以下、本開示の実施形態に係る貫通電極基板の構成ついて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は本開示の実施形態の一例であって、本開示はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本明細書において、「基板」、「基材」、「シート」や「フィルム」など用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「基板」や「基材」は、シートやフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念である。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
先ず、図1を参照しながら、本開示の貫通電極基板の一例について説明する。図1は、本実施形態による貫通電極基板1を示す断面図である。本実施形態の貫通電極基板1は、例えば、光学用途のインターポーザ基板に用いることができる。
図1に示すように、本実施形態の貫通電極基板1は、透明基板2と、第2密着層の一例である側壁密着層31と、第1密着層の一例である第1面密着層32および第2面密着層33と、貫通電極4と、導電層の一例である第1面導電層51および第2面導電層52と、有機層6と、を備える。
(透明基板2)
透明基板2は、可視光に対する透過性を有する基板であり、例えば、石英ガラス、無アルカリガラス、ソーダライムガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材が挙げられる。この種の透明基板2は、透明性が要求される貫通電極基板1に好適に用いることができる。特に無アルカリガラスは信頼性とコストの点で好ましい。
透明基板2は、第1表面21と、第1表面21の反対側の第2表面22とを有する。図1の例において、第1表面21と第2表面22とは互いに平行である。透明基板2の内部に貫通電極4を位置させるため、透明基板2には、第1表面21から第2表面22まで透明基板2を貫通する貫通孔23が設けられている。
貫通孔23は、第1表面21に直交すなわち交差する透明基板2の厚み方向D1に垂直な断面において円形状を有する。また、図示はしないが、貫通孔23は、第1表面21に沿った第1表面21の面方向D2に間隔を空けて複数設けられている。
また、図1の例において、貫通孔23の内径は、第1表面21から第2表面22に至るまで殆ど変化しない。すなわち、図1の貫通孔23は、厚み方向D1に沿ってストレートな円筒形状の側壁231を有している。後述の図18(a)〜図18(c)に示すように、貫通孔23の内径は、第1表面21および第2表面22の一方から他方に向かって変化してもよい。
貫通孔23は、面方向D2の寸法すなわち内径φに対する厚みTの比T/φであるアスペクト比が、3以上33以下であることが望ましい。一例として、貫通孔23の内径φは、15μm以上100μm以下であり、貫通孔23の厚みTは、300μm以上500μm以下である。貫通孔23のアスペクト比T/φを3以上とすることで、貫通孔23の内径φを抑制できるので、貫通電極4の配線密度を高めることができる。貫通孔23のアスペクト比T/φを33以下とすることで、貫通孔23の内部に貫通電極4を形成するために十分な内径φを確保することができる。
(側壁密着層31)
側壁密着層31は、貫通孔23の側壁231上に位置し、透明基板2および貫通電極4の双方への密着性および絶縁性を有する層である。
側壁密着層31を介した透明基板2と貫通電極4との密着性は、側壁密着層31が無い場合の透明基板2と貫通電極4との直接的な密着性より高い。このような密着性の大小関係は、側壁密着層31を介して側壁231上に形成した貫通電極4を剥離することを模擬した剥離試験と、側壁231上に直接形成した貫通電極4を剥離することを模擬した剥離試験とを実施し、双方の剥離試験における剥離力を比較することで確認することができる。剥離試験としては、JIS H 8504に規定されているめっきの密着性試験方法のうち、テープ試験を用いることができる。テープ試験は、めっき皮膜に粘着力のあるテープを貼り付けて急速に引き剥がす試験である。テープを引き剥がすとき、めっき皮膜の密着性が悪いほど、テープ粘着面に付着するめっき皮膜の量、すなわちめっき皮膜の剥離量が多くなる。めっき皮膜の剥離量が多いほど、めっき皮膜の剥離に要する剥離力は小さい。テープ試験によれば、透明基板上に密着層を介して形成されためっき皮膜にテープを貼り付けて引き剥がした場合のめっき皮膜の剥離量と、透明基板上に直接形成されためっき皮膜にテープを貼り付けて引き剥がした場合のめっき皮膜の剥離量とを比較することで、密着層の有無に応じた剥離力を比較することができる。
なお、密着層の大小関係は、実施例において説明する「JIS K5600 塗料一般試験方法」に規定されているクロスカット試験法によって確認することもできる。
側壁密着層31は、有機物を含有する。有機物を含有することで、側壁密着層31は、
透明基板2および貫通電極4との間で高い密着性を発揮することができる。
側壁密着層31に含有される有機物は、側壁密着層31上に無電解めっき法で貫通電極4のシード層を形成する場合における金属析出性と薬液耐性との双方を有することが望ましい。このような有機物としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂などの高分子樹脂を好適に用いることができる。なお、高分子樹脂は、無機酸化膜や有機単分子膜と比較して、側壁231上に均一に側壁密着層31が形成されているか否かを判断し易いので、生産性の向上に寄与することもできる。
側壁密着層31の厚みは、15nm以上200nm以下であることが望ましい。側壁密着層31の厚みを15nm以上とすることで、側壁密着層31上に無電解めっき法で貫通電極4のシード層を形成する場合に、側壁密着層31に十分な量の触媒を吸着させることができるので、貫通電極4のシード層の析出性を向上させることができる。側壁密着層31の厚みを200nm以下とすることで、無電解めっきの後工程として実施される各種の加熱工程において側壁密着層31から発生するガスの総量を抑制することができるので、ガスの圧力による貫通電極4の変形およびこれにともなう電気的特性の悪化を抑制することができる。
側壁密着層31は、例えば、ディップコート、スプレーコート、およびスピンコートなどのウェットプロセスを用いて形成してもよい。
(第1面密着層32)
第1面密着層32は、第1表面21上に位置し、透明基板2および第1面導電層51の双方への密着性および絶縁性を有する層である。
図2は、本実施形態による貫通電極基板1において、貫通電極4と第1面導電層51との境界部分を示す拡大断面図である。図2に示すように、第1面密着層32は、第1部分の一例である第1面第1密着層321と、第2部分の一例である第1面第2密着層322とを有する。
第1面第1密着層321は、後述する第1面パッド部512の透明基板2への密着性を高めることを意図して設けられた層である。このため、第1面第1密着層321は、第1面パッド部512の形成領域に対応するように、第1表面21における貫通孔23の周辺の第1領域の一例である第1面第1領域211上に位置する。また、第1面第1密着層321は、貫通孔23の開口231a側の一端すなわち内周端において、第1表面21側の側壁密着層31の一端に連続している。
図2の例において、第1表面21側の側壁231の一端231aである貫通孔23の開口231aは、平面視した場合に円形状を有する。このため、貫通孔23の開口231aを囲む第1面第1領域211と、第1面第1領域211上に位置する第1面第1密着層321とは、貫通孔23とほぼ同心の円環形状を有する。なお、第1面第1密着層321の形状は、貫通孔23の開口形状に応じて異なってよい。
第1面第2密着層322は、後述する第1面配線部511の透明基板2への密着性を高めることを意図して設けられた層である。このため、第1面第2密着層322は、第1面配線部511の形成領域に対応するように、第1表面21における第1領域の外側の第2領域の一例である第1面第2領域212上に位置する。また、面方向D2に間隔を空けて第1表面21上に位置される第1面配線部511に対応するように、第1面第2密着層322は、面方向D2に間隔を空けて部分的に第1面第2領域212上に位置する。
配線幅W511が細いため透明基板2から剥がれ易い第1面配線部511の密着性を向上させるため、図2の例において、第1面第2密着層322は、第1面第1密着層321との間で以下の関係式を満足する。
t321<t322 (1)
但し、数式(1)において、t321は、第1面第1密着層321の厚みである。t322は、第1面第2密着層322の厚みである。
図2の例において、第1面第1密着層321および第1面第2密着層322は、それぞれがほぼ一定の厚みを有している。数式(1)は、第1面第1密着層321および第1面第2密着層322のそれぞれが勾配を有する場合にも、各層のそれぞれの任意の位置の厚み同士の間で成立してもよい。
数式(1)は、第1面第2密着層322が全体的に第1面第1密着層321よりも厚みが厚いことを示している。言い換えれば、数式(1)は、第1面第1密着層321が、面方向D2の全範囲において第1面第2密着層322よりも厚みが薄いことを示している。
数式(1)に示すように、第1面第2密着層322の厚みt322は、第1面第1密着層321の厚みt321より厚い。これにより、図2に示される第1面パッド部512の配線幅W512よりも細い配線幅W511を有する第1面配線部511を、透明基板2上に十分な密着力で密着させることができる。なお、図2の例においては、第1面パッド部512の配線幅W512および第1面配線部511の配線幅W511として、各部511、512の面方向D2の寸法のうち最小の寸法を想定している。具体的には、第1面パッド部512の配線幅W512は、貫通孔23の外周縁上で周回する無端の第1面パッド部512を周方向に直交する切断線で切断したときに現れる断面についての面方向D2の寸法である。第1面配線部511の配線幅W511は、第1面配線部511の延伸方向に直交する方向の寸法である。
第1面第2密着層322の厚みt322は、第1面第1密着層321の厚みt321より40nm以上厚くてもよい。すなわち、第1面第2密着層322は、全体的に第1面第1密着層321よりも40nm以上厚みが厚くてもよい。40nm以上厚みが厚いことで、第1面配線部511の密着性を更に高めることができる。
第1面第1密着層321の長さは、最大で40μmであってもよい。
第1面密着層32を介した透明基板2と第1面導電層51との密着性は、第1面密着層32が無い場合の透明基板2と第1面導電層51との直接的な密着性より高い。このような密着性の大小関係は、第1面密着層32を介して第1表面21上に形成した第1面導電層51を剥離することを模擬した剥離試験と、第1表面21上に直接形成した第1面導電層51を剥離することを模擬した剥離試験とを実施し、双方の剥離試験における第1面導電層51の剥離力を比較することで確認することができる。剥離試験としては、JIS H 8504に規定されているめっきの密着性試験方法のうち、テープ試験、または、「JIS K5600 塗料一般試験方法」に規定されているクロスカット試験法を用いることができる。
側壁密着層31と同様に、第1面密着層32は、有機物を含有する。有機物を含有することで、第1面密着層32は、透明基板2および第1面導電層51との間で高い密着性を発揮することができる。
側壁密着層31と同様に、第1面密着層32に含有される有機物は、第1面密着層32上に無電解めっき法で第1面導電層51のシード層を形成する場合における金属析出性と薬液耐性との双方を有することが望ましい。このような有機物としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂などの高分子樹脂を好適に用いることができる。なお、高分子樹脂は、無機酸化膜や有機単分子膜と比較して第1表面21上に均一に第1面密着層32が形成されているか否かを判断し易いので、生産性の向上に寄与することもできる。
側壁密着層31と同様に、第1面密着層32の厚みは、15nm以上200nm以下であることが望ましい。第1面密着層32の厚みを15nm以上とすることで、第1面密着層32上に無電解めっき法で第1面導電層51のシード層を形成する場合に、第1面密着層32に十分な量の触媒を吸着させることができるので、第1面導電層51のシード層の析出性を向上させることができる。第1面密着層32の厚みを200nm以下とすることで、無電解めっき後の加熱工程において第1面密着層32から発生するガスの総量を抑制することができるので、ガスの圧力による第1面導電層51の膨張およびこれにともなう電気的特性の悪化を抑制することができる。
第1面密着層32すなわち第1面第1密着層321および第1面第2密着層322は、後述する第1面導電層51の複数の第1面配線部511および第1面パッド部512に対応するように、面方向D2に間隔を空けて部分的に第1表面21上に位置している。第1面配線部511および第1面パッド部512に対応するように面方向D2に間隔を空けて部分的に第1表面21上に位置しているため、複数の第1面配線部511間には第1面密着層32が存在しない。このような構成によれば、後述する複数の第1面配線部511間におけるマイグレーションを抑制することができる。
第1面密着層32は、例えば、ディップコート、スプレーコート、およびスピンコートなどのウェットプロセスによって側壁密着層31と同一材料で同時に形成してもよい。
(第2面密着層33)
第2面密着層33は、第2表面22上に位置し、透明基板2および第2面導電層52の双方への密着性および絶縁性を有する層である。
図3は、本実施形態による貫通電極基板1において、貫通電極4と第2面導電層52との境界部分を示す拡大断面図である。図3に示すように、第2面密着層33は、第1部分の一例である第2面第1密着層331と、第2部分の一例である第2面第2密着層332とを有する。
第2面第1密着層331は、後述する第2面パッド部522の透明基板2への密着性を高めることを意図して設けられた層である。このため、第2面第1密着層331は、第2面パッド部522の形成領域に対応するように、第2表面22における貫通孔23の周辺の第1領域の一例である第2面第1領域221上に位置する。また、第2面第1密着層331は、貫通孔23の開口231b側の一端すなわち内周端において、第2表面22側の側壁密着層31の一端に連続している。
図3の例において、第2表面22側の側壁231の一端231bである貫通孔23の開口231bは、平面視した場合に円形状を有する。このため、貫通孔23の開口231bを囲む第2面第1領域221と、第2面第1領域221上に位置する第2面第1密着層331とは、貫通孔23とほぼ同心の円環形状を有する。なお、第2面第1密着層331の形状は、貫通孔23の開口形状に応じて異なってよい。
第2面第2密着層332は、後述する第2面配線部521の透明基板2への密着性を高めることを意図して設けられた層である。このため、第2面第2密着層332は、第2面配線部521の形成領域に対応するように、第2表面22における第1領域の外側の第2領域の一例である第2面第2領域222上に位置する。また、面方向D2に間隔を空けて第2表面22上に位置される第2面配線部521に対応するように、第2面第2密着層332は、面方向D2に間隔を空けて部分的に第2面第2領域222上に位置する。
配線幅W521が細いため透明基板2から剥がれ易い第2面配線部521の密着性を向上させるため、図3の例において、第2面第2密着層332は、第2面第1密着層331との間で以下の関係式を満足する。
t331<t332 (2)
但し、数式(2)において、t331は、第2面第1密着層331の厚みである。t332は、第2面第2密着層332の厚みである。
図3の例において、第2面第1密着層331および第2面第2密着層332は、それぞれがほぼ一定の厚みを有している。数式(2)は、第2面第1密着層331および第2面第2密着層332のそれぞれが勾配を有する場合にも、各層のそれぞれの任意の位置の厚み同士の間で成立してもよい。
数式(2)は、第2面第2密着層332が全体的に第2面第1密着層331よりも厚みが厚いことを示している。言い換えれば、数式(2)は、第2面第1密着層331が、面方向D2の全範囲において第2面第2密着層332よりも厚みが薄いことを示している。
数式(2)に示すように、第2面第2密着層332の厚みt332は、第2面第1密着層331の厚みt331より厚い。これにより、図3に示される第2面パッド部522の配線幅W522よりも細い配線幅W521を有する第2面配線部521を、透明基板2上に十分な密着力で密着させることができる。なお、図3の例においては、第2面パッド部522の配線幅W522および第2面配線部521の配線幅W521として、各部521、522の面方向D2の寸法のうち最小の寸法を想定している。具体的には、第2面パッド部522の配線幅W522は、貫通孔23の外周縁上で周回する無端の第2面パッド部522を周方向に直交する切断線で切断したときに現れる断面についての面方向D2の寸法である。第2面配線部521の配線幅W521は、第2面配線部521の延伸方向に直交する方向の寸法である。
第2面第2密着層332の厚みt332は、第2面第1密着層331の厚みt331より40nm以上厚くてもよい。すなわち、第2面第2密着層332は、全体的に第2面第1密着層331よりも40nm以上厚みが厚くてもよい。40nm以上厚みが厚いことで、第2面配線部521の密着性を更に高めることができる。
第2面第1密着層331の長さは、最大で40μmであってもよい。
第2面密着層33を介した透明基板2と第2面導電層52との密着性は、第2面密着層33が無い場合の透明基板2と第2面導電層52との直接的な密着性より高い。このような密着性の大小関係は、第2面密着層33を介して第2表面22上に形成した第2面導電層52を剥離することを模擬した剥離試験と、第2表面22上に直接形成した第2面導電層52を剥離することを模擬した剥離試験とを実施し、双方の剥離試験における第2面導電層52の剥離力を比較することで確認することができる。剥離試験としては、JIS H 8504に規定されているめっきの密着性試験方法のうち、テープ試験、または、「JIS K5600 塗料一般試験方法」に規定されているクロスカット試験法を用いることができる。
側壁密着層31と同様に、第2面密着層33は、有機物を含有する。有機物を含有することで、第2面密着層33は、透明基板2および第2面導電層52との間で高い密着性を発揮することができる。
側壁密着層31と同様に、第2面密着層33に含有される有機物は、第2面密着層33上に無電解めっき法で第2面導電層52のシード層を形成する場合における金属析出性と薬液耐性との双方を有することが望ましい。このような有機物としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂などの高分子樹脂を好適に用いることができる。なお、高分子樹脂は、無機酸化膜や有機単分子膜と比較して第2表面22上に均一に第2面密着層33が形成されているか否かを判断し易いので、生産性の向上に寄与することもできる。
側壁密着層31と同様に、第2面密着層33の厚みは、15nm以上200nm以下であることが望ましい。第2面密着層33の厚みを15nm以上とすることで、第2面密着層33上に無電解めっき法で第2面導電層52のシード層を形成する場合に、第2面密着層33に十分な量の触媒を吸着させることができるので、第2面導電層52のシード層の析出性を向上させることができる。第2面密着層33の厚みを200nm以下とすることで、無電解めっき後の加熱工程において第2面密着層33から発生するガスの総量を抑制することができるので、ガスの圧力による第2面導電層52の膨張およびこれにともなう電気的特性の悪化を抑制することができる。
第2面密着層33すなわち第2面第1密着層331および第2面第2密着層332は、後述する第2面導電層52の複数の第2面配線部521および第2面パッド部522に対応するように、面方向D2に間隔を空けて部分的に第2表面22上に位置している。したがって、複数の第2面配線部521間には第2面密着層33が存在しない。このような構成によれば、後述する複数の第2面配線部521間におけるマイグレーションを抑制することができる。
第2面密着層33は、例えば、ディップコート、スプレーコート、およびスピンコートなどのウェットプロセスによって側壁密着層31および第1面密着層32と同一材料で同時に形成してもよい。
(貫通電極4)
貫通電極4は、貫通孔23の内部において側壁密着層31上に位置し、且つ導電性を有する部材である。図1の例において、貫通電極4の厚みは、貫通孔23の幅すなわち内径よりも小さく、このため、貫通孔23の内部には、貫通電極4が存在しない空間がある。すなわち、貫通電極4は、いわゆるコンフォーマルビアである。なお、図1の例において、貫通孔23の内部の空間は、貫通電極4の内側に位置する有機層6で埋められている。
図1に示すように、貫通電極4は、第3導電層の一例として、側壁密着層31上に位置するシード層7と、第4導電層の一例として、シード層7上に位置するめっき層8とを有する。
シード層7は、電解めっき法によってめっき層8を形成する電解めっき工程の際に、めっき液中の金属イオンを析出させてめっき層8を成長させるための土台となる、導電性を有する層である。
シード層7の材料としては、銅などの導電性を有する材料を用いることができる。シード層7の材料は、めっき層8の材料と同一であってもよく、異なっていてもよい。例えば、シード層7は、チタンと銅を順に積層した積層膜や、クロムなどであってもよい。シード層7は、例えば、無電解めっき法で形成することができる。
めっき層8は、電解めっき法によって形成される、導電性を有する層である。めっき層8は、例えば、銅を含有する。めっき層8は、銅と、銅以外の金属、例えば、金、銀、白金、ロジウム、スズ、アルミニウム、ニッケル、クロムとの合金を含有していてもよく、または、銅と銅以外の金属とを積層したものであってもよい。
また、シード層7およびめっき層8は、タングステン、チタン、タンタルその他の高融点化合物を主成分として含有していてもよい。
(第1面導電層51)
第1面導電層51は、第1面密着層32上に位置し、且つ導電性を有する層である。第1面導電層51は、複数の第1面配線部511と、第1面パッド部512とを有する。
より具体的には、第1面導電層51のうち第1面パッド部512は、第1面第1領域211上において、貫通電極4の第1表面21側の端部に連続している。これにより、第1面パッド部512は、貫通電極4と電気的に接続されている。既述したように、図2の例における第1面パッド部512は、平面視した場合に貫通孔23と同心の円環形状を呈する。
図2の例において、第1面パッド部512は、第1面第1密着層321上に位置している。
貫通電極4と同様に、第1面パッド部512は、第1導電層の一例として、第1面密着層32上に位置するシード層7と、第2導電層の一例として、シード層7上に位置するめっき層8とを有する。第1面パッド部512のシード層7およびめっき層8は、貫通電極4のシード層7およびめっき層8と共通、すなわち同一成分を含有する。
複数の第1面配線部511は、面方向D2に間隔を空けて第1面密着層32上に位置する。各第1面配線部511の少なくとも1つは、貫通電極4と電気的に接続されていてもよい。貫通電極4と同様に、各第1面配線部511は、第1導電層の一例として、第1面密着層32上に位置するシード層7と、第2導電層の一例として、シード層7上に位置するめっき層8とを有する。第1面配線部511のシード層7およびめっき層8は、貫通電極4のシード層7およびめっき層8と共通、すなわち同一成分を含有する。
なお、各第1面配線部511に覆われた第1面密着層32は、各第1面配線部511のそれぞれに対応するように面方向D2に間隔を空けて第1表面21上に位置する。図1の例において、隣り合う第1面配線部511同士の間には第1面密着層32が存在しない。これにより、隣り合う第1面配線部511同士の間で、第1面密着層32の表面を伝った金属の移動によるマイグレーションが生じることを抑制することができる。
(第2面導電層52)
第2面導電層52は、第2面密着層33上に位置し、且つ導電性を有する層である。第2面導電層52は、複数の第2面配線部521と、第2面パッド部522とを有する。
より具体的には、第2面パッド部522は、第2面第1領域221上において、貫通電極4の第2表面22側の端部に連続している。これにより、第2面パッド部522は、貫通電極4と電気的に接続されている。既述したように、図3の例における第2面パッド部522は、平面視した場合に貫通孔23と同心の円環形状を呈する。
図3の例において、第2面パッド部522は、第2面第1密着層331上に位置している。
貫通電極4と同様に、第2面パッド部522は、第1導電層の一例として、第2面密着層33上に位置するシード層7と、第2導電層の一例として、シード層7上に位置するめっき層8とを有する。第2面パッド部522のシード層7およびめっき層8は、貫通電極4のシード層7およびめっき層8と共通、すなわち同一成分を含有する。
複数の第2面配線部521は、面方向D2に間隔を空けて第2面密着層33上に位置する。各第2面配線部521の少なくとも1つは、貫通電極4と電気的に接続されていてもよい。貫通電極4と同様に、各第2面配線部521は、第1導電層の一例として、第2面密着層33上に位置するシード層7と、第2導電層の一例として、シード層7上に位置するめっき層8とを有する。第2面配線部521のシード層7およびめっき層8は、貫通電極4のシード層7およびめっき層8と共通、すなわち同一成分を含有する。
なお、各第2面配線部521に覆われた第2面密着層33は、各第2面配線部521のそれぞれに対応するように面方向D2に間隔を空けて第2表面22上に位置する。図1の例において、隣り合う第2面配線部521同士の間には第2面密着層33が存在しない。これにより、第2面配線部521同士の間で、第2面密着層33の表面を伝った金属の移動によるマイグレーションが生じることを抑制することができる。
(有機層6)
有機層6は、貫通孔23の内部に位置する、絶縁性を有する層である。有機層6の有機材料としては、ポリイミドやエポキシ樹脂などを用いることができる。
(貫通電極基板1の製造方法)
以下、貫通電極基板1の製造方法の一例について、図1乃至図11を参照して説明する。
(貫通孔形成工程)
図4は、本実施形態による貫通電極基板1の製造方法を示す断面図である。まず、透明基板2を準備する。透明基板2を準備した後、図4に示すように、第1表面21から第2表面22まで透明基板2を貫通する貫通孔23を透明基板2に形成する。貫通孔23の形成方法としては、例えば、レーザ照射を用いることができる。レーザとしては、エキシマレーザ、Nd:YAGレーザ、フェムト秒レーザ等を用いることができる。Nd:YAGレーザを採用する場合、波長が1064nmの基本波、波長が532nmの第2高調波、波長が355nmの第3高調波等を用いることができる。
また、レーザ照射とウェットエッチングを適宜組み合わせることもできる。具体的には、まず、レーザ照射によって透明基板2のうち貫通孔23が形成されるべき領域に変質層を形成する。続いて、透明基板2をフッ化水素などに浸漬して、変質層をエッチングする。これによって、透明基板2に貫通孔23を形成することができる。
レーザ照射以外にも、透明基板2に研磨材を吹き付けるブラスト処理や、反応性イオンエッチング法、深掘り反応性イオンエッチング法などのドライエッチング法などによって透明基板2に貫通孔23を形成してもよい。
(密着層形成工程)
図5は、図4に続く本実施形態による貫通電極基板1の製造方法を示す断面図である。貫通孔23を形成した後、図5に示すように、貫通孔23の側壁231上への側壁密着層31の形成と、第1表面21上への第1面密着層32の形成と、第2表面22上への第2面密着層33の形成とを行う。具体的には、第1面第1領域211上への第1面第1密着層321の形成と、第1面第2領域212上への第1面第2密着層322の形成と、第2面第1領域221上への第2面第1密着層331の形成と、第2面第2領域222上への第2面第2密着層332の形成とを行う。
密着層31〜33は、例えば、15〜200nmの厚みに形成する。具体的には、第1面第2密着層322を全体的に第1面第1密着層321より厚く形成し、第2面第2密着層332を全体的に第2面第1密着層331より厚く形成する。
密着層31〜33の形成は、例えば、ディップコート、スプレーコートまたはスピンコートなどのウェットプロセスで行うことができる。このうち、ディップコートによれば、すべての密着層31〜33を同時に形成することができるので、製造効率を向上させることができる。
(シード層形成工程)
図6は、図5に続く本実施形態による貫通電極基板1の製造方法を示す断面図である。密着層31〜33を形成した後、図6に示すように、密着層31〜33上にシード層7を形成する。シード層7は、例えば200〜500nmの厚みに形成する。以下、密着層31〜33が形成された透明基板2のことを、単に透明基板2とも呼ぶ。
シード層7の形成においては、先ず、透明基板2を洗浄と、透明基板2の濡れ性を上げるための表面改質とを行う。洗浄および表面改質は、例えば、PH2以下の酸性水溶液またはPH11以上のアルカリ性水溶液を40〜50℃に保持し、当該酸性水浴液またはアルカリ性水溶液中に透明基板2を5〜15分間浸漬することで行うことができる。
洗浄および表面改質を行った後、透明基板2を触媒化する。具体的には、無電解銅めっきの触媒となるPdイオンまたはSn/Pdコロイドを密着層31〜33に吸着させる。触媒化は、例えば、Pdイオンを含有するPH9〜11のアルカリ性水溶液またはSn/Pdコロイドを含有するPH2以下の酸性水溶液を40〜50℃に保持し、当該酸性水浴液またはアルカリ性水溶液中に透明基板2を5〜15分間浸漬することで行うことができる。
触媒化を行った後、密着層31〜33に吸着させたPdイオンのPdへの還元または密着層31〜33に吸着させたSn/PdコロイドにおけるPdの活性化を行う。Pdの還元は、例えば、適当な還元剤を含むPH5〜8の水溶液を50℃に保持し、この水溶液中に透明基板2を1〜5分間浸漬することで行うことができる。Pdの活性化は、例えば、PH2以下の酸性水溶液またはPH11以上のアルカリ性水溶液を50℃に保持し、この水溶液中に透明基板2を1〜5分間浸漬することで行うことができる。
Pdイオンの還元またはPdの活性化を行った後、無電解銅めっきを行う。具体的には、密着層31〜33に吸着されたPdを触媒とし、密着層31〜33上に銅の被膜を形成する。無電解銅めっきは、例えば、銅イオン、水酸化ナトリウムおよびホルマリンを含有するアルカリ性水溶液を30〜40℃に保持し、このアルカリ性水溶液中に透明基板2を5〜30分間浸漬することで行うことができる。
(レジスト層形成工程)
図7は、図6に続く本実施形態による貫通電極基板1の製造方法を示す断面図である。シード層7を形成した後、図7に示すように、貫通電極4、第1面導電層51および第2面導電層52を形成すべき一部の領域を除いて、シード層7上にレジスト層9を形成する。レジスト層9の形成は、例えば、シード層7上にドライフィルムレジストをラミネートし、ラミネートされたドライフィルムレジストを露光および現像することで行うことができる。
(めっき層形成工程)
図8は、図7に続く本実施形態による貫通電極基板1の製造方法を示す断面図である。レジスト層9を形成した後、図8に示すように、レジスト層9をマスクとした電解めっき法により、レジスト層9によって覆われていないシード層7上にめっき層8を形成する。めっき層8は、例えば2〜12μmの厚みに形成する。
(レジスト層除去工程)
図9は、図8に続く本実施形態による貫通電極基板1の製造方法を示す断面図である。めっき層8を形成した後、図9に示すように、透明基板2からレジスト層9を剥離すなわち除去する。レジスト層9は、例えば、アルカリ溶液への浸漬で除去することができる。
(シード層除去工程)
図10は、図9に続く本実施形態による貫通電極基板1の製造方法を示す断面図である。レジスト層9を除去した後、図10に示すように、シード層7のうちレジスト層9が形成されていた部分を除去する。シード層7は、例えば、ウェットエッチングで除去することができる。シード層7を除去することで、貫通電極4と、第1面導電層51と、第2面導電層52とが同時に形成される。
(密着層除去工程)
図11は、図10に続く本実施形態による貫通電極基板1の製造方法を示す断面図である。シード層7を除去した後、図11に示すように、第1面密着層32のうち第1面導電層51で覆われていない部分を除去するとともに、第2面密着層33のうち第2面導電層52で覆われていない部分を除去する。密着層32、33は、例えば、プラズマアッシングやアルカリ浸漬などで除去することができる。
(有機層形成工程)
密着層32、33を除去した後、図1に示すように、貫通孔23の内部に有機層6を形成する。具体的には、先ず、有機層6を構成するための樹脂層を含むフィルムを、透明基板2の第1表面21上及び第2表面22上に配置する。次いで、フィルムを加圧することにより、樹脂層を貫通孔23の内部に押し込む。その後、貫通孔23の内部に押し込まれた樹脂層を、樹脂層に光を照射することなどによって硬化させる。また、樹脂層の不要部分を除去する。このようにして、貫通孔23の内部に有機層6を設けることができる。
(実施例)
以下、第1の実施形態の実施例として、貫通電極基板1の試料に対して実施した観察および電気検査の結果について説明する。
実施例では、密着層の厚みが互いに異なる試料No.1〜No.7の7つの試料を作製した。各試料の作製にあたっては、先ず、各試料に共通の透明基板2として、厚み450nmの無アルカリガラスに90μmφすなわちアスペクト比:5の貫通孔23を形成した透明基板2を準備した。
透明基板2上への密着層31〜33の形成においては、ポリイミドを主成分とする有機樹脂を、各試料毎にディップコートの有無または速度を変えて異なる厚みに形成した。具体的には、試料No.1については、ディップコートを行わず、密着層31〜33を形成しなかった。その他の試料の密着層31〜33の厚みは、試料No.2については15nm、試料No.3については22nm、試料No.4については98nm、試料No.5については185nm、試料No.6については203nm、試料No.7については210nmとした。
シード層7の形成においては、各試料とも、無電解めっき法によって500nmの厚みを有するようにシード層7を形成した。
シード層7上へのレジスト層9の形成においては、各試料とも、日立化成社製のRY5319をラミネートした後、膜表面から100μm離れた位置にフォトマスクを配置して、プロキシミティアライナにより、超高圧水銀ランプでパターン露光した。パターン露光後、液温30℃、濃度1%の炭酸ナトリウム水溶液中に透明基板2を1分間浸漬して現像を行うことで、レジスト層9の未硬化部分を除去した。
シード層7上へのめっき層8の形成においては、各試料とも、電解銅めっき法によって、レジスト層9で覆われていないシード層7上に5μmの厚みを有するように、めっき層8を形成した。
めっき層8の形成後のレジスト層9の除去においては、各試料とも、濃度3%の水酸化ナトリウム水溶液を用いて3分間のスプレー剥離を行うことで、透明基板2からレジスト層9を剥離した。
レジスト層9の除去後のシード層7の除去においては、各試料とも、銅除去剤であるメック社製SF−5420に透明基板2を1分間浸漬するウェットエッチングを行うことで、シード層7を除去した。
シード層7の除去後の密着層32、33の除去においては、プラズマ照射により、めっき層8で覆われていない配線部間および配線部とパッド部との間の密着層32、33を除去した。
密着層32、33の除去後は、各試料とも、窒素雰囲気下において200℃で30分間のアニール処理を行った。
以上のようにして作製された試料No.1〜No.7に対して、シード層の析出状態の観察と、アニール処理後のシード層の膨張状態の観察と、「JIS K5600 塗料一般試験方法」に規定されているクロスカット試験法によるシード層の剥離状態の観察とを行った。観察には、電子顕微鏡を使用した。また、電気検査として、シード層による電気信号の導通検査を行った。なお、クロスカット試験法は、既述したテープ試験と類似している。クロスカット試験法では、シード層が形成された透明基板の試験面に、カッターで透明基板に達する碁盤目状の切り傷を形成する。そして、碁盤目部分にテープを強く圧着させ、テープの端を45°の角度で一気に引き剥がし、碁盤目部分の状態を標準図と比較して評価する。実施例の観察結果および電気検査結果を以下の表1および図12(a)〜図12(c)に示す。
表1中の“○”は、結果が良好であることを示している。一方、表1中の“×”は、結果が悪いことを示している。また、図12(a)は、試料No.2〜試料No.6に示される本実施形態による貫通電極基板1において、透明基板2上へのシード層7の形成状態を模式的に示す平面図である。図12(b)は、試料No.1に示される第1の比較例による貫通電極基板において、透明基板2上へのシード層7の形成状態を模式的に示す平面図である。図12(c)は、試料No.7に示される第2の比較例による貫通電極基板において、透明基板2上へのシード層7の形成状態を模式的に示す平面図である。
表1および図12(a)に示すように、試料No.2〜No.6においては、透明基板2上にシード層7が万遍なく形成され、アニールにともなうシード層7の膨張も殆ど無いことが確認された。更に、試料No.2〜No.6においては、クロスカット試験によるシード層7の剥離が殆ど無く、また、導通状態が良好であることが確認された。このような試料No.2〜試料No.6の結果は、試料No.2〜試料No.6が適度な厚みの密着層31〜33を有することで、シード層7の密着性を確保しつつアニールの際に密着層31〜33から生じるガスの総量を抑制できることによるものと推測される。
一方、試料No.1においては、表1および図12(b)に示すように、シード層7が形成されずに透明基板2が露出した箇所が確認された。更に、試料No.1においては、クロスカット試験によるシード層7の剥離量が多く、また、導通不良が生じることが確認された。このような試料No.1の結果は、試料No.1が密着層31〜33を有しないことで、シード層7の密着性を確保できないことによるものと推測される。
また、試料No.7においては、表1および図12(c)に示すように、アニールにともなうシード層7の膨張部7aが多数生じることが確認された。更に、試料No.7においては、導通不良が生じることが確認された。このような試料No.7の結果は、試料No.7の密着層31〜33の厚みが過大であることで、アニールの際に密着層31〜33から生じるガスの総量が多いことによるものと推測される。
以上の実施例によれば、密着層31〜33の厚みを15nm以上200nm以下とすることで、シード層7の密着性および電気特性が良好になることが確認された。
以下、本実施形態によってもたらされる作用について説明する。
図2に示したように、第1表面21上には、配線幅W512が大きい第1面パッド部512と、配線幅W511が小さい第1面配線部511とが位置している。第1面パッド部512および第1面配線部511は、いずれも透明基板2との密着性を高めるために第1面密着層32を介して第1表面21上に位置している。しかるに、配線幅W511が小さい第1面配線部511は、配線幅W512が大きく且つ貫通電極4に連続している第1面パッド部512と比較して、透明基板2との密着性が悪く剥離し易い。また、図3に示したように、第2表面22上には、配線幅W522が大きい第2面パッド部522と、配線幅W521が小さい第2面配線部521とが位置している。第2面パッド部522および第2面配線部521は、いずれも透明基板2との密着性を高めるために第2面密着層33を介して第2表面22上に位置している。しかるに、配線幅W521が小さい第2面配線部521は、配線幅W522が大きく且つ貫通電極4に連続している第2面パッド部522と比較して、透明基板2との密着性が悪く剥離し易い。
もし、第1面配線部511が覆う第1面密着層32の厚みを、第1面パッド部512が覆う第1面密着層32の厚みと同程度にした場合、第1面密着層32の量が不十分であることで、第1面密着層32上への無電解めっきプロセスにおいて薬液等による第1面密着層32の部分的な除去が生じた場合に、十分な量の第1面密着層32を確保できず、第1面配線部511の密着性を高めることが困難となる虞がある。また、第2面配線部521が覆う第2面密着層33の厚みを、第2面パッド部522が覆う第2面密着層33の厚みと同程度にした場合、第2面密着層33の量が不十分であることで、第2面密着層33上への無電解めっきプロセスにおいて薬液等による第2面密着層33の部分的な除去が生じた場合に、十分な量の第2面密着層33を確保できず、第2面配線部521の密着性を高めることが困難となる虞がある。
これに対して、本実施形態によれば、第1面第1密着層321よりも全体的に厚みが厚い第1面第2密着層322上に第1面配線部511を形成することで、仮に、第1面密着層32上への無電解めっきプロセスにおいて薬液等による第1面密着層32の部分的な除去が生じたとしても、第1面第2領域212上に尚十分な量の第1面第2密着層322を確保することができる。これにより、第1面第2密着層322を介して配線幅が小さい第1面配線部511の密着性を向上させることができる。また、本実施形態によれば、第2面第1密着層331よりも全体的に厚みが厚い第2面第2密着層332上に第2面配線部521を形成することで、仮に、第2面密着層33上への無電解めっきプロセス等において第2面密着層33の部分的な除去が生じたとしても、第2面第2領域222上に尚十分な量の第2面第2密着層332を確保することができる。これにより、第2面第2密着層332を介して配線幅が小さい第2面配線部521の密着性を向上させることができる。
したがって、本実施形態によれば、厚みが厚い密着層322、332を介して透明基板2への配線部511、521の密着性を向上させることができるので、透明基板2からの配線511、521の剥離を有効に抑制することができる。
また、図1に示したように、本実施形態によれば、側壁密着層31と、第1面密着層32と、第2面密着層33とを備えることで、透明基板2と貫通電極4との密着性だけでなく、透明基板2と第1面導電層51および第2面導電層52との密着性も高めることができる。これにより、透明基板2からの貫通電極4および配線部511、521の剥離を同時に抑制することができる。
また、本実施形態によれば、貫通電極4と第1面パッド部512との境界部において、第1面パッド部512に覆われた第1面密着層32は、側壁密着層31に連続している。第1面密着層32が側壁密着層31に連続していることで、透明基板2の中で比較的にめっき不良が起こり易い角部上に位置する第1面パッド部512についても、透明基板2への密着性を可及的に向上させることができる。
また、本実施形態によれば、貫通電極4と第2面パッド部522との境界部において、第2面パッド部522に覆われた第2面密着層33は、側壁密着層31に連続している。第2面密着層33が側壁密着層31に連続していることで、透明基板2の中で比較的にめっき不良が起こり易い角部上に位置する第2面パッド部522についても、透明基板2への密着性を可及的に向上させることができる。
また、本実施形態によれば、隣り合う配線部511、521間に密着層32、33が設けられていないため、隣り合う配線部511、521同士の間でのマイグレーションを抑制することができる。
また、貫通孔23のアスペクト比T/φを3以上33以下とすれば、貫通電極4の配線密度を高めることができるとともに、貫通孔23の内部に貫通電極4を形成するために十分な内径φを確保することができる。
また、密着層31〜33の厚みを15nm以上200nm以下とすれば、貫通孔23のアスペクト比が高い場合においてもシード層7の析出性を向上させることができ、また、加熱工程において密着層31〜33から発生したガスによる貫通電極4および配線部511、521の変形を抑制することができ、電気的特性の悪化を抑制することができる。
(第1の変形例)
次に、第1の変形例として、第1面第1密着層321のうち第1範囲R1の厚みt321_R1が第1面第2密着層322の厚みt322より薄く、第2面第1密着層331のうち第1範囲R1の厚みt331_R1が第2面第2密着層332の厚みt332より薄い貫通電極基板1の例について説明する。
図13は、第1の変形例による貫通電極基板1において、貫通電極4と第1面導電層51との境界部分を示す拡大断面図である。図13の例において、第1面第2密着層322は、第1面第1密着層321との間で以下の関係式を満足する。
t321_R1<t321_R2≦t322 (3)
但し、数式(3)において、t321_R1は、第1面第1密着層321のうち貫通孔23の開口231a側の第1範囲R1における第1面第1密着層321の厚みである。t321_R2は、第1面第1密着層321のうち貫通孔23の開口231aと反対側の第2範囲R2における第1面第1密着層321の厚みである。t322は、第1面第2密着層322の厚みである。
図13の例において、第1面第1密着層321の第1範囲R1、第1面第1密着層321の第2範囲R2、および第1面第2密着層322は、それぞれがほぼ一定の厚みを有している。数式(3)は、第1面第1密着層321の第1範囲R1、第1面第1密着層321の第2範囲R2、および第1面第2密着層322のそれぞれが勾配を有する場合にも、各層のそれぞれの任意の位置の厚み同士の間で成立してもよい。また、第1面第1密着層321の第1範囲R1と第1面第1密着層321の第2の範囲R2との間には、第1範囲R1側に向かうにしたがって厚みが漸減する直線状または曲線状の傾斜勾配を有する第1面第1密着層321の第3範囲が存在してもよい。
数式(3)は、第1面第2密着層322が少なくとも部分的に第1面第1密着層321よりも厚みが厚いことを示している。より具体的には、数式(3)は、第1面第1密着層321が、第1範囲R1において第1面第2密着層322の厚みt322よりも薄い厚みt321_R1を有し、第2範囲R2において第1面第2密着層322の厚みt322以下の厚みt321_R2を有することを示している。このことは、第1面第1密着層321を全体にわたって覆う第1面パッド部512が、厚みの薄い第1面第1密着層321の第1範囲R1よりも面方向D2に広範囲にわたって位置していることも意味している。
数式(3)に示すように、第1面第2密着層322の厚みt322は、第1面第1密着層321の第1範囲R1の厚みt321_R1より厚い。これにより、図13に示される第1面パッド部512の配線幅W512よりも細い配線幅W511を有する第1面配線部511を、透明基板2上に十分な密着力で密着させることができる。
第1面第2密着層322の厚みt322は、第1面第1密着層321の第1範囲R1の厚みt321_R1より40nm以上厚くてもよい。すなわち、第1面第2密着層322は、少なくとも部分的に第1面第1密着層321よりも40nm以上厚みが厚くてもよい。40nm以上厚みが厚いことで、第1面配線部511の密着性を更に高めることができる。
第1範囲R1の長さは、最大で40μmであってもよい。
図13の例において、第1面パッド部512は、第1面第1密着層321上に位置している。第1面パッド部512は、厚みt321_R1が薄い第1面第1密着層321の第1範囲R1と、厚みt321_R2が厚い第1面第1密着層321の第2範囲R2とを覆っている。このため、第1面パッド部512は、第1範囲R1と第2範囲R2との厚みの違いによる段差を有している。この段差により、第1面パッド部512のうち貫通孔23側の所定範囲の領域には、貫通孔23の厚み方向D1の中央部に向かって陥没した凹部512aが設けられている。この凹部512aは、貫通孔23の内部に有機層6を形成する際に、貫通孔23の内部への有機層6の流動を促進して有機層6中のボイドの発生を抑制してもよい。
図14は、第1の変形例による貫通電極基板1において、貫通電極4と第2面導電層52との境界部分を示す拡大断面図である。図14の例において、第2面第2密着層332は、第2面第1密着層331との間で以下の関係式を満足する。
t331_R1<t331_R2≦t332 (4)
但し、数式(4)において、t331_R1は、第2面第1密着層331のうち貫通孔23の開口231b側の第1範囲R1における第2面第1密着層331の厚みである。t331_R2は、第2面第1密着層331のうち貫通孔23の開口231bと反対側の第2範囲R2における第2面第1密着層331の厚みである。t332は、第2面第2密着層332の厚みである。
図14の例において、第2面第1密着層331の第1範囲R1、第2面第1密着層331の第2範囲R2、および第2面第2密着層332は、それぞれがほぼ一定の厚みを有している。数式(4)は、第2面第1密着層331の第1範囲R1、第2面第1密着層331の第2範囲R2、および第2面第2密着層332のそれぞれが勾配を有する場合にも、各層のそれぞれの任意の位置の厚み同士の間で成立してもよい。また、第2面第1密着層331の第1範囲R1と第2面第1密着層331の第2の範囲R2との間には、第1範囲R1側に向かうにしたがって厚みが漸減する直線状または曲線状の傾斜勾配を有する第2面第1密着層331の第3範囲が存在してもよい。
数式(4)は、第2面第2密着層332が少なくとも部分的に第2面第1密着層331よりも厚みが厚いことを示している。より具体的には、数式(4)は、第2面第1密着層331が、第1範囲R1において第2面第2密着層332の厚みt332よりも薄い厚みt331_R1を有し、第2範囲R2において第2面第2密着層332の厚みt332以下の厚みt331_R2を有することを示している。このことは、第2面第1密着層331を全体にわたって覆う第2面パッド部522が、厚みの薄い第2面第1密着層331の第1範囲R1よりも面方向D2に広範囲にわたって位置していることも意味している。
数式(4)に示すように、第2面第2密着層332の厚みt332は、第2面第1密着層331の第1範囲R1の厚みt331_R1より厚い。これにより、図14に示される第2面パッド部522の配線幅W522よりも細い配線幅W521を有する第2面配線部521を、透明基板2上に十分な密着力で密着させることができる。
第2面第2密着層332の厚みt332は、第2面第1密着層331の第1範囲R1の厚みt331_R1より40nm以上厚くてもよい。すなわち、第2面第2密着層332は、少なくとも部分的に第2面第1密着層331よりも40nm以上厚みが厚くてもよい。40nm以上厚みが厚いことで、第2面配線部521の密着性を更に高めることができる。
第2面第1密着層331の第1範囲R1の長さは、最大で40μmであってもよい。
図14の例において、第2面パッド部522は、第2面第1密着層331上に位置している。第2面パッド部522は、厚みt331_R1が薄い第2面第1密着層331の第1範囲R1と、厚みt331_R2が厚い第2面第1密着層331の第2範囲R2とを覆っている。このため、第2面パッド部522は、第1範囲R1と第2範囲R2との厚みの違いによる段差を有している。この段差により、第2面パッド部522のうち貫通孔23側の所定範囲の領域には、貫通孔23の厚み方向D1の中央部に向かって陥没した凹部522aが設けられている。この凹部522aは、貫通孔23の内部に有機層6を形成する際に、貫通孔23の内部への有機層6の流動を促進して有機層6中のボイドの発生を抑制してもよい。
第1の変形例によれば、第1面第1密着層321の少なくとも一部よりも厚みが厚い第1面第2密着層322上に第1面配線部511を形成することで、仮に、第1面密着層32上への無電解めっきプロセスにおいて薬液等による第1面密着層32の部分的な除去が生じたとしても、第1面第2領域212上に尚十分な量の第1面第2密着層322を確保することができる。これにより、第1面第2密着層322を介して配線幅が小さい第1面配線部511の密着性を向上させることができる。また、第1の変形例によれば、第2面第1密着層331の少なくとも一部よりも厚みが大きい第2面第2密着層332上に第2面配線部521を形成することで、仮に、第2面密着層33上への無電解めっきプロセス等において第2面密着層33の部分的な除去が生じたとしても、第2面第2領域222上に尚十分な量の第2面第2密着層332を確保することができる。これにより、第2面第2密着層332を介して配線幅が小さい第2面配線部521の密着性を向上させることができる。
したがって、第1の変形例においても、厚みが厚い密着層322、332を介して透明基板2への配線部511、521の密着性を向上させることができるので、透明基板2からの配線511、521の剥離を有効に抑制することができる。
(第2の変形例)
次に、側壁密着層31を省略した第2の変形例について説明する。図15は、本実施形態の第2の変形例による貫通電極基板1において、貫通電極4と第1面導電層51との境界部分を示す拡大断面図である。
第1の変形例では、側壁密着層31、第1面密着層32および第2面密着層33を備えた貫通電極基板1の例について説明した。これに対して、第2の変形例の貫通電極基板1は、側壁密着層31を備えておらず、第1面密着層32および図示しない第2面密着層33のみを備えている。
図15に示すように、第2の変形例の貫通電極基板1において、第1面配線部511は、図13の例と同様に、第1面第1密着層321の第1範囲R1よりも厚みが厚い第1面第2密着層322上に位置している。これにより、図13の例と同様に、第1面第2密着層322を介して配線幅が小さい第1面配線部511の密着性を向上させることができる。また、図示はしないが、第2面配線部521は、図14の例と同様に、第2面第1密着層331の第1範囲R1よりも厚みが大きい第2面第2密着層332上に位置している。これにより、図14の例と同様に、第2面第2密着層332を介して配線幅が小さい第2面配線部521の密着性を向上させることができる。
したがって、第2の変形例においても、透明基板2からの配線511、521の剥離を有効に抑制することができる。
(第3の変形例)
次に、側壁密着層31が厚みの増加傾向を有する第3の変形例について説明する。図16は、本実施形態の第3の変形例による貫通電極基板1において、貫通電極4と第1面導電層51との境界部分を示す拡大断面図である。
貫通電極4と第1面配線部511との境界部分にクラックが生じることを抑制するため、図16の例において、側壁密着層31は、第1表面21側の側壁231の一端から第2表面22側に向かうにしたがって少なくとも部分的に厚みが増加する。図16の例において、側壁密着層31は、第1表面21側の側壁231の端部231aから第2表面22側すなわちD11方向に向かうにしたがって厚みtが漸増している。
また、図16の例において、第1面密着層32と側壁密着層31との境界部における第1面密着層32に対する側壁密着層31の屈曲角θ1と、第1面導電層51と貫通電極4との境界部におけるシード層7の屈曲角θ2との間には、次式が成立する。
θ2<θ1 (5)
ここで、側壁密着層31の厚みtが側壁231上において一様である場合、第1面導電層51と貫通電極4との境界部におけるシード層7の屈曲角θ2は、第1面密着層32と側壁密着層31との境界部における第1面密着層32に対する側壁密着層31の屈曲角θ1と殆ど変らない。シード層7の屈曲角θ2が側壁密着層31の屈曲角θ1と殆ど変らないことで、貫通孔23の一端に位置する透明基板2の角部2aを覆う貫通電極4と第1面導電層51との境界部分の中でも、特に熱衝撃等による応力が集中し易いシード層7において応力を十分に緩和することが困難となる。これにより、貫通電極4と第1面導電層51との境界部分におけるクラックの発生を抑制して貫通電極4と第1面導電層51との電気的接続の信頼性を向上させることが困難となる。
これに対して、第3の変形例では、図16に示すように、側壁密着層31の厚みtが第1表面21側の側壁231の一端231aから第2表面22側に向かうにしたがって増加している。このような厚みの増加傾向を側壁密着層31が有することで、図2に示すように、第1面導電層51と貫通電極4との境界部におけるシード層7の屈曲角θ2は、第1面密着層32と側壁密着層31との境界部における第1面密着層32に対する側壁密着層31の屈曲角θ1よりも小さくなっている。
シード層7の屈曲角θ2が側壁密着層31の屈曲角θ1よりも小さいことで、貫通孔23の一端に位置する透明基板2の角部2aを覆う貫通電極4と第1面導電層51との境界部分の中でも、特に熱衝撃等による応力が集中し易いシード層7において応力を十分に緩和することが可能となる。
したがって、第3の変形例によれば、貫通電極4と第1面導電層51との境界部分におけるクラックの発生を抑制して貫通電極4と第1面導電層51との電気的接続の信頼性を向上させることができる。また、同様の作用効果は、第2表面22側の側壁231の一端から第1表面21側に向かうにしたがって側壁密着層31の厚みtを増加させることで、貫通電極4と第2面導電層52との間でも得られる。
また、第3の変形例によれば、透明基板2の角部2aが、既述した厚みの増加傾向を有する側壁密着層31と、これに連続する第1面密着層32とによって覆われていることで、角部2aの角度π−θ1よりも、角部2aを覆うように側壁密着層31と第1面密着層32との境界部分に位置する密着層の角部3aの角度π−θ2の方が大きくなっている。密着層の角部3aの角度π−θ2が透明基板2の角部2aの角度より大きいことで、密着層の角部3aを覆うシード層7の角部7aの尖鋭度が緩和されている。シード層7の角部7aの尖鋭度が緩和されていることで、透明基板2の角部2a上に直接形成したシード層7上に電解めっき処理を行う場合と比較して、処理中の電荷集中を抑制することができる。これにより、めっき層8の異常析出を抑制することができる。
また、本実施形態によれば、側壁密着層31が既述した厚みの増加傾向を有するため、側壁密着層31の厚みが一様である場合と比較して、密着層の角部3aの尖鋭度が緩和されている。このため、側壁密着層31の厚みが一様である場合と比較して、密着層31、32上への触媒の未着によるめっき不良を抑制することができる。
(第4の変形例)
次に、第1面第1密着層321の厚みが漸減する第4の変形例について説明する。図17は、本実施形態の第4の変形例による貫通電極基板1において、貫通電極4と第1面導電層51との境界部分を示す拡大断面図である。
第1〜第3の変形例においては、第1面第1密着層321が厚みの不連続点すなわち段差を有することで、第1面第1密着層321が第1範囲R1と第2範囲R2とを有する貫通電極基板1の例について説明した。
これに対して、第4の変形例の貫通電極基板1においては、図17に示すように、第1面第1密着層321の厚みt321が、貫通孔23の開口231a側に向かうにしたがって連続的に減少すなわち漸減している。言い換えれば、第1面第1密着層321は、連続する直線状または曲線状の傾斜勾配を有しており、段部を有していない。なお、図17の例において、側壁密着層31は、第3の変形例と同様の厚みt31の増加傾向を有しているが、側壁密着層31の厚みt31は一様であってもよい。
第4の変形例においても、第1面第2密着層322の厚みt322が第1面第1密着層321の厚みt321よりも厚いことで、第1面第2密着層322を介して配線幅が小さい第1面配線部511の密着性を向上させることができる。また、第1面第1密着層321の厚みt321が漸減することにともなって、密着層3の角部3aの尖鋭度が緩和されてもよく、例えば、図17に示すように、密着層3の角部3aにアールが形成されていてもよい。密着層3の角部3aの尖鋭度が緩和されることで、貫通電極4と第1面導電層51との境界部分におけるクラックの発生を更に効果的に抑制することができる。同様の構成および作用効果は、第2面第1密着層331にも適用することができる。
(第5の変形例)
次に、第5の変形例として、貫通孔23の形状の変形例について説明する。図18(a)は、本実施形態の第1の変形例による貫通電極基板1として、貫通孔23の一変形例を示す断面図である。図18(b)は、図18(a)と異なる貫通孔23の変形例を示す断面図である。図18(c)は、図18(a)および図18(b)と異なる貫通孔23の変形例を示す断面図である。
図1の例において、貫通孔23の側壁231は、厚み方向D1の位置によらず内径が均一の円筒形状を有している。しかしながら、貫通孔23の形状が特に限られることはない。例えば、図18(a)に示すように、貫通孔23の側壁231は、第1表面21および第2表面22の一方から他方に向かうにしたがって内径が漸増するテーパ形状を有していてもよい。
また、図18(b)に示すように、貫通孔23の側壁231は、第1表面21および第2表面22から透明基板2の厚み方向D1の中央部に向かうにしたがって内径が漸減する形状を有していてもよい。
また、図18(c)に示すように、貫通孔23の側壁231は、第1表面21および第2表面22から透明基板2の厚み方向D1の中央部に向かうにしたがって内径が漸増する形状を有していてもよい。また、貫通孔23の面方向D2の断面は、円形状に限らず、例えば、多角形状であってもよい。
第5の変形例においても、図1の例と同様に、側壁密着層31と、第1面密着層32と、第2面密着層33とを備えることで、透明基板2からの貫通電極4および配線部511、521の剥離を同時に抑制することができる。
(第6の変形例)
次に、第1面密着層32および第2面密着層33が全面的に形成された第6の変形例について説明する。図19は、本実施形態の第6の変形例による貫通電極基板1を示す断面図である。図1の例において、第1面密着層32は、第1面導電層51に対応するように第1表面21上に部分的に位置し、第2面密着層33は、第2面導電層52に対応するように第2表面22上に部分的に位置している。すなわち、第1面密着層32は、第1面導電層51が存在しない第1表面21上には設けられておらず、第2面密着層33は、第2面導電層52が存在しない第2表面22上には設けられていない。
これに対して、第6の変形例の第1面密着層32は、図19に示すように、第1表面21上に全面的に位置している。また、第2面密着層33は、第2表面22上に全面的に位置している。
第6の変形例によれば、図11に示した密着層32、33の除去工程が不要となるので、製造工数を削減することができる。
(第7の変形例)
次に、導電層51、52が密着層32、33の側壁を覆う第7の変形例について説明する。図20は、本実施形態の第7の変形例による貫通電極基板1を示す断面図である。
図1の例において、第1面導電層51は、第1面密着層32に対して厚み方向D1の一方すなわち上方にのみ位置し、第2面導電層52は、第2面密着層33に対して厚み方向D1の他方すなわち下方のみに位置していた。
これに対して、第7の変形例の第1面導電層51は、図20に示すように、第1面密着層32に対して厚み方向D1の一方に位置する第1部分51aと、第1面密着層32に対して面方向D2に位置する第2部分51bとを有している。第2部分51bは、第1面密着層32の側壁を覆っている。
また、図20に示すように、第2面導電層52は、第2面密着層33に対して厚み方向D1の他方に位置する第1部分52aと、第2面密着層33に対して面方向D2に位置する第2部分52bとを有している。第2部分52bは、第2面密着層33の側壁を覆っている。
第7の変形例の貫通電極基板1は、密着層31〜33をパターニングした後にシード層7およびめっき層8を形成することによって製造することができる。
第7の変形例によれば、第1面導電層51および第2面導電層52の断面積を増加することができるので、配線抵抗を低減することができる。
第1〜第7の変形例は、これらを適宜組み合わせてもよい。
(製品への適用例)
図21は、上記各態様の貫通電極基板1を適用できる製品の例を示す図である。本開示の実施形態に係る貫通電極基板1は、光学用途の様々な製品に適用できる。例えば、貫通電極基板1は、携帯電話110のカメラ、スマートフォン120のカメラ、デジタルビデオカメラ130、デジタルカメラ140等に搭載できる。
本開示の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本開示の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。