JP5752364B2 - スラグの顕熱回収方法 - Google Patents
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Description
しかし、実設備においてスラグの顕熱回収を行うには、高い顕熱回収率を確保する必要があり、また、顕熱回収時にスラグの飛散を防止するなどの対策を講じる必要があるが、特許文献1には、これを満足するようなスラグ顕熱の回収方法は記載されていない。
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
[1]溶融スラグの冷却処理装置(1)と、該冷却処理装置(1)で冷却・固化したスラグから顕熱回収を行う熱回収装置(4)と、前記冷却処理装置(1)で冷却・固化したスラグを前記熱回収装置(4)に移送する移送コンベア(5)を備えた設備であって、前記熱回収装置(4)が、上部隔壁を熱交換用の流体流路を有する構造とすることにより、塔内の上部領域をボイラー構造部(54)とした熱回収塔(40)を備えた設備を用い、
前記冷却処理装置(1)において溶融スラグを回転する冷却ロールの外周面に供給して冷却・固化させた後、この固化したスラグを前記移送コンベア(5)により前記熱回収装置(4)に移送し、該熱回収装置(4)においてスラグを熱交換用のガスと接触させ、スラグの顕熱回収を行う方法であって、
前記冷却処理装置(1)では、冷却ロールに供給された溶融スラグを厚さ5mm以下の板状または細片状に冷却・固化させ、
前記熱回収装置(4)では、下記(i)および(ii)の条件で、塔内径が4m以上の熱回収塔(40)内に装入されて塔内を下降するスラグに対して熱交換用のガスを向流方向に流し、スラグとガスを接触させることでスラグの顕熱回収を行うとともに、前記ガスの顕熱の一部を塔上部のボイラー構造部(54)にて蒸気として回収することを特徴とするスラグの顕熱回収方法。
(i)前記移送コンベア(5)で移送されてきたスラグを、塔上部のスラグ装入口(41)から熱回収塔(40)内に装入して、該熱回収塔(40)内にスラグ充填層を形成するとともに、熱回収塔(40)内のスラグを塔下部のスラグ排出口(42)を開放することで順次排出し、それに伴い塔内のスラグを順次下降させる。
(ii)500Nm3/ton以上のガス量の熱交換用のガスを、塔底部の分散板(46)を通じて熱回収塔(40)内に吹き込み、ガスが塔内を上昇する間にスラグと熱交換させた後、塔上部のガス排出口(45)から排出させる。
[3]上記[1]または[2]の顕熱回収方法において、冷却ロールの外周面に付着した溶融スラグを、加工ロールにより冷却ロールとの間で拘束して加工することを特徴とするスラグの顕熱回収方法。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの顕熱回収方法において、スラグの顕熱回収率を30%以上、スラグとの接触後に回収される熱交換用ガスの温度を500℃以上とすることを特徴とするスラグの顕熱回収方法。
図1は、上述した溶融スラグの冷却処理−顕熱回収方法の一実施形態を模式的に示すものであり、図に示した設備は、溶融スラグの冷却処理装置1と、この冷却処理装置1で冷却・固化したスラグから顕熱回収を行う熱回収装置4と、冷却処理装置1で冷却・固化したスラグを熱回収装置4に移送する移送コンベア5などからなる。
前記冷却ロール2a,2bの内部には、冷媒を通すための流路を有する内部冷却機構(図示せず)が設けられ、この内部冷却機構に対する冷媒供給部と冷媒排出部がロール軸の各端部に各々設けられている。冷媒には一般に水(冷却水)が用いられるが、他の流体(液体または気体)を用いてもよい。
なお、通常は、冷却ロール2a,2bの上部外周面間に形成される断面V溝状の凹部(スラグ液溜まりAが形成される凹部)の両端を塞ぐための堰(図示せず)が、冷却ロール幅方向の両端側に適当な部材により設けられる。
また、加工ロール3についても、前記冷却ロール2a,2bと同様の内部冷却機構を備えた方が、スラグの冷却効率および加工ロールの耐久性の観点から好ましい。また、各冷却ロール2a,2bに対して、複数の加工ロール3を配置してもよい。
冷却ロール2a,2bの表面に付着して冷却されるスラグは、冷却ロール面がロール下方側に回り込み始める回転位置において自重により冷却ロール面から剥離し、このスラグは移送コンベア5上に落下する。
なお、移送コンベア5に代えてシュートを設け、冷却ロール2a,2bから剥離したスラグを、このシュートを介して熱回収装置4に装入するようにしてもよい。
加工ロール3によるスラグの加工は必要に応じて行えばよく、冷却ロールに付着したスラグが厚すぎる場合や、スラグをロール幅方向で冷却ロール面に均一に付着させ、冷却効率を高めたい場合などには、加工ロール3を所定の位置に配置し、冷却ロールとの間でスラグを圧延する。これによりスラグはロール幅方向に展伸され、薄くなるとともに、スラグの冷却効率が高まり、かつスラグの冷却速度も高くなる。また、冷却ロールに付着した板状のスラグを細かくしたい場合は、ロール面に凹凸を有する加工ロール3を所定の位置に配置し、冷却ロール面に付着したスラグを、必要に応じて圧延して展伸させつつ、ロール面の凹凸で細片状に分割する。
冷却ロール2a,2bから剥離したスラグは未だ相当の高温であり、移送コンベア5で移送するのに高温過ぎる場合には、冷却ロール2a,2bから剥離したスラグを散水冷却してもよい。散水冷却は、シャワー状散水による冷却、スプレー冷却、ミスト冷却のいずれでもよい。但し、散水冷却するとスラグの保有する熱量が減少し、顕熱回収率の低下を招くおそれがあるので、散水量はできるだけ少ないことが望ましい。
製鋼工程で発生した溶融スラグ(製鋼スラグ)をスラグ鍋で搬送し、図1に示すような形態でスラグの冷却処理−顕熱回収を行う場合について、スラグ温度とスラグ顕熱の標準的な推移を調べた。その結果を図2に示す。これによれば、冷却処理装置1で冷却・固化したスラグを1000℃前後の温度で熱回収塔40に装入できることが判る。このような高温スラグを熱交換用のガスと接触させて顕熱回収を行うことを前提とし、本発明では回収ガス温度(スラグと接触後に回収される熱交換用ガスの温度)500℃以上、顕熱回収率30%以上を目標とする。ここで、スラグの顕熱回収率は、冷却ロールに供給する直前の溶融スラグの顕熱を100%として、スラグと熱交換した後のガスの温度上昇分の顕熱から計算する。
・塔内部の大きさ:内径3m×高さ3m
・スラグ滞留量:約20t
・スラグ滞留時間:約20分
(2)熱回収塔に装入するスラグ
・スラグ量:60t/h
・スラグ温度:1000℃
(3)顕熱回収用ガス
・ガス種:空気(25℃)
・ガス量:50000Nm3/h
図3〜図5によれば、厚さ5mmのスラグでは回収ガス温度は約800℃であり、顕熱回収率44%が得られている。これに対してスラグの厚さが増大するに従い、スラグ平均温度とスラグ表面温度の差が大きくなり、スラグ粒子内熱伝導がスラグ顕熱回収の律速となる傾向が現れる。その結果、顕熱回収率は厚さ10mmのスラグで37%、厚さ20mmのスラグでは26%となる。したがって、熱回収塔高さの上限を3m程度にして目標を達成するには、スラグ厚さを10mm以下にする必要があることが判る。
熱回収塔径(塔断面積)を大きくすることによって、相対的に実ガス流速を低減できるので、その効果を確認するため、ガス量を50000Nm3/hと30000Nm3/hとし、厚さ5mmのスラグから顕熱回収を行う場合について、熱回収塔径とガス空塔速度および顕熱回収率との関係を調べた結果を図10に示す。これによれば、塔内径を変えて各ガス量一定とした場合、顕熱回収率に大きな変化は見られない。一方、塔内径を大きくすることによって、ガス空塔速度を低減できるので、塔内径については概ね4m以上、望ましくは5m程度が好ましい。
本発明で冷却処理−顕熱回収されて得られるスラグ製品は、急冷することにより製造されるため粉化が抑制され、このため微粉部分が少なくなり、海洋土木材として利用する際に海水が白濁することがない。また、薄い層状に急冷凝固させるため、破砕工程が簡略化でき、微粒分の少ない細骨材とすることができる。また、緻密質なものとなるため吸水率は低く、アスコン用にも利用できる硬質なものとなる。
2a,2b 冷却ロール
3 加工ロール
4 熱回収装置
5 移送コンベア
6 樋
7 保温カバー
40 熱回収塔
41 スラグ装入口
42 スラグ排出口
43 シャッター
44 ガス導入口
45 ガス排出口
46 分散板
47 風箱
49 ホットサイクロン
50 ボイラー
51 ブロア
52 プッシャー
53 通路
54 ボイラー構造部
A スラグ液溜まり
S スラグ充填層
Claims (4)
- 溶融スラグの冷却処理装置(1)と、該冷却処理装置(1)で冷却・固化したスラグから顕熱回収を行う熱回収装置(4)と、前記冷却処理装置(1)で冷却・固化したスラグを前記熱回収装置(4)に移送する移送コンベア(5)を備えた設備であって、前記熱回収装置(4)が、上部隔壁を熱交換用の流体流路を有する構造とすることにより、塔内の上部領域をボイラー構造部(54)とした熱回収塔(40)を備えた設備を用い、
前記冷却処理装置(1)において溶融スラグを回転する冷却ロールの外周面に供給して冷却・固化させた後、この固化したスラグを前記移送コンベア(5)により前記熱回収装置(4)に移送し、該熱回収装置(4)においてスラグを熱交換用のガスと接触させ、スラグの顕熱回収を行う方法であって、
前記冷却処理装置(1)では、冷却ロールに供給された溶融スラグを厚さ5mm以下の板状または細片状に冷却・固化させ、
前記熱回収装置(4)では、下記(i)および(ii)の条件で、塔内径が4m以上の熱回収塔(40)内に装入されて塔内を下降するスラグに対して熱交換用のガスを向流方向に流し、スラグとガスを接触させることでスラグの顕熱回収を行うとともに、前記ガスの顕熱の一部を塔上部のボイラー構造部(54)にて蒸気として回収することを特徴とするスラグの顕熱回収方法。
(i)前記移送コンベア(5)で移送されてきたスラグを、塔上部のスラグ装入口(41)から熱回収塔(40)内に装入して、該熱回収塔(40)内にスラグ充填層を形成するとともに、熱回収塔(40)内のスラグを塔下部のスラグ排出口(42)を開放することで順次排出し、それに伴い塔内のスラグを順次下降させる。
(ii)500Nm3/ton以上のガス量の熱交換用のガスを、塔底部の分散板(46)を通じて熱回収塔(40)内に吹き込み、ガスが塔内を上昇する間にスラグと熱交換させた後、塔上部のガス排出口(45)から排出させる。 - 冷却ロールの回転速度を制御することで、冷却・固化するスラグの厚さを制御することを特徴とする請求項1に記載のスラグの顕熱回収方法。
- 冷却ロールの外周面に付着した溶融スラグを、加工ロールにより冷却ロールとの間で拘束して加工することを特徴とする請求項1または2に記載のスラグの顕熱回収方法。
- スラグの顕熱回収率を30%以上、スラグとの接触後に回収される熱交換用ガスの温度を500℃以上とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスラグの顕熱回収方法。
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