以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1は、自動車の車輪(不図示)を軸回転可能に支持する車両用軸受(軸受装置)1を示す。この軸受装置1は、外輪回転のハブベアリングであって、大略的に、ハブ輪からなる外輪(回転側部材)2と、内輪(固定側部材)3と、内輪3の車体側に嵌合一体とされる内輪部材4と、外輪2と内輪3及び内輪部材4との間に介装される2列の転動体(ボール)5…とを含んで構成される。この例では、内輪3及び内輪部材4が固定側部材とされ、内輪3が固定シャフト6にスプライン嵌合され、ナット7によって固定シャフト6に抜脱不能に一体化されている。回転側部材としての外輪2は、固定側部材としての内輪3及び内輪部材4に対して軸L回りに軸回転可能に支持され、外輪2と内輪3及び内輪部材4との間に環状空間(軸受空間)Sが形成される。環状空間としての軸受空間S内には、2列の転動体5…が、リテーナ5aに保持された状態で、外輪2の軌道輪2a、内輪3及び内輪部材4の軌道輪3a,4aを転動可能に介装されている。外輪2は、円筒形状のハブ輪本体20と、ハブ輪本体20より立上基部21を介して径方向外側に延出するよう形成されたハブフランジ22を有し、ハブフランジ22にボルト23及び不図示のナットによって従動用車輪(不図示)が取付固定される。以下において、軸L方向に沿って車輪に向く側(図1において左側を向く側)を車輪側、車体に向く側(同右側を向く側)を車体側と言う。
軸受空間Sの軸L方向に沿った車体側端部であって、外輪2と内輪部材4との間には、ベアリングシール(密封装置)9が装着され、軸受空間Sの軸L方向に沿った車体側端部が密封される。また、ハブ輪本体20における車輪側端部の開口部にはキャップ10が装着され、軸受空間Sの車輪側端部を含むハブ輪本体20における車輪側端部の開口部が密封される。これによって、軸受空間S内への泥水等の浸入や軸受空間S内に充填される潤滑剤(グリース等)の外部への漏出が防止される。
図2は、本願の第一の発明に係る磁気エンコーダ、第二の発明に係るシール部材及び第三の発明に係る密封装置の一実施形態を示す。本実施形態の磁気エンコーダ50は、ベアリングシール9の一構成部材とされている。本実施形態の磁気エンコーダ50は、外輪2(ハブ輪本体20)に取付けられる金属環60と、周方向にN極及びS極を交互に有して金属環60に一体に固着された環状磁石70とを備える。金属環60は、ハブ輪本体20(外輪2)の内周面2bに嵌合される内側筒部61と、ハブ輪本体20の外周面2cに嵌合される外側筒部62と、内側筒部61及び外側筒部62を一体に接続する接続部63とを有する。本実施形態では、さらに、金属環60は、第一部材60Aと第二部材60Bとからなる。第一部材60Aは、内側筒部61及び内側筒部61の車体側端部(一端部)61aより径方向外向きに延出された第一接続部63Aを有する。第二部材60Bは、外側筒部62及び外側筒部62の車体側端部(一端部)62aより径方向外向きに延びて折り返す折返し部62bを介して径方向内向きに延出された第二接続部63Bを有する。内側筒部61からの第一接続部63Aの延出方向と、外側筒部62からの第二接続部63Bの延出方向とが互いに向き合う関係の逆方向となる。そして、第一接続部63Aが車輪側になるとともに、第二接続部63Bが車体側になるように、接着剤64によって軸L方向に重ね合わされて一体に固着され、これにより接続部63が構成されている。このような金属環60の構成により、ハブ輪本体20の車体側の内周面2b、車体側端面2d及び車体側の外周面2cは、それぞれ金属環60の内側筒部61、接続部63を構成する第一接続部63A及び外側筒部62によって密着的に覆われている。
また、第一部材60Aは、内側筒部61の車輪側端部61bから径方向内向きに延出された鍔状部65を有し、この鍔状部65には、後記する内輪側(固定側)金属環80に弾接するシールリップ66a,66b,66cを有するシール体66が一体に固着されている。したがって、第一部材60Aを含む金属環60とシール体66とによりシール部材67が構成される。内輪側金属環80は、円筒部81と、円筒部81の車体側端部81aから径方向外向きに延出された円輪部82とからなる断面L形に形成されている。内輪側金属環80の円筒部81は、内輪部材4の外周面4aに嵌合されている。シール体66は、ゴム等の弾性体からなり、金属環60における鍔状部65の車輪側面65aの一部から内径側端部65bを回り込んで車体側面65c及び内側筒部61の内周面61cの全面に加硫成型により一体に固着されている。シールリップ66aはアキシャルリップであり、内輪側金属環80における円輪部82の車輪側面82aに弾接している。また、シールリップ66b,66cはラジアルリップであり、円筒部81の外周面81bに先端部が互いに反方向に向くように弾接している。図2において2点鎖線で示すシールリップ66a,66b,66cは弾性変形前の原形状を示している(以下、同様)。このようにシール体66を一体に固着する第一部材60Aは、シール体66を支持する芯金の機能を奏するものとされる。
環状磁石70は、磁性粉を含有するゴム磁石からなり、金属環60における第二部材60Bの第二接続部63Bに加硫成型により一体に固着されている。さらに具体的には、第二接続部63Bにおける車体側面63Baの外径側半部から折返し部62bを回り込んで外側筒部62の外周面62c及び車輪側端部62dに至る部分が前記ゴム磁石によって覆われている。そして、前記ゴム磁石における第二接続部63Bの車体側面63Baを覆う部分が環状磁石70とされ、環状磁石70の車体側面が周方向にS極及びN極が交互に着磁させれた着磁面70aとされている。この環状磁石70と金属環60とにより、磁気エンコーダ50が構成される。車体側には、この磁気エンコーダ50における環状磁石70の着磁面70aに対峙するよう磁気センサ71が設置され、磁気エンコーダ50と磁気センサ71とにより、車輪(不図示)の回転検出機構が構成される。
前記のように構成される磁気エンコーダ50及びこれを一構成部材とするベアリンシール9を組付けた軸受装置1において、車両の走行に伴い車輪とともに外輪2及び磁気エンコーダ50が軸L回りに一体的に回転する。この磁気エンコーダ50の回転により、シールリップ66a,66b,66cが内輪側金属環80に弾性的に摺接する。シールリップ66a,66b,66cの内輪側金属環80に対する摺接により、外部から軸受空間S内への泥水等の浸入が阻止され、また、軸受空間S内に充填されている潤滑剤の外部漏出が防止される。また、磁気エンコーダ50の回転により、磁気センサ71が前記磁極(S極及びN極)の変化を検出し、この回転検出データが車輪の回転数や回転角度等の演算に供される。
そして、車両走行時等に、外輪2に荷重が作用して、外輪2が径方向に変形した場合、金属環60における内側筒部61及び外側筒部62の一方の筒部の外輪2に対する締め代が小さくなる。しかし、内側筒部61及び外側筒部62の他方の筒部の外輪2に対する締め代は大きくなる。したがって、外輪2が径方向に変形しても、金属環60に作用する嵌合力の総和が低下することが抑制され、外輪2に対する金属環60の取付け位置が安定的に維持され、金属環60が外輪2から外れることが抑制される。また、環状磁石70を備える金属環60の外輪2に対する取付け位置も安定的に維持される。その結果、環状磁石70と磁気センサ71との相対位置関係も維持され、磁気センサ71による回転検出精度が低下することを抑制することができる。さらに、環状磁石70と磁気センサ71とが干渉する懸念も生じ難くなる。
また、本実施形態では、金属環60を構成する第一部材60A及び第二部材60Bは互いに別部材とされる。したがって、第一部材60Aを構成する内側筒部61及び/又は第二部材60Bを構成する外側筒部62の寸法精度(特に、外輪2に対する内側筒部61及び/又は第二部材60Bを構成する外側筒部62の径)にばらつきがあっても、その影響を互いに受けることを抑制することができる。また、第一接続部63A及び第二接続部63Bが軸L方向に重ね合わされ接着剤64によって固着されて、第一部材60A及び第二部材60Bが互いに一体に接続されているから、金属環60が外輪2から外れることがより確実に抑制される。加えて、第一接続部63A及び第二接続部63B間に接着剤64が介在することにより、第一接続部63A及び第二接続部63Bの間に泥水等が浸入することを抑制できる。さらに、本実施形態では、第二接続部63Bが、外側筒部62に対して折返し部62bを介して延出されているから、その径方向幅が大きくなり、環状磁石70の形成スペースを大きく確保できる。これにより、磁気センサ71(図2参照)の設置位置に対応させるための設計の自由度が向上する。
なお、前記では、図2に示す例を本願の第一の発明に係る磁気エンコーダの一実施形態として述べたが、図2は、本願の第二の発明に係るシール部材さらには第三の発明に係る密封装置の一実施形態をも含んでいる。即ち、磁気エンコーダ50を構成する金属環60は、回転側部材及び固定側部材の一方の部材である外輪2に取付けられている。そして、当該金属環60は、回転側部材及び固定側部材の他方の部材を構成する内輪側金属環80に弾接するシールリップ66a,66b,66cを有するシール体66を固着一体に備え、金属環60とシール体66とによりシール部材67を構成している。したがって、当該シール部材67は、本願の第二の発明に係るシール部材の一実施形態とみなすことができる。また、金属環60は、磁気エンコーダ50の一部を構成するものではあるが、シール部材67をも構成することから、実質的に磁気エンコーダ50とシール部材67とが組み合わさってベアリングシール9を構成している。したがって、ベアリングシール9は本願の第三の発明に係る密封装置の一実施形態とみなすことができる。
また、図2に示す例において、シール体66を第一部材60Aに代えて内輪側金属環80に設け、シールリップ66a,66b,66cを第一部材60Aに近接乃至弾接させるようにして、金属環80とシール体66とによりシール部材を構成するようにしてもよい。
図3〜図7は、前記実施形態における外輪2に対する磁気エンコーダ50の取付け態様の変形例を示す。このうち図3〜図5に示す例は、図2に示す例と同様に金属環60が2部材からなり、図6及び図7に示す例は金属環60が一部材からなる例を示している。
なお、図3〜図7に示す例でも、図2に示すようなシール体66を有するシール部材67が存在するが、便宜上その図示を省略している。また、図2及び図3〜図7に示す金属環の構造は、他の実施形態における金属環(芯金、スリンガ)の構造にも適用することは
可能である。
図3に示す例では、第二部材60Bを構成する第二接続部63Bが外側筒部62の車体側端部62aより径方向内向きに延出されている。つまり、図3に示す第二部材60Bは、折返し部62(図2参照)を設けることなく、外側筒部62の車体側端部62aが屈曲されて第二接続部63Bが形成されている。また、環状磁石70を構成するゴム磁石は、第二接続部63Bの車体側面63Baと内径側端縁部63Bbとを連続的に覆っている。この例では、第一部材60A及び第二部材60Bが径方向にコンパクトに構成されるから、磁気エンコーダ50の径方向の設置スペースに制約がある場合等にも好ましく適用される。
その他の構成は、図2に示す例と同様であるので、共通部分に同一の符号を付して、その説明を割愛する。
図4に示す例では、第一部材60Aを構成する第一接続部63Aが内側筒部61の車体側端部61aから径方向内向きに延出され、第二部材60Bを構成する第二接続部63Bが外側筒部62の車体側端部62aから径方向内向きに延出されている。即ち、第一接続部63A及び第二接続部63Bの延出方向が互いに同方向で、外輪2の内周面2bより内径側に突出する部分で第一接続部63A及び第二接続部63Bが軸L方向で重なり、この重なり部分で接着剤64を介して一体に固着されて接続部を構成している。また、環状磁石70を構成するゴム磁石は、第二接続部63Bの車体側面63Baと内径側端縁部63Bbとを連続的に覆っている。この例では、第二接続部63Bの径方向幅が大きくなり、環状磁石70の形成スペースを大きく確保できる。これにより、磁気センサ71(図2参照)の設置位置に対応させるための設計の自由度が向上する。
その他の構成は、図2及び図3に示す例と同様であるので、共通部分に同一の符号を付して、その説明を割愛する。
図5に示す例では、図3に示す例における第二接続部63Bの内径側端部が車輪側に延長されて屈折円筒部63Bcを有している。この屈折円筒部63Bcは、内側筒部61の内周面61cの一部にかしめられるよう形成され、このかしめによって、第一部材60Aと第二部材60Bとが一体化されている。したがって、第一接続部63Aと第二接続部63Bの軸L方向の重なり部分に接着剤64(図2、図3参照)を介さなくてもよいが、一体化をより強固にするために接着剤64を介することはもとより可能である。環状磁石70を構成するゴム磁石は、第二接続部63Bの車体側面63Baのみを覆っている。この例も、図3に示す例と同様に磁気エンコーダ50の径方向の設置スペースに制約がある場合等にも好ましく適用される。
その他の構成は、図3に示す例と同様であるので、共通部分に同一の符号を付して、その説明を割愛する。
図6及び図7に示す例は、金属環60が一部材からなる例を示し、さらに具体的には、外側筒部62と内側筒部61とが、径方向に延びる円板部63Cを介して連続的に形成され、円板部63Cが接続部63を構成している。これらの例では、金属環60が一部材から構成されるから、部品点数を増大させることなく、外輪2に対する取付け位置が安定した磁気エンコーダ50とすることができる。
図6に示す例では、金属環60は、内側筒部61及び外側筒部62の他に、内側筒部61の車体側端部61aから径方向に内向きに延びて折り返す折返し部61dと、折返し部61dを介して径方向外向きに延出された円板部63Cとを備える。円板部63Cは、外側筒部62の車体側端部62aに連続するように形成されている。そして、環状磁石70を構成するゴム磁石は、円板部63Cの車体側面63Caの全面から外側筒部62の外周面62c及び車輪側端部62dを覆っている。この例では、円板部63Cが内側筒部61の車体側端部61aより折返し部61dを介して形成されているから、円板部63Cの径方向幅が外輪2の車体側端面2dの径方向幅より大きく、環状磁石70の形成スペースを大きく確保できる。これにより、磁気センサ71(図2参照)の設置位置に対応させるための設計の自由度が向上する。
図7に示す例では、金属環60は、内側筒部61及び外側筒部62の他に、外側筒部62の車体側端部62aから径方向に外向きに延びて折り返す折返し部62bと、折返し部62bを介して径方向内向きに延出された円板部63Cとを備える。円板部63Cは、内側筒部61の車体側端部61aに連続するように形成されている。そして、環状磁石70を構成するゴム磁石は、円板部63Cの車体側面63Caの全面から折返し部62bを回り込むように覆っている。この例では、円板部63Cが外側筒部62の車体側端部62aより折返し部62bを介して形成されているから、円板部63Cの径方向幅が外輪2の車体側端面2dの径方向幅より大きく、図6の例と同様に環状磁石70の形成スペースを大きく確保できる。これにより、磁気センサ71(図2参照)の設置位置に対応させるための設計の自由度が向上する。
なお、図6及び図7に示す例において、折返し部61d(62b)を介さず内側筒部61の車体側端部61aと外側筒部52の車体側端部62aに直接連なる円板部を接続部としてもよい。図6及び図7に示す例のその他の構成は図2に示す例と同様であるから、共通部分に同一の符号を付して、その説明を割愛する。
図8は、本発明に係る磁気エンコーダ、シール部材及び密封装置が適用される軸受装置の他の例を示す。この例の軸受装置11は、内輪回転のハブベアリングであって、大略的に、外輪12と、ハブ輪13と、ハブ輪13の車体側に嵌合一体とされる内輪部材14と、外輪12とハブ輪13及び内輪部材14との間に介装される2列の転動体(ボール)16…とを含んで構成される。この例では、ハブ輪13及び内輪部材14が内輪15を構成し、外輪12は、自動車の車体(不図示)に固定される。また、ハブ輪13にはドライブシャフト17が同軸的にスプライン嵌合され、ドライブシャフト17は等速ジョイント18を介して不図示の駆動源(駆動伝達部)に連結される。ドライブシャフト17はナット19によって、ハブ輪13と一体化され、ハブ輪13のドライブシャフト17からの抜脱が防止されている。回転側部材としての内輪15(ハブ輪13及び内輪部材14)は固定側部材としての外輪12に対して、軸L1回りに回転(軸回転)可能とされ、外輪12と、内輪15との間に環状空間(軸受空間)S1が形成される。環状空間としての軸受空間S1内には、2列の転動体16…が、リテーナ16aに保持された状態で、外輪12の軌道輪12a、ハブ輪13の軌道輪13a及び内輪部材14の軌道輪14aを転動可能に介装されている。ハブ輪13は、円筒形状のハブ輪本体130と、ハブ輪本体130より立上基部131を介して径方向外側に延出されたハブフランジ132を有し、ハブフランジ132にボルト133及び不図示のナットによって駆動用車輪が取付固定される。以下においても、軸L1方向に沿って車輪に向く側(図8において左側を向く側)を車輪側、車体に向く側(同右側を向く側)を車体側と言う。
内輪15には、等速ジョイント18及びドライブシャフト17を介して駆動源から回転力が伝達され、これによって内輪15及び車輪(駆動輪)が回転する。軸受空間S1の軸L1方向に沿った両端部であって、外輪12とハブ輪13との間、及び、外輪12と内輪部材14との間には、ベアリングシール90,100が装着され、軸受空間S1の軸L方向に沿った両端部が密封される。これによって、軸受空間S1内への泥水等の浸入や軸受空間S1内に充填される潤滑剤(グリース等)の外部への漏出が防止される。
図9は、本発明に係る磁気エンコーダ、シール部材及び密封装置の別の実施形態を示す。図9におけるベアリングシール90は、本願の第三の発明に係る密封装置の別の実施形態であることを示している。本実施形態のベアリングシール(密封装置)90は、回転側部材としての内輪15(内輪部材14)に取り付けられた磁気エンコーダ91と、外輪12の車体側端部120に取り付けられたシール部材95とから構成される。磁気エンコーダ91は、本願の第一の発明に係る磁気エンコーダの別の実施であることを示している。また、シール部材95は、本願の第二の発明に係るシール部材の別の実施であることを示している。
磁気エンコーダ91は、内輪部材14に取付けられる金属環としてのスリンガ92と、スリンガ92における後記する円輪部925の車体側面925aに固着された環状磁石93とからなる。金属環としてのスリンガ92は、回転側部材としての内輪部材14の内周面14aに嵌合される内側筒部921と、内輪部材14の外周面14bに嵌合される外側筒部922と、内側筒部921及び外側筒部922を一体に接続する接続部923とを有する。さらに本実施形態のスリンガ92は、外側筒部922の車輪側端部922bより車体側に折り返す折返し筒部924と、折返し筒部924の車体側端部924aより径方向外向きに延出された円輪部925とを有している。接続部923は、内側筒部921の車体側端部(一端部)921aと外側筒部922の車体側端部(一端部)922aとに連続する円板部とされ、内側筒部921及び外側筒部922の内輪部材14に対する嵌合状態では内輪部材14の車体側端面14cに密着する。環状磁石93は、磁性粉を含有するゴム磁石からなり、スリンガ92における円輪部925の車体側面925aに加硫成型により一体に固着され、その車体側面が、周方向に沿ってN極及びS極が交互に着磁された着磁面93aとされている。車体側には、環状磁石93の着磁面93aに対峙するように磁気センサ931が設置されている。
なお、内輪部材14におけるスリンガ92が嵌合される部分は、車体側に突出する円筒形状をなすように形成されている。
シール部材95は、回転側部材及び固定側部材の一方の部材である外輪12の車体側端部120に取り付けられる金属環としての芯金96と、芯金96に一体に固着されたシール体97とからなる。金属環としての芯金96は、外輪12における車体側端部120の内周面120aに嵌合される内側筒部961と、車体側端部120の外周面120bに嵌合される外側筒部962と、内側筒部961及び外側筒部962を一体に接続する接続部963とを有する。さらに、本実施形態の芯金96は、内側筒部961の車輪側端部961bから径方向内向きに延出された鍔状部965を有している。接続部963は、内側筒部961の車体側端部(一端部)961aと外側筒部962の車体側端部(一端部)962aとに連続する円板部とされる。接続部963は、内側筒部961及び外側筒部962の外輪12における車体側端部120に対する嵌合状態では車体側端部120の車体側端面120cに密着する。シール体97は、ゴム等の弾性体からなり、スリンガ92における円輪部925の車輪側面925bに弾接するアキシャルリップ(シールリップ)97aと、折返し筒部924の外周面924bに先端部が互いに反方向に向くよう弾接する2個のラジアルリップ(シールリップ)97b,97cとを有している。この場合、スリンガ92は、回転側部材及び固定側部材の他方の部材の一部に相当する。シール体97は、芯金96における鍔状部965の車輪側面965aの一部から内径側端部965bを回り込んで車体側面965c及び内側筒部961の内周面961cの全面と、接続部963の車体側面963aの一部に加硫成型により一体に固着されている。
前記のように構成されるベアリンシール90を組付けた軸受装置11において、ドライブシャフト17(図8参照)の駆動回転に伴い内輪15及び磁気エンコーダ91が軸L1回りに一体的に回転する。この磁気エンコーダ91の回転により、シールリップ97a,97b,97cがスリンガ92に弾性的に相対摺接する。シールリップ97a,97b,97cのスリンガ92に対する弾性的相対摺接により、外部から軸受空間S1内への泥水等の浸入が阻止され、また、軸受空間S1内に充填されている潤滑剤の外部漏出が防止される。また、磁気エンコーダ91の回転により、磁気センサ931が前記磁極(S極及びN極)の変化を検出し、この回転検出データが車輪の回転数や回転角度等の演算に供される。
そして、車両走行時等に、内輪15に荷重が作用して、内輪15が径方向に変形した場合、スリンガ(金属環)92における内側筒部921及び外側筒部922の一方の筒部の内輪15(内輪部材14)に対する締め代が小さくなる。しかし、内側筒部921及び外側筒部922の他方の筒部の内輪15(内輪部材14)に対する締め代が大きくなる。したがって、内輪15が径方向に変形しても、スリンガ92に作用する嵌合力の総和が低下することが抑制され、内輪15に対するスリンガ92の取付け位置が安定的に維持され、スリンガ92が内輪15から外れることが抑制される。その結果、スリンガ92に固着される環状磁石93と磁気センサ931との相対位置も維持され、磁気センサ931による回転検出精度が低下することを抑制することができる。さらに、環状磁石93と磁気センサ931とが干渉する懸念も生じ難くなる。
また、車両走行時に、外輪12に荷重が作用して、外輪12が径方向に変形した場合、芯金(金属環)96における内側筒部961及び外側筒部962の一方の筒部の外輪12に対する締め代が小さくなる。しかし、内側筒部961及び外側筒部962の他方の筒部の外輪12に対する締め代は大きくなる。したがって、外輪12が径方向に変形しても、芯金96に作用する嵌合力の総和が低下することが抑制され、外輪12に対する芯金96の取付け位置が安定的に維持され、芯金96が外輪12から外れることが抑制される。そして、シール体97が固着される芯金96の取付け位置が安定的に維持されるから、シールリップ97a,97b,97cが相対摺接するスリンガ96との相対的位置関係も維持され、シールリップ97a,97b,97cによるシール機能が低下することが抑制され、シール体97によるシール機能が精度よく維持される。また、シールリップ97a,97b,97cのスリンガ96に対する相対摺接に伴う回転トルクの変動も生じ難くなる。
図10は、本願の第一の発明に係る磁気エンコーダの別の実施形態であって、密封装置を構成しない磁気エンコーダの例を示している。内輪回転の軸受装置において、このように密封装置を構成しない磁気エンコーダ91が採用される例としては、当該磁気エンコーダ91より軸受空間S1側に別のベアリングシールが組付けられる場合が挙げられる。或いは、従動輪用軸受装置で外輪12の車体側開口部が有底筒状のキャップで封止され、環状磁石93と磁気センサ931と間にキャップが位置するように磁気センサ931が設置される場合等も挙げられる。
本実施形態の磁気エンコーダ91の構成は、図9に示す例と同様である。したがって、この場合も、内輪15(内輪部材14)が径方向に変形しても、スリンガ92に作用する嵌合力の総和が低下することが抑制され、内輪15に対するスリンガ92の取付け位置が安定的に維持され、スリンガ92が内輪15から外れることが抑制される。その結果、スリンガ92の固着される環状磁石93と磁気センサ931との相対位置も維持され、磁気センサ931による回転検出精度が低下することを抑制することができる。さらに、環状磁石93と磁気センサ931とが干渉する懸念も生じ難くなる。
その他の構成は、図9に示す例と同様であるので、共通部分に同一の符号を付し、その説明を割愛する。
図11は、本願の第二の発明に係るシール部材の別の実施形態であって、磁気エンコーダを構成しないスリンガと組み合わさって密封装置を構成するシール部材の例を示している。本実施形態のシール部材95は、内輪部材14に嵌合されるスリンガ98と組合わさってベアリングシール(密封装置)90Aを構成する。スリンガ98は、断面L字形状であり、内輪部材14の外周面14bに嵌合される円筒部981と、円筒部981の車体側端部981aから径方向外向きに延びる円輪部982とからなる。
本実施形態のシール部材95は、図9に示すシール部材とは、金属環としての芯金96及びシール体97の形成態様が若干異なる。即ち、本実施形態の芯金(金属環)96は、内側筒部961及び内側筒部961の車体側端部(一端部)961aから径方向外向きに延出された第一接続部963Aを有する第一部材960Aと、外側筒部962及び外側筒部962の車体側端部(一端部)962aから径方向内向きに延出された第二部材960Bとからなる。そして、第一接続部963A及び第二接続部963Bが、第二接続部963Bが車体側になるように軸L1(図8参照)方向に重なって接続部材963を構成している。第一接続部963Aと第二接続部963Bとは接着剤964を介して一体に固着されている。この芯金96の外輪12(車体側端部120)に対する嵌合状態では、第一接続部963Aが、車体側端部120の車体側端面120cに密着している。また、芯金96は、図9に示す例と同様に、内側筒部961の車輪側端部961bから径方向内向きに延出された鍔状部965を有している。
一方、シール体97は、前記芯金96における鍔状部965の車輪側面965aの一部から内径側端部965bを回り込んで車体側面965c及び内側筒部961の内周面961cの全面と、第二接続部963Bの車体側面963Baの全面に加硫成型により一体に固着されている。また、シール体97は、スリンガ98における円輪部982の車輪側面982aに弾接するアキシャルリップ(シールリップ)97aと、円筒部981の外周面981bに、先端部が互いに反方向に向くよう弾接する2個のラジアルリップ(シールリップ)97b,97cとを有している。さらに本実施形態では、シール体97の最外径側部分に、車体側に向け拡径するリップ97dを有しており、このリップ97dは、図示を省略する車体の構成部分に近接乃至弾接して、ベアリングシール90A内への泥水等の浸入を防止するべく機能する。本例においても、外輪12が回転側部材及び固定側部材の一方の部材であり、スリンガ98を有する内輪15(内輪部材14)が回転側部材及び固定側部材の他方の部材である。
その他の構成は、図9に示すシール部材と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、その説明を割愛する。
図12は、図8のZ部の拡大図であって、本発明に係るシール部材のさらに別の実施形態を示す。本実施形態のシール部材101は、ハブフランジ132側(車輪側)のベアリングシール(密封装置)100を構成し、回転側部材及び固定側部材の一方の部材としての外輪12に取付けられる芯金(金属環)110と、芯金110に一体に固着されたシール体150とを有する。芯金110は、外輪12における車輪側端部121の内周面121aに嵌合される内側筒部111と、車輪側端部121の外周面121bに嵌合される外側筒部112と、内側筒部111及び外側筒部112を一体に接続する接続部113とを有する。接続部113は、内側筒部111の車輪側端部(一端部)111aと外側筒部112の車輪側端部(一端部)112aとに連続して径方向に延びる円板部をなす。接続部113は、当該芯金110における外輪12の車輪側端部121に対する嵌合状態では、車輪側端部121の車輪側端面121cに密着する。芯金110は、さらに、内側筒部111の車体側端部111bから径方向内向きに延出された鍔状部114を有している。
シール体150は、ゴム等の弾性体からなり、芯金110における鍔状部114の車体側面114aの一部から内径側端部114bを回り込んで、車輪側面114cの全面に加硫成型により一体に固着されている。シール体150は、ハブ輪13における立上基部131からハブフランジ132にかけての部分に嵌合によって取付けられたスリンガ部材(デフレクタ)160に弾接する3個のシールリップ150a,150b,150cを有している。本実施形態においては、スリンガ部材160を備えるハブ輪13(内輪15)が、回転側部材及び固定側部材の他方の部材に相当する。
スリンガ部材160は、ハブ輪13におけるハブ輪本体130と立ち上がり基部との間に車体側に向け形成された円筒状突部133の内周面133aに嵌合される内側筒部161と、円筒状突部133の外周面133bに嵌合される外側筒部162と、内側筒部161及び外側筒部162を一体に接続する接続部163とを有する。接続部163は、内側筒部161の車輪側端部161aと外側筒部162の車輪側端部162aとに連続して径方向に延びる円板部をなす。接続部163は、円筒状突部133に対するスリンガ部材160の嵌合状態では、円筒状突部133の車輪側端面133cに密着する。スリンガ部材160は、さらに、外側筒部162の車輪側端部162bから拡径するように延びるテーパ部164と、テーパ部164の外径側端部164aから径方向外向きに延びる円輪部165とを有している。円輪部165は、円筒状突部133に対するスリンガ部材160の嵌合状態では、ハブフランジ132のフランジ面132aに密着する。シールリップ150aは、スリンガ部材160における円輪部165の車体側面165aに弾接するアキシャルリップである。シールリップ150bは、テーパ部164の車体側面164bに弾接するアキシャルリップであり、さらに、シールリップ150cは外側筒部162の外周面162cに弾接するラジアルリップである。
本実施形態のシール部材101は、スリンガ部材160と組合わさってベアリングシール100を構成する。このように構成されるベアリンシール100を組付けた軸受装置11において、ドライブシャフト17(図8参照)の駆動回転に伴い内輪15が軸L1回りに一体的に回転する。この内輪15の回転により、シールリップ150a,150b,150cがスリンガ部材160に弾性的に相対摺接する。シールリップ150a,150b,150cのスリンガ部材160に対する弾性的相対摺接により、ハブフランジ132側からの軸受空間S1内へ泥水等が浸入することが阻止され、また、軸受空間S1内に充填されている潤滑剤の外部漏出が防止される。
なお、本実施形態において、ハブ輪13がスリンガ部材160を備えず、シールリップ150a,150b,150cがハブ輪13に近接乃至弾接して、シール部材101自体がベアリングシール100を構成するものとしてもよい。
そして、車両走行時に、外輪12に荷重が作用して、外輪12が径方向に変形した場合、芯金(金属環)110における内側筒部111及び外側筒部112の一方の筒部の外輪12に対する締め代が小さくなる。しかし、内側筒部111及び外側筒部112の他方の筒部の外輪12に対する締め代は大きくなる。したがって、外輪12が径方向に変形しても、芯金110に作用する嵌合力の総和が低下することが抑制され、外輪12に対する芯金110の取付け位置が安定的に維持され、芯金110が外輪12から外れることが抑制される。そして、シール体150が固着される芯金110の取付け位置が安定的に維持されるから、シールリップ150a,150b,150cが相対摺接するスリンガ部材160との相対的位置関係も維持され、シールリップ150a,150b,150cによるシール機能が低下することが抑制され、シール体150によるシール機能が精度よく維持される。また、シールリップ150a,150b,150cのスリンガ部材160に対する相対摺接に伴う回転トルクの変動も生じ難くなる。
また、本実施形態では、前記のよう構成されたスリンガ部材160が、回転側部材及び固定側部材の他方の部材の一部を構成しているから、車両走行時に内輪15に荷重が作用して、内輪15が径方向に変形した場合、スリンガ部材160における内側筒部161及び外側筒部162の一方の筒部の内輪15(ハブ輪13)に対する締め代が小さくなる。しかし、内側筒部161及び外側筒部162の他方の筒部の内輪15(ハブ輪13)に対する締め代が大きくなる。したがって、内輪15が径方向に変形しても、スリンガ部材160に作用する嵌合力の総和が低下することが抑制され、内輪15に対するスリンガ部材160の取付け位置が安定的に維持され、スリンガ部材160が内輪15から外れることが抑制される。その結果、スリンガ部材160とシールリップ150a,150b,150cとの相対的な位置関係も維持され、シールリップ150a,150b,150cによるシール機能が低下することが抑制され、シール体150によるシール機能が精度よく維持される。また、シールリップ150a,150b,150cのスリンガ部材160に対する相対摺接に伴う回転トルクの変動も生じ難くなる。
なお、図2〜図4、図11に示す例では、第一接続部63Aと第二接続部63Bとが、接着剤64によって一体化されているが、これに限らない。例えば、第一接続部63Aと第二接続部63Bとをスポット溶接やリベット止め等により一体化を図るようにしてもよい。また、各実施形態において、シールリップが相手部材に対して弾接する例について述べたが、これに限らず、シールリップが相手部材に対してラビリンスを形成する程度に近接或いは単に当接するように構成されるものであってもよい。シールリップの数や形成態様も図例に限定されるものではない。さらに、磁気エンコーダを構成する環状磁石として、ゴム材に磁性粉を含有させて成型したゴム磁石を例示したが、これに限らず、樹脂材に磁性粉を含有させて成型した樹脂磁石、或いは焼結磁石であってもよい。磁気エンコーダを構成する環状磁石は、N極及びS極が一定幅で複数形成されたものに限らない。例えば、N極及びS極が一定でない不等ピッチとなるように形成された形成された環状磁石で構成してもよいし、N極及びS極がそれぞれ一つずつ形成されているだけの環状磁石を構成してもよい。さらにまた、本発明の磁気エンコーダ、シール部材及び密封装置が適用される車両用軸受として、図示した以外のタイプの車両用軸受も適用対象とすることはもとより可能であり、産業車両や鉄道車両の軸受を適用対象としてもよい。