以下、図面を参照して本発明の発泡樹脂成形品、発泡樹脂成形金型、発泡樹脂成形品の製造方法、および自動車部品の一実施形態を説明する。
[発泡樹脂成形品]
図1は、本発明の一実施形態に係る発泡樹脂成形品10を示す斜視図である。図2から図4は、それぞれ、図1に示す発泡樹脂成形品10のII−II線、III−III線、およびIV−IV線に沿う断面図である。
本実施形態の発泡樹脂成形品10は、たとえば自動車等の車両のシートを構成する部品である車両用シート部材や、自動車等の床面とカーペットの間に配置される部品であるティビアパッドなどの自動車用部品として用いることができる。発泡樹脂成形品10では、発泡倍率の異なる第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12とが連続的に成形されている。第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12は、第1の方向D1において分離溝13を介して隣接しており、第1の方向D1と異なる第2の方向D2において接合界面14を介して隣接していることを最大の特徴としている。以下では、本実施形態の発泡樹脂成形品10を車両用シート部材として用いる例について説明する場合があるが、本実施形態の発泡樹脂成形品10の用途は、車両用シート部材に限定されない。
発泡樹脂成形品10は、発泡樹脂の型内発泡樹脂成形体である。発泡樹脂成形品10の素材である発泡樹脂としては、たとえば、発泡された熱可塑性樹脂を用いることができる。発泡された熱可塑性樹脂としては、たとえば、発泡ポリスチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む発泡複合樹脂、発泡ポリオレフィン系樹脂等を用いることができる。
第1発泡樹脂部11の発泡倍率は、たとえば、5倍以上かつ50倍以下の範囲とし、第2発泡樹脂部12は、たとえば、10倍以上かつ90倍以下の範囲とすることができる。また、第1発泡樹脂部11の発泡倍率は、第2発泡樹脂部12の発泡倍率よりも低くすることができる。図示の例において、第1発泡樹脂部11は、第2発泡樹脂部12よりも低倍率とされている。より具体的には、第1発泡樹脂部11の発泡倍率を、たとえば約10倍程度とし、第2発泡樹脂部12の発泡倍率を、たとえば約30倍程度にすることができる。
第1発泡樹脂部11は、たとえば、正方形や長方形等のおおむね矩形の平面形状を有し、車両に組み込まれたときに、シートの周縁部よりも内側の部分に配置され、搭乗者の臀部を支持する。図示の例において、第1発泡樹脂部11は、おおむね長方形の平面形状を有している。なお、第1発泡樹脂部11の平面形状は、矩形に限定されず、適用されるシート等の形状に応じて適宜変更することができる。第1発泡樹脂部11は、平面視で曲線状に設けられた曲線部を有してもよい。
第2発泡樹脂部12は、たとえば、第1発泡樹脂部11の外縁に沿って二以上の異なる方向に延在することができる。第2発泡樹脂部12は、車両に組み込まれたときに、シートの周縁部に配置され、搭乗者の上腿部を支持する。図示の例において、第2発泡樹脂部12は、おおむねL字型の平面形状を有し、平面視で長方形の第1発泡樹脂部11の短辺に沿う方向と長辺に沿う方向の異なる二方向に延伸している。
図示の例において、第2発泡樹脂部12の延在方向は、分離溝13の横断方向である第1の方向D1と、接合界面14の横断方向である第2の方向D2である。しかし、第2発泡樹脂部12の延在方向は、第1の方向D1と第2の方向D2に限定されず、第1の方向D1に対して角度を有する方向や、第2の方向D2に対して角度を有する方向であってもよい。また、第2発泡樹脂部12は、その一部が曲線状に延在していてもよい。すなわち、第2発泡樹脂部12は、平面視で曲線状に設けられた曲線部を有してもよい。
また、第2発泡樹脂部12の平面形状は、L字型に限定されず、適用されるシート等の形状に応じて、適宜変更することができる。第2発泡樹脂部12は、たとえば、矩形の平面形状を有する第1発泡樹脂部11の三辺に沿って延伸するチャネル型の形状や、矩形の第1発泡樹脂部11の四辺に沿って延伸する枠状に形成することができる。すなわち、第2発泡樹脂部12は、2以上の異なる方向に沿って延在することができる。
分離溝13は、第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12との間に設けられている。図示の例において、分離溝13は、第1発泡樹脂部11の外縁に沿って一方向に延在している。より具体的には、分離溝13は、おおむね長方形の平面形状を有する第1発泡樹脂部11の短辺に沿って、第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12の接合界面14の延在方向におおむね垂直な一方向に延在している。なお、分離溝13は、接合界面14の延在方向と異なる二以上の方向に延在することができ、発泡樹脂成形品10の平面視で第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12の間に曲線状に延在することもできる。
接合界面14は、第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12とが、たとえば融着によって接合された界面である。接合界面14は、分離溝13の横断方向である第1の方向D1と異なる第2の方向D2において、第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12との間に設けられている。図示の例において、接合界面14は、第1発泡樹脂部11の外縁に沿って、分離溝13の延在方向と異なる一方向に延在している。より具体的には、接合界面14は、おおむね長方形の平面形状を有する第1発泡樹脂部11の長辺に沿って、分離溝13の延在方向におおむね垂直な一方向に延在している。接合界面14は、第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12の間に、おおむね平坦な平面状に形成されている。
接合界面14は、第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12とを一体に連結し、少なくとも発泡樹脂成形品10の通常の使用において第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12とが分離しない程度の接合強度を有している。接合界面14と分離溝13は、図示の例においておおむね直交しているが、直角以外の鋭角または鈍角を形成する角度で互いに交差する異なる方向に延在してもよい。
以上のように、本実施形態の発泡樹脂成形品10では、発泡倍率の異なる第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12とが連続的に成形されている。そして、第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12は、第1の方向D1において分離溝13を介して隣接しており、第1の方向D1と異なる第2の方向D2において接合界面14を介して隣接している。ここで、第1の方向D1は、たとえば、分離溝13を横断する方向であり、分離溝13に交差する方向であり、分離溝13に直交する方向である。同様に、第2の方向D2は、たとえば、接合界面14を横断する方向であり、接合界面14に交差する方向であり、接合界面14に直交する方向である。
また、図2に示すように、第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12とは、分離溝13によって完全に分断されている必要はなく、分離溝13を横断する接続部15を介して接続されていてもよい。接続部15は、分離溝13の深さ方向の一端、すなわち発泡樹脂成形品10において、分離溝13の開口13aが形成されている表面と反対側の表面の近傍に設けられていてもよい。しかし、接続部15は、分離溝13の深さ方向における中間部、たとえば分離溝13の深さ方向における発泡樹脂成形品10の両端面よりも深さ方向における中央に近い位置に設けられていることが好ましい。
また、接続部15の厚さtは、第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12のそれぞれの原料である発泡樹脂粒子の平均粒径のうち、小さい方の2.0倍以下であることが好ましい。ここで、発泡樹脂粒子とは、樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡樹脂粒子である。発泡性樹脂粒子は、発泡機または予備発泡機で水蒸気等を用いて発泡または予備発泡されて多数の小孔を有する予備発泡樹脂粒子とされる。以下では、予備発泡樹脂粒子を単に発泡樹脂粒子ともいう。発泡樹脂粒子の嵩倍数は、目的とする発泡樹脂の発泡倍数に応じて調節することができる。
本実施形態の発泡樹脂成形品10において、第1発泡樹脂部11の原料である発泡樹脂粒子の平均粒径は、たとえば第2発泡樹脂部12の原料である発泡樹脂粒子の平均粒径よりも小さい。より具体的には、第1発泡樹脂部11の原料である発泡樹脂粒子の平均粒径は、たとえば、約2mm程度であり、第2発泡樹脂部12の原料である発泡樹脂粒子の平均粒径は、たとえば、約3mm程度である。すなわち、第1発泡樹脂部11の原料である発泡樹脂粒子の平均粒径は、たとえば、第2発泡樹脂部12の原料である発泡樹脂粒子の平均粒径の約2/3程度にすることができる。この場合、接続部15の厚さは、第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12のそれぞれの原料である発泡樹脂粒子の平均粒径のうち、小さい方の約2mmの2.0倍以下、すなわち約4mm以下にすることが好ましい。
[発泡樹脂成形金型]
図5は、本発明の一実施形態に係る発泡樹脂成形金型20を示す模式断面図である。なお、図5では、発泡樹脂成形金型20を簡略化して示している。
発泡樹脂成形金型20は、たとえば、固定型または凹型としての第1成形型21と、移動型または凸型としての第2成形型22とを備えている。第1成形型21は、第1の成形面21aを構成する凹部を有し、第2成形型22は、第2の成形面22aを構成する凸部を有している。第1成形型21と第2成形型22は、これら第1の成形面21aと第2の成形面22aとを互いに対向させた状態で設置される。
そして、第1成形型21の凹部である第1の成形面21a内に、第2成形型22の凸部である第2の成形面22aを挿入した状態として、第1成形型21と第2成形型22とを型締めする。これにより、対向する第1成形型21の第1の成形面21aと第2成形型22の第2の成形面22aとの間に、発泡樹脂成形品10を成形するためのキャビティCが形成される。また、第1成形型21および第2成形型22には、図示を省略する複数の蒸気口が所定のピッチで設けられている。
第1成形型21と第2成形型22は、それぞれインナープレート23を介してマスターフレーム24に固定されている。マスターフレーム24は、枠状の部材であり一方の開口が第1成形型21または第2成形型22によって閉鎖され、他方の開口が平板上の基板25によって閉鎖されている。これにより、第1成形型21の第1の成形面21aの反対側と、第2成形型22の第2の成形面22aの反対側に、それぞれ蒸気室26が形成されている。
マスターフレーム24には、蒸気供給源27から供給される高温の蒸気が流れる蒸気配管27aが接続され、蒸気供給源27から蒸気室26に蒸気配管27aを介して高温の蒸気が供給される。また、マスターフレーム24には、冷却水供給源28から供給される冷却水が流れる冷却水配管28aが接続され、蒸気室26の内部に配置された図示を省略する冷却水ノズルを介して第1成形型21および第2成形型22に冷却水を噴霧することができるように構成されている。
発泡樹脂成形金型20は、シャッター31と、このシャッター31をキャビティCに出没させる駆動機構32を備えている。シャッター31は、たとえば発泡樹脂成形金型20を横断する一方向に延在する平板状の部材であり、後述する仕切部材21b,22b(図6参照)とともに、キャビティCを第1キャビティC1と第2キャビティC2とに仕切る。図示の例において、シャッター31は、固定型である第1成形型21に設けられている。駆動機構32は、たとえばシャフト33と、このシャフト33を軸方向に伸縮させるエアシリンダ34とによって構成され、シャフト33の先端にシャッター31が取り付けられている。
駆動機構32は、エアシリンダ34によってシャフト33を伸縮させることで、シャフト33の先端に取り付けられたシャッター31を、第1成形型21と第2成形型22との間に形成されたキャビティCに突出させ、または、キャビティCから退避させる。この駆動機構32によって、シャッター31は、キャビティCに出没可能に設けられている。
固定型である第1成形型21は、第1の成形面21aに開口する原料フィーダー29を有している。原料フィーダー29は、シャッター31と後述する仕切部材21b,22b(図6参照)によって仕切られた、キャビティCの第1キャビティC1と第2キャビティC2にそれぞれ異なる原料を供給可能に、第1キャビティC1に臨む第1の原料供給口29aと、第2キャビティC2に臨む第2の原料供給口29bとを有している。原料フィーダー29の第1の原料供給口29aからは、発泡樹脂成形品10の第1発泡樹脂部11の原料である発泡樹脂粒子が供給され、原料フィーダー29の第2の原料供給口29bからは、発泡樹脂成形品10の第2発泡樹脂部12の原料である発泡樹脂粒子が供給される。なお、原料フィーダー29の第1の原料供給口29aおよび第2の原料供給口29bは、それぞれ単数でも複数でもよい。
図6から図8は、それぞれ、図5に示す発泡樹脂成形金型20の異なる位置における型締めされた第1成形型21と第2成形型22の断面図である。図6から図8に示す第1成形型21と第2成形型22の断面図は、それぞれ、図2から図4に示す発泡樹脂成形品10の断面図に対応している。
すなわち、図6は、図1に示す発泡樹脂成形品10のII-II線に沿う断面(図2参照)に対応する第1成形型21と第2成形型22の断面図である。また、図7は、図1に示す発泡樹脂成形品10のIII-III線に沿う断面(図3参照)に対応する第1成形型21と第2成形型22の断面図である。また、図8は、図1に示す発泡樹脂成形品10のIV-IV線に沿う断面(図4参照)に対応する第1成形型21と第2成形型22の断面図である。
本実施形態の発泡樹脂成形金型20は、図6に示すように、第1成形型21と第2成形型22の少なくとも一方に、仕切部材21b,22bが設けられていることを最大の特徴としている。この仕切部材21b,22bは、シャッター31の延在方向である一方向と異なる方向に延在し、シャッター31とともにキャビティCを第1キャビティC1と第2キャビティC2とに仕切る。以下、シャッター31と仕切部材21b,22bについて詳細に説明する。
本実施形態の発泡樹脂成形金型20は、キャビティCが形成された状態で、図6に示すように、仕切部材21b,22bの先端において第1成形型21と第2成形型22との間に間隙Gが形成されている。より詳細には、第1成形型21と第2成形型22の双方に仕切部材21b,22bが互いに対向して設けられている。そして、第1成形型21と第2成形型22が型締めされてキャビティCが形成された状態で、第1成形型21の仕切部材21bの先端と第2成形型22の仕切部材22bの先端との間に間隙Gが形成されている。
なお、仕切部材21b,22bの構成は、図示の例に限定されない。たとえば、仕切部材21b,22bは、第1成形型21と第2成形型22のいずれか一方に設けてもよい。この場合、仕切部材21bまたは仕切部材22bが設けられていない他方の成形型は、仕切部材21bまたは仕切部材22bの先端を嵌合させる凹部を有してもよい。また、キャビティCが形成された状態で、仕切部材21b,22bの先端において第1成形型21と第2成形型22との間に間隙Gを形成せず、仕切部材21b,22bの先端において第1成形型21と第2成形型22とが接触するようにしてもよい。
仕切部材21b,22bの先端において第1成形型21と第2成形型22との間に間隙Gを形成する場合に、この間隙Gの大きさは、第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12のそれぞれの互いに異なる原料である二種の発泡樹脂粒子の平均粒径のうち、小さい方の2.0倍以下に設定することができる。たとえば、前述のように、第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12の原料である異なる二種の発泡樹脂粒子の平均粒径が、それぞれ約2mm程度と約3mm程度である場合に、間隙Gの大きさは、小さい方の約2mmの2.0倍以下、すなわち約4mm以下にすることが好ましい。ここで、間隙Gの大きさとは、仕切部材21b,22bの突出方向すなわち発泡樹脂成形品10の分離溝13の深さ方向における間隙Gの寸法dである。この間隙Gの大きさは、発泡樹脂成形品10の分離溝13を横断する接続部15の厚さtに対応している。
本実施形態の発泡樹脂成形金型20において、シャッター31は、前述のように、第1成形型21からキャビティCに出没可能に設けられている。また、図8に示すように、本実施形態の発泡樹脂成形金型20において、第1成形型21は、キャビティCに突出するガイド部40を備えている。ガイド部40は、シャッター31の延在方向に沿う側面31aに沿って設けられ、シャッター31の出没を案内するガイド面41を有している。図示の例において、ガイド部40のガイド面41によって案内されるシャッター31の側面31aは、仕切部材21b,22bを横断する方向である第1の方向D1に延在している。
本実施形態の発泡樹脂成形金型20では、複数のガイド部40が、シャッター31の延在方向である一方向において、間隔をあけて配置されている。図7に示すように、第1成形型21のガイド部40が形成されていない部分では、第1成形型21からのシャッター31の突出量が、図8に示すガイド部40の先端からのシャッター31の突出量よりも多くなる。
このように、シャッター31の延在方向である一方向に沿って間隔をあけて配置された複数のガイド部40によって、図1および図4に示すように、発泡樹脂成形品10の第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12との接合界面14に沿って凹部16が形成される。図示の例では、シャッター31の延在方向である一方向に沿って間隔をあけて3つのガイド部40が配置され、発泡樹脂成形品10の第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12との接合界面14に沿って間隔をあけて3つの凹部16が形成されている。
[発泡樹脂成形品の製造方法]
図9は、本発明の一実施形態に係る発泡樹脂成形品の製造方法M1を示すフロー図である。本実施形態の発泡樹脂成形品の製造方法M1は、前述の発泡樹脂成形金型20を用いて前述の発泡樹脂成形品10を製造する製造方法である。本実施形態の発泡樹脂成形品の製造方法M1は、主に、原料充填工程S1と、成形工程S2と、押出工程S3とを有している。なお、以下に説明する工程以外の工程については、公知の発泡樹脂成形品の製造方法と同様の工程を採用することが可能である。
(原料充填工程)
原料充填工程S1では、まず、発泡樹脂成形金型20の第1成形型21と第2成形型22を型締めすることによってキャビティCを形成する。次に、シャッター31の駆動機構32であるエアシリンダ34を駆動させてシャフト33を伸長させ、シャフト33の先端に取り付けられたシャッター31をキャビティCに突出させる。これにより、図5から図8に示すように、キャビティCがシャッター31と仕切部材21b,22bによって第1キャビティC1と第2キャビティC2に仕切られる。
次に、原料フィーダー29の第1キャビティC1に臨む第1の原料供給口29aと第2キャビティC2に臨む第2の原料供給口29bから、それぞれ第1発泡樹脂部11の原料である第1発泡樹脂粒子と第2発泡樹脂部12の原料である第2発泡樹脂粒子を供給し、それぞれ第1キャビティC1と第2キャビティC2に充填する。これにより、第1キャビティC1と第2キャビティC2の間で、種類の異なる第1発泡樹脂粒子と第2発泡樹脂粒子とが混ざり合うことが防止される。
(成形工程)
成形工程S2は、駆動機構32のエアシリンダ34によってシャフト33を収縮させてシャッター31をキャビティCから退避させ、蒸気供給源27から蒸気配管27aを介して加熱された水蒸気を蒸気室26に供給する工程である。これにより、第1成形型21と第2成形型22の図示を省略する複数の蒸気口から第1キャビティC1と第2キャビティC2に加熱された水蒸気が供給され、充填工程S1で第1キャビティC1と第2キャビティC2にそれぞれ充填された第1発泡樹脂粒子と第2発泡樹脂粒子が、異なる発泡倍率で発泡する。そして、第1キャビティC1と第2キャビティC2において、それぞれ発泡倍率の異なる第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12が成形される。
同時に、成形された第1発泡樹脂部11の面と第2発泡樹脂部12の面が接触して融着され、発泡倍率の異なる第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12との間に接合界面14が形成される。以上により、第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12は、仕切部材21b,22bの延在方向を横断する第1の方向D1において仕切部材21b,22bを介して隣接し、シャッター31の延在方向を横断する第2の方向D2において接合界面14を介して隣接した状態になる。なお、仕切部材21b,22bの延在方向とシャッター31の延在方向とは異なる方向であることから、仕切部材21b,22bの横断方向である第1の方向D1と、シャッター31の横断方向である第2の方向D2も異なる方向である。
(押出工程)
押出工程S3では、たとえば冷却水供給源28から冷却水配管28aを介して冷却水を供給し、蒸気室26内に配置された不図示の冷却水ノズルから冷却水を噴射して第1成形型21および第2成形型22を冷却する。次に、第1成形型21と第2成形型22とを開き、たとえば不図示の押出ピンによって、第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12とが接合された発泡樹脂成形品10を発泡樹脂成形金型20から押し出す。
以上の各工程により、発泡樹脂成形品10が成形され、仕切部材21b,22bの横断方向である第1の方向D1において、仕切部材21b,22bを介して隣接していた第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12との間に仕切部材21b,22bの凸形状に対応する凹形状の分離溝13が形成される。そして、発泡倍率の異なる第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12が、仕切部材21b,22bの横断方向である第1の方向D1において分離溝13を介して隣接し、シャッター31の横断方向である第2の方向D2において接合界面14を介して隣接した発泡樹脂成形品10が得られる。
以下、本実施形態の発泡樹脂成形品10、発泡樹脂成形金型20、および発泡樹脂成形品の製造方法M1の作用について説明する。
本実施形態の発泡樹脂成形品10は、前述のように、発泡倍率の異なる第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12とが連続的に成形された発泡樹脂成形品10である。そして、第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12は、第1の方向D1において分離溝13を介して隣接しており、第1の方向D1と異なる第2の方向D2において接合界面14を介して隣接している。このような構成を備えた本実施形態の発泡樹脂成形品10は、前述のように、本実施形態の発泡樹脂成形金型20を用い、本実施形態の発泡樹脂成形品の製造方法M1によって製造することができる。
そして、本実施形態の発泡樹脂成形金型20は、発泡倍率の異なる第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12とが連続的に成形された発泡樹脂成形品10を成形する金型であり、キャビティCを形成する第1成形型21および第2成形型22と、キャビティCに出没可能に設けられ一方向に延在するシャッター31とを備えている。そして、第1成形型21と第2成形型22の少なくとも一方に、シャッター31の延在方向である一方向と異なる方向に延在し、シャッター31とともにキャビティCを第1キャビティC1と第2キャビティC2とに仕切る仕切部材21b,22bが設けられている。
この仕切部材21b,22bは、シャッター31のようにキャビティCへ出没可能に構成する必要はなく、駆動機構32を必要としない。また、発泡樹脂成形金型20に仕切部材21b,22bを設けても、シャッター31を屈曲させたり増設したりする場合と異なり、発泡樹脂成形金型20の大型化、複雑化、コストの増大等の問題が生じない。そのため、一方向をシャッター31によって仕切り、その他の方向を仕切部材21b,22bによって仕切ることで、シャッター31を屈曲させたり増設したりすることなく、発泡倍率の異なる第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12とを連続的に成形して異なる二以上の方向において隣接させることができる。
したがって、本実施形態の発泡樹脂成形品10および発泡樹脂成形金型20によれば、シャッター31を一方向に延在させて動作の信頼性と良好な作動を維持しつつ、仕切部材21b,22bをシャッター31の延在方向と異なる方向に延在させ、発泡倍率の異なる第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12とを連続的に成形して異なる二以上の方向において隣接させることが可能になる。
また、本実施形態の発泡樹脂成形品の製造方法M1によれば、前述の発泡樹脂成形金型20を用いることで、シャッター31の動作の信頼性と良好な動作が維持され、発泡樹脂成形金型20の大型化、複雑化、コストの増大等の問題を回避することができる。したがって、発泡倍率の異なる第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12とを連続的に成形して異なる二以上の方向において隣接させた発泡樹脂成形品10の製造において、生産性を向上させ、製造コストを低減することが可能になる。
また、本実施形態の発泡樹脂成形金型20は、前述のように、キャビティCが形成された状態で、仕切部材21b,22bの先端において第1成形型21と第2成形型22との間に間隙Gが形成されている。これにより、発泡樹脂成形金型20によって成形された発泡樹脂成形品10の第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12とは、分離溝13を横断する接続部15を介して接続される。すなわち、発泡樹脂成形金型20の仕切部材21b,22bの先端において第1成形型21と第2成形型22との間に間隙Gを形成し、発泡樹脂成形品10の第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12が接続部15を介して接続されるようにすることで、仕切部材21b,22bの先端における第1成形型21と第2成形型22との衝突を回避することができる。したがって、発泡樹脂成形金型20の損傷または損耗の防止と長寿命化が可能になる。これにより発泡樹脂成形品10の成形精度を向上させ、発泡樹脂成形品10の生産性を向上させることができる。
さらに、本実施形態の発泡樹脂成形金型20は、第1成形型21と第2成形型22の双方に仕切部材21b,22bが互いに対向して設けられている。そして、第1成形型21と第2成形型22との間にキャビティCが形成された状態で、第1成形型21の仕切部材21b,22bの先端と第2成形型22の仕切部材21b,22bの先端との間に間隙Gが形成されている。これにより、発泡樹脂成形金型20によって成形された発泡樹脂成形品10の接続部15は、仕切部材21b,22bによって形成される分離溝13の深さ方向における中間部に設けられている。
すなわち、発泡樹脂成形品10の接続部15を分離溝13の深さ方向における中間部に設け、第1成形型21と第2成形型22の双方に互いに対向する仕切部材21b,22bを設けることで、第1成形型21と第2成形型22のいずれか一方に仕切部材21b,22bを設ける場合と比較して、仕切部材21b,22bの突出方向の寸法を小さくすることができる。これにより、仕切部材21b,22bのたわみが抑制され、発泡樹脂成形品10の成形精度を向上させることができる。また、押出工程S3における発泡樹脂成形品10の型抜きが容易になり、生産性を向上させることができる。
また、本実施形態の発泡樹脂成形品10において、接続部15の厚さtは、第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12のそれぞれの互いに異なる原料である二種の発泡樹脂粒子の平均粒径のうち、小さい方の2.0倍以下である。すなわち、発泡樹脂成形金型20の仕切部材21b,22bの先端における第1成形型21と第2成形型22との間の間隙Gの大きさは、第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12のそれぞれの互いに異なる原料である二種の発泡樹脂粒子の平均粒径のうち、小さい方の2.0倍以下である。これにより、前述の原料充填工程S1および成形工程S2において、発泡樹脂成形金型20の第1キャビティC1と第2キャビティC2に充填された異なる二種の発泡樹脂粒子が、仕切部材21b,22bの先端における第1成形型21と第2成形型22との間の間隙Gを通って混ざり合うのを抑制することができる。
なお、接続部15の厚さtおよび間隙Gの大きさである寸法dは、第1成形型21と第2成形型22との干渉を確実に回避する観点から1mm以上であることが好ましい。また、接続部15の厚さtおよび間隙Gの大きさである寸法dは、二種の発泡樹脂粒子の平均粒径のうち、小さい方の2.0倍を超えると、異なる二種の発泡樹脂粒子が間隙Gを通って混ざり合う割合が増加する。これに対し、接続部15の厚さtおよび間隙Gの大きさである寸法dを二種の発泡樹脂粒子の平均粒径のうち、小さい方の2.0倍以下とすることで、接続部15以外の部分で二種の発泡樹脂粒子が混ざり合うのを極力防止することが可能になる。
さらに、本実施形態の発泡樹脂成形金型20において、シャッター31は、固定型である第1成形型21からキャビティCに出没可能に設けられている。そして、第1成形型21は、キャビティCに突出するガイド部40を備えている。さらに、ガイド部40は、シャッター31の延在方向である一方向に延在する側面31aに沿って設けられシャッター31の出没を案内するガイド面41を有している。
このような構成により、第1成形型21からキャビティCにシャッター31を突出させてキャビティCを仕切るときに、第1成形型21からキャビティCに突出したガイド部40のガイド面41によって、シャッター31の突出方向における先端により近い部分の側面31aを支持することができる。これにより、シャッター31の側面31aに交差する方向のたわみが抑制され、発泡樹脂成形品10の成形精度を向上させることができる。また、ガイド部40を有しない場合に成形することが困難な、シャッター31の突出量が多くなる厚みが大きい発泡樹脂成形品10を成形することが可能になる。
以上説明したように、本実施形態によれば、発泡倍率の異なる第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12とを異なる二以上の方向において隣接させた発泡樹脂成形品10を提供することができる。また、本実施形態によれば、シャッター31の信頼性の低下や作動不良を防止することができ、かつ大型化、複雑化およびコスト増等の問題が生じない発泡樹脂成形金型20を提供することができる。さらに、本実施形態によれば、発泡倍率の異なる第1発泡樹脂部11と第2発泡樹脂部12とを異なる二以上の方向において隣接させた発泡樹脂成形品の製造方法M1を提供することができる。
[自動車部品]
図10は、本発明の一実施形態に係る自動車部品TPの一例を示す斜視図である。本実施形態の自動車部品TPは、たとえば自動車等の床面とカーペットの間に配置されるティビアパッドである。自動車部品TPは、前述の発泡樹脂成形品10と同様の発泡樹脂成形品であり、前述の製造方法M1によって製造されている。自動車部品TPは、おおむね平坦な板状のフロアスペーサ部FSと、自動車の運転者の足を支持するフットレスト部FRと、踵を支持するヒールストッパ部HSとを備えている。
図示の例において、フットレスト部FRは、前述の発泡樹脂成形品10における第1発泡樹脂部11に対応し、フロアスペーサ部FSとヒールストッパ部HSは、前述の発泡樹脂成形品10における第2発泡樹脂部12に対応している。なお、フットレスト部FRの発泡倍率は、たとえば約20倍であり、フロアスペーサ部FSとヒールストッパ部HSの発泡倍率は、たとえば約30倍である。
すなわち、本実施形態の自動車部品TPでは、発泡倍率の異なる第1発泡樹脂部11としてのフットレスト部FRと、第2発泡樹脂部12としてのフロアスペーサ部FSおよびヒールストッパ部HSとが連続的に成形されている。また、第1発泡樹脂部11であるフットレスト部FRと、第2発泡樹脂部12であるフロアスペーサ部FSは、第1の方向D1において分離溝13を介して隣接しており、第1の方向D1と異なる第2の方向D2において接合界面14を介して隣接している。
このように、本実施形態の自動車部品TPによれば、前述の発泡樹脂成形品10と同様の発泡樹脂成形品を用いることで、発泡倍率の異なるフットレスト部FRと、フロアスペーサ部FSとを異なる二以上の方向において隣接させた自動車部品TPを提供することができる。
以上、図面を用いて本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。