生的な活性化を受けて、酵素形態である2本鎖ウロキナーゼ(tcUK)になりやすい。これが起こると出血リスクを招くため、欧米において、販売承認は拒絶され、pro−UKの開発は中止された。
pro−UKが不安定なのは、pro−UKがもつ、比較的高い内因性の触媒活性に関係がある。構造活性研究によって、触媒ドメインの297〜313番目のアミノ酸残基から構成される可動性ループ中にある荷電残基が、この活性に重要であることが明らかとなった。可動性ループ領域における変異原性により、pro−UKの内在的な活性の変化が生じる。内因活性が少ないpro−UK「可動性ループ」変異体の例は、米国特許第5,472,692号明細書に記載されており(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、例えば、Gly299→Ala変異体、Lys300→His変異体(「M5」または「M5変異体」として知られる)、Lys300→Ala変異体、およびGlu301→His変異体などである。
これらのpro−UK「可動性ループ」変異体の1種、すなわち、M5(Lys300→His)は、in vitroおよびin vivoの両方で試験され、ネイティブなpro−UKより著しく速く血栓を溶解することが示された(Liu et al.、Circulation Research,90:757〜763,2002)。一本鎖M5変異体の内因活性は、pro−UKの5の分の1であるため、M5は、血液中で、ネイティブなpro−UKよりも安定であり、活性酵素形態へ自然発生的な変換が起こりにくく、血友病様の副作用を生じさせにくいと思われる(Liu,Biochemistry 1996,35:14070〜14076)。2本鎖の酵素形態であるmproUK、例えば、M5の活性、およびmproUK、例えば、M5の作用様式は、ネイティブなpro−UKと同等のままである(Sun Z、J Biol Chem 1997,272:23818〜23823;Liu、Circu.Res.2002、90:757〜763)。M5のようなmproUKは、別の優れた特性を有する、すなわちmproUKは、内因性の血漿C1インヒビターによって阻害され得、mproUKによるフィブリン溶解を妨げることなく非特異的な副作用に対する保護をもたらす(Gurewich、J Thrombos Haemost、2006、4:1559〜1565;Pannell、J Thromb Haemost、2007、5:1047〜1054;Gurewich、Thromb Haemost、2009、102:279〜286)。重要なのは、米国特許第7,074,401号明細書(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているように、M5のようなmproUKは、通常は血栓溶解性の薬剤に付随するどのような出血性副作用も示さないことである。加えて、M5のようなmproUKは、米国特許第7,070,958号明細書(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている方法に従って合成することができる。
M5および他のmproUKは、(1)基本的に天然のヒトタンパク質である(ネイティブなpro−UKに対する相同性が99.8%である)、(2)抗原性(免疫原性)の反応がおこらない、および(3)天然に生じたヒトpro−UKおよびE. coliによる遺伝子組換えヒトpro−UKが、フェーズ3臨床試験において、約5,000人のヒト患者に対して既に安全に投与されていることから、ヒトへの投与に対して安全であることが期待される。
低用量のtPAおよびmproUKの併用療法
プラスミノーゲンの作用に対するtPAとpro−UKとの相補的な作用機序を利用することによって、本発明者は、小用量のtPA(標準的な用量である100mgの2〜5%、例えば、1.0mg、2.0mg、2.5mg、3.0mg、3.5mg、4.0mg、または4.5mgのボーラス)と、mproUK、例えば、M5の注入(単剤療法の用量の40〜50%、例えば、60〜120μg/mlで、60〜90分間にわたる注入)との組み合わせによって、最大の血栓溶解速度でフィブリン溶解を実現でき、tPA単独またはmproUK単独のいずれか一方による、最大有効用量での単剤療法によって達成できる最大の血栓溶解速度と少なくとも同等の速さである最大の血栓溶解速度が得られることを実証した(図1A〜5B)。例えば、tPA−mproUKの組み合わせは、血栓の質量の50%を、1時間未満、例えば、平均48分間で溶解することができる(図7、tPA+MF参照)。tPA単独、およびmproUK(M5)単独で、非常に高用量(例えば、3μg/mlのtPAまたは15μg/mlのmproUK(M5))において同等の溶解時間を実現することができる(図7)が、それらの用量において、プラスミノーゲンの非特異的な活性化と、その結果として、M5において約77%のフィブリノーゲン分解(図2B参照)、およびtPAにおいて約80%のフィブリノーゲン分解(図1B参照)が起こり、重大で臨床的に容認できない血友病様の副作用が生じる可能性がある。
mproUKは、血漿中でより安定であり、プロ酵素形態のまま残るのに対して、ネイティブなpro−UKは、自然発生的にウロキナーゼに変換し、血友病様の副作用を生じさせる傾向があるため、M5などのmproUKが、ネイティブなpro−UKの代わりに用いられる。よって、最大の血栓溶解速度は、tPAおよびmproUKの単剤療法の用量に対してほんの僅かな用量のtPA−mproUKの組み合わせによって実現することができる。
血栓が存在しない血漿中でインキュベートした場合、tPA−mproUKの組み合わせは、フィブリノーゲンの分解を全く誘発せず(図9)、よって、in vivoで、凝固および創傷の治癒に対して全く影響しないことが予期される。さらに、C1インヒビターを、血漿中のmUK(mproUKの酵素形態)が有するあらゆる非特異的な活性をクエンチするために用いて(図2Dおよび6)、出血性合併症に対するさらなる保護を追加することができる。
臨床的に、本tPA−mproUK併用療法は、時間のかかる診断手順による遅れなしに、脳卒中または心臓発作の症状がある患者の処置に使用することができる。本明細書は、(a)脳卒中または急性心筋梗塞の基礎となる原因を決定することなしに、1つまたは複数の症状を観察することによって、脳卒中または急性心筋梗塞を起こしている可能性がある対象を特定すること、および(b)5mg以下のtPAを含有する第1の組成物のボーラスを対象に投与し、続いて、mproUKの第2の組成物を、60〜90分間にわたり、60〜120mg/時の投与速度の注入で対象に注入することによる、脳卒中または急性心筋梗塞の症状がある対象の処置方法を提供する。第2の組成物は、第1の組成物の投与の、約5分後、約10分後または約15分後に投与してもよい。第1の組成物と第2の組成物とは、脳卒中または急性心筋梗塞の症状を生じさせるあらゆる血栓を、最大溶解速度で溶解する量で投与する。第1の組成物は、2〜5mgのtPA、例えば、約2mg、約2.5mg、約3mg、約3.5mg、約4mg、約4.5mg、約5mgのtPAを含有し得る。M5のようなmproUKを含有する第2の組成物は、静脈内注入によって投与してもよい。M5のようなmproUKの静脈内注入は、約60〜約120mg/時(例えば、60〜100mg/時、70〜90mg/時、または75〜85mg/時)の用量で、60分間、70分間、80分間、または90分間にわたって行ってもよい。
本明細書に記載された方法は、脳卒中の処置に使用することができる。脳卒中は、虚血性または出血性であり得る。虚血性脳卒中は、血流を妨げる血栓によって引き起こされ、出血性脳卒中は、損傷した血管によって引き起こされる。約85%の場合、脳卒中は、虚血性であり、例えば、血栓によって引き起こされ、したがって、血栓溶解性の薬剤による処置に適している。脳細胞に酸素を含んだ血液が欠乏している時間が長いほど、より多くの脳細胞が失われるため、虚血性脳卒中後の再灌流のタイミングは極めて重要である。しかしながら、脳卒中の原因を完全に診断することは困難で時間がかかることである。それでもなお、出血性副作用の高いリスクがあるため、現在利用できる血栓溶解性の薬剤による処置のためには、正確な診断は極めて重要である。虚血性脳卒中の患者に対する血栓溶解性の薬剤の投与は、適切な療法であろうが、同じ血栓溶解性の薬剤の出血性脳卒中の患者への投与は、問題をさらに悪化させるであろうし、患者を死に至らしめることがあり得る。診断の確定には時間がかかるが、個人が示す脳卒中の基本的な症状(突然発症する片側麻痺など)は、医学分野の当業者、例えば、救急救命士(EMT)、看護師、もしくは医師、または最小限の訓練を受けた一般人によって、容易に確定され得る。
脳卒中の症状がある対象は、本明細書に記載された方法を使用して、低用量のtPAからなるボーラスの投与と、それに続くmproUKの注入によって処置することができる。この組み合わせにおける、非常に低用量のtPAは、潜在的な出血性のリスクを低減させる。この組み合わせにおけるtPAは小用量であり、mproUKは血栓を溶解しうるが止血フィブリンは温存するため、この組み合わせは、虚血性脳卒中の可能性がある患者の処置に、脳内出血を悪化させるリスクをほとんど伴わずに、安全に使用することができる。よって、診断における臨床上の疑いに基づいて、救急車内で、処置を開始することが可能である。
本明細書に記載された方法は、心臓発作、例えば、急性心筋梗塞の処置にも使用し得る。心臓発作は、冠動脈の1つが、例えば、血栓によって、閉塞した場合に発症する。心筋に酸素を含んだ血液が欠乏している時間が長いほど、より多くの心筋が損傷を受け、または失われるため、心臓発作後の再灌流のタイミングは極めて重要である。現在選択される処置は、カテーテル法および血管形成術によるものであり、入院加療、利用できるカテーテル処置室、および準備の整ったスタッフが必要である。このことは、処置を遅らせ、高いコストを伴う。冠動脈閉塞後の最初の1時間は、この時間が、心筋を最大限に救済し、死亡率を最大限に低減することが可能な時間であることから、「ゴールデンアワー」と呼ばれる。tPAは、カテーテル法に伴う合併症の発生率を顕著に増大させることが多数の研究によって示さているため、カテーテル法前の時間確保のためのtPAによる前処置は、一般に行われなくなっている。
心臓発作の症状がある対象は、本明細書に記載されているように、低用量のtPAからなるボーラスの投与と、それに続くM5などのmproUKの注入によって処置し得る。経験的に、pro−UKによる前処置は、カテーテル法後の合併症を伴わないことが示されており、よって、この組み合わせによる前処置は耐容性が高いであろうし、それに続くカテーテル法の必要性も低減させ得る。
C1インヒビター
C1インヒビターは、104KDのセリンプロテアーゼインヒビターであり、正常血漿中濃度は約250μg/ml、半減期は約28時間である。このタンパク質の欠損は、遺伝性血管浮腫と呼ばれる疾患と関連している。C1インヒビターの投与は、遺伝性血管浮腫の処置のために、長い間臨床的に用いられてきた。市販のC1インヒビターとしては、CINRYZE(登録商標)、CETOR(登録商標)、BERINERT(登録商標)、およびRUCONEST(登録商標)があげられる。
フィブリン溶解の間に生成される、活性酵素である2本鎖UKまたはmUKは、最終的に血漿中に放出され、プラスミノーゲンの活性化が起こりやすくなる。この活性をクエンチするためには、血漿インヒビターが必要である。米国特許第7,837,992号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、C1インヒビターのインヒビター複合体は、ヒトまたはイヌの血漿と、酵素であるmUKとをインキュベーションすることにより、数分以内に出現した。C1インヒビターは、人体内に内因的に存在し、また薬理学的に補充することができる。内因性のC1インヒビターは、mUKの、例えば、tcM5の活性を非常に効果的にクエンチするが、UKの活性はクエンチしないことが示された(Gurewich V,J Thrombos Haemost,2006;4:1559〜1565;Pannell R,J Thromb Haemost,2007;5:1047〜1054;Gurewich,Thromb Haemost,2009;102:279〜286)。米国特許第7,837,992号明細書に示されるように、C1インヒビターは、mUKを阻害することによって、血漿中で、M5のようなmproUKを効果的に安定化し、フィブリン特異性を弱めることなしに、より高濃度のM5のようなmproUKが耐容性になることを可能にした。
本明細書に開示された脳卒中または急性心筋梗塞の症状がある対象の処置方法は、さらに、C1インヒビターを含有する第3の組成物を対象に投与することを含み得る。C1インヒビターは、ボーラスとして、対象の血漿中において、C1インヒビターの通常の生理的濃度(約250μg/ml)より2〜3倍高い範囲内、すなわち、約500〜約750μg/mlのC1インヒビター濃度に到達するのに十分な量で投与し得る。例えば、第3の組成物は、500〜1500mgのC1インヒビターを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、第3の組成物は、第2の組成物の投与前に対象に投与し得る。いくつかの実施形態において、第3の組成物は、第2の組成物と同時に、対象に投与し得る。
医薬組成物、投薬レジメン、および投与方法
本発明が提供する医薬組成物は、特定の用量のtPAと、pro−UK変異体、例えばM5とを、活性成分として含み得る。医薬組成物の活性成分、例えば、tPAまたはmproUKは、静脈内注射による送達用に製剤化され得る。
適切な医薬組成物の製剤化方法は、本技術分野で知られており、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、21st ed.、2005;and the books in the series Drugs and the Pharmaceutical Sciences:a Series of Textbooks and Monographs(Dekker、NY)を参照のこと。例えば、非経口投与に用いるための溶液または懸濁液は、下記の成分を含み得る:無菌の賦形剤、例えば、注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA);緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩;および浸透圧調節剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは、酸または塩基、例えば、塩酸または水酸化ナトリウムで調整することができる。非経口製剤は、ガラスまたはプラスチック製の、アンプル、使い捨て注射器、または多人数用バイアル内に封入することができる。
注射に適した医薬組成物は、無菌で注射可能な溶液または分散液を即時調製するための、滅菌水溶液(水溶性である場合)、分散液、および無菌粉末を含んでいてもよい。静脈内投与用の適切な担体としては、生理食塩水、静菌水、クレモホールEL(商標)(BASF、パーシッパニー、NJ)、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)があげられる。全ての場合に、組成物は、無菌でなければならず、容易に注射可能である程度に流動性であるべきである。製造条件および保存条件において安定であるべきであり、細菌および真菌などの微生物による汚染活動に対して保護されていなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体のポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物を含む、溶液または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、分散液の場合は必要な粒度を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって、維持することができる。
微生物の活動は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン類、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール、などによって阻止することができる。多くの場合、組成物に、等張剤、例えば、糖類、多価アルコール、例えば、マンニトールまたはソルビトール、および塩化ナトリウムを含有させるのが好ましい。無菌の注射可能な溶液は、必要な量の活性化合物を、所望により上に列挙した成分の1種または組み合わせと共に、適切な溶媒に入れ、次いで滅菌濾過することによって調製することができる。一般に、分散液は、活性化合物を、基本的な分散媒と、その他に、上記に列挙したもののうち必要な成分とを含む無菌の担体に入れることによって調製することができる。無菌の注射可能な溶液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、それにより、活性成分に、前もって滅菌濾過した溶液に由来する、所望のあらゆる追加の成分が加えられた粉末がもたらされる。
医薬組成物は、投与のための指示書と共に、容器、パック、またはディスペンサーに入れられてもよい。
投薬レジメンは、最適な治療反応をもたらすように調節しうる。例えば、Physicians’Desk Reference、63rd edition、Thomson Reuters、November 30、2008、を参照のこと。例えば、治療化合物の、用量、毒性および治療効果は、例えば、LD50(集団の50%が死に至る用量)を決定するため、およびED50(集団の50%に治療効果が現れる用量)を決定するために、細胞培養または実験動物による標準的な医薬的手順によって決定することができる。毒性を示す用量と、治療効果を示す用量との用量比が、治療指数であり、LD50/ED50という比で表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。毒性の副作用を示す化合物も使用され得るが、非感染細胞に対する潜在的な傷害を最小限にして、それによって副作用を低減させるために、そのような化合物が患部組織の部位を標的にする送達系を設計するように配慮すべきである。
細胞培養試験および動物実験から得られたデータは、ヒトに用いられる用量範囲を製剤化するために用いることができる。このような化合物の用量は、好ましくは、ED50を含むと共に、毒性がほとんどないか、全くない血中濃度の範囲にあることが好ましい。用量は、使用する剤形、および利用する投与経路に依存して、前記範囲内で変わり得る。本発明の方法で使用するあらゆる化合物について、治療有効用量は、初めに、細胞培養試験から推定され得る。用量は、細胞培養で決定したように、動物モデルにおいて、IC50(すなわち、症状の最大半量の抑制を実現する試験化合物の濃度)を含む循環血漿中濃度範囲を実現するように製剤化され得る。このような情報は、ヒトにおいて、より正確に有用な用量を決定するために使用し得る。血漿中の濃度は、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定し得る。
tPAのボーラスは、2〜5mgのtPAを含んでいてもよく、例えば、約2mg、約2.5mg、約3mg、約3.5mg、約4mg、約4.5mg、または約5mgのtPAを含んでいてもよい。mproUKの、例えば、M5の静脈内投薬は、60〜120mg/時(例えば、60〜100mg/時、70〜90mg/時、または75〜85mg/時)であってもよく、60分間、65分間、70分間、75分間、80分間、85分間、または90分間にわたってもよい。C1インヒビターは、対象の血漿中のC1インヒビター濃度が約500〜約750μg/mlに到達するのに十分な量で、ボーラスとして投与してもよい。例えば、C1インヒビターのボーラスは、500〜1500mgのC1インヒビターを含んでいてもよい。
脳卒中または急性心筋梗塞の患者にとって、再灌流に要する時間は、生存および臨床成績に重大な意味がある。これらの発見は、小用量のtPAとM5との組み合わせが、より安全でより効果的な方法で、治療的な血栓溶解を実現し得ることを示唆している。よって、脳卒中または急性心筋梗塞の患者は、ほとんど遅れることなく、または全く遅れることなく、tPAとM5との組み合わせによる処置を受けることができる。
血栓溶解の効率は、溶解速度によって定義することができる。しかしながら、臨床的有用性は、前記の効率を、前記の溶解速度による出血性合併症の発生率で割ることを必要とする。本明細書に記載された併用療法を用いた場合、最適な組み合わせは、重大なフィブリノーゲン分解を生じることなく、溶解の最大速度を生じさせるため、証拠によれば、最大の臨床的有用性は存在しない(Pannell et al.、PLOS ONE,DOI:10.1371/journal.pone.0122018 March 26、2015(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。このことが、はるかに優れた臨床的有効率に寄与し、実際に、これによって最大の治療有効率が実現可能となり、すなわち、副作用を伴わずに、プラスミノーゲン活性化因子にとって最大の血栓溶解速度が可能となった。
キット
本発明は、少なくとも、1つの容器に入った、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)を含有する組成物と、別の容器に入った、mproUK、例えば、M5を含有する別の組成物とを含むキットを提供する。このキットは、本明細書に記載の治療方法を実施するために使用される。第1の組成物は、ボーラスとしての投与に適するように製剤化してもよく、2〜5mgのtPAを含有していてもよい。第2の組成物は、静脈内注入に適するように製剤化してもよい。第2の組成物は、60〜90分間の時間にわたる注入用に、60〜120mg(例えば、60、65、70、75、80、85、または90mg)のpro−UK変異体を含んでいてもよい。キットは、C1インヒビターを含有する第3の組成物も含んでいてもよい。第3の組成物は、ボーラスとしての投与に適するように製剤化してもよく、約500〜約1500mgのC1インヒビターを含んでいてもよい。
キットは、一般に、以下の主要な成分、すなわち容器、上記のひとまとまりの組成物、場合により対照、および指示書、を含む。包装は、組成物を含有するバイアル(または多数のバイアル)と、本明細書に記載された方法で使用する指示書とを保持する箱状の構造であってもよい。当業者は、個人の要求に合うように、包装を容易に改変することができる。
本発明が提供する組成物およびキットは、上記のあらゆる方法(例えば、治療方法)にしたがって使用することができる。例えば、組成物、ならびにtPAを含有する組成物およびpro−UK変異体、例えば、M5変異体を含有する別の組成物を含むキットは、脳卒中、心臓発作、または血栓によって生じる他の心血管系疾患、例えば末梢性壊疽の処置に使用することができる。当業者は、本明細書に記載の組成物およびキットのための他の適切な用途に気づくであろうし、組成物およびキットをそのような用途に使用することができるであろう。
実施例
本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、これは特許請求の範囲に記載された発明の範囲を限定するものではない。
in vitroにおける、tPA/M5による、最大の血栓溶解速度での血栓溶解
tPAとM5との特定の組み合わせのフィブリン溶解効果およびフィブリノーゲン溶解効果を、ヒト血漿環境において、in vitroで検討した。
材料
プロウロキナーゼの300位のアミノ酸における、リジンからヒスチジンへの置換(Lys300→His)を含むmproUK(M5)は、E.coliから、PxTherapeutics(グルノーブル、フランス)によって調製された。組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)は、Genentech(サウスサンフランシスコ、CA)から入手した。ヒトフィブリノーゲン(Kabi、グレードL)は、Chromogenix(ミラノ、イタリア)から入手した。アプロチニンおよびイソチオシアン酸フルオレセインは、Sigma Chemicals(セントルイス、MO)から入手した。トロンビン(ThromboMax、100NIH U/ml)は、Sigma(セントルイス、MO)から入手した。臨床グレードのC1インヒビターは、CSL Behring(マールブルク、ドイツ)から入手した。4人のドナーからプールした、血液バンクの古くなったヒト血漿を実験に用いた。
それぞれ異なる動物モデルは、ヒトpro−UKに対する感受性が異なることに留意すべきである(例えば、Gurewich et al.、J.Clin.Invest.、73:1731〜1739(1984)(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の表1を参照のこと)。よって、動物の用量は、ヒトの用量決定に用いることはできず、ここに記載された用量は、ヒトの試験における個別の要素を用いた経験に基づくものである。ヒト血漿におけるIn vitro試験により、同じ溶解速度のためには、M5は、proUKに対して2倍の量が必要であることが示された。proUK/M5に関する単剤療法の用量は、フェーズ3試験から分かっており、本明細書に記載された、新たに発見された併用療法の方法における、小用量のtPAと低用量のM5とは、この2倍の係数に基づいている。
血栓溶解実験
M5によるフィブリン溶解は、インヒビターを含有する血漿環境で検討した。血栓は、痕跡量のトロンボプラスチンおよび蛍光標識フィブリノーゲン存在下、35mMのカルシウムによる、0.2mlの血液バンクのプール血漿におけるカルシウム再沈着によって作成した(Dmitry V、J Biol Chem、1996;271:2133〜2138を参照のこと)。次いで、血栓を、1時間、37℃でインキュベートし、続いて終夜、室温でインキュベートした。翌日、血栓を、2mlの血液バンクの血漿中に入れ、次いで、tPA、M5、またはtPAとM5との組み合わせを加えた。血栓溶解を、50μLの血漿をある一定の時点に採取し、蛍光発光を測定することによってモニターした。試料の蛍光発光は、血栓から遊離したフィブリン分解産物の量を示す。いくつかの実験において、血漿量を5mlに増量し、蛍光標識フィブリノーゲンの希釈を補うために、未標識のフィブリノーゲンを加えた。これらの実験において、血栓溶解の終了は、視覚的に判定した。
各血栓溶解実験は、3連で行った。Graph Pad Prismを、グラフを作成し、統計解析を行うために使用した。
溶解曲線は、血栓の経時的な溶解率(パーセント)としてプロットした。100%点は、最高読み取り値の平均から得た。ベースラインの読み取り値を、開始時に血漿が示す蛍光量(最大信号の約15%)を差し引くことによって取得し、ゼロ点を得た。各実験条件において、50%溶解時間は、溶解グラフから決定し、第一のエンドポイントとして用いた。
血栓溶解後に残存したフィブリノーゲンの決定
血栓溶解が完了した後、最終の血漿試料(1.0ml)を、残存したフィブリノーゲンを決定するために取得した。さらなるタンパク質分解を防ぐために、アプロチニン(200KIU/ml)を試料に加えた。残存したフィブリノーゲンは、フィブリノーゲンのベースライン(BL)に対する割合(パーセント)として記録した。
フィブリノーゲンは、トロンビンで凝固し得るタンパク質として測定した。血漿試料を同量のリン酸緩衝生理食塩水で希釈した後、200μLのトロンビン(1,000NIH 単位/ml溶液)を加えた。溶液を穏やかに混合し、1時間、37℃でインキュベートした後、終夜、室温でインキュベートした。翌朝、各血栓を、細くて軸の長いプラスチック製ホールピペットの、ゲルを接着した先端に巻きつけ、そして試験管壁、次いでペーパータオルに押しつけることによって、血清部分を絞り出した。ピペット軸上の白色のフィブリンを、次いで少なくとも5mlの生理食塩水中に、少なくとも1時間入れておき、残ったあらゆる血清タンパク質を拡散させた。次いで、フィブリンをピペットの先端からはがし、1mlの5%NaOHに入れ、1分間煮沸し、次いで全てのフィブリンが溶液になるまで室温に置いた。溶液中のタンパク質は、280nmの分光光度測定で測定した。
tPA単独またはM5単独による、最短の溶解時間の決定
血栓溶解実験は、1μg/ml、2μg/ml、または3μg/mlのtPA存在下、上述したように行った。溶解曲線は、血栓の経時的な溶解率(パーセント)としてプロットし、各実験条件において50%の血栓を溶解するのに要する時間を溶解曲線から決定した。溶解の最短時間(そこから最大の血栓溶解速度を決定し得る)は、用量依存的な溶解時間のさらなる短縮が起こらない時間として決定した。代表的な実験の結果を図1Aに示し、tPAによって50%の血栓を溶解するのに要する最短時間は、3μg/mlのtPAを使用した場合、60分間であることがわかった。よって、最大の血栓溶解速度は、1時間で50%の血栓溶解である。
図1Bは、試験した各tPA用量について、溶解終了時において残存したフィブリノーゲンのベースライン濃度に対する割合(パーセント)が、19%〜45%の範囲であることを示す。このように、tPA単独で、55%〜81%のフィブリノーゲン分解を引き起こした。
M5について、血栓溶解実験を、10μg/ml、12.5μg/ml、または15μg/mlのM5存在下、上述したように行った。M5によって50%の血栓を溶解するのに要した最短の時間は、15μg/mlのmproUKを使用した場合、50分間であると決定された(図2A)。よって、最大の血栓溶解速度は、50分間で50%の血栓溶解である。
各M5用量について、溶解終了時において残存したフィブリノーゲンのベースライン濃度に対する割合(パーセント)は、25%〜55%の範囲であり、図2Bに示されている。このように、M5単独で、45%〜75%のフィブリノーゲン分解を引き起こした。
M5によるフィブリノーゲン溶解に対するC1インヒビターの効果
フィブリノーゲン溶解を防ぐために、血栓溶解実験において、10μg/ml、12.5μg/ml、または15μg/mlのM5を添加する前に、血漿に、750μg/mlのC1インヒビターを加えた。750μg/mlのC1インヒビターの存在によって、M5によって50%の血栓を溶解するのに要する時間は影響を受けず、依然として50分間のままであった(図2C)。しかしながら、図2Dに示すように、C1インヒビターが存在する場合、フィブリノーゲン分解はほとんど起こらなかった。
C1インヒビター実験は、既に、tPAによる血栓(blood blot)溶解をC1インヒビターが阻害することが示されているため(Tomasi S、PLos One.、2011;6:e21999)、tPAについては繰り返さなかった。
小用量のtPAと、低用量のM5との組み合わせによる最大の血栓溶解速度
最短の溶解時間(および最大の血栓溶解速度)を実現するために必要な、併用した場合の、tPAおよびM5の最低用量を決定するために、tPAとM5との種々の組み合わせおよび種々の比率を用いて、血栓溶解実験を行った。最大の血栓溶解速度を安定して実現するための、併用した場合の、tPAおよびmproUKの最低用量は、tPAが0.2μg/ml、およびのM5が6μg/mlと決定された。これらの用量は、tPAとM5とを、単剤療法において単独で用いた場合に、最短の溶解時間を実現するために必要とされるtPA用量の6%と、最短の溶解時間を実現するために必要とされるM5用量の40%とに相当する。図3は、代表的な血栓溶解実験の結果を示し、0.2μg/mlのtPAと、6μg/mlのM5との組み合わせによって50%の血栓を溶解するのに要する時間は、53分間であったのに対し、6μg/mlのM5単独で50%の血栓を溶解するのに要した時間は、135分間であり、0.2μg/mlのtPA単独で50%の血栓を溶解するのに要した時間は、225分間であった。これらの結果は、小用量のtPA、例えば、0.2μg/mlのtPAによって、M5による血栓溶解時間が大幅に短縮されることを実証する。この観測結果は、フィブリン溶解の惹起におけるtPAの機能と整合性がある。
図4Aは、10回の代表的な血栓溶解実験の結果を示し、前記の組み合わせ(0.2μg/mlのtPA+6μg/mlのM5)(丸)を用いてもたらされた50%溶解時間の平均は、ほぼ75分間であった。この用量のM5単独(三角)では、溶解時間は、135分間であり、tPA単独(四角)でもたらされた溶解時間は、225分間であった。これらの発見により、小用量のtPAが、M5による溶解開始を約45%短縮させることが示される。図4Bは、フィブリノーゲンのベースライン(BL)に対する割合(パーセント)として表した、溶解終了時における血漿フィブリノーゲンを示す。全ての実験は、3連で行った。
組み合わせにおけるtPAの機能が、フィブリン溶解の惹起に限られるのかを試験するために、血栓溶解実験を4種類のtPA−M5の組み合わせを用いて実施した。各tPA−M5の組みあわせは、固定された6μg/mlの用量のM5と、0.2μg/ml、0.6μg/ml、1.0μg/ml、および3.0μg/mlから選択された異なる用量のtPAとを含む。試験した4種全ての組み合わせについて、50%の血栓を溶解するのに要した時間は、約48〜約60分間であり、用量が0.2μg/mlを超えるtPA用量によって50%の血栓を溶解するのに要する時間がさらに短縮することはなかった(図6)。これらの発見は、組み合わせにおけるtPAの機能が、フィブリン溶解の惹起のために重要であるが、惹起を超えたフィブリン溶解には寄与しないということと整合性がある。
多数の血栓実験からの、in vitroにおける50%の血栓を溶解するのに要する時間の平均を、表にして比較した。図7は、0.2μg/mlのtPAと、6μg/mlのM5との組み合わせによる、50%の血栓を溶解するのに要する時間が、平均48(±2.5)分間(n=10)であり、0.2μg/mlのtPA単独により、50%の血栓を溶解するのに要する時間が、平均156(±5.3)分間(n=5)であり、6μg/mlのM5単独については、平均118(±7.2)分間(n=7)であり、15μg/mlのM5単独については、平均48(±1.6)分間(n=9)であり、3μg/mlのtPA単独については、平均55(±5)分間(n=6)であったことを示す。0.2μg/mlのtPAと、6μg/mlのM5との組み合わせによる、50%の血栓を溶解するのに要した時間は、0.2μg/mlのtPA単独、または6μg/mlのM5単独よりも、著しく短い(図7)。tPA単独およびmproUK単独で、非常に高用量において、例えば、3μg/mlのtPAで、または15μg/mlのM5で、同様の血栓溶解時間を実現できるが、そのような用量においては、プラスミノーゲンの非特異的な活性化と、その結果として、血友病様の副作用が生じる可能性がある。
tPAとM5との組み合わせによるフィブリノーゲン溶解に対する、量(体積)およびC1インヒビターの効果
フィブリン溶解の間に、mproUKはプラスミンによって活性化されて、mUKに変換され、次いで、それが血漿中に拡散し得る。血栓に対するタンパク質分解の確認は、血漿インヒビター、例えば、C1インヒビターの機能となる。試験管内では、in vivoにおける体積と比べて、in vitroにおいて血漿の体積が限られていることによる影響が生じ得る。したがって、血栓溶解実験は、以下の3種の条件、すなわち(1)2mlという対照の血漿量、(2)5mlという増やした血漿量、および(3)500μg/mlのC1インヒビターを加えた、2mlの血漿、で行った。これらの実験には、未標識の血栓を用い、試験した3種全ての条件において、100%の血栓を溶解するのに要した時間は、75〜80分間であることが確認された。標準的な2mlの血漿量において、tPA−M5の組み合わせは、70%のフィブリノーゲンを分解し、これはプラスミンによる急速なtcM5生成速度を反映している(図8)。C1インヒビターを加えた場合、フィブリノーゲン溶解は45%に低下し、残存したフィブリノーゲンは55%であった(図8)。5mlの血漿量においても同様の効果が観察され、これは、おそらく血栓に近接する環境におけるtcM5の希釈を反映するものである(図8)。この体積効果は、tPA−M5の組み合わせによるフィブリノーゲン溶解が、血栓に対する血漿の体積比がかなり大きいin vivoにおいて、さらに減衰するであろうことを示唆している。
C1インヒビターの、図2Dと比較した場合の、より小さな効果は、tPA−M5の組み合わせによって引き起こされる、M5の単剤療法と比較して、より速い、フィブリン依存性のプラスミン生成に関連している。このことは、M5単独によるフィブリノーゲン溶解を阻害するC1インヒビターの能力と比較した場合、tPA−M5の組み合わせによるフィブリノーゲン溶解を阻害するC1インヒビターの能力は低下している、という追加の研究によって確認されている。C1インヒビターは、比較的低速なインヒビターであり、よって、tPA−M5の組み合わせによって実現されるより急速なフィブリン溶解のために、より急速に生成されるtcM5をクエンチする能力がより低い。tPA−M5の組み合わせによって生成されるtcM5を十分にクエンチするためには、より高濃度のC1インヒビターが必要とされるであろう。
図5Aは、C1インヒビターと共に、前記の組み合わせ(0.2μg/mlのtPA+6μg/mlのM5)(丸)を使用した、代表的な血栓溶解実験の結果を示す。C1インヒビター(750μg/ml)を、活性化因子を添加した30分後に加えた。図5Aに示すように、これによって溶解は阻害されず(丸)、平均でほぼ30分に短縮されたが、tPA単独による溶解は阻害した(四角)。図5Bは、フィブリノーゲンのベースライン(BL)に対する割合(パーセント)として表した、溶解終了時の血漿フィブリノーゲンを示す。図5Bに示すように、C1インヒビターは、フィブリノーゲン溶解を減衰させた。全ての実験は3連で行った。
血栓が存在しない場合におけるtPA−M5の組み合わせによるフィブリノーゲン溶解
血栓が存在しない場合の、tPA−M5の組み合わせのフィブリノーゲン溶解に対する効果を試験するために、0.2μg/mlのtPAと、6μg/mlのM5との組み合わせを、血漿と共に、37℃でインキュベートし、2〜5時間後にフィブリノーゲンの測定のために試料を採取した。図9に示すように、少なくとも3時間、すなわち治療的な血栓溶解の持続時間を十分に超えて、フィブリノーゲン溶解は起こらなかった。これらの発見は、tPA−M5の組み合わせによって引き起こされるプラスミン生成は、フィブリン依存性であり、血栓が存在しない場合、このフィブリン溶解性の組み合わせは、プラスミノーゲンの活性化を引き起こさないことを示す。
tPAとM5との組み合わせによる、In Vivoにおける血栓溶解
雄の雑種犬(10〜15kg)をペントバルビタールナトリウムで麻酔し、室内気を吸わせておいた。米国特許第7,074,401号明細書に記載されているように、1mlのネイティブのイヌ全血から血栓を形成させ、そこに放射性標識フィブリノーゲン(1.9μCi、0.75mCi/mgタンパク質)およびトロンビン(10単位)を加えた。20分後、血栓を生理食塩水で3回洗浄し、次いで小片(約1mm)に切断し、16ゲージの注射針で大腿静脈内に注射した。15分後、ベースラインの放射能を測定するために、対側の大腿静脈内のカニューレで血液試料を取得した。
イヌを4つのグループに分け、(1)生理食塩水、(2)2〜5mgのtPAのボーラス、(3)M5の静脈内注入(20μg/kg/分)を60分間、または(4)2〜5mgのtPAのボーラス後、M5の静脈内注入(20μg/kg/分)を60分間、の注入を行う。注入間のインターバルの間に、血液試料を取得し、放射能およびフィブリノーゲンを測定した。血栓を溶解するのに要する時間を決定し、4グループ間で比較する。
脳内出血(ICH)ラットモデルにおけるC1インヒビターおよびM5の特性
本試験の目的は、脳内出血(ICH)量(体積)に対するM5の効果を研究することである。
20匹の雄性Sprague−Dawley成体ラットを、試験に用いた。ラットは、手術当日に、無作為に選択して用いた。ラットには、テールマーキングによって固有の識別番号を付けた。手術開始の直前に、セファゾリンナトリウム腹腔内注射液(40mg/kg、Hospira 101C049)およびブプレノルフィン皮下注(1mg/kg、Reckitt Benckiser、219202)を、動物に投与した。ラットが、イソフルラン麻酔(1.5%〜2%)下、亜酸化窒素・酸素混合ガス(2:1)中で自発呼吸している間に、小さな穿頭孔をあけ、30ゲージの10μl顕微注射用注射針(Hamilton、700シリーズ)をゆっくりと右線条体中に下降させ、続いて調整し、ブレグマから、前方0.0mm、側方3mm、および深さ6mmにした。3分間の間、0.45UコラゲナーゼVII−S(Sigma、セントルイス、MO)を含む生理食塩水3μlを注射した。注射針を2分間その位置においておき、次いで、5分間かけてゆっくりと抜いた。その後、頭皮をステープルで閉じ、ラットを回復させた。全ての外科的処置は、各ラットにつき約20分間かかった。動物の体温を維持するために、温熱パッド(37±1℃)を使用する。
C1インヒビターおよび被験物質(M5)は、投与前に製剤化した。試験溶液は、毎日の使用の間、氷上で保存した。使用せずに残った溶液は、−20℃で保存した。4ml/kgでのボーラス(IV)直後、動物に、4ml/kgで、(30分間にわたり)静脈内注入によって投薬した(ICHの15分後に開始した)。注入開始から2時間後に、動物を、イソフルラン下、100%のNO吸入で人道的に殺した。脳を取り出し、ラット用の2mmブレインマトリックスによって切片を作成した。標準化された条件で、デジタルカメラを用いて、脳切片の画像を取得した。血腫のサイズは、ImageJソフトウェアで算出した(オンラインで、rsb.info.nih.gov/ijで利用できる。)。
出血誘発から2時間後、ラットを深い(5%)イソフルラン麻酔(100% NO)下で屠殺した。脳を取り出し、氷上のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に入れた。脳を、それぞれ2mmの7枚の切片にスライスし、血腫を視覚的に評価するために撮影した。個々の切片について、組織学的な評価は行わなかった。ヘモグロビン量は、出血量(体積)の定量的な測定によって決定した。出血側(7つの全ての切片が含まれる)を正常側と分けて、1.5mlの冷PBS中においた。30秒間ホモジナイズ(Polytron PT2100を用いて手動で実施)した後、1分間超音波にかけて赤血球膜を溶解させた。30分間遠心(13000rpm、4℃)した後、200μLの上清を800μLのDrabkin試薬(Sigma、セントルイス、MO)に加え、10分間、室温で放置した。光度計を使用して、540nmで吸収率を決定し、標準曲線に基づいて、傷害を受けた大脳半球について、出血した血液量(体積)を算出した。標準曲線は、年齢および重量が(試験対象の平均に)合致した、8個のナイーブな大脳半球を使用して作成した。これらのナイーブな大脳半球に、同じ個体からのプール血液を、体積を増やしながら(0〜192μL)スパイクした。統計的有意性は、分散分析(ANOVA)によって評価した。
出血のサイズを測定したタイミング(出血誘発から2時間後)は、Biotrofixにおいて最適化された、先行研究に基づいて決定した。
ラットに、上記したように、ICHの15分後に、ビヒクル(生理食塩水)(4ml/kg)のボーラス(4ml/kg)を投与し、続けて、直ちにビヒクルまたはC1インヒビター(200U/4ml/kg)のボーラスを30分間注入し、続けて、直ちにM5(10mg/4ml/kg)を30分間注入した。
臨床観察および生存
全ての動物は、この試験の試験期間を生き延びた。番号24の動物は、この動物で引き起こされた出血は、解析に含めるには不十分だったため、解析から除外した。
出血量の組織学的な決定
M5(直ちに)と、それに続くC1インヒビターのボーラス注射を、ICHラットモデルで検討した。このモデルにおいて、脳の右線条体内へのコラゲナーゼの注射によって、脳内出血を誘発させた。負傷の15分後に、M5(10mg/4ml/kgの用量で)、またはビヒクルを30分間の静脈内注入によって投与し、直後に、上記したように、ボーラス注射を行った。C1inh/M5を投与した動物と、生理食塩水/生理食塩水を投与した動物との間に有意差は認められなかった(p=0.6899)(図1)。
直接的な血腫量(体積)
組織学的な出血量の決定による場合と同様に、C1inh/M5を投与した動物と、生理食塩水/生理食塩水を投与した動物との間に有意差は認められなかった(p=0.5194)(図10Aおよび10B)。図10Aは、ラットモデルにおける脳内出血後の血腫量を示す棒グラフである。脳内出血は、コラゲナーゼの定位的な注射によって誘発させた。ラットは、負傷の15分後に、C1インヒビターをボーラス注射で投与され、続けて、直ちにM5(10mg/4ml/kgの用量で)を30分間注入された。血腫量は、投薬後2時間におけるヘモグロビン量によって測定した。C1inh/M5を投与した動物と、生理食塩水/生理食塩水を投与した動物との間に有意差は認められなかった(p=0.5194)。
図10Bは、ラットモデルにおける脳内出血後の出血量の組織学的な決定を示す棒グラフである。脳内出血は、コラゲナーゼの定位的な注射によって誘発させた。ラットは、負傷の15分後に、C1インヒビターをボーラス注射で投与され、続けて、直ちにM5(10mg/4ml/kgの用量で)を30分間注入された。C1inh/M5を投与した動物と、生理食塩水/生理食塩水を投与した動物との間に、出血量に有意差は認められなかった(p=0.6899)。
このコラゲナーゼで脳内出血を誘発したラットモデルにおいて、ICH誘発の15分後に投与した、C1インヒビター/M5の投与は、生理食塩水/生理食塩水で処置した動物と比較して、血腫量および出血サイズに違いを生じなかった。よって、M5は、この脳卒中モデルにおいて出血を誘発せず、または出血を増大させず、よって、出血性の脳卒中などの出血性イベントにおける使用に安全なはずである。
tPAとM5との組み合わせによる臨床試験
年齢18歳以上35歳以下、体重が少なくとも60kgでボディ・マス・インデックス(BMI)が18.5kg/m以上25kg/m以下の、健康な男性対象を臨床試験に登録した。これらの対象は、スクリーニング時および試験第1日目において、内因性のC1インヒビター濃度、α2−抗プラスミン濃度、およびフィブリノーゲン濃度が正常であり、HIV、HBsAg、およびHCVについて血清学的に陰性であり、アルコールおよび薬物の乱用に関する試験で陰性であった。対象には、臨床的に大きな異常はあり得なかった。
対象は、以下の基準の1つ以上にあてはまる場合は組み入れられず、その基準は(1)対象が、止血経路もしくは凝集経路に影響するか、出血傾向の増大を伴うことがわかっているもしくは疑われている、遺伝的、先天的、または後天的な疾患もしくは状態を有している、(2)対象が、臨床的に重大な出血イベント、または試験中に相当な時間にわたって検出されない出血イベントを起こす合理的な可能性がある、例えば、対象が、(a)予期される投与日前3か月以内に、大きな(内臓の)手術または外傷を受けている、(b)腸または大脳の血管奇形を有している、(c)予期される投与日から2週間以内に、衝撃の大きいコンタクトスポーツ、例えばキックボクシングに参加した、(3)対象が、本プロトコルによって、投与前に製品の除去半減期の少なくとも7倍のウォッシュアウト期間を経なければ認められない、何らかの全身吸収性の薬物または物質(処方薬、一般用医薬品、または代替薬を含む)の投与を受けた、(4)対象が、どのような形態にせよ、投与の3か月以内にたばこを喫煙したか、平均で、1日に5本以上の紙巻きたばこ(またはそれと同等のもの)を喫煙していたことがある、(5)対象が、投与日の前年に、血液または血漿分画製剤の輸血または投与を受けた、(6)対象が、投与の3か月前に、地域の献血機関(i.c.Sanquin)による限度を超えた血液または血漿を失った、(7)対象が、治験物質または関連するいずれかの化合物に対して既知の過敏症である、(8)対象が、重篤な過敏症または激しい反応を伴うアレルギーの病歴を有する、(9)対象が、カフェイン、たばこ、およびアルコールを含む、物質乱用の経歴がある、(10)対象が、治験責任医師の意見によれば、対象の健康もしくは福祉、または試験結果の化学的完全性を危険にさらし得る状態であるか、危険にさらし得る態度を示している、(11)対象が、精神的または法律的に、インフォームドコンセントに同意する能力がない、ことである。
登録された対象は、以下の処置群の1つに無作為に割り当てる。
(1)2.5mgのtPAからなるボーラスの注射と、それに続くmproUK、例えば、M5の、ほぼ80mg/時(単剤療法の用量の50%)で、60〜90分間にわたる静脈内注入、
(2)2.5mgのtPAからなるボーラスの注射と、それに続くプラセボの、60〜90分間にわたる静脈内注入、
(3)プラセボボーラスの注射と、それに続くmproUK、例えば、M5の、ほぼ160mg/時で、60〜90分間にわたる静脈内注入、または
(4)2.5mgのtPAからなるボーラスの注射と、それに続くC1インヒビター(Berinert(登録商標))のボーラス(例えば、1000EU(2バイアル))、およびmproUK、例えば、M5の、ほぼ80mg/時(単剤療法の用量の50%)で、60〜90分間にわたる静脈内注入。
mproUKの用量は、60〜120mg/時の範囲である。C1インヒビターのボーラスは、(対象の体重を基準として)25〜100U/kgのBerinert(登録商標)からなる。この試験は、プラスミン血症が生じた場合、または十分なデータが集まった場合、のいずれかの場合に終了する。
この試験で集められたデータを元に、tPAと、mproUK、例えばM5との組み合わせについて、全体的な安全性および忍容性を評価した。mproUKによって引き起こされる凝集の変化に対する、低用量のtPAの効果を評価した。tPA−mproUKの組み合わせの全体的な安全性および忍容性に対するC1インヒビターの単回投与の効果、ならびにtPA−mproUKによって引き起こされる凝集の変化に対するC1インヒビターの単回投与の効果を評価した。
他の実施形態
本発明は、発明の詳細な説明に関連して説明されているが、前記した説明は例示を意図するものであり、発明の範囲を限定することを意図するものではなく、発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって画定されるものと理解されるべきである。他の態様、利点、および改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。

Claims (15)

  1. 付随する出血性副作用が最小であると同時に、血栓溶解速度が最大である、脳卒中または急性心筋梗塞(AMI)の症状がある対象の処置に使用するための組成物であって、
    5mg未満の組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)を含有する第1の組成物を含み、前記第1の組成物は、ボーラスの投与レジメンで対象に投与され、または投与するために調製され、かつ
    プロウロキナーゼの300位のアミノ酸における、リジンからヒスチジンへの置換(Lys300→His)を含むプロウロキナーゼ変異体(mproUK)を含有する第2の組成物を含み、前記第2の組成物は、第1の組成物の投与に続き、60〜120mg/時で60〜90分間にわたる投与レジメンで、静脈内注入によって対象に投与され、または投与するために調製され、
    ここで、前記対象は、第1の組成物の投与に先立って、脳卒中の原因を決定することなしに、脳卒中またはAMIの1つまたは複数の症状を観察することによって、脳卒中またはAMIを起こしている可能性があるものと特定され、
    対象の血液におけるフィブリノーゲンの分解度が30%未満であると同時に、最大の血栓溶解速度が達成され、
    最大の血栓溶解速度が達成されたことが、心筋梗塞における血栓溶解(TIMI)が2以上であることによって示される、組成物。
  2. 対象が、脳卒中の症状を有する、請求項1に記載の組成物。
  3. 最大の血栓溶解速度が達成されたことが、対象における少なくとも1つの血栓の質量の50%の溶解が、75分以内に実現したことによって示される、請求項1または2に記載の組成物。
  4. ボーラスが、2〜4.5mgのtPAを含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
  5. ボーラスが、2〜4.0mgのtPAを含む、請求項に記載の組成物。
  6. ボーラスが、2mgのtPAを含む、請求項に記載の組成物。
  7. 第2の組成物が、mproUKの、60〜90mg/時の速度での静脈内注入として、60〜90分間にわたる投与のために調製される、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
  8. 第2の組成物が、mproUKの、60〜80mg/時の速度での静脈内注入として、60分間にわたる投与のために調製される、請求項に記載の組成物。
  9. C1インヒビターのボーラスを含有する第3の組成物をさらに含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
  10. 第3の組成物が、C1インヒビターの500〜1500mgのボーラスを含む、請求項に記載の組成物。
  11. 第1の組成物と第2の組成物とが、一緒になって、C1インヒビター存在下、tPA単独またはプロウロキナーゼ単独のいずれか一方の単剤療法と比較して、フィブリノーゲンの分解が30%未満の状態で、血栓を溶解する、請求項10に記載の組成物。
  12. 血栓溶解作用に基づく脳卒中または急性心筋梗塞の症状がある対象の処置に使用するためのキットであって、
    第1の容器に入った、ボーラスとしての投与に適するように製剤化された2〜5mgの組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)を含有する第1の組成物と、
    第2の容器に入った、プロウロキナーゼの300番目のアミン酸位置において、リジンからヒスチジンへの置換(Lys300→His)を含む60〜120mgのプロウロキナーゼ変異体(mproUK)を含有する第2の組成物とを含む、キットであって、
    対象の血液におけるフィブリノーゲンの分解度が約30%未満であると同時に、最大の血栓溶解速度が達成され
    最大の血栓溶解速度が達成されたことが、心筋梗塞における血栓溶解(TIMI)が2以上であることによって示される、キット。
  13. 第2の組成物が、静脈内注入に適するように製剤化される、請求項12に記載のキット。
  14. 500〜1500mgのC1インヒビターを含有する第3の組成物をさらに含む、請求項12に記載のキット。
  15. 第3の組成物が、ボーラスとしての投与に適するように製剤化される、請求項12に記載のキット。
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