JP6822287B2 - 乗物用シート - Google Patents

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Description

本発明は、乗物用シートに関する。詳しくは、シートクッションのシート幅方向内側の縁部に上向きに開口する凹部を有する乗物用シートに関する。
従来、乗物用シートにおいて、シートクッションの車幅方向内側の後部箇所にシートベルトバックルが内部から通された状態として設けられる凹部が形成された構成が知られている(特許文献1)。上記凹部は、シートクッションの車幅方向内側の縁部に設けられているが、同内側にはシートクッションのサイドカバーが被覆されていることで、上側にのみ開口した構成とされている。上記サイドカバーの凹部を内側から被覆する被覆部は、1枚のカバーピースが山状に折り返されて、内部に樹脂製の剛性プレートがインサートされた構成とされている。上記剛性プレートの剛性により、凹部の車幅方向内側の縁部がサイドカバーの被覆部のみで被覆される薄手の構成であっても、シートベルトバックルの車幅方向内側への動きが適切に規制されるようになっている。
特開2016−94103号公報
上記従来技術では、サイドカバーの被覆部にインサートされた剛性プレートは、被覆部に上側からの負荷が掛けられることを想定した構成とはなっていないため、被覆部を上記負荷により下側に押し撓ませてしまうおそれがある。本発明は、上記問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、シートクッションの縁部に形成された凹部をサイドから被覆するサイドカバーの被覆部を上側からの負荷に対して押し撓ませにくくすることにある。
上記課題を解決するために、本発明の乗物用シートは次の手段をとる。
第1の発明は、シートクッションのシート幅方向内側の縁部に上向きに開口する凹部を有する乗物用シートであって、シートクッションのシート幅方向内側の側面を被覆して凹部のシート幅方向内側の側面を上縁の繋がる2重構造の表皮材で形作る被覆部を有するサイドカバーと、被覆部の2重構造の表皮材の間に配置されて被覆部の形状を保持する形状保持部材と、を有する。形状保持部材が、被覆部の上縁に沿って前後方向に形状を延ばす上縁形状部と、凹部を前後いずれかの方向に越えてシートクッションのシート幅方向内側の側面とシート幅方向に並ぶ位置まで延び出す延出部と、シートクッションの構成部に一体的に結合される結合部と、を有する。
この第1の発明によれば、シートクッションの縁部に形成された凹部をサイドから被覆するサイドカバーの被覆部に対し、形状保持部材をその上縁に沿って前後方向に延びるように設けることにより、被覆部を上側からの負荷に対して押し撓ませにくい構成にすることができる。
第2の発明は、上述した第1の発明において、次の構成とされているものである。上述した結合部の結合されるシートクッションの構成部が、上記被覆部の凹部と前後方向の配置が重なる箇所となっている。
この第2の発明によれば、形状保持部材を被覆部に対して、その前後方向の配置が重なる箇所において、より下方向に脱落させない状態に結合することができる。したがって、被覆部を上側からの負荷に対して、より押し撓ませにくい構成にすることができる。
第3の発明は、上述した第2の発明において、次の構成とされているものである。結合部が、被覆部に対して、被覆部と凹部内の底面を表皮材で形作る底面カバーとの縫合箇所への共縫いにより結合されている。
この第3の発明によれば、結合部の被覆部に対する結合を、被覆部と底面カバーとの縫合構造を用いて合理的かつ見栄え良く行うことができる。
第4の発明は、上述した第1から第3のいずれかの発明において、次の構成とされているものである。サイドカバーが、被覆部から凹部の形成領域を前後いずれかの方向に越えた領域まで延びてシートクッションのシート幅方向内側の側面を被覆すると共にシートクッションの天板面を被覆する天板カバーと上縁が繋げられた延長面部を有する。形状保持部材の延出部が、上縁形状部から上記サイドカバーの延長面部の上縁に沿って前後方向に延びている。
この第4の発明によれば、形状保持部材の延出部によって、形状保持部材の上縁形状部をサイドカバーの被覆部の前後箇所で角張らせないようにすることができる。
第5の発明は、上述した第4の発明において、次の構成とされているものである。上記乗物用シートは、更に、凹部の後側の一部領域に蓋をする形で天板カバーと被覆部とに縫合されて設けられた蓋カバーを有する。延長面部が、その凹部の形成領域を後側に越えて延びる箇所の上縁に、天板カバーと共に蓋カバーの後内側の角部と縫合されて互いの縫い代の重ねられる縫重ね部を有する。形状保持部材の延出部が、その延長面部の縫重ね部を前側から後側に越えて延びる部分が縫重ね部との干渉を避けるように後下がり状に傾斜している。
この第5の発明によれば、形状保持部材の延出部の後下がり状に傾斜した形状によって、形状保持部材の上縁形状部をサイドカバーの被覆部の前後箇所で角張らせない状態を維持しつつ、形状保持部材の延出部とサイドカバーの延長面部の縫重ね部との干渉を適切に避けることができる。
第6の発明は、上述した第1から第5のいずれかの発明において、次の構成とされているものである。凹部が、シートベルトバックルを上側に張り出させない形で内部に収めることのできる凹形状とされている。
この第6の発明によれば、被覆部が凹部内に設けられたシートベルトバックルよりも上側に張り出すことで上側からの負荷を受けやすい構成とされても、被覆部を押し撓ませにくくすることができる。
第7の発明は、上述した第1から第6のいずれかの発明において、次の構成とされているものである。結合部が、被覆部に対して、被覆部と凹部内の前後の内周面を表皮材で形作る内周面カバーとの縫合箇所への共縫いにより結合されている。
この第7の発明によれば、結合部の被覆部に対する結合を、被覆部と内周面カバーとの縫合構造を用いて合理的かつ見栄え良く行うことができる。
実施例1の乗物用シートの概略構成を表した斜視図である。 図1のII部を拡大して表した平面図である。 同斜視図である。 図3のIV視側面図である。 図4のシートクッションを可視化して表した側面図である。 図3に示すサイドカバーを捲り上げた状態を表した斜視図である。 図6のVII視側面図である。 図2のVIII-VIII線断面図である。
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
《シート1の概略構成について》
始めに、実施例1のシート1(乗物用シート)の構成について、図1〜図8を用いて説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。また、「シート幅方向」と示す場合には、シート1の左右方向を指すものとする。図1に示すように、本実施例のシート1は、自動車の後部側座席として構成されている。詳しくは、上述したシート1は、同列の左右で5:5分割された隣り合う2つの分割シートのうちの右側の分割シートとして構成されている。上述したシート1は、着座者の背凭れ部となるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、を備えた構成とされている。
上述したシートバック2は、その左右両サイドの下端部が、それぞれ、不図示のリクライナを介してシートクッション3の左右両サイドの後端部に連結されて支持されている。シートクッション3は、車両のフロア上に連結されて支持されている。上述したシート1は、上述したシートクッション3の左側(図示しない左側の分割シートと隣り合う側)に、凹状のカップホルダ4Dを持つ樹脂製のセンタコンソール4が隣り合って設けられた構成とされている。
《センタコンソール4について》
上述したセンタコンソール4は、上述したシートバック2の横幅領域内に収まるシート幅方向の位置に、上述したシートクッション3とシート幅方向に隣り合った状態に並んで設けられている。詳しくは、上述したシートクッション3は、その横幅が、上述したシートバック2と右側では略揃っているが左側では短くされた形状とされている。そして、上述したシートクッション3の左側の短くされた空き領域内にセンタコンソール4が配設されて、同センタコンソール4とシートクッション3とを足し合わせた全体の横幅がシートバック2の横幅と略同じとされている。上述したセンタコンソール4は、上述したシートクッション3の骨格を成すクッションフレーム10に一体的に組み付けられた状態として設けられている。上記組み付けにより、センタコンソール4は、シートクッション3と一体的関係を成す状態に設けられている。
上述したセンタコンソール4は、その後端部に、シートバック2の左下側の角部の肉抜きされた部分に下側から張り出す膨張部4Eが形成されており、同膨張部4Eによりシートバック2とシートクッション3との左側の連結部分を左側から覆った状態とされている。上述したセンタコンソール4は、図8に示すように、シートクッション3の左隣で上側に略平坦状の面を向ける天板部4Aと、同天板部4Aの右側の縁部から僅かに右下がり状の形となって垂下する右側板部4Bと、天板部4Aの左側の縁部から垂下する左側板部4Cと、を有する無底の略箱型形状に形成されている。上述した天板部4Aは、シートクッション3の天板メイン面(後述するクッションカバー30の天板カバー31の上面)と略同じ高さ位置に配置されている。また、右側板部4Bは、シートクッション3の左側面(後述するクッションカバー30のサイドカバー32の左側面)に僅かに干渉気味に押し付けられた状態としてセットされている。
《シートクッション3の具体的な構成について》
上述したシートクッション3は、図1及び図8に示すように、その骨格を成す金属製のクッションフレーム10と、クッションフレーム10の上部にセットされて着座者の荷重を弾性的に受け止める発泡ウレタン製のクッションパッド20と、クッションパッド20の表面全体に被せ付けられてシートクッション3の意匠面を構成するファブリック製のクッションカバー30と、によって概略構成されている。
《クッションフレーム10について》
上述したクッションフレーム10は、図1に示すように、左右一対の側部骨格を成すサイドフレーム11と、各サイドフレーム11の前部間に上側から架橋された前部骨格を成すフロントパネル12と、各サイドフレーム11の後部間に架橋された後部骨格を成すリヤパイプ13と、によって、平面視が略四角枠状となる形に組まれた構成とされている。そして、上述したクッションフレーム10のフロントパネル12とリヤパイプ13との間には、クッションパッド20をシート幅方向の複数箇所において下側から支えるように機能する複数本のパッド支持ワイヤ14が架橋されている。
上述したクッションフレーム10は、詳しくは、その右側のサイドフレーム11はシートクッション3の横幅領域内に収まる位置に配置されているが、図2〜図3及び図8に示すようにその左側のサイドフレーム11はシートクッション3の横幅領域を左側に越えてセンタコンソール4の直下領域へと外れたオフセット位置に配置されている。そして、上述したクッションフレーム10には、上述したオフセット位置に配置された左側のサイドフレーム11から左側へ張り出すように平面視略U字状の形に折り曲げられた丸パイプ材から成る支持フレーム15が一体的に付設されている。上述した支持フレーム15は、その上部に設けられる上述したセンタコンソール4を一体的に取り付けて下側から支持するよう機能するものとなっている。
《クッションパッド20について》
クッションパッド20は、上述したクッションフレーム10に上側から覆い被された状態にセットされている。詳しくは、上述したクッションパッド20は、図1〜図2に示すように、上述したクッションフレーム10を構成する右側のサイドフレーム11とフロントパネル12とリヤパイプ13とに跨って上側から覆い被される形にセットされて、これらフレーム構造によって下側から強く支えられた状態に設けられている。上述したクッションパッド20は、図2〜図3に示すように、上述した左側のサイドフレーム11には覆い被されないが、図8に示すように上述したフロントパネル12とリヤパイプ13との間に架橋された複数本のパッド支持ワイヤ14によって、下側から広い範囲に亘って支持された状態とされている。上記支持により、クッションパッド20は、その左側のサイドフレーム11には覆い被されることのない領域も上述したパッド支持ワイヤ14によって安定した形で支持されるようになっている。
上述したクッションパッド20は、図3に示すように、上述したクッションフレーム10の上部にセットされた後に、その表面全体に被せ付けられるクッションカバー30によって、クッションフレーム10に位置固定された状態とされている。具体的には、上述したクッションパッド20は、上述したクッションフレーム10の上部にセットされた後、その表面全体に被せ付けられるクッションカバー30の前後左右の各周縁部が、それぞれ、クッションフレーム10の下方に引き込まれて止着されることにより、同クッションカバー30を介してクッションフレーム10に一体的に押さえ付けられた状態に保持されるようになっている。
《クッションカバー30について》
クッションカバー30は、上述したクッションパッド20の天板面20Aに上側から被せ付けられた後、その前後左右の各周縁部がクッションパッド20の各周囲側面20Bを通って下方に引き込まれてクッションフレーム10に止着されている。上記引き込みにより、クッションカバー30は、上述したクッションパッド20の表面全体に広く密着した形に張設された状態とされている。詳しくは、上述したクッションカバー30は、上述したシートクッション3の後部側寄りの左縁部に形成されたシートベルトバックルBの収められる上向き開口形状の凹部3Aを表皮材で形作るようにクッションパッド20の表面に被せ付けられた状態とされている。
ここで、上述したクッションパッド20の後部側寄りの左縁部には、上述したシートクッション3の凹部3Aを形作る肉抜き部21が形成されている。上述した肉抜き部21は、クッションパッド20の後部側寄りの左縁部において、上側と左側とに開口する凹形状に形成されている。そして、上述した肉抜き部21を有するクッションパッド20に対して、上述したクッションカバー30は、そのクッションパッド20の天板面20A上に被覆される天板カバー31と、同天板カバー31と繋がってクッションパッド20の左側の周囲側面20Bを通って下方に引き込まれるサイドカバー32との間で、上述した凹部3Aの内周面や底面を後述する表皮材によって形作った状態となってクッションパッド20の表面全体に広く密着した状態に被せ付けられた状態とされている。
具体的には、上述したクッションカバー30は、図2〜図3に示すように、その天板カバー31の凹部3Aに臨む領域部分が、凹部3Aの形に沿って切り抜かれた形状とされており、その切り抜かれた部分の周縁形状に沿って、凹部3A内の前面と右側面と後面とを1枚の表皮材で形作るU字状に曲げられた形の内周面カバー33が縫合された構成とされている。そして、図3に示すように、上述した内周面カバー33の下側の周縁部には、更に、同周縁部に沿って凹部3A内の底面を1枚の表皮材で形作る底面カバー34が縫合されている。更に、図6〜図7に示すように、上述した内周面カバー33の凹部3A内の前後面を成す各面部の左側周縁部と、これら周縁部の下端部間を前後方向に延びる底面カバー34の左側周縁部とには、これら周縁部の成す側面視U字状の周縁形状に沿って、凹部3A内の左側面を1枚の表皮材で形作るサイドカバー32の被覆部32Aが縫合されている。
上述したサイドカバー32は、図2〜図3及び図8に示すように、その凹部3Aの左側領域に掛かる部分が、上縁の繋がる2重構造の表皮材から成る被覆部32Aによって構成されている。上述した被覆部32Aは、サイドカバー32を構成するシートクッション3の左側に表面を向ける表皮材の凹部3Aにかかる一部領域に、凹部3A内に表面を向けるように裏返された形で別の表皮材が上縁で縫合された2重構造の表皮材として構成されている。上述した被覆部32Aは、図6〜図7に示すように、その凹部3A内に表皮材の表面を向ける右面部の前後側の周縁部と下側の周縁部とが、それぞれ、上述した内周面カバー33の凹部3A内の前後面を成す各面部の左側周縁部と底面カバー34の左側周縁部と、にそれぞれ縫合されている。
そして、上記被覆部32Aを備えるサイドカバー32は、図2〜図4に示すように、そのシートクッション3の左側に表皮材の表面を向ける被覆部32Aの左面部から前側に向かってひと続き状に延びる前側延長面部32Bと、被覆部32Aの左面部から後側に向かってひと続き状に延びる後側延長面部32Cと、を有して、これらの上側周縁部が上述した天板カバー31の左側周縁部に沿って縫合された構成とされている。そして、上述したサイドカバー32は、上述した前側延長面部32Bと後側延長面部32Cとによってクッションパッド20の左側の周囲側面20Bを左側から被覆した状態として、図8に示すようにその下側周縁部に沿って取り付けられた樹脂製のJフック32Dが左側のサイドフレーム11の下部に付設された引掛ワイヤ11Cに引掛けられることで下側に引き込まれた状態に張設された状態とされている。
また、図2〜図3に示すように、上述したクッションカバー30は、更に、上述した凹部3Aの後側の一部領域に上側から蓋をするように被せ付けられた蓋カバー35を有する。上述した蓋カバー35は、上述した凹部3Aの底面上に前向きに倒された形となって収められるシートベルトバックルBの後部側の図示しない車体フロアとの接続箇所を上側から被覆するものとして機能するようになっている。なお、上述したシートベルトバックルBは、その後端部に接続された不図示のベルトウェビングが上述した底面カバー34の後部箇所にあけられた不図示の通し孔を通って車体フロアに接続されて設けられた状態とされている。上述した蓋カバー35は、その右側と後側の各周縁部が、上述した内周面カバー33と天板カバー31との縫合箇所に共縫いされて結合されており、左側周縁部が、上述したサイドカバー32の被覆部32Aを構成する右面部と左面部との上縁側の縫合箇所に共縫いされて結合されている。
上記のように構成されたクッションカバー30は、上述した凹部3A内の前面と右側面と後面とを形作る内周面カバー33が、クッションパッド20の肉抜き部21内の前面と右側面と後面とにそれぞれ被覆された状態として、上述した天板カバー31との繋がりによりクッションパッド20の弾発力を受けて支えられる構成とされている。したがって、上述した内周面カバー33と天板カバー31とが繋がる凹部3Aの前側と右側と後側の各上縁部分に上側からの押圧力が掛けられても、これらの上縁部分は、クッションパッド20の弾発力により下側に押し撓まされにくい状態として保持されることとなる。
しかし、上述したクッションカバー30は、上述した凹部3A内の左側面を形作るサイドカバー32の被覆部32Aが、クッションパッド20の肉抜き部21が左側に開口した形状となっていることから、クッションパッド20による直接的な支持を受けられず、それ自体では上側からの押圧力により下側に押し撓まされやすい構成とされている。すなわち、上述した凹部3A内には、上述したサイドカバー32の被覆部32Aよりも硬質なシートベルトバックルBが収められているが、上記シートベルトバックルBは図5及び図8に示すように凹部3Aの底面上に前向きに倒された形となって凹部3Aより上側に張り出さない形となって収められるようになっている。そのため、上述した凹部3A内の左側面を形作るサイドカバー32の被覆部32Aには、シートベルトバックルBにではなく、それ自体に対して上側からの押圧力が使用状態において掛けられやすくなっている。
《形状保持部材36について》
そこで、上述したサイドカバー32の被覆部32Aには、図6〜図8に示すように、それ自体に上述した上側からの押圧力が掛けられたとしても、被覆部32Aを下側に押し撓ませにくくするように補強する樹脂製平板状の形状保持部材36が取り付けられている。上述した形状保持部材36は、図6〜図7に示すように、側面視が略T字状をした平板形状とされており、上述した被覆部32Aを構成する2重構造の表皮材の間に挟まれた状態にセットされて被覆部32Aの形状を保持するようになっている。
具体的には、上述した形状保持部材36は、被覆部32Aとシート幅方向に広く形状を重ねた状態にセットされる本体形状部36Aと、本体形状部36Aから被覆部32A(凹部3A)を前側に越える位置までひと続き状に前側に延び出す前側延出部36Bと、本体形状部36Aから被覆部32A(凹部3A)を後側に越える位置までひと続き状に後側に延び出す後側延出部36Cと、本体形状部36Aから被覆部32A(凹部3A)を下側に越える位置までひと続き状に下側に延び出す下側延出部36Dと、を有する側面視略T字状の平板形状に形成されている。ここで、上述した本体形状部36Aが本発明の「上縁形状部」に相当し、前側延出部36Bと後側延出部36Cとがそれぞれ本発明の「延出部」に相当する。
上述した形状保持部材36は、上述した本体形状部36Aの上縁が上述した被覆部32Aの上縁に沿って前後方向に形状を延ばす形となるようにセットされて、被覆部32Aが上側から押圧されて下側に押し撓まされようとする動きを初期の段階から防止するようになっている。そして、上述した形状保持部材36は、上述した前側延出部36Bと後側延出部36Cとがそれぞれ上述した被覆部32Aの右面部と内周面カバー33の凹部3A内の前後面を成す各面部の左側周縁部との縫合箇所に共縫いされて固定されている(縫合部36E1,36E2)。更に、上述した形状保持部材36は、上述した下側延出部36Dが上述した被覆部32Aの右面部と底面カバー34の左側周縁部との縫合箇所に共縫いされて固定されている(縫合部36E3)。
上記各縫合により、形状保持部材36は、その被覆部32Aとの結合箇所となる各縫合部36E1〜36E3が凹部3A内に露出することなく、被覆部32Aに対して見栄え良く一体的に結合された状態とされている(図3参照)。ここで、上述した形状保持部材36の結合される被覆部32Aの各箇所が本発明の「シートクッションの構成部」に相当し、これら形状保持部材36の被覆部32Aに結合される前側延出部36Bと後側延出部36Cと下側延出部36Dとがそれぞれ本発明の「結合部」に相当する。
そして、上記結合により、形状保持部材36は、図6〜図7に示すように、その本体形状部36Aの剛性によって、被覆部32Aをその上縁から下縁にかけての広い範囲を前後方向の広い範囲に亘って形状保持した状態として、被覆部32Aの上側からの押圧力による下側への撓みを防止するようになっている。詳しくは、上述した形状保持部材36は、その本体形状部36Aから前後側に延び出す前側延出部36Bと後側延出部36Cとが、それぞれ、サイドカバー32の被覆部32Aを前後側に越えてサイドカバー32の前側延長面部32Bと後側延長面部32Cとにシート幅方向に重なる状態にセットされるようになっている。
そして、上記形状保持部材36の前側延出部36Bと後側延出部36Cとは、それぞれ、上縁が本体形状部36Aの上縁と略真っ直ぐに繋がるように連続した上縁を成す形となって、上述したサイドカバー32の天板カバー31と繋がる前側延長面部32Bの上縁と後側延長面部32Cの上縁とに沿って前後方向に形状を延ばす形にセットされている。ここで、上述したサイドカバー32の前側延長面部32Bと後側延長面部32Cとがそれぞれ本発明の「延長面部」に相当する。
上記構成により、形状保持部材36は、被覆部32Aの形状保持を行う本体形状部36Aの上縁が、被覆部32Aを前後側に越えて延び出す前側延出部36B及び後側延出部36Cの各上縁とひと続きの上縁を成す形となって、本体形状部36Aの上縁を被覆部32Aの前後の上縁箇所で角張らせることのない構成とされている。詳しくは、上述した形状保持部材36の後側延出部36Cは、図7に示すように、その上縁面が、上述した被覆部32Aの右面部と蓋カバー35と天板カバー31とが互いに突き当てられる形に共縫いされて互いの縫い代が嵩張った状態に重ねられる縫重ね部35Aとの干渉を避けるように僅かに後下がり状に傾斜した傾斜面36C1となって形成されている。上記構成により、形状保持部材36は、その本体形状部36Aの上縁を被覆部32Aの前後の上縁箇所で角張らせない状態を維持しつつも、上記縫重ね部35Aとの干渉を避けた形に設けられた状態とされている。
《まとめ》
以上をまとめると、本実施例のシート1は次のような構成となっている。すなわち、シートクッション(シートクッション3)のシート幅方向内側(左側)の縁部に上向きに開口する凹部(凹部3A)を有する乗物用シート(シート1)であって、シートクッション(シートクッション3)のシート幅方向内側(左側)の側面を被覆して凹部(凹部3A)のシート幅方向内側(左側)の側面を上縁の繋がる2重構造の表皮材で形作る被覆部(被覆部32A)を有するサイドカバー(サイドカバー32)と、被覆部(被覆部32A)の2重構造の表皮材の間に配置されて被覆部(被覆部32A)の形状を保持する形状保持部材(形状保持部材36)と、を有する。
形状保持部材(形状保持部材36)が、被覆部(被覆部32A)の上縁に沿って前後方向に形状を延ばす上縁形状部(本体形状部36A)と、凹部(凹部3A)を前後いずれかの方向に越えてシートクッション(シートクッション3)のシート幅方向内側(左側)の側面(クッションパッド20の左側の周囲側面20B)とシート幅方向に並ぶ位置まで延び出す延出部(前側延出部36B及び後側延出部36C)と、シートクッション(シートクッション3)の構成部(被覆部32A)に一体的に結合される結合部(前側延出部36B、後側延出部36C及び下側延出部36D)と、を有する。
このように、シートクッション(シートクッション3)の縁部に形成された凹部(凹部3A)をサイドから被覆するサイドカバー(サイドカバー32)の被覆部(被覆部32A)に対し、形状保持部材(形状保持部材36)をその上縁に沿って前後方向に延びるように設けることにより、被覆部(被覆部32A)を上側からの負荷に対して押し撓ませにくい構成にすることができる。
また、上述した結合部(下側延出部36D)の結合されるシートクッション(シートクッション3)の構成部(被覆部32A)が、上記被覆部(被覆部32A)の凹部(凹部3A)と前後方向の配置が重なる箇所となっている。このような構成とされていることにより、形状保持部材(形状保持部材36)を被覆部(被覆部32A)に対して、その前後方向の配置が重なる箇所において、より下方向に脱落させない状態に結合することができる。したがって、被覆部(被覆部32A)を上側からの負荷に対して、より押し撓ませにくい構成にすることができる。
また、結合部(下側延出部36D)が、被覆部(被覆部32A)に対して、被覆部(被覆部32A)と凹部(凹部3A)内の底面を表皮材で形作る底面カバー(底面カバー34)との縫合箇所(縫合部36E3)への共縫いにより結合されている。このような構成とされていることにより、結合部(下側延出部36D)の被覆部(被覆部32A)に対する結合を、被覆部(被覆部32A)と底面カバー(底面カバー34)との縫合構造を用いて合理的かつ見栄え良く行うことができる。
また、サイドカバー(サイドカバー32)が、被覆部(被覆部32A)から凹部(凹部3A)の形成領域を前後いずれかの方向に越えた領域まで延びてシートクッション(シートクッション3)のシート幅方向内側(左側)の側面(クッションパッド20の左側の周囲側面20B)を被覆すると共にシートクッション(シートクッション3)の天板面(クッションパッド20の天板面20A)を被覆する天板カバー(天板カバー31)と上縁が繋げられた延長面部(前側延長面部32B及び後側延長面部32C)を有する。形状保持部材(形状保持部材36)の延出部(前側延出部36B及び後側延出部36C)が、上縁形状部(本体形状部36A)から上記サイドカバー(サイドカバー32)の延長面部(前側延長面部32B及び後側延長面部32C)の上縁に沿って前後方向に延びている。このような構成とされていることにより、形状保持部材(形状保持部材36)の延出部(前側延出部36B及び後側延出部36C)によって、形状保持部材(形状保持部材36)の上縁形状部(本体形状部36A)をサイドカバー(サイドカバー32)の被覆部(被覆部32A)の前後箇所で角張らせないようにすることができる。
また、乗物用シート(シート1)は、更に、凹部(凹部3A)の後側の一部領域に蓋をする形で天板カバー(天板カバー31)と被覆部(被覆部32A)とに縫合されて設けられた蓋カバー(蓋カバー35)を有する。延長面部(後側延長面部32C)が、その凹部(凹部3A)の形成領域を後側に越えて延びる箇所の上縁に、天板カバー(天板カバー31)と共に蓋カバー(蓋カバー35)の後内側の角部と縫合されて互いの縫い代の重ねられる縫重ね部(縫重ね部35A)を有する。形状保持部材(形状保持部材36)の延出部(後側延出部36C)が、その延長面部(後側延長面部32C)の縫重ね部(縫重ね部35A)を前側から後側に越えて延びる部分が縫重ね部(縫重ね部35A)との干渉を避けるように後下がり状に傾斜している(傾斜面36C1)。
このような構成とされていることにより、形状保持部材(形状保持部材36)の延出部(後側延出部36C)の後下がり状に傾斜した形状によって、形状保持部材(形状保持部材36)の上縁形状部(本体形状部36A)をサイドカバー(サイドカバー32)の被覆部(被覆部32A)の前後箇所で角張らせない状態を維持しつつ、形状保持部材(形状保持部材36)の延出部(後側延出部36C)とサイドカバー(サイドカバー32)の延長面部(後側延長面部32C)の縫重ね部(縫重ね部35A)との干渉を適切に避けることができる。
また、凹部(凹部3A)が、シートベルトバックル(シートベルトバックルB)を上側に張り出させない形で内部に収めることのできる凹形状とされている。このような構成とされていることにより、被覆部(被覆部32A)が凹部(凹部3A)内に設けられたシートベルトバックル(シートベルトバックルB)よりも上側に張り出すことで上側からの負荷を受けやすい構成とされても、被覆部(被覆部32A)を押し撓ませにくくすることができる。
また、結合部(前側延出部36B及び後側延出部36C)が、被覆部(被覆部32A)に対して、被覆部(被覆部32A)と凹部(凹部3A)内の前後の内周面を表皮材で形作る内周面カバー(内周面カバー33)との縫合箇所(縫合部36E1及び縫合部36E2)への共縫いにより結合されている。このような構成とされていることにより、結合部(前側延出部36B及び後側延出部36C)の被覆部(被覆部32A)に対する結合を、被覆部(被覆部32A)と内周面カバー(内周面カバー33)との縫合構造を用いて合理的かつ見栄え良く行うことができる。
《その他の実施例について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施することができるものである。例えば、本発明の「乗物用シート」は、自動車の後部側座席以外のシートの他、鉄道等の自動車以外の車両に適用されるシートや、航空機、船舶等の様々な乗物用に供されるシートにも広く適用することができるものである。
また、シートクッションのシート幅方向内側の側面を被覆して同内側の縁部に形成された凹部のシート幅方向内側の側面を上縁の繋がる2重構造の表皮材で形作るサイドカバーの被覆部は、2枚の表皮材を上縁で縫合することで2重構造とするものの他、1枚の表皮材を山折り状に折り返すことで上縁の繋がれた2重構造とするものであってもよい。
また、形状保持部材は、上記実施例で示したような樹脂プレートの他、ファブリック材や皮革材やパッド材やゴム材等の被覆部の形状を保持可能な剛性を備えるものであれば、どのような材質又は形状の部材から成るものであってもよい。また、形状保持部材の延出部は、凹部を前後いずれかの方向にのみ越えてシートクッションのシート幅方向内側の側面とシート幅方向に並ぶ位置まで延び出すものであってもよい。また、形状保持部材の結合部は、サイドカバーの他、クッションパッド等のシートクッションの他の構成部に一体的に結合されるものであってもよい。上記サイドカバーは、皮革材等のファブリック材以外の表皮材によって構成されていてもよい。
1 シート
2 シートバック
3 シートクッション
3A 凹部
4 センタコンソール
4A 天板部
4B 右側板部
4C 左側板部
4D カップホルダ
4E 膨張部
10 クッションフレーム
11 サイドフレーム
11C 引掛ワイヤ
12 フロントパネル
13 リヤパイプ
14 パッド支持ワイヤ
15 支持フレーム
20 クッションパッド
20A 天板面
20B 周囲側面
21 肉抜き部
30 クッションカバー
31 天板カバー
32 サイドカバー
32A 被覆部(被覆部、シートクッションの構成部)
32B 前側延長面部(延長面部)
32C 後側延長面部(延長面部)
32D Jフック
33 内周面カバー
34 底面カバー
35 蓋カバー
35A 縫重ね部
36 形状保持部材
36A 本体形状部(上縁形状部)
36B 前側延出部(延出部、結合部)
36C 後側延出部(延出部、結合部)
36C1 傾斜面
36D 下側延出部(結合部)
36E1〜36E3 縫合部
B シートベルトバックル

Claims (6)

  1. シートクッションのシート幅方向内側の縁部に上向きに開口する凹部を有する乗物用シートであって、
    前記シートクッションのシート幅方向内側の側面を被覆して前記凹部のシート幅方向内側の側面を上縁の繋がる2重構造の表皮材で形作る被覆部を有するサイドカバーと、
    前記被覆部の前記2重構造の表皮材の間に配置されて前記被覆部の形状を保持する形状保持部材と、を有し、
    前記形状保持部材が、前記被覆部の上縁に沿って前後方向に形状を延ばす上縁形状部と、前記凹部を前後いずれかの方向に越えて前記シートクッションのシート幅方向内側の側面とシート幅方向に並ぶ位置まで延び出す延出部と、前記被覆部の前記凹部の前後方向の中間部と前後方向の配置が重なる箇所に一体的に結合される結合部と、を有する乗物用シート。
  2. 請求項1に記載の乗物用シートであって、
    前記結合部が、前記被覆部に対して、該被覆部と前記凹部内の底面を表皮材で形作る底面カバーとの縫合箇所への共縫いにより結合されている乗物用シート。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の乗物用シートであって、
    前記サイドカバーが、前記被覆部から前記凹部の形成領域を前後いずれかの方向に越えた領域まで延びて前記シートクッションのシート幅方向内側の側面を被覆すると共に前記シートクッションの天板面を被覆する天板カバーと上縁が繋げられた延長面部を有し、
    前記形状保持部材の前記延出部が、前記上縁形状部から前記サイドカバーの前記延長面部の上縁に沿って前後方向に延びている乗物用シート。
  4. 請求項3に記載の乗物用シートであって、
    更に、前記凹部の後側の一部領域に蓋をする形で前記天板カバーと前記被覆部とに縫合されて設けられた蓋カバーを有し、
    前記延長面部が、その前記凹部の形成領域を後側に越えて延びる箇所の上縁に、前記天板カバーと共に前記蓋カバーの後内側の角部と縫合されて互いの縫い代の重ねられる縫重ね部を有し、
    前記形状保持部材の前記延出部が、その前記延長面部の前記縫重ね部を前側から後側に越えて延びる部分が前記縫重ね部との干渉を避けるように後下がり状に傾斜している乗物用シート。
  5. 請求項1から請求項のいずれかに記載の乗物用シートであって、
    前記凹部が、シートベルトバックルを上側に張り出させない形で内部に収めることのできる凹形状とされている乗物用シート。
  6. 請求項1から請求項5のいずれかに記載の乗物用シートであって、
    前記延出部が、前記被覆部に対して、該被覆部と前記凹部内の前後の内周面を表皮材で形作る内周面カバーとの縫合箇所への共縫いにより結合されている乗物用シート。
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