このような筆記具として、使用時に手や指先が直接、触れる箇所として、外装を構成する部品の少なくとも手で触れるよう外露する(筆記具の外側から見える部品)一部として、先部材、軸筒、把持部材(グリップ)、押圧部材(ノック)、クリップなどが挙げられる。
外装を構成する部品は、外装を構成する部品と別部品を組み合わせることもでき、外装を構成した部品は、1部品で形成したものや、複数の部品を圧入や螺合、接着、溶着、嵌合などの方法で一体に形成したもの、内部品の周りに本発明の外装を構成する部品を設けた多重構造の部品、2色成形部品などでも良く、外装を構成する部品の少なくとも手で触れるよう外露する一部が、あれば適宜選択可能である。
本発明の外装を構成する部品は、高分子材料に金属粉を分散配合した材料を使用するため、射出成形が可能であり、複雑な形状に成形でき、大量生産出来るため、コストを低くすることができる。更に、金属粉を含むことで高分子材料よりも高い熱伝導率を得ることができ、外装を構成する部品の少なくとも手で触れるよう外露する一部を手や指が直接、触れた際に冷感を得ることができる。
金属粉は、真鍮( 黄銅) 、金、銀、ステンレス、炭素鋼、ニッケルクロム鋼、タングステン、鉄、銅、白金などが挙げられ、その粒度は2μm以上〜500μm以下のものが使用でき、金属粉の粒子の形状は、球形粉、粒状粉、樹枝状粉、片状粉、角状粉、海綿状粉、不規則形粉に分類される。球形粉は、球状の粒子からなる粉末である。粒状粉は、球状に近い形、または涙滴状の粉末である。樹枝状粉は、樹木の枝の用な形の粉末である。片状粉は、粉末の厚さが非常に薄く展延された粉末である。角状粉は、角ばった粒子からなる粉末である。海綿状粉は、多孔質粒子からなる粉末である。不規則形粉は、対称性を欠く粒子からなる粉末などが挙げられ、1種もしくは2種以上を混合したものを組み合わせて配合することが可能である。
高分子材料は、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体樹脂(ABS)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリスチレン樹脂(PS)、ポリアミド(ナイロン)樹脂(PA)、ポリカボネート樹脂(PC)などの高分子材料の樹脂が挙げられ、1種もしくは2種以上を混合したものを組み合わせて配合することが可能である。
この金属粉を高分子材料中に分散配合した複合高分子材料の射出成形品は、その射出成形品の厚さ方向には、表面側に現れる高分子材料で構成されたスキン層と内側に現れる高分子材料に金属粉を分散配合した材料で構成されたコア層に分別される。スキン層の厚さは、成形品の形状や成形条件により若干変わるが、50μm〜300μmと非常に薄いため、手や指で直接、触れた際に冷感を阻害することはなく、更に、手の汗などと金属粉の化学反応による熱伝導率の低下を防ぐことができる。
外装を構成する部品を、金属粉として使用される金属材料の種類や配合比率によって、筆記具の重量%を調整することができ、筆記具の外観、外径、全長などあまり変えることなく、筆記具全体としての重量バランスの調整(重心位置の調整)や、強度を調整することができるので、デザイン性に制約のない筆記具を得ることができる。
更に、外装を構成する部品を、高分子材料に51重量%以上79重量%以下の金属粉を分散配合した材料で成形することで、外装を構成する部品に負荷がかかったり、落下による衝撃で割れてしまう恐れが無くなるため、強度を確保しつつ、外装を構成する部品を、手や指が直接、触れた際に冷感が得られ、コストも低く抑えることができる。
また、外装を構成する部品を、高分子材料に79重量%より高く、金属粉を分散配合した材料で成形すると、高分子材料中の金属粉の占有率が上がり、高分子材料同士の結合力を弱めるため、落下時の衝撃で割れが発生する恐れがある。
また、外装を構成する部品を、高分子材料に51重量%より低く、金属粉を分散配合した材料で成形すると、熱伝導率が低くなり、手や指が直接、触れた際に冷感が得られず、金属がもつ比熱により、手や指が直接、触れた際の心地よい冷感が持続する効果も得られない。
更に、外装を構成する部品の少なくとも手で触れるよう外露する一部に、複数の突部を設けることで、突部と突部の間にできる溝に空気が流通し、外装を構成する部品の少なくとも手で触れるよう外露する一部である、外観表面の冷却を促進することができる。これにより、手や指で直接、触れた際に上昇した外装を構成する部品の少なくとも手で触れるよう外露する一部である、外観表面温度を素早く下げることができる。
図面に基き一例について説明する。(図1参照)
尚、以下の説明では、後述の先部材1側を前方と言い、押圧部材2側を後方と言う。
軸筒3は、先部材1と、その先部材1の後方に配置された軸筒本体4とから構成されており、軸筒本体4は前軸5と後軸6から構成されている。そして、軸筒3の内部には芯繰り出しユニット8が配置されている。尚、本実施例では、前軸5はその外周面5aが把持部5bとなっている。
本実施例では、外装を構成する部品としては、先部材1、押圧部材2、前軸5、後軸6、クリップ7が該当し、外露する一部としては、前軸5の外周面5aの把持部5bが該当するものとなっている。このような組み合わせの他に、外装体から一部を外露する物として、繰り出し式の筆記具における操作部材や、部分的に突出するようになした把持部のクッション部材などを、本願で使用する複合高分子材料とすることができる。
本実施例では、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体樹脂(ABS)製の後軸6を成形し、これに、ナイロン6樹脂(PA6)に鉄粉を分散配合した材料から形成した前軸5をインサート成形して一体の軸筒本体4を形成しているが、ナイロン6樹脂(PA6)に鉄粉を分散配合した材料のみの一本軸として軸筒全体を構成することもできる。前軸5と後軸6は、ナイロン6樹脂(PA6)とアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体樹脂(ABS)の組合せによって、接触部に接着性を有しているが、他に接着性を有する組合せとしては、前軸と後軸をどちらもアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体樹脂(ABS)にしても良く、適宜選択すれば良い。
本例の筆記具の前軸5における把持部5bは、その横断面外径形状が12角形で形成され、その外周面5aに周方向に連続した複数の太めの全周溝が長手方向で、かつ、前方から後方に向かって徐々に幅同士の間隔を広げて形成され、更に、太めの全周溝と全周溝の間に細めの全周溝が単数もしくは複数、長手方向に形成されている。これにより、溝の間に空気の流通し、軸筒の外観表面の冷却を促進することができ、把持されることで上昇した軸筒の表面温度を下げることができる。(図2参照)
また、この形状に限らず、溝幅が均等でかつ連続した波の様な形状や周方向と垂直に連続する溝を設けた形状でも構わない。溝幅が均等でかつ連続した波の様な形状とすることで、把持する際の指の指紋に引っ掛かり滑り止めの効果がある。また、周方向と垂直に連続する溝を設けることで、万が一溝にごみなどが付着した場合での速やかに取り除く事が出来る。
先部材1は、内部に、先端リング9を圧入固定すると共に、前後に摺動可能なスライダー10を先端スプリング11により前方に付勢して収容し、軸筒本体4の前軸5にネジ螺合により連結されている。先端スプリング11は、より詳細には、先端リング9の内段部9aとスライダー10の外段部10aとの間に張設されている。
軸筒本体4内部には芯繰り出しユニット8がクッションスプリング12により前方に付勢するように配され、使用時に高い筆圧がかかった際にクッションスプリング12が伸縮し、筆記芯Lに対する衝撃を緩和している。また、後述する芯繰り出しユニット8内の前方に配設されたチャックセット13が先部材1に内包されるように芯繰り出しユニット8を配することで、先部材1とチャックセット13の軸方向における中心線が同軸上となり、芯繰り出しユニット8から先部材1にかけて筆記芯Lを案内することができる。
後軸6の後方外周部に形成された縮径部6aにはクリップ7が嵌め込まれている。
スライダー10は、その前方にステンレス製のパイプ14を、内部に芯保持部材15を、それぞれ圧入固定し、前方外周部に形成した凹部10bにOリング16を装着している。尚、本実施例にあっては、芯保持部材15はその外周面全体をスライダー10の内径部に圧入固定しており、より詳細には、筆記芯Lを保持する芯保持部15aが内部に形成されている部分である芯保持部材15の前方外周面をスライダー10に圧入することで、芯保持部15aの内径を縮径している。そうすることで、芯保持部材15を成形する際に芯保持部15aを形成する為のコアピンの径を実際に使用する際の芯保持部15aの内径よりも大きくすることができ、コアピンの強度が増し安定した生産を行うことができる。この構成は筆記芯Lの芯径が細く芯保持部15aの形成が難しい場合、具体的には、呼び直径が0.3、0.2やそれ以下の呼び直径の芯に対して特に有効である。更に、芯保持部材15の後方外周部もスライダー10に圧入固定することで、スライダー10から芯保持部材15が容易に抜けないようにしている。
またスライダー10の内部で芯保持部材15の後方に芯保持部材抑え17が圧入固定されている。この芯保持部材抑え17は外径がスライダー10の内径よりも若干大きく、内径は芯Lの直径が平行に2本並ばない様にした寸法を持った内径を備えており、芯保持部材抑え17の後端部にはすり鉢状に形成された芯挿通部17aを形成し、チャック体18の先端から芯保持部材15までのスペースにおいて、芯を芯保持部材15にスムーズに挿通させ、挿通後、2本目の芯が芯保持部材後方に来た場合においても、芯が2本重なることがなく、更には芯保持部材15が経時等で万が一外れかかった場合でも紛失することなく、使用可能な状態を維持する効果がある。
筆記の際には、筆記芯Lの摩耗によってパイプ14が紙面に触れた場合でも、筆記による筆記芯Lの摩耗と共に筆圧によってパイプ14が紙面に押されて後方へと後退するため、筆記を継続でき、パイプ14を紙面から離すと先端スプリング11によりスライダー10が前進する。後述する筆記芯の前進は許容するが後退は阻止するように筆記芯を把持できるチャック体18と併用することで、先端スプリング11によりスライダー10が前進する際、芯保持部材15に保持された筆記芯Lを常にパイプ14の先端まで引き抜くことができるため、持ち替えて後端の押圧部材2をノックせずとも筆記芯Lが筆記状態を維持できることから連続して筆記が可能となる。
また、携帯時には、Oリング16によりスライダー10を先端リング9内部に嵌合させ、スライダー10の前後の移動を停止することで不意の筆記芯Lの突出を防止することができる。再度使用する際は、押圧部材2を押圧して芯繰り出しユニット8によりスライダー10の後端を押し、Oリング16と先端リング9との嵌合を解除することで、スライダー10が前進し、筆記可能となる。
前述した通り、筆記芯Lの前端面がパイプ14の前端面と略同位置となった状態や、当初パイプ14の前端面よりも突出していた筆記芯Lが摩耗により、筆記芯Lの前端面がパイプ14の前端面と略同位置となった状態でも筆記による筆記芯Lの摩耗と共に筆圧によってパイプ14が紙面に押されて後方へと後退するため、筆記を継続することができる。
この構成は筆記芯の芯径が細い場合、具体的には、呼び直径が0.3、0.2やそれ以下の直径の筆記芯に対して特に有効である。筆記芯Lをパイプ14から突出させず、筆記芯Lがパイプ14でガイドされた状態での筆記が可能となり、筆記時における筆圧の変化があった際や、筆記芯Lが紙面へひっかかった際にも筆記芯Lの折損を防止することができる。
芯繰り出しユニット8は、前方にチャックセット13を有する。そのチャックセット13には前方に向けて拡径するテーパー部19aを内部に形成するリング19が設けられており、リング19の内部にはスリット18aにより芯把持部18bを有する弾性片18cに2分割されると共に、弾性片18cの前端面に前方に向けて軸方向ストレートに突出する形で形成された先端部18dを有するチャック体18が配され、テーパー部19aとチャック体18の各弾性片18cに形成されたボール受座18eとの間にそれぞれボール20が挿入されている。弾性片18cが2つあることから、2つのボール20はその径方向で対向した位置に配置される。また、チャック体18の後端に形成した外鍔部18fとリング19の内段19bとの間に配設したチャックスプリング21により、チャック体18を後方に付勢することで、リング19とチャック体18の間にボール20を介してくさび効果が発生し、筆記芯Lの前進は許容するが後退は阻止することができる。リング19の前方には、内部に横断面が円形の貫通孔22aを有すると共に、後方部に凸部(当接部)22bを有するチャックストッパー22(ストッパー部材)がカシメにより固定されており、チャック体18及びボール20が前方に脱落しないようにされている。
ここで、チャックストッパー22は凸部(当接部)22bがリング19のテーパー部19aの内径部に位置するよう配設される。
また、本実施例におけるチャック体18及びチャックストッパー22は真鍮(黄銅)により形成しているが、鉄やステンレス鋼、アルミニウム合金などの金属材料や、ポリオキシメチレン(アセタール)樹脂(POM)、ポリカーボネート樹脂(PC)により成形してもよく、また、ガラス繊維強化樹脂など、使用する材質は特に限定されない。また、本実施例におけるリング19は、真鍮(黄銅)により形成しているが、ステンレス鋼やポリカーボネート樹脂(PC)により成形しても良く、また、ガラス繊維強化樹脂など、使用する材質は特に限定されない。更に、本実施例におけるボール20は、超鋼により形成しているが、洋白やポリオキシメチレン(アセタール)樹脂(POM)により成形しても良く、また、ガラス繊維強化樹脂など、使用する材質は特に限定されない。
チャック体18について詳述する(図3、4参照)。
本実施例のチャック体18は2つ割りチャックであり、全体がリング19に囲繞されている。
チャック体18の外部形状について説明する(図5参照)。前方部には頭部18gが形成されており、その頭部18gの前端面には前方に向けて軸方向ストレートに突出する形で形成された先端部18dが形成されている。その先端部18dは、横断面で見た際に、略半円形の形状の両側面を落としたカット部18hが形成されており、その外形状は、頭部18gの外径よりも小さく、また、チャックストッパー22の貫通孔22aの内径よりも小さく形成されており、チャック体18の芯把持時18bや開閉動作時には、先端部18dは貫通孔22aを前後動可能であり、当接はしない大きさに形成されている。頭部18gの後方部はテーパー形状に形成されており(外テーパー部18i)、その外テーパー部18iより前方側の頭部18gには、外観が凹曲面(凹部)のボール受座18eが形成されている。本実施例にあっては、ボール受座18eの縦断面形状は、2種類の曲線部を組み合わせてなり、前方側の曲線部を第1曲線部18jと称し、後方側の曲線部を第2曲線部18kと称する。本実施例にあっては、第1曲線部18jの曲率半径よりも第2曲線部18kの曲率半径を小さいものとしている。頭部18gの後方には、頭部18gの外テーパー部18iから連接して縮径部18lが形成されており、その縮径部18lの後方には縮径部18lよりも外径が大きい大径部18mが形成されている。その大径部18mの後方には、外鍔部18fが形成されており、外鍔部18fは大径部18mよりも外径が大きく形成されている。
次に、チャック体18の内部形状について説明する(図6参照)。チャック体18の前方部には芯把持部18bが形成されており、その芯把持部18bの後方には第1内テーパー部18nが、そして、その第1内テーパー部18nの後方には芯把持部18bよりも内径が大きい芯挿通孔18oが形成されている。芯把持部18bは、先端部18dの前端から頭部18gの中間部あたりにまで形成されている。芯挿通孔18oには、後述する芯ガイドパイプ23の前方部が配設されており、芯挿通孔18oの後方には第2内テーパー部18pが形成されている。また、本実施例のチャック体18では、弾性片18cに形成した芯把持部18bを先端部18dの内面にも連接して形成しているが、先端部18dの内面に芯把持部18bを形成せず、芯把持部18bの内径より大きい孔としても良く、例えば、芯把持部の大きさよりも大きい円筒状に形成しても良い。また、先端部18dを形成せず、チャック体18の前方部は頭部18gのみとしても良い。本実施例のように、先端部の内面にも芯把持部を形成した場合には、芯把持部の面積を拡大できるため、筆記芯Lをより確実に把持することができる。
チャック体18の先端部18dの前端から縮径部18lの後方部にかけては、チャック体18の横断面を軸方向に均等に2分割するスリット18aが形成されている。このスリット18aの前端部から後端部におけるチャック体18の部位を弾性片18cと称し、本実施例では、スリット18aが2箇所に形成されているため、2つの弾性片18cがある。各スリット18aの後端部は、各弾性片18cの支点であり、各弾性片18cは支点から前方にかけて拡開するように形成されることで、チャック体18は拡開状態を維持しようとする自開力を有する。筆記芯Lの繰り出し操作時には、支点を起点に各弾性片18cが開閉することで、筆記芯Lが把持・解放される。尚、チャック体18を分割するスリット18aは一定の幅で連続して形成することで、スリットの加工が容易になり、更にばらつきなく常に一定の力でチャック体を拡開させることができるので安定した品質のチャック体を供給することができる。
チャックセット13後方には、頂点に平面部を有する略台形形状とした係合突起24aが後方内径部に形成された弾性片部24bを有し、後端が拡開可能な係止具24がリング19に圧入されている。係止具24には、中継部材25が内包されており、その中継部材25の前端に形成された大径部25aの後端面と係止具24の前端面とが当接している。また、中継部材25の後方外周面には係合突起24aと係合する係合溝25bが形成されており、その係合溝25bは、係止具24の係合突起24aと係合し、その係合突起24aに形成された平面部の部品軸方向の長さよりも、開口部が長い略三角形状に形成されている。中継部材25の内部には、内径を挿通させる筆記芯1本以上で2本未満とした芯ガイドパイプ23が配設されている。その芯ガイドパイプ23を中継部材25の後方内部からチャック体18の芯把持部18bの近傍にかけて配設し筆記芯Lを案内することで、中継部材25の後方外径部に圧入され筆記芯Lを収納する芯タンク26から、チャック体18のスリット18aに筆記芯Lが挟まることなくチャック体18の芯把持部18bまで確実に筆記芯Lを挿通させることができる。また、中継部材25の後方部であり芯ガイドパイプ23と芯タンク26との間に、筆記芯が1本しか通らず、かつ芯ガイドパイプ23の内径よりも小さくなるように芯挿通孔25cを設けることで、芯タンク26から芯ガイドパイプ23まで確実に筆記芯を1本だけ挿通することができる。チャックセット13、係止具24及び中継部材25は、それらを囲繞するように配置された中子27を介し、芯タンク26と中子27の間に配設されたノックスプリング28により後方に付勢されている。また、芯タンク26の後端には消しゴム受け部材29が圧挿され、消しゴム受け部材29には消しゴム30、そして、押圧部材2が着脱自在に取り付けられている。消しゴム30には芯除去ピン31が圧入により固着されているが、必ずしも設けずとも良い。
また押圧部材2は嵌合パイプ2aと押圧カバー2bからなり、嵌合パイプ2aに押圧カバー2bを圧入固定することで形成されている。ここで嵌合パイプ2aの側面略中央部に長方形のスリット部2cを設け、このスリット部2cを内側に撓ますことで内径を収縮させ、消しゴム受け部材29に嵌め合わせた際、適度な嵌合力を発生させ押圧部材2が容易に抜けないようになっている。嵌合パイプ2aに圧入固定されている押圧カバー2bにおいては、内径が嵌合パイプ2aの外径よりも若干小さくできており、押圧カバー2bの外径においては、後軸6の後端部内径よりも若干小さい外径部と後軸6の後端部内径の径よりも若干大きい外径部を設け、若干小さい外径部は若干大きい外径部に比べ軸線方向の距離が長い形状となっている。また若干大きい外径部の後端側、つまり押圧部材2後端部の側面に若干の深さを持った凹部が存在する。この凹部は、使用者がノック時に押圧部材2を直接見ないでも押圧部材2があることがわかるようにする効果があり、更には指先で押圧部材2を押した際その指と押圧部材2とが滑ることがないように滑り止めの効果も得ることが出来る。またこの凹部においては、この部分に芯径を表示するシール貼付けてもよく、シールを貼り付けた場合、凹部の効果により、指がシールの縁に触れることがないため、シールに塗布されている接着材が指に付着することがなく、更には使用していてシールが剥がれたりするのを防ぐといった効果がある。
次に、シャープペンシルの後端に設けた押圧部材2の押圧による芯繰り出し操作について説明する。(図1参照)
1本目の筆記芯Lを繰り出す際は、まず軸筒3前方を鉛直下向きに向けることで、芯タンク26に収納された筆記芯Lが、チャック体18における弾性片18cの芯把持部18bの後端まで自重で落下する。前述した芯ガイドパイプ23及び中継部材25に形成した芯挿通孔25cを配設したことで、1本の筆記芯Lを確実にチャック体18の芯把持部18bの後端まで挿通することができる。
次に押圧部材2を軸筒3の前方方向に押圧し始めると、芯タンク26と共に、芯タンク26の前方に圧入された中継部材25も前進する。この時、中継部材25に形成された係合溝25bと係止具24における弾性片部24bの内面に形成された係合突起24aは係合状態となっており、係止具24及び係止具24の前端に圧入固定されているチャックセット13は、先端リング9の後端にチャックセット13の前端が当接するまで中継部材25と一体となって前進する。この時スライダー10が収納された状態であれば、スライダー10の後端にチャックセット13の前端が当接しスライダー10を前方に押し出すことで、先端リング9の内部に嵌合されていたOリング16の嵌合が外れ、先端スプリング11の弾撥力によりスライダー10が前方に付勢される。
チャックセット13の前端が先端リング9の後端に当接して、係止具24及びチャックセット13の移動が停止しても、係止具24の後端は拡開可能なため、押圧部材2の押圧が可能となっている。そして、押圧部材2の押圧を続けることで、係止具24における弾性片部24bは、押圧部材2を軸筒3の前方方向に押圧する荷重(以後、ノック荷重とする)により外側に撓み、中継部材25との係合が解除される。そして、芯タンク26と中継部材25のみ前進が可能となり、係止具24及びチャックセット13は停止しているが、芯タンク26と中継部材25は前進するという相対的な動きの差を付けることができる。
押圧部材2の押圧を続け、中継部材25の前端でチャック体18の後端を押圧し、チャック体18を前進させることで、チャック体18に形成された先端部18dは、チャック体18が閉じた状態でチャックストッパー22の内部に形成された貫通孔22a内に挿通する。そして、更にチャック体18が前進し、ボール20とリング19とのくさび効果が解除された時点でチャック体18が拡開する。この時点で筆記芯Lはスライダー10内の芯保持部材15における芯保持部15aの後端まで自重落下する。押圧部材2の押圧による中継部材25と芯タンク26の前進は、芯タンク26の前端と係止具24の後端が当接した時点で終了となる。
押圧部材2への押圧を解除すると、中継部材25と芯タンク26はノックスプリング28により後退する。この時、係止具24の弾性片部24bにより中継部材25を挟持しているため、中継部材25と係止具24は係止状態となっており、係止具24が中子27の内段27aに当接し、移動が停止するまで中継部材25と係止具24及びチャックセット13は一体となって後退する。係止具24が中子27の内段27aに当接するまでの間、チャック体18は中継部材25に押圧され拡開した状態となっている。
係止具24が中子27の内段27aに当接した後、中継部材25と芯タンク26が後退することでチャック体18への押圧も解除され、チャックスプリング21によりチャック体18が閉じ、くさび効果が発生するので芯把持状態となり、チャック体18は筆記芯Lを把持していない状態に比べ前方で停止する。この時、先端部18dはチャックストッパー22の貫通孔22aに内挿された状態となっている。その後、中継部材25と芯タンク26は更に後退し、中継部材25に形成された係合溝25bと係止具24における弾性片部24bの内面に形成された係合突起24aが再度係合状態となったと同時に、中継部材25の大径部25aの後端が係止具24の前端に当接して、全ての後退が終了する。
この後、再度押圧部材2の押圧による芯繰り出し操作を行い、係止具24と中継部材25が係合した状態で、芯把持状態のチャック体18をチャックセット13ごと前進させることで芯保持部材15に筆記芯Lを挿入し、係止具24と中継部材25の係合解除による係止具24と中継部材25及び芯タンク26の相対的な動きの差を利用して、更にチャック体18を前進させてチャック体18を拡開した後、中継部材25と係止具24が係止状態のまま後退することで、チャック体18の拡開状態を保ちながらチャックセット13を後退させる。係止具24が中子27の内段27aに当接後、中継部材25と芯タンク26のみが後退することでチャック体18への押圧も解除され、チャックスプリング21によりチャック体18が閉じ、再度芯把持状態となり、筆記芯Lの先端は芯保持部材15内の前進位置にとどまるので筆記可能状態に近づく。
そして、押圧部材2の押圧操作を繰り返し、パイプ14の前端面まで筆記芯Lを前進させた時に、筆記が可能となる。前述の通り、筆記芯Lは、パイプ14から突出させても良い。
尚、本実施例では押圧部材2の後端を押圧する後端ノック構造を採用しているが、後方からの押圧によってチャック体を前後動かつ開閉動することができればよく、筆記芯Lの繰り出し操作はサイドノック、サイドスライド、中折れノックなどの構造を採用することができ、特に限定されない。
チャック体18の先端部18dとチャックストッパー22について、詳述する。(図4参照)
チャックストッパー22の外部形状は、その前方から、後方に向かって拡径するテーパー部22c、そのテーパー部22cの後方に形成された小径部22d、その小径部22dの後ろに形成された外鍔部22e、その外鍔部22eの後端部から後方に向かって突出して形成された凸部22bとからなる。凸部22bは環状に形成されている。(図7参照)
チャックストッパー22の内部形状は、その前方から、内径が一定の貫通孔(第1内径部)22aと、その貫通孔22aの後方に形成された第2内径部22fとからなる。第2内径部22fは、貫通孔22aよりもその内径が大きく形成されており、外部形状における外鍔部22eの後方部から凸部22bの後端部の領域の内径部に形成されている。第2内径部22fの内径は、チャック体18が拡開した際でも、チャック体18の外周面が当接しない大きさとしている。(図7参照)
チャック18の先端部18dの断面略半円形の曲率半径は、チャック体18の前方に配設されたチャックストッパー22に、チャック体18と中心線が同軸の断面円形で軸方向ストレートに形成された貫通孔22aの半径より大きく形成している。チャック体18の芯把持時や開閉動作時には、先端部18dは貫通孔22aを前後動可能であり、当接はしない大きさに形成されているが、以下に述べるように、チャック体18の拡開規制時に、その拡開規制力以上の力がかかり、先端部18dの外周面と貫通孔22aの内面が当接する場合には、先端部18dが形成されている各弾性片18cにおける軸芯方向への中心垂線に対して左右対称の2箇所で当接する。
一方、チャックストッパー22の貫通孔22aの内径は、チャック体18の拡開規制時に、その拡開規制力以上の力がチャック体18にかかった際に、先端部18dの外周面と貫通孔22aの内面が各弾性片18cにおける軸芯方向への中心垂線に対して左右対称の2箇所で当接した際に、拡開時のチャック体18におけるスリット幅を、使用しうる筆記芯Lの芯径より小さくなるよう規制する大きさで形成している。
チャック体18が筆記芯Lを把持した際、先端部18dは常に貫通孔22aに内挿するよう形成している。本実施例では筆記芯Lを把持した際、先端部18dが常に貫通孔22aに内挿する状態としているが、前進したチャック体18が拡開する前に先端部18dが貫通孔22aに内挿するように形成してあればよい。本実施例のように、筆記芯Lを把持した際には、先端部18dが常に貫通孔22aに内挿している状態を保つことで、チャック体18の前進時に正確に先端部18dを貫通孔22a内に案内することができ、安定して筆記芯Lの繰り出しを行うことができる。
ここで、本実施例におけるチャック体18の開閉動作と拡開時の芯把持部18bにおけるスリット幅について詳述する。(図4、図8参照)
押圧部材2を軸筒3の前方方向に押圧し、中継部材25の前端でチャック体18の後端が押圧されると、チャック体18が前進し、ボール20とリング19とのくさび効果が解除され、チャック体18の拡開が開始される。このとき、ボール20は、チャック体18のボール受座18eの最深部である第1曲線部18jと第2曲線部18kの接続部(変曲点)18qにてチャック体18と当接しており、チャック体18の芯把持部18bにおけるスリット幅は使用しうる筆記芯Lの芯径より小さくなっている。
押圧部材2の押圧を続けると、チャックストッパー22の凸部22bとボール20が当接し、ボール20と既に軸筒3に対して移動を停止しておりチャックストッパー22を内部に固定しているリング19の軸筒3内における移動が停止する。このときも、ボール20は、チャック体18のボール受座18eの最深部である接続部(変曲点)18qにてチャック体18と当接しており、チャック体18の芯把持部18bにおけるスリット幅は使用しうる筆記芯Lの芯径より小さくなっている。
この状態で更に押圧部材2の押圧を続けると、リング19とボール20に対してチャック体18が前進し、ボール20とチャック体18との当接位置が後方へ移動する。即ち、ボール20とボール受座18eとが第2曲線部18kにて当接しながら、チャック体18は前進する。そして、チャック体18が最前進位置に位置した際にも、ボール20はチャック体18のボール受座18eの第2曲線部18kにて当接した状態で、チャック体18の拡開を規制する。このときも、チャック体18の芯把持部18bにおけるスリット幅は使用しうる筆記芯Lの芯径より小さくなっており、より詳細には、ボール20がボール受座18eの最深部(第1曲線部と第2曲線部の接続部(変曲点)18q)よりも浅い位置である第2曲線部18kにてチャック体18と当接していることから、芯把持部18bにおけるスリット幅は、凸部22bとボール20とが当接するまでの芯把持部18bにおけるスリット幅よりも小さいものとなっている。
押圧部材2の押圧を解除すると、チャック体18が後退し、凸部22bとボール20とが離間し、更にチャック体18が後退するため、チャック体18が閉じ、芯把持状態となる。このチャック体18の後退時には、チャック体18の前進時とは逆の動きをしてチャック体18の拡開量が小さくなっていく。
本実施例におけるチャック体18は、その前端部からのスリット18aにより分割される2つの弾性片18cを有すると共に、2つの弾性片18cは芯把持部18bを有し、軸筒3に設けた押圧部材2の押圧操作により軸筒3に対してチャック体18が前後動可能であり、チャック体18の拡開時の芯把持部18bにおけるスリット幅を、使用しうる筆記芯Lの芯径より小さくしたので、押圧部材2の押圧操作が終了するまでの間、筆記芯Lをチャック体18の芯把持部18bで内包することができ、1本目芯と2本目芯の軸芯がそろった状態で筆記芯の繰り出しが可能となり、確実な筆記芯の繰り出しを行うことができる。
チャック体18が筆記芯Lを挟持している際、即ち、リング19とチャック体18の間にボール20を介してくさび効果が発生している際には、ボール20は第1曲線部18jと当接しており、チャック体18の前進に伴い、ボール20とボール受座18eとの当接位置が後方に移動していく。そして、チャック体18の拡開が始まると、ボール20はボール受座18eの最深部(第1曲線部と第2曲線部の接続部(変曲点)18q)にてチャック体18と当接し、その状態を保ってチャック体18が前進し、拡開していく。このように、本実施例にあっては、チャック体18の前進開始時には、チャック体18とボール20とがボール受座18eの最深部(第1曲線部と第2曲線部の接続部(変曲点)18q)にて当接した状態を保ちながら、前方に向かって拡径したテーパー部19aを有するリング19内を前進するため、チャック体18の前進に伴い、チャック体18の拡開量も大きくなっていく。このため、チャック体18の前進途中にて凸部22bとボール20との当接がなければ、チャック体18の最前進時において、最もチャック体18の拡開量が大きくなるが、本実施例にあっては、チャック体18の前進途中で凸部22bとボール20とが当接するため、その凸部22bとボール20とが当接した時点で、チャック体18の拡開量が最大となる。この時点では、ボール20はボール受座18eの最深部(第1曲線部と第2曲線部の接続部(変曲点)18q)にて、チャック体18と当接している。
そして、凸部22bとボール20の当接後は、チャック体18の前進に伴い、ボール20とボール受座18eとの当接位置は、ボール受座18eの後方、即ち、最深部よりも浅くなっていく方向に変化をしていき、第2曲線部18kと当接する状態となる。このため、チャック体18の前進に伴い、チャック体18の拡開量は凸部22bとボール20との当接時の拡開量よりも小さくなる。チャック体18の最大拡開時においても、チャック体18の芯把持部18bにおけるスリット幅を、使用しうる筆記芯Lの芯径より小さくしているため、チャック体18の最前進位置にあっては、チャック体18の芯把持部18bにおけるスリット幅がより小さいものとなっている。結果、押圧部材2の押圧操作が終了するまでの間、筆記芯Lをチャック体18の芯把持部18bで内包することができ、1本目芯と2本目芯の軸芯がそろった状態で筆記芯Lの繰り出しが可能となり、確実な筆記芯Lの繰り出しを行うことができる。
本実施例にあっては、リング19は前方に向かって拡径するテーパー部19aを有し、リング19の前方内部には、その後方部に凸部(当接部)22bを形成してなるチャックストッパー(ストッパー部材)22を配設し、凸部(当接部)22bをリング19のテーパー部19aの内径部に配置し、チャック体18の前進時に凸部(当接部)22bとボール20とが当接するので、チャック体18の前進時に、ストッパー部材22の凸部(当接部)22bがボール20と当接し、リング19とチャック体18の間に配置された2つのボール20の軸方向における位置が揃う。その状態でチャック体18が更に前進することにより、チャック体18の2つの弾性片18cの拡開が径方向に均等になされる。このため、横断面から見た際のチャック体18の芯把持部18bにおける各スリット幅が均一に芯径より小さいものとなり、押圧動作が終了するまでの間、より確実に芯把持部18bで筆記芯Lを内包することができる。よって、1本目芯と2本目芯の軸芯がよりそろった状態で筆記芯Lの繰り出しが可能となり、より確実な筆記芯Lの繰り出しを行うことができる。
本実施例にあっては、チャック体18はその外周面に凹部からなるボール受座18eを有し、チャック体18の最前進時におけるボール20とボール受座18eとの当接位置が、ボール受座18eの最深部(第1曲線部と第2曲線部の接続部(変曲点)18q)よりも後方側としたので、チャック体18の拡開時にはチャック体18の芯把持部18bにおけるスリット幅が芯径より小さくなっており、中でも、チャック体18の最前進時に、ボール20がボール受座18eの最深部(第1曲線部と第2曲線部の接続部(変曲点)18q)よりも後方側で当接することにより、チャック体18の前進途中におけるチャック体18の芯把持部18bにおけるスリット幅よりも、チャック体18の最前進時におけるスリット幅が小さいものとなる。このため、チャック体18の最前進時における芯把持部18bの内径も小さくなり、より確実に1本目芯と2本目芯の軸芯がよりそろった状態で筆記芯Lの繰り出しが可能となり、より確実な筆記芯Lの繰り出しを行うことができる。
更に、本実施例にあっては、ボール受座18eの凹曲面(凹部)を2種類の曲率半径を有する曲面からなすと共に、前方側の曲率半径よりも後方側の曲率半径を小さくしたので、ボール受座の凹曲面を、その縦断面形状が前方側の曲率半径と同一である1種類の曲率半径を有する凹曲面(凹部)からなした場合よりも、凸部とボールとが当接した後の、チャック体の芯把持部におけるスリット幅の狭まり方が急になる。このため、確実にチャック体18を拡開して、筆記芯(2本目芯)を解放しながらも、その筆記芯Lの解放後は、スリット幅の狭まり、即ち、芯把持部18bの内径の狭まりが早くなされ、1本目芯と2本目芯の軸芯を速やかに保ちやすくなっている。これにより、より確実に1本目芯と2本目芯の軸芯がよりそろった状態で筆記芯Lの繰り出しが可能となり、より確実な筆記芯Lの繰り出しを行うことができる。
尚、本実施例にあっては、2つの弾性片18cを有するチャック体18を用い、各弾性片18cにそれぞれ1個のボール20を配置し、ボール20は径方向で対向した位置に配置されているが、例えば、3つ割りのチャック体としてもよく、また、1つの弾性片に対して径方向や軸方向に複数個のボールが配置されていても良い。いずれの場合にも、ボール受座の凹曲面(凹部)を2種類の曲率半径を有する曲面からなすと共に、前方側の曲率半径よりも後方側の曲率半径を小さくすることで、凸部とボールとが当接した後の、チャック体の芯把持部におけるスリット幅の狭まり早くなされ、筆記芯の解放を確実に行いながらも、1本目芯と2本目芯の軸芯を速やかに保ちやすくなっている。これにより、より確実に1本目芯と2本目芯の軸芯がよりそろった状態で筆記芯の繰り出しが可能となり、より確実な筆記芯の繰り出しを行うことができる。
以上のように、本実施例のシャープペンシルは、筆記芯Lの確実な繰り出しを行うことができるものとなっているが、更に、以下に述べる通り、その筆記芯Lの確実な繰り出しをより確実なものとしている。
詳述すると、チャック体18の拡開時に、チャック体18の芯把持部18bにおけるスリット幅が、筆記芯Lの芯径よりも小さくなっているため、筆記芯Lがスリット18aに完全に入り込むことはなく、芯把持部18bに位置できるものとなっているが、筆記芯Lの一部がスリット18aに入り込もうとした際に、チャック体18に対して拡開する方向に力がかかり、凸部22bとボール20との当接により生じているチャック体18への拡開規制力以上の力がチャック体18にかかってしまい、チャック体18が拡開してしまう可能性はある。
本実施例にあっては、筆記芯Lの一部がスリット18aに入り込もうとし、チャック体18への拡開規制力以上の力がチャック体18にかかり、チャック体18が拡開してしまったとしても、チャック体18における先端部18dとチャックストッパー22における貫通孔22aが、先端部18dの外周面と貫通孔22aの内面が各弾性片18cにおける軸芯方向への中心垂線に対して左右対称の2箇所で当接する。そして、その当接によって拡開時の芯把持部18bにおけるスリット幅を、使用しうる筆記芯Lの芯径より小さくなるよう規制している。このため、チャック体18に拡開規制力以上の力がかかってしまい、チャック体18が拡開してしまったとしても、確実に芯把持部18bにおけるスリット
幅が、使用しうる筆記芯Lの芯径より小さくなり、確実に1本目芯と2本目芯の軸芯がよりそろった状態で筆記芯Lの繰り出しが可能となり、確実な筆記芯Lの繰り出しを行うことができる。
尚、チャック体18の先端部にカット部18hが形成されておらず横断面が略半円形の先端部を有するチャック体を用いたシャープペンシルであっても、本実施例と同様に、チャック体の拡開規制時に、その拡開規制力以上の力チャック体にかかった際に、先端部の外周面と貫通孔の内面が当接し、先端部が形成されている各弾性片における軸芯方向への中心垂線に対して左右対称の2箇所で当接するように構成しても良い。そのようにすることで、チャック体に拡開規制力以上の力がかかってしまい、チャック体が拡開してしまったとしても、確実に芯把持部におけるスリット幅が、使用しうる筆記芯Lの芯径より小さくなり、確実に1本目芯と2本目芯の軸芯がよりそろった状態で筆記芯の繰り出しが可能となり、確実な筆記芯の繰り出しを行うことができる。
本実施例にあっては、両側面をカットしたカット部18hが設けられ、断面略半円形であり軸方向ストレートにチャック体18の先端から突出する形で形成された先端部18dの断面半円の曲率半径を、チャック体18の前方に配設されたチャックストッパー22に、チャック体18と中心線が同軸の断面円形で軸方向ストレートに形成された貫通孔22aの半径より大きく形成したことで、チャック体18に拡開規制力以上の力がかかり拡開した際に、チャック体18において軸方向ストレートに形成された先端部18dと各弾性片18cにおける軸芯方向への中心垂線に対して左右対称の2箇所を線接触により当接させることができる。(図8の当接箇所Tを参照)
2箇所の当接箇所Tが線接触となることで、チャック体18の左右への動きを安定して規制でき、押圧部材2の押圧動作が終了するまでの間、安定した筆記芯Lの繰り出しを行うことができる。
本実施例では、両側面をカットしたカット部18hが設けられ、断面略半円形であり軸方向ストレートにチャック体18の先端から突出する形で形成された先端部18dの断面略半円の曲率半径を、チャック体18の前方に配設されたチャックストッパー22に、チャック体18と中心線が同軸の断面円形で軸方向ストレートに形成された貫通孔22aの半径より大きく形成することで、チャック体18に拡開規制力以上の力がかかり拡開した際に、チャック体18の拡開時に先端部18dの外周面を貫通孔22aの内面に、各弾性片18cにおける軸芯方向への中心垂線に対して左右対称の2箇所で線接触により当接させたが、前述の接触方法に限らず当接によってチャック体18に拡開規制力以上の力がかかりチャック体18が拡開した際の芯把持部18bにおけるスリット幅を、使用しうる筆記芯の芯径より小さくなるよう規制できればよく、チャック体の先端部の形状は特に限定されない。
尚、本実施例のように先端部18dの両側面をカットしたカット部18hを設けることで、先端部18dの横幅が狭くなり、筆記芯Lを把持していない状態においても貫通孔22a内へ先端部18dをより確実に案内することができる。また、チャック体18の拡開時における先端部18dの外周面と貫通孔22aの内面との当接箇所Tを90°以上の鈍角とすることができ、変形に強く、経時安定性の良い製品を提供することができる。先端部18dの外周面と貫通孔22aの内面との当接箇所Tがカット部18hにて形成された陵線となり、チャック体18の成形後に当接箇所Tの寸法管理が容易になるため、安定した品質のチャック体18を供給することができる。
更に、チャックストッパー22の貫通孔22aの形状は、横断面が円形のものに限らず、例えば、菱形や楕円としても良いが、本実施例は貫通孔22aが断面円形のため、チャック体18と貫通孔22aとの周方向での位置関係に制限はなく組立時の位置決めは不要であり、生産性を維持したまま長期使用の耐久性に優れた効果を得ることができる。
本実施例において、先端部18dはチャック体18における頭部18gよりも縮径するように形成することで、チャック体18の最大径部を極力小さくすることができる。そうすることで、チャック体18の前方から挿入するチャックスプリング21や貫通孔22aを有するチャックストッパー22の外径も小さくすることができ、細身のシャープペンシルを提供することができる。特にチャック体18が配設される箇所の外面は筆記時において、使用者が把持する部分になることが多くチャック体18の最大径を小さくすることで、把持部の外径も小さく細身にできより多くの使用者に適合する製品デザインが可能となる。
前軸5の把持部5bとして、ナイロン6(PA6)、および、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)に各種金属粉を分散配合したものや、ナイロン6(PA6)単体、および、にアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)単体、そして、銅単体および真鍮(黄銅)単体の場合のものを種々作成して、冷感の強弱、冷感の持続性を評価した結果と、それら実施例および比較例の重量%の違いによる先潰し試験の結果をまとめたものを表1に示す。
筆記具の軸筒3の軸筒本体4の前軸5の把持部5bを形成する材料の熱伝導率は、定常法熱伝導率測定装置(GH−1)を用いて、米国規格ASTM E1530に準拠した測定方法の結果から算出した。
評価1の冷感の強弱は、各実施例、比較例の材料で成形された筆記具の軸筒3の軸筒本体4前軸5の把持部5bを握ったときに、冷感を強く感じるものを「◎」、冷感を感じるものを「○」、冷感を弱く感じるものを「△」、冷感を感じないものを「×」とし、◎、○、△までを良好な冷感と判断している。
評価2の冷感の持続性は、各実施例、比較例の材料で成形された筆記具の軸筒3の軸筒本体4前軸5の把持部5bを握り続けたときに、冷感が長時間強く感じるものを「◎」、冷感が長時間感じるものを「○」、冷感が長時間弱く感じるものを「△」、冷感が長時間感じられないものを「×」とし、◎、○、△までを冷感が持続していると判断している。
評価3の先潰し試験は、各実施例、比較例の材料で成形された筆記具の軸筒3の軸筒本体4前軸5の把持部5bの先端に20kgfの荷重を掛けたときの軸割れの状況を確認し、割れがないものを「◎」、クラックのみの発生のものを「○」、弱く破壊しているものを「△」、強く破壊しているものを「×」とし、クラックのみの「○」までを軸の強度が高いと判断している。
総合評価は、評価1から評価3の評価を、「◎」を3点、「○」を2点、「△」を1点、「×」を0点として、それらを合計して点数を付けたものである。
評価1の冷感の強弱は、実施例1から実施例26を見ると、熱伝導率および金属粉の重量%が高い方が、冷感を強く感じることを示し、鉄より銅の方が、より冷感を強く感じることを示している。
理由として、鉄の熱伝導率は67〔W/(m・K)〕に対して、銅の熱伝導率は386〔W/(m・K)〕と、鉄よりも銅の方が熱伝導率が高く、重量%、つまり軸筒に含まれる金属粉の量が多いほど、冷感を強く感じる要因となっていることが挙げられる。
評価2の冷感の持続性は、実施例1から実施例26を見ると、銅よりも鉄のほうが冷感の持続性があることを示し、重量%が高い方が、より冷感の持続性があることを示している。
理由として、鉄の比熱は461(J/kg℃)に対して、銅の比熱は385(J/kg℃)と、銅よりも鉄のほうが比熱が高く、重量%、つまり軸筒に含まれる金属粉の量が多いほど、冷感の持続性がある要因となっていることが挙げられる。
評価3の先潰し試験は、実施例1から実施例26を見ると、金属粉の重量%が高い方が、破壊していて、一緒に分散配合されているナイロン6(PA6)よりもアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)の方が、破壊していて、強度が低いことを示している。
理由として、金属粉の重量%が高い方、あるいは、分散配合されている樹脂の重量%が少ない方が、強度が低い要因となっていることが挙げられ、つまり、樹脂の重量%が高い方が、強度が高くなる要因となっていることが挙げられる。
また、代表的な物性として、プラスチック引張試験方法(ASTM D638)により、ナイロン6(PA6)の引張強さは78(MPa)に対して、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)の引張強さは30(MPa)と、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)よりナイロン6(PA6)の方が、引張強さ、つまり、強度が高いことが挙げられる。
総合評価は、実施例1から実施例26と比較例1から比較例14を見ると、評価1の冷感の強弱と、評価2の冷感の持続性は、金属粉の重量%が50重量%より低いと、評価が弱いことが判明し、評価3の先潰し試験は、金属粉の重量%が80重量%を超えると、強度が低くなることが判明した。
特に、高分子材料はナイロン6(PA6)と分散配合した鉄の金属粉の重量%が60重量%から75重量%のものが良い組み合わせとなった。