JP6820444B1 - 草本系バイオマスの前処理方法、糖化液の製造方法及び草本系バイオマス由来発酵生成物の製造方法 - Google Patents

草本系バイオマスの前処理方法、糖化液の製造方法及び草本系バイオマス由来発酵生成物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】前処理コストを抑えながら、草本系バイオマスからの糖回収量が良好な草本系バイオマスの前処理方法、並びに、前記前処理方法を用いた糖化液の製造方法及び草本系バイオマス由来発酵生成物の製造方法を提供する。【解決手段】草本系バイオマスの前処理方法は、草本系バイオマスを搾汁する搾汁工程と、前記搾汁工程後の草本系バイオマスに、触媒を添加する触媒添加工程と、前記触媒添加工程後の草本系バイオマスを加水分解処理装置に圧入する圧入工程と、前記圧入工程後の草本系バイオマスを加水分解する加水分解工程と、をこの順に含み、前記草本系バイオマスの乾燥質量に対する、前記搾汁工程後の草本系バイオマス中の水分の含有量が100質量%未満である。糖化液の製造方法は、前記草本系バイオマスの前処理方法で得られた草本系バイオマスの加水分解物を酵素で糖化する糖化工程を含む。【選択図】なし

Description

本発明は、草本系バイオマスの前処理方法、糖化液の製造方法及び草本系バイオマス由来発酵生成物の製造方法に関する。
近年、地球温暖化対策や、廃棄物の有効活用の観点から、植物資源を原料とするバイオマスの利用が注目されている。一般に、バイオマスからエタノール等の化合物を製造するための原料としては、サトウキビ等の糖質やトウモロコシ等のデンプン質が多く用いられている。しかしながら、これらの原料はもともと食料又は飼料として用いられており、長期的に工業用利用資源として活用することは、食料又は飼料用途との競合を引き起こし、原料価格の高騰を招く危険性がある。
従って、非食用バイオマスをエネルギー資源として活用する技術開発が進められている。非食用バイオマスとしては、地球上に最も多く存在するセルロースが挙げられるが、その大部分は芳香族ポリマーのリグニンやヘミセルロースとの複合体であるリグノセルロースとして存在する。このリグノセルロースは、セルロース、ヘミセルロース、リグニンが強固に結合した構造をしており、発酵に使用可能である五炭糖若しくは六炭糖の単糖やオリゴ糖に分解するのは容易ではない。
従って、酸やアルカリ等の触媒添加と蒸煮からなる前処理工程が必要となる。前処理工程の目的は、リグノセルロースを構成するヘミセルロースやリグニンといったポリマーを分解し、後工程におけるセルロースの反応性を向上させることである。
リグノセルロースを用いた製紙プラントやエタノールプラントの前処理蒸煮装置は、多くの場合スクリュー型の連続処理設備が採用されている。これらの装置では、スクリュー内の高圧雰囲気を維持しながら大気圧から高圧雰囲気へ原料を連続投入するために、プラグスクリューと呼ばれる装置を用いることが一般的である。プラグスクリューとは、原料を圧密しながら連続的に投入する装置で、圧密した原料によって蒸煮装置の内圧をシールする装置である。プラグスクリューにより圧密した原料は、蒸煮装置内において、加水分解のための触媒が適宜添加されて、加水分解処理が行われる。
一方、特許文献1には、イネ科植物の茎葉に加水液を添加し、搾汁を行い、搾汁液と固形分を分離し、分離された前記固形分に酸又はアルカリからなる触媒を添加し、加水分解する前処理を行う、イネ科植物の茎葉由来発酵生成物の製造方法が開示されている。
特許第5857149号公報
しかしながら、従来のリグノセルロースを用いた製紙プラントやエタノールプラントの前処理蒸煮装置では、蒸煮装置内で触媒が添加されることから、添加した触媒を原料に均一に作用されることが難しく、さらに、分解強度を高くするために、触媒消費量が多くなり、また装置の腐食リスク等の問題が起こることがある。
また、特許文献1に記載の方法では、触媒添加前のイネ科植物の茎葉等のバイオマスにおける含水率が制御されていないことから、触媒添加前のバイオマス中の含水率が高いと、触媒添加後のバイオマス中の触媒濃度が添加した触媒濃度よりも低く、分解強度が低くなる。そのため、バイオマスに含まれる構成糖から回収する糖量を最大化できておらず、改善の余地がある。また、バイオマスからの糖回収量を向上させるために、触媒濃度や処理温度を上げることで分解強度を高めることができるが、このような条件では装置が腐食する虞があり、また処理コストも上がる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、前処理コストを抑えながら、草本系バイオマスからの糖回収量が良好な草本系バイオマスの前処理方法、並びに、前記前処理方法を用いた糖化液の製造方法及び草本系バイオマス由来発酵生成物の製造方法を提供する。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1) 草本系バイオマスを搾汁する搾汁工程と、前記搾汁工程後の草本系バイオマスに、触媒を添加する触媒添加工程と、前記触媒添加工程後の草本系バイオマスを加水分解処理装置に圧入する圧入工程と、前記圧入工程後の草本系バイオマスを加水分解する加水分解工程と、をこの順に含み、前記草本系バイオマスの乾燥質量に対する、前記搾汁工程後であって、触媒添加工程前の草本系バイオマス中の水分の含有量が100質量%未満であり、前記触媒が酸又はアルカリであり、前記搾汁工程前に、5分〜60分の間の時間、蒸気で前記草本系バイオマスを加熱する工程を含まない、草本系バイオマスの前処理方法。
(2) 前記草本系バイオマスの乾燥質量に対する、前記搾汁工程後であって、触媒添加工程前の草本系バイオマス中の水分の含有量が82質量%以下である、(1)に記載の草本系バイオマスの前処理方法。
(3) 前記草本系バイオマスの乾燥質量に対する、草本系バイオマス中の水分の含有量が100質量%超である草本系バイオマスが原料である、(1)又は(2)に記載の草本系バイオマスの前処理方法。
) 前記搾汁工程を2回以上行う、(1)〜(3)のいずれか一つに記載の草本系バイオマスの前処理方法。
) 前記草本系バイオマスの乾燥質量に対する、最終回の前記搾汁工程後の草本系バイオマス中の水分の含有量が、前記草本系バイオマスの乾燥質量に対する、最終回より前の前記搾汁工程後の草本系バイオマス中の水分の含有量以下である、()に記載の草本系バイオマスの前処理方法。
前記搾汁工程において、搾汁機構を有する装置により草本系バイオマスを搾汁し、前記装置によって前記草本系バイオマスに加えられる剪断力により前記草本系バイオマスを破砕する、(4)又は(5)に記載の草本系バイオマスの前処理方法。
前記搾汁工程は、スクリュープレスを用いて搾汁を行なった後、プラグスクリューを用いて搾汁を行う2段階の搾汁である、(4)〜(6)のいずれか一つに記載の草本系バイオマスの前処理方法。
) 前記搾汁工程の前に、前記草本系バイオマスに水を添加し、洗浄する洗浄工程を更に含む、(1)〜()のいずれか一つに記載の草本系バイオマスの前処理方法。
) 前記触媒が、硫酸、塩酸、硝酸及びリン酸からなる群より選ばれる1種以上の酸、又は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びアンモニアからなる群より選ばれる1種以上のアルカリである、(1)〜()のいずれか一つに記載の草本系バイオマスの前処理方法。
10) (1)〜()のいずれか一つに記載の草本系バイオマスの前処理方法で得られた草本系バイオマスの加水分解物を酵素で糖化する糖化工程を含む、糖化液の製造方法。
11) 前記糖化工程において、前記搾汁工程で排出される搾汁液を前記加水分解物に混合して、酵素で糖化する、(10)に記載の糖化液の製造方法。
12) (10)又は(11)に記載の糖化液の製造方法で得られた糖化液を微生物で発酵する発酵工程を含む、草本系バイオマス由来発酵生成物の製造方法。
上記態様の草本系バイオマスの前処理方法によれば、触媒の消費量が従来よりも低減されることで前処理コストを抑えながら、草本系バイオマスからの糖回収量が良好な草本系バイオマスの前処理方法を提供することができる。上記態様の糖化液の製造方法は、前記前処理方法で得られた草本系バイオマスの加水分解物を用いており、糖化液を効率よく製造することができる。上記態様の草本系バイオマス由来発酵生成物の製造方法は、前記糖化液の製造方法で得られた糖化液を用いており、草本系バイオマス由来発酵生成物を効率よく製造することができる。
本発明の第1実施形態に係る草本系バイオマスの前処理装置を示す概略構成図である。 本発明の第2実施形態に係る草本系バイオマスの前処理装置を示す概略構成図である。 本発明の第1実施形態に係る糖化液の製造装置を示す概略構成図である。 本発明の第2実施形態に係る糖化液の製造装置を示す概略構成図である。 本発明の第1実施形態に係る草本系バイオマス由来発酵生成物の製造装置を示す概略構成図である。 実施例1における搾汁前原料、スクリュープレスによる搾汁後の原料(搾汁原料1)、及びプラグスクリューによる搾汁後の原料(搾汁原料2)の画像である。 実施例2における加水分解工程前の原料の渇き基準含水率と糖化液中のグルコース濃度の関係を示すグラフである。 実施例2における加水分解工程前の原料の渇き基準含水率と糖化液中のキシロース濃度の関係を示すグラフである。 実施例2における加水分解工程前の原料の含水率(渇き基準及び湿潤基準)と糖化液中の糖濃度(グルコース及びキシロースの合計濃度)の関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態に係る草本系バイオマスの前処理方法(以下、「本実施形態の前処理方法」と略記する場合がある)、糖化液の製造方法、及び草本系バイオマス由来発酵生成物の製造方法について、詳細に説明する。なお、本明細書及び請求の範囲において、各種用語の意味を以下のとおり定義する。
<草本系バイオマス>
本実施形態の製造方法では、原料として草本系バイオマスを用いる。また草本系バイオマスの代わりに、草本系バイオマス中のセルロース及びヘミセルロースからバイオエタノール、バイオブタノール又はバイオ化学品等を製造する過程で発生した残渣を用いてもよい。原料として用いられる草本系バイオマスは、粉砕されたものを用いることができ、また、ブロック、チップ、粉末等、いずれの形状でもよい。なお、以降において草本系バイオマスを単に「バイオマス」と称する場合がある。
草本系バイオマスとしては、タケ、パームヤシの樹幹及び空房、パームヤシ果実の繊維及び種子;さとうきび、バガス(さとうきび及び高バイオマス量さとうきびの搾り滓)、稲わら、麦わら、トウモロコシの穂軸、茎葉及び残渣(コーンストーバー、コーンコブ、コーンハル)、ソルガム(スイートソルガムを含む)残渣、スイッチグラス、エリアンサス、ネピアグラス等のイネ科植物から得られるもの;エネルギー作物等の植物油搾取過程で発生する残渣物等が挙げられる。中でも、草本系バイオマスとしては、入手容易性や本実施形態の製造方法との適合性の観点から、イネ科植物から得られるものが好ましく、バガス又はネピアグラスがより好ましい。特に、ネピアグラス等の原料は、加工等されず、刈り取られたまま、すなわち、含水率が高い状態で取り扱われることから、本実施形態の前処理方法において、好ましく用いることができる。
<セルロース及びヘミセルロース>
本明細書において、「セルロース」には、6つの炭素を構成単位とする六炭糖が含まれる。よって、セルロースは加水分解を受けると、炭素6つからなる六炭糖の単糖(グルコース等)やその単糖が複数個連結された六炭糖のオリゴ糖(セロビオース等)を生ずる。
「ヘミセルロース」には、キシロース等の5つの炭素を構成単位とする五炭糖(C5糖)やマンノース、アラビノース、4−O−メチルグルクロン酸等の6つの炭素を構成単位とする六炭糖(C6糖)から構成される、グルコマンナンやグルクロノキシラン等の複合多糖等が含まれる。よって、ヘミセルロースは加水分解を受けると、炭素5つからなる五炭糖の単糖やその単糖が複数個連結された五炭糖のオリゴ糖、炭素6つからなる六炭糖の単糖やその単糖が複数個連結された六炭糖のオリゴ糖、五炭糖の単糖と六炭糖の単糖が複数個連結されたオリゴ糖を生ずる。
一般に、ヘミセルロース又はセルロースから生ずる単糖又はオリゴ糖の構成比率や生成量は、前処理方法や原料として用いた草本系バイオマスの種類によって異なる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、各図において、説明に関連しない部分は図示を省略する場合がある。
<草本系バイオマスの前処理方法>
本実施形態の前処理方法は、搾汁工程と、触媒添加工程と、圧入工程と、加水分解工程と、をこの順に含む。搾汁工程では、草本系バイオマスを搾汁する。触媒添加工程では、搾汁工程後の草本系バイオマスに、触媒を添加する。圧入工程では、触媒添加工程後の草本系バイオマスを加水分解処理装置に圧入する。加水分解工程では、前記圧入工程後の草本系バイオマスを加水分解する。
草本系バイオマスの乾燥質量に対する、前記搾汁工程後の草本系バイオマス中の水分の含有量が100質量%未満であり、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下がさらに好ましく、82質量%以下が特に好ましい。水分の含有量の下限値は、特に限定されないが、例えば、10質量%とすることができ、15質量%とすることができ、20質量%とすることができる。含水率が100質量%未満であることで、触媒液中の水素イオン濃度に対する草本系バイオマス中の水分の水素イオン濃度の影響による水素イオン濃度の希釈を低減することができ、触媒による分解強度を高く保つことができる。例えば、酸を触媒として用いる場合には、酸のpHに対して、原料中の水分のpHは高いことから、酸添加後の原料中のpHは添加した酸のpHよりも高くなり、分解強度が低下することが懸念される。しかしながら、草本系バイオマス中の含水率を100質量%未満とすることで、酸添加後の原料中のpHを、添加した酸のpHに近似した低い値とすることができ、酸による分解強度を高く保つことができる。これにより、加水分解工程において、草本系バイオマス中の特にヘミセルロースを分解して、効率よくキシロースを得ることができる。
ここでいう草本系バイオマスの乾燥質量に対する、搾汁工程後の草本系バイオマス中の水分の含有量は、搾汁工程後の草本系バイオマス中の水分の質量を草本系バイオマスの乾燥質量で除した割合の百分率であり、以下、「渇き基準の含水率」ともいう。渇き基準の含水率は、例えば、加熱乾燥式水分計(A&D社製、型番:ML−50)を用いて、測定することができる。
本実施形態の前処理方法は、上記搾汁工程を有することで、草本系バイオマスに含まれる不純物を取り除き、当該不純物が触媒中の水素イオンに緩衝し、触媒濃度を下げることを効果的に抑制することができる。また、上記搾汁工程を有することで、草本系バイオマスを破砕し、表面積が大きくなり、続く加水分解工程において、触媒との接触頻度が高められ、効果的に触媒により分解することができる。さらに、上記搾汁工程を経た後の草本系バイオマスの渇き基準の含水率が100質量%未満で4あることで、上述したように、草本系バイオマス中の水分の影響による触媒中の水素イオン濃度の希釈を低減することができ、触媒による分解強度を高く保つことができる。
これらのことから、本実施形態の前処理方法によれば、触媒消費量が従来よりも低減されることで前処理コストを抑えながら、草本系バイオマスからの糖回収量を良好なものとすることができる。また、本実施形態の前処理方法は、バガス等と異なり、渇き基準の含水率が100質量%超等の含水率が高い原料や不純物が多く含まれるような原料についても適用することができ、幅広い原料を効率的に前処理することができる。
次いで、本実施形態の前処理方法の各工程について、以下に詳細を説明する。
[搾汁工程]
搾汁工程では、草本系バイオマスを搾汁する。
草本系バイオマスの含水率は乾燥によっても制御することは可能であるが、その場合、草本系バイオマス中の遊離糖や、灰分等の不純物は取り除かれず残存する。残存した遊離糖は、続く加水分解工程に持ち込まれた場合に、過分解してキシロースの過分解物であるフルフラール、グルコースの過分解物である5−ヒドロキシメチルフルフラール(5−HMF)等の糖の過分解物が生成される。本実施形態の前処理方法で得られた草本系バイオマスの加水分解物を糖化させた後、発酵原料として用いる場合に、この過分解物は、酵素による糖化反応や微生物による発酵反応を阻害する。そのため、遊離糖をできる限り、続く加水分解工程に持ち込まないことが好ましい。これに対して、搾汁工程では、草本系バイオマスの含水率を低減させるだけでなく、原料中の水分中に溶解して存在しているこの遊離糖を搾汁液とともに取り除くことができ、続く加水分解工程への遊離糖の持ち込みを低減することができる。
また、残存した灰分等の不純物に含まれる成分の一部は、続く加水分解工程で酸又はアルカリからなる触媒を添加する際に、水素イオンに緩衝することで、触媒による草本系バイオマス原料の分解強度を低減させる。そのため、灰分等の不純物をできる限り、続く加水分解工程に持ち込まないことが好ましい。これに対して、搾汁工程では、草本系バイオマスの含水率を低減させるだけでなく、原料中の水分中に溶解して存在しているこの灰分等の不純物を搾汁液とともに取り除くことができ、続く加水分解工程への灰分等の不純物の持ち込みを低減することができる。
さらに、搾汁工程では、草本系バイオマスに圧力をかけながら搾汁を行うことで、後述する実施に示すように、草本系バイオマスをより細かく砕くことができる。これにより、草本系バイオマスの比表面積が大きくなり、続く加水分解工程において、触媒との接触機会を増加させることができ、効率よく草本系バイオマスを分解させることができる。
草本系バイオマス原料の含水率や形状、大きさ等にもよるが、搾汁工程を2回以上行うことが好ましい。搾汁工程を2回以上の複数回を行うことで、草本系バイオマスにより多くの剪断力が加わり、より細かく破砕されて、草本系バイオマスの表面積をより大きくすることができる。
また、搾汁工程を2回以上の複数回行う場合に、n(nは1以上の整数)回目の搾汁工程とn+1回目の搾汁工程との間で処理水を添加して洗浄することが好ましい。処理水の添加により、草本系バイオマスの搾汁時に遊離糖や、灰分等の不純物をより効率的に取り除くことができる。
搾汁工程を複数回行う場合における搾汁工程の回数としては、2回以上5回以下が好ましく、2回以上4回以下がより好ましく、2回以上3回以下がさらに好ましく、製造効率の観点から、2回が特に好ましい。搾汁工程を2回以上の複数回行う場合に、最終回の搾汁工程後の前記草本系バイオマスの渇き基準の含水率が、最終回より前の搾汁工程後の前記草本系バイオマスの渇き基準の含水率以下となるように搾汁することが好ましい。最終回の搾汁工程後の前記草本系バイオマスの渇き基準の含水率が、最終回より前の搾汁工程後の前記草本系バイオマスの渇き基準の含水率以下となるように搾汁することで、続く加水分解工程で、草本系バイオマス中の水分の影響による触媒中の水素イオン濃度の希釈をより低減することができ、触媒による分解強度をより高く保つことができる。例えば、搾汁工程を2回行う場合に、1回目の搾汁工程での渇き基準の含水率を120%質量%未満とすることができ、2回目の搾汁工程での渇き基準の含水率を100質量%未満とすることができる。
搾汁工程は、例えば、スクリュープレス、フィルタープレス、ベルトプレス、ロール搾汁機、プラグスクリュー等の搾汁機構を有する装置を用いて行うことができる。中でも、スクリュープレスを用いて2回搾汁を行うことが好ましい。スクリュープレスを用いて2回搾汁を行うことで、草本系バイオマス中の遊離糖や、灰分等の不純物をより効率的に取り除くことができ、また、バイオマスの渇き基準の含水率をより効率的に低減することができる。
或いは、スクリュープレスを用いて搾汁を行なった後、プラグスクリューを用いて搾汁を行う2段階での搾汁が好ましい。後述する実施例に示すように、プラグスクリューは、当該プラグスクリューを経た草本系バイオマスの渇き基準含水率がスクリュープレスを経た草本系バイオマスの渇き基準含水率よりも低くなるように搾汁することができる装置であることから、草本系バイオマスの含水率をより効率的に低減させることができる。また、草本系バイオマスにより多くの剪断力が加わり、より細かく破砕されて、草本系バイオマスの表面積をより大きくすることができる。
[触媒添加工程]
触媒添加工程では、搾汁工程後の草本系バイオマスに触媒を添加する。
本実施形態の前処理工程では、搾汁工程の後であって、圧入工程の前に、触媒を添加する触媒添加工程を行なう。これにより、続く圧入工程において、添加した触媒を草本系バイオマスに効率よく均一に行き渡らせることができる。また、続く圧入工程において、添加された触媒の内、過剰分の触媒を回収することで、当該回収された触媒を触媒添加工程で再利用することができ、触媒添加量を従来よりも低減させることができる。さらに、搾汁工程の後であって、触媒添加工程の前の草本系バイオマス、すなわち、触媒が添加される直前の草本系バイオマスの渇き基準含水率が100質量%未満であることで、上述したように、草本系バイオマス中の水分の影響による触媒中の水素イオン濃度の希釈を低減することができ、触媒による分解強度を高く保つことができる。
触媒は、リグニンを分解又は軟化させ、セルロース及びヘミセルロースを分解するためのものであれば、特別な限定はないが、酸又はアルカリからなるものが好ましく用いられる。酸としては、例えば、硫酸(希硫酸を含む)、塩酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等が挙げられる。これら酸又はアルカリはそれぞれ1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。中でも、工業利用には安価で手に入りやすいことから、希硫酸が特に好ましい。
[圧入工程]
圧入工程では、触媒添加工程後の草本系バイオマスを加水分解処理装置に圧入する。
圧入工程を行なうことで、触媒添加工程で添加された触媒を草本系バイオマスに効率よく均一に行き渡らせることができる。また、添加された触媒の内、過剰分の触媒を回収することで、当該回収された触媒を触媒添加工程で再利用することができ、触媒添加量を従来よりも低減させることができる。
圧入工程は、圧力をかけながら、加水分解処理装置内に触媒添加工程後の草本系バイオマスを投入できるように構成された装置であればよく、中でも、加水分解処理装置内の高圧雰囲気を維持しながら大気圧から高圧雰囲気へ原料を連続投入するために、圧入した原料によって加水分解処理装置の内圧をシールするように構成された装置であることが好ましい。このような圧入装置としては、上記「搾汁工程」において例示された装置と同様の装置が挙げられ、中でも、プラグスクリューが好ましい。
[加水分解工程]
加水分解工程では、圧入工程後の草本系バイオマスを加水分解する。加水分解工程では、特に、草本系バイオマス中のヘミセルロースがキシロースに分解される。
本実施形態の前処理方法では、加水分解処理装置へ草本系バイオマスを圧入する圧入工程を行なう前に、触媒添加工程を行なうことで、上述したように、触媒添加工程で添加された触媒を草本系バイオマスに効率よく均一に行き渡らせることができ、これにより、加水分解工程において、効率よく草本系バイオマス中のヘミセルロースをキシロースに分解することができる。また、従来では加水分解処理装置内に草本系バイオマスを投入した後に、触媒を添加していたため、加水分解強度を高く保つために、過剰量の触媒の添加が必要であった。
これに対して、本実施形態の前処理方法では、加水分解処理装置に投入する前に、上記搾汁工程において草本系バイオマスの渇き基準の含水率が上記範囲に調整されており、上記触媒添加工程において、必要量の触媒を添加されていることで、加水分解工程において触媒中の水素イオンが希釈されない、すなわち、添加した触媒濃度と草本系バイオマス中の触媒濃度を同程度に保つことができる。また、本実施形態の前処理方法では、加水分解処理装置に投入する前に、上記搾汁工程において草本系バイオマス中の遊離糖や、灰分等の不純物が取り除かれていることで、糖の過分解物の生成が抑制され、また、灰分等の不純物が水素イオンに緩衝し、触媒濃度を下げることを効果的に抑制することができる。さらに、本実施形態の前処理方法では、加水分解処理装置に投入する前に、上記搾汁工程において、草本系バイオマスを破砕し、表面積が大きくなることで、加水分解工程において、草本系バイオマスの触媒との接触頻度が高められる。これらにより、触媒消費量を従来よりも低減することができ、前処理コストを抑えながら、効率よく草本系バイオマス中のヘミセルロースをキシロースに分解することができる。
加水分解工程における温度は例えば100℃以上250℃以下とすることができ、120℃以上200℃位以下とすることができ、150℃以上180℃以下とすることができる。
時間は例えば3分間以上150分間以下とすることができ、5分間以上120分間以下とすることができ、7分間以上90分間以下とすることができ、8分間以上40分間以下とすることができる。
加水分解工程は、例えば、耐酸性若しくは耐アルカリ性を有するオートクレーブのような加熱圧力装置、又は耐酸性若しくは耐アルカリ性を有する加熱圧力容器を有し、さらにプラグスクリュー等の上述した圧入装置が一体となり連続的に処理を行なえる装置等を用いて行うことができる。
本実施形態の前処理方法は、搾汁工程、触媒添加工程、圧入工程、及び加水分解工程に加えて、必要に応じて、その他の工程を更に含むことができる。その他の工程としては、例えば、洗浄工程、破砕工程等が挙げられる。
[洗浄工程]
洗浄工程では、前記搾汁工程の前に、草本系バイオマスに水を添加して、洗浄する。草本系バイオマスには、泥、砂、微小な金属片等の付着があるため、洗浄工程を行うことでそれらの異物を除去することができる。
洗浄工程は、水洗式のウォッシャー等の装置を用いて行うことができる。通常、水に対して、草本系バイオマスの比重が小さく、泥、砂、微小な金属片等の異物の比重が大きいため草本系バイオマスが浮いてくるが、草本系バイオマスの比重によっては、草本系バイオマスが浮いてこないこともあるため、適宜水流を作ることで、ゆっくりと沈降する草本系バイオマスも回収することができる。洗浄工程の時間は、草本系バイオマスの汚れ具合、比重により適宜調整可能だが、例えば5秒間以上30分間以下とすることができる。
[破砕工程]
破砕工程では、前記搾汁工程の前に、搾汁しやすい大きさに草本系バイオマスを破砕する。破砕工程は、例えば、ミルやカッター式破砕機等を用いて行うことができる。
<草本系バイオマスの前処理装置>
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る草本系バイオマスの前処理装置を示す概略構成図である。草本系バイオマスの前処理装置10は、搾汁機1と、触媒供給装置2と、圧入装置3と、加水分解処理装置4と、を備え、それらが配管を介して配設されている。
草本系バイオマスの前処理装置10は、上記構成を有することで、触媒消費量が従来よりも低減されることで前処理コストを抑えながら、草本系バイオマスからの糖回収量を良好なものとすることができる。
搾汁機1は、搾汁機構を有するものであって、配管5aを介して投入された草本系バイオマス中に可溶している遊離糖及び灰分を水分と一緒に出して分離することができるように構成されている。さらに、草本系バイオマスを細かく砕くように構成されていることが好ましい。このような搾汁機1としては、例えば、スクリュープレス、フィルタープレス、ベルトプレス、ロール搾汁機、プラグスクリュー等の搾汁機構を有する装置等が挙げられる。
前処理装置10は、触媒供給装置2の上流(前段)に、搾汁機1を有することで、草本系バイオマスに含まれる不純物を取り除き、当該不純物が触媒中の水素イオンに緩衝し、触媒濃度を下げることを効果的に抑制することができる。また、上前処理装置10は、触媒供給装置2の上流(前段)に、搾汁機1を有することで、草本系バイオマスを破砕し、表面積が大きくなり、続く加水分解処理装置4において、触媒との接触頻度が高められ、効果的に触媒により分解することができる。さらに、搾汁機1を経た後の草本系バイオマスの渇き基準の含水率が100質量%未満であることで、上述したように、草本系バイオマス中の水分の影響による触媒中の水素イオン濃度の希釈を低減することができ、触媒による分解強度を高く保つことができる。
これらのことから、前処理装置10によれば、触媒消費量が従来よりも低減されることで前処理コストを抑えながら、草本系バイオマスからの糖回収量を良好なものとすることができる。また、前処理装置10は、渇き基準の含水率が100質量超等の含水率が高い原料についても適用することができ、幅広い原料を効率的に前処理することができる。
搾汁機1において草本系バイオマスから分離された固形分は、配管5cを介して圧入装置へ投入される。この配管5cの途中には触媒供給装置2が配設されており、触媒が草本系バイオマスに添加される。触媒供給装置2は、例えば、触媒貯蔵槽とポンプとを含むことが好ましい。また、触媒供給装置2は、所望の触媒濃度となるように、触媒溶液と処理水とを混合する制御機構を含んでいてもよい。触媒としては、上記「草本系バイオマスの前処理方法」の「触媒添加工程」において例示されたものと同様のものが挙げられる。触媒貯蔵槽及びポンプは、耐酸性又は耐アルカリ性を有する材料から構成されたものであることが好ましい。
前処理装置10は、搾汁機1の下流(後段)であって、加水分解処理装置4の上流(前段)に触媒を添加するための触媒供給装置2を含むことで、続く圧入装置3において、添加した触媒を草本系バイオマスに効率よく均一に行き渡らせることができる。また、搾汁機1を経た後であって、触媒供給装置2によって触媒が供給される直前の草本系バイオマスの渇き基準含水率が100質量%未満であることで、上述したように、草本系バイオマス中の水分の影響による触媒中の水素イオン濃度の希釈を低減することができ、触媒による分解強度を高く保つことができる。
配管5cを通りながら、触媒供給装置2によって触媒が添加された固形分は、圧入装置3に投入される。圧入装置3は、圧力をかけながら、加水分解処理装置内に触媒添加工程後の草本系バイオマスを投入できるように構成された装置であればよく、中でも、加水分解処理装置内の高圧雰囲気を維持しながら大気圧から高圧雰囲気へ原料を連続投入するために、圧入した原料によって加水分解処理装置の内圧をシールするように構成された装置であることが好ましい。このような圧入装置としては、上記草本系バイオマスの前処理方法」の「搾汁工程」において例示された装置と同様の装置が挙げられ、中でも、プラグスクリューが好ましい。
前処理装置10は、圧入装置3を含むことで、触媒供給装置2により添加された触媒を草本系バイオマスに効率よく均一に行き渡らせることができる。
次いで、圧入装置3により、触媒が添加された固形分は加水分解処理装置4内に投入される。加水分解処理装置4は、前記固形分を加水分解するための装置である。加水分解処理装置4としては、特別な限定はないが、耐酸性又は耐アルカリ性を有するオートクレーブのような加熱圧力装置等が挙げられる。加水分解処理装置4において加水分解処理された草本系バイオマスの加水分解物は、配管5fを介して、例えば、糖化装置等に投入される。
一方、搾汁機1において草本系バイオマスから分離された搾汁液は、配管5bを介して系外に排出される。
[第2実施形態]
図2は、本発明の第2実施形態に係る草本系バイオマスの前処理装置を示す概略構成図である。草本系バイオマスの前処理装置20は、2台の搾汁機を備える点で、図1に示す草本系バイオマスの前処理装置10と異なる。なお、図2以降の図面において、図1に示す構成要素と同一のものについては、同じ符号を用いて説明を省略する。
第1の搾汁機1aにおいて草本系バイオマスから分離された固形分は、配管5gを介して第2の搾汁機1bに投入される。
第1の搾汁機1a及び第2の搾汁機1bとしては、上記前処理装置10で例示されたものと同様のものを用いることができる。第1の搾汁機1a及び第2の搾汁機1bは同じ構成の装置を用いてもよく、異なる構成の装置を用いてもよいが、第2の搾汁機1bは、当該第2の搾汁機1bを経た後の草本系バイオマスの渇き基準の含水率が第1の搾汁機1aを経た後の草本系バイオマスの渇き基準の含水率以下となるように、搾汁するように構成されている装置であることが好ましい。例えば、第1の搾汁機1aがスクリュープレスであって、第2の搾汁機が同じスクリュープレスである組み合わせとすることができる。スクリュープレスを用いて2回搾汁を行うことで、草本系バイオマス中の遊離糖や、灰分等の不純物をより効率的に取り除くことができ、また、バイオマスの渇き基準の含水率をより効率的に低減することができる。
或いは、第1の搾汁機1aがスクリュープレスであって、第2の搾汁機がプラグスクリューである組み合わせとすることができる。後述する実施例に示すように、プラグスクリューは、当該プラグスクリューを経た草本系バイオマスの渇き基準含水率がスクリュープレスを経た草本系バイオマスの渇き基準含水率よりも低くなるように搾汁することができる装置であることから、草本系バイオマスの渇き基準の含水率をより効率的に低減させることができる。また、草本系バイオマスにより多くの剪断力が加わり、より細かく破砕されて、草本系バイオマスの表面積をより大きくすることができる。
第2の搾汁機1bにおいて第1の搾汁機1aで分離された固形分からさらに分離された固形分は、配管5cにおいて触媒供給装置2により触媒が添加され、圧入装置3に投入された後、圧入装置3から加水分解処理装置4に投入される。加水分解処理装置4において加水分解処理された草本系バイオマスの加水分解物は、配管5fを介して、例えば、糖化装置等に投入される。
一方、第2の搾汁機1bにおいて第1の搾汁機1aで分離された固形分からさらに分離された搾汁液は、配管5hを介して系外に排出される。
本実施形態の草本系バイオマスの前処理装置は、図1〜2に示す前処理装置に限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、図1〜2に示すものの一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。
例えば、図1〜2に示す前処理装置において、圧入装置3と加水分解処理装置4とが一体化された装置を用いてもよい。これにより、圧入装置によって圧入された原料によって加水分解処理装置の内圧を効率よくシールすることができる。このような装置としては、例えば、耐酸性又は耐アルカリ性を有するオートクレーブのような加熱圧力装置にプラグスクリュー等の圧入装置が一体となり連続的に処理を行なえる装置等が挙げられる。
例えば、図1〜2に示す前処理装置において、圧入装置3から配管5dを介して回収された触媒を含む溶液が、触媒供給装置2に循環されて再利用するように構成されていてもよい。これにより、触媒消費量をより低減することができる。
例えば、図1〜2に示す前処理装置において、搾汁機1の上流(前段)に洗浄装置を備えていてもよい。洗浄装置は、原料である草本系バイオマスを洗浄するための装置である。特に限定はないが、装置内部に草本系バイオマスと、泥、砂、微小な金属片等の異物とを分離するための、水車等の水流発生手段が備えられていることが好ましい。
洗浄装置を用いて草本系バイオマスの洗浄方法として具体的には、まず、洗浄装置の入口部から、草本系バイオマスを投入する。装置内部には水が満たされており、比重の小さい草本系バイオマスは水車の作る水流に乗って出口方向に運ばれる。一方、比重の大きい泥、砂、微小な金属片等の異物は沈み、バルブより定期的に排出することで取り除くことができる。
次に、草本系バイオマスは、ベルトコンベアの回転と共に、スクレーパーによりかき上げられ、出口へと運ばれる。
また、洗浄に使用した水はウェッジワイヤースクリーン等の分離機、及び、各種配管を通って、ポンプにより循環することで再利用することができる。
また、例えば、図2に示す前処理装置において、第1の搾汁機1aと第2の搾汁機2bとの間で処理水を添加して洗浄してもよい。処理水の添加により、草本系バイオマスの搾汁時に遊離糖や、灰分等の不純物をより効率的に取り除くことができる。第1の搾汁機1aと第2の搾汁機2bとの間で処理水を添加する方法及び装置に限定はないが、例えば、第1の搾汁機1aと第2の搾汁機2bとの間で、草本系バイオマスを搬送する搬送コンベア上で水を散布してもよく、或いは、第1の搾汁機1aと第2の搾汁機2bとの間に洗浄装置を設けて、草本系バイオマスを洗浄してもよい。洗浄装置を設ける場合は、搾汁機1の上流(前段)に洗浄装置を設ける場合の洗浄装置と同様の洗浄装置であってもよい。
例えば、図1〜2に示す前処理装置において、搾汁機1の上流(前段)に破砕装置を備えてもよい。破砕装置は、搾汁しやすい大きさに草本系バイオマスを破砕する装置である。破砕装置としては、例えば、ミルやカッター式破砕機等が挙げられる。
<糖化液の製造方法>
本実施形態の糖化液の製造方法は、上述した草本系バイオマスの前処理方法で得られた草本系バイオマスの加水分解物を酵素で糖化する糖化工程を含む。
本実施形態の糖化液の製造方法は、上記構成を有することで、糖化液を効率よく製造することができる。
[糖化工程]
糖化工程では、上述した草本系バイオマスの前処理方法で得られた草本系バイオマスの加水分解物に含まれるセルロース及びヘミセルロースを基質として、酵素を用いて、糖化反応を行う。
ここでいう酵素とは、主に糖化酵素であり、セルロースを分解するセルラーゼ、ヘミセルロースを分解するヘミセルラーゼ、デンプンを分解するアミラーゼ等が挙げられる。
前記セルラーゼとしては、セルロースをグルコース等の単糖又はオリゴ糖に分解するものであればよく、例えば、エンドグルカナーゼ(endoglucanase;EG)、セロビオハイドロラーゼ(cellobiohydrolase;CBH)、及びβ−グルコシダーゼ(β−glucosidase;BGL)の各活性の少なくとも1つの活性を有するものが挙げられ、これらの各活性を有する酵素混合物であることが、酵素活性の観点から好ましい。
前記ヘミセルラーゼとしては、ヘミセルロースをキシロース等の単糖又はオリゴ糖に分解するものであればよく、例えば、キシラナーゼ、キシロシダーゼ、マンナナーゼ、ガラクトシダーゼ、グルクロニダーゼ、及びアラビノフラノシダーゼの各活性の少なくとも1つの活性を有するものが挙げられ、これらの各活性を有する酵素混合物であることが、酵素活性の観点から好ましい。
これらセルラーゼ及びヘミセルラーゼ等の糖化酵素の由来は限定されることはなく、例えば、トリコデルマ(Trichoderma)属、アクレモニウム(Acremonium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ペニシリウム(Penicillium)属、アエロモナス(Aeromonus)属、イルペックス(Irpex)属、スポロトリクム(Sporotrichum)属、フミコーラ(Humicola)属等の微生物由来のセルラーゼ及びヘミセルラーゼ等の糖化酵素を用いることができる。
糖化温度は、45℃以上70℃以下が好ましく、45℃以上55℃以下がより好ましく、50℃が特に好ましい。また、糖化時間は12時間以上120時間以下が好ましく、24時間以上96時間以下がより好ましく、24時間以上72時間以下がさらに好ましい。
糖化工程は、特別な限定はなく、公知の糖化装置を用いて行なうことができる。具体的には、撹拌型、通気撹拌型、気泡塔型、流動層型、充填層型等の糖化装置が挙げられる。
また、糖化装置は、装置内の温度を一定に保つために、装置の外側に温水循環式のジャケット等の温度調節装置を備えてもよい。
糖化工程において、上述した草本系バイオマスの前処理方法の搾汁工程において排出される搾汁液を草本系バイオマスの加水分解物に混合して、酵素で糖化することが好ましい。当該搾汁液も糖化に利用することで、草本系バイオマスからの糖回収量をより向上させることができる。
本実施形態の糖化液の製造方法は、上記糖化工程に加えて、その他の工程を更に含むことができる。その他の工程としては、例えば、固液分離工程等が挙げられる。
[固液分離工程]
固液分離工程では、糖化工程の後に、糖化工程で得られた糖化生成物を固液分離して、液体分である糖化液と固形分である糖化残渣とに分離して、糖化液を得る。
固液分離する方法としては、固形分と液体分を分けられる公知の方法を用いることができ、例えば、フィルター、振動篩等によりろ過する方法、遠心分離法、スクリュープレスを用いた分離法等が挙げられ、これらに限定されない。
本実施形態の製造方法で得られた糖化液は、不純物を取り除き精製して、精糖蜜として販売してもよく、又は、糖化液を微生物発酵により生成される有用成分(草本系バイオマス由来発酵生成物)を製造するために用いることができる。該有用成分の詳細については、後述する。
<糖化液の製造装置>
[第1実施形態]
図3は、本発明の第1実施形態に係る糖化液の製造装置を示す概略構成図である。糖化液の製造装置30は、糖化装置11及び配管5iを更に備える点で図2に示す草本系バイオマスの前処理装置20と異なる。糖化液の製造装置30は、草本系バイオマスの前処理装置で得られた草本系バイオマスの加水分解物を糖化原料として用いることで、糖化液を効率よく製造することができる。
糖化装置11としては、特別な限定はなく、公知の糖化装置を用いることができる。具体的には、撹拌型、通気撹拌型、気泡塔型、流動層型、充填層型等の糖化装置が挙げられる。
また、糖化装置は、装置内の温度を一定に保つために、装置の外側に温水循環式のジャケット等の温度調節装置を備えてもよい。
配管5fを介して糖化装置11に投入された草本系バイオマスの加水分解物に含まれるセルロース及びヘミセルロースは、糖化装置11に予め投入されていた、或いは、加水分解物と共に投入された酵素により糖化される。酵素及び糖化反応条件としては、上述した「糖化液の製造方法」において例示されたものが挙げられる。
糖化装置11で得られた糖化液は配管5iを介して、目的に応じて、例えば、発酵装置等に投入される。
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態に係る糖化液の製造装置を示す概略構成図である。糖化液の製造装置40は、第1の搾汁機1a及び第2の搾汁機1bと、糖化装置11とをつなぐ配管5jを更に備える点で図3に示す糖化液の製造装置30と異なる。糖化液の製造装置40は、配管5jを更に備えることで、第1の搾汁機1a及び第2の搾汁機1bで排出された搾汁液に含まれるキシロースやグルコース等の単糖や、これら単糖から構成されるオリゴ糖等の遊離糖を糖化装置11で回収し、利用することができる。これにより、草本系バイオマスからの糖回収量をより向上させることができる。
本実施形態の糖化液の製造装置は、図3〜4に示す製造装置に限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、図3〜4に示すものの一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。
例えば、図3〜4に示す製造装置において、糖化装置の下流(後段)に、固液分離装置を備えていてもよい。固液分離装置は、糖化装置において生成された糖化生成物から液体分である糖化液と固形分である糖化残渣を分離する装置である。固液分離装置としては、特に限定されず、例えば、フィルター、振動篩、遠心分離装置、スクリュープレス等が挙げられる。固液分離装置で分離された糖化液は、不純物を取り除き精製して、精糖蜜として販売してもよく、又は、糖化液を微生物発酵により生成される有用成分(草本系バイオマス由来発酵生成物)を製造するために用いることができる。一方、固液分離装置で分離された糖化残渣は、セルロースやヘミセルロース等の未糖化成分を含むことから、糖化装置に投入することで、糖化原料として利用することができる。
<草本系バイオマス由来発酵生成物の製造方法>
本実施形態の草本系バイオマス由来発酵生成物の製造方法は、上述した糖化液の製造方法で得られた糖化液を微生物で発酵する発酵工程を含む。
本実施形態の草本系バイオマス由来発酵生成物の製造方法は、上記構成を有することで、草本系バイオマス由来発酵生成物を効率よく製造することができる。
[発酵工程]
発酵工程では、上述した糖化液の製造方法で得られた糖化液に微生物を添加し、攪拌しながら発酵反応を行う。発酵反応において、微生物が糖化液中のグルコースやキシロース等の単糖やオリゴ糖を摂取することで、草本系バイオマス由来発酵生成物が生成される。
発酵工程で用いられる微生物としては、目的の草本系バイオマス由来発酵生成物を生成できるものであれば、特別な限定はない。具体的には、酵母や細菌等が挙げられ、遺伝子組換え微生物も好ましく用いられる。遺伝子組換え微生物とは、アルコール等の目的の草本系バイオマス由来発酵生成物への変換に必要な酵素遺伝子を有していない微生物に、遺伝子工学技術によりこれら遺伝子を導入し、アルコール等の目的の草本系バイオマス由来発酵生成物の生成を可能にしたものである。遺伝子組換え微生物としては、例えば、アルコール発酵性を有する遺伝子組換え大腸菌等が挙げられる。中でも、本実施形態の草本系バイオマス由来発酵生成物の製造方法で用いられる微生物としては、酵母が好ましい。
また、微生物は微生物を含む培養液をそのまま使用してもよく、又は、微生物を含む培養液を遠心分離により濃縮したもの、乾燥状態のもの等を適宜使用してよい。
使用する微生物の量は、微生物の増殖速度、発酵装置の大きさ、及び発酵に用いる糖化液の量等を元に算出すればよい。
中でも、発酵工程では、微生物として酵母を用いて、糖化液を発酵して、草本系バイオマス由来発酵生成物としてエタノール等のアルコールを生成させることが好ましい。
発酵工程は従来技術に基づき適宜行えばよく、例えば、発酵温度は、25℃以上50℃以下が好ましく、28℃以上35℃以下がより好ましく、32℃が特に好ましい。また、発酵時間は、24時間以上120時間以下が好ましく、24時間以上96時間以下がより好ましく、24時間以上72時間以下がさらに好ましい。
発酵工程は、特別な限定はなく、公知の発酵装置を用いて行なうことができる。具体的には、撹拌型、通気撹拌型、気泡塔型、流動層型、充填層型等の発酵装置が挙げられ、これらに限定されない。
また、発酵装置は装置内の温度を一定に保つために、装置の外側に温水循環式のジャケット等の温度調節装置を備えていてもよい。
本実施形態の草本系バイオマス由来発酵生成物の製造方法は、上記発酵工程に加えて、その他の工程を更に含むことができる。その他の工程としては、例えば、精製工程等が挙げられる。
[精製工程]
精製工程では、発酵工程で得られた発酵生成物から草本系バイオマス由来発酵生成物を取り出す。
草本系バイオマス由来発酵生成物とは、草本系バイオマスを分解して得られた単糖及びオリゴ糖を、酵母等の微生物が摂取することにより生成された化合物を意味する。草本系バイオマス由来発酵生成物として具体的には、例えば、エタノール、ブタノール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセロール等のアルコール;ピルビン酸、コハク酸、リンゴ酸、イタコン酸、クエン酸、乳酸等の有機酸;イノシン、グアノシン等のヌクレオシド;イノシン酸、グアニル酸等のヌクレオチド;カダベリン等のジアミン化合物等が挙げられる。発酵によって得られた化合物が乳酸等のモノマーである場合は、重合によりポリマーに変換することもある。中でも、草本系バイオマス由来発酵生成物としては、エタノールが好ましい。
精製方法としては、草本系バイオマス化合物がアルコール類である場合は、例えば、前記発酵生成物を蒸留する方法(蒸留法)等が挙げられる。また、草本系バイオマス化合物がアミノ酸類である場合は、例えば、イオン交換法、活性炭を用いた異物の吸着除去法等が挙げられる。中でも、発酵工程で、微生物として酵母を用いて、糖化液を発酵して、草本系バイオマス由来発酵生成物としてエタノール等のアルコールを生成させた後、精製工程で、蒸留法により発酵生成物からエタノール等のアルコールを取り出すことが好ましい。
<草本系バイオマス由来発酵生成物の製造装置>
図5は、本発明の第1実施形態に係る草本系バイオマス由来発酵生成物の製造装置を示す概略構成図である。草本系バイオマス由来発酵生成物の製造装置100は、発酵装置12及び配管5kを更に備える点で、糖化液の製造装置30と異なる。草本系バイオマス由来発酵生成物の製造装置100は、糖化液の製造装置で得られた糖化液を発酵原料として用いることで、草本系バイオマス由来発酵生成物を効率よく製造することができる。
発酵装置12としては、特別な限定はなく、公知の発酵装置を用いることができる。具体的には、撹拌型、通気撹拌型、気泡塔型、流動層型、充填層型等の発酵装置が挙げられ、これらに限定されない。
また、発酵装置12は装置内の温度を一定に保つために、装置の外側に温水循環式のジャケット等の温度調節装置を備えていてもよい。
配管5iを介して発酵装置12に投入された糖化液に含まれるグルコースやキシロース等の単糖や、これら単糖から構成されるオリゴ糖は、発酵装置12に予め投入されていた、或いは、糖化液と共に投入された微生物により発酵される。微生物及び発酵条件としては、上述した「草本系バイオマス由来発酵生成物の製造方法」において例示されたものが挙げられる。
発酵装置12で得られた発酵生成物は配管5kを介して、目的に応じて、例えば、精製装置等に投入される。
本実施形態の草本系バイオマス由来発酵生成物の製造装置は、図5に示す製造装置に限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、図5に示すものの一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。
例えば、図5に示す製造装置において、発酵装置12の下流に精製装置を備えていてもよい。精製装置は、発酵生成物から、上述した「草本系バイオマス由来発酵生成物の製造方法」において草本系バイオマス由来発酵生成物として例示された有用成分を取り出す。草本系バイオマス化合物がアルコール類である場合は、例えば、蒸留装置(蒸留塔を含む)等が挙げられる。また、草本系バイオマス化合物がアミノ酸類である場合は、例えば、イオン交換装置、活性炭を用いた異物の吸着除去装置等が挙げられる。中でも、発酵装置4で、微生物として酵母を用いて、糖化液を発酵して、有用成分としてエタノール等のアルコールを生成させた後、蒸留塔により発酵生成物からエタノール等のアルコールを取り出すことが好ましい。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(破砕工程及び洗浄工程)
草本系バイオマスである3m長のネピアグラスをカッター式破砕機で破砕した。次いで、得られた破砕片中の異物を除去するために、水洗式のウォッシャーで破砕片を洗浄し、原料として用いた。
(搾汁工程:1回目)
洗浄後の原料をスクリュープレス(富国工業社製、型番:SHX−300X2000L、動力3.75kW)で搾汁した。
(搾汁工程:2回目)
スクリュープレスによる搾汁後の原料をさらに、プラグスクリュー(動力5.5kW)で搾汁した。
(物性の測定)
(1)嵩密度
嵩密度は、20.0L容積の容器にバイオマスを容器受け口から約1.0mの高さから自由落下させながら充填し、容器受け口よりも上の高さにある原料を容器受け口面が水平になるように直線の板を使用し落とし、質量を測定した。次いで、測定された質量を容積(20.0L)で除することで、単位容積当たりの質量を算出した。湿潤基準では、原料をそのまま用いて測定した嵩密度を示し、渇き基準では、別途測定した原料中含水率の値を元に計算した嵩密度を示す。
(2)含水率
含水率は、渇き基準で、原料中の水分の質量を原料の乾燥質量(すなわち、原料中の固形分の質量)で除した割合として算出した。原料中の水分の質量は、加熱乾燥式水分計(A&D社製、型番:ML−50)を用いて測定した。
(3)灰分
適量の原料を105℃で恒量になるまで乾燥した後に、600℃で強熱し残存物を灰分としてその質量減から乾燥質量当たりの灰分量を測定した。
(4)原料中の遊離糖の含有量
各原料を搾汁した際に得られる搾汁液中に含まれる遊離糖(キシロース及びグルコース)の含有量は、HPLC(島津製作所製、検出器:FLD、カラムオーブン:CTO−20A)を用いて測定した。原料を搾汁した際の遊離糖の挙動は、遊離糖は原料中の水分中に可溶して存在していることから水の挙動に従う為、搾汁後の原料に残る水分中の遊離糖濃度は、搾汁液中に含まれる遊離糖濃度と同じである。上記より搾汁前原料に含まれている糖濃度を計算して求めた。
(5)pH1.0の希硫酸添加後の原料中のpH
洗浄後の原料(以下、「搾汁前原料」と称する場合がある)、スクリュープレスによる搾汁後の原料(以下、「搾汁原料1」と称する場合がある)、及び、プラグスクリューによる搾汁後の原料(以下、「搾汁原料2」と称する場合がある)に、pH1.0の希硫酸溶液を添加し、希硫酸蒸解法により加水分解反応を行った。加水分解反応後の原料をジューサーで破砕し、破砕液のpHを測定した。
各原料の物性を以下の表1に示す。また、各原料の画像を図6に示す。
表1に示すように、渇き基準含水率が68.4質量%である搾汁原料2では、搾汁前原料と比較して、灰分及び遊離糖の含有量が低減されており、pH1.0の希硫酸添加後の原料中のpHが1.09と低く、加水分解反応において十分な分解強度が発現できることが示唆された。一方、渇き基準含水率が156.4質量%である搾汁原料1では、搾汁前原料と比較して、灰分の含有量は低減されているが、遊離糖の含有量が4.5wt%−dryと半量程度残っており、さらに、pH1.0の希硫酸添加後の原料中のpHが1.16と高かった。
[実施例2]
実施例1と同様の方法を用いて、破砕及び洗浄を行ったネピアグラスを原料として用いた。
(搾汁工程)
実施例1と同様のスクリュープレス及びプラグスクリューを用いて、スクリュープレスを用いて搾汁工程を1回行った試料、スクリュープレス及びプラグスクリューを用いて搾汁工程を2回行った試料をそれぞれ複数サンプル調製し、搾汁前の原料も含めて、含水率が異なるサンプル(渇き基準含水率:43質量%以上300質量%以下の範囲内)を得た。
(加水分解工程)
搾汁前原料、搾汁原料1、及び、搾汁原料1に、pH1.0の希硫酸溶液を添加し、希硫酸蒸解法により加水分解反応を行った。
(糖化工程)
次いで、加水分解反応後の各原料を10dry−wt%となるように水を添加して、分散させた希釈溶液を調製した。次いで、希釈後の各原料に糖化酵素(セルラーゼ及びヘミセルラーゼ)を加えて、恒温シェイカーで48時間糖化反応させた。糖化後の溶液中のキシロース及びグルコースの量をHPLC(島津製作所製、検出器:FLD、カラムオーブン:CTO−20A)を用いて測定した。グルコース濃度、キシロース濃度及び糖濃度(グルコース及びキシロースの合計濃度)の測定結果をそれぞれ図7A、図7B及び図7Cに示す。
図7A〜図7Cから、原料の渇き基準の含水率が100質量%未満である原料では、糖濃度(グルコース及びキシロースの合計濃度)が40g/L超であり、糖回収量が良好であることが明らかとなった。この糖回収量の向上は、原料の渇き基準の含水率が100質量%未満であることで希硫酸添加後の原料中のpHの緩衝を低減できることが主な要因であるが、当該要因に加えて、搾汁工程により不純物を含む灰分が取り除かれたことで原料中のセルロース及びヘミセルロースの純度が高められたこと、さらに、図6に示すように、搾汁により原料が細かく砕かれて比表面積が大きくなり、触媒との接触機会が増加したことによるものであると推察された。
本実施形態の前処理方法によれば、草本系バイオマスからの糖回収量が良好な草本系バイオマスの前処理方法を提供することができる。本実施形態の糖化液の製造方法は、前記前処理方法で得られた草本系バイオマスの加水分解物を用いており、糖化液を効率よく製造することができる。本実施形態の草本系バイオマス由来発酵生成物の製造方法は、前記糖化液の製造方法で得られた糖化液を用いており、草本系バイオマス由来発酵生成物を効率よく製造することができる。
1:搾汁機、1a:第1の搾汁機、1b:第2の搾汁機、2:触媒供給装置、3:圧入装置、4:加水分解処理装置、11:糖化装置、12:発酵装置、5a,5b,5c,5d,5e,5f,5g,5h,5i,5j,5k…配管、10,20…草本系バイオマスの前処理装置、30,40…糖化液の製造装置、100…草本系バイオマス由来発酵生成物の製造装置

Claims (12)

  1. 草本系バイオマスを搾汁する搾汁工程と、
    前記搾汁工程後の草本系バイオマスに、触媒を添加する触媒添加工程と、
    前記触媒添加工程後の草本系バイオマスを加水分解処理装置に圧入する圧入工程と、
    前記圧入工程後の草本系バイオマスを加水分解する加水分解工程と、
    をこの順に含み、
    前記草本系バイオマスの乾燥質量に対する、前記搾汁工程後であって、触媒添加工程前の草本系バイオマス中の水分の含有量が100質量%未満であり、
    前記触媒が酸又はアルカリであり、
    前記搾汁工程前に、5分〜60分の間の時間、蒸気で前記草本系バイオマスを加熱する工程を含まない、草本系バイオマスの前処理方法。
  2. 前記草本系バイオマスの乾燥質量に対する、前記搾汁工程後であって、触媒添加工程前の草本系バイオマス中の水分の含有量が82質量%以下である、請求項1に記載の草本系バイオマスの前処理方法。
  3. 前記草本系バイオマスの乾燥質量に対する、草本系バイオマス中の水分の含有量が100質量%超である草本系バイオマスが原料である、請求項1又は2に記載の草本系バイオマスの前処理方法。
  4. 前記搾汁工程を2回以上行う、請求項1〜3のいずれか一項に記載の草本系バイオマスの前処理方法。
  5. 前記草本系バイオマスの乾燥質量に対する、最終回の前記搾汁工程後の草本系バイオマス中の水分の含有量が、前記草本系バイオマスの乾燥質量に対する、最終回より前の前記搾汁工程後の草本系バイオマス中の水分の含有量以下である、請求項に記載の草本系バイオマスの前処理方法。
  6. 前記搾汁工程において、搾汁機構を有する装置により草本系バイオマスを搾汁し、前記装置によって前記草本系バイオマスに加えられる剪断力により前記草本系バイオマスを破砕する、請求項4又は5に記載の草本系バイオマスの前処理方法。
  7. 前記搾汁工程は、スクリュープレスを用いて搾汁を行なった後、プラグスクリューを用いて搾汁を行う2段階の搾汁である、請求項4〜6のいずれか一項に記載の草本系バイオマスの前処理方法。
  8. 前記搾汁工程の前に、前記草本系バイオマスに水を添加し、洗浄する洗浄工程を更に含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の草本系バイオマスの前処理方法。
  9. 前記触媒が、硫酸、塩酸、硝酸及びリン酸からなる群より選ばれる1種以上の酸、又は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びアンモニアからなる群より選ばれる1種以上のアルカリである、請求項1〜のいずれか一項に記載の草本系バイオマスの前処理方法。
  10. 請求項1〜のいずれか一項に記載の草本系バイオマスの前処理方法で得られた草本系バイオマスの加水分解物を酵素で糖化する糖化工程を含む、糖化液の製造方法。
  11. 前記糖化工程において、前記搾汁工程で排出される搾汁液を前記加水分解物に混合して、酵素で糖化する、請求項10に記載の糖化液の製造方法。
  12. 請求項10又は11に記載の糖化液の製造方法で得られた糖化液を微生物で発酵する発酵工程を含む、草本系バイオマス由来発酵生成物の製造方法。
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