JP6825817B2 - 4相系複合樹脂組成物、被覆鋼材および成型品 - Google Patents

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Description

本発明は、4相系複合樹脂組成物、被覆鋼材および成型品に関する。
流動浸漬用のポリエチレンは、メルトマスフローレイト(MFR)が主に10〜40(g/10min)の範囲のものが使用される。このMFR領域では、環境応力亀裂抵抗(ESCR)は、ASTM D1693Aによって測定されるF50(hrs)は10時間以下が大半を占める。このようにESCRF50(hrs)が短い(弱い)場合、使用時に歪による応力が発生・存在すると、外部環境物質(有機溶媒、水、界面活性剤(石鹸))など加わる場合にクレイズやクラック(高分子樹脂の特有変形降伏挙動)の発生・伝播により破壊を起こす。
これに関連して、本願発明者は三元共重合被覆材(LLDPEbased)を開発した(特許文献1参照)。
この三元共重合被覆材は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)に高相溶性の熱可塑性エラストマー(TPE)を溶融ブレンドし、LLDPE海相中にTPEのスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)をナノ分散(島相)させたモロフォロジーとすることにより、LLDPE/TPEの複合材中のTPEが、歪により発生する内部応力を緩和する構造を備えるものである。ここでTPEはLLDPEに比べ弾性率が一桁低く、三元共重合被覆材に歪(荷重)を加えた際に弾性率の低いTPEが優先的に歪を受け止めるため、海相のLLDPEへの影響は緩和される。また、TPEはエラストマー特性のゴム弾性を有するため、歪(荷重)を除いた後に復元力がある。
このような三元共重合被覆材は、無水マレイン酸などの不飽和脂肪酸(無水物)を付加してなるエチレン系樹脂のように反応性に長けた樹脂を添加してなる。添加によって、LLDPE/TPE間の相溶性を高めたり、界面反応剤として強固な結合をもたらせるとともに、TPEをナノ分散させるからである(ミクロ相分離の原理)。
このようにLLDPE/TPE間の界面を不飽和脂肪酸(無水物)などを介して化学結合させることにより強固な界面となり、応力集中によるクラックを防ぐことができる。
特許第5237016号公報
上記のような三元共重合被覆材(MFRは12g程度/10min.)は、鋼製排水溝のような厚め鋼板加工物の防食材としては有効であるが、薄鋼板や線材などの冷却速度の速いものに塗布する場合、低流動性や密着力が低下する傾向があるため今一歩のレベルであった。
本願発明者は、この課題点を解決すべく、三元共重合被覆材よりMFRを高めた流動性に優れる改良の被覆材の開発に着手した。
そして、高流動性による塗装加工性を大幅に改良して、用途を薄板や線材へも可能とすべく、使用するベースのLDPEとして、MFRが20以上40以下のものを使用とした。このMFR領域のLDPEは平均分子量が小さく、結晶化度も低い。このためESCRや機械特性、磨耗性などがやや劣る傾向にある。例えば、ESCRにおいてはLDPEの平均分子量が小さくなるほど、また結晶化度が低めへシフトするほど、一段と悪化する。これは平均分子量が小さく、結晶化度が低目傾向となれば、LDPE分子間の絡みが弱く、一方、非結晶の増加により分子間空隙領域が増え、歪に対する抵抗が弱くなり、さらには、外部環境物質が分子間中に進入しやすくなり、LDPEの分子の内部応力が強まることによるクレーズさらにはクラックへと成長し、破壊へと進むからである。
本願発明者は、このような課題点の解決または極力最小化にすべく、さらになる開発を行った。
本発明は上記のような課題を解決することを目的とする。
すなわち、本発明の目的は、流動性に優れるため塗装加工が容易であり、得られた皮膜は環境応力亀裂抵抗に優れ、密着力も高い4相系複合樹脂組成物を提供することである。また、それからなる皮膜を有する被覆鋼材を提供することである。さらに、それを成型してなる成型品を提供することである。
本発明者は鋭意検討し、上記課題を解決する方法を見出して本発明を完成させた。
本発明は次の(1)〜(8)である。
(1)低密度ポリエチレン(a)と、熱可塑性エラストマー(b)と、不飽和脂肪酸(無水物)を付加してなる変性(ポリ)エチレン系樹脂(c)と、無機フィラー(d)とを主成分として含み、熱溶融した状態で混錬すると、低密度ポリエチレン(a)および熱可塑性エラストマー(b)に対して、前記変性(ポリ)エチレン系樹脂(c)が架橋反応樹脂として機能してメカノケミカル反応を促進することで、低密度ポリエチレン(a)が海相、熱可塑性エラストマー(b)および無機フィラー(d)が島相となる海島構造を形成し、かつ熱可塑性エラストマー(b)からなる前記島相は直径が1000nm以下、アスペクト比が10以下となり、無機フィラー(d)の体積平均粒子径が1000μm以下であることを特徴とする、4相系複合樹脂組成物。
(2)前記無機フィラー(d)は、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウムおよび焼成カオリンからなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする、上記(1)に記載の4相系複合樹脂組成物。
(3)前記低密度ポリエチレン(a)100質量部に対して、前記熱可塑性エラストマー(b)を1〜13質量部、前記変性(ポリ)エチレン系樹脂(c)を10〜25質量部、前記無機フィラー(d)を1〜8質量部含むことを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の4相系複合樹脂組成物。
(4)同一条件で溶融混錬したときの前記低密度ポリエチレン(a)の粘度(ηa)と前記熱可塑性エラストマー(b)の粘度(ηb)とを比較すると、ηa≦ηbであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の4相系複合樹脂組成物。
(5)前記低密度ポリエチレン(a)が、密度が0.90〜0.94g/cm3、かつ190℃、2.16kgでのメルトマスフローレイトが15g/10分〜40g/10分のエチレン・α−オレフィン共重合体を主成分として含むことを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の4相系複合樹脂組成物。
(6)前記変性(ポリ)エチレン系樹脂(c)は、エチレン系樹脂に対して不飽和カルボン酸
(無水物)を0.8〜1.5質量%を付加してなるものであることを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の4相系複合樹脂組成物。
(7)上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の4相系複合樹脂組成物からなる皮膜を有する被覆鋼材。
(8)上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の4相系複合樹脂組成物からなる成型品。
本発明によれば、流動性に優れるため塗装加工が容易であり、得られた皮膜は環境応力亀裂抵抗に優れ、密着力も高い4相系複合樹脂組成物を提供することができる。また、それからなる皮膜を有する被覆鋼材を提供することができる。さらに、それからなる成型品を提供することができる。
実施例3の組成物のTEM画像である。 比較例3の組成物のTEM画像である。
本発明について説明する。
本発明は、低密度ポリエチレン(a)と、熱可塑性エラストマー(b)と、不飽和脂肪酸(無水物)を付加してなる変性(ポリ)エチレン系樹脂(c)と、無機フィラー(d)とを主成分として含み、熱溶融した状態で混練すると、低密度ポリエチレン(a)および熱可塑性エラストマー(b)に対して、前記変性(ポリ)エチレン系樹脂(c)が架橋反応樹脂として機能してメカノケミカル反応を促進することで、低密度ポリエチレン(a)が海相、熱可塑性エラストマー(b)および無機フィラー(d)が島相となる海島構造を形成し、かつ熱可塑性エラストマー(b)からなる前記島相は直径が1000nm以下、アスペクト比が10以下となり、無機フィラー(d)の体積平均粒子径が1000μm以下であることを特徴とする、4相系複合樹脂組成物である。
このような4相系複合樹脂組成物を、以下では「本発明の組成物」ともいう。
本発明の組成物が含む低密度ポリエチレン(a)について説明する。
低密度ポリエチレン(a)として、空気中の酸素またはラジカル開始剤を触媒とし、1000〜4000気圧の高圧下で製造される低密度ポリエチレンが挙げられる。
また、低密度ポリエチレン(a)は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDEP)であることが好ましい。
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDEP)として、チーグラー・ナッタ系またはメタロセン系などの触媒の存在下に中低圧の圧力下でエチレンとα−オレフィンとを気相内、溶液相内あるいはスラリー相内などの公知の方法で共重合したエチレン−α−オレフィン共重合体が挙げられる。
ここで用いるα−オレフィンはプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1など炭素数3以上のα−オレフィンが挙げられる。
低密度ポリエチレン(a)(直鎖状低密度ポリエチレン(LLDEP)を含む)は、JIS K7112の試験方法に基づいて測定した密度が0.90〜0.94g/cm3の範囲であり、かつ、JIS K7210の試験方法に基づいて測定したメルトマスフローレイト(温度190℃、荷重2.16kg)が15g/10分〜40g/10分の範囲のものであることが好ましい。
本発明の組成物が含む熱可塑性エラストマー(b)について説明する。
熱可塑性エラストマー(b)として、スチレン系TPE、オレフィン系TPE、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン系TPEなどが挙げられる。
熱可塑性エラストマー(b)は、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)であることが好ましい。
スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)として、ポリスチレン−ポリブタジエン、ポリスチレン−ポリイソプレン、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)−ポリスチレンなどの共重合体および不飽和カルボン酸誘導体が挙げられる。
不飽和カルボン酸誘導体として、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、グリシジル酸などおよびその無水物、金属塩などを付加したものが挙げられる。
本発明の組成物は、低密度ポリエチレン(a):100質量部に対して、熱可塑性エラストマー(b)を1〜13質量部含むことが好ましく、2〜11質量部含むことがより好ましく、3〜10質量部含むことがさらに好ましい。
本発明の組成物において、熱可塑性エラストマー(b)の含有量が多すぎると、熱可塑性エラストマーのミクロ分散構造が損なわれ、島構造の巨大化により低密度ポリエチレン(a)の海構造の界面で凝集応力が高まり、クラック成長が促進されESCR(ストレスクラッキング性)の改良に繋がらない。また、表面硬度も低くなり、磨耗性も悪くなる。逆に含有量が少ない場合は、緩和効果が小さくESCR、磨耗性などの改善への寄与が低い。
また、同一条件で溶融混錬したときの低密度ポリエチレン(a)の粘度(ηa)と熱可塑性エラストマー(b)の粘度(ηb)とを比較したときに、ηa≦ηbであることが好ましい。より流動性に優れるため塗装加工がより容易であり、得られた皮膜は環境応力亀裂抵抗により優れ、密着力もより高い本発明の組成物が得られるからである。
ここで粘度(ηa)および粘度(ηb)は、低密度ポリエチレン(a)および熱可塑性エラストマー(b)を溶融状態にし、キャピラリーを通して流出させ、そのときの押し出し荷重より算出する溶融粘度であることが好ましい。このような粘度はレオロジー特性評価用のキャピラリーレオメーター(流動特性測定装置)によって、測定することができる。
本発明の組成物が含む変性(ポリ)エチレン系樹脂(c)について説明する。
変性(ポリ)エチレン系樹脂(c)は、不飽和脂肪酸(無水物)を付加してなるものである。
変性(ポリ)エチレン系樹脂(c)は、高密度ポリエチレンや、前記低密度ポリエチレン(a)(直鎖状低密度ポリエチレンを含む)などのエチレン系樹脂に不飽和カルボン酸(無水物)がグラフト共重合したものや、その誘導体の不飽和カルボン酸エステル、金属塩などが挙げられる。
不飽和カルボン酸はアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、グリシジル酸、シトラコン酸、メサコン酸などのC3〜C24の不飽和モノカルボン酸、不飽和ポリカルボン酸などが挙げられる。これらの中で好ましいのは、マレイン酸である。
変性(ポリ)エチレン系樹脂(c)は、エチレン系樹脂に対して不飽和カルボン酸(無水物)を0.8〜1.5質量%を付加してなるものであることが好ましい。
本発明の組成物は、低密度ポリエチレン(a):100質量部に対して、変性(ポリ)エチレン系樹脂(c)を10〜25質量部含むことが好ましく、11〜22質量部含むことがより好ましく、13〜20質量部含むことがさらに好ましい。
変性(ポリ)エチレン系樹脂(c)における不飽和脂肪酸量が多すぎると、樹脂間の架橋が進み、高分子化により流動性の低下や場合によってはゲル化まで進み好ましくない。逆に少なすぎる場合は、密着力に劣り被覆材としての機能の面で好ましくない。また、熱可塑性エラストマー(b)のナノ分散効果が薄れ、ESCRや磨耗性などの効果も薄れる。
本発明の組成物が含む無機フィラー(d)について説明する。
無機フィラー(d)は、少なくとも一部の原子の規則配列が途切れているため、原子自体が高活性で反応性に富んでいる。このため周辺の水分などの活性な分子と反応して表面に水酸基(OH基)などを形成する。この水酸基は無機フィラー表面に存在し反応活性点となり、カルボン酸などと縮合反応などの化学結合を形成し、構造形態、物性などへの影響を与える。
無機フィラー(d)は、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)および焼成カオリンからなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、酸化ケイ素および/または酸化チタンであることがより好ましい。
無機フィラー(d)として酸化ケイ素を用いる場合、湿式シリカよりも乾式シリカを用いる方が好ましい。乾式シリカは水分含有率が0.1質量%以下のものであるが好ましい。
無機フィラー(d)として酸化チタンを用いる場合、アナターゼ結晶形のものであってもよいが、顔料として着色力、隠蔽力に優れるルチル結晶形のものであることが好ましい。
無機フィラー(d)は、その体積平均粒子径が1000μm以下のものであることが好ましく、0.01〜1000μmのものであることがより好ましく、0.1〜100μmのものであることがさらに好ましい。このような体積平均粒子径であると、本発明の組成物を流動浸漬用として用いた場合に、流動浸漬槽内における浮上性が良好となるため、塗装加工に優れ均一な皮膜を形成しやすく、長寿命を保持することができるからである。
本発明の組成物は、低密度ポリエチレン(a):100質量部に対して、無機フィラー(d)を1〜8質量部含むことが好ましく、1.2〜7.5質量部含むことがより好ましい。
無機フィラー(d)の量が多すぎると、接着機能の役割を果たす不飽和脂肪酸のカルボン酸との結合部位が増加するため、密着力の低下へと進み、被覆材としての機能低下となる。逆に少なすぎると、架橋密度が低くなるため、ESCR、摩耗性などの改善が減少する。
本発明の組成物は、上記のような低密度ポリエチレン(a)と、熱可塑性エラストマー(b)と、不飽和脂肪酸(無水物)を付加してなる変性(ポリ)エチレン系樹脂(c)と、無機フィラー(d)とを主成分として含む。
ここで主成分とは、低密度ポリエチレン(a)と、熱可塑性エラストマー(b)と、不飽和脂肪酸(無水物)を付加してなる変性(ポリ)エチレン系樹脂(c)と、無機フィラー(d)との合計割合が70質量%以上であることを意味するものとする。この合計割合は80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、実質的に100質量%であることがさらに好ましい。ここで実質的に100質量%とは、製造過程や原料から意図せずに含まれる成分を除き、その他の成分を含まないことを意味する。
以下において「主成分」および「実質的に含む」と記した場合、同様の意味とする。
本発明の組成物はその他の添加剤として、一般的に知られているポリオレフィンの酸化防止剤、熱老化防止剤、オゾン老化防止剤などの老化防止剤、サルチル酸誘導体、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダード・アミン系などの紫外線吸収剤、光安定剤、カーボンブラック、酸化鉄などの無機系顔料、アゾ系、ニトロ、ニトロソ系など、有機顔料などの着色剤、タルク、雲母などの充填剤、滑剤など、各種の添加剤を本発明の性能を損なわない範囲において含んでも良い。
上記のような低密度ポリエチレン(a)、熱可塑性エラストマー(b)、不飽和脂肪酸(無水物)を付加してなる変性(ポリ)エチレン系樹脂(c)、および、無機フィラー(d)、ならびに必要に応じてその他の添加剤を熱溶融した状態で混錬すると、図1に示すような、低密度ポリエチレン(a)および熱可塑性エラストマー(b)に対して、前記変性(ポリ)エチレン系樹脂(c)が架橋反応樹脂として機能してメカノケミカル反応を促進することで、低密度ポリエチレン(a)が海相、熱可塑性エラストマー(b)および無機フィラー(d)が島相となる海島構造を形成する。
ここで、低密度ポリエチレン(a)、熱可塑性エラストマー(b)、不飽和脂肪酸(無水物)を付加してなる変性(ポリ)エチレン系樹脂(c)、および、無機フィラー(d)、ならびに必要に応じてその他の添加剤の混錬は、混錬機を用いたリアクティブプロセッシング法に相当する熱溶融混錬である。また、混錬機の混練温度は、低密度ポリエチレン(a)の融点温度以上〜200℃(好ましくは20〜100℃)高い温度とすることが好ましい。
また、ここで熱可塑性エラストマー(b)からなる島相は直径が1000nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは50nm以下、アスペクト比が10以下(好ましくは1〜3)となる。
なお、図1に示すような120,000倍のTEM画像において確認される、熱可塑性エラストマー(b)からなる島相の中で20〜50個をランダムに選び出し、各々の島相について最長径と最短径とをノギスを用いて計測し、その比(最長径/最短径)をその島相のアスペクト比とし、その平均値((最長径+最短径)/2)をその島相の直径とする。さらに、それらランダムに選び出した全ての島相についてのアスペクト比および直径の単純平均値を求めて、その組成物に含まれる島相のアスペクト比および直径とする。
4相系複合被覆材組成物の構造により、海構造の低密度ポリエチレン(a)のストレスによるクラックを島構造の熱可塑性エラストマー(b)が緩和する役割を果たしている。第4成分の無機フィラー(d)は、不飽和脂肪酸のカルボン酸と縮合反応を起こす。メカニズムの一例として、不飽和脂肪酸の不飽和部(二重結合)が低密度ポリエチレン(a)や熱可塑性エラストマー(b)とラジカル反応に起因したグラフト結合を形成し、分子量を増加させ、さらにはグラフト結合した不飽和脂肪酸のカルボン酸と無機フィラーが縮合反応により化学結合を増幅させ、架橋化が進み、架橋密度が高まり、ESCR、機械特性、磨耗性などに寄与すると考える。
本発明の組成物の形状等は特に限定されない。ペレット状であってもよいし、パウダー状であってもよい。ペレット状の本発明の組成物をさらに粉砕等して粉状(パウダー状)のものを得ることができる。
本発明の組成物の製造方法について説明する。
上記のような低密度ポリエチレン(a)、熱可塑性エラストマー(b)、不飽和脂肪酸(無水物)を付加してなる変性(ポリ)エチレン系樹脂(c)、および、無機フィラー(d)、ならびに必要に応じてその他の添加剤を、混錬機を用いて溶融混錬する。混練機の混練温度は、低密度ポリエチレン(a)の融点より高い温度で行う。好ましくは融点温度より20℃以上の高い温度で混練する。
混練機としては、バンバリミキサー、加圧ニーダー、ニーダーなどの密閉型混練機、単軸押出機、二軸押出機などの連続式混練機が用いられるが、連続的に混練が行え、短時間で混練能に優れる二軸押出機が最も好ましい。
混練方法は、混練する各成分を混練機の供給口へ直接投入し供給する方法、混練する各成分をタンブラー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサーなどの混合器を用いて事前に均一混合したのち混合物を混練機の供給口へ投入する方法があるが、各成分をより均一に混練するには、混合器を用いて事前に混合した後に供給することが好ましい。
本発明は、上記のような本発明の組成物からなる皮膜を有する被覆鋼材を含む。
この被覆鋼材における鋼材の部分として、具体的には、熱圧延鋼、冷熱圧延鋼、溶融亜鉛メッキ鋼、電気亜鉛メッキ鋼、溶融合金化亜鉛メッキ鋼、アルミニュウム亜鉛合金メッキ鋼、アルミニュウムマグネシュウム、亜鉛合金メッキ鋼、ステンレス鋼などの板、パイプ、形鋼などが挙げられる。また、アルミニュウム、マグネシュウム、銅、チタンなどの板、パイプ、形鋼などの公知金属物が挙げられる。
このような鋼材の表面において、例えば本発明の組成物を熱溶融し、その後、冷却することで皮膜を形成して、被覆鋼材を得ることができる。
また、例えば鋼材の表面に化成処理皮膜層およびエポキシプライマー層が形成されたものを加熱して本発明の組成物を熱融着することで、エポキシプライマー層の表面上に、本発明の組成物からなる皮膜を形成することができる。
皮膜の厚さは0.2〜1.0mmであることが好ましい。皮膜は薄いので、溶融状態の本発明の組成物を鋼材の表面に塗布した後の冷却速度は早い。具体的には、例えば40〜120℃/minの冷却速度となり得る。このように早い冷却速度で冷却したとしても、得られる皮膜は環境応力亀裂抵抗に優れ、密着力も高い。
被覆鋼材の具体的用途として、水道管、水管、ガス管、プラント配管などの鋼材、路側柱、標識柱、防護柵、鋼製排水溝、グレーチング、照明灯柱などの道路用資材、落石防止用金網柵、農業用支柱、パイプハウス、U字フリューム、防風施設鋼管支柱などの農業資材、薬品運搬用タンク内ライニング材、薬品保存タンクなどの耐薬品容器などの防食対策用塗覆材、魚網、生簀用手摺管、生簀用支柱、生簀用歩行デッキなどの漁業資材などが挙げられる。
本発明は、上記のような本発明の組成物からなる成型品を含む。
成型品は、例えば従来公知の方法で得ることができる。例えば本発明の組成物を溶融し、型へ流し込む射出成型や、押し出しによる押出成型などの成型する方法が挙げられる。
実施例1〜8および比較例1〜8の各々について、第1表に示す質量比(質量部)となるように、各成分を混練機(二軸押出機、(株)第一サービス製、TESW、スクリュー直径:57mm)の供給口へ供給し、混錬した。ここで混錬は、スクリュー回転数を150rpmとし、リアクティブプロセッシング法に相当する熱溶融混錬とした。混錬機の混練温度は、低密度ポリエチレン(a)の融点よりも20℃高い温度とした。そして、二軸押出機の口金より押出された組成物をペレットとして得た。ここでペレットサイズの目安は、直径×長さ=2mm×3mmとした。
このようにして、実施例1〜8および比較例1〜8の各々に係る組成物(ペレット状の組成物)を得た後、各々について、MFR、密度、硬度、耐環境応力亀裂、密着力について測定および評価を行った。
流動特性MFR(g/10分)は、JIS K7210に準拠し、測定温度190℃、2.16kgで押出評価した。
密度(g/cm3)は、JIS K7112に準拠した。
硬度は、JIS K7215に準拠し、デュロメータータイプDにて評価した。
耐環境応力亀裂は、ASTM D1693に準拠し、厚み3mm、ノッチ0.5mmの複数のシート試験片を作成して、10%界面活性剤(NS210)の水溶液中50℃に浸漬し、全シート試験片の半数に亀裂の進度を確認するまでの時間(第1表中、F50と表した)とした。
密着力は、JIS G3469に準拠し、次のように測定した。
初めに、鋼板(SS400、スチールグリッドG70にてブラスト処理したもの)を用意し、キシレン液に鋼板を2時間浸した。2時間後、キシレン液から取り出し、ウエスまたはガーゼで拭き取った。そして、アセトンで洗い流した後、200℃に昇温しておいたオーブン中に鋼板を入れ、前加熱を行った。
次に、ペレット状組成物を200℃で熱プレスし、厚さ1mmシートを作成した。そして、シートを鋼鈑と同寸法に成型した後、260℃に加熱して調整した鋼鈑上に乗せ、シートが溶融してから1分間放置した。これによってシートが鋼鈑に接着する。そして、室内で充分に放冷した後、インストロンジャパンカンパニィリミテッド型式3366を用いて、90度ピール剥離で測定した。ここで引張速度は50mm/分とした。
密着力は以下のように判断した。
・50N/cmを超える場合:最良(◎)
・35N/cm以上50N/cm未満の場合:良い(○)
・20N/cm以上35N/cm以下の場合:やや劣る(△)
・20N/cm未満の場合:不良(×)
実施例1〜8および比較例1〜8について、各組成と試験結果(MFR、密度、硬度、耐環境応力亀裂、密着力)を第1表に示す。
さらに、実施例3および比較例3に係る組成物については、TEM(透過型電子顕微鏡、日立製作所社製、H7100FA型)を使用して写真(TEM画像、倍率は120,000)を得た。ここで、前処理としての切片作成はウルトラミクロトーム、クライオシステムを用いた。また、四酸化ルテニウム染色剤により染色した。
実施例3の組成物のTEM画像を図1、比較例3の組成物のTEM画像を図2に示す。
第1表に示すように、表面に活性基OHを保有する無機フィラー(d)を含む実施例1〜8に係る組成物は性能が優れることが分かった。これは無機フィラーが無水マレイン酸樹脂の有機カルボン酸と重縮合反応による化学結合を高め、架橋密度が高くなり高分子量となったためと考えられる。
耐環境応力亀裂(F50)の到達時間が1000時間を越え、かつ、密着力が35N/cm以上の場合、合格と判断した。その結果、実施例1〜8はすべて合格、比較例1〜8は全て不合格と判断された。
また、図1のTEM画像より、狙い通りの海相LLDPE/島相TPE/島相無機フィラーの海島構造が形成されていることが確認できる。また、島相TPEは200nm以下(50nm以下が主体)であり、アスペクト比が10以下(具体的には1〜3程度)となっていることが確認できる。

Claims (5)

  1. 密度が0.90〜0.94g/cm 3 、かつ190℃、2.16kgでのメルトマスフローレイトが15g/10分〜40g/10分の低密度ポリエチレン(a)と、熱可塑性エラストマー(b)と、不飽和脂肪酸(無水物)を付加してなる変性(ポリ)エチレン系樹脂(c)と、乾式シリカおよび/またはルチル結晶形の酸化チタンである無機フィラー(d)とを主成分として含み、熱溶融した状態で混錬すると、低密度ポリエチレン(a)および熱可塑性エラストマー(b)に対して、前記変性(ポリ)エチレン系樹脂(c)が架橋反応樹脂として機能してメカノケミカル反応を促進することで、低密度ポリエチレン(a)が海相、熱可塑性エラストマー(b)および無機フィラー(d)が島相となる海島構造を形成し、かつ熱可塑性エラストマー(b)からなる前記島相は直径が1000nm以下、アスペクト比が10以下となり、無機フィラー(d)の体積平均粒子径が1000μm以下であり、前記低密度ポリエチレン(a)100質量部に対して、前記熱可塑性エラストマー(b)を3〜10質量部、前記変性(ポリ)エチレン系樹脂(c)を13〜20質量部、前記無機フィラー(d)を1.2〜7.5質量部含むことを特徴とする、4相系複合樹脂組成物。
  2. 同一条件で溶融混錬したときの前記低密度ポリエチレン(a)の粘度(ηa)と前記熱可塑性エラストマー(b)の粘度(ηb)とを比較すると、ηa≦ηbであることを特徴とする請求項1に記載の4相系複合樹脂組成物。
  3. 前記変性(ポリ)エチレン系樹脂(c)は、エチレン系樹脂に対して不飽和カルボン酸(無水物)を0.8〜1.5質量%を付加してなるものであることを特徴とする、請求項1または2に記載の4相系複合樹脂組成物。
  4. 請求項1〜のいずれか一項に記載の4相系複合樹脂組成物からなる皮膜を有する被覆鋼材。
  5. 請求項1〜のいずれか一項に記載の4相系複合樹脂組成物からなる成型品。
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