図1は本発明の一実施形態に係る自動変速機1のスケルトン図である。図1を参照して、自動変速機1は、その変速機ケースを構成するケーシング12内に回転自在に軸支された入力軸10と、ケーシング12に支持された支持部材12aに、入力軸10と同軸回りに回転自在に支持された出力部材11と、出力軸(カウンタ軸)13と、を備える。
入力軸10には、内燃機関EG(単にEGと呼ぶ場合がある)からの駆動力が入力され、該駆動力により入力軸10は回転する。入力軸10と内燃機関EGとの間には発進デバイスが設けられている。発進デバイスとしては、クラッチタイプの発進デバイス(単板クラッチや多板クラッチ等)や、流体継手タイプの発進デバイス(トルクコンバータ等)を挙げることができるが、本実施形態では、トルクコンバータTCを設けている。したがって、内燃機関EGの駆動力はトルクコンバータTCを介して入力軸10に入力される。
出力部材11は、入力軸10と同心のギヤを備え、出力軸13はこのギヤに噛み合うギヤを備える。入力軸10の回転は以下に述べる変速機構により変速されて出力軸13に伝達される。出力軸13の回転(駆動力)は、例えば、不図示の差動歯車装置を介して駆動輪に伝達されることになる。
自動変速機1は変速機構として、遊星歯車機構P1乃至P4と、係合機構C1〜C3、B1〜B3及びF1を備える。本実施形態の場合、遊星歯車機構P1乃至P4はいずれもシングルピニオン型の遊星歯車機構である。遊星歯車機構P1乃至P4によって、入力軸10から出力部材11に駆動力を伝達する。遊星歯車機構P1乃至P4は、駆動力の伝達経路を複数経路形成可能である。そして、係合機構C1〜C3、B1〜B3及びF1によって遊星歯車機構P1乃至P4における駆動力の伝達経路を切り替えて複数の変速段を確立する。
遊星歯車機構P1乃至P4は、サンギヤS1乃至S4と、リングギヤR1乃至R4と、ピニオンギヤを支持するキャリアCr1乃至Cr4と、を回転要素(合計で12個)として備え、入力軸10と同軸上に配設されている。
後述する図3の速度線図におけるギヤレシオに対応する間隔での並び順で順序付けを行うと、遊星歯車機構P1のサンギヤS1、キャリアCr1、リングギヤR1を、この順に、第1の回転要素、第2の回転要素、第3の回転要素、と呼ぶことができる。
同様に、遊星歯車機構P2のリングギヤR2、キャリアCr2、サンギヤS2を、この順に、第4の回転要素、第5の回転要素、第6の回転要素、と呼ぶことができる。
同様に、遊星歯車機構P3のサンギヤS3、キャリアCr3、リングギヤR3を、この順に、第7の回転要素、第8の回転要素、第9の回転要素、と呼ぶことができる。同様に、遊星歯車機構P4のリングギヤR4、キャリアCr4、サンギヤS4を、この順に、第10の回転要素、第11の回転要素、第12の回転要素、と呼ぶことができる。
係合機構C1〜C3、B1〜B3及びF1は、クラッチ又はブレーキとして機能する。クラッチは、自動変速機1が備える回転要素間の断続を行う。ブレーキは、自動変速機1が備える回転要素と、ケーシング12との間の断続を行う。自動変速機1が備える回転要素とは、入力軸10、遊星歯車機構P1乃至P4のサンギヤ、リングギヤ、キャリアを含む。
本実施形態の場合、係合機構C1〜C3はクラッチであり、係合機構B1〜B3及びF1はブレーキである。したがって、係合機構C1〜C3をクラッチC1〜C3と呼び、係合機構B1〜B3及びF1をブレーキB1〜B3及びF1と呼ぶ場合がある。係合機構C1〜C3及びB1〜B3を係合状態(締結状態)と解除状態とで切り換えることで、また、係合機構F1の状態を切り替えることで、入力軸10から出力部材11への駆動力の伝達経路が切り替えられ、複数の変速段が実現される。
本実施形態の場合、係合機構C1〜C3及びB1〜B3は、いずれも油圧式摩擦係合機構を想定している。油圧式摩擦係合機構としては、乾式又は湿式の単板クラッチ、乾式又は湿式の多板クラッチ等が挙げられる。
係合機構F1は、所定の回転要素(ここでは互いに連結されているキャリアCr1及びCr2)とケーシング12との間に設けられている。係合機構F1は、所定の回転要素(キャリアCr1及びCr2)の一方向の回転のみ規制し逆方向の回転を許容する一方向回転許容状態(OWCと呼ぶ場合がある)と、その双方向の回転を規制する回転阻止状態(TWCと呼ぶ場合がある)と、に切り替え可能である。
一方向回転許容状態とは、いわゆるワンウェイクラッチと同じ機能となる状態であり、回転方向の一方では駆動伝達し、逆方向では空転させる状態である。本実施形態の場合、係合機構F1はブレーキとして機能するので、係合機構F1が一方向回転許容状態の場合、所定の回転要素(キャリアCr1及びCr2)の一方向の回転のみ許容される状態となる。回転阻止状態とは、回転方向の双方向で駆動伝達する状態である。本実施形態の場合、係合機構F1はブレーキとして機能するので、係合機構F1が回転阻止状態の場合、所定の回転要素(キャリアCr1及びCr2)は双方向の回転が阻止される。
係合機構F1の構造例は後述するが、例えば、公知のツーウェイクラッチを採用可能である。公知のツーウェイクラッチとしては、対応する油圧アクチュエータ又は電磁アクチュエータの駆動制御により、一方向回転許容状態、回転阻止状態、及び、双方向回転許容状態に切り替えることが可能なものがある。また、公知のツーウェイクラッチとして、一方向回転許容状態は更に、正方向の回転許容状態と逆方向の回転許容状態とに切り替え可能なものがある。本実施形態では、一方向回転許容状態と回転阻止状態とに切り替えられれば足り、かつ、一方向回転許容状態は片側の回転方向の許容状態のみ利用できれば足りる。しかし、双方向回転許容状態等、他の状態を選択できるツーウェイクラッチを採用しても構わない。
次に、各構成間の連結関係について図1を参照して説明する。遊星歯車機構P3のサンギヤS3は、入力軸10に連結されている。リングギヤR3は遊星歯車機構P2のサンギヤS2に連結されている。キャリアCr3は遊星歯車機構P1のリングギヤR1及び遊星歯車機構P4のキャリアCr4に連結されている。遊星歯車機構P2のキャリアCr2は遊星歯車機構P1のキャリアCr1に連結されている。リングギヤR2は出力部材11に連結されている。したがって、遊星歯車機構P2は入力された回転駆動を出力軸13に伝達を行う遊星歯車機構である。
クラッチC1は、その係合状態において入力軸10と遊星歯車機構P1のキャリアCr1及びこれに連結されるキャリアCr2とを連結し、その解放状態においてこれらの連結を解除する。なお、解放状態のことを係合解除状態と呼ぶ場合がある。クラッチC2は、その係合状態において遊星歯車機構P3のリングギヤR3と遊星歯車機構P4のサンギヤS4とを連結し、その解放状態においてこれらの連結を解除する。クラッチC3は、その係合状態において入力軸10と遊星歯車機構P4のリングギヤR4とを連結し、その解放状態においてこれらの連結を解除する。
ブレーキB1は、その係合状態においてケーシング12と遊星歯車機構P1のサンギヤS1とを連結し、その解放状態においてこれらの連結を解除する。ブレーキB2は、その係合状態においてケーシング12と遊星歯車機構P4のサンギヤS4とを連結し、その解放状態においてこれらの連結を解除する。ブレーキB3は、その係合状態においてケーシング12と遊星歯車機構P4のリングギヤR4とを連結し、その解放状態においてこれらの連結を解除する。
係合機構F1は、既に述べたとおり、一方向回転許容状態の場合に、遊星歯車機構P2のキャリアCr2(及びこれに連結されるキャリアCr1)の一方向の回転のみ規制し、回転阻止状態の場合に、遊星歯車機構P2のキャリアCr2(及びこれに連結されるキャリアCr1)をケーシング12に固定された状態とする。
次に、図2(A)は自動変速機1が備える係合機構の係合組合せを示す係合表(締結表)、図2(B)は自動変速機1が備える遊星歯車機構のギヤレシオ、図3は自動変速機1の速度線図である。図2(A)の「ギヤレシオ」は入力軸10−出力部材11間のギヤレシオを示す。
本実施形態の場合、前進10段(1st〜10th)、後進1段(RVS)を確立可能である。”P/N”は、非走行レンジを示しており、”P”がパーキングレンジ、”N”がニュートラルレンジである。”RPM”は後述するRVS準備処理における係合組合せを示しており、この処理において係合機構F1は一方向回転許容状態から回転阻止状態に切り替えられる。
図2(A)の係合表の例において、「○」は係合状態であることを示し、無印は解放状態であることを示す。なお、変速段の確立に必須ではないが、隣接する前後の変速段への移行をスムーズにするために、係合状態としている係合機構が含まれている。例えば、一速段(1st)の場合、ブレーキB2の係合は必須ではないが、後進段(RVS)や二速段(2nd)へ移行する場合に、係合状態を切り替える係合機構を少なくする目的で、係合状態としている。同様に、五速段(5th)の場合、クラッチC3の係合は必須ではないが、四速段(4th)や六速段(6th)への移行する場合に、係合状態を切り替える係合機構を少なくする目的で、係合状態としている。
係合機構F1については、「○」は回転阻止状態であることを示し、「△」は一方向回転許容状態であることを示す。一速段(1st)の場合、係合機構F1は回転阻止状態と一方向回転許容状態のいずれの状態でもよいが、回転阻止状態の場合、エンジンブレーキが有効化される。一速段においては係合機構F1が一方向回転許容状態で、ブレーキB3の係合、解放により、エンジンブレーキの有効化と無効化とを切り替えられる。図2(A)において、一速段(1st)におけるブレーキB3の”(○)”は、このことを示している。
一速段(1st)の場合に係合機構F1をどちらの状態とするかのアルゴリズムは適宜設計できるが、本実施形態では、一速段(1st)に移行する前の状態を継承するものとする。例えば、後進段(RVS)から一速段(1st)に移行する場合、一速段(1st)は回転阻止状態のままとする。ただし、車速が所定速度よりも高くなった場合等は、一方向回転許容状態に切り替える。同様に、他の前進段(2nd〜10th)から一速段(1st)に移行する場合、一速段(1st)は一方向回転許容状態のままとする。
非走行レンジ(P/N)においても、係合機構F1の状態は回転阻止状態と一方向回転許容状態のいずれの状態でもよい。本実施形態の場合、一速段(1st)と同様に、非走行レンジ(P/N)に移行する前の状態を継承するものとする。二速段(2nd)から十速段(10th)において、係合機構F1は一方向回転許容状態とされるが、自動変速機1の構成上、空転状態となる。このため、係合機構F1の状態を”(△)”と表示している。
図3の速度線図は、入力軸10への入力に対する各要素の、各変速段における回転速度比を示している。縦軸は速度比を示し、「1」が入力軸10と同回転数であることを示し、「0」は停止状態であることを示す。横軸は遊星歯車機構P1〜P4の回転要素間のギヤレシオに基づいている。λはキャリアCrとサンギヤSとのギヤレシオを示している。なお、図3において、出力軸13に対応する要素は図示を省略している。
<制御装置>
図4は自動変速機1の制御装置100のブロック図である。自動変速機1の制御装置100は、少なくとも自動変速機全体の制御を行う電子制御ユニット(ECU)により実現される。制御装置100は、ロックアップクラッチLCおよびトルクコンバータTCを含む自動変速機1を制御することが可能である。
また、エンジンECU200は、センサからの情報に基づいて内燃機関EGを制御することが可能である。ここで、センサには、内燃機関EGの回転数を検出するエンジン回転数センサ211が含まれ、エンジンECU200は、エンジン回転数センサ211の検出結果に基づいて、内燃機関EGにおける運転状態(動作状態)を判定することが可能である。制御装置100は自動変速機1だけでなく、内燃機関EGの制御も行うことが可能であるが、本実施形態では、制御装置100とは別に設けたエンジンECU200が、内燃機関EGを制御するように構成されている。制御装置100はエンジンECU200から内燃機関EGやセンサ情報、車両の各種情報を受信することができる。また、制御装置100は、自動変速機1の情報をエンジンECU200に送信することもできる。
内燃機関EGの回転出力はエンジン出力軸2に出力される。このエンジン出力軸2の回転はトルクコンバータTCを介して自動変速機1の入力軸10に伝達される。トルクコンバータTCは流体(作動油)を介してエンジン出力軸2の回転トルクを自動変速機1の入力軸10に伝達を行うものである。
ロックアップクラッチLCは、制御装置100の指令に基づく油圧制御により、ポンプ翼車33とタービン翼車32とを接続するロックアップ制御を行う。ロックアップクラッチLCの解放状態、すなわち、ポンプ翼車33とタービン翼車32とが接続されていない状態では、ポンプ翼車33とタービン翼車32の相対回転が許容される。この状態において、エンジン出力軸2の回転トルクがポンプ翼車33に伝達されると、トルクコンバータTC内を満たしている作動油は、ポンプ翼車33の回転により、ポンプ翼車33からタービン翼車32へと循環する。これにより、ポンプ翼車33の回転トルクがタービン翼車32に伝達され、入力軸10を駆動する。一方、ロックアップクラッチの係合状態では、ポンプ翼車33とタービン翼車32との相対回転が拘束された状態となり、エンジン出力軸2の回転トルクが自動変速機1の入力軸10に直接伝達される。
制御装置100は、CPU等の処理部101と、RAM、ROM等の記憶部102と、外部デバイスやエンジンECUと処理部101との間で通信を行うための接続部として機能するIF部103と、を備える。IF部103は例えば通信インタフェースや入出力インタフェース等から構成される。
処理部101は記憶部102に記憶されたプログラムを実行し、各種のセンサ110の検出結果に基づいて、各種のアクチュエータ120を制御する。記憶部102には、図8に示すようなパニックニュートラル制御の判定基準情報が設定されたテーブル121が記憶されている。テーブル121には、ABS装置130の状態(正常に動作する状態、フェール状態)に応じた基準減速度、基準車速、エンジンの基準回転数が設定されている。
各種のセンサ110には、自動変速機1に設けられる各種のセンサが含まれるが、図4では以下のセンサを例示している。入力回転数センサ111は内燃機関EGからトルクコンバータTCへ入力される回転数、つまり内燃機関EGの出力軸の回転数(回転速度)を検出するセンサである。入力軸回転数センサ112は入力軸10の回転数(回転速度)を検出するセンサである。トルクコンバータTCのスリップ率:ETRは以下の式で算出される。
ETR(%)=(入力軸回転数センサ112の検出回転数)/(入力回転数センサ111の検出回転数)×100
出力回転数センサ113は出力軸13の回転数(回転速度)を検出するセンサである。
SPセンサ(シフトポジションセンサ)114は運転者が選択したシフトポジションを検出するセンサである。本実施形態の場合、シフトポジションとして、Pレンジ(パーキングレンジ)、Dレンジ(前進レンジ)、Nレンジ(ニュートラルレンジ)、Rレンジ(後進レンジ)の4種類を想定している。Dレンジが選択された場合、処理部101は記憶部102に記憶された変速マップにしたがって一速段(1st)から十速段(10th)のいずれかを選択して変速を行うことが可能である。Rレンジが選択された場合、処理部101は後進段を選択する。
油圧センサ115には、係合機構C1〜C3、B1〜B3の各作動油の油圧を検出するセンサが含まれる。車速センサ116は、自動変速機1が搭載される車両の走行速度を検出する。
各種のアクチュエータ120には、自動変速機1に設けられる各種のアクチュエータが含まれる。例えば、係合機構C1〜C3、B1〜B3及びF1の動作状態を切り替える電磁ソレノイド等の電磁アクチュエータが含まれる。こうして、処理部101は各種のアクチュエータ120を制御する。
図4(B)は油圧センサ115の配設例を示す。油圧センサ115は、例えば、係合機構C1〜C3、B1〜B3毎に設けることができる。これにより各係合機構の作動油の油圧を検出することができる。なお、油圧センサ115は必ずしも各係合機構に設ける必要があるわけではない。
各係合機構には、作動油を供給する電磁弁LSが割り当てられており、作動油の供給ラインLを電磁弁LSで解放又は遮断することで、係合機構の係合、解放を切り替えることができる。油圧センサ115は電磁弁LSから係合機構に供給される作動油が供給されるように設けられ、油圧センサ115の検出結果は係合機構に供給される作動油の油圧を示すことになる。供給ラインLには内燃機関EGにより駆動されるオイルポンプ117により作動油が圧送される。
<係合機構F1の切替制御>
本実施形態の場合、後進段では係合機構F1が回転阻止状態である。前進段や非走行レンジから後進段に切り替える際、係合機構F1を一方向回転許容状態から回転阻止状態に切り替える場合がある。この時、異音の発生や振動低減のため、係合機構F1のケーシング12側と、キャリアCr2側との差回転数が0であることが好ましい。換言するとキャリアCr2の回転数が0であることが好ましい。
そこで、キャリアCr2の回転数が0となる係合機構の組み合わせを経由させる。本実施形態の場合、キャリアCr2の回転数を直接計測するセンサはないことから、キャリアCr2と入力軸10とを連結状態とし、入力軸回転数センサ112の検出結果等からキャリアCr2の回転数が0であることを確認する。その後、係合機構F1を回転阻止状態に切り替える。
図5は、変速段を前進一速段から後進段に切り替える際の係合機構の係合組合せを示す。変速段が前進一速段にある場合、図2(A)に示したようにブレーキB1、B2が係合状態にある。係合機構F1は一方向回転許容状態にある場合を想定する。まず、図5の段階1に示すように、ブレーキB1、B2を解放状態に制御する。ブレーキB1、B2の解放が完了すると、次の段階2に移行する。段階2では、クラッチC1、C3及びブレーキB3を係合する。リングギヤR2及び出力軸13は回転自在であり、駆動輪は自由回転可能になる。よって車両が不測の挙動を示す事態を回避できる。
図3の速度線図から明らかなように、クラッチC3及びブレーキB3を係合することで、入力軸10はケーシング12に固定された状態となる。クラッチC1を係合することでキャリアCr2が入力軸10に連結された状態となる。
なお、本実施形態では、段階1の次に段階2を行う構成としたが、段階1と段階2とを同時に行ってもよい。具体的には、ブレーキB1、B2を解放状態にする制御を行いながら、クラッチC1、C3及びブレーキB3を係合する制御を行ってもよい。このようにすることで、変速段を後進段に切り替える際の応答性を向上することができる。
次に、所定の条件が成立すると、次の段階3に移行する。所定の条件は、キャリアCr2の回転数が0であることが確認される条件である。基本的には、クラッチC1の係合完了と、入力回転数センサ111の検出結果<所定値(例えば0とみなせる値)である。クラッチC1の係合完了は、例えば、油圧センサ115の検出結果が所定油圧を示す場合や、クラッチC1用の電磁弁LSに対する制御量が規定値に達した場合等に係合が完了したと判定することができる。他の係合機構の係合完了についても、同様の判定手法を採用することができる。
段階3では、係合機構F1を一方向回転許容状態から回転阻止状態に切り替える。係合機構F1のケーシング12側と、キャリアCr2側との差回転が0であるため、異音や振動が発生することを回避できる。係合機構F1の切り替えが完了すると、段階4に進む。段階4では、クラッチC1、ブレーキB3を解除し、ブレーキB2を係合する。以上により、後進段の組み合わせが成立する(図2(A))。
段階2及び3の処理をRVS準備処理と呼び、段階4の処理をRVSインギヤ処理と呼ぶ場合がある。制御上、段階1が完了した段階で変速段の制御状態としてRVS準備モードを設定し、RVS準備モードが設定されるとRVS準備処理を行う。また、段階3が完了した段階で変速段の制御状態としてRVSインギヤモードを設定し、RVSインギヤモードが設定されるとRVSインギヤ処理を行う。このようなモード設定は例えば記憶部102にモード情報の記憶領域を設けて管理する。図5の制御内容に関する処理部101が実行する処理例を図6(A)及び図6(B)を参照して説明する。
図6(A)を参照する。S11では、係合機構F1を一方向回転許容状態から回転阻止状態へ切り替える条件が成立したか否かを判定する。本実施形態では、係合機構F1が一方向回転許容状態の場合であって、SPセンサ114により運転者がシフトレンジを他のレンジから後進レンジに切り替えたことが検出された場合、この条件が成立したと判定する。該当する場合はS12へ進み、該当しない場合はS14へ進む。
S12では、図5の段階1で説明したように、係合状態の係合機構(例えばブレーキB1、B2)を解除する。S13では制御モードとして、RVS準備モードを設定する。その後、S15へ進む。
S14ではRVS準備モードを設定中か否かを判定する。該当する場合、S15へ進み、該当しない場合はS16へ進む。S15ではRVS準備処理を行う。詳細は後述する。S16では他の処理を行って一単位の処理を終了する。
図6(B)を参照する。同図はS15のRVS準備処理を示すフローチャートである。S21では自動変速装置1の駆動源のトルク制限を実行する。例えば、係合機構等の必要油圧が確保される範囲で内燃機関EGの出力を減少させる。
S22では係合機構F1の、回転阻止状態への切り替えが完了したか否かを判定する。該当する場合はS26へ進み、該当しない場合はS23へ進む。
S23では図5の段階2説明したように、クラッチC1、C3及びブレーキB3を係合する制御を開始する。クラッチC1、C3及びブレーキB3の係合は、これらの電磁弁LSに対する制御量を段階的に増加させることにより行うことができ、S23の工程が複数回繰り返されることにより、係合が完了することになる。
S24では、図5の段階2で説明したように、クラッチC1の係合が完了し、かつ、入力軸10の回転数=0か否かを判定する。これらの条件を全て満たす場合はS25へ進み、満たさない場合は一単位の処理を終了する。
S25では、図5の段階3で説明したように、係合機構F1の状態を回転阻止状態に切り替える。係合機構F1のケーシング12側と、キャリアCr2側との差回転数が0の状態で切り替えられるため、異音や振動の発生を防止し、また、係合機構F1の破損を回避できる。
S26では、RVS準備モードの設定を解除する。S27ではRVSインギヤモードを設定する。この設定により、別ルーチン(例えば図6(A)のS16)で、図5の段階4で説明したように、クラッチC1及びブレーキB3を解除し、ブレーキB2を係合する処理が行われる。以上により、処理が終了する。
<パニックニュートラル制御>
本実施形態のパニックニュートラル制御について説明する。図7は、本実施形態のパニックニュートラル制御の流れを例示的に説明するフローチャートである。
S100において、制御装置100は、車両の走行速度(車速情報)を車速センサ116から取得する。車速センサ116は、自動変速機1が搭載される車両の走行速度を検出しており、車速センサ116の検出結果は所定のサンプリング時間に応じて制御装置100に入力される。制御装置100は、車速センサ116の検出結果に基づいて、車速情報を取得する。
S105において、制御装置100は、ブレーキセンサ118(ブレーキ検出部)からの信号を監視して、ブレーキ信号が検出されるまで待機している(S105―No)。S105において、ブレーキセンサ118がブレーキ操作を検出し、ブレーキ信号が制御装置100に入力されると(S105−Yes)、制御装置100は処理をS110に進める。
S110において、制御装置100は車両の走行速度の減速度を算出する。制御装置100は、ブレーキ操作が検出された場合に、設定された時間における車速の変化に基づいて車両の減速度を算出する算出部として機能する。ここで、制御装置100の処理部101のタイマーは、処理部101の制御信号に基づいて時間の計測が可能である。ブレーキセンサ118からのブレーキ信号が制御装置100に入力されると、ブレーキ信号の入力に基づいて処理部101はタイマーを作動させる。制御装置100は、所定の時間が経過した時に車速センサ116から取得した車両の走行速度と、S100で取得した車両の走行速度と、から車両の走行速度の変化量(変化率)を減速度として算出する。
S115において、制御装置100は、アンチロックブレーキ装置(ABS装置)130からの動作信号の有無に基づいて、ABS装置130が正常に動作している状態であるか、フェール状態であるかを判定する。制御装置100は、車両のABS装置130が、正常に動作する状態であるか、正常に動作しないフェール状態であるかを、ABS装置130からの動作信号に基づいて判定する状態判定部として機能する。ABS装置130が正常に動作している場合、ABS装置130は動作信号を制御装置100に出力し、ABS装置130が故障している場合(フェール状態)、ABS装置130は動作信号を制御装置100に出力しない。制御装置100は、ABS装置130から動作信号を受信した場合、ABS装置130が正常に動作していると判定し、動作信号を受信しない場合、ABSが正常に動作していないフェール状態であると判定する。
S120において、制御装置100は、ABS装置130の状態に応じた基準減速度を設定する設定部として機能する。制御装置100は、記憶部102のテーブル121(図8)を参照して、ABS装置130の状態に応じた基準減速度を設定する。記憶部102には、例えば、図8に示すようなパニックニュートラル制御の判定基準情報が設定されたテーブル121が記憶されており、ABS装置130が正常に動作している状態である場合(S115−正常)、制御装置100は、ABS正常時の減速度DTV1を基準減速度として設定する。また、ABS装置130がフェール状態である場合(S115−異常)、制御装置100は、ABS異常時の減速度DTV2を基準減速度として設定する。
S125において、制御装置100は、ブレーキ操作が検出されたときに、設定されている自動変速機1の変速段を構成する係合機構の係合状態を解放状態にするか否かを、減速度および基準減速度に基づいて判定する解放判定部として機能する。制御装置100は、S105で算出した減速度とS115で設定した基準減速度とに基づいて、減速度の判定基準を満たすか判定する。基準減速度として、ABS正常時の減速度DTV1が設定されている場合、制御装置100は、減速度の判定基準を満たさないものと判定し(S125−No)、本処理を終了する。これにより、パニックブレーキタフネスが高いABS装置130が正常に動作する場合において、変速クラッチやブレーキなどの係合要素を解放するパニックニュートラル制御を実行しないように制御することが可能になる。
基準減速度として、ABS異常時の減速度DTV2が設定されている場合、制御装置100は、S105で算出した減速度とABS異常時の減速度DTV2との比較を行う。そして、S105で算出した減速度がS115で設定した基準減速度以下(減速度DTV2以下)の場合(S125−No)、係合機構の係合状態を保持すると判定し、本処理を終了する。一方、S125の判定で、S105で算出した減速度が基準減速度(減速度DTV2)より大きい場合、制御装置100は減速度の判定基準を満たすものと判定し(S125−Yes)、処理はS130に進められる。これにより、パニックブレーキタフネスが低いABS装置130の異常状態に絞って、パニックニュートラル制御を使えるようにすることができる。
S130において、制御装置100は、車速センサ116の検出結果に基づいて、車両の走行速度(車速情報)を取得する。また、制御装置100は、記憶部102のテーブル121(図8)を参照して、基準車速VRFを取得する。そして、制御装置100は、車速センサ116から取得した車両の走行速度(車速情報)と基準車速VRFとを比較して、車両の走行速度(車速情報)が基準車速VRFより大きい場合(S130−No)、係合機構の係合状態を保持すると判定し、本処理を終了する。一方、S130の判定で、車両の走行速度(車速情報)が基準車速VRF以下の場合(S130−Yes)、処理はS135に進められる。
S135において、制御装置100は、エンジン回転数センサ211の検出結果に基づいて、内燃機関EGの回転数(エンジン回転数)を取得する。また、制御装置100は、記憶部102のテーブル121(図8)を参照して、基準回転数数NERFを取得する。そして、制御装置100は、エンジン回転数センサ211から取得した内燃機関EGの回転数(エンジン回転数)と基準回転数数NERFとを比較して、内燃機関EGの回転数(エンジン回転数)が基準回転数数NERFより大きい場合(S135−No)、係合機構の係合状態を保持すると判定し、本処理を終了する。一方、S135の判定で、内燃機関EGの回転数(エンジン回転数)が基準回転数数NERF以下の場合(S135−Yes)、処理はS140に進められる。
S130およびS135の判定処理により、パニックニュートラル制御の必要のない高車速(車両の走行速度>基準車速VRF)、高エンジン回転数(エンジン回転数>基準回転数数NERF)の走行状態の場合において、パニックニュートラル制御を行わないように制御装置100は自動変速機1を制御することが可能になる。
S140において、制御装置100は、走行中の変速段の情報を保持する。本ステップでは、まず、制御装置100は、自動変速機1においていずれの変速段が設定されているか判定する。例えば、SPセンサ114によりDレンジが選択されている場合において、制御装置100の処理部101は記憶部102に記憶された変速マップにしたがって一速段(1st)から十速段(10th)のいずれかを選択して変速を行うことが可能である。制御装置100の処理部101は、走行中においてブレーキ操作が検出されたときに、設定されている自動変速機1の変速段と、変速段を構成する係合機構の係合状態とを記憶部102に記憶する。例えば、車両が六速段(6th)で走行中である場合、制御装置100の処理部101は、走行中の変速段の情報として六速段(6th)を示す情報を記憶部102に記憶する。ここで、図2(A)に示すように、六速段(6th)では、クラッチC1、C2、C3が係合状態にあるため、制御装置100の処理部101は、変速段の情報として、変速クラッチ(C1、C2、C3)が係合状態であることも記憶部102に記憶する。
S145において、制御装置100はタイマー時間を設定する。タイマー時間が設定されると、処理部101のタイマー(計時部)は設定されたタイマー時間を計測する。
S150において、制御装置100は、S125等の判定に基づいて、係合機構を制御する制御部として機能する。S125等の判定条件を満たす場合に、制御装置100は、走行中においてブレーキセンサ118(ブレーキ検出部)によりブレーキ操作が検出されたときに、設定されている自動変速機1の変速段を構成する係合機構(変速クラッチ、ブレーキ)をニュートラル(解放状態)にする。例えば、図2(A)に示すように、六速段(6th)では、係合機構として変速クラッチ(C1、C2、C3)が係合状態であるが、本ステップにおいて、制御装置100は、変速クラッチの係合を解除して解放状態にする。
また、変速段が五速段(5th)である場合に、係合機構(C1、C3、B1)が係合状態であるが、S125等の判定条件を満たす場合に、制御装置100は、係合機構(C1、C3、B1)の係合を解除して解放状態にする。
S155において、制御装置100は、車両が安全な状態に復帰したか否かを判定する。制御装置100は、例えば、S103のブレーキ操作が継続されており、S125の判定条件を満たしているか否かを判定する。ブレーキセンサ118の検出結果に基づいて、ブレーキ操作が継続して行われ、S125の判定条件を満たしている場合は、車両が安全な状態に復帰していないと判定する。すなわち、制御装置100は、ブレーキ操作が継続されている場合に、解放状態に制御されている係合機構の状態を継続すると判定して(S155−No)、処理をS150に戻す。そして、制御装置100は、走行中においてブレーキセンサ118によりブレーキ操作が検出されたときに、設定されている自動変速機1の変速段を構成する係合機構をニュートラル(解放状態)にする状態を継続するようにパニックニュートラル制御を実行する。
一方、S155の判定で、ブレーキセンサ118の検出結果に基づいて、ブレーキ操作が解除された場合、制御装置100は、車両が安全な状態に復帰した判定して(S155−Yes)、処理をS160に進める。尚、S155の判定は、ブレーキセンサ118の検出結果を用いることに限定されるものではなく、例えば、アクセルペダルが踏み込まれる操作に基づいて、車速またエンジン回転数が変化する検出結果を用いることも可能である。
S160において、制御装置100は、S145で設定したタイマー時間が経過したか判定する。タイマー時間が経過していない場合(S160−No)、処理はS150に戻され、先に説明した処理と同様に、制御装置100は、S150において、パニックニュートラル制御を実行し、S155において、車両が安全な状態に復帰したか否かを判定する。制御装置100は、ブレーキ操作が解除され、かつ、タイマー時間が経過した場合に、係合機構を解放状態から係合状態に復帰すると判定する。すなわち、制御装置100は、車両が安全な状態に復帰し(S155−Yes)、かつ、S145で設定したタイマー時間が経過した場合(S160−Yes)、処理をS165に進める。
S165において、制御装置100は、パニックニュートラル判定時の変速段(S140)にインギヤするように自動変速機1を制御する。制御装置100は、復帰の判定(S155−Yes、S160−Yes)に基づいて、記憶部102に記憶されている変速段へ復帰するように係合機構を制御する。先のステップS140では、パニックニュートラル判定時において走行中の変速段の情報が記憶部102に記憶されている。例えば、車両が六速段(6th)で走行中である場合、走行中の変速段の情報として六速段(6th)を示す情報と、係合要素として変速クラッチ(C1、C2、C3)が係合状態(図2(A))であることが記憶部102に記憶されている。制御装置100は、記憶部102に記憶されている情報に基づいて、パニックニュートラル判定時(S140)の変速段に復帰するように自動変速機1の変速段を構成する係合機構を係合状態にする。
尚、図7で説明したフローチャートは、パニックニュートラル制御の流れを例示的に示したものであり、各ステップの実行順は、図7に示すステップ順に限定されるものではない。例えば、S130、S135の処理を行わず、S125の処理(ABS装置の状態別の減速度の判定条件を満たすか否かの判定処理)の後に、S140以降の処理を実行することも可能である。あるいは、S135の処理を行わず、S125およびS130の処理の後に、S140以降の処理を実行することも可能である。
<実施形態のまとめ>
構成1.上記実施形態の制御装置(例えば100)は、エンジン(例えばEG)の出力軸(例えば2)と自動変速機(例えば1)の入力軸(例えば10)とを連結可能なロックアップクラッチ(例えばLC)を有するトルクコンバータ(例えばTC)を備えた自動変速機の制御装置(例えば100)であって、
車両の車速を検出する車速検出手段(例えば116)と、
ブレーキ操作の有無を検出するブレーキ検出手段(例えば118)と、
前記ブレーキ操作が検出された場合に、設定された時間における前記車速の変化に基づいて前記車両の減速度を算出する算出手段(例えばS110、100)と、
前記車両のABS装置が、正常に動作する状態であるか、正常に動作しないフェール状態であるかを、前記ABS装置からの動作信号に基づいて判定する状態判定手段(例えばS115、100)と、
前記ABS装置の状態に応じた基準減速度を設定する設定手段(例えばS120、100)と、
前記ブレーキ操作が検出されたときに、設定されている前記自動変速機の変速段を構成する係合機構の係合状態を解放状態にするか否かを、前記減速度および前記基準減速度に基づいて判定する解放判定手段(例えばS125、100)と、
前記解放判定手段の判定に基づいて(例えばS105、S125)、前記係合機構を制御する制御手段(例えばS125−Yes、S150、S125−No、100)と、を備え、
前記解放判定手段(例えばS125、100)は、
前記減速度が、前記ABS装置のフェール状態に応じた基準減速度(例えば、DTV2)より大きい場合に、前記係合機構の係合状態を解放状態にすると判定し(例えばS125−Yes、100)、
前記減速度が前記フェール状態に応じた基準減速度(例えば、DTV2)以下となる場合、または、前記ABS装置の正常状態に応じた基準減速度(例えば、DTV1)が設定されている場合に、前記係合機構の係合状態を保持すると判定する(例えばS125−No、100)ことを特徴とする。
構成1の実施形態によれば、エンストタフネス向上のため、パニックブレーキ判定時に変速クラッチなど変速段を構成する係合要素の係合状態を解放状態にするパニックニュートラル制御を行う場合、パニックブレーキタフネスへの影響が大きいABS装置の正常、または異常の状態別に設定した判定基準に基づいてパニックニュートラル制御を行うことが可能になる。
構成1の実施形態によれば、パニックブレーキタフネスが高いABS装置130が正常に動作する場合において、変速クラッチやブレーキなどの係合要素を解放するパニックニュートラル制御を実行しないように制御することが可能になる。また、パニックブレーキタフネスが低いABS装置130の異常状態に絞って、パニックニュートラル制御を使えるようにすることができる。パニックブレーキタフネスへの影響の大きいABS装置の状態に基づいて、パニックニュートラル制御の実行可否の判定を行うことにより、車両の状態に応じた制御が可能になり、より商品性の優れた車両の提供が可能になる。
構成2.構成1の制御装置であって、前記解放判定手段(例えばS125、100)は、
前記減速度が前記ABS装置のフェール状態に応じた基準減速度より大きく(例えばS125―Yes、100)、かつ、前記車速検出手段により検出される車速が基準車速以下となる場合に(例えばS130−Yes、100)、前記係合機構の係合状態を解放状態にすると判定し、
前記車速が基準車速より大きくなる場合に(例えばS130−No、100)、前記係合機構の係合状態を保持すると判定する。
構成2の実施形態によれば、車速の条件をパニックニュートラル制御の実行可否の判定基準として追加し、パニックニュートラル制御の必要のない高車速(車両の走行速度>基準車速VRF)の走行状態の場合において、パニックニュートラル制御を行わないように自動変速機1を制御することが可能になる。
構成3.構成2の制御装置であって、前記解放判定手段(例えばS125、100)は、
前記車速検出手段により検出される車速が基準車速以下となり(例えばS130−Yes、100)、かつ、エンジン回転数検出手段により検出されるエンジン回転数が基準回転数以下となる場合に(例えばS135−Yes、100)、前記係合機構の係合状態を解放状態にすると判定し、
前記エンジン回転数が基準回転数より大きくなる場合に(例えばS135−No、100)、前記係合機構の係合状態を保持すると判定する。
構成3の実施形態によれば、エンジン回転数の条件をパニックニュートラル制御の実行可否の判定基準として追加し、パニックニュートラル制御の必要のない高エンジン回転数(エンジン回転数>基準回転数数NERF)の走行状態の場合において、パニックニュートラル制御を行わないように自動変速機1を制御することが可能になる。
構成4.構成1乃至3のいずれか1項に記載の制御装置であって、前記ブレーキ操作が検出されたときに、前記設定されている前記自動変速機の変速段と、前記変速段を構成する係合機構の係合状態とを記憶する記憶手段(例えば102)と、
タイマー時間を計測する計時手段(例えば101)と、更に備え、
前記解放判定手段は、
前記タイマー時間の経過前に前記ブレーキ操作が継続されている場合に(例えばS155−No、100)、解放状態に制御されている前記係合機構の状態を継続すると判定し(例えばS150、100)、
前記ブレーキ操作が解除され(例えばS155−Yes、100)、かつ、前記タイマー時間が経過した場合に(例えばS160−Yes、101)、前記係合機構を解放状態から係合状態に復帰すると判定し、
前記制御手段は、
前記復帰の判定に基づいて、前記記憶手段に記憶されている前記変速段へ復帰するように前記係合機構を制御する(例えばS165、100)ことを特徴とする。
構成4の実施形態によれば、ABS装置がフェール状態でパニックニュートラル制御を実行したのち、車両が安全な状態に復帰した場合に、パニックニュートラル判定時の変速段(S140)にインギヤするように自動変速機1を制御することが可能になる。例えば、パニックブレーキによりタイヤの回転は見かけ上、止まっていても、路面の状態が雨水や凍結により車両は実際には動いている場合が生じ得る。このような場合、例えば、見かけ上の車速をゼロとして、一速段(1th)で復帰すると、見かけ上の車速と実際の車両の車速との差が大きくなり、より大きな変速ショックが自動変速機に作用し得る。パニックニュートラル判定時の変速段にインギヤするように制御することで、より円滑な動力伝達が可能になる。