JP2009257549A - シール部材と、シール部材を備えたパックシールと、パックシールを備えた車輪用軸受装置 - Google Patents

シール部材と、シール部材を備えたパックシールと、パックシールを備えた車輪用軸受装置 Download PDF

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貴之 宮川
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Abstract

【課題】塩水あるいは土砂などの異物の浸入と、グリースの外部への漏出とを防止する性能を損なうことなく、長寿命化を図ることのできるシール部材および当該シール部材を備えたパックシール、そして当該パックシールを備えた車輪用軸受装置を提供する。
【解決手段】芯金17とシールゴム18が加硫接着されていて、シールゴム18は、少なくともメインリップ21fとサイドリップ21dとを有し、メインリップ21fはスリンガ16と径方向に摺接し、サイドリップ21dはスリンガ16と軸方向に摺接し、且つ、メインリップ21fとサイドリップ21dとは一体に構成され、中間部がサイドリップ21d、先端部がメインリップ21fである。
【選択図】図2

Description

本発明は、例えば車両(自動車)の車輪を懸架装置に回転自在に支持するための車輪用軸受のシール部材、及びそのシール部材を備えた車輪用軸受装置に関する。
各種機械装置の回転支持部に、玉軸受、円筒ころ軸受、円すいころ軸受等の転がり軸受が組み込まれている。また、このような転がり軸受にはパックシールが組み込まれて、この転がり軸受内部の環状空間に充填されたグリースが外部に漏洩することを防止するととともに、外部に存在する雨水、泥、塵等の各種異物を含んだ泥塩水が転がり軸受の内部に入り込むことを防止している。このパックシールのうち、断面L字形状の芯金の内側に複数のシールリップを有したシール部材を備え、断面L字状のスリンガと組合せて成る断面箱型のパックシールは、小型で低トルクであり、耐水性もよいため、車輪用軸受装置を中心に装着されてことが多い。
このような従来のパックシールのうち、シール部材に備えられた複数のシールリップは、例えば特許文献1に見られるように、シールリップ同士の動きの干渉を避け、各々が独立に機能するように設計されることが多い。
即ち、図3に従来例として示されるように、パックシール114は、シール部材115と、スリンガ116とを備えている。
前記シール部材115は、芯金117とシールゴム118とを有している。当該芯金117は、図示しない外輪の端部内周面に嵌合される芯金円筒部117aと、当該芯金円筒部117aの軸方向内方の端部から径方向内方に延出する芯金環状板部117bとを備えて、断面略L字形状で形成される。なお、ここで言う軸方向とは図の左右方向、径方向とは図の上下方向を示している。シールゴム118は、複数のシールリップ118a、118b、118cを有して、前記芯金117の軸方向外方の周面および端面に固着される。
一方、スリンガ116は、前記シール部材115に対向するように配され、図示しない内輪の端部外周面に嵌合されるスリンガ円筒部116aと、当該スリンガ円筒部116aの軸方向外方の端部から径方向外方に延出するスリンガ環状板部116bとを備え、断面略L字形状で形成される。
そして、前記シールリップ118a、118b、118cが、スリンガ円筒部116aの外周面、およびスリンガ環状板部116bの軸方向内方の端面に摺接する。これにより、図示しない転動体が配される環状空間の開口部一端を塞いでいる。
また、上述した従来のパックシールとは別に、シールリップ同士を連動させて、更なる耐水性の向上を図ろうとする例も知られている(例えば特許文献2)。特許文献2に記載されたパックシール214のシール部材215のうち1つは、図4に示すように、略V字形状部221を有して、複数のシールリップ221a、221bを備えている。複数のシールリップ221a、221bのうちスリンガ216のスリンガ円筒部216aに摺動するメインリップ221aは当該V字形状部221の溝部に嵌め込まれたスプリング220により、前記スリンガ円筒部216aの周面に押圧されるとともに、前記V字形状部221で最も外径側に位置し一端部に形成されたサイドリップ221bがスリンガ環状板部216bの端面に摺接している。このようなメインリップ221aとサイドリップ221bを有した構造においては、例えばメインリップ221aの摩耗が進んで前記スプリングの位置が下がると、サイドリップ221bの締め代が増大するようになっている。
一方、上述したようなパックシールが組み込まれる、車両の車輪を支持するための車輪用軸受装置は、雨水、水道水(洗車時など)、泥水(未舗装路など)、塩水(融雪剤など)、水蒸気などの泥塩水に曝された状態で長期間使用される。このため、車輪用軸受装置に組み込まれるパックシールには、密封性と耐久性(長寿命化)とを同時に確保することが求められている。
特開平10−252762号公報(図1) 欧州特許公報EP 1 650 481 A1(図2)
しかし、従来のパックシールに比べ更なる耐水性の向上を図ろうとしてなされたとされる特許文献2のものでは、シールリップとスリンガとにおける摺動面の摩耗は水分の無い良好な潤滑状態ではあまり進行しないことが知られているが、例えば車両の悪路での走行あるいは雨天時での走行など泥塩水がパックシール内に浸水して潤滑状態が悪くなるとシール部材が摩耗して、さらには土砂などの浸入があると、当該シール部材が土砂などを保持してしまい、結果的に前記摺動面の摩耗が速やかに進行することとなるので、この構造ではシールリップ間の連動をうまく機能させることができず、その上メインリップの摩耗が進んでいる状態となったときには、すでに泥塩水はサイドリップを通過している虞があり、そのため当該サイドリップの摩耗はすでに進行した状態となっている場合が多い。
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、泥塩水あるいは土砂などの異物の浸入と、グリースの外部への漏出とを防止する性能を損なうことなく、長寿命化を図ることのできるシール部材および当該シール部材を備えたパックシール、そして当該パックシールを備えた車輪用軸受装置を提供することにある。
上述した目的を達成するために、本発明は、下記の(1)〜(3)を特徴としている。
(1) 芯金とシールゴムが加硫接着されていて、
当該シールゴムは、少なくともメインリップとサイドリップとを有し、
前記メインリップは相手部材と径方向に摺接し、
前記サイドリップは相手部材と軸方向に摺接し、且つ、
前記メインリップと前記サイドリップとは一体に構成され、
前記シールゴムの中間部が前記サイドリップ、前記シールゴムの先端部が前記メインリップであることを特徴とするシール部材。
(2) 外輪相当部材の内周面と内輪相当部材の外周面との間に存在する環状空間の端部開口を塞ぐため、シール部材とスリンガとを有するパックシールにおいて、
前記シール部材が(1)に記載のシール部材であり、
前記相手部材は前記スリンガとされて、前記メインリップと前記サイドリップとが前記スリンガと摺接することを特徴とするパックシール。
(3) 内周面に外輪軌道を有する外輪相当部材と、
外周面に内輪軌道を有する内輪相当部材と、
当該外輪軌道と当該内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数の転動体と、
前記外輪相当部材の内周面と前記内輪相当部材の外周面との間に存在する環状空間の端部開口を塞ぐため、シール部材とスリンガとを有するパックシールと、を備えた車輪用軸受において、
前記シール部材が(1)に記載のシール部材、または前記パックシールが(2)に記載のパックシールであることを特徴とする車輪用軸受装置。
本発明によれば、泥塩水あるいは土砂などの異物の浸入と、グリースの外部への漏出とを防止する性能を損なうことなく、長寿命化を図ることができる。
以下、本発明に係る好適な実施形態を添付図面に従って詳細に説明する。図1は本発明に係る車輪用軸受装置の断面図であり、図2の(a)は本発明に係るパックシールを示す、図1のA部の拡大要部断面図であり、(b)は自由状態でのシールゴムの断面U字形状部を示す要部断面図である。
図1は、本発明に係るパックシールを備えた車輪支持用軸受装置の一例として、車両(自動車)の駆動輪を懸架装置に回転自在に支持するための構造を示している。
当該車輪支持用軸受装置は、外輪相当部材に相当する外輪1と、内輪相当部材に相当するハブ2と、複数の転動体である玉3、3とから構成される。このうちハブ2は、ハブ本体4と内輪素子5とを組み合わせて構成される。また、前記玉3、3は、前記外輪1の内周面に形成された複列の外輪軌道6、6と、前記ハブ2の外周面に形成された複列の内輪軌道7、7との間に、それぞれ複数個ずつ、転動自在に配設されている。前記車輪支持用軸受装置の使用時、即ち車両の懸架装置に車輪を回転自在に支持する際には、前記外輪1を、懸架装置を構成するナックル8に固定するととともに、前記ハブ本体4に設けられた取付フランジ9に車輪を固定する。また、図1に示す構造は、車輪のうち駆動輪を支持するための構造であり、このハブ本体4の中心部に設けたスプライン孔10に、等速ジョイント11が連結されたスプライン軸12が挿嵌されている。
このような車輪支持用軸受装置では、前記玉3、3が配される環状空間13にグリースが充填され、これら玉3、3の転動面と、前記外輪軌道6、6および前記内輪軌道7、7との転がり接触部を潤滑している。また、前記外輪1の両端部内周面と、前記内輪素子5の軸方向外側の端部外周面および前記ハブ本体4の軸方向中間部外周面との間には、それぞれパックシール14aとシールリング14bとが配設され、前記環状空間13の両端開口部が塞がれている。
シールリング14bは、前記取付フランジ9の基端部に位置して前記環状空間13の他端の開口部を塞いでいる。当該シールリング14bは、図示しない芯金と、図示しないシールゴムとから構成され、このうちの芯金は、断面略S字形で全体を円環状に形成されており、前記シールゴムは複数のシールリップを有して、前記芯金に周方向に亙って固着されている。
一方、本発明に係るパックシール14aは、前記環状空間13の軸方向外方で等速ジョイント11側に位置して開口部(図1の右側)を塞いでおり、図2(a)、(b)に示すように構成される。即ち、当該パックシール14aは、スリンガ16と、シール部材15とから構成される。
このうち前記スリンガ16は、前記シール部材15に対向するように配され、前記内輪素子5の端部外周面に外嵌されるスリンガ円筒部16aと、当該スリンガ円筒部16aの軸方向外方の端部から径方向外方に延出するスリンガ環状板部16bとを備え、断面略L字形状で形成される。
そして、前記スリンガ環状板部16bの軸方向外方(図2の右側)には、円環形状の磁気エンコーダ30が周方向に亙って取り付けられている。当該磁気エンコーダ30の軸方向外方の端面26には、N極が着磁されたN極着磁部と、S極が着磁されたS極着磁部と、が周方向に順次配置される。これにより、図示しないセンサにより車輪の回転数を検出可能となる。
一方、シール部材15は、芯金17とシールゴム18とから構成される。当該芯金17は、前記外輪1の端部内周面に嵌合される芯金円筒部17aと、当該芯金円筒部17aの軸方向内方の端部から径方向内方に延出する芯金環状板部17bとを備えて、断面略L字形状で形成される。そして、前記シールゴム18は、例えばゴムなどの弾性を有する樹脂により略円環形状に形成されて、前記芯金17の前記スリンガ16に対向する面に周方向に亙って固着される芯金固着部19と、当該芯金固着部19の径方向内方の一端部から前記スリンガ円筒部16aに向かって延出したシールリップ部20と、断面が斜め略U字形状に形成されて前記芯金固着部19の一端と接続する断面U字形状部21とを有して形成されている。なお、シールゴム18と芯金17との固着は、接着性を考慮して、加硫接着が好適である。
前記断面U字形状部21は、図2(b)に示すように、自由状態、即ち前記スリンガに組付ける前の状態において、前記芯金固着部19の径方向内方の一端から軸方向と径方向との両方で外方に向かって斜めに延出する第1断面直線状部21aと、当該第1断面直線状部21aの端部から径方向内方に鈍角にして斜めに延出する第2断面直線状部21cと、当該第2断面直線状部の端部から軸方向と径方向との両方で内方に向かって斜めに延出する第3断面直線状部21eと、前記第1断面直線状部21aと前記第2直線状部21cとを接続する第1屈曲部21bと、前記第2断面直線21c状部と前記第3断面直線状部21eとを接続する第二屈曲部21dとを有する。
ここで、第2屈曲部21dは、前記スリンガに組付ける際、スリンガ環状板部16bの端面と締め代(自由状態からの弾性変形量)を有して軸方向に摺接し、シールゴム18の最も外径側に位置するサイドリップとして機能している。また、前記断面U字形状部21の開口側に位置する、第3断面直線状部21eの一端部(先端部)21fはスリンガ円筒部16aの周面に締め代を有して周方向に摺接して、メインリップとして機能している。即ち、前記シールゴム18はサイドリップ(第2屈曲部)21dの端部からスリンガ円筒部16aに向かうように斜めに延出してメインリップ(先端部)21fが形成されてなる一体構造を有し、これによりシールゴム18の中間部にサイドリップ21dが、そして先端部にメインリップ21fが位置している。また、取付けの際には、図2の点線と実線とで示すように、前記断面U字形状部21全体が、第1断面直線状部21aと芯金固着部19との接続部を中心として軸方向内方に屈曲した状態で弾性変形する。
さらに、組付けの際、メインリップ21fで発生する緊迫力(スリンガ円筒部16aに対する押圧力)は締め代により発生するフープストレス(周方向の圧力)により発生し、これは前記サイドリップ21dの影響を受けることなく略一定である。ただし、メインリップ21fとスリンガ円筒部16aの周面との摺動位置は、サイドリップ21dの摺動位置に連動して移動することとなる。即ち、断面略U字形状部21の根元部、即ち第1断面直線状部21aと芯金固着部19との接続部は固定され、その上メインリップ21fも径方向に対し固定された状態であるので、シールゴム18全体は軸方向にのみ移動可能となっている。
このようなメインリップ21fとサイドリップ21dの構造において、サイドリップ21dに摩耗が発生した場合は、断面U字形状部21が元の状態(自由状態)に戻ろうとして、第1屈曲部21bが径方向外方に向かって変形し、これに伴ってメインリップ21fでは摺動面がスリンガ環状板部16bに近づいて、軸中心との交差角が大きくなる。さらにサイドリップ21dでの摺接面は、摩耗が発生するときよりも径方向外方に移り、またメインリップ21fでの摺接面も同じく軸方向外方に移って、それぞれ摺接するようになる。
なお、図2の(b)に示すようにスリンガと組合せる前の状態、即ち自由状態でのサイドリップ(第2屈曲部)21fにおける径方向に対する角度α°(径方向外方)、β°(径方向内方)との関係をα>βとして形成することで、組付け時にサイドリップ21fは径方向寸法で小さくなるように弾性変形することとなる。
したがって、本実施形態によれば、シールゴム18はメインリップ21fとサイドリップ21dとを有し、メインリップ21fはスリンガ16と径方向に摺接し、サイドリップ21dはスリンガ16と軸方向に摺接し、且つ、メインリップ21fとサイドリップ21dとは一体に構成され、中間部がサイドリップ21d、先端部がメインリップ21fであるので、サイドリップの摩耗が進行した際にもメインリップの緊迫力を変化させることなく、これらリップ間の良好な連携を得て、塩水あるいは土砂などの異物の浸入と、グリースの外部への漏出と、を防止する性能を損なうことなく、長寿命化を図ることができる。このため、本実施形態はシール性能、耐久性性能への要望が特に厳しい車輪用軸受に好適である。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、形態、数、配置場所、などは本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
本発明に係る車輪用軸受の断面図である。 (a)本発明に係るパックシールを示す、図1のA部の拡大要部断面図であり、(b)は自由状態でのシールゴムの断面U字形状部を示す要部断面図である。 パックシールの従来例を示す要部断面図である。 別のパックシールの従来例を示す要部断面図である。
符号の説明
1 外輪(外輪相当部材)
2 ハブ(内輪相当部材)
5 内輪素子(内輪相当部材)
14a パックシール
15 シール部材
16 スリンガ
17 芯金
18 シールゴム
21d 第二屈曲部(サイドリップ)
21f 先端部(メインリップ)

Claims (3)

  1. 芯金とシールゴムが加硫接着されていて、
    当該シールゴムは、少なくともメインリップとサイドリップとを有し、
    前記メインリップは相手部材と径方向に摺接し、
    前記サイドリップは相手部材と軸方向に摺接し、且つ、
    前記メインリップと前記サイドリップとは一体に構成され、
    前記シールゴムの中間部が前記サイドリップ、前記シールゴムの先端部が前記メインリップであることを特徴とするシール部材。
  2. 外輪相当部材の内周面と内輪相当部材の外周面との間に存在する環状空間の端部開口を塞ぐため、シール部材とスリンガとを有するパックシールにおいて、
    前記シール部材が請求項1に記載のシール部材であり、
    前記相手部材は前記スリンガとされて、前記メインリップと前記サイドリップとが前記スリンガと摺接することを特徴とするパックシール。
  3. 内周面に外輪軌道を有する外輪相当部材と、
    外周面に内輪軌道を有する内輪相当部材と、
    当該外輪軌道と当該内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数の転動体と、
    前記外輪相当部材の内周面と前記内輪相当部材の外周面との間に存在する環状空間の端部開口を塞ぐため、シール部材とスリンガとを有するパックシールと、を備えた車輪用軸受において、
    前記シール部材が請求項1に記載のシール部材、または前記パックシールが請求項2に記載のパックシールであることを特徴とする車輪用軸受装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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