JP6825469B2 - 周溶接部の検査方法 - Google Patents
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Description
溶け込み不良が発生すると、周溶接部の強度が低下する他、応力集中による亀裂発生や疲労破壊の起点となる場合があるので、切断後に再び周溶接を施すなどの対策を講じる必要がある。
特許文献2に記載の方法は、溶接管の長手方向に対して略垂直な方向に延びる放射中心を有し、溶接管に向けてX線を放射するX線源と、溶接管を挟んでX線源に対向する位置に配置され、X線源から放射されて溶接管を透過したX線を検出するX線画像検出器とを備えるX線検査機を用いて溶接管の溶接部を検査する方法である。特許文献2に記載の方法を周溶接部の検査に適用すれば、周溶接部に存在する不良の多くを可視化できると考えられる。
しかしながら、上記のように長尺管の長手方向に略垂直な方向に対して傾いた方向から周溶接部に向けてX線を放射したのでは、母材の鋳造時や周溶接の際に生じ得るポロシティと称される空洞状の欠陥など、その寸法が重要である不良については、長尺管の長手方向に略垂直な方向から周溶接部に向けてX線を放射する場合に比べて、精度良く寸法を評価できないおそれがある。また、X線源の放射中心が長尺管の長手方向に対して略垂直な方向にある状態と、該略垂直な方向に対して傾いた方向にある状態との間で切り替え可能なように、X線源を傾動させる機構を設けることも考えられるが、X線検査機が大掛かりになり、コストの増大やメンテナンス性の悪化を招く問題がある。
通常のX線検査機を用いるものの、被検査管の周溶接部がX線源の放射中心上の位置から被検査管の長手方向に所定距離だけずれた位置において被検査管を停止させ、この停止した位置で周溶接部を検査すれば、X線画像検出器によって生成されるX線画像における周溶接部に相当する画素領域を環状にすることが可能である。すなわち、周溶接部のX線源側の部位を透過したX線と、周溶接部のX線画像検出器側の部位を透過したX線とが、重ならずにX線画像検出器の異なる位置で検出されるように、周溶接部の位置をX線源の放射中心上の位置からずらせば、周溶接部に存在する溶け込み不良を比較的鮮明に可視化でき、溶け込み不良を精度良く検出できることがわかった。
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、被検査管の長手方向に対して略垂直な方向に延びる放射中心を有し、該被検査管に向けてX線を放射するX線源と、前記被検査管を挟んで前記X線源に対向する位置に配置され、前記X線源から放射されて前記被検査管を透過したX線を検出してX線画像を生成するX線画像検出器とを備えるX線検査機を用いて被検査管の周溶接部を検査する方法であって、以下の第1〜第3ステップを含むことを特徴とする。
(1)第1ステップ:前記X線画像における前記被検査管の周溶接部に相当する画素領域が環状となるように、前記被検査管の周溶接部が前記X線源の放射中心上の位置から前記被検査管の長手方向にずれた位置において、前記被検査管を停止させる。
(2)第2ステップ:前記第1ステップによって停止した前記被検査管に対して、前記X線源からX線を放射し、前記X線画像検出器で前記X線画像である第1X線画像を生成する。
(3)第3ステップ:前記第2ステップによって生成された前記第1X線画像を用いて前記被検査管の周溶接部を検査する。
なお、「略垂直な方向」とは、前記周溶接部が前記X線源の放射中心上に位置する場合に、前記周溶接部の前記X線源側の部位を透過したX線及び前記周溶接部の前記X線画像検出器側の部位を透過したX線が前記X線画像検出器で重なって検出される状態になる方向を意味する。
被検査管の周溶接部に相当する画素領域が環状となる第1X線画像が生成される。すなわち、周溶接部のX線源側の部位を透過したX線と、周溶接部のX線画像検出器側の部位を透過したX線とが、重ならずにX線画像検出器の異なる位置で検出されて生成された第1X線画像が得られる。したがい、第3ステップにおいて、周溶接部に存在する溶け込み不良が比較的鮮明に可視化された第1X線画像を用いて、溶け込み不良を精度良く検出可能である。
また、本発明によれば、通常のX線検査機を用いて、周溶接部の位置をX線源の放射中心上の位置からずらすだけでよいため、容易に溶け込み不良を検出可能である。
具体的には、前記X線源と前記被検査管の前記X線源に対向する側の外面との離間距離をHとし、前記被検査管の外径をODとし、前記周溶接部の幅をWとした場合、前記第1ステップにおいて、前記被検査管の周溶接部の前記X線源の放射中心上の位置からのずれ量Lが以下の式(1)を満足するように、前記被検査管を停止させれば、第1X線画像における被検査管の周溶接部に相当する画素領域を環状にすることが可能である。
L>W(2H+OD)/2OD ・・・(1)
上記の式(1)において、X線源と被検査管のX線源に対向する側の外面との離間距離H、被検査管の外径OD及び周溶接部の幅Wは、それぞれ設計値を用いることができるため、周溶接部のずれ量Lの下限値(式(1)の右辺の値)を容易に算出することが可能である。
なお、周溶接部をずらし過ぎると、周溶接部のX線源側の部位を透過したX線と、周溶接部のX線画像検出器側の部位を透過したX線とを、単一のX線画像検出器で同時に検出できなくなるおそれがある。このため、X線画像検出器の寸法(被検査管の長手方向に沿った寸法)に応じて、各X線を単一のX線画像検出器で同時に検出できるように、周溶接部のずれ量Lの上限値を決定すればよい。
上記の好ましい方法によれば、溶け込み不良を検出する(第3ステップ)場合と、溶け込み不良以外の不良を検出する(第6ステップ)場合とで、X線源を傾動させる機構等を設ける必要がないため、X線検査機が大掛かりになることに起因したコストの増大やメンテナンス性の悪化を招くおそれがない。
なお、上記の好ましい方法において、第4〜第6ステップは、必ずしも第1〜第3ステップの後に実行する必要はなく、第4〜第6ステップを先に実行した後、第1〜第3ステップを実行することも可能である。また、第1、第2、第4及び第5ステップを先に実行(第1X線画像及び第2X線画像を先にまとめて生成)した後、第3及び第6ステップを実行することも可能である。
図1は、本実施形態に係る周溶接部の検査方法を適用する長尺管の製造設備の概略構成を模式的に示す平面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る長尺管の製造設備(以下、適宜、単に「製造設備」という)100は、搬送装置1と、溶接装置2と、巻取装置3と、X線検査装置4とを備えている。また、本実施形態に係る製造設備100は、搬送装置1、溶接装置2、巻取装置3及びX線検査装置4の動作を制御する制御装置5を備えている。さらに、本実施形態に係る製造設備100は、複数の管Pが載置された搬入台6を備えている。
サイドクランプローラ11は、溶接装置2に対して管Pの搬送方向(X方向)上流側において、管Pを水平方向に挟持するように配置されている。サイドクランプローラ11は、モータ等を駆動源として回転することで、管Pの長手方向に駆動力を付与する。
Vローラは、搬入台6から管Pが搬入される位置から巻取装置3までの間において、管P(長尺管P1を含む)の下方に配置されている。Vローラは、管Pを下方から支持し、管Pの長手方向への搬送に伴って回転する。
以上の構成により、溶接装置2によって周溶接を施される前の管P及び巻取装置3によってリール31に巻き取られる前の長尺管P1は、サイドクランプローラ11によって長手方向の駆動力を付与され、巻取装置3によってリール31に巻き取られた後の長尺管P1は、巻取装置3によって長手方向の駆動力を付与され、それぞれ長手方向に搬送されることになる。
なお、本実施形態では、搬送装置1として、駆動力を付与するサイドクランプローラ11と、駆動力を付与せずに従動するだけのVローラ12とを具備する構成について説明したが、これに限るものではない。搬送装置としては、例えば、サイドクランプローラ11に代えて、管Pを搬送方向上流側から下流側に押すプッシャを採用するなど、複数の管Pを長手方向に搬送できる限りにおいて種々の構成を採用可能である。
本実施形態の溶接装置2は、周溶接機(円周溶接機)21と、周溶接機21を挟んで管Pの搬送方向(管Pの長手方向)に沿って配置された一対の把持装置22とを具備する。また、本実施形態の溶接装置2は、冷却装置(図示せず)も具備する。冷却装置の冷却方法としては、例えば強制空冷を例示できる。
具体的には、本実施形態の巻取装置3は、リール31をその中心軸周りに回転させる回転機構(図示せず)と、中心軸方向(Y方向)にリール31を移動させる移動機構(図示せず)とを具備する。巻取装置3は、回転機構によってリール31を回転させると共に、移動機構によってリール31を移動させることで、長尺管P1をリール31の外表面上に巻き取る。
制御装置5は、溶接装置2によって形成された長尺管P1の周溶接部PWがX線検査装置4の配置位置(具体的には、後述するX線源412によってX線が放射される位置)に到着したタイミングで、搬送装置1及び巻取装置3の動作を停止させることで長尺管P1を停止させ、X線検査装置4を駆動する。
以下、適宜、図2及び図3も参照しつつ、X線検査装置4のより具体的な構成について説明する。
図2に示すように、X線検査機41cは、回転機構部411と、X線源412と、X線画像検出器413と、画像処理装置414とを具備する。
X線漏洩抑制機構42は、前述のように、X線検査装置本体41の入側及び出側の開口部近傍に取り付けられている。具体的には、X線漏洩抑制機構42は、X線検査装置本体41が具備する一対のスリーブ41bが有する略円形の開口部410の近傍に取り付けられている。より具体的には、X線漏洩抑制機構42は、一対のスリーブ41bのうち、長尺管P1の搬送方向上流側に設けられたスリーブ41bに対してはその上流側の開口部410の近傍に取り付けられ、長尺管P1の搬送方向下流側に設けられたスリーブ41bに対してはその下流側の開口部410の近傍に取り付けられている。X線検査装置本体41の入側及び出側に取り付けられた各X線漏洩抑制機構42は、同様の構成を有するため、ここでは一つのX線漏洩抑制機構42についてのみ説明する。
なお、図3に示す例では、各部材42a、42bは、上下方向に開閉可能とされているが、これに限るものではなく、長尺管P1の径方向(長尺管P1の長手方向に直交する方向)である限りにおいて、水平方向など他の方向に開閉可能な部材とすることも可能である。また、図3に示す例では、閉塞部材421は、2つの部材42a、42bから構成されているが、これに限るものではなく、径方向に開閉可能な複数の部材である限りにおいて、3つ以上の部材から構成することも可能である。
一方、X線検査装置4によって長尺管P1の周溶接部PWが不良であると判定された場合、前述のように、溶接装置2とX線検査装置4とが搬送装置1に沿って互いに別個に移動可能とされているため、制御装置5は搬送装置1及び巻取装置3を逆方向に駆動することなく(長尺管P1を逆方向に搬送することなく)、溶接装置2で長尺管P1に再び周溶接部PWを形成し、X線検査装置4で再び形成された周溶接部PWを検査することが可能である。長尺管P1の周溶接部PWが不良であると判定された場合の制御装置5の具体的な動作例については後述する。
なお、X線検査装置4によって長尺管P1の周溶接部PWが不良であるか否かが自動判定される場合には、その判定結果が制御装置5に自動送信されることで、制御装置5は判定結果に応じた動作を実行可能である。また、X線検査装置4を用いて長尺管P1の周溶接部PWが不良であるか否かを作業者が判定する場合には、その判定結果を作業者が制御装置5に入力することで、制御装置5は判定結果に応じた動作を実行可能である。
第1ステップでは、図2(c)に示すように、長尺管P1の周溶接部PWがX線源412の放射中心CL上の位置から長尺管P1の長手方向にずれた位置において、長尺管P1を停止させる。具体的には、制御装置5が、周溶接部PWが放射中心CL上の位置からずれ量Lだけずれた位置で停止するように、搬送装置1及び巻取装置3の動作を停止させる。
上記のずれ量Lは、X線画像検出器413で生成されるX線画像における長尺管P1の周溶接部PWに相当する画素領域が環状となるように決定される。以下、ずれ量Lの決定方法に関し、図4を参照して具体的に説明する。
図4に示すように、X線源412の放射点Cから放射されたX線のうち、周溶接部PWのX線源412側の外面を透過するX線は、直線LU1と直線LU2とで区画される範囲に存在し、周溶接部PWのX線画像検出器413側の外面を透過するX線は、直線LL1と直線LL2とで区画される範囲に存在することになる。X線画像検出器413で生成されるX線画像における長尺管P1の周溶接部PWに相当する画素領域が環状となるためには、周溶接部PWのX線源412側の外面を透過するX線と、周溶接部PWのX線画像検出器413側の外面を透過するX線とが重ならないようにすればよい。そのためには、直線LU2と放射中心CLとの成す角度をθ1とし、直線LL1と放射中心CLとの成す角度をθ2としたときに、θ1>θ2であればよい。したがい、以下の式(A)を満足すればよい。
tanθ1>tanθ2 ・・・(A)
tanθ1=(L−W/2)/H ・・・(B)
tanθ2=(L+W/2)/(H+OD) ・・・(C)
が成り立つ。
前述のように、X線画像における長尺管P1の周溶接部PWに相当する画素領域が環状となるためには、式(A)を満足すればよいため、式(A)の左辺に式(B)を代入し、式(A)の右辺に式(C)を代入して整理すると、以下の式(1)が成立する。
L>W(2H+OD)/2OD ・・・(1)
上記の式(1)において、X線源412と長尺管P1のX線源412に対向する側の外面との離間距離H、長尺管P1の外径OD及び周溶接部PWの幅Wは、それぞれ設計値を用いることができるため、周溶接部PWのずれ量Lの下限値(式(1)の右辺の値)を容易に算出することが可能である。
なお、周溶接部PWをずらし過ぎると、周溶接部PWのX線源412側の部位を透過したX線と、周溶接部PWのX線画像検出器413側の部位を透過したX線とを、単一のX線画像検出器413で同時に検出できなくなるおそれがある。このため、X線画像検出器413の寸法(長尺管P1の長手方向に沿った寸法)に応じて、各X線を単一のX線画像検出器413で同時に検出できるように、周溶接部PWのずれ量Lの上限値を決定すればよい。
したがい、例えば、L=50mmに設定することで、上記の式(1)を満足すると共に、過度にずれ量Lが大きくならないため、周溶接部PWのX線源412側の部位を透過したX線と、周溶接部PWのX線画像検出器413側の部位を透過したX線とを、単一のX線画像検出器413で同時に検出可能である。
第2ステップでは、第1ステップによって停止した長尺管P1に対して、X線源412からX線を放射し、X線画像検出器413でX線画像である第1X線画像を生成する。
なお、本実施形態では、この第2ステップが、予め決められた複数の位置(図2(b)に示す例では、60°ピッチの3箇所)で実行され、複数の第1X線画像が生成される。
第3ステップでは、第2ステップによって生成された複数の各第1X線画像を用いて長尺管P1の周溶接部PWを検査する。具体的には、本実施形態では、各第1X線画像を用いて長尺管P1の周溶接部PWに存在する溶け込み不良を検出する。この溶け込み不良の検出方法の具体的な内容については後述する。
図5は、本実施形態に係る周溶接部PWの検査方法において、第1〜第3ステップと、第4〜第6ステップとの関係を説明する説明図である。
本実施形態の第4ステップでは、長尺管P1の周溶接部PWがX線源412の放射中心CL上の位置となるように、長尺管P1を停止させる。具体的には、図5(a)に示すように、制御装置5が、搬送装置1及び巻取装置3を駆動することで、第1〜第3ステップにおいて周溶接部PWが放射中心CL上の位置からずれ量Lだけずれた位置で停止していた長尺管P1を搬送し、周溶接部PWがX線源412の放射中心CL上の位置で停止するように、搬送装置1及び巻取装置3の動作を停止させる。
第5ステップでは、第4ステップによって停止した長尺管P1に対して、X線源412からX線を放射し、X線画像検出器413でX線画像である第2X線画像を生成する。
なお、本実施形態では、この第5ステップが、予め決められた複数の位置(図2(b)に示す例では、60°ピッチの3箇所)で実行され、複数の第2X線画像が生成される。
第6ステップでは、第5ステップによって生成された複数の各第2X線画像を用いて長尺管P1の周溶接部PWを検査する。具体的には、本実施形態では、各第2X線画像を用いて長尺管P1の周溶接部PWに存在する溶け込み不良以外の不良(例えば、ポロシティなど)を検出する。ポロシティなどの溶け込み不良以外の不良を検出するには、例えば、画像処理装置414が各第2X線画像に対して画像処理を施すことで、画素濃度が周囲と異なる画素領域を欠陥領域として抽出すればよい。そして、抽出した欠陥領域の面積の大小に応じて周溶接部PWの良否を判定することが可能である。
また、第1、第2、第4及び第5ステップを先に実行(第1X線画像及び第2X線画像を先にまとめて生成)した後、第3及び第6ステップを実行することも可能である。
図6は、周溶接部PWに不良の無い正常な長尺管(正常材)P1と、周溶接部PWに溶け込み不良が存在する長尺管(不良材)P1とについて、X線画像検出器413で生成されるX線画像の例を示す図である。図6(a)は正常材の模式断面図を、図6(b)は不良材の模式断面図を、図6(c)は正常材の第2X線画像の例を、図6(d)は不良材の第2X線画像の例を、図6(e)は正常材の第1X線画像の例を、図6(f)は不良材の第1X線画像の例を示す。なお、図6(c)〜図6(f)に示す各X線画像は、X線の透過量が多い画素領域が暗く表示され(黒に近い小さな画素濃度を有し)、X線の透過量が少ない画素領域が明るく表示されている(白に近い大きな画素濃度を有する)。
図6(b)に示すように、溶け込み不良は、溶接材料が管の端部間に十分に溶け込まない不良である。この溶け込み不良が存在する周溶接部PWは、図6(a)に示す正常材の周溶接部PWに比べて溶接材料が少なくなるため、正常材の周溶接部PWに比べて、溶け込み不良が存在する箇所のX線の透過量が増えると考えられる。なお、図6(b)に示す例では、断面の上側に溶け込み不良が発生しているが、下側は正常である。このように、通常、溶け込み不良は、周溶接部PWの全周に亘って発生するのではなく、周方向の一部で発生する。
図7は、溶け込み不良の有無を自動判定する方法の一例を示す図である。図7(a)は正常材の例を、図7(b)は周溶接部PWに溶け込み不良が存在する不良材の例を示す。図7に示すように、溶け込み不良の有無を自動判定するには、例えば、周溶接部PWを含む所定の領域(図7の左側に示す第1X線画像において破線で囲った領域)において、所定のしきい値を超える大きな画素濃度を有する画素領域を抽出し、該抽出した画素領域(図7の右側の図に示すハッチングを施した領域)を周溶接部PWに相当する画素領域とする。図7(b)に示す不良材の場合、溶け込み不良が存在する箇所については、画素濃度が小さくなる(暗くなる)ため、所定のしきい値を超えることなく、周溶接部PWに相当する画素領域として抽出されないことが期待できる。このため、例えば、図7(a)に示す正常材の場合の周溶接部PWに相当する画素領域の面積S1に比べて、図7(b)に示す不良材の場合の周溶接部PWに相当する画素領域の面積S2が小さくなると考えられる。したがい、周溶接部PWに相当する画素領域の面積の大小に応じて、溶け込み不良の有無を自動判定することが可能である。
また、本実施形態に係る周溶接部PWの検査方法によれば、通常のX線検査機41cを用いて、周溶接部PWの位置をX線源412の放射中心CL上の位置からずらすだけでよいため、容易に溶け込み不良を検出可能である。
さらに、本実施形態に係る周溶接部PWの検査方法によれば、第4及び第5ステップを実行することで、長尺管P1の長手方向に略垂直な方向から周溶接部PWに向けてX線を放射することで生成された第2X線画像が得られる。したがい、第6ステップにおいて、第2X線画像を用いることで、長尺管P1の周溶接部PWに存在する溶け込み不良以外の不良(例えば、ポロシティなど)を寸法精度の良い状態で検出することが可能である。本実施形態によれば、溶け込み不良を検出する(第3ステップ)場合と、溶け込み不良以外の不良を検出する(第6ステップ)場合とで、X線源412を傾動させる機構等を設ける必要がないため、X線検査機41cが大掛かりになることに起因したコストの増大やメンテナンス性の悪化を招くおそれがない。
図8に破線で示す初期位置にあるX線検査装置4によって長尺管P1の周溶接部PWが不良であると判定された場合、制御装置5は、X線検査装置4を長尺管P1の搬送方向下流側に移動させる。X線検査装置4の移動量は、不良であると判定された周溶接部PWの切断作業の邪魔にならず、なお且つ、後述の第2手順において溶接装置2を長尺管P1の搬送方向下流側に移動させた際に、溶接装置2がX線検査装置4と干渉しないように設定することが好ましい。
X線検査装置4が移動した後、図9に示すように、不良であると判定された周溶接部PWを切断すればよい。周溶接部PWの切断は、例えば、溶接装置2の下流側に設置された可搬式の切断機を用いて、作業者が手動で行うことが可能である。
なお、切断後の長尺管P1の端面は、バリ取りや研磨等を施し、後述の第3手順において周溶接を施し易くすることが好ましい。長尺管P1の端面のバリ取りや研磨は、例えば、溶接装置2の下流側に設置された可搬式の開先・面取り機を用いて、作業者が手動で行うことが可能である。
次に、制御装置5は、図10に示すように、不良であると判定された周溶接部PWが切断された後の長尺管P1の切断箇所まで、破線で示す初期位置にある溶接装置2を長尺管P1の搬送方向下流側に移動させる。
次に、制御装置5は、図11に示すように、溶接装置2を駆動して、溶接装置2によって長尺管P1の切断箇所に再び周溶接を施し、周溶接部PWを形成する。
以上に説明した第1手順〜第3手順によれば、搬送装置1及び巻取装置3(図1参照)を逆方向に駆動して長尺管P1を逆方向(上流側)に搬送する必要がない。長尺管P1を逆方向に搬送する代わりに、X線検査装置4及び溶接装置2を長尺管P1の通常の搬送方向に移動させている。
次に、制御装置5は、図12に示すように、溶接装置2を長尺管P1の搬送方向上流側に移動させる。この際、溶接装置2を初期位置(図8に示す位置)まで移動させることが好ましい。これにより、後述の第5手順においてX線検査装置4を移動させても、溶接装置2がX線検査装置4に干渉しない。
次に、制御装置5は、図13に示すように、長尺管P1の再び形成された周溶接部PWまで、X線検査装置4を長尺管P1の搬送方向上流側に移動させる。すなわち、X線検査装置4を初期位置(図8に破線で示す位置)まで移動させる。
なお、第4手順及び第5手順は、X線検査装置4の移動速度の方が大きくて溶接装置2とX線検査装置4とが干渉するというような支障が無い限り、同時に実行することも可能である。
最後に、制御装置5は、X線検査装置4を駆動して、X線検査装置4によって長尺管P1の再び形成された周溶接部PWを検査する。
以上に説明した第4手順〜第6手順においても、長尺管P1を搬送する必要がない。
すなわち、上記の第1手順〜第6手順を実行することにより、搬送装置1及び巻取装置3を逆方向に駆動することなく(長尺管P1を逆方向に搬送することなく)、溶接装置2で長尺管P1に再び周溶接部PWを形成し、X線検査装置4で再び形成された周溶接部PWを検査することが可能である。このため、長尺管P1を逆方向に搬送することに起因する外面疵の発生や強度の劣化を抑制可能である。
2・・・溶接装置
3・・・巻取装置
4・・・X線検査装置
5・・・制御装置
31・・・リール
41・・・X線検査装置本体
41c・・・X線検査機
412、412A、412B・・・X線源
413・・・X線画像検出器
42・・・X線漏洩抑制機構
100・・・長尺管の製造設備
P・・・管
P1・・・被検査管(長尺管)
PW・・・周溶接部
L・・・ずれ量
Claims (3)
- 被検査管の長手方向に対して略垂直な方向に延びる放射中心を有し、該被検査管に向けてX線を放射するX線源と、前記被検査管を挟んで前記X線源に対向する位置に配置され、前記X線源から放射されて前記被検査管を透過したX線を検出してX線画像を生成するX線画像検出器とを備えるX線検査機を用いて被検査管の周溶接部を検査する方法であって、
前記X線画像における前記被検査管の周溶接部に相当する画素領域が環状となるように、前記被検査管の周溶接部が前記X線源の放射中心上の位置から前記被検査管の長手方向にずれた位置において、前記被検査管を停止させる第1ステップと、
前記第1ステップによって停止した前記被検査管に対して、前記X線源からX線を放射し、前記X線画像検出器で前記X線画像である第1X線画像を生成する第2ステップと、
前記第2ステップによって生成された前記第1X線画像を用いて前記被検査管の周溶接部を検査する第3ステップと、
を含むことを特徴とする周溶接部の検査方法。
なお、「略垂直な方向」とは、前記周溶接部が前記X線源の放射中心上に位置する場合に、前記周溶接部の前記X線源側の部位を透過したX線及び前記周溶接部の前記X線画像検出器側の部位を透過したX線が前記X線画像検出器で重なって検出される状態になる方向を意味する。 - 前記X線源と前記被検査管の前記X線源に対向する側の外面との離間距離をHとし、前記被検査管の外径をODとし、前記周溶接部の幅をWとした場合、前記第1ステップにおいて、前記被検査管の周溶接部の前記X線源の放射中心上の位置からのずれ量Lが以下の式(1)を満足するように、前記被検査管を停止させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の周溶接部の検査方法。
L>W(2H+OD)/2OD ・・・(1) - 前記被検査管の周溶接部が前記X線源の放射中心上の位置となるように、前記被検査管を停止させる第4ステップと、
前記第4ステップによって停止した前記被検査管に対して、前記X線源からX線を放射し、前記X線画像検出器で前記X線画像である第2X線画像を生成する第5ステップと、
前記第5ステップによって生成された前記第2X線画像を用いて前記被検査管の周溶接部を検査する第6ステップと、
を更に含み、
前記第3ステップにおいて、前記第1X線画像を用いて前記被検査管の周溶接部に存在する溶け込み不良を検出し、
前記第6ステップにおいて、前記第2X線画像を用いて前記被検査管の周溶接部に存在する溶け込み不良以外の不良を検出する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の周溶接部の検査方法。
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