JP5753816B2 - 成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物、並びに該樹脂組成物を用いた成形体に関する。より詳細には、本発明は、良好な成形性を有しつつ、かつ高い耐水性を有する樹脂組成物、並びに該樹脂組成物を用いた成形体に関する。
ポリオレフィン樹脂は、比較的安価であり、かつ成形性、耐熱性、機械的特性及び外観等に優れている。このため、ポリオレフィン樹脂は、各種成形品に加工されており、多くの分野で使用されている。例えば、上記ポリオレフィン樹脂を含む材料は、押出成形などの各種の成形法により成形体とされ、デッキ材等として用いられている。
上記成形体を得るための材料の一例として、下記の特許文献1には、熱可塑性樹脂である容器包装リサイクル材と、無水マレイン酸変性された熱可塑性樹脂と、無機質粉体とを含む複合材料が開示されている。ここでは、無水マレイン酸変性された熱可塑性樹脂の使用により、熱可塑性樹脂と無機質粉体との界面で補強効果が得られ、熱可塑性樹脂と無機質粉体との密着性が高くなることが記載されている。
一方で、有機無機複合材料間の親和性を高めるために、上記無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂を用いる方法以外の方法として、樹脂被覆金属体の分野では、シラン変性ポリオレフィン樹脂を用いる方法が知られている。例えば、下記の特許文献2には、シラングラフト変性されたポリオレフィン樹脂を用いた樹脂被覆金属体が開示されている。
ところで、デッキ材などに用いられる上記成形体は、長期の降雨などにより水に浸漬された条件又は水が付着した条件で使用されることがある。このため、上記成形体には、要求性能として、耐水性が強く求められる。
また、デッキ材などに用いられる成形体は、屋外の過酷な日射条件下で使用されることが多い。このため、上記成形体には、要求性能として、高い強度と高い寸法安定性とが求められることがある。
しかしながら、特許文献1のように、無水マレイン酸変性された熱可塑性樹脂を用いた成形体では、該成形体が水に浸漬された条件又は水が付着した条件で使用されると、成形体の強度が低下する傾向がある。すなわち、特許文献1に記載の成形体では、耐水性が比較的低いという問題がある。
特許文献2では、シラン変性ポリオレフィン樹脂は、金属体を被覆するための材料として開示されているにすぎない。さらに、押出成形体を得るために、仮に特許文献2に記載のシラン変性ポリオレフィン樹脂を含む材料を押出機によりダイから押し出したとしても、ダイに目ヤニと呼ばれるダイスカスが発生して、時間の経過と共にダイに蓄積することがある。さらに、ダイに蓄積したダイスカスが炭化することもある。この結果、ダイから押し出された押出成形体にダイスカス又はその炭化物が付着し、押出成形体の外観及び機械的特性に悪影響があることがある。さらに、成形を長時間連続して行うことができず、半日に一度程度の頻度でダイの清掃が必要となるなどの問題があり、押出成形体の生産性が悪い。
一方で、架橋樹脂の滞留を抑制するために、押出成形体を得る際に特殊な形状のスクリューを用いる方法が開示されている。しかしながら、この場合には、成型プロセスが限定される。さらに、特許文献3に記載のスクリューは、一般的な押出成形等の成形加工プロセスには適さないことがある。
特開2007−138137号公報 特開平06−210796号公報 特開2000−263630号公報
本発明の目的は、良好な成形性を有しつつ、かつ高い耐水性を有する樹脂組成物、並びに該樹脂組成物を用いた成形体を提供することである。
本発明の限定的な目的は、良好な成形性と高い耐水性とを有するだけでなく、高い寸法安定性を有する樹脂組成物、並びに該樹脂組成物を用いた成形体を提供することである。
本発明のさらに限定的な目的は、良好な成形性と高い耐水性とを有するだけでなく、高い強度を有する樹脂組成物、並びに該樹脂組成物を用いた成形体を提供することである。
本発明の広い局面によれば、無機質粉体と、シラン変性ポリオレフィン樹脂とを含み、上記無機質粉体が、フライアッシュ又は下水汚泥焼却灰であり、上記フライアッシュ又は上記下水汚泥焼却灰である上記無機質粉体の含有量が70重量%以上である、樹脂組成物が提供される。
本発明に係る樹脂組成物の他の特定の局面では、上記無機質粉体は二酸化ケイ素を含有する。上記無機質粉体100重量%中、上記二酸化ケイ素の含有量は30重量%以上であることが好ましい。
本発明に係る樹脂組成物のさらに他の特定の局面では、上記無機質粉体は酸化アルミニウムを含有する。上記無機質粉体100重量%中、上記酸化アルミニウムの含有量は10重量%以上であることが好ましい。
本発明に係る樹脂組成物の別の特定の局面では、上記無機質粉体は二酸化ケイ素と酸化アルミニウムとを含有する。上記無機質粉体100重量%中、上記二酸化ケイ素と上記酸化アルミニウムとの合計の含有量は40重量%以上であることが好ましい。上記無機質粉体100重量%中、上記二酸化ケイ素の含有量が30重量%以上かつ上記酸化アルミニウムの含有量が10重量%以上であることが好ましい。
本発明に係る樹脂組成物の他の特定の局面では、上記無機質粉体は酸化カルシウムを含有する。
本発明に係る樹脂組成物の別の特定の局面では、上記無機質粉体はフライアッシュである。
本発明に係る樹脂組成物の他の特定の局面では、上記シラン変性ポリオレフィン樹脂の含有量が1重量%以上、30重量%以下である。
本発明に係る成形体は、本発明に従って構成された樹脂組成物が成形された成形体である。
本発明に係る樹脂組成物は、無機質粉体とシラン変性ポリオレフィン樹脂とを含み、上記無機質粉体の含有量が60重量%以上であるので、良好な成形性を有しつつ、かつ高い耐水性を有する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る樹脂組成物は、無機質粉体と、シラン変性ポリオレフィン樹脂とを含む。本発明に係る樹脂組成物100重量%中、上記無機質粉体の含有量は60重量%以上である。本発明に係る樹脂組成物100重量%中、上記無機質粉体の含有量は70重量%以上であることが好ましい。
デッキ材などに用いられる成形体は、長期の降雨などにより水に浸漬される条件又は水が付着した条件で使用されることがある。このため、上記成形体には、要求性能として、耐水性が強く求められている。
本願発明者は、無機質粉体とシラン変性ポリオレフィン樹脂とを含み、上記無機質粉体の含有量が60重量%以上である組成の採用によって、良好な成形性を維持しつつ、耐水性を高めることができることを見出した。
また、デッキ材などに用いられる上記成形体は、屋外の過酷な日射条件下で使用されることが多い。このため、上記成形体には、要求性能として、高い強度(高い応力)と高い寸法安定性(低い線膨張係数)とが求められることがある。さらに、成形体には、表面に傷がなく、表面が平滑であることが望まれることがある。
本願発明者は、無機質粉体とシラン変性ポリオレフィン樹脂とを含み、上記無機質粉体の含有量が70重量%以上である組成の採用によって、高い強度と高い寸法安定性とを確保し、更に良好な成形性を維持しつつ、耐水性をも高めることができることを見出した。従って、強度と寸法安定性とを良好にする観点からは、本発明に係る樹脂組成物100重量%中、上記無機質粉体の含有量は70重量%以上であることが好ましい。特に、上記無機質粉体の含有量が70重量%以上であると、成形体の寸法安定性がかなり良好になる。
より具体的には、本発明に係る樹脂組成物が上記無機質粉体を60重量%以上含む場合に、本発明に係る樹脂組成物は良好な成形性を有し、該樹脂組成物を用いた成形体は、水の存在する環境下においても強度が高く保持される。さらに、本発明に係る樹脂組成物が上記無機質粉体を70重量%以上含む場合に、該樹脂組成物を用いた成形体は、屋外の日射条件下でも十分な強度と十分な寸法安定性とを示し、水の存在する環境下においても強度が高く保持される。従って、本発明に係る樹脂組成物及び成形体は、このような性能が要求される有機無機複合樹脂組成物として好適に用いられる。
本発明における上記組成の採用により、特に上記無機質粉体の含有量が70重量%以上であることによって、JIS K7171に準拠して測定される上記成形体の曲げ応力を20MPa以上にすることができ、25MPa以上にすることもでき、30MPa以上にすることもできる。さらに、JIS K7197に準拠して測定される上記成形体の線膨張係数を10×10−5/℃以下にすることができ、8×10−5/℃以下にすることもできる。しかも、成形体の表面に傷を無くし、成形体の表面を平滑にすることもできる。
本発明に係る樹脂組成物を用いた成形体は、水の存在する環境下でもシラン変性ポリオレフィン樹脂と無機質粉体との密着性が低下し難い。従来の無水マレイン酸変性樹脂を用いた成形体では、樹脂成分と無機成分との間の結合が水素結合であるので、水が界面に浸入すると水素結合が切断されやすい。これに対し、シラン変性ポリオレフィン樹脂を用いた成形体では、樹脂成分と無機成分との間の結合が脱水縮合による化学結合であると考えられるため、水が界面に浸入しても結合が切れ難く、強度が高く維持されると示唆される。
また、本発明に係る樹脂組成物が容器包装リサイクル材などの熱可塑性樹脂を含んでいても、耐水性及び成形性を高く維持することができる。また、容器包装リサイクル材を用いることで、成形体のコストを大きく低減でき、資源を有効活用でき、環境負荷を大きく低減できる。
上記無機質粉体は、成形体に充填材として配合される。上記無機質粉体としては、例えばフライアッシュ、下水汚泥焼却灰、炭酸カルシウム、タルク、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム及び酸化カルシウム等が好適に例示される。すなわち、強度、寸法安定性及び耐水性を良好にする観点からは、上記無機質粉体は、フライアッシュ、下水汚泥焼却灰、炭酸カルシウム、タルク、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム又は酸化カルシウムであることが好ましい。上記無機質粉体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記下水汚泥焼却灰としては、例えば東京都下水道サービス社製の商品名「スーパーアッシュ」が挙げられる。
強度、寸法安定性及び耐水性をより一層良好にする観点からは、上記無機質粉体は二酸化ケイ素を含有することが好ましい。但し、上記無機質粉体は二酸化ケイ素を必ずしも含んでいなくてもよい。強度、寸法安定性及び耐水性をより一層良好にする観点からは、上記無機質粉体は酸化アルミニウムを含有することが好ましい。但し、上記無機質粉体は酸化アルミニウムを必ずしも含んでいなくてもよい。強度、寸法安定性及び耐水性を良好にするために、上記無機質粉体は酸化カルシウムを含有していてもてよい。但し、上記無機質粉体は上記酸化カルシウムを必ずしも含んでいなくてもよい。上記二酸化ケイ素は化学式SiOで表され、上記酸化アルミニウムは化学式Alで表され、上記酸化カルシウムは化学式CaOで表される。
強度、寸法安定性及び耐水性をより一層良好にする観点からは、上記無機質粉体は、二酸化ケイ素と酸化アルミニウムとを含有することが好ましく、二酸化ケイ素と酸化アルミニウムと酸化カルシウムとを含有することがより好ましい。
強度、寸法安定性及び耐水性をより一層良好にする観点からは、上記無機質粉体100重量%中、上記二酸化ケイ素の含有量は好ましくは1重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは30重量%以上である。上記無機質粉体100重量%中、上記二酸化ケイ素の含有量は40重量%以上であってもよく、45重量%以上であってもよい。上記無機質粉体全体が上記二酸化ケイ素であってもよい。上記無機質粉体100重量%中、上記二酸化ケイ素の含有量は99重量%以下であってもよく、90重量%以下であってもよく、80重量%以下であってもよい。
強度、寸法安定性及び耐水性をより一層良好にする観点からは、上記無機質粉体100重量%中、上記酸化アルミニウムの含有量は好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上、更に好ましくは10重量%以上である。上記無機質粉体100重量%中、上記酸化アルミニウムの含有量は15重量%以上であってもよい。上記無機質粉体全体が上記酸化アルミニウムであってもよい。上記無機質粉体100重量%中、上記酸化アルミニウムの含有量は99重量%以下であってもよく、90重量%以下であってもよく、70重量%以下であってもよく、50重量%以下であってもよい。
上記無機質粉体100重量%中、上記酸化カルシウムの含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは1重量%以上である。上記無機質粉体100重量%中、上記酸化カルシウムの含有量は5重量%以上であってもよく、10重量%以上であってもよい。上記無機質粉体が上記酸化カルシウムであってもよい。上記無機質粉体100重量%中、上記酸化カルシウムの含有量は99重量%以下であってもよく、90重量%以下であってもよく、70重量%以下であってもよく、50重量%以下であってもよく、30重量%以下であってもよい。
強度、寸法安定性及び耐水性をより一層良好にする観点からは、上記無機質粉体100重量%中、上記二酸化ケイ素と上記酸化アルミニウムとの合計の含有量は40重量%以上であることが好ましい。上記無機質粉体全体が上記二酸化ケイ素と上記酸化アルミニウムとの混合物であってもよい。上記無機質粉体100重量%中、上記二酸化ケイ素と上記酸化アルミニウムとの合計の含有量は99重量%以下であってもよく、90重量%以下であってもよく、80重量%以下であってもよい。上記無機質粉体100重量%中、上記二酸化ケイ素の含有量が30重量%以上かつ上記酸化アルミニウムの含有量が10重量%以上であることが好ましい。上記無機質粉体が上記二酸化ケイ素と上記酸化アルミニウムとを含む場合にも、上記無機質粉体100重量%中、上記二酸化ケイ素の含有量は40重量%以上であってもよく、45重量%以上であってもよく、上記酸化アルミニウムの含有量は15重量%以上であってもよい。
強度、寸法安定性及び耐水性をより一層良好にする観点からは、上記無機質粉体は、フライアッシュ又は下水汚泥焼却灰であることが好ましく、フライアッシュであることが特に好ましい。上記フライアッシュは、JIS A6201−1999で定義されている。上記フライアッシュは、二酸化ケイ素を40重量%以上含有する。上記下水汚泥焼却灰は、一般に二酸化ケイ素を含有する。上記フライアッシュ及び上記下水汚泥焼却灰は、一般に酸化アルミニウムを含む。上記フライアッシュ及び上記下水汚泥焼却灰は、石炭又は下水汚泥を燃焼することにより得られる燃焼灰である。上記無機質粉体は燃焼灰であることが好ましい。
上記フライアッシュは火力発電所等で大量に発生する。上記フライアッシュ及び上記下水汚泥焼却灰は、再資源化が十分に行われていないために価格が安い。また、環境負荷を低減するためには、フライアッシュ及び下水汚泥焼却灰を有効活用することが望まれる。さらに、フライアッシュは、粉体が微細な球状であるために熱可塑性樹脂に溶融及び混合する際に流動性が大きい。このため、樹脂組成物中に、フライアッシュを高密度に充填することができる。また、フライアッシュなどの無機充填剤の充填量が高いと、強度と寸法安定性と成形性と耐水性とをバランスよく、より一層向上させることができる。
本発明に係る樹脂組成物100重量%中、無機質粉体の含有量は60重量%以上であれば特に限定されない。無機質粉体の含有量は、無機質粉体の種類、及びシラン変性ポリオレフィン樹脂の種類等により適宜調整される。強度と寸法安定性と成形性と耐水性とをより一層良好にする観点からは、樹脂組成物100重量%中、無機質粉体の含有量は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは75重量%以上、特に好ましくは80重量%以上である。無機質粉体の配合量が多い方が、成形体の線膨張係数が低くなる傾向にある。このため、デッキ材などの屋外で使用される長尺の成形体を得るためには、無機質粉体の含有量は多いほどよい。さらに、無機質粉体の配合量が多い方が、シラン変性ポリオレフィン樹脂に起因するダイスカスが無機質粉体によって掻き出される効果が大きくなり、ダイスカスの蓄積が抑制され、良好な成形性が得られる。
成形性を良好にする観点からは、樹脂組成物100重量%中、無機質粉体の含有量は、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、最も好ましくは85重量%以下である。また、シラン変性ポリオレフィン樹脂以外の他の熱可塑性樹脂(例えば、後述の容器包装リサイクル材)を用いる場合には、樹脂組成物100重量%中の無機質粉体の含有量は、例えば、90重量%以下であることが好ましい。
上記シラン変性ポリオレフィン樹脂とは、ポリオレフィンを、シラン化合物により変性させた樹脂である。例えば、上記シラン変性ポリオレフィン樹脂としては、ポリオレフィンとシラン化合物と過酸化物とをポリオレフィンの融点以上の温度で混合し、ポリオレフィンにシラン化合物をグラフトさせることにより得られるシラングラフト変性ポリオレフィン樹脂、及びエチレンとエチレン性不飽和シラン化合物とを共重合させたシラン共重合ポリオレフィンが好適に例示される。上記シラン変性ポリオレフィン樹脂に関しては、ポリオレフィン樹脂を重合反応により得る際にシラン化合物が用いられていてもよく、ポリオレフィン樹脂を重合反応により得た後にシラン化合物が反応されていてもよい。
上記シラングラフト変性ポリオレフィン樹脂としては、三菱化学社製「リンクロン」が好適に例示される。上記シラン共重合ポリオレフィンとしては、Borealis社製「HE2545」が好適に例示される。
上記シラングラフト変性ポリオレフィン樹脂を合成する際に用いられる上記シラン化合物としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン及びビニルメチルジメトキシシランが好適に例示される。
上記シラングラフト変性ポリオレフィン樹脂を合成する際に用いられる上記ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−α−オレフィン共重合体が好適に例示される。
上記エチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンに対して、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン又は1−オクテン等のα−オレフィンを数モル%程度の割合で共重合させた共重合体であることが特に好ましい。
上記シラン共重合ポリオレフィンを合成する際に用いられる上記エチレン性不飽和シラン化合物は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルアセトキシシラン又はγ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランであることが特に好ましい。
本発明に係る樹脂組成物100重量%中、上記シラン変性ポリオレフィン樹脂の含有量は特に限定されない。本発明に係る樹脂組成物100重量%中、上記シラン変性ポリオレフィン樹脂の含有量は40重量%以下である。上記シラン変性ポリオレフィン樹脂の含有量は、無機質粉体の種類、及びシラン変性ポリオレフィン樹脂の種類等により適宜調整される。樹脂組成物100重量%中、シラン変性ポリオレフィン樹脂の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは1.5重量%以上、更に好ましくは3.5重量%以上、好ましくは30重量%以下、より好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下である。シラン変性ポリオレフィン樹脂の含有量が上記下限以上であると、シラン変性ポリオレフィン樹脂と無機質粉体との密着性効果がより一層高くなり、耐水性及び強度をより一層高めることができる。上記シラン変性ポリオレフィン樹脂の含有量が上記上限以下であると、樹脂組成物のコストを低減できる。また、上記シラン変性ポリオレフィン樹脂の含有量が上記上限を超えても、コスト増加に見合うだけの効果が得られない傾向がある。
本発明に係る樹脂組成物は、上記シラン変性ポリオレフィン樹脂以外の樹脂成分として、シラン変性ポリオレフィン樹脂とともに、該シラン変性ポリオレフィン樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
上記他の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)及びエチレン−プロピレン共重合体等が好適に例示される。上記熱可塑性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記他の熱可塑性樹脂は、未使用の熱可塑性樹脂であってもよく、容器包装リサイクル材のような回収樹脂であってもよい。上記他の熱可塑性樹脂は、シラン変性ポリオレフィン樹脂とは異なるポリオレフィン樹脂であることが好ましい。上記他の熱可塑性樹脂は、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂とは異なるポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
シラン変性ポリオレフィン樹脂と上記他の熱可塑性樹脂とを併用する場合には、樹脂組成物100重量%中、他の熱可塑性樹脂の合計の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは1.5重量%以上、更に好ましくは3.5重量%以上、好ましくは35重量%以下、より好ましくは30重量%以下、更に好ましくは20重量%以下、特に好ましくは10重量%以下、最も好ましくは5重量%以下である。
環境負荷を低減し、かつ樹脂組成物のコストを低減する観点からは、本発明に係る樹脂組成物は、熱可塑性樹脂である容器包装リサイクル材を含むことが好ましい。上記の容器包装リサイクル材とは、自治体などが回収したプラスチックゴミより得られ、ポリオレフィン樹脂のような熱可塑性樹脂を主成分とする混合物である。容器包装リサイクル材は、一般に熱可塑性樹脂混合物を主成分として含む。ただし、上記容器包装リサイクル材については、PET樹脂を主成分とする容器包装リサイクル材を除く。
上記プラスチックゴミは、分別工程及び洗浄工程等の各工程を経て、造粒又はペレット化された後、成形工程へ送られる。
上記分別工程において、PET、ポリスチレン及び無機物(金属類)を極力取り除いて、ポリオレフィン樹脂を主成分とする混合物を得る。これを容器包装リサイクル材として用いる。通常は、プラスチックゴミを洗浄粉砕した後に水に浮く樹脂を利用している。
上記容器包装リサイクル材の一例を挙げると、上記容器包装リサイクル材は、例えば、ポリエチレン30〜70重量%と、ポリプロピレン20重量%以上好ましくは60重量%以下と、ポリスチレン2〜30重量%とを含む。なお、本発明者が10点の容器包装リサイクル材を分析した結果、10点の容器包装リサイクル材はいずれも、ポリエチレン40〜60重量%と、ポリプロピレン30〜50重量%と、ポリスチレン2〜20重量%とを含んでいた。上記他の熱可塑性樹脂は、ポリエチレン30〜70重量%と、ポリプロピレン20〜60重量%と、ポリスチレン2〜30重量%とを含む熱可塑性樹脂であってもよい。上記他の熱可塑性樹脂は、ポリエチレン40〜60重量%と、ポリプロピレン30〜50重量%と、ポリスチレン3〜20重量%とを含む熱可塑性樹脂であってもよい。
本発明に係る樹脂組成物には、上述したシラン変性ポリオレフィン樹脂及び容器包装リサイクル材などの樹脂全体の密度よりも高密度なポリオレフィンを、ポリオレフィン系樹脂の強化成分として添加してもよい。このようなポリオレフィンの添加により、成形体の物性を更に安定化させることができる。上記樹脂組成物は、高密度ポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。
本発明に係る樹脂組成物を成形することにより、成形体を得ることができる。該成形体は、樹脂組成物が成形された成形体である。本発明に係る樹脂組成物は、成形された成形体として好適に用いられる。成形法は特に限定されず、上記成形体は従来公知の成形法により得られる。また、本発明の樹脂組成物を用いて、押出成形法により成形体を得てもよく、押出成形法以外の成形法で成形体を得てもよい。なお、平板であるか又は異形であるか、並びに単層であるか又は複層であるかなど、成形体の形状及び性状は特に限定されない。
本発明を実施するための形態として、実施例1を元に説明する。以下に、本発明を具体的に説明するために、本発明の実施例及びこれとの比較を示す比較例を挙げる。本発明は以下の実施例のみに限定されない。
実施例、参考例及び比較例では、以下の材料を用いた。
(無機質粉体)
(1)フライアッシュI種(JISI種、四電ビジネス社製、ファイナッシュ(商品名)、二酸化ケイ素65重量%と酸化アルミニウム20重量%と酸化カルシウム2重量%とを含む)
(2)フライアッシュII種(JISII種、四電ビジネス社製、二酸化ケイ素65重量%と酸化アルミニウム20重量%と酸化カルシウム2重量%とを含む)
(3)タルク(日本タルク社製、SW(商品名)、二酸化ケイ素を65重量%含む)
(4)下水汚泥焼却灰(スーパーアッシュ、東京都下水道サービス社製、二酸化ケイ素35重量%と酸化アルミニウム19重量%と酸化カルシウム12重量%とを含む)
(ポリオレフィン樹脂)
(1)ポリエチレン(HDPE)(旭化成ケミカル社製、サンテック(R)熱可塑性樹脂HDJ340(商品名))
(2)容器包装リサイクル材(自治体が回収したプラスチックゴミより得られた容器包装リサイクル材、ポリエチレン51重量%とポリプロピレン46重量%とポリスチレン3重量%とを含む)
(シラン変性ポリオレフィン樹脂)
(1)シラングラフト変性ポリエチレン(三菱化学社製、リンクロン XHE740N(商品名))
(不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂)
(1)MAPE1(不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂、三菱化学社製、モディック)
(2)MAPE2(不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂、三洋化成社製、ユーメックス2000(商品名))
(実施例1)
シラングラフト変性ポリエチレン(三菱化学社製、リンクロン XHE740N(商品名))5重量部と、無機質粉体であるフライアッシュI種(JISI種、四電ビジネス社製、ファイナッシュ(商品名))85重量部と、熱可塑性樹脂として自治体が回収したプラスチックゴミより得られた容器包装リサイクル材10重量部とを配合し、ラボプラストミル(型式:KF100ローター:同方向ニーディングタイプ、東洋精機製作所製)を用い、温度200℃及び回転数15rpmで溶融混練し、塊状の溶融混練物を得た。
加熱プレス装置を用いて、得られた溶融混練物を220℃で昇温しつつ、200kg/cmで加圧した後、冷却プレス装置を用いて冷却しつつ、200kg/cmで加圧して、一辺100mmの正方形のプレート状の成形体を得た。
(実施例2〜6)
熱可塑性樹脂として自治体が回収したプラスチックゴミより得られた容器包装リサイクル材とポリエチレン(HDPE)(旭化成ケミカル社製 サンテック(R)熱可塑性樹脂HDJ340(商品名))とを併用して、該熱可塑性樹脂と実施例1で用いたシラン変性ポリオレフィン樹脂と実施例1で用いた無機質粉体とを下記の表1に示す配合量で配合したこと以外は実施例1と同様にして、プレート状の成形体を得た。
(実施例7)
無機質粉体としてフライアッシュI種(JISI種、四電ビジネス社製、ファイナッシュ(商品名))の代わりにフライアッシュII種(JISII種、四電ビジネス社製)を用いたこと、熱可塑性樹脂として自治体が回収したプラスチックゴミより得られた容器包装リサイクル材とポリエチレン(HDPE)(旭化成ケミカル社製 サンテック(R)熱可塑性樹脂HDJ340(商品名))とを併用したこと、並びに該無機質粉体と該熱可塑性樹脂と実施例1で用いたシラン変性ポリオレフィン樹脂とを下記の表1に示す配合量で配合したこと以外は実施例1と同様にして、プレート状の成形体を得た。
(実施例8)
無機質粉体としてフライアッシュI種(JISI種、四電ビジネス社製、ファイナッシュ(商品名))の代わりにフライアッシュII種(JISII種、四電ビジネス社製)を用いたこと、並びに熱可塑性樹脂として自治体が回収したプラスチックゴミより得られた容器包装リサイクル材の代わりにポリエチレン(HDPE)(旭化成ケミカル社製 サンテック(R)熱可塑性樹脂HDJ340(商品名))を用いたこと以外は実施例1と同様にして、プレート状の成形体を得た。
(比較例1)
シラングラフト変性ポリエチレン(三菱化学社製、リンクロン XHE740N(商品名))の代わりに、MAPE1(不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂、三菱化学社製、モディック)を用いたこと、並びに該MAPE1と実施例1で用いた無機質粉体と実施例1で用いた容器包装リサイクル材とを下記の表3に示す配合量で配合したこと以外は実施例1と同様にして、プレート状の成形体を得た。
(比較例2)
シラングラフト変性ポリエチレン(三菱化学社製、リンクロン XHE740N(商品名))の代わりに、MAPE1(不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂、三菱化学社製、モディック)を用いたこと、熱可塑性樹脂として自治体が回収したプラスチックゴミより得られた容器包装リサイクル材の代わりにポリエチレン(HDPE)(旭化成ケミカル社製 サンテック(R)熱可塑性樹脂HDJ340(商品名))を用いたこと、並びに該不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂と該ポリエチレン(HDPE)と実施例1で用いた無機質粉体とを下記の表3に示す配合量で配合したこと以外は実施例1と同様にして、プレート状の成形体を得た。
(比較例3)
シラン変性ポリオレフィン樹脂を使用せず、更に容器包装リサイクル材の配合量を10重量部から15重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にしてプレート状の成形体を得た。
(実施例9〜15,17参考例16,18,19及び比較例4〜10)実施例16,18,19及び参考例1〜15,17は欠番とする
配合成分の種類及び配合量を下記の表1〜3に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、プレート状の成形体を得た。
(評価)
(1)乾燥時強度(曲げ強度)
得られた成形体より試験片を切り出し、JIS K7171に準拠して、曲げ強度を測定した。23±2℃の恒温室において、以下のサンプル寸法及び測定条件で、5つの試験片の曲げ強度を測定し、平均値を以って乾燥時強度とした。
サンプル寸法:長さ80.0mm±2.0mm、幅10.0mm±0.2mm、厚さ4.0mm±0.2mm
支点間距離:68mm
クロスヘッド速度:3mm/分
(2)加熱時の寸法安定性:線膨張係数の測定
得られた成形体より試験片を切り出し、JIS K7197に準拠して、線膨張係数を測定した。23±2℃の恒温室において、以下のサンプル寸法及び測定条件で、3つの試験片の平均線膨張率を測定し、平均値を以って線膨張係数とした。
サンプル寸法:長さ8mm、一辺5mmの角柱状
測定温度範囲:低温側温度23℃、高温側温度55℃
昇温速度:5℃/分
(3)耐水性:水浸漬後の強度保持率の測定
上記乾燥時強度の測定と同様にして用意した試験片を、23±2℃の恒温室にて状態調整された水中に7日間浸漬した。浸漬後、手早く試験片の表面に付着した水を拭い去り、水浸漬後の曲げ試験を測定するための試験片を得た。
水中への浸漬は、水中に沈めた60メッシュ篩の上に静置させ、試験片の上部にも60メッシュ篩を載せた状態で試験片が10〜20mm水没するようにして、7日間浸漬処理を行った。
水浸漬後の試験片について、上記乾燥時強度の測定と同様にして曲げ強度を測定し、水浸漬後強度とした。下記式により水浸漬後の強度保持率を算出した。水浸漬後の強度保持率は80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。
水浸漬後の強度保持率(%)=水中浸漬後強度/乾燥時強度×100
結果を下記の表1〜3に示す。なお、実施例1〜15,17及び参考例16,18,19で得られた成形体は、傷及び欠けが無く、良好に成形されていた。
Figure 0005753816
Figure 0005753816
Figure 0005753816

Claims (2)

  1. 樹脂組成物が成形された成形体であり、
    前記樹脂組成物が、無機質粉体と、シラン変性ポリオレフィン樹脂とを含み、
    前記無機質粉体が、フライアッシュ又は下水汚泥焼却灰であり、
    前記樹脂組成物における前記フライアッシュ又は前記下水汚泥焼却灰である前記無機質粉体の含有量が70重量%以上であり、
    曲げ応力が20MPa以上であり、かつ、線膨張係数が8×10 −5 /℃以下である、成形体
  2. 前記樹脂組成物における前記シラン変性ポリオレフィン樹脂の含有量が1重量%以上、30重量%以下である、請求項1に記載の成形体
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