JP6822437B2 - 高温凝固物の熱回収装置および高温凝固物からの熱回収方法 - Google Patents

高温凝固物の熱回収装置および高温凝固物からの熱回収方法 Download PDF

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本発明は、例えば鉄鋼製造プロセスにおいて発生する高炉スラグや製鋼スラグを高温で凝固させた凝固スラグなどの、高温凝固物から熱回収を行うために好適な熱回収装置および熱回収方法に関するものである。
近年、更なるCO排出量削減のため、鉄鋼製造プロセスにおいて排出される高温の溶融スラグなど、高温かつ未利用である排熱を回収して利用する省エネルギー技術が求められている。溶融スラグの保有熱量は、スラグ1トン当たり1.8GJほどの大きさを有することから、溶融スラグの保有熱を回収できれば、大きな省エネルギー効果が期待できる。溶融スラグの保有熱を回収する方法として、例えば特許文献1には、鋳滓機を用いて溶融スラグを連続的に凝固成形し、熱回収装置に凝固スラグを高温の状態で装入して熱回収する方法が記載されている。熱回収装置の構造としては、凝固スラグが多量かつ固形物であるため、充填層方式で設計して設備をコンパクトにすることが望ましい。
特開昭57−182086号公報
Shigaki, N.; Tobo, H.; Ozawa, S.; Ta, Y.; Hagiwara, K. Heat Recovery Process from Packed Bed of Hot Slag Plates. ISIJ International 2015, 55, 10, 2258‐2265
上記のように、高温凝固物から充填層方式で熱回収を行う熱回収装置の設計において、高温凝固物を可能な限り高い温度で熱回収装置内に装入することができれば回収熱量の増加が期待できる。例えば製鋼スラグを凝固した直後の凝固スラグの場合、1100〜1300℃程度の高温を有するため、なるべくこの高温状態を保ったまま熱回収装置内にスラグを装入することが望ましい。しかしながら、1000℃を超える程の高温になると、熱回収装置の内壁が耐火物構造となり、設備本体や設備支持構造が大型化すると共に、設備重量化に伴う基礎構造の強靭化など、設備コストが大幅に増加してしまう。また、高温凝固物を頻繁に装入・排出することで耐火物の損耗が生じるため、設備補修による稼働時間の縮小およびランニングコストの増加など運転面での課題も生じる。内壁構造をSUS鋼板などの薄い鋼板構造に出来れば大幅な重量削減が期待できるが、通常SUS鋼板による耐熱温度は800〜1000℃程度であり、それ以上の高温物が装入される状況下では使用することができない。内壁を水冷構造にしてSUS鋼板の耐熱温度以内に保つような構造設計も可能であるが、その際には高温凝固物の有する熱の一部を捨てることになるため、熱回収率が低下してしまう。
本発明は、そのような課題を解決し、高温凝固物の熱回収を比較的簡易的かつ軽量な内壁構造の熱回収装置を用いて熱回収率が維持できるようにすることを目的とするものである。
前記の課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
[1]高温凝固物の充填層を内部に収容可能な熱回収槽内に熱回収ガスを送風して熱回収を行う熱回収装置において、前記熱回収槽の下部から前記熱回収槽内に熱回収ガスを供給するための下部送風口と、前記熱回収槽の内壁から前記熱回収槽内に冷媒を供給するための冷媒供給口をそれぞれ設けることを特徴とする、高温凝固物の熱回収装置。
[2]前記熱回収槽の内壁温度を測定するための温度測定装置と、前記温度測定装置の温度データに応じて前記冷媒供給口からの冷媒供給量を調節するための流量調節弁を設けることを特徴とする、[1]に記載の高温凝固物の熱回収装置。
[3]前記熱回収槽の下部送風口から吹き込まれる熱回収ガスの送風量と、前記冷媒供給口から供給される冷媒の供給量とをそれぞれ独立に調節可能とするための流量調節弁を設けることを特徴とする、[1]または[2]に記載の高温凝固物の熱回収装置。
[4]前記熱回収槽の冷媒供給口から供給される冷媒を水および/または水蒸気とすることを特徴とする、[1]〜[3]の何れかに記載の高温凝固物の熱回収装置。
[5]前記熱回収槽の下部送風口および冷媒供給口の両方または何れか一方において、水、水蒸気、炭酸ガスの少なくとも1種類を供給するための供給口を設けることを特徴とする、[1]〜[4]の何れかに記載の高温凝固物の熱回収装置。
[6]前記熱回収槽の出側に、前記下部送風口から吹き込まれた熱回収ガスと、前記冷媒供給口から供給された冷媒との混合流体から熱交換するための熱交換器を設けることを特徴とする、[1]〜[5]の何れかに記載の高温凝固物の熱回収装置。
[7][1]〜[6]の何れかに記載の熱回収装置を用いた、高温凝固物からの熱回収方法であって、
前記熱回収槽の内部に高温凝固物を装入し、前記熱回収ガスおよび前記冷媒をそれぞれ用いて高温凝固物から熱回収を行うことを特徴とする、高温凝固物からの熱回収方法。
[8][2]に記載の熱回収装置を用いた、高温凝固物からの熱回収方法であって、
前記熱回収槽の内壁温度を測定するための温度測定装置の温度データに応じて、前記冷媒供給口からの冷媒供給量を調節することを特徴とする、高温凝固物からの熱回収方法。
[9][3]に記載の熱回収装置を用いた、高温凝固物からの熱回収方法であって、
前記熱回収槽の下部送風口から吹き込まれる熱回収ガスの送風量と、前記冷媒供給口から供給される冷媒の供給量とをそれぞれ独立に調節可能とするための流量調節弁を用いて、前記下部送風口からの送風量および前記冷媒供給口からの冷媒供給量とのバランスを制御することを特徴とする、高温凝固物からの熱回収方法。
[10]前記熱回収槽の内壁温度を測定するために設けた温度測定装置による測定温度が、上限温度T以下かつ下限温度T以上となるように、前記温度測定位置に隣接する前記冷媒供給口の冷媒供給量を制御することを特徴とする、[9]に記載の高温凝固物からの熱回収方法。
[11]前記熱回収槽の出側に、前記下部送風口から吹き込まれた熱回収ガスと、前記冷媒供給口から供給された冷媒との混合流体から熱交換器を用いて熱交換を行うことを特徴とする、[9]または[10]に記載の高温凝固物からの熱回収方法。
[12]前記高温凝固物を鉄鋼製造工程にて発生する製鋼スラグとし、前記熱回収槽の下部送風口および冷媒供給口の両方または何れか一方において、水、水蒸気、炭酸ガスの少なくとも1種類を供給することにより、前記製鋼スラグの膨張抑制処理をすることを特徴とする、[9]から[11]の何れかに記載の高温凝固物からの熱回収方法。
本発明によれば、上記の設備により、1000℃を超える高温凝固物の熱回収を、比較的簡易的かつ軽量な内壁構造の熱回収装置を用いて実施できるようになる。
熱回収装置の内壁に設けた冷媒供給口から冷媒を供給する際の、冷媒流れおよび輻射熱による熱移動を示す図である。 本発明の第1の実施形態に関する、熱回収装置の構造を示す図である。 本発明の第2の実施形態に関する、熱回収装置の構造を示す図である。 本発明の第3の実施形態に関する、熱回収装置の構造を示す図である。 本発明の実施例に関する、充填層内における充填物の高さ方向温度分布の計算結果を示す図である。 比較例での、熱回収槽の内壁近傍への冷媒供給機構を有さない場合における、熱回収槽の内壁温度の計算結果を示す図である。 本発明例での、熱回収槽の内壁近傍への冷媒供給機構を有する場合における、熱回収槽の内壁温度の計算結果を示す図である。
本発明の実施の形態を以下に述べる。
本発明は、上記技術課題に対して、熱回収装置の内壁温度を内壁材料の耐熱温度以内に保ちつつ、高温凝固物からの熱回収率を低下させずに熱回収可能とした熱回収装置の構造および該熱回収装置を用いた熱回収方法に関するものである。本発明の熱回収装置は、高温凝固物と熱回収ガスの間で熱交換を行なう熱回収槽と、その周辺機器で構成される。熱回収槽は後述する図2〜4でハッチングして示した部位であり、内部に高温凝固物を収容可能である。熱回収槽の内壁材料をSUS鋼板などの薄い鋼板にするにあたり、通常SUS鋼板による耐熱温度は800〜1000℃程度であるにも拘らず、本発明を適用すると、内壁を水冷構造にすることなく、それ以上の高温凝固物が装入される状況下でも使用することができる。内壁材料としては、SUS304やSUS316などが好適に使用できる他、SS材なども使用可能である。なお、熱回収槽の壁面はその厚さ方向に内壁と外壁で構成され、必要に応じて内壁と外壁の間に薄い断熱シートなどの断熱材(または補強材)を挿入しても良い。
本発明の第1の実施形態は、熱回収槽内に高温凝固物を充填した後に、前記高温凝固物の充填層内に熱回収ガスを送風して熱回収を行う熱回収装置において、熱回収槽の下部から前記熱回収槽内に熱回収ガスを供給するための下部送風口と、熱回収槽の内壁から前記熱回収槽内に冷却ガスまたは水などの冷媒を供給するための冷媒供給口をそれぞれ設けることを特徴とする、高温凝固物の熱回収装置および該熱回収装置を用いた熱回収方法である。一般的に、熱回収槽内に一様に熱回収ガスを流通させる場合、例えばコークス乾式消火設備(CDQ)のように、熱回収槽の下部から熱回収ガスを供給する。それに対して、本発明では、この熱回収ガスを供給する下部送風口とは別に、熱回収槽の内壁から冷媒を供給する冷媒供給口を設ける。この冷媒供給口から供給される冷媒による冷却効果により、内壁の保護を行う。冷媒は、例えば空気や窒素ガスなどの気体、水などの液体、水蒸気、または気体にミスト状の水を混入した混合流体などが挙げられる。冷媒供給口の形状は、例えば多孔板などの小さい孔が多数空いたもの、比較的大きい孔が少数空いたもの、スリット状に切り込まれているものなど、様々な形式が採用可能である。内壁と高温凝固物が接触している部分には比較的空隙率が大きい領域が生じるため、冷媒供給口から供給された冷媒は主に内壁近傍を通りやすくなり、この流れの偏りも利用して内壁の保護機構を持たせる。この保護機構は、図1に示すように、主に以下2つのメカニズムにより発現する。1つ目は、図1の縦向きの点線矢印にて示した、冷媒による内壁の直接的冷却である。即ち、内壁温度よりも冷媒温度が低い場合に、冷媒そのものによる冷却効果で内壁温度を低下させる。2つ目は、冷媒により内壁近傍の高温凝固物の表面温度を低下させることで、図1の横向きの実線矢印にて示した、高温凝固物表面から内壁に伝わる輻射熱を軽減させる間接的冷却である。冷媒供給口は、特に高温凝固物充填時の熱負荷が大きい部分に近いところから冷媒を供給できるように配置する。冷媒供給口の位置および設置数によっては、冷媒による冷却効果に分布が生じるが、内壁自体の熱伝導で内壁温度が平均化される効果もあるため、冷媒自体を内壁全面にわたって一様に供給する必要はない。
更に、以下のような機構を設けることが好ましい。一点目は、前記熱回収槽の内壁温度を測定するための温度測定装置を設けて、前記温度測定装置の温度データに応じて前記冷媒供給口からの冷媒供給量を調節するための冷媒流量調節弁を設けることが好ましい。前記のように、冷媒供給口から供給される冷媒は内壁の保護効果を有するが、冷媒は内壁近傍にしか流通しないので、冷媒を必要以上に流すと、下部から送風される熱回収ガスと冷媒とが混合する充填層上部において、混合ガスの温度を低下させてしまう。そこで、熱電対などの温度測定装置を設けて内壁温度を連続的に測定し、内壁温度が高いときにより多くの冷媒を流通させることができるように冷媒供給量の調節弁を設ける。このような機構を設けることにより、冷媒を必要以上に流すことを抑制することができるので、熱回収ガスをより高温で回収できるようになる。
二点目は、前記熱回収槽の下部送風口から吹き込まれる熱回収ガスの送風量と、前記冷媒供給口から供給される冷媒の供給量とをそれぞれ独立に調節可能とするための流量調節弁を設けることが好ましい。例えば、下部から送風される熱回収ガスの送風圧が非常に高い場合、冷媒供給口から十分な量の冷媒を供給できない可能性がある。また、構造および圧力差によっては、冷媒供給口へ熱回収ガスが流入して冷媒が逆流してしまうリスクもある。そのため、熱回収ガス送風量と冷媒供給量をそれぞれ独立に調整可能な流量調節弁を設けて、両者のバランスを制御する。このような設備にすることで、確実に内壁保護機構を発現させることができる。
三点目は、前記熱回収槽の冷媒供給口から供給される冷媒は水および/または水蒸気とすることが好ましい。水は安価で入手できる上に揮発時の抜熱量が大きいため、少量供給するだけでも大きな抜熱効果が期待できる。供給された水は、内壁および内壁近傍の高温凝固物と接触して水蒸気となり、熱回収ガスと共に熱回収槽内を流通する。
本発明の第2の実施形態は、前記熱回収槽の下部送風口および冷媒供給口の両方または何れか一方において、水、水蒸気、炭酸ガスの少なくとも1種類を供給するための供給口を設けることを特徴とする、高温凝固物の熱回収装置および該熱回収装置を用いた熱回収方法である。例えば、前記高温凝固物が鉄鋼製造工程にて発生する製鋼スラグ(特に、溶銑脱りんスラグや脱炭スラグ)である場合、その主要用途の1つである路盤材に使用するためには、フリーCaOの水和膨張を抑制するために蒸気エージング処理などが実施される。また、炭酸ガスによるフリーCaOの炭酸化処理により膨張抑制する方法もある。本発明は、前記熱回収槽の内壁保護機構を設けた熱回収装置において、同装置内にて蒸気エージングおよび炭酸化処理を同時に実施可能とした熱回収装置である。本発明による方式だと、例えば蒸気エージングに必要な蒸気の熱量は製鋼スラグの保有熱から回収して得られるので、蒸気コストが削減できる。なお、大気圧下での蒸気エージングの場合、580℃程度以下でないと上記エージングの反応であるCaO+HO→Ca(OH)の反応が進まないので、高温で挿入された製鋼スラグはこの温度域まで冷却してからエージング反応を進行させる。また、炭酸化処理の場合は、900℃程度以下でないと上記炭酸化の反応であるCaO+CO→CaCOの反応が進まないので、高温で挿入された製鋼スラグはこの温度域まで冷却してから処理を進行させる。熱回収装置にて回収される蒸気は、そのまま循環して熱回収装置内の蒸気エージングに使用する方法や、一部蒸気のみ循環利用して残りは別用途で使用するような組み合わせも可能である。なお、この実施形態においても、第1の実施形態で説明した一点目〜三点目の機構を設けることが好ましい。
本発明の第3の実施形態は、前記熱回収槽の出側に、前記下部送風口から吹き込まれた熱回収ガスと前記冷媒供給口から供給された冷媒との混合流体が充填層から排出された後に熱交換するための熱交換器を設けることを特徴とする、高温凝固物の熱回収装置および該熱回収装置を用いた熱回収方法である。即ち、高温凝固物の充填層上部において、熱回収ガスと冷媒(例えば、冷媒として水を用いたときに得られる水蒸気など)とが混合した高温の混合流体が得られ、このような機構を設けることで、熱回収された混合ガスを再度冷媒として使用することが容易にできる。この混合流体から熱交換をするための熱交換器を前記熱回収槽の出側に設ける。熱交換器の形式は、熱回収ガスおよび冷媒の種類に応じて選定される。例えば冷媒として熱回収ガスを用いる場合には、実質的にガスは1種類のみとなるので、熱回収ガスの温度および組成に応じたガス熱交換器で設計する。冷媒として水や水蒸気を用いる場合には、前記混合流体は水蒸気を含むガスとなるので、出側に凝縮器や気液分離器を設けた熱交換器などを選定することも可能である。なお、この実施形態においても、第1の実施形態で説明した一点目〜三点目の機構を設けることが好ましい。
本発明の第4の実施形態は、前記熱回収槽の内壁温度を測定するために設けた温度測定装置による測定温度が、内壁上限温度T以下かつ内壁下限温度T以上となるように、前記温度測定位置に隣接する前記冷媒供給口の冷媒供給量を制御することを特徴とする、前記熱回収装置を用いた高温凝固物からの熱回収方法である。図1のように、内壁近傍に冷媒を供給することにより内壁温度が低下するため、内壁温度を内壁上限温度T以下に抑えることで内壁を保護することができる。一方で、この冷媒供給量が過剰になると、内壁近傍の充填物のみが優先的に冷却されてしまい、充填層中央付近の充填物が十分に冷却されなくなるため、充填層全体の冷却効率が低下する。そのため、内壁温度が内壁下限温度T以上となるように冷媒供給量を抑制し、熱回収装置の下部送風口から吹き込む熱回収ガスの送風量を相対的に増加させる。このような方法により、充填層全体の冷却効率を改善することができる。
以下、本発明の実施例を示す。図2は、本発明の第1の実施形態に関する、熱回収装置の構造例である。ここでは、送風機18を1台として、冷媒供給口16から供給される冷媒を熱回収ガスとし、熱回収槽下部から熱回収ガスを供給する下部送風口17と、壁面13の冷媒供給口16から供給される熱回収ガスとの流量バランスを調節するための流量調節弁19を設けている。この流量調節弁19により、熱回収槽2の内壁に取り付けた熱電対(図では省略)の温度を見ながら熱回収ガスおよび冷媒の流量を調節する。なお、壁面13はその厚さ方向に内壁11と外壁(図示せず)で構成されるが、必要に応じて内壁と外壁の間に薄い断熱シートなどの断熱材(または補強材)を挿入しても良い。
図3は、本発明の第2の実施形態に関する、冷媒の供給方法の例である。ここでは、下部送風口17から吹き込む熱回収ガス中にミスト状に散水し、壁面13の冷媒供給口16から水を直接散水する構造例である。
図4は、本発明の第3の実施形態に関する熱交換器100の設置例である。なお、簡略化のため、通常設置される集塵機などは図では省略している。冷媒供給口16からの散水により水蒸気を含む混合ガスが得られるので、この混合ガスを熱交換器100へ導入して熱回収を行う。熱回収後の混合ガスは、温度および圧力によっては水蒸気が凝縮して液化するため、気液分離装置200により水を分離し、分離後の水は、例えば壁面13(内壁)を冷却するための冷媒として再利用する。水分離後の混合ガスは、再び熱回収ガスとして下部送風口17から吹き込まれる。
高温凝固物が製鋼スラグである場合、熱回収ガスおよび冷媒として水および水蒸気を用いることにより、熱回収と同時に製鋼スラグ膨張抑制のための蒸気エージング効果も期待できる。即ち、以下の式(1)により製鋼スラグ中のフリーCaOの水和処理を行うことで膨張抑制ができる。また、送風系に炭酸ガスを吹き込むラインを設けることにより、製鋼スラグの炭酸化によるフリーCaOの膨張抑制および炭酸ガス固定化効果も得られる。即ち、以下の式(2)にてスラグ中のフリーCaOが炭酸化処理されることで膨張抑制ができる。これら反応に用いる水蒸気および炭酸ガスは、供給ラインから連続的に供給する方法や、図4のように系内で循環利用する方法の何れの方法も可能である。例えば、前記冷媒供給口16から供給される冷媒を水として内壁保護を行った後に、水が蒸発することで発生した水蒸気を系内で循環させて下部送風口17から熱回収ガスと共に吹き込み、蒸気エージング処理を行うような方法も可能となる。
CaO+HO → Ca(OH) ・・・(1)
CaO+CO → CaCO ・・・(2)
本発明による内壁保護方法の実施例を示す。図5は、塔径2m×塔高3mの熱回収槽において、寸法7×50×50mm、温度1100℃の高温物質を、上方から30t/hの供給速度で供給しつつ、下方から30t/hの排出速度で排出して、一定の充填量を保ちながら、25℃空気を30kNm/hで下部送風口から流通させて定常的な熱回収をする際の充填物温度分布を、非特許文献1に示すような一次元充填層伝熱モデルにより計算した結果である。図5の結果より、高温充填物が供給される充填層の上方に近いほど、熱回収中の充填物温度が高くなっている。特に2.0m以上の高さ領域においては、充填物温度が500℃以上となり、輻射伝熱による内壁への伝熱量が飛躍的に大きくなるため、内壁の熱負荷が高くなることが予想される。図6は、熱回収槽cの内壁の初期温度を150℃として、本発明による内壁への冷媒供給を実施しない前提にて、図5の高温充填物からの輻射伝熱による内壁温度変化を計算した結果である。図6中のHは、熱回収槽下部から熱回収ガスを送風する地点をH=0mとしたときの熱回収槽内の高さ方向の位置である。内壁材質はSUSとし、内壁厚みは5mmと小さくして厚み方向の温度を一定とした。図6の結果より、熱回収槽の全ての高さ位置において、時間と共に内壁温度が上昇している。ここで、前記内壁の内壁上限温度Tを900℃、前記内壁の内壁下限温度Tを350℃として、それぞれ図6に横破線および横実線にて示した。図6の内壁温度のうち、熱回収槽最上部の高さH=3.0m位置においては、Tを上回る温度まで内壁温度が上昇しており、内壁が保護されずに破損してしまう。また、高さH=1.5〜2.5mの位置についても、Tまでは温度上昇していないものの、前記内壁の内壁下限温度Tよりは高い温度まで上昇しており、熱負荷が高い状態であることが分かる。図7は、図6と同じく熱回収槽の内壁の初期温度を150℃として、図6の計算条件に対して、本発明による内壁冷却を行った際の内壁温度変化を計算した結果である。内壁冷却の条件として、冷媒ガス温度25℃、冷媒ガス送風量130Nm/h、冷媒ガス流通範囲(冷媒ガスが流れる内壁近傍領域の厚さ)50mmとし、冷媒ガスによる内壁および内壁近傍領域の充填物の冷却による相乗効果を計算した。冷媒ガスと内壁および充填物との熱伝達係数は、空気による強制対流伝熱を想定して10W/mKとした。図7の結果より、本発明による冷媒供給効果によって、熱回収槽最上部の高さH=3.0m位置の内壁温度が、内壁上限温度T未満に抑えられている。高さHが2.5m以下についても同様に内壁冷却の効果が得られているが、高さH=2.5m位置においては800secで内壁温度が内壁下限温度Tよりも低い温度まで冷却されており、冷却ガス量が過剰となっている。このように、内壁近傍への冷媒ガスの供給が過剰になると、上述のように、内壁保護の観点では特に問題はないが、充填層全体の充填物の冷却効率としては非効率となる。したがって、内壁温度が内壁下限温度Tを下回った時点で、温度測定位置に隣接する冷媒供給口からの冷媒供給を停止する。或いは、内壁温度が内壁下限温度Tを下回る前に、温度測定位置に隣接する冷媒供給口からの冷媒供給量を減少させることで、内壁温度が内壁下限温度Tを下回るのを防止する。
以上のように、本発明の特徴を計算シミュレーションによって説明したが、本発明の実施にあたっては実際に内壁の温度を熱電対等の温度測定装置で測定して、熱回収ガスおよび冷媒の供給量を調整することができる。更に、第4の実施形態では、温度測定装置による測定温度が内壁上限温度T以下かつ内壁下限温度T以上となるように、温度測定位置に隣接する冷媒供給口の冷媒供給量を制御することができる。また、内壁温度が低下することにより、高温凝固物の内壁への付着も防止できるので、熱回収後の凝固物の排出も効率化される。
1 熱回収装置
2 熱回収槽
11 熱回収槽の内壁
13 熱回収槽の壁面
14 高温凝固物
16 冷媒供給口
17 下部送風口
18 18a、18b、18c 送風機
19 19a、19b 流量調節弁
100 熱交換器
200 気液分離装置

Claims (12)

  1. 高温凝固物の充填層を内部に収容可能な熱回収槽内に熱回収ガスを送風して熱回収を行う熱回収装置において、前記熱回収槽の下部から前記熱回収槽内に熱回収ガスを供給するための下部送風口と、前記熱回収槽の内壁から前記熱回収槽内に冷媒を供給するための冷媒供給口をそれぞれ設けることを特徴とする、高温凝固物の熱回収装置。
  2. 前記熱回収槽の内壁温度を測定するための温度測定装置と、前記温度測定装置の温度データに応じて前記冷媒供給口からの冷媒供給量を調節するための流量調節弁を設けることを特徴とする、請求項1に記載の高温凝固物の熱回収装置。
  3. 前記熱回収槽の下部送風口から吹き込まれる熱回収ガスの送風量と、前記冷媒供給口から供給される冷媒の供給量とをそれぞれ独立に調節可能とするための流量調節弁を設けることを特徴とする、請求項1または2に記載の高温凝固物の熱回収装置。
  4. 前記熱回収槽の冷媒供給口から供給される冷媒を水および/または水蒸気とすることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の高温凝固物の熱回収装置。
  5. 前記熱回収槽の下部送風口および冷媒供給口の両方または何れか一方において、水、水蒸気、炭酸ガスの少なくとも1種類を供給するための供給口を設けることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の高温凝固物の熱回収装置。
  6. 前記熱回収槽の出側に、前記下部送風口から吹き込まれた熱回収ガスと、前記冷媒供給口から供給された冷媒との混合流体から熱交換するための熱交換器を設けることを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載の高温凝固物の熱回収装置。
  7. 請求項1〜6の何れかに記載の熱回収装置を用いた、高温凝固物からの熱回収方法であって、
    前記熱回収槽の内部に高温凝固物を装入し、前記熱回収ガスおよび前記冷媒をそれぞれ用いて高温凝固物から熱回収を行うことを特徴とする、高温凝固物からの熱回収方法。
  8. 請求項2に記載の熱回収装置を用いた、高温凝固物からの熱回収方法であって、
    前記熱回収槽の内壁温度を測定するための温度測定装置の温度データに応じて、前記冷媒供給口からの冷媒供給量を調節することを特徴とする、高温凝固物からの熱回収方法。
  9. 請求項3に記載の熱回収装置を用いた、高温凝固物からの熱回収方法であって、
    前記熱回収槽の下部送風口から吹き込まれる熱回収ガスの送風量と、前記冷媒供給口から供給される冷媒の供給量とをそれぞれ独立に調節可能とするための流量調節弁を用いて、前記下部送風口からの送風量および前記冷媒供給口からの冷媒供給量とのバランスを制御することを特徴とする、高温凝固物からの熱回収方法。
  10. 前記熱回収槽の内壁温度を測定するために設けた温度測定装置による測定温度が、上限温度T以下かつ下限温度T以上となるように、前記冷媒供給口の冷媒供給量を制御することを特徴とする、請求項9に記載の高温凝固物からの熱回収方法。
  11. 前記熱回収槽の出側に、前記下部送風口から吹き込まれた熱回収ガスと、前記冷媒供給口から供給された冷媒との混合流体から熱交換器を用いて熱交換を行うことを特徴とする、請求項9または10に記載の高温凝固物からの熱回収方法。
  12. 前記高温凝固物を鉄鋼製造工程にて発生する製鋼スラグとし、前記熱回収槽の下部送風口および冷媒供給口の両方または何れか一方において、水、水蒸気、炭酸ガスの少なくとも1種類を供給することにより、前記製鋼スラグの膨張抑制処理をすることを特徴とする、請求項9から11の何れかに記載の高温凝固物からの熱回収方法。
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