JP6822895B2 - 潤滑油組成物 - Google Patents

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Description

本発明は潤滑油組成物に関し、より詳細には低粘度低蒸発性を有し低摩擦性に優れる潤滑油組成物に関し、特には内燃機関用潤滑油組成物に関する。
潤滑油組成物は、内燃機関用、自動変速機用、ギヤ油用など自動車分野で幅広く使用されている。近年、燃費を向上させるために潤滑油組成物の低粘度化が求められているが、低粘度化により油膜が薄くなり、境界摩擦が増えるので摩擦を十分に低減することができないという問題がある。また、潤滑油組成物の低粘度化により、蒸発性が高くなり、オイルの消費が増える。そのため、低粘度及び低蒸発性を有し、且つ摩擦低減効果に優れる潤滑油組成物が求められている。
特許文献1には、有機モリブデン化合物と基油にポリアクリレングリコール(PAG)及びネオペンチルポリオールエステルを使用し、摩擦低減を示す潤滑油組成物が記載されている。特許文献2には、有機モリブデン化合物と基油にポリα−オレフィン及びポリオールエステルを使用し、低燃費性を有するエンジン油が記載されている。特許文献3には、潤滑油にモリブデンジチオホスフェートとアミン系摩擦調整剤及びアミド系摩擦調整剤、摺動面にダイヤモンドライクカーボン膜が被覆された摺動材を用いることにより、低摩擦性及び耐摩耗性を示す潤滑油組成物が記載されている。
特開2009−215552号公報 特開2001−348591号公報 特開2016−216653号公報
本発明は、低粘度及び低蒸発性と摩擦低減性を両立する潤滑油組成物を提供することを目的とする。さらに、特定の潤滑油組成物を用いて低粘度、低蒸発性と優れた摩擦を低減する方法を提供することを目的とする。
基油が低粘度であり且つ低蒸発性を有するには分子間相互作用が強いことが求められる。したがって基油はある程度の極性基を有するのが望ましいが、一方で極性が強すぎると摩擦が大きくなるという問題もある。そのため、基油は摩擦調整剤の機能を阻害しない程度の極性を有することが望ましい。本発明はハンセン法で算出される溶解度パラメータ(Solubility Parameter、以下、SP値という)における、δP値(分子間双極子相互作用によるエネルギー(単位は、(MPa)1/2)を示す値)とδH値(分子間の水素結合によるエネルギー(単位は、(MPa)1/2)を示す値)に着目した。ハンセン法SP値におけるδP及びδHの値が特定の範囲内にあるような化学構造を有する基油を含む潤滑油組成物が低粘度であり且つ低蒸発性を有することを見出した。
ここで、優れた摩擦低減効果を有する摩擦調整剤として従来よりC8/C13アルキル鎖を有するモリブデンジチオカーバメートが一般的に使用されているが、上述した特定の化学構造を有する基油を含む潤滑油組成物に該C8/C13アルキル鎖を有するモリブデンジチオカーバメートを使用すると、摩擦面で上記基油と競争吸着が起こり、低摩擦特性を十分に達成できないという問題が生じた。そこで、更に検討したところ、上記特定の基油と特定の構造を有するモリブデン化合物を含む潤滑油組成物が、低粘度及び低蒸発性を有し、且つ、摩擦を大幅に低減できることを見出し、本発明を成すに至った。
即ち、本発明は
(A)ハンセン法で算出した溶解度パラメータ(SP値)のδP値1.0〜2.0、およびδH値2.0〜3.0を有する基油の1種以上、及び
(B)炭素数1〜30の直鎖又は分岐構造を有する一価炭化水素基を有するモリブデンジチオフォスフェート(MoDTP)、及び炭素数1〜10の直鎖又は分岐構造を有する一価炭化水素基を有し、炭素数11以上の一価炭化水素基を有さないモリブデンジチオカーバメート(MoDTC)から選ばれる1種以上を含有する潤滑油組成物を提供する。
また本発明は、下記(a)〜(g)の少なくとも1の構成を更に有する、潤滑油組成物を提供する。
(a)潤滑油組成物が上記(A)成分以外の基油をさらに含み、潤滑油組成物に含まれる全基油の合計質量あたり上記(A)成分の割合が10質量%以上である。
(b)(B)成分の含有量が、該潤滑油組成物の全質量に対するモリブデンの量として300〜1500質量ppmである。
(c)(A)成分の基油が、炭素数4〜30の直鎖又は分岐構造である一価炭化水素基を1つ以上有する化合物であり、該化合物はエステル結合を1つ以上有する。
(d)前記(c)の化合物が、さらに、炭素数6〜20の、芳香族基を有する一価炭化水素基を1つ以上有する。
(e)100℃において動粘度4.5mm/s以下を有する。
(f)NOACK蒸発量22質量%以下を有する。
(g)内燃機関用である。
さらに本発明は上記潤滑油組成物を使用して摩擦を低減する方法を提供する。
本発明の潤滑油組成物は、低粘度及び低蒸発性を有し、且つ、摩擦低減効果に優れている。本発明の潤滑油組成物は特に内燃機関用の潤滑油組成物として好適に使用できる。
以下、本発明の潤滑油組成物についてより詳細に説明する。
(A)特定のSP値を有する基油
ハンセンの溶解度パラメータとは溶解度をδP、δD、δHの三次元座標で表したものである。δPの値は分子間双極子相互作用によるエネルギー[(MPa)1/2]であり、δHの値は分子間の水素結合によるエネルギー[(MPa)1/2]であり、δDの値は分子間の分散力によるエネルギー[(MPa)1/2]である。本発明は、上記の通り、基油(A)が、ハンセン法で算出した溶解度パラメータSP値におけるδP値1.0〜2.0、好ましくは1.2〜1.9、より好ましくは1.3〜1.8を有し、δH値2.0〜3.0、好ましくは2.1〜2.9、より好ましくは2.2〜2.8、最も好ましくは2.3〜2.7を有することを特徴とする(単位はいずれも(MPa)1/2)。δP値及びδH値の少なくとも1が上記上限値を超えると摩擦が大きくなる。δP値及びδH値の少なくとも1が上記下限値未満では、基油の分子間相互作用が弱くなるため蒸発性が高くなる。
ハンセンの溶解度パラメータにおけるδP、δD、δHの算出方法は、従来公知の方法に従えばよい。上記した値は25℃、1atmの条件にて算出された値であり、公知文献Hansen, Charles (2007). Hansen Solubility Parameters: A user' handbook,Second Edition. Boca Raton,Fla :CRC Pressに記載の方法に従い求めることができる。
本発明の潤滑油組成物にて必須である基油(A)は、ハンセンの溶解度パラメータSP値におけるδP値及びδH値が上述した値を有すればよく、従来公知の基油を使用することができるが、特には合成系基油であり、例えば、モノエステル、及びジエステル等が挙げられる。特定のSP値を有する基油の1種を単独で使用しても良いし、2種以上の併用であってもよい。また、後述する通り、特定のSP値を有する基油に併せて、それ以外の基油((A)以外の合成系基油及び鉱油系基油から選ばれる1種以上)を使用することもできる。
基油(A)の動粘度は特に制限されるものでない。低粘度を有する潤滑油組成物を得るためには、合成系基油の100℃の動粘度は1〜6mm/sであるのが好ましく、2〜4mm/sであるのがより好ましい。
上記特定のSP値を有する合成系基油としては、好ましくは、炭素数4〜30の、直鎖又は分岐構造である一価炭化水素基を1つ以上有する化合物であり、エステル結合を1つ以上、好ましくは1つ又は2つ有するものである。該化合物は、フェニル基等の芳香族基や、アリル基等の脂肪族不飽和炭化水素基を有していて良い。炭素数6〜20の、芳香族基を有する一価炭化水素基を1つ以上有する化合物であるのがより好ましい。また、炭素原子に結合する水素原子の1以上がヒドロキシル基、カルボキシル基、及びアミノ基等の官能基に置換されていてもよい。また、炭化水素基の炭素原子の1以上がヘテロ原子、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等に置換されていてもよい。例えば、エステル結合以外に、1以上のエーテル結合、アミド結合、スルフィド結合を有する化合物であってもよい。該化合物はSP値のδP及びδHの値が上記した範囲内になる構造であればよいが、モノエステル又はジエステル化合物が好ましく、特に好ましくはモノエステル化合物である。
モノエステル化合物は、例えば下記式で表すことができる。
Figure 0006822895
式中、R及びRは互いに独立に、炭素数4〜30、好ましくは炭素数6〜22、さらに好ましくは炭素数8〜18の、直鎖又は分岐構造を有する一価炭化水素基である。R及びRは、芳香族基又は脂肪族不飽和炭化水素基を有してよく、炭素原子に結合する水素原子の1以上がアミノ基等の官能基に置換されていてもよい。また、炭化水素基の炭素原子の1以上がヘテロ原子、例えば、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子に置換されていてもよい。好ましくは、R及びRの少なくとも1が、直鎖又は分岐構造を有する、炭素数10以上、好ましくは炭素数13以上、より好ましくは炭素数15以上の一価炭化水素基であるのがよい。一価炭化水素基は、特には直鎖状または分岐状アルキル基である。R及びRの少なくとも1が分岐構造を有するのが好ましい。より好ましくは、R及びRのいずれかが炭素数6〜20の、芳香族基を有する一価炭化水素基であるのがよい。モノエステル化合物は、モノカルボン酸とモノアルコールとのエステルである。モノカルボン酸としては、例えばステアリン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、及びパルミチン酸等が挙げられる。モノアルコールとしては例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、2−プロピルへプチルアルコール、及び2−エチルヘキシルアルコール等が挙げられる。例えば、下記構造で示されるモノエステル化合物が好ましい。
Figure 0006822895
式中、R’及びR’’は互いに独立に、水素原子又はCである。R’及びR’’が共にHである化合物(C16)58%とR’及びR’’が共にCである化合物(C20)42%とからなる混合物である場合、該化合物はハンセン法により算出されるSP値においてδP=1.6、δH=2.5、δD=16.4を有する。
Figure 0006822895
該化合物はハンセン法により算出されるSP値においてδP=1.7、δH=2.2、δD=16.0を有する。
ジエステル化合物は、例えば下記式で表すことができる。
Figure 0006822895
式中、R及びRは互いに独立に、炭素数4〜15、好ましくは炭素数5〜12、さらに好ましくは炭素数6〜9の、直鎖又は分岐構造を有する一価炭化水素基である。R及びRは、芳香族基又は脂肪族不飽和炭化水素基を有してよく、炭素原子に結合する水素原子の1以上がアミノ基等の官能基に置換されていてもよい。また、炭化水素基の炭素原子の一部がヘテロ原子、例えば、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子に置換されていてもよい。好ましくは、R及びRが共に、炭素数4〜9、特には炭素数7〜9の直鎖又は分岐構造を有する一価飽和炭化水素基であるのがよく、さらにはR及びRが共に分岐構造を有するのが好ましい。一価炭化水素基は、特には、直鎖状または分岐状アルキル基であるのがよい。Rは、炭素数2〜8の、不飽和結合を有していてよい二価炭化水素基である。ジエステル化合物は、ジカルボン酸とモノアルコールとのエステルである。ジカルボン酸としては例えば、コハク酸、アゼライン酸、スペリン酸、セバチン酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸及びフタル酸等が挙げられる。モノアルコールとしては例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、2−プロピルへプチルアルコール、及び2−エチルヘキシルアルコール等が挙げられる。特には、下記構造で示されるジエステル化合物が好ましい。
Figure 0006822895
該化合物はハンセン法により算出されるSP値においてδP=1.9、δH=2.8、δD=16.1を有する。
(A)成分としてジエステル化合物を使用する場合には、好ましくは、後述するポリαオレフィンのようなδP値及びδH値が低い(即ち、極性が低い)基油を併せて使用するのがよい。この場合の含有比率(質量比)は、ジエステル/ハンセン値が低い基油=20/80が好ましく、30/70がより好ましく、40/60が更に好ましい。
上述した合成系基油の中でも、より好ましくは芳香族基を少なくとも一つ有するモノエステル化合物であり、特に好ましくはフェニル基を1つ有するモノエステル化合物である。最も好ましくは、下記の構造で示されるモノエステル化合物である。
Figure 0006822895
(式中、R’及びR’’は上記の通りである)
潤滑油組成物中の基油(A)の含有量は、潤滑油組成物全体の質量に対して、(A)成分として10〜99質量%、好ましくは15〜95質量%、より好ましくは20〜90質量%、特に好ましくは40〜80質量%であるのがよい。2種以上の基油(A)を併用する場合は基油(A)の合計質量が上記範囲を満たせばよい。また、後述する(A)成分以外の基油を併用する場合には、基油全体の量に対して(A)の含有量が上記範囲を満たすのがよい。
(A)成分以外の基油
本発明の潤滑油組成物は、上記(A)成分以外の基油を(A)成分と併せて使用することができる。その他の基油は、鉱油系基油及び上記した(A)成分以外の合成系基油であればよく、従来公知の基油であればよい。(A)成分以外の基油は2種以上の併用であってもよい。(A)成分以外の基油を併用する場合の(A)成分の含有割合は、基油全体の質量に対して(A)成分を10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、特に好ましくは80質量%以上となるのが好ましい。上限は特に制限されないが、最も好ましくは(A)成分が100質量%であるのがよい。
鉱油系基油としては、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理等を適宜組み合わせて精製した、パラフィン系、ナフテン系等の基油や、溶剤脱ロウで得たワックスを異性化、脱ろうして得られる基油が挙げられる。該鉱油系基油の100℃での動粘度は特に制限されるものでないが、低粘度を有する潤滑油組成物を得るためには、1〜6mm/sであるのが好ましく、より好ましくは2〜6mm/sである。
合成系基油としては、例えば、ポリブテン又はその水素化物;1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリ−α−オレフィン又はその水素化物;ネオペンチルグリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ネオペンチルグリコールジ−n−オクタノエート、ネオペンチルグリコールジ−n−デカノエート、トリメチロールプロパントリ−n−オクタノエート、トリメチロールプロパントリ−n−デカノエート、ペンタエリスリトールテトラ−n−ペンタノエート、ペンタエリスリトールテトラ−n−ヘキサノエート、ペンタエリスリトールテトラ−2−エチルヘキサノエート等のポリオールエステル;アルキルナフタレン、アルキルベンゼン、芳香族エステル等の芳香族系合成油又はこれらの混合物等が例示できる。更にGTL(Gas to Liquid)基油、ATL(Asphalt to Liquid)基油、BTL(Biomass to Liquid)基油及びCTL(Coal to Liquid)基油を用いることもでき、これを原料として使用する過程は、米国特許No.4,594,172や米国特許No.4,943,672に記載されている。該合成系基油の動粘度は特に制限されるものでない。また、100℃での動粘度が6mm/s未満又は80mm/s超であるポリα−オレフィン又はα−オレフィン共重合体を使用することも可能である。低粘度を有する潤滑油組成物を得るためには、合成系基油の動粘度は1〜6mm/sであるのが好ましく、2〜6mm/sであるのがより好ましい。
低粘度を有する潤滑油組成物を得るためには、基油全体として、100℃での動粘度1〜6mm/s、好ましくは2〜6mm/s、特には2.5〜6mm/sを有することが好ましい。
(B)モリブデン系摩擦調整剤
本発明の潤滑油組成物は、炭素数1〜30の直鎖又は分岐構造を有する一価炭化水素基を有するモリブデンジチオフォスフェート(MoDTP)、及び炭素数1〜10の直鎖又は分岐構造を有する一価炭化水素基を有し、炭素数11以上の一価炭化水素基を有さないモリブデンジチオカーバメート(MoDTC)から選ばれる1種以上を含有する。これらの摩擦調整剤は(B−1)MoDTP又は(B−2)MoDTCの単独でも、(B−1)MoDTP及び(B−2)MoDTCを併用するのでもよい。(B−1)MoDTPと(B−2)MoDTCとを併用する場合の配合割合は特に制限されるものでない。
(B−1)モリブデンジチオフォスフェート(MoDTP)は例えば下記(1)で表される化合物である。
Figure 0006822895
上記一般式(1)において、Rは、互いに独立に、炭素数1〜30の一価炭化水素基である。炭化水素基は直鎖状でも分岐状でもよい。該一価炭化水素基としては、炭素数1〜30の直鎖状または分岐状アルキル基;炭素数2〜30のアルケニル基;炭素数4〜30のシクロアルキル基;炭素数6〜30のアリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基等を挙げることができる。アリールアルキル基において、アルキル基の結合位置は任意である。より詳細には、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基およびオクタデシル基等、およびこれらの分岐状アルキル基を挙げることができ、特に炭素数3〜8のアルキル基が好ましい。また、XおよびXは酸素原子または硫黄原子であり、好ましくは酸素原子である。YおよびYは酸素原子または硫黄原子であり、好ましくは硫黄原子である。
(B−2)モリブデンジチオカーバメート(MoDTC)は例えば下記(2)で表される化合物である。
Figure 0006822895
上記一般式(1)において、Rは、互いに独立に、炭素数1〜10の一価炭化水素基である。炭化水素基は直鎖状でも分岐状でもよい。該一価炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖状または分岐状アルキル基;炭素数2〜10のアルケニル基;炭素数4〜10のシクロアルキル基;炭素数6〜10のアリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基等を挙げることができる。アリールアルキル基において、アルキル基の結合位置は任意である。より詳細には、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、及びデシル基等、およびこれらの分岐状アルキル基を挙げることができ、特に炭素数3〜8のアルキル基が好ましい。また、XおよびXは酸素原子または硫黄原子であり、好ましくは硫黄原子である。YおよびYは酸素原子または硫黄原子であり、好ましくは硫黄原子である。
上記(B−2)成分は炭素数11以上の一価炭化水素基を有さない。これは、炭素数11以上の一価炭化水素基を有するMoDTC、特には炭素数8のアルキル基及び炭素数13のアルキル基を有する従来公知のMoDTCのみと前記した基油(A)とを含む潤滑油組成物は、十分な摩擦低減効果を得ることができないためである。但し、本発明の潤滑油組成物は、炭素数11以上の一価炭化水素基を有するMoDTCを、上記(B−1)成分及び/又は(B−2)成分と併せて含有することはできる。
即ち、本発明の潤滑油組成物は上記(B−2)成分以外のMoDTCであり、即ち、上記式(2)において少なくとも1のRの炭素数が11以上、好ましくは11〜30、より好ましくは11〜20であるMoDTC(以下、B−3と称す)を更に含むことができる。即ち、本発明の潤滑油組成物は、上記(B−1)成分と(B−3)成分の組合せ、(B−2)成分と(B−3)成分の組合せ、及び(B−1)成分及び(B−2)成分と(B−3)成分の組合せを含んでいてよい。(B−3)成分の配合量は、本発明の奏する摩擦低減効果を損ねない範囲であればよく、適宜調整されればよい。
MoDTPを含む場合、本発明の潤滑油組成物中に含まれるリンの合計量は、潤滑油組成物全体の質量に対して300質量ppm〜1500質量ppm、好ましくは400〜1400質量ppm、より好ましくは500〜1300質量ppm、更に好ましくは600〜1200質量ppm、特に好ましくは600〜1100質量ppm、最も好ましくは700〜1000質量ppmである。リンの合計量を上記範囲内とすることにより、触媒被毒を起こすことなく、優れた摩擦低減効果を得ることができる。
本発明の潤滑油組成物におけるMoDTP及びMoDTCの量は、潤滑油組成物全体の質量に対するモリブデン量として300〜1500質量ppm、好ましくは500〜1200質量ppm、より好ましくは600〜1100質量ppm、特に好ましくは650〜1050質量ppmとなる量であるのがよい。MoDTP及びMoDTCの量が上記下限値未満では摩擦低減効果を十分に得ることができない。また上記上限超では摩耗が大きくなるため好ましくない。
さらに、モリブデン三核体化合物を併せて含有することもできる。しかしモリブデン三核体化合物を含む潤滑油組成物は摩耗が大きくなるおそれがある。したがって、モリブデン三核体化合物を含む場合、その量は本発明の効果を損ねない限りの極めて少量であるのがよい。より詳細には、潤滑油組成物全体の質量に対するモリブデン三核体化合物由来のモリブデン量として、500質量ppm未満、好ましくは400質量ppm以下、更に好ましくは200質量ppm以下であるのがよい。下限値は特に制限されるものでない。例えば10質量ppm以上が好ましく、さらには50質量ppm以上、さらに好ましくは100質量ppm以上となる量で含有してもよい。
その他の摩擦調整剤
本発明の潤滑油組成物は、上記以外の摩擦調整剤を(B−1)又は(B−2)に併せて含有することができる。上記以外の摩擦調整剤としては、例えばエステル、アミン、アミド、硫化エステルなどが挙げられる。これら摩擦調整剤の含有量は、潤滑油組成物の低粘度、低蒸発性、及び摩擦低減効果を損ねない範囲であればよい。
本発明の潤滑油組成物は、上記の通り、(A)特定の基油と(B)特定のモリブデン系摩擦調整剤を必須成分として含有する。さらにこれらに加えて任意成分として(C)摩耗防止剤、(D)金属清浄剤、(E)無灰分散剤、および(F)粘度指数向上剤から選ばれる1種以上を含んでいてもよい。
(C)摩耗防止剤
摩耗防止剤は、従来公知のものを使用することができる。中でも、リンを有する摩耗防止剤が好ましく、特には下記式で示されるジチオリン酸亜鉛(ZnDTP(ZDDPともいう))が好ましい。
Figure 0006822895
上記式において、R及びRは、各々、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子または炭素数1〜26の一価炭化水素基である。一価炭化水素基としては、炭素数1〜26の第1級(プライマリー)または第2級(セカンダリー)アルキル基;炭素数2〜26のアルケニル基;炭素数6〜26のシクロアルキル基;炭素数6〜26のアリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基;またはエステル結合、エーテル結合、アルコール基またはカルボキシル基を含む炭化水素基である。R及びRは、好ましくは炭素数2〜12の、第1級または第2級アルキル基、炭素数8〜18のシクロアルキル基、炭素数8〜18のアルキルアリール基であり、各々、互いに同一であっても異なっていてもよい。特にはジアルキルジチオリン酸亜鉛が好ましく、第1級アルキル基は、炭素数3〜12を有することが好ましく、より好ましくは炭素数4〜10である。第2級アルキル基は、炭素数3〜12を有することが好ましく、より好ましくは炭素数3〜10である。また、ジチオカルバミン酸亜鉛(ZnDTC)を組合せて使用してもよい。
本潤滑油組成物において該ジアルキルジチオリン酸亜鉛の量は、潤滑油組成物全体の質量に対するリンの合計量が上記した範囲を満たす量である。好ましくは、潤滑油組成物全体の質量に対するZnDTP由来のリンの量が300〜1500質量ppmとなる量、好ましくは350〜1200質量ppmとなる量、より好ましくは400〜1000質量ppmとなる量、特に好ましくは500〜900質量ppmとなる量であればよい。該ジアルキルジチオリン酸亜鉛を上記範囲となる量で含有することにより、触媒被毒を起こすことなく、摺動面間における摩擦低減効果の向上及び優れた耐摩耗性を両立することができる。尚、本発明の潤滑油組成物において、第1級アルキル基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛(Pri−ZnDTP)及び第2級アルキル基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛(Sec−ZnDTP)のうち1種を単独で使用してもよいし、これらの2種以上を混合して使用してもよい。混合して使用する場合の混合比率は特に制限されない。MoDTPと組合せることにより、Pri−ZnDTP及びSec−ZnDTPのいずれを使用しても、同等に、優れた摩擦低減効果及び耐摩耗性を両立することができる。なお、限定的ではないが、Sec−ZnDTPを必須とする態様が特に好ましく、潤滑油組成物全体の質量に対するSec−ZnDTP由来のリンの量が200〜1500質量ppmとなる量が好ましく、好ましくは300〜1200質量ppm、より好ましくは400〜1000質量ppm、特に好ましくは500〜900質量ppmとなる量がよい。
また、ジアルキルジチオリン酸亜鉛と併用して、ホスフェート、ホスファイト系のリン化合物、並びにそれらの金属塩及びアミン塩から選ばれる少なくとも1種の化合物を使用することもできる。但し、これらの化合物の量は、潤滑油組成物全体中のリンの合計質量が上記した範囲を満たす量に限られる。例えば、該潤滑油組成物の全量に対して0.1質量%未満が好ましく、より好ましくは0.05質量%未満、更に好ましくは0.01質量%未満であり、全く含まないのが最も好ましい。該リン化合物としては、例えば、炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有する亜リン酸モノエステル及び(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸;炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有する亜リン酸ジエステル、モノチオ亜リン酸ジエステル、及び(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸モノエステル;炭素数1〜30の炭化水素基を3つ有する亜リン酸トリエステル、及び(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸ジエステル;及びこれらの混合物等が挙げられる。
(D)金属清浄剤
金属清浄剤としてはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を有する清浄剤が挙げられる。例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有するスルフォネート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有するサリシレート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有するフェネートが挙げられるが、これに限定されない。また、アルカリ金属又はアルカリ土類金属としては、マグネシウム、バリウム、ナトリウム、及びカルシウムが挙げられるが、これに限定されない。
より詳細には、カルシウムスルフォネート、マグネシウムスルフォネート、カルシウムサリシレート、マグネシウムサリシレート、カルシウムフェネート、及びマグネシウムフェネートが好ましく用いられる。金属清浄剤は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。金属清浄剤中に含まれるアルカリ金属又はアルカリ土類金属の量は、限定的ではないが、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましく、1.0〜15質量%がさらに好ましい。
金属清浄剤は、限定的ではないが、全塩基価20〜600mgKOH/gを有するのが好ましく、50〜500mgKOH/gがより好ましく、100〜450mgKOH/gがさらに好ましく、特に好ましくは150〜400mgKOH/gである。これにより、潤滑油に必要な酸中和性、高温清浄性、防錆性を確保することができる。
金属清浄剤は、潤滑油組成物中に任意の割合で含有されればよい。例えば、0.01〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜4質量%であり、さらに好ましくは0.2〜3質量%である。
(E)無灰分散剤
本発明の潤滑剤組成物はさらに無灰分散剤を含有することができる。無灰分散剤は従来公知のものを使用すればよく、特に制限されるものでない。例えば、炭素数40〜400の、直鎖構造又は分枝構造を有するアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する含窒素化合物又はその誘導体、あるいはコハク酸イミド及びその変性品等が挙げられる。無灰分散剤は1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。また、ホウ素化無灰分散剤を使用することもできる。ホウ素化無灰分散剤は潤滑油に用いられている任意の無灰分散剤をホウ素化したものである。ホウ素化は一般に、イミド化合物にホウ酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和することにより行われる。
上記アルキル基又はアルケニル基の炭素数は、好ましくは40〜400であり、より好ましくは60〜350である。アルキル基及びアルケニル基の炭素数が前記下限値未満であると、化合物の基油に対する溶解性が低下する傾向にある。また、アルキル基及びアルケニル基の炭素数が上記上限値を超えると、潤滑油組成物の低温流動性が悪化する傾向にある。上記アルキル基及びアルケニル基は、直鎖構造を有していても分枝構造を有していてもよい。好ましい態様としては、例えば、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィンのオリゴマー、エチレンとプロピレンのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基又は分枝状アルケニル基等が挙げられる。
前記コハク酸イミドには、ポリアミンの一端と無水コハク酸との反応生成物である、いわゆるモノタイプのコハク酸イミドと、ポリアミンの両端と無水コハク酸との反応生成物である、いわゆるビスタイプのコハク酸イミドとがある。本発明の潤滑油組成物は、モノタイプ及びビスタイプのうちいずれか一方を含有してもよいし、あるいは双方を含有してもよい。
上記コハク酸イミドの変性品とは、例えば、コハク酸イミドをホウ素化合物で変性したものである(以下、ホウ素化コハク酸イミドということがある)。ホウ素化合物で変性するとは、ホウ素化することを意味する。ホウ素化コハク酸イミドは1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。併用する場合は、ホウ素化コハク酸イミドの2種以上の組合せであってもよい。また、モノタイプ及びビスタイプの両方を含んでもよいし、モノタイプ同士の併用、又はビスタイプ同士の併用であってもよい。ホウ素化コハク酸イミドと非ホウ素化コハク酸イミドとを併用してもよい。
例えば、ホウ素化コハク酸イミドの製造方法としては、特公昭42−8013号公報及び同42−8014号公報、特開昭51−52381号公報、及び特開昭51−130408号公報等に開示されている方法等が挙げられる。具体的には例えば、アルコール類やヘキサン、キシレン等の有機溶媒、軽質基油等にポリアミンとコハク酸無水物(誘導体)にホウ酸、ホウ酸エステル、又はホウ酸塩等のホウ素化合物を混合し、適当な条件で加熱処理することにより得ることができる。この様にして得られるホウ素化コハク酸イミドに含まれるホウ素含有量は通常0.1〜4質量%とすることができる。本発明においては、特に、アルケニルコハク酸イミド化合物のホウ素変性化合物(ホウ素化コハク酸イミド)は耐熱性、酸化防止性及び摩耗防止性に優れるため好ましい。
ホウ素化無灰分散剤中に含まれるホウ素含有量は特に制限はない。通常無灰分散剤の質量に対して0.1〜3質量%である。本発明の1つの態様としては、無灰分散剤中のホウ素含有量は、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上であり、また好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2.3質量%以下、さらに好ましくは2.0質量%以下であるのがよい。ホウ素化無灰分散剤として好ましくはホウ素化コハク酸イミドであり、特にはホウ素化ビスコハク酸イミドが好ましい。
ホウ素化無灰分散剤は、ホウ素/窒素質量比(B/N比)0.1以上、好ましくは0.2以上を有するものであり、好ましくは1.0未満、より好ましくは0.8以下を有するものが好ましい。
無灰分散剤の含有量は適宜調整されればよいが、例えば潤滑油組成物全体の質量に対して、0.01〜20質量%であるのが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。無灰分散剤の含有量が上記下限値未満であると、スラッジ分散性が不十分となるおそれがある。また含有量が上記上限値を超えると、特定のゴム材料を劣化させたり、低温流動性を悪化させるおそれがある。
(F)粘度指数向上剤
粘度指数向上剤としては、例えば、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの重合体又は共重合体、若しくはその水素化物などの、いわゆる非分散型粘度指数向上剤、又は、窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させたいわゆる分散型粘度指数向上剤、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィンとしてはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等が例示できる)、若しくはその水素化物、ポリイソブテン若しくはその水素化物、スチレン−ジエン共重合体の水素化物、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体、星状イソプレン等及びポリアルキルスチレン等が挙げられる。さらに、少なくともポリオレフィンマクロマーに基づく繰返し単位と炭素数1〜30のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに基づく繰返し単位とを主鎖に含む櫛型ポリマーを用いることもできる。
粘度指数向上剤の分子量は、潤滑油組成物のせん断安定性を考慮して選定することが必要である。例えば、粘度指数向上剤の重量平均分子量は、分散型及び非分散型ポリメタクリレートの場合には、通常5,000〜1,000,000、好ましくは100,000〜900,000のものが、ポリイソブテン又はその水素化物の場合は通常800〜5,000、好ましくは1,000〜4,000のものが、エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物の場合は通常800〜500,000、好ましくは3,000〜200,000のものが用いられる。
粘度指数向上剤の中でもエチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物を用いた場合には、特にせん断安定性に優れた潤滑油組成物を得ることができる。上記粘度指数向上剤の中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができる。潤滑油組成物中の粘度指数向上剤の含有量は、組成物全量基準で、0.01〜20質量%、好ましくは0.02〜10質量%、より好ましくは0.05〜5質量%である。
本発明の潤滑油組成物中は、上記以外のその他の添加剤をさらに含んでもよい。たとえば、油性剤、さび止め剤、酸化防止剤、極圧剤、腐食防止剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、消泡剤、着色剤、及び自動変速機油用パッケージ添加剤が挙げられる。これらのうち少なくとも1種を含有する各種潤滑油用パッケージ添加剤を添加することもできる。但し、リンを有する添加剤を使用する場合は、潤滑油組成物全体の質量に対するリンの合計量が300〜1500質量ppm、好ましくは400〜1400質量ppm、より好ましくは500〜1300質量ppm、特に好ましくは600〜1100質量ppm、最も好ましくは700〜1000質量ppmとなる範囲内で調整する。
本発明の潤滑油組成物の150℃での高温高せん断粘度(HTHS粘度)は制限されないが、好ましくは1.4〜2.9mPa.s、より好ましくは1.7〜2.6mPa.sである。
本発明の潤滑油組成物の100℃での動粘度は、限定されることはないが、4.5mm/s以下であるのが好ましく、2.5〜4.5mm/sであることがより好ましく、3.0〜4.4mm/sであることがさらに好ましい。潤滑油組成物の100℃での動粘度が上記下限値未満であると、摩擦係数を十分に確保することができない可能性がある。また、上記上限値超であると、粘性抵抗が大きくなり、燃費が悪化する。本発明において100℃における動粘度(KV100)はASTM D445に従い測定される値である。
本発明の潤滑油組成物はNOACK蒸発量が22質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、最も好ましくは13質量%以下であるのがよい。NOACK蒸発量の下限は限定的ではないが、1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。本発明においてNOACK蒸発量はASTM D5800に準拠して250℃1時間で測定される値である。
本発明の潤滑油組成物は、低粘度であるにもかかわらず蒸発性が低く、且つ、優れた摩擦低減効果を有する。また、本発明の潤滑油組成物を使用して低粘度及び低蒸発性の潤滑油組成物でありながら摩擦を低減する方法が提供される。本発明の潤滑油組成物の使用方法は、内燃機関、自動車変速機、及びギア油等、自動車分野における公知の潤滑油組成物の使用方法に従うことができ、これらの使用態様において摩擦を低減するものである。特には内燃機関用として好適に使用できる。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
実施例及び比較例の潤滑油組成物を構成する各成分は以下の通りである。
(A)基油
1)下記構造で示される芳香族モノエステル化合物。
Figure 0006822895
式中、R’及びR’’は互いに独立に、水素原子又はCである。R’及びR’’が共にHである化合物(C16)58%とR’及びR’’が共にCである化合物(C20)42%とからなる混合物のハンセン法により算出されるSP値においてδP=1.6、δH=2.5であり、KV100=2.9mm/s、NOACK蒸発量=15質量%を有する。

2)2−エチルヘキシルパーミテート(EHPA):下記構造で示されるモノエステル化合物。ハンセン法SP値におけるδP=1.7、δH=2.2であり、KV100=2.6mm/s、NOACK蒸発量=26質量%を有する。
Figure 0006822895
3)ジ(2−プロピルへプチル)アジペート(DPHA):下記構造で示されるジエステル化合物。
ハンセン法SP値におけるδP=1.9、δH=2.8であり、KV100=3.0mm/s、NOACK蒸発量=25質量%を有する。
Figure 0006822895
(A’)その他の基油
4)ジイソデシルアジペート(DIDA):下記構造で示されるジエステル化合物。
ハンセン法SP値におけるδP=2.3、δH=2.9であり、KV100=3.6mm/s、NOACK蒸発量=12質量%を有する。
Figure 0006822895
5)GTL基油1:KV100=2.7mm/s、NOACK蒸発量=43質量%、ハンセン法SP値におけるδP=0.0、δH=0.0を有する。
6)GTL基油2:KV100=3.7mm/s、NOACK蒸発量=14質量%、ハンセン法SP値におけるδP=0.0、δH=0.0を有する。
7)鉱油:KV100=3.0mm/s、NOACK蒸発量=41質量%、ハンセン法SP値におけるδP=0.0、δH=0.0を有する。
8)ポリαオレフィン(PAO):KV100=3.0mm/s、NOACK蒸発量=50質量%、ハンセン法SP値におけるδP=0.0、δH=0.0を有する。
(B)モリブデン系摩擦調整剤
(B−1)モリブデンジチオフォスフェート(MoDTP)
モリブデン含有量9質量%、上記式(1)で表され、XおよびXが酸素原子であり、YおよびYが硫黄原子であり、Rは炭素数8のアルキル基である化合物。
(B−2)モリブデンジチオカーバメート(MoDTC)
モリブデン含有量4質量%、上記式(2)で表され、XおよびXが酸素原子であり、YおよびYが硫黄原子であり、Rは炭素数8のアルキル基である化合物。
比較用摩擦調整剤
・モリブデンジチオカーバメートMoDTC(B−3)
モリブデン含有量10質量%、上記式(2)で表され、XおよびXが酸素原子であり、YおよびYが硫黄原子であり、Rの一部が炭素数8のアルキル基であり残部が炭素数13のアルキル基である化合物。
・Mo三核体化合物(モリブデン含有量6質量%)
(C)摩耗防止剤:ジアルキルジチオリン酸亜鉛
・Pri−ZnDTP(第一級アルキル基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛)
・Sec−ZnDTP(第二級アルキル基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛)
(D)金属清浄剤
・Caサリシレート(全塩基価180mgKOH/g、Ca含有量6質量%)
・Mgスルホネート(全塩基価400mgKOH/g、Mg含有量9質量%)
(E)無灰分散剤
・ホウ素化コハク酸イミド(B含有量0.7質量%、N含有量2.0質量%)
・非ホウ素化コハク酸イミド(N含有量1.0質量%)
(F)その他の添加剤パッケージ
・酸化防止剤:フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤
・消泡剤:ジメチルシリコーン
[実施例1〜9及び比較例1〜12]
上記した各成分を表1〜3の各々に記載の組成及び量で混合して潤滑油組成物を調製した。
表に記載の各量について、以下に説明する。
基油の量は、基油総量に対する質量%である。
モリブデン系摩擦調整剤の量は、モリブデンの含有量に換算した潤滑油組成物の総量に対する質量ppmである。MoDTPについては、潤滑油組成物の総量に対するMoDTP由来のリン量の質量ppmも記載した。
ジアルキルジチオリン酸亜鉛の量は、潤滑油組成物の総量に対する質量ppmである。潤滑油組成物の総量に対するジアルキルジチオリン酸亜鉛由来のリン量の質量ppmも記載した。
金属清浄剤の量は、カルシウム、及びマグネシウムの含有量に換算した潤滑油組成物の総量に対する質量%である。
無灰分散剤の量は、ホウ素の量に換算した潤滑油組成物の総量に対する質量ppmと、窒素の量に換算した潤滑油組成物の総量に対する質量ppmである。
また、表中には、潤滑油組成物の総量に対する、モリブデンの合計量(質量ppm)及びリンの合計量(質量ppm)も記載した。
これらの潤滑油組成物について下記の試験を行った。結果を表に示す。
1)100℃における動粘度(KV100)はASTM D445に従い測定した。
2)NOACK蒸発量はASTM D5800に準拠して250℃1時間で測定した。
3)摩擦係数はPCS Instrument社製のMini Traction Machine(MTM)試験機を用いて測定した。直径19.05mmの研磨されたクロム含有鋼(AISI52100)の球と、球と同じ材質の直径46mmの研磨されたディスクを用い、球およびディスクを互いに独立に駆動し、それによって滑り/転がり接触を生じさせた。試験サンプルを35ml試験オイルバスに入れて試験した。荷重を37N(ヘルツ圧力1GPaに相当)で、すべり率50%、速度(平均速度)100mm/sの条件で2時間慣らし運転した後に、速度(平均速度)を3000mm/s〜2mm/sの範囲で変化させて摩擦係数を測定した。速度20mm/s〜5mm/sの間の8点の摩擦係数値の平均値を摩擦係数として求めた。
Figure 0006822895
Figure 0006822895
Figure 0006822895
Figure 0006822895
本発明の潤滑油組成物は、低粘度及び低蒸発性を有し、且つ、摩擦低減効果に優れている。特に内燃機関用の潤滑油組成物として好適に使用できる。

Claims (9)

  1. (A)ハンセン法で算出した溶解度パラメータ(SP値)のδP値1.0〜2.0、およびδH値2.0〜3.0を有する基油の1種以上、及び
    (B)炭素数1〜30の直鎖又は分岐構造を有する一価炭化水素基を有するモリブデンジチオフォスフェート(MoDTP)、及び炭素数1〜10の直鎖又は分岐構造を有する一価炭化水素基を有し、炭素数11以上の一価炭化水素基を有さないモリブデンジチオカーバメート(MoDTC)から選ばれる1種以上
    を含有する潤滑油組成物。
  2. 潤滑油組成物が上記(A)成分以外の基油をさらに含み、潤滑油組成物に含まれる全基油の合計質量あたり上記(A)成分の割合が10質量%以上である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
  3. (B)成分の含有量が、該潤滑油組成物の全質量に対するモリブデンの量として300〜1500質量ppmであることを特徴とする、請求項1または2に記載の潤滑油組成物。
  4. (A)成分の基油が、炭素数4〜30の、直鎖又は分岐構造である一価炭化水素基を1つ以上有する化合物であり、該化合物はエステル結合を1つ以上有する、請求項1〜3のいずれか1項記載の潤滑油組成物。
  5. 前記化合物がさらに、炭素数6〜20の、芳香族基を有する一価炭化水素基を1つ以上有する、請求項4に記載の潤滑油組成物。
  6. 100℃において動粘度4.5mm/s以下を有する、請求項1〜5のいずれか1項記載の潤滑油組成物。
  7. NOACK蒸発量22質量%以下を有する、請求項1〜6のいずれか1項記載の潤滑油組成物。
  8. 内燃機関用である、請求項1〜7のいずれか1項記載の潤滑油組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項記載の潤滑油組成物を使用して摩擦を低減する方法。
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