JP6814857B1 - 粉体塗料組成物、その製造方法及びそれを用いた塗膜形成方法 - Google Patents

粉体塗料組成物、その製造方法及びそれを用いた塗膜形成方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6814857B1
JP6814857B1 JP2019167551A JP2019167551A JP6814857B1 JP 6814857 B1 JP6814857 B1 JP 6814857B1 JP 2019167551 A JP2019167551 A JP 2019167551A JP 2019167551 A JP2019167551 A JP 2019167551A JP 6814857 B1 JP6814857 B1 JP 6814857B1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
resin
coating film
fatty acid
functional group
metal salt
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019167551A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2021042345A (ja
Inventor
綾 原
綾 原
斎藤 洋
洋 斎藤
小川 英明
英明 小川
雅巳 薮田
雅巳 薮田
Original Assignee
日本ペイント・インダストリアルコ−ティングス株式会社
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 日本ペイント・インダストリアルコ−ティングス株式会社 filed Critical 日本ペイント・インダストリアルコ−ティングス株式会社
Priority to JP2019167551A priority Critical patent/JP6814857B1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6814857B1 publication Critical patent/JP6814857B1/ja
Publication of JP2021042345A publication Critical patent/JP2021042345A/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Paints Or Removers (AREA)

Abstract

【課題】抗菌性に優れた塗膜を形成できる、粉体塗料組成物を提供すること。更に、本開示の粉体塗料組成物は、優れた塗膜外観を有する塗膜を形成できる。【解決手段】塗膜形成粒子(A)と、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)とを含み、前記脂肪酸金属塩は、平均粒子径が1nm以上100nm以下である、粉体塗料組成物。別の実施形態において、本開示の粉体塗料組成物は、塗膜形成粒子(A)と、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)とのドライブレンド物である。【選択図】図1

Description

本発明は、粉体塗料組成物、その製造方法及びそれを用いた塗膜形成方法に関する。
粉体塗料組成物は、溶液型塗料とは異なり、塗料組成物中に溶剤を含まない。このため、環境負荷を低減でき、更に、作業環境性に優れている。
また、粉体塗料組成物は、溶液型塗料と比べて安価であること、塗装後の余過剰分の塗料組成物を回収でき再利用できること、多層の重ね塗りにより塗膜(硬化物)を厚くできること、塗装直後でも使用できること等の特徴を有する。
このような粉体塗料組成物は、電子部品、OA機器、家電製品、建材、自動車部品等に適用でき、例えば、保護装飾用塗膜を形成できる塗料組成物として、近年、需要が高くなっている。
例えば、被塗物の保護、装飾に適する塗膜を形成する場合、被塗物の外観を良好に維持するため、塗膜に抗菌性を付与することが望まれている。
特開平10−168346号公報(特許文献1)には、熱硬化性粉体塗料に、抗菌性金属成分と該抗菌性金属成分以外の金属酸化物で構成される平均粒子径が500nm以下の微粒子を含有するコロイド溶液よりなる抗菌剤を乾式混合法にて該粉体塗料粒子表面に付着させてなることを特徴とし、抗菌性を有する粉体塗料が開示されている。
特開平10−168346号公報
特許文献1に記載される抗菌性を有する粉体塗料は、熱硬化性粉体塗料に、抗菌性金属成分と該抗菌性金属成分以外の金属酸化物で構成される微粒子を含有するコロイド溶液よりなる抗菌剤を混合したものである。
しかし、特許文献1に記載の塗料組成物は、熱硬化性粉体塗料と、抗菌剤との混合が不十分となる傾向があり、抗菌剤の有する効果を十分に発揮できないことがあった。また、特許文献1に記載の抗菌剤を含む塗膜は、例えば、紫外線等に照射される環境下において、比較的短期間で塗膜外観の劣化が生じ得る問題を有している。
このため、形成された塗膜が十分な抗菌性を備えることができる、粉体塗料組成物が要求されている。また、抗菌性を有しながらも、優れた塗膜外観を有する粉体塗料組成物が要求されている。
更に、従来の塗料組成物では、例えば、抗菌性を発揮するために、塗料組成物に含まれる金属成分の量を多くする必要があった。しかし、塗料組成物に含まれる金属成分の量が多くなると、形成される塗膜の外観が不良となるおそれがあり、また、塗膜を形成する樹脂成分が有する特性を十分に発揮できないおそれがある。このため、金属成分が有する特性と、塗膜形成樹脂成分が奏する塗膜物性を共に向上できることが望ましい。
本開示は、上記従来の課題を解決するものであり、その目的とするところは、例えば、形成された塗膜が十分な抗菌性を備えることができ、更に、優れた塗膜外観を有する、粉体塗料組成物を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明は下記態様を提供する。
[1]塗膜形成粒子(A)と、
脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)とを含み、
脂肪酸金属塩は、平均粒子径(D50)が1nm以上100nm以下である、粉体塗料組成物。
[2]一実施形態において、本開示の粉体塗料組成物は、塗膜形成粒子(A)の塗装後から30秒後に測定した、前記塗膜形成粒子(A)の帯電量QA30(μC/g)と、
脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の塗装後から30秒後に測定した、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の帯電量QB30(μC/g)が、
|QA30|<|QB30|の関係を有し、並びに
|QB30|−|QA30|は、0.01以上1.60以下である。
[3]一実施形態において、本開示の粉体塗料組成物は、塗膜形成粒子(A)が、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)及び基体樹脂反応成分(A2)を含む。
[4]一実施形態において、本開示の粉体塗料組成物は、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)が、硬化性官能基を有する樹脂(a1)を少なくとも1種含み、
硬化性官能基を有する樹脂(a1)は、硬化性官能基を有するポリエステル樹脂、硬化性官能基を有するエポキシ樹脂及び硬化性官能基を有するアクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含み、
基体樹脂反応成分(A2)は、イソシアネート硬化剤、アミン硬化剤、イミダゾリン硬化剤、酸硬化剤、エポキシ硬化剤及びアミノ樹脂硬化剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
[5]一実施形態において、本開示の粉体塗料組成物は、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)が、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(B1)及び基体樹脂反応成分(B2)を含み、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(B1)は、硬化性官能基を有する樹脂(b1)を少なくとも1種含み、
硬化性官能基を有する樹脂(b1)は、硬化性官能基を有するポリエステル樹脂、硬化性官能基を有するエポキシ樹脂及び硬化性官能基を有するアクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含み、
基体樹脂反応成分(B2)は、イソシアネート硬化剤、アミン硬化剤、イミダゾリン硬化剤、酸硬化剤、エポキシ硬化剤及びアミノ樹脂硬化剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
[6]一実施形態において、本開示の粉体塗料組成物は、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)における、硬化性官能基を有する樹脂(a1)と、
硬化性官能基を有する基体樹脂成分(B1)における、硬化性官能基を有する樹脂(b1)は、同種類の樹脂を含む。
[7]一実施形態において、本開示の粉体塗料組成物は、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)における、硬化性官能基を有する樹脂(a1)と、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(B1)における、硬化性官能基を有する樹脂(b1)が、硬化性官能基を有するポリエステル樹脂を含む。
[8]一実施形態において、本開示の粉体塗料組成物は、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)における、脂肪酸金属塩における金属が少なくとも銀又は銀の錯体を含む。
[9]一実施形態において、本開示の粉体塗料組成物は、脂肪酸金属塩が、脂肪酸修飾された金属塩であり、上記脂肪酸は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
[10]一実施形態において、本開示の粉体塗料組成物は、粉体塗料組成物における、脂肪酸金属塩の含有量が、金属の含有量に換算して、10ppm以上100ppm以下である。
[11]一実施形態において、本開示の粉体塗料組成物は、粉体塗料組成物が、塗膜形成粒子(A)と、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)とのドライブレンド物である。
[12]一実施形態において、本開示の粉体塗料組成物は、粉体塗料組成物が抗菌性を有する粉体塗料組成物である。
[13]更に、本開示は、上記粉体塗料組成物の製造方法を提供する。一実施形態において、本開示の製造方法は、塗膜形成粒子(A)と、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)とを、10℃以上40℃以下の温度でドライブレンドすることを含む。
[14]更に、本開示は、上記粉体塗料組成物を用いる塗膜の形成方法を提供する。一実施形態において、本開示の塗膜の形成方法は、上記粉体塗料組成物を被塗物に塗装し、120℃以上200℃以下の温度で加熱して硬化させる、塗膜形成工程を含む。
本開示の粉体塗料組成物は、抗菌性に優れた塗膜を形成できる。更に、本開示の粉体塗料組成物は、優れた塗膜外観を有することができる。
本発明に係る脂肪酸金属塩に関するプラズモン吸収を例示する図である。
まず、本発明に至った経緯を説明する。塗料組成物から塗膜を形成する場合、使用する用途によっては、製品の塗装面に細菌、カビ等の菌が繁殖する場合がある。このような菌類が繁殖すると、塗膜にシミ、斑点等が発生し、塗膜外観の悪くなることがあり、製品の寿命が短くなることもある。また、カビが分泌する有機酸により塗膜が浸食されること、更に、被塗物(例えば、金属基板)が浸食され、外観が極めて悪くなる、被塗物の機能低下が進行する等の問題が生じている。
例えば、菌、カビによる塗膜への悪影響を防止するため、種々の抗菌性塗料組成物が開発されている。溶液型塗料においては、抗菌性、防カビ性を有する有機系化合物を配合した塗料組成物が実用化されている。しかし、溶液型塗料による大気汚染、火災を防止し、作業環境を改善することが望まれている。
そこで、抗菌性、防カビ性を有する有機系化合物を含む、粉体塗料組成物が検討されている。しかし、抗菌性、防カビ性を有する有機系化合物は、耐熱性、持続性等を制御することが難しく、塗膜形成において高温での加熱を必要とする粉体塗料組成物では、有機系化合物の有する抗菌性、防カビ性を十分に発揮できないおそれがある。
また、特許文献1に示すように、無機系の抗菌剤を含む粉体塗料組成物が検討されている。しかし、依然として、十分な抗菌性、抗カビ性を得ることができていない。また、抗菌剤の偏在に起因し得る、塗膜のシミ、斑点等の発生する傾向があり、塗膜外観の低下を生じやすい傾向があった。
更に、特許文献1に示すような無機系の抗菌剤を含む塗料組成物は、例えば、金属粒子を含むことがある。しかし、十分な抗菌性を発揮するためには、金属粒子の配合量を多くする必要があり、これに伴い、例えば、塗膜形成樹脂成分が奏する塗膜外観及び塗膜物性を低下させるおそれがあった。また、銀粒子等の金属粒子は高価な金属であり、銀粒子を多く含む塗料組成物では、用途が限定される場合があった。このため、金属成分の有する特性が十分に発揮でき、かつ、塗膜形成樹脂成分が奏する塗膜外観及び塗膜物性を共に向上でき、その上、塗料組成物のコストを低減できることが望ましい。
本発明者等は、このような課題を解決すべく、種々の検討を行った。その結果、粉体塗料組成物が、所定の脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子を含むことにより、抗菌性、抗カビ性に優れた塗膜を形成でき、更に、優れた塗膜外観を有することを見出し、本発明を完成させた。以下、本開示の粉体塗料組成物、その製造方法及びそれを用いた塗膜の形成方法について説明する。
[粉体塗料組成物]
本開示の粉体塗料組成物は、塗膜形成粒子(A)と、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)とを含み、脂肪酸金属塩は平均粒子径(D50)が1nm以上100nm以下である。
本開示の粉体塗料組成物から得られる塗膜は、脂肪酸金属塩を塗膜表面に均一に分散させることができる。また、本開示の粉体塗料組成物から得られる塗膜は、抗菌性に優れた塗膜を形成でき、更に、優れた塗膜外観を有する。
更に、本開示の粉体塗料組成物は、脂肪酸金属塩の量を、従来の塗料組成物と比べて、低減でき、その上、抗菌性等に優れた塗膜を形成できる。
以下、各成分について説明する。
[塗膜形成粒子(A)]
本開示の粉体塗料組成物に含まれる塗膜形成粒子(A)は、粉体形状の樹脂を含む粒子であって、塗膜を形成する粒子である。
一実施形態において、塗膜形成粒子(A)の塗装後から30秒後に測定した、塗膜形成粒子(A)の帯電量QA30(μC/g)は、負の値を有する。一実施形態において、帯電量QA30(μC/g)は、−2.00μC/g以上−0.10μC/g以下であり、例えば、−1.80μC/g以上−0.50μC/g以下である。
一実施形態において、帯電量QA30(μC/g)は、−1.70μC/g以上−0.70μC/g以下であり、例えば、−1.65μC/g以上−0.70μC/g以下である。
塗膜形成粒子(A)の帯電量QA30(μC/g)がこのような範囲内であることにより、塗膜形成粒子(A)と、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の混合を均一に行うことができる。更に、これらが均一に分散した粉体塗料組成物から形成した塗膜は、脂肪酸金属塩を塗膜表面により均一に分散することができる。
例えば、脂肪酸金属塩が、抗菌性、抗カビ性を有する形態においては、製品の塗装面に細菌、カビ等の菌が繁殖し、塗膜にシミ、斑点等が発生することを抑制又は低減できる。このため、塗膜外観を損ねること、塗膜が菌によって侵され製品の寿命の短くなることを抑制又は低減できる。
本開示において、帯電量QA30(μC/g)は、塗膜形成粒子(A)の塗装後、例えば塗膜形成粒子(A)を含む塗料組成物を塗装し、塗装後から30秒後に測定した、塗膜形成粒子(A)の帯電量を意味する。
ここで、本開示に係る塗膜形成粒子(A)は、塗装直後(すなわち0秒後)から少なくとも30秒後の間において、任意の時間経過の後における帯電量を測定できる。例えば、本開示の塗膜形成粒子(A)は、塗装後から30秒後における帯電量を複数回(例えば5回)測定した場合においても、測定毎の数値のバラツキが少ない傾向がある。そこで、塗装後から30秒後の帯電量QA30(μC/g)を測定した。
帯電量QA30(μC/g)の測定は、例えば、塗膜形成粒子(A)を含む塗料組成物を静電塗装し、塗装後から30秒後における帯電量QA30(μC/g)を測定することで導ける。
具体的には、塗膜形成粒子(A)を静電塗装し、塗装後から30秒後における帯電量QA30(μC/g)の測定を、電荷量測定装置EA02(ユーテック社製)を用いて行うことができる。例えば、帯電量の測定時における温度は23℃、湿度50%である。
例えば、実施例1で調製した塗膜形成粒子(A)を、静電塗装法(印加電圧−80kV)を用いて、乾燥膜厚60μmとなるように、溶融亜鉛めっき鋼板(幅75mm、長さ150mm、厚さ0.8mm)に塗装する。次に、塗装後30秒経過した後、前記鋼板上の200mmの範囲から塗料を装置に吸入し、そのときの帯電量と吸入した塗料の質量から、帯電量QA30を算出できる。
また、本明細書において、塗膜形成粒子(A)の塗装後から30秒後に測定した、塗膜形成粒子(A)の帯電量QA30(μC/g)を、単にQA30(μC/g)と記載することがある。特に言及の無い場合、他の帯電量、例えば、塗膜形成粒子(A)の塗装後から120秒後に測定した塗膜形成粒子(A)の帯電量を、QA120(μC/g)と記載することがある。
一実施形態において、塗膜形成粒子(A)の塗装後から30秒後に測定した、塗膜形成粒子(A)の帯電量QA30(μC/g)と、
脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の塗装後から30秒後に測定した、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の帯電量QB30(μC/g)が、
|QA30|<|QB30|の関係を有する。
なお、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の帯電量QB30(μC/g)の詳細は、後述のとおりである。
なお、本開示において、特に言及の無い場合、記号||は絶対値を意味する。
更に、粉体塗料組成物が|QA30|<|QB30|の関係を有する形態において、|QB30|から|QA30|を差し引いた値(|QB30|−|QA30|)は、0.01以上1.60以下であってよい。一実施形態において、(|QB30|−|QA30|)は、0.01以上1.40以下であり、0.01以上1.00以下であってよく、例えば、0.01以上0.80以下である。一実施形態において、(|QB30|−|QA30|)は、0.05以上0.80以下であり、例えば、0.10以上0.78以下であり、0.15以上0.75以下であってよい。
塗膜形成粒子(A)の帯電量QA30(μC/g)と、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の帯電量QB30(μC/g)が上記関係を有することにより、これらの粒子(A)及び粒子(B)を含む本開示の粉体塗料組成物から形成した塗膜は、塗膜表面(最表層)に分散する脂肪酸金属塩の確率を高くできると考えられる。
このため、例えば、脂肪酸金属塩が、抗菌性、抗カビ性を有する態様においては、抗菌性、抗カビ性を十分に奏することができる。その上、製品の塗装面に細菌、カビ等の菌が繁殖し、塗膜にシミ、斑点等が発生することを抑制又は低減できる。また、塗膜外観を損ねること、塗膜が菌によって侵され製品の寿命の短くなることを抑制又は低減できる。
加えて、本開示の粉体塗料組成物は、塗膜表面(最表層)に分散する脂肪酸金属塩の確率を高くできるので、優れた抗菌性を有しながら、更に、脂肪酸金属塩の量を、従来の塗料組成物と比べて低減できる。
例えば、本開示の粉体塗料組成物における、脂肪酸金属塩の含有量は、金属の含有量に換算して、10ppm以上100ppm以下である。
特定の理論に限定して解釈すべきではないが、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の帯電量QB30の絶対値が、塗膜形成粒子(A)の帯電量QA30の絶対値よりも大きくなることで、塗装ガンを用いて粉体塗料組成物を塗装する際、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)は、塗膜形成粒子(A)よりも遅く塗装ガンから放出され、被塗物に塗装される傾向があるものと推測される。その結果、塗膜の表面、最表層付近に、脂肪酸金属塩が存在する確率が高くなるものと推測される。
また、|QB30|から|QA30|を差し引いた値が上記範囲内であることにより、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の帯電量QB30の絶対値が、塗膜形成粒子(A)の帯電量QA30の絶対値よりも大きくなることにより奏される効果を、より効率的に導くことができる。
一実施形態において、塗膜形成粒子(A)の粒子径D10は、1.00μm以上20.0μm以下、例えば、5.00μm以上15.00μm以下である。
このような粒子径を有することにより、本開示の塗料組成物は、被塗物に対して、より良好に塗着でき、塗膜外観を良好にできる。例えば、平滑性と塗着効率のバランスに優れた塗膜を得ることができる。更に、塗膜形成粒子(A)及び脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)を良好に混合でき、脂肪酸金属塩が塗膜表面に均一に存在する塗膜を形成でき、例えば、抗菌、抗カビ性に優れた塗膜を得ることができる。
一実施形態において、塗膜形成粒子(A)の粒子径D50は、10.00μm以上50.00μm以下、例えば、15.00μm以上45.00μm以下である。
このような粒子径を有することにより、本開示の塗料組成物は、被塗物に対して、より良好に塗着でき、塗膜外観を良好にできる。例えば、平滑性と塗着効率のバランスに優れた塗膜を得ることができる。更に、塗膜形成粒子(A)及び脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)を良好に混合でき、脂肪酸金属塩が塗膜表面に均一に存在する塗膜を形成でき、例えば、抗菌、抗カビ性に優れた塗膜を得ることができる。
一実施形態において、塗膜形成粒子(A)の粒子径D90は、30.00μm以上70.00μm以下、例えば、45.00μm以上65.00μm以下である。
このような粒子径を有することにより、本開示の塗料組成物は、被塗物に対して、より良好に塗着でき、塗膜外観を良好にできる。例えば、平滑性と塗着効率のバランスに優れた塗膜を得ることができる。更に、塗膜形成粒子(A)及び脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)を良好に混合でき、脂肪酸金属塩が塗膜表面に均一に存在する塗膜を形成でき、例えば、抗菌、抗カビ性に優れた塗膜を得ることができる。
本明細書において、塗膜形成粒子(A)の粒子径D10値は、塗膜形成粒子(A)の体積基準の粒度分布において、小粒子径側からある粒子径までの間で積算した粒子の合計体積を、粒子全体の体積に対する百分率で表したときに、その値が10%になるときの粒子径の値を意味する。同様に、粒子径D50値は、この百分率の値が50%になるときの粒子径の値であり、D90は、この百分率の値が90%になるときの粒子径の値である。なお、D50値を平均粒子径と称する場合がある。D10、D50及びD90値は、レーザー回折・散乱法により測定された値(体積平均粒子径)である。例えば、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラックMT3300EX II、マイクロトラック・ベル社製)等の粒度測定装置を用いて測定することができる。
一実施形態において、塗膜形成粒子(A)は、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)及び基体樹脂反応成分(A2)を含む。
[基体樹脂成分(A1)]
硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)は、硬化性官能基を有する樹脂(a1)を少なくとも1種含むことができる。
一実施形態において、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)は、硬化性官能基を有する樹脂(a1)を少なくとも1種含み、硬化性官能基を有する樹脂(a1)は、硬化性官能基を有するポリエステル樹脂、硬化性官能基を有するエポキシ樹脂及び硬化性官能基を有するアクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
硬化性官能基を有するポリエステル樹脂としては、例えば、水酸基、カルボキシル基等の硬化性官能基を有するポリエステル樹脂が挙げられる。これらの硬化性官能基は、1種のみを有していてもよく、2種又はそれ以上を有していてもよい。硬化性官能基を有するポリエステル樹脂は、例えば、多価カルボン酸を主成分とした酸成分と、多価アルコールを主成分としたアルコール成分とを、通常の方法により縮重合することにより調製することができる。
上記酸成分としては、特に限定されず、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの無水物、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類及びこれらの無水物、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ドデカンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸類及びこれらの無水物、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類、p−オキシエトキシ安息香酸等の芳香族オキシモノカルボン酸類、これらに対応するヒドロキシカルボン酸等を挙げることができる。一実施形態において、テレフタル酸及びイソフタル酸の少なくとも一方を含む。例えば、テレフタル酸及びイソフタル酸を含む実施形態において、イソフタル酸の量は、酸成分中、60質量%以上であり、80質量%以上であってよい。このような量で酸成分を用いることにより、得られる塗膜の耐候性を向上させることができる。
酸成分は、それぞれ単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
アルコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール,1,5−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,8−オクタデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、ビスフェノールSのアルキレンオキシド付加物、ネオペンチルグリコール等の直鎖状又は分岐状のグリコール類、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコール類等を挙げられる。一実施形態において、これらのうち、アルコール成分は、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール及び1,6−ヘキサンジオールからなる群から選択される少なくとも1種を含む。アルコール成分はそれぞれ単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
硬化性官能基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、1分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂が挙げられる。具体的には、グリシジルエステル樹脂;ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの縮合反応物、ビスフェノールFとエピクロロヒドリンとの縮合反応物等の、グリシジルエーテル型樹脂;及び、脂環式エポキシ樹脂、直鎖状脂肪族エポキシ樹脂、含ブロムエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;等が挙げられる。
硬化性官能基を有するアクリル樹脂としては、例えば、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基等の硬化性官能基を有するアクリル樹脂が挙げられる。これらの硬化性官能基は、1種のみを有していてもよく、2種又はそれ以上を有していてもよい。硬化性官能基を有するアクリル樹脂は、硬化剤と反応し得る官能基を有する単量体を共重合可能な他のビニル系単量体と共重合させることによって得られる。例えば、エチレン性不飽和基含有単量体を通常の方法により共重合することによって調製できる。
エチレン性不飽和基含有単量体としては、特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、プラクセルFMシリーズ(商品名、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとポリカプロラクトンとの付加物、ダイセル化学工業社製)、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類等の水酸基含有単量体;上記水酸基含有アクリレート類及び水酸基含有メタクリレート類とε−カプロラクトンとの付加反応物;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、2−メチルグリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有単量体;(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有単量体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;等を挙げることができる。
上記の他に、単量体として、アクリロニトリル、酢酸ビニル、メチル(メタ)クリレート、エチル(メタ)クリレート、n−、iso−、及びtert−ブチル(メタ)クリレート、シクロヘキシル(メタ)クリレート、2−エチルヘキシル(メタ)クリレート、ラウリル(メタ)クリレート等の(メタ)クリル酸エステル類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体、p−クロロスチレン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書中において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸を示す。
上記樹脂(a1)として、市販品を用いてもよい。市販品として、例えば、硬化性官能基を有するポリエステル樹脂として、
DIC社製のファインディックM−8000シリーズ及びM−8200シリーズ(水酸基含有ポリエステル樹脂)、DIC社製のファインディックM−8800シリーズ及びM−8900シリーズ(カルボキシル基含有ポリエステル樹脂)、日本ユピカ社製のユピカコートGV−100シリーズ、GV−500シリーズ、GV−700シリーズ及びGV−200シリーズ(水酸基含有ポリエステル樹脂)等;
硬化性官能基を有するアクリル樹脂として、DIC社製のファインディックAシリーズ等;
硬化性官能基を有するエポキシ樹脂として、DIC社製のEPICRONシリーズ(ビスフェノールA型及びビスフェノールF型)等;
が挙げられる。
一実施形態において、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)は、エポキシ樹脂とポリエステル樹脂とをブレンドしたポリエステル・エポキシ樹脂、エポキシ樹脂とアクリル樹脂とをブレンドしたアクリル・エポキシ樹脂及びフッ素樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含んでよい。上記エポキシ樹脂、アクリル樹脂、及びポリエステル樹脂は、適宜ブレンドしてポリエステル・エポキシ樹脂、あるいはアクリル・エポキシ樹脂等として使用することができる。フッ素樹脂の例としては、フッ化ビニリデン、3フッ化エチレン、フッ化ビニル等のフッ素系モノマーと、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有アルキルモノマーと、更に、上記アクリル樹脂に用いられるモノマーとを共重合させたもの等が挙げられる。上記フッ素樹脂として、市販品を用いてもよい。市販品として、例えば、ルブロンL−2(ダイキン工業社製)等が挙げられる。
[基体樹脂反応成分(A2)]
一実施形態において、塗膜形成粒子(A)は、基体樹脂反応成分(A2)を含む。基体樹脂反応成分(A2)は、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)の硬化性官能基と反応し、塗膜を形成する成分である。
基体樹脂反応成分(A2)としては、例えば、イソシアネート硬化剤、アミン硬化剤、イミダゾリン硬化剤、酸硬化剤、エポキシ硬化剤、アミノ樹脂硬化剤等が挙げられる。基体樹脂反応成分(A2)は、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)の種類に応じて適宜選択することができる。
本開示の塗料組成物は、粉体塗料組成物であることから、基体樹脂反応成分(A2)の融点は50〜250℃の範囲内であるのが好ましい。基体樹脂反応成分(A2)の融点が上記範囲内であることによって、得られる粉体塗料組成物の貯蔵安定性が良好となり、かつ、形成される塗膜の平滑性が良好となる。
例えば、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)が硬化性官能基として水酸基を有する場合は、基体樹脂反応成分(A2)としては、脂肪族多価カルボン酸、脂肪族酸無水物等の酸硬化剤;メラミン樹脂等のアミノ樹脂硬化剤;エポキシ樹脂、エポキシ基を有するアクリル樹脂等のエポキシ硬化剤;ブロックイソシアネート等のイソシアネート硬化剤;等を用いることができる。
例えば、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)が硬化性官能基としてカルボキシル基を有する場合、基体樹脂反応成分(A2)としては、具体的には、上記エポキシ樹脂、エポキシ基を有する上記アクリル樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート等のエポキシ硬化剤;ヒドロキシアルキルアミド、ヒドロキシアルキルアミン等のアミン硬化剤;ポリヒドロキシ化合物;等を挙げることができる。
例えば、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)が硬化性官能基としてエポキシ基を有する場合は、上記基体樹脂反応成分(A2)としては、具体的には、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸(DDA)、セバシン酸等の脂肪族多価カルボン酸、多価カルボン酸の酸無水物、酸基含有アクリル樹脂等の酸硬化剤;ブロックイソシアネート等のイソシアネート硬化剤;脂肪族ポリアミン、ポリアミノアミド、ケチミン、脂環族ジアミン、芳香族ジアミン、イミダゾール、ジシアンジアミド、ポリアミド、ヒドロキシアルキルアミド等のアミン硬化剤;フェノール樹脂硬化剤;等を挙げることができる。
基体樹脂反応成分(A2)は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)及び基体樹脂反応成分(A2)の組み合わせとして、例えば、以下のものを挙げることができる。また、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)は、硬化性官能基を有する樹脂(a1)を含むことができる。
例えば、硬化性官能基を有する樹脂(a1)として、水酸基及びカルボキシル基のうち少なくとも1種を有するポリエステル樹脂、及び、基体樹脂反応成分(A2)として、イソシアネート硬化剤;
硬化性官能基を有する樹脂(a1)として、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂、及び、基体樹脂反応成分(A2)として、アミン硬化剤(ヒドロキシアルキルアミド硬化剤)及びアミノ樹脂硬化剤のうち少なくとも1種;
硬化性官能基を有する樹脂(a1)として、エポキシ基を有するエポキシ樹脂及びエポキシ基を有するアクリル樹脂のうち少なくとも1種、及び、基体樹脂反応成分(A2)として、酸硬化剤、イソシアネート硬化剤及びアミン硬化剤のうち少なくとも1種;
硬化性官能基を有する樹脂(a1)として、カルボキシル基を有するアクリル樹脂及びカルボキシル基を有するポリエステル樹脂、及び、基体樹脂反応成分(A2)として、エポキシ硬化剤(エポキシ硬化剤としての、エポキシ基を有するアクリル樹脂);
等の組合せが挙げられる。
一実施形態において、本発明の粉体塗料組成物は、上記硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)は、硬化性官能基を有する樹脂(a1)として、水酸基及びカルボキシル基のうち少なくとも1種を有するポリエステル樹脂を含む。このような硬化性官能基を有する樹脂(a1)を含むことにより、形成される塗膜は、要求される効果を満たすことができ、更に、原料入手が容易である。
この実施形態において、基体樹脂反応成分(A2)は、例えば、イソシアネート硬化剤を含む。イソシアネート硬化剤は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物のヌレート化合物を、ε−カプロラクタム、メチルエチルケトンオキシム等のブロック剤でブロック化して得られるブロックイソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも1種であってよい。このようなイソシアネート硬化剤として、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、エボニックインダストリー社製のVESTAGON B−1530(イソホロンジイソシアネートをε−カプロラクタムでブロックしたタイプ)等が挙げられる。イソシアネート硬化剤の他の例として、分子内にウレトジオン結合を有する自己ブロックタイプのイソシアネート化合物を用いることもできる。このようなイソシアネート硬化剤として、エボニックインダストリー社製のVESTAGON BF−1540(イソホロンジイソシアネートの自己ブロックタイプ)等を用いることもできる。
また、上記アミノ樹脂硬化剤として、例えば、メラミン樹脂等のアミノ樹脂を、ホルムアルデヒド、グリオキサール等のアルデヒド化合物と反応させて得られる縮合物を用いることもできる。
基体樹脂反応成分(A2)は、例えば、セバチン酸等の脂肪族多価カルボン酸類、アミノプラスト樹脂類、脂肪族酸無水物類、アミン系化合物類、ポリアミド系樹脂類、イミダゾール化合物類、イミダゾリン化合物類、フェノール樹脂類、エポキシ樹脂、その他、トリグリシジルイソシアネート、トリグリシジルイソシアヌレート、ジシアンジアミド、ヒドロキシアルキルアミド、グリコールウリル等を含むことができる。これら基体樹脂反応成分(A2)、硬化剤は使用する熱硬化性樹脂の官能基に応じて適宜選定することができる。
一実施形態において、基体樹脂反応成分(A2)の中でも、ブロックイソシアネート硬化剤、ヒドロキシアルキルアミド硬化剤、エポキシ樹脂、フェノール樹脂類、ドデカンジカルボン酸等を含むことができる。このような基体樹脂反応成分(A2)を含むことで、低温硬化可能でありかつ保存安定性に優れた粉体塗料組成物を調製できる。
硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)及び基体樹脂反応成分(A2)の質量比は、特に限定されるものではない。例えば、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)が有する硬化性官能基と基体樹脂反応成分(A2)が有する硬化性官能基との当量の比率が0.5〜2.0の範囲となる量で用いる。これにより、基体樹脂成分(A1)と基体樹脂反応成分(A2)の反応性が良好となり、十分な塗膜強度を有することができる。
また、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)が、硬化性官能基を有する樹脂(a1)を含む形態において、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)が有する硬化性官能基の当量は、硬化性官能基を有する樹脂(a1)が有する硬化性官能基の当量の合計で示される。
[粒状物(A3)]
本開示における粉体塗料組成物は、更に、粒状物(A3)を含んでもよい。粉体塗料組成物に粒状物が含まれる場合、粒状物(A3)は塗膜形成粒子(A)に含まれるのが好ましい。粒状物(A3)が含まれることによって、得られる粉体塗料組成物の搬送性及び耐ブロッキング性が向上する。
粒状物(A3)として、例えば、架橋アクリル樹脂粒子、非架橋アクリル樹脂粒子、シリカ粒子等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種又はそれ以上を併用してもよい。
架橋アクリル樹脂粒子は、例えば、2官能性のエチレン性不飽和基含有単量体を3〜50質量%含む単量体混合物を共重合することによって通常の方法により調製することができる。ここで、2官能性のエチレン性不飽和基含有単量体とは、分子内に少なくとも2個のラジカル重合可能な不飽和基を有する単量体及び/又はそれぞれ相互に反応しうる官能基と1個のラジカル重合可能な不飽和基とを有する少なくとも2種の単量体を意味する。2官能性のエチレン性不飽和基含有単量体の具体例としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリルテレフタレート、ジアリルフタレート、アリル(メタ)アクリレート及びジビニルベンゼン等が挙げられる。このような2官能性のエチレン性不飽和基含有単量体と、上記エチレン不飽和基含有単量体とを通常の手法により共重合することによって、架橋アクリル樹脂粒子を調製することができる。
非架橋アクリル樹脂粒子は、例えば、上記エチレン不飽和基含有単量体を通常の手法により共重合することによって、調製することができる。
架橋アクリル樹脂粒子及び非架橋アクリル樹脂粒子として市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、アイカ工業社製のガンツパールシリーズ、スタフィロイドシリーズ等が挙げられる。
シリカ粒子として、例えば球状シリカ粒子等を用いることができる。シリカ粒子として市販品を用いてもよい。市販のシリカ粒子としては、例えば、信越化学工業社製のシリカ球状微粒子、東亞合成社製の球状シリカ、デンカ社製の球状シリカ、日本アエロジル社製のアエロジルシリーズ、エボニックインダストリー社製のカープレックスシリーズ等が挙げられる。
一実施形態において、粒状物(A3)の平均粒子径D50(平均粒子径)は、0.01μm以上0.2μm以下である。平均粒子径(D50)は、例えば、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラックMT3300EX II、マイクロトラック・ベル社製)等の粒度測定装置を用いて測定することができる。
粉体塗料組成物が粒状物(A3)を含む場合において、粒状物(A3)の量は、例えば、塗膜形成粒子(A)100質量部に対して、0質量部以上2質量部以下である。
[その他の成分]
本開示の粉体塗料組成物は、上記成分に加えて、本開示の粉体塗料組成物が有する効果を損なわない範囲で、その他の成分を含んでよい。例えば、顔料を含んでもよい。粉体塗料組成物が顔料を含む場合、顔料は塗膜形成粒子(A)に含まれるのが好ましい。顔料として、例えば、着色顔料及び体質顔料が挙げられる。粉体塗料組成物に着色顔料が含まれることによって、得られる塗膜に隠ぺい性及び良好な塗膜外観をもたらすことができる。
着色顔料は特に限定されず、例えば、有機系顔料としては、アゾ系、ペリレン系、縮合アゾ系、ニトロ系、ニトロソ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサン系等の顔料が挙げられ、具体的には、アゾ系顔料としてはレーキレッド、ファストイエロー、ジスアゾイエロー、パーマネントレッド等、ニトロ系顔料としてはナフトールイエロー等、ニトロソ系顔料としてはピグメントグリーンB、ナフトールグリーン等、フタロシアニン系顔料としてはフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等、アントラキノン系顔料としてはインダスレンブルー、ジアントラキノニルレッド等、キナクリドン系顔料としてはキナクリドンレッド、キナクリドンバイオレット等、ジオキサン系顔料としてはカルバゾールジオキサジンバイオレット等が、それぞれ挙げられる。
無機系の着色顔料としては特に限定されず、例えば、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック、二酸化チタン及びクロムチタンイエロー等を挙げることができる。体質顔料としては特に限定されず、例えば、カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ及びクレー等を挙げることができる。
粉体塗料組成物中に含まれる顔料の合計量は、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)及び基体樹脂反応成分(A2)の総量100質量部に対して、例えば0.05質量部以上100質量部以下であり、一実施形態において、5質量部以上70質量部以下である。
本開示の粉体塗料組成物は、更に、粉体塗料分野において通常用いられる添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、ジメチルシリコーン及びメチルシリコーン等のシリコーン類、アクリルオリゴマー等の表面調整剤、ベンゾイン及びベンゾイン誘導体等の発泡防止剤、ワキ防止剤、硬化触媒、硬化促進剤、可塑剤、帯電防止剤、帯電制御剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、顔料分散剤、難燃剤及び流動性付与剤等を挙げることができる。
一実施形態において、本開示の粉体塗料組成物は、硬化触媒を含む。例えば、塗膜形成粒子(A)は、硬化触媒を含み得る。硬化触媒を含むことで、ゲル化時間の調整を行える。硬化触媒として、イミダゾール類化合物、イミダゾリン類化合物及びこれらの金属塩複合体、3級ホスフィン類化合物、4級ホスホニウム塩類化合物、4級アンモニウム塩類化合物、錫化合物等の硬化触媒を選択できる。
イミダゾール類化合物としては、特に限定されないが、例えば、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール等のアルキルイミダゾール類、1−(2−カルバミルエチル)イミダゾール等のカルバミルアルキル置換イミダゾール類、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール等のシアノアルキル置換イミダゾール類、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等の芳香族置換イミダゾール類、1−ビニル−2−メチルイミダゾール等のアルケニル置換イミダゾール類、1−アリル−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のアリル置換イミダゾール類及びポリイミダゾール等を挙げることができるが、好ましくは、アルキルイミダゾール類、芳香族置換イミダゾール類が挙げられる。
イミダゾリン類化合物としては、特に限定されないが、例えば、2−フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリン等が挙げられる。
金属塩複合体としては、前記イミダゾール類化合物又は前記イミダゾリン類化合物を金属塩によって複合させたものを例示することができる。かかる金属塩としては、特に限定されないが、例えば、銅、ニッケル、コバルト、カルシウム、亜鉛、ジルコニウム、銀、クロム、マンガン、錫、鉄、チタン、アンチモン、アルミニウム等の金属と、クロライド、ブロマイド、フルオライド、サルフェート、ニトレート、アセテート、マレート、ステアレート、ベンゾエート、メタクリレート等の塩類とからなるもの等が挙げられる。
3級ホスフィン類化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン等が挙げられる。
前記4級ホスホニウム塩類化合物としては、特に限定されないが、例えば、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムアイオダイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド等が挙げられる。
4級アンモニウム塩類化合物としては、特に限定されないが、例えば、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
錫化合物としては、特に限定されないが、例えば、ナフテン酸錫、カプリル酸錫、オレイン酸錫等の錫カルボン酸塩;ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオレエート、ジフェニル錫ジアセテート等の錫エステル化合物等が挙げられる。
塗膜形成粒子(A)は、必要に応じて、基体樹脂成分(A1)以外の樹脂成分を含んでもよい。上記基体樹脂成分(A1)以外の樹脂成分として、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、変性ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、エチレンアクリル酸エチル樹脂、エチレンアクリル酸樹脂、ナイロン等を挙げることができる。例えば、これらの樹脂は、改質剤としての役割を果たす。これら樹脂を含むことにより、塗膜の密着性、耐衝撃性等を更に向上できる。
これらの中でも、比較的低い軟化点を有する、ポリエチレン樹脂又は変性ポリエチレン樹脂、エチレンアクリル酸樹脂等が好ましい。このような熱可塑性樹脂が含まれる場合の含有量は、塗膜形成粒子(A)100質量部に対して8質量部以下であってよく、例えば、5質量部以下である。
[脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)]
本開示の粉体塗料組成物は、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)を含み、脂肪酸金属塩は、平均粒子径(D50)が1nm以上100nm以下である。特定の平均粒子径(D50)を有する脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)を含むことにより、本開示の粉体塗料組成物から形成される塗膜において、塗膜表面に脂肪酸金属塩が均一に分散できる。更に、脂肪酸金属塩が塗膜中に不均一に存在することを抑制でき、本開示の粉体塗料組成物は、脂肪酸金属塩における金属の量を、従来の塗料組成物と比べて、低減できる。例えば、粉体塗料組成物における、前記脂肪酸金属塩の含有量は、金属の含有量に換算して、10ppm以上100ppm以下である。
このため、塗膜は、脂肪酸金属塩が有する機能を十分に発揮できる。例えば、脂肪酸金属塩が抗菌性、抗カビ性を有する形態においては、塗膜が抗菌性、抗カビ性を良好に発揮できる。更に、抗菌性、抗カビ性を有する脂肪酸金属塩が、塗膜表面に均一に分散できるので、塗膜中に含まれる抗菌剤が少ない部分では十分な抗菌性が得られないといった状態を防ぐことができる。
また、本開示の塗料組成物から形成された塗膜は、特定の平均粒子径(D50)を有する脂肪酸金属塩を含むことで、平滑性に優れ、良好な塗膜外観、例えば、良好な色彩、光沢、透明性を有する塗膜を形成できる。
脂肪酸金属塩における金属は、銅、銀、金、インジウム、パラジウム、白金、鉄、ニッケル、コバルト、亜鉛、ニオブ、ルテニウム、ロジウム及びこれらの錯体から成る群から選択される少なくとも1種の金属又はこれら錯体を含む。一実施形態において、脂肪酸金属塩における金属は、銀、銅、亜鉛及びこれらの錯体から成る群から選択される少なくとも1種の金属又は錯体を含む。一実施形態において、脂肪酸金属塩における金属は銀又は銀の錯体を含む。
例えば、本開示に係る脂肪酸金属塩における金属が、銀、銅、亜鉛及びこれらの錯体から成る群から選択される少なくとも1種の金属又は錯体を含むことで、抗菌性、抗カビ性、消臭性等の特性を有する塗膜を形成できる。更に、塗膜にシミ、斑点等が発生し、塗膜美観を損ねること、塗膜が菌によって侵されることを抑制でき、更に、被塗物の腐食等を低減でき、製品の寿命が短くなるという問題を防止又は抑制できる。また、有機系の抗菌剤が有し得る、耐熱性の低下、持続性の悪さといった問題を改善できる。
一実施形態において、脂肪酸金属塩における金属は、銀及び銀錯体から選択される少なくとも1種である。これらの脂肪酸金属塩における金属を含むことで、耐熱性を有し持続性に優れ、抗菌性、抗カビ性を有する塗膜を形成できる。
一実施形態において、脂肪酸金属塩は、脂肪酸修飾された金属塩であってよい。
脂肪酸金属塩の脂肪酸修飾に用いることができる脂肪酸として、炭素数が3から30の脂肪酸で、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のいずれであってもよい。例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等を挙げることができる。
一実施形態において、脂肪酸金属塩の脂肪酸修飾に用いることができる脂肪酸は、炭素数が12以上18以下の脂肪酸である。
例えば、炭素数が12以上18以下の脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
また、含まれる脂肪酸が複数であってもよい。一実施形態において、脂肪酸金属塩は、ステアリン酸で修飾された超微粒子である。
脂肪酸金属塩が脂肪酸修飾された金属塩であることにより、本開示の粉体塗料組成物における塗膜形成粒子(A)と、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)との相溶性をより向上でき、例えば、平滑性に優れ、塗膜外観に優れた塗膜を形成できる。更に、本開示に係る脂肪酸金属塩を塗膜表面により均一に分散させることができる。
なお、脂肪酸修飾された金属微粒子(金属塩)は、公知の方法を用いて調製することができる。
本開示において、粉体塗料組成物は、塗膜形成粒子(A)と、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)とを含む。例えば、樹脂粒子(B)が特定の脂肪酸金属塩を含むことにより、脂肪酸金属塩は、塗膜表面に均一に分散できる。
このため、例えば、銀粒子等の抗菌性、抗カビ性を有する金属粒子を単独で、塗料組成物に含ませた従来の組成物と比べ、本開示の粉体塗料組成物は、脂肪酸金属塩、例えば、銀、銅、亜鉛及びその錯体の使用量を低減できる。脂肪酸金属塩の量を低減できることにより、より良好な塗膜外観を得ることができ、意匠性に優れた塗膜を形成できる。更に、例えば、銀の使用量を低減できると、塗膜形成に要するコストを低減でき、より多くの用途において、本開示の塗料組成物を使用できる。
一実施形態において、粉体塗料組成物における、脂肪酸金属塩の含有量は、金属の含有量に換算して、5ppm以上150ppm以下であり、一実施形態において、10ppm以上150ppm以下であり、例えば、10ppm以上100ppm以下であり、例えば、10ppm以上60ppm以下であり、一実施形態において10ppm以上50ppm以下である。一実施形態において、粉体塗料組成物における、脂肪酸金属塩の含有量は、金属の含有量に換算して、10ppm以上40ppm以下であり、例えば、10ppm以上30ppm以下であり、10ppm以上25ppm以下であってよい。
本開示において、粉体塗料組成物における、脂肪酸金属塩の量がこのような範囲内であることにより、例えば、抗菌、抗カビ性に優れた塗膜を得ることができる。更に、安定した抗菌性を長期間に及び保持できる。特定の理論に限定して解釈すべきではないが、本開示の粉体塗料組成物は、塗膜表面に、脂肪酸金属塩を均一に分散できるので、脂肪酸金属塩の有する特性を、効率的に塗膜が発現できるものと推測される。
また、脂肪酸金属塩の量を、従来の粉体塗料組成物と比べて低減できる。例えば、粉体塗料組成物における、脂肪酸金属塩の含有量は、金属の含有量に換算して、5ppm以上150ppm以下であり、例えば、10ppm以上100ppm以下である。
例えば、金属として高価な銀を用いた場合、従来の塗料組成物と比べて、本開示の塗料組成物における銀の量を低減でき、塗料組成物のコスト低減にも寄与できる。
ところで、銀、銅等の超微粒子は、自由電子が光磁場による振動を受けて生じるプラズモン吸収に起因する発色を示すことが知られている。この吸収波長は、金属の種類、粒子径等に固有のものである。
一実施形態において、本開示の樹脂粒子(B)は、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(B1)及び基体樹脂反応成分(B2)を含む。例えば、基体樹脂成分(B1)と基体樹脂反応成分(B2)と、本開示に係る脂肪酸金属塩とを含む組成物は、プラズモン吸収を有する。一実施形態において、上記組成物は、400nm以上500nm以下の範囲でプラズモン吸収を有し、例えば、400nm以上480nm以下の範囲でプラズモン吸収を有する。
プラズモン吸収に起因する波長域の測定は、例えば、分光光度計(UV−3100PC、島津製作所社製)等を用いて測定できる。
例えば、本開示において、波長420nm付近にプラズモン吸収が観測されると、脂肪酸金属塩が、平均粒子径(D50)が1nm以上100nm以下の超微粒子として、本開示における脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)中に分散された状態で存在していると判断できる。このようなプラズモン吸収を有する脂肪酸金属塩における金属として、銀又は銀の錯体が挙げられる。
更に、本開示の組成物中においても、脂肪酸金属塩が、平均粒子径(D50)が1nm以上100nm以下の超微粒子として、均一に分散された状態で存在していると判断できる。
このような判断は、分光光度計により測定された吸光度について、平均粒子径(D50)が1nm以上100nm以下の脂肪酸金属塩を含まないブランク試料における、波長420nm付近の吸光度と比べて、平均粒子径(D50)が1nm以上100nm以下の脂肪酸金属塩、特に、銀又は銀の錯体を含む試料における、波長420nm付近の吸光度がより高くなる、という傾向に基づく。
また、プラズモン吸収を用いた測定に関する詳細は、特許第5693974号の記載を参照できる。
一実施形態において、脂肪酸金属塩は、平均粒子径(D50)が1nm以上80nm以下であり、例えば、1nm以上70nm以下であり、1nm以上65nm以下であってよい。一実施形態において、脂肪酸金属塩は、平均粒子径(D50)が1nm以上60nm以下であり、例えば、5nm以上60nm以下である。更に、脂肪酸金属塩は、平均粒子径(D50)が10nm以上58nm以下であってよく、例えば、15nm以上55nm以下であってよい。
脂肪酸金属塩がこのような平均粒子径(D50)を有することで、塗膜表面に脂肪酸金属塩が存在する確率を高くでき、塗膜表面に均一に脂肪酸金属塩を分散ができる。また、脂肪酸金属塩が抗菌性、抗カビ性を有する形態において、塗膜が抗菌性、抗カビ性を良好に発揮できる。その上、平滑性に優れ、良好な塗膜外観を有する塗膜を形成できる。
脂肪酸金属塩の平均粒子径(D50)は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)等の電子顕微鏡を用い、脂肪酸金属塩の平均粒子径(D50)を測定できる。
一実施形態において、脂肪酸金属塩は平均粒子径(D50)が上記範囲内となる限り、単分散微粒子であってよく又は凝集体であってよい。例えば、脂肪酸金属塩は、平均粒子径(D50)が上記範囲内となる単分散微粒子である。
また、一実施形態において、脂肪酸金属塩は、後述のように脂肪酸修飾された金属塩であってよい。この形態において、脂肪酸修飾された金属塩(脂肪酸金属塩)は、平均粒子径(D50)が上記範囲内となる。
樹脂粒子(B)において、脂肪酸金属塩は、粒子(B)の表面付近に多く存在してもよく、粒子(B)において均一に分散していてもよい。
更に、塗膜表面に存在し得る脂肪酸金属塩の平均粒子径(D50)が、1nm以上100nm以下であるため、粒子により生じ得る塗膜の表面凹凸を小さくでき、表面平滑性が良好な塗膜外観を有することができる。
一実施形態において、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の塗装後から30秒後に測定した、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の帯電量QB30(μC/g)は、負の値を有する。一実施形態において、帯電量QB30(μC/g)は、−3.50μC/g以上−1.00μC/g以下であり、例えば、−3.00μC/g以上−1.20μC/g以下である。一実施形態において、帯電量QB30(μC/g)は、−2.80μC/g以上−1.30μC/g以下であり、例えば、−2.70μC/g以上−1.50μC/g以下である。
脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の帯電量QB30(μC/g)がこのような範囲内であることにより、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)と、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の混合を均一に行うことができる。更に、これらが均一に分散した粉体塗料組成物から形成した塗膜は、脂肪酸金属塩を塗膜表面により均一に分散することができる。
例えば、脂肪酸金属塩が、抗菌性、抗カビ性を有する形態においては、製品の塗装面に細菌、カビ等の菌が繁殖し、塗膜にシミ、斑点等が発生することを抑制又は低減できる。このため、塗膜外観を損ねること、塗膜が菌によって侵され製品の寿命が短くなることを抑制又は低減できる。
本開示において、帯電量QB30(μC/g)は、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の塗装後、例えば、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)を含む塗料組成物を塗装し、塗装後から30秒後に測定した、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の帯電量を意味する。
ここで、本開示に係る脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)は、塗装直後(すなわち0秒後)から少なくとも30秒後の間において、任意の時間経過の後における帯電量を測定できる。例えば、本開示の脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)は、塗装後から30秒後における帯電量を複数回(例えば5回)測定した場合においても、測定毎の数値のバラツキが少ない傾向があるので、塗装後から30秒後の帯電量QB30(μC/g)を測定した。
また、本明細書において、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の塗装後から30秒後に測定した、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の帯電量QB30(μC/g)を、単にQB30(μC/g)と記載することがある。また、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の塗装後から120秒後に測定した帯電量を、QB120(μC/g)のように示し得る。
帯電量QB30(μC/g)の測定は、例えば、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)を含む塗料組成物を静電塗装し、塗装後から30秒後における帯電量QB30(μC/g)を測定することで導ける。
具体的には、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)を静電塗装し、塗装後から30秒後における帯電量QB30(μC/g)の測定を、電荷量測定装置EA02(ユーテック社製)を用いて行うことができる。例えば、帯電量の測定時における温度は23℃、湿度50%である。例えば、実施例1で調製した脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)を、静電塗装法(印加電圧−80kV)を用いて、乾燥膜厚60μmとなるように、溶融亜鉛めっき鋼板(幅75mm、長さ150mm、厚さ0.8mm)に塗装する。次に、塗装後30秒経過した後、前記鋼板上の200mmの範囲から塗料を装置に吸入し、そのときの帯電量と吸入した塗料の質量から、帯電量QB30を算出できる。
一実施形態において、塗膜形成粒子(A)の帯電量QA30(μC/g)と、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の帯電量QB30(μC/g)が、
|QA30|<|QB30|の関係を有する。
塗膜形成粒子(A)の帯電量QA30(μC/g)と、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の帯電量QB30(μC/g)が上記関係を有することにより、これらの粒子(A)及び粒子(B)を含む本開示の粉体塗料組成物から形成した塗膜は、塗膜表面(最表層)に分散する脂肪酸金属塩の確率を高くできると考えられる。
このため、例えば、脂肪酸金属塩が、抗菌性、抗カビ性を有する態様においては、抗菌性、抗カビ性を十分に奏することができる。その上、製品の塗装面に細菌、カビ等の菌が繁殖し、塗膜にシミ、斑点等が発生することを抑制又は低減できる。また、塗膜外観を損ねること、塗膜が菌によって侵され製品の寿命が短くなることを抑制又は低減できる。
加えて、本開示の粉体塗料組成物は、塗膜表面(最表層)に分散する脂肪酸金属塩の確率を高くできるので、優れた抗菌性を有しながら、更に、脂肪酸金属塩の量を、従来の塗料組成物と比べて低減できる。例えば、粉体塗料組成物における、脂肪酸金属塩の含有量は、金属の含有量に換算して、10ppm以上100ppm以下である。
一実施形態において、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の塗装後から120秒後に測定した、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の帯電量QB120(μC/g)は、負の値を有する。一実施形態において、帯電量QB120(μC/g)は、−2.00μC/g以上−0.10μC/g以下である。帯電量QB120(μC/g)の測定は、例えば、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)を含む塗料組成物を静電塗装し、塗装後から120秒後における帯電量QB120(μC/g)を測定することで導ける。この測定条件以外は、帯電量QB30(μC/g)と同様に行える。
一実施形態において、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の粒子径D10は、1.00μm以上20.0μm以下、例えば、5.00μm以上15.00μm以下である。このような粒子径を有することにより、本開示の塗料組成物は、被塗物に対して、より良好に塗着でき、塗膜外観を良好にできる。例えば、平滑性と塗着効率のバランスに優れた塗膜を得ることができる。更に、塗膜形成粒子(A)及び脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)を良好に混合でき、脂肪酸金属塩が塗膜表面に均一に存在する塗膜を形成でき、例えば、抗菌、抗カビ性に優れた塗膜を得ることができる。
一実施形態において、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の粒子径D50は、10.00μm以上50.00μm以下、例えば、15.00μm以上45.00μm以下である。このような粒子径を有することにより、本開示の塗料組成物は、被塗物に対して、より良好に塗着でき、塗膜外観を良好にできる。例えば、平滑性と塗着効率のバランスに優れた塗膜を得ることができる。更に、塗膜形成粒子(A)及び脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)を良好に混合でき、脂肪酸金属塩が塗膜表面に均一に存在する塗膜を形成でき、例えば、抗菌、抗カビ性に優れた塗膜を得ることができる。
一実施形態において、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の粒子径D90は、30.00μm以上70.00μm以下、例えば、45.00μm以上65.00μm以下である。このような粒子径を有することにより、本開示の塗料組成物は、被塗物に対して、より良好に塗着でき、塗膜外観を良好にできる。例えば、平滑性と塗着効率のバランスに優れた塗膜を得ることができる。更に、塗膜形成粒子(A)及び脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)を良好に混合でき、脂肪酸金属塩が塗膜表面に均一に存在する塗膜を形成でき、例えば、抗菌、抗カビ性に優れた塗膜を得ることができる。
本明細書において、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の粒子径D10値は、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の体積基準の粒度分布において、小粒子径側からある粒子径までの間で積算した粒子の合計体積を、粒子全体の体積に対する百分率で表したときに、その値が10%になるときの粒子径の値を意味する。同様に、粒子径D50値は、この百分率の値が50%になるときの粒子径の値であり、D90は、この百分率の値が90%になるときの粒子径の値である。なお、D50値を平均粒子径と称する場合がある。D10、D50及びD90値は、レーザー回折・散乱法により測定された値(体積平均粒子径)であり、例えば、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラックMT3300EX II、マイクロトラック・ベル社製)等の粒度測定装置を用いて測定することができる。
[硬化性官能基を有する基体樹脂成分(B1)]
一実施形態において、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)は、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(B1)及び基体樹脂反応成分(B2)を含む。硬化性官能基を有する基体樹脂成分(B1)は、硬化性官能基を有する樹脂(b1)を少なくとも1種含んでよい。
一実施形態において、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)は、硬化性官能基を有する樹脂(b1)を少なくとも1種含み、硬化性官能基を有する樹脂(b1)は、硬化性官能基を有するポリエステル樹脂、硬化性官能基を有するエポキシ樹脂及び硬化性官能基を有するアクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である。一実施形態において、硬化性官能基を有する樹脂(b1)は、硬化性官能基を有するポリオレフィン樹脂を含んでよい。
脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)は、このような硬化性官能基を有する樹脂(b1)を含むことにより、塗膜形成粒子(A)とより均一に混合できる。その結果、金属微粒子が塗膜表面に均一に存在する塗膜を形成でき、例えば、抗菌、抗カビ性に優れた塗膜を得ることができる。
硬化性官能基を有する樹脂(b1)が含み得る、硬化性官能基を有するポリエステル樹脂、硬化性官能基を有するエポキシ樹脂及び硬化性官能基を有するアクリル樹脂は、上記塗膜形成粒子(A)について記載した樹脂であってよい。
硬化性官能基を有するポリエステル樹脂としては、例えば、水酸基、カルボキシル基等の硬化性官能基を有するポリエステル樹脂が挙げられる。これらの硬化性官能基は、1種のみを有していてもよく、2種又はそれ以上を有していてもよい。硬化性官能基を有するポリエステル樹脂は、例えば、多価カルボン酸を主成分とした酸成分と、多価アルコールを主成分としたアルコール成分とを、通常の方法により縮重合することにより調製することができる。
上記酸成分は、上述の塗膜形成粒子(A)について記載したものを選択できる。一実施形態において、テレフタル酸及びイソフタル酸の少なくとも一方を含む。例えば、テレフタル酸及びイソフタル酸を含む実施形態において、イソフタル酸の量は、酸成分中、60質量%以上であり、80質量%以上であってよい。このような量で酸成分を用いることにより、得られる塗膜の耐候性を向上させることができる。
酸成分は、それぞれ単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
アルコール成分としては、上述の塗膜形成粒子(A)について記載したものを選択できる。一実施形態において、これらのうち、アルコール成分は、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール及び1,6−ヘキサンジオールからなる群から選択される少なくとも1種を含む。アルコール成分はそれぞれ単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
硬化性官能基を有するエポキシ樹脂としては、上述の塗膜形成粒子(A)について記載したものを選択でき、例えば、1分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂が挙げられる。具体的には、グリシジルエステル樹脂;ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの縮合反応物、ビスフェノールFとエピクロロヒドリンとの縮合反応物等の、グリシジルエーテル型樹脂;及び、脂環式エポキシ樹脂、直鎖状脂肪族エポキシ樹脂、含ブロムエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;等が挙げられる。
硬化性官能基を有するアクリル樹脂としては、例えば、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基等の硬化性官能基を有するアクリル樹脂が挙げられる。これらの硬化性官能基は、1種のみを有していてもよく、2種又はそれ以上を有していてもよい。硬化性官能基を有するアクリル樹脂は、硬化剤と反応し得る官能基を有する単量体を共重合可能な他のビニル系単量体と共重合させることによって得られる。例えば、エチレン性不飽和基含有単量体を通常の方法により共重合することによって調製できる。
エチレン性不飽和基含有単量体としては、上述の塗膜形成粒子(A)について記載したものを選択できる。エチレン性不飽和基含有単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記樹脂(b1)として、市販品を用いてもよい。市販品として、例えば、硬化性官能基を有するポリエステル樹脂として、
DIC社製のファインディックM−8000シリーズ及びM−8200シリーズ(水酸基含有ポリエステル樹脂)、DIC社製のファインディックM−8800シリーズ及びM−8900シリーズ(カルボキシル基含有ポリエステル樹脂)、日本ユピカ社製のユピカコートGV−100シリーズ、GV−500シリーズ、GV−700シリーズ及びGV−200シリーズ(水酸基含有ポリエステル樹脂)等;
硬化性官能基を有するアクリル樹脂として、DIC社製のファインディックAシリーズ等;
硬化性官能基を有するエポキシ樹脂として、DIC社製のEPICRONシリーズ(ビスフェノールA型及びビスフェノールF型)等;
が挙げられる。
一実施形態において、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(B1)は、エポキシ樹脂とポリエステル樹脂とをブレンドしたポリエステル・エポキシ樹脂、エポキシ樹脂とアクリル樹脂とをブレンドしたアクリル・エポキシ樹脂及びフッ素樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含んでよい。上記エポキシ樹脂、アクリル樹脂、及びポリエステル樹脂は、適宜ブレンドしてポリエステル・エポキシ樹脂、あるいはアクリル・エポキシ樹脂等として使用することができる。フッ素樹脂の例としては、フッ化ビニリデン、3フッ化エチレン、フッ化ビニル等のフッ素系モノマーと、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有アルキルモノマーと、更に上記アクリル樹脂に用いられるモノマーとを共重合させたもの等が挙げられる。上記フッ素樹脂として、市販品を用いてもよい。市販品として、例えば、ルブロンL−2(ダイキン工業社製)等が挙げられる。
硬化性官能基を有するポリオレフィン樹脂において、硬化性官能基は、例えば、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基等の官能基である。
ポリオレフィン樹脂としては、溶融成形が可能な熱可塑性樹脂であれば従来公知のものをすべて使用でき、例えば、低−,中−,高−密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体等が挙げられる。一実施形態において、ポリエチレン及び/又はポリプロピレンを用いることができる。
一実施形態において、樹脂粒子(A)における、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)が含む硬化性官能基を有する樹脂(a1)と、
樹脂成分(B)における、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(B1)が含む硬化性官能基を有する樹脂(b1)は、同種類の樹脂を含む。
硬化性官能基を有する樹脂(a1)と、硬化性官能基を有する樹脂(b1)とが同種類の樹脂を含むことにより、塗膜形成粒子(A)と、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)との相溶性を良好にでき、粉体塗料組成物において、塗膜形成粒子(A)と、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)を均一に混合できる。また、得られる塗膜の外観を良好にできる。
また、硬化性官能基を有する樹脂(a1)と、硬化性官能基を有する樹脂(b1)が同種類の樹脂を含む実施形態において、例えば、樹脂成分(A)に含まれる基体樹脂反応成分(A2)の量と、樹脂粒子(B)に含まれる基体樹脂反応成分(B2)の量は、同一であってよく、異なってもよい。
特定の理論に限定して解釈すべきではないが、このような実施形態であると、例えば、静電粉体塗装において、塗膜形成粒子(A)と、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)との静電(帯電)特性を、同程度、又は、本開示に記載の各種条件にすることができ、静電(帯電)特性の違いにより生じ得る塗着効率の悪影響を、より小さくできる。
この結果、脂肪酸金属塩が塗膜中に不均一に存在すること、塗膜中に含まれる脂肪酸金属塩が少なくなることを防止は低減できる。したがって、例えば、脂肪酸金属塩が、抗菌性、抗カビ性を有する形態において、本開示の粉体塗料組成物から形成された塗膜は、脂肪酸金属塩が有する抗菌性等を良好に奏することができる。また、塗膜において、脂肪酸金属塩が偏在することを防止又は抑制でき、脂肪酸金属塩が有する抗菌性等を良好に奏することができる。
一実施形態において、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)における、硬化性官能基を有する樹脂(a1)と、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)における、硬化性官能基を有する樹脂(b1)は、同種類の樹脂を含む。同種類の樹脂を含むとは、硬化性官能基を有する樹脂(a1)と、硬化性官能基を有する樹脂(b1)が、基本骨格(主鎖)が同種の構造を有する樹脂を共に含むことを意味する。例えば、一方の樹脂がポリエステル系樹脂である場合、他方の樹脂もポリエステル系樹脂であることを意味する。
硬化性官能基を有する樹脂(a1)及び硬化性官能基を有する樹脂(b1)の詳細は、上述のとおりである。
一実施形態において、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)における、硬化性官能基を有する樹脂(a1)と、
脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)における、硬化性官能基を有する樹脂(b1)は、共に、硬化性官能基を有するポリエステル樹脂を含む。
樹脂(a1)と樹脂(b1)が共に硬化性官能基を有するポリエステル樹脂を含むことにより、本開示の塗料組成物は、被塗物に対して、より良好に塗着できる。また、薄膜を形成でき、例えば、屋外で用いる用途において、優れた耐候性、機械物性、耐薬品性等を示すことができる。更に、脂肪酸金属塩が有する特性、例えば、抗菌性をより効果的に奏することができる。また、色相、光沢等、意匠性に優れた塗膜を形成できる。
一実施形態において、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)における、硬化性官能基を有する樹脂(a1)と、
脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)における、硬化性官能基を有する樹脂(b1)は、共に、硬化性官能基を有するアクリル樹脂を含んで良く、共にエポキシ樹脂を含んでよい。これらの樹脂を、含むことで、本開示の塗料組成物は、被塗物に対して、より良好に塗着できる。また、優れた耐候性、機械物性、耐薬品性等を示すことができる。更に、脂肪酸金属塩が有する特性、例えば、抗菌性をより効果的に奏することができる。また、色相、光沢等、意匠性に優れた塗膜を形成できる。
[基体樹脂反応成分(B2)]
一実施形態において、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)は、基体樹脂反応成分(B2)を含む。基体樹脂反応成分(B2)は、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(B1)の硬化性官能基と反応し、塗膜を形成する成分である。
基体樹脂反応成分(B2)として、上述の塗膜形成粒子(A)について記載したものを選択でき、例えば、イソシアネート硬化剤、アミン硬化剤、イミダゾリン硬化剤、酸硬化剤、エポキシ硬化剤、アミノ樹脂硬化剤等が挙げられる。基体樹脂反応成分(B2)は、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(B1)の種類に応じて適宜選択することができる。
本開示の塗料組成物は、粉体塗料組成物であることから、基体樹脂反応成分(B2)の融点は50〜250℃の範囲内であるのが好ましい。基体樹脂反応成分(B2)の融点が上記範囲内であることによって、得られる粉体塗料組成物の貯蔵安定性が良好となり、かつ、形成される塗膜の平滑性が良好となる。
例えば、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(B1)が硬化性官能基として水酸基を有する場合は、基体樹脂反応成分(B2)としては、脂肪族多価カルボン酸、脂肪族酸無水物等の酸硬化剤;メラミン樹脂等のアミノ樹脂硬化剤;エポキシ樹脂、エポキシ基を有するアクリル樹脂等のエポキシ硬化剤;ブロックイソシアネート等のイソシアネート硬化剤;等を用いることができる。
例えば、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(B1)が硬化性官能基としてカルボキシル基を有する場合、基体樹脂反応成分(B2)としては、具体的には、上記エポキシ樹脂、エポキシ基を有する上記アクリル樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート等のエポキシ硬化剤;ヒドロキシアルキルアミド、ヒドロキシアルキルアミン等のアミン硬化剤;ポリヒドロキシ化合物;等を挙げることができる。
例えば、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(B1)が硬化性官能基としてエポキシ基を有する場合は、上記基体樹脂反応成分(B2)としては、具体的には、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、セバシン酸等の脂肪族多価カルボン酸、多価カルボン酸の酸無水物、酸基含有アクリル樹脂等の酸硬化剤;ブロックイソシアネート等のイソシアネート硬化剤;脂肪族ポリアミン、ポリアミノアミド、ケチミン、脂環族ジアミン、芳香族ジアミン、イミダゾール、ジシアンジアミド、ポリアミド、ヒドロキシアルキルアミド等のアミン硬化剤;フェノール樹脂硬化剤;等を挙げることができる。
基体樹脂反応成分(B2)は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
硬化性官能基を有する基体樹脂成分(B1)及び基体樹脂反応成分(B2)の組み合わせとして、例えば、以下のものを挙げることができる。また、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(B1)は、硬化性官能基を有する樹脂(b1)を含むことができる。
例えば、硬化性官能基を有する樹脂(b1)として、水酸基及びカルボキシル基のうち少なくとも1種を有するポリエステル樹脂、及び、基体樹脂反応成分(B2)として、イソシアネート硬化剤;
硬化性官能基を有する樹脂(b1)として、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂、及び、基体樹脂反応成分(B2)として、アミン硬化剤(ヒドロキシアルキルアミド硬化剤)及びアミノ樹脂硬化剤のうち少なくとも1種;
硬化性官能基を有する樹脂(b1)として、エポキシ基を有するエポキシ樹脂及びエポキシ基を有するアクリル樹脂のうち少なくとも1種、及び、基体樹脂反応成分(B2)として、酸硬化剤、イソシアネート硬化剤及びアミン硬化剤のうち少なくとも1種;
硬化性官能基を有する樹脂(b1)として、カルボキシル基を有するアクリル樹脂及びカルボキシル基を有するポリエステル樹脂、及び、基体樹脂反応成分(B2)として、エポキシ硬化剤(エポキシ硬化剤としての、エポキシ基を有するアクリル樹脂);
等の組合せが挙げられる。
一実施形態において、本発明の粉体塗料組成物は、上記硬化性官能基を有する基体樹脂成分(B1)は、硬化性官能基を有する樹脂(b1)として、水酸基及びカルボキシル基のうち少なくとも1種を有するポリエステル樹脂を含む。このような硬化性官能基を有する樹脂(b1)を含むことにより、形成される塗膜は、要求される効果を満たすことができ、更に、原料入手が容易である。この実施形態において、基体樹脂反応成分(B2)は、例えば、イソシアネート硬化剤を含む。イソシアネート硬化剤の詳細は、上述の基体樹脂反応成分(A2)で記載したものを選択できる。
また、上記アミノ樹脂硬化剤として、例えば、メラミン樹脂等のアミノ樹脂を、ホルムアルデヒド、グリオキサール等のアルデヒド化合物と反応させて得られる縮合物を用いることもできる。
基体樹脂反応成分(B2)は、例えば、セバチン酸等の脂肪族多価カルボン酸類、アミノプラスト樹脂類、脂肪族酸無水物類、アミン系化合物類、ポリアミド系樹脂類、イミダゾール化合物類、イミダゾリン化合物類、フェノール樹脂類、エポキシ樹脂、その他、トリグリシジルイソシアネート、トリグリシジルイソシアヌレート、ジシアンジアミド、ヒドロキシアルキルアミド、グリコールウリル等を含むことができる。これら基体樹脂反応成分(B2)、硬化剤は使用する熱硬化性樹脂の官能基に応じて適宜選定することができる。
一実施形態において、上記基体樹脂反応成分(B2)の中でも、ブロックイソシアネート硬化剤を含むことができる。ブロックイソシアネート硬化を含むことにより、低温硬化可能でありかつ保存安定性に優れた粉体塗料組成物を調製できる。
硬化性官能基を有する基体樹脂成分(B1)及び上記基体樹脂反応成分(B2)の質量比は、特に限定されるものではない。例えば、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(B1)が有する硬化性官能基と上記基体樹脂反応成分(B2)が有する硬化性官能基との当量の比率が0.5〜2.0の範囲となる量で用いる。これにより、基体樹脂成分(B1)と基体樹脂反応成分(B2)の反応性が良好となる。
また、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(B1)が、硬化性官能基を有する樹脂(b1)を含む形態において、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(B1)が有する硬化性官能基の当量は、硬化性官能基を有する樹脂(b1)が有する硬化性官能基の当量の合計で示される。
脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)は、脂肪酸金属塩の有する特性を損なわない範囲で、塗膜形成粒子(A)が含み得る各種成分、例えば、上記以外の硬化触媒、添加剤等を含んでよい。また、界面活性剤等、脂肪酸金属塩と樹脂粒子(B)との分散性、相溶性等を向上させる添加剤を含んでよい。各種成分の詳細は、塗膜形成粒子(A)における記載のとおりである。
[粉体塗料組成物]
一実施形態において、本開示の粉体塗料組成物は、抗菌性を有する粉体塗料組成物である。本開示の抗菌性を有する塗料組成物は、抗菌性、抗カビ性を保持できる塗膜を形成できる。その上、平滑性、光沢等に優れた、意匠性の高い塗膜外観を得ることができる。
一実施形態において、本開示の粉体塗料組成物は、塗膜形成粒子(A)と、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)とのドライブレンド物である。ドライブレンド物は、塗膜形成粒子(A)と、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)とをドライブレンドすることにより調製できる。本開示のドライブレンド物は、例えば、脂肪酸金属塩が抗菌性、抗カビ性等の特性を有する形態において、脂肪酸金属塩が有する特性をより効果的に奏することができる。更に、本開示のドライブレンド物であれば、粉体塗料組成物に含まれる脂肪酸金属塩の量を、既知の粉体塗料組成物に含まれる金属粒子の量よりも少ない量で、抗菌性、抗カビ性等の特性を奏することができる。
一実施形態において、本開示の粉体塗料組成物は、塗膜形成粒子(A)と、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)とをドライブレンドして得られたドライブレンド物であり、更に、抗菌性を有する粉体塗料組成物である。
一実施形態において、本開示のドライブレンド物は、10℃以上40℃以下の温度条件下、例えば、20℃以上35℃以下の温度条件下、塗膜形成粒子(A)と、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)とを混合して得られた組成物である。このような温度範囲でドライブレンドされ調製された粉体塗料組成物は、例えば、脂肪酸金属塩が抗菌性、抗カビ性等の特性を有する形態において、脂肪酸金属塩が有する特性をより効果的に奏することができる。なお、本開示において、ドライブレンドを「室温」で行うと記載する場合があり、その温度は、上記温度範囲内に含まれる。
[粉体塗料組成物の製造方法]
本開示の粉体塗料組成物の製造方法は、塗膜形成粒子(A)と、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)とを混合し、粉体塗料組成物を調製する粉体塗料調製工程を含む。
例えば、上記粉体塗料調製工程までに、例えば、塗膜形成粒子(A)を調製しておくことが好ましい。
塗膜形成粒子(A)は、例えば、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)及び基体樹脂反応成分(A2)を混合することによって調製できる(塗膜形成粒子調製工程)。この混合において、必要に応じて他の成分(例えば、上記粒状物(A3)、各種顔料、その他の樹脂及び添加剤等)も併せて混合できる。具体的な混合方法は、例えば、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)、基体樹脂反応成分(A2)、必要に応じて用いられる粒状物(A3)、顔料、その他の樹脂及び添加剤等を、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、Vブレンダー、コニカルスクリューミキサー、ボールミル、バンバリーミキサー等の混合機により均一に混合する。次いで、得られた混合物を、エクストルーダー、熱ロール等の混練機により更に、混合(溶融混練)する。塗膜形成粒子(A)に関する溶融混練において、溶融混練を行う温度は、80℃以上150℃以下で行うことができる。なお、溶融混練を行う温度は、塗膜形成粒子(A)が含み得る硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)及び基体樹脂反応成分(A2)の樹脂種に応じて、適宜変更できる。
次いで、得られた混練物を、必要に応じてハンマーミル等の衝撃型粉砕機、ジェットミル等の気流粉砕機等によって粉砕(粉砕処理)し、そして必要に応じて分級することによって、塗膜形成粒子(A)を調製できる。
脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の調製は、脂肪酸金属塩の有する特性を損なわない範囲で適宜選択できる。
例えば、塗膜形成粒子(A)と同様の方法により、脂肪酸金属塩、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(B1)及び基体樹脂反応成分(B2)を混合し、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)を調製してもよい。
また、塗膜形成粒子(A)と同様の方法により、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(B1)及び基体樹脂反応成分(B2)から、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の前駆体を製造し、得られた樹脂粒子(B)の前駆体と、脂肪酸金属塩とを混合し、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)を製造してもよい。
塗膜形成粒子(A)と、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)とを混合し、粉体塗料組成物を調製する粉体塗料調製工程は、例えば、エクストルーダー、熱ロール等の混練機により混合する、溶融混練により行ってもよい。溶融混練により粉体塗料組成物を調製する場合、焼付硬化温度よりも低く、少なくとも原料の一部が溶融し全体を混練することができる温度、一般に80以上140℃以下の温度で、0.5分以上5分以下の溶融混練時間をかけ、塗膜形成粒子(A)と、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)とを混練(混合)できる。
次いで、溶融混練で得られた溶融混練物を、冷却ロール、冷却コンベヤー等を用いて冷却し、固化させ、混合物を調製する。更に、固化した混合物を、例えば、ハンマーミル、ジェット衝撃ミル等の粉砕装置を用いて物理的粉砕し、空気分級機、振動フルイ及び超音波フルイ等を用いて、粒度分布を調整する。
必要に応じて、塗膜形成粒子(A)、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)、硬化剤、着色剤、各種添加剤等の原料を、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー等を使用して予備的に混合してもよい。
本開示は、別の実施形態において、塗膜形成粒子(A)と、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)とを、10℃以上40℃以下の温度でドライブレンドすることを含む、粉体塗料組成物の製造方法を提供する。
以下、塗膜形成粒子(A)と、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)とをドライブレンドすることを含む、粉体塗料組成物の製造方法について説明する。
特定の理論に限定して解釈すべきではないが、ドライブレンドにより本開示の粉体塗料組成物を調製すると、塗膜形成粒子(A)が有する帯電量(QA30、QA120)等を、ドライブレンド前後において上記所定の範囲に保持できると考えられる。
また、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)が有する帯電量(QB30、QB120)等を、ドライブレンド前後において上記所定の範囲に保持できると考えられる。ドライブレンドにより得られた本開示の粉体塗料組成物を塗装することで、より効果的に塗膜表面に脂肪酸金属塩を分散させることができる。
その結果、脂肪酸金属塩が有する特性を効率的に発揮でき、例えば、抗菌性、抗カビ性を保持できる塗膜を形成できる。その上、平滑性、光沢等に優れた、意匠性の高い塗膜外観を得ることができる。
更に、一実施形態において、本開示のドライブレンド物は、粉体塗料組成物における脂肪酸金属塩の含有量が、金属の含有量に換算して10ppm以上100ppm以下である形態であっても、優れた抗菌性、抗カビ性を有する塗膜を形成でき、更に、これらの効果を長期に亘り保持できる塗膜を形成できる。
ドライブレンドにより、塗膜形成粒子(A)及び脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)を混合して粉体塗料組成物を調製する工程(ドライブレンドによる粉体塗料調製工程)において、混合温度は、溶融混練を行う温度未満である。例えば、塗膜形成粒子(A)、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)の融点未満の温度でドライブレンドできる。
一実施形態において、ドライブレンドによる粉体塗料調製工程は、塗膜形成粒子(A)と、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)とを、10℃以上40℃以下の温度でドライブレンドすることを含む。一実施形態において、ドライブレンドする温度は、10℃以上35℃以下であり、20℃以上35℃以下である。また、ドライブレンドは、乾燥状態でブレンドできる。
ドライブレンドをこのような温度範囲で行うことにより、塗膜形成粒子(A)が有する帯電量(QA30、QA120)等を、ドライブレンド前後において上記所定の範囲に保持できる。
また、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)が有する帯電量(QB30、QB120)等の特性を、ドライブレンド前後において上記所定の範囲に保持できる。これにより、本開示の粉体塗料組成物を塗装することで、より効果的に塗膜表面に脂肪酸金属塩を存在させることができ、更に、より均一に分散させることができると推測される。その結果、例えば、抗菌性、抗カビ性を保持できる塗膜を形成できる。更に、塗膜外観が優れる。
ドライブレンドは、公知の装置を用いて行え、例えば、リボン型混合機、ナウタミキサー等を用いてドライブレンドを行える。
必要に応じて、塗膜形成粒子(A)及び脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)を混合した後に、ハンマーミル等の衝撃型粉砕機、ジェットミル等の気流粉砕機、超遠心粉砕機等の粉砕機を行いて粉砕してもよく、分級を行ってもよい。
なお、本発明の粉体塗料組成物の製造においては、上記以外にも、例えば、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)、基体樹脂反応成分(A2)、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(B1)、基体樹脂反応成分(B2)等を順次混合することによって、粉体塗料組成物を製造することができる。
[塗膜の形成]
本開示の粉体塗料組成物は、粉体塗料組成物を被塗物に塗装し、加熱等により焼付けを行い、塗膜を形成できる(塗膜形成工程)。
被塗物は、特に限定されず、例えば、自動車用、家電機器用、建材用、雑貨用等の鋼板、リン酸亜鉛処理鋼板、リン酸鉄処理鋼板、アルミニウム又はアルミニウム合金板等の金属板、合金化亜鉛めっき材、鋳鉄材、溶融亜鉛めっき材、マグネシウム合金材、アルミニウム・ダイキャスト材、及びこれら金属板からなる部材、及び、プラスチック部材、コンクリート部材、スレート部材等が挙げられる。これらを更に表面処理した被塗物であってもよい。被塗物への塗膜形成は、本発明の粉体塗料組成物からなる1層であっても、塗膜が有する効果を発揮できる。一実施形態において、下塗り塗膜の上に、本開示の粉体塗料組成物を上塗り塗料として塗布してもよい。下塗り塗膜を形成する下塗り塗料組成物としては、電着塗料組成物、プライマー塗料組成物等、公知のものを用いることができる。
一実施形態において、塗装により得られた塗膜を加熱して硬化させる際の加熱温度は、120℃以上200℃以下であり、例えば140℃以上190℃以下である。上記範囲で塗装塗膜を加熱硬化させることによって、脂肪酸金属塩の性能を妨げることなく、例えば、良好な抗菌性、抗カビ性、塗膜外観を有する塗膜を形成できる
本開示の粉体塗料組成物は、例えば、スプレー塗装法、静電粉体塗装法、流動浸漬法等の当業者に知られた塗装方法によって塗装することができる。例えば、粉体塗装ガンを用いた静電粉体塗装法を使用できる。静電粉体塗装法を使用することで、塗膜表面に脂肪酸金属塩をより均一に分散できる。
静電粉体塗装法は、例えば、被塗物である金属素材を接地した後、コロナ帯電型塗装ガン、摩擦帯電型塗装ガン、例えば、メサック社製の静電電界クラウド流動浸漬塗装装置等の粉体塗装装置を用いて粉体塗料組成物をスプレーする。
コロナ帯電型塗装ガンを使用する場合、コロナ放電処理により粉体塗料組成物に加える荷電圧は、−50〜−100kVであってよく、例えば、−55〜−90kVである。荷電圧がこのよう値であることにより、塗着効率に優れ、更に良好な塗膜外観を得ることができる。
一実施形態において、摩擦帯電型塗装ガンを使用する場合、粉体塗料組成物の内部発生電流値は、1.0〜8.0μAとなるよう摩擦帯電処理に設定できる。これにより、塗着効率をより良好にできる。
各塗装ガンの吐出量は、例えば、50〜400g/分、吐出圧は、4.9×104〜4.9×105Paである。更に、塗装ガン先端から被塗基材までの距離は、例えば、10〜50cmである。このような条件下で塗装を行うことで、粉体塗料組成物の粒子を塗着効率良く、被塗物に対し静電的に付着させることができ、所望の特性を発揮できる粉体塗膜層を形成できる。
塗装膜厚は特に限定されないが、20μm以上120μm以下であってよく、例えば、20μm以上100μm以下である。粉体塗料組成物を塗布する際の塗装膜厚がこのような範囲であることにより、例えば、塗膜のまだら感及び透けを防止し、また塗膜表面又は内部の泡の発生を防止できる。粉体塗料組成物は、水性塗料組成物又は溶液型塗料組成物等と比較して塗料固形分が極めて高い。そのため、他の塗料組成物と比較して、粉体塗料組成物は、1回の塗装工程で厚膜塗装が可能であり、より厚膜である塗膜の形成に適した塗料組成物である。
焼付けの温度及び時間は、用いる硬化剤の種類や量により異なる。例えば、静電粉体塗装法において、焼付け温度は120℃以上200℃以下であってよく、例えば、140℃以上190℃以下である。焼付けの時間は、焼付け温度に応じて適宜設定することができる。
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」及び「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。
(実施例1)粉体塗料組成物の調製
[塗膜形成粒子(A)の調製]
硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)における硬化性官能基を有する樹脂として(a1−1)(ポリエステル樹脂1:ファインディックM8020、DIC社製、OH末端基を有する)60質量部、基体樹脂反応成分(A2)として(A2−1)(ε−カプロラクタムブロック化イソシアネート硬化剤:VESTAGON B−1530、エボニックインダストリー社製)10質量部、ベンゾインB(ワキ防止剤)0.8質量部、アクリルシリコン系表面調整剤(KF−54、信越化学工業社製)0.3質量部、ジブチル錫ジラウレート(KS−1260、堺化学工業社製)0.3質量部、二酸化チタン(TIPAQUE CR90、石原産業社製)4.6質量部、カーボンブラック(MA−100、三菱化学社製)0.7質量部、沈降性硫酸バリウム100(堺化学社製)21.2質量部を、スーパーミキサー(日本スピンドル社製)を用いて約3分間混合し、更に、コニーダー(ブス社製)を用いて約100℃で溶融混練した。得られた混練物1を冷却して粗粉砕し、更に、クリプトロン(川崎重工業社製)を用いて微粉砕した。
得られた粉砕物を、ターボクラシファイア(日清エンジニアリング社製)を用いて分級して、微小粒子及び粗大粒子を除去し、シリカ粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル社製)0.3質量部を添加した後、上記スーパーミキサーで約1分間混合して、塗膜形成粒子(A)を得た。
[脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の調製]
[脂肪酸銀の調製]
ステアリン酸ナトリウム76.6質量部を、90℃のイオン交換水3,000質量部に溶解させた水溶液1を調製した。また、硝酸銀40.3質量部をイオン交換水600質量部に溶解させた水溶液2を調製した。
次に、水溶液1をディスパーで撹拌しながら、水溶液2を添加し、2種類の水溶液を混合した。その後、15分撹拌し、吸引ろ過により固液分離を行いながら、分離された固体相を、イオン交換水を用いて十分に洗浄を行った。更に、得られた固体層を熱風乾燥機(タバイエスペック社製)にて乾燥し、ステアリン酸銀を得た。
得られたステアリン酸銀について、分光光度計(UV―3100PC、島津製作所社製)を用い、吸光度測定した。図1に示すように、実施例1で用いたステアリン酸銀は、波長420nm付近にプラズモン吸収が観測された。
よって、平均粒子径(D50)が1nm以上100nm以下の脂肪酸金属塩が得られたものと判断した。
硬化性官能基を有する基体樹脂成分(B1)における硬化性官能基を有する樹脂として(a1−1)(ポリエステル樹脂1:ファインディックM8020、DIC社製、OH末端基を有する)60質量部、基体樹脂反応成分(B2)として(A2−1)(ε−カプロラクタムブロック化イソシアネート硬化剤:VESTAGON B−1530、エボニックインダストリー社製)10質量部、ベンゾインB(ワキ防止剤)0.8質量部、アクリルシリコン系表面調整剤(KF−54、信越化学工業社製)0.3質量部、ジブチル錫ジラウレート(KS−1260、堺化学工業社製)0.3質量部、二酸化チタン(TIPAQUE CR90、石原産業社製)4.6質量部、カーボンブラック(MA−100、三菱化学社製)0.7質量部、沈降性硫酸バリウム100(堺化学社製)21.2質量部を、スーパーミキサー(日本スピンドル社製)を用いて約3分間混合し、更に、コニーダー(ブス社製)を用いて約100℃で溶融混練した。得られた混練物1を冷却して粗粉砕し、更に、クリプトロン(川崎重工業社製)を用いて微粉砕した。
得られた粉砕物を、ターボクラシファイア(日清エンジニアリング社製)を用いて分級して、微小粒子及び粗大粒子を除去し、シリカ粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル社製)0.3質量部を添加した後、上記スーパーミキサーで約1分間混合して、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の前駆物質である、樹脂粒子前駆体を得た。
上記樹脂前駆体に対して、ステアリン酸銀(Ag1)の濃度が200ppmとなるように、ステアリン酸銀(Ag1)と、前期樹脂前駆体とを配合し、スーパーミキサー(日本スピンドル社製、常温)で約3分間混合して、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)を得た。
[粉体塗料組成物の調製及び塗膜形成]
粉体塗料組成物における銀の含有量が10ppmとなるよう、塗膜形成粒子(A)と、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)とを混合した。塗膜形成粒子(A)と脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の混合は、ドライブレンドで行い、実施例1における粉体塗料組成物を調製した。ドライブレンドの条件は、以下のとおりである。
混合装置:ナウタミキサー(ホソカワミクロン社製)、温度:室温、混合時間:10分
粉体塗料組成物の各種測定結果と共に、成分の概要を表1に示す。
得られた粉体塗料組成物を、静電塗装法(印加電圧−80kV)を用いて、乾燥膜厚60μmとなるように、溶融亜鉛めっき鋼板(幅75mm、長さ150mm、厚さ0.8mm)に塗装した。次いで、180℃で20分間焼き付けて、塗膜を形成した。
[粉体塗料組成物における各種特性について]
(塗膜形成粒子(A)の帯電量の測定)
塗膜形成粒子(A)を静電塗装し、塗装後から30秒後における帯電量QA30(μC/g)の測定を、電荷量測定装置EA02(ユーテック社製)を用いて行った。なお、帯電量の測定時における温度は23℃、湿度は50%であった。
具体的には、実施例1で調製した塗膜形成粒子(A)を、静電塗装法(印加電圧−80kV)を用いて、乾燥膜厚60μmとなるように、溶融亜鉛めっき鋼板(幅75mm、長さ150mm、厚さ0.8mm)に塗装した。次に、塗装後30秒経過した後、前記鋼板上の200mmの範囲から塗料を装置に吸入し、そのときの帯電量と吸入した塗料の質量から、帯電量QA30を算出した。帯電量QA30は、−1.46(μC/g)であった。
得られた結果を、表1に示す。
得られた塗膜形成粒子(A)の粒子径(D10、D50及びD90)を、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラックMT3300EX II、マイクロトラック・ベル社製)を用いて測定した。D10は、10.01μm、D50は30.30μm、D90は、55.42μmであった。
得られた結果を、表1に示す。
(脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の帯電量の測定)
脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の帯電量を、前記塗膜形成粒子(A)の帯電量の測定と同様の方法で測定した。帯電量QB30は、−2.19(μC/g)であった。得られた結果を、表1に示す。
なお、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の塗装後から120秒経過した時点における帯電量QB120(μC/g)を測定した。帯電量QB120は、−2.10(μC/g)であった。
(脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の粒子径の測定)
脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の粒子径を、前記塗膜形成粒子(A)の粒子径の測定と同様の方法で測定した。D10Bは、9.76μm、D50Bは29.52μm、D90Bは、55.19μmであった。得られた結果を、表1に示す。
(実施例2〜16)
表1〜表3に記載の条件及び成分を用いたこと以外は、実施例1と同様に、塗膜形成粒子(A)、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)及び粉体塗料組成物を調製した。実施例で用いた成分の詳細は、以下のとおりである。
[塗膜形成粒子(A)]
(基体樹脂成分(A1))
(a1−1):ファインディックM8020(DIC社製)、水酸基を有するポリエステル樹脂;水酸基価:30mgKOH/g、軟化点:110℃
(a1−2):M8023(DIC社製)、水酸基を有するポリエステル樹脂;水酸基価:40mgKOH/g、軟化点:106℃
(a1−3):GV−126(日本ユピカ社製)、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂;酸価:33mgKOH/g、軟化点:120℃
(a1−4):A278(DIC社製)、エポキシ基を有するアクリル樹脂;エポキシ当量:480g/eq
(a1−5):NT−114(日鉄ケミカル&マテリアル社製)、エポキシ樹脂;エポキシ当量:440g/eq
(基体樹脂反応成分(A2))
(A2−1):VESTAGON B1530(エボニックインダストリー社製)、ブロックイソシアネート;NCO等量:280g/eq
(A2−2):Primid XL−552(エムス社製)、β−ヒドロキシアルキルアミド
(A2−3):GV−230 ポリエステル樹脂(日本ユピカ社製)、酸価:48mgKOH/g
(A2−4):ドデカンジカルボン酸(DDDA)
(A2−5):ジシアンジアミド
(脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B))
基体樹脂成分(B1)に関し、上記基体樹脂成分(A1)と同じ標記の成分は、基体樹脂成分(A1)の(a1−1)〜(a1−5)にそれぞれ対応する。
基体樹脂反応成分(B2)に関し、上記基体樹脂成分(A2)と同じ標記の成分は、基体樹脂成分(A2)の(A2−1)〜(A2−5)にそれぞれ対応する。
実施例2〜16で調製した粉体塗料組成物を用い、表1〜表3に記載の条件を採用したこと以外は、実施例1と同様にして塗膜を形成した。
ここで、実施例11は、塗膜形成粒子(A)と、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)とを、コニーダー(ブス社製、110℃)を用い、1分間溶融混練した。
次いで、溶融混練で得られた溶融混練物1を、冷却ロール、冷却コンベヤーを用いて冷却し、固化させ、混合物を調製した。
更に、固化した混合物を、粉砕装置としてターボクラシファイア(日清エンジニアリング社製)を用いて物理的粉砕し、粒度分布を調整した。
その後、実施例1と同様の条件で、塗装を行い、塗膜を形成した。
実施例2〜16についても、実施例1と同様に、粒子径、帯電量を測定した。結果を表1〜表3に示す。
(比較例1〜2)
比較例1は、本開示に係る脂肪酸金属塩を含まないこと以外は、実施例1と同様にして、粉体塗料組成物を調製した。なお、比較例1に示される帯電量等の値は、本開示に係る脂肪酸金属塩を含まない試料について測定した値である。
比較例2は、金属粒子として、硝酸銀(平均粒子径:100μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粉体塗料組成物を調製した。なお、硝酸銀の平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラックMT3300EX II、マイクロトラック・ベル社製)を用いて、測定した。
[塗膜の評価]
実施例及び比較例で得られた塗膜について、以下の評価を行った。
(塗膜外観の評価)
実施例及び比較例によって得られた塗膜の外観を目視観察し、下記基準に従って評価を行った。△以上を合格とした。
○:ブツ凹み等の外観異常がない
△:ブツ凹み等が少なく塗膜として成立する
×:ブツ凹み等が多く塗膜として成立しない
(抗菌活性の評価)
抗菌活性の評価は、JIS Z 2801:2000抗菌加工製品―抗菌性試験方法に準じた。菌種は大腸菌(escherichia coli)及び黄色ブドウ球菌(S.aureus)を用いた。実施例において、本開示に係る脂肪酸金属塩を含まない塗膜の培養後菌数から、本開示に係る脂肪酸金属塩を含む塗膜の培養後菌数を除した数の対数値を抗菌活性値とした。一方、比較例においては、本開示に係る脂肪酸金属塩を含まない塗膜の培養後菌数から、各比較例で得られた塗膜の培養後菌数を除した数の対数値を抗菌活性値とした。
抗菌活性値[R]は、数値が高いほど、抗菌性を有し、更に、より長期間の抗菌性の持続性を有する。
抗菌活性値2.0以上の場合を「○」と評価し、抗菌性に優れる。一方、抗菌活性値2.0未満の場合を×と判定した。結果を表1〜表3に示す。
Figure 0006814857
Figure 0006814857
Figure 0006814857
実施例1〜16は、本開示に係る塗膜形成粒子(A)と、脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)とを含み、脂肪酸金属塩の平均粒子径(D50)が1nm以上100nm以下である粉体塗料組成物に関する。得られた塗膜は、塗膜外観が良好であり、更に、抗菌性に優れた塗膜であった。また、優れた抗カビ性を有していた。
一方、比較例1は、本開示に係る脂肪酸金属塩を含まないため、抗菌性に乏しい塗膜が形成された。
比較例2は、金属粒子の平均粒子径(D50)が本発明の範囲外である。このため、塗膜外観は不十分であり、また、抗菌性が不十分な塗膜が形成された。
本開示の粉体塗料組成物は、抗菌性に優れた塗膜を形成できる。更に、本開示の粉体塗料組成物は、優れた塗膜外観を有する塗膜を形成できる。

Claims (12)

  1. 塗膜形成粒子(A)と、
    脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)とを含み、
    前記脂肪酸金属塩は、平均粒子径(D50)が1nm以上100nm以下であり、
    前記粉体塗料組成物における、前記脂肪酸金属塩の含有量は、金属の含有量に換算して、10ppm以上100ppm以下であり、
    前記塗膜形成粒子(A)の塗装後から30秒後に測定した、前記塗膜形成粒子(A)の帯電量Q A30 (μC/g)と、
    前記脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の塗装後から30秒後に測定した、前記脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)の帯電量Q B30 (μC/g)が、
    |Q A30 |<|Q B30 |の関係を有し、並びに
    |Q B30 |−|Q A30 |は、0.01以上1.60以下であり、
    前記塗膜形成粒子(A)は、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)及び基体樹脂反応成分(A2)を含み、
    前記硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)は、硬化性官能基を有する樹脂(a1)を少なくとも1種含み、
    前記脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)は、硬化性官能基を有する基体樹脂成分(B1)及び基体樹脂反応成分(B2)を含み、
    前記硬化性官能基を有する基体樹脂成分(B1)は、硬化性官能基を有する樹脂(b1)を少なくとも1種含み、
    前記硬化性官能基を有する樹脂(a1)と、前記硬化性官能基を有する樹脂(b1)は、同種類の樹脂を含む、粉体塗料組成物。
  2. 前記塗料形成粒子(A)の粒子径D50 は、10.00μm以上50.00μm以下であり、
    前記塗料形成粒子(A)の粒子径D90 は、30.00μm以上70.00μm以下である、請求項1に記載の粉体塗料組成物。
  3. 前記樹脂粒子(B)の粒子径D50 は、10.00μm以上50.00μm以下であり、
    前記樹脂粒子(B)の粒子径D90 は、30.00μm以上70.00μm以下である、請求項1または2に記載の粉体塗料組成物。
  4. 記硬化性官能基を有する樹脂(a1)は、硬化性官能基を有するポリエステル樹脂、硬化性官能基を有するエポキシ樹脂及び硬化性官能基を有するアクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含み、
    前記基体樹脂反応成分(A2)は、イソシアネート硬化剤、アミン硬化剤、イミダゾリン硬化剤、酸硬化剤、エポキシ硬化剤及びアミノ樹脂硬化剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項3に記載の粉体塗料組成物。
  5. 記硬化性官能基を有する樹脂(b1)は、硬化性官能基を有するポリエステル樹脂、硬化性官能基を有するエポキシ樹脂及び硬化性官能基を有するアクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含み、
    前記基体樹脂反応成分(B2)は、イソシアネート硬化剤、アミン硬化剤、イミダゾリン硬化剤、酸硬化剤、エポキシ硬化剤及びアミノ樹脂硬化剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物。
  6. 前記硬化性官能基を有する基体樹脂成分(A1)における、前記硬化性官能基を有する樹脂(a1)と、
    前記硬化性官能基を有する基体樹脂成分(B1)における、前記硬化性官能基を有する樹脂(b1)は、
    硬化性官能基を有するポリエステル樹脂を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物。
  7. 前記脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)における、前記脂肪酸金属塩における金属が、少なくとも銀又は銀の錯体を含む、請求項1からのいずれか1項に記載の粉体塗料組成物。
  8. 脂肪酸金属塩は、脂肪酸修飾された金属塩であり、前記脂肪酸は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1からのいずれか1項に記載の粉体塗料組成物。
  9. 前記粉体塗料組成物は、前記塗膜形成粒子(A)と、前記脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)とのドライブレンド物である、請求項1からのいずれか1項に記載の粉体塗料組成物。
  10. 前記粉体塗料組成物は、抗菌性を有する粉体塗料組成物である、請求項1からのいずれか1項に記載の粉体塗料組成物。
  11. 請求項1から10のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物の製造方法であって、
    前記塗膜形成粒子(A)と、前記脂肪酸金属塩を含む樹脂粒子(B)とを、10℃以上40℃以下の温度でドライブレンドすることを含む、粉体塗料組成物の製造方法。
  12. 請求項1から11のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物を被塗物に塗装し、120℃以上200℃以下の温度で加熱して硬化させる、塗膜形成工程、
    を含む、塗膜の形成方法。
JP2019167551A 2019-09-13 2019-09-13 粉体塗料組成物、その製造方法及びそれを用いた塗膜形成方法 Active JP6814857B1 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019167551A JP6814857B1 (ja) 2019-09-13 2019-09-13 粉体塗料組成物、その製造方法及びそれを用いた塗膜形成方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019167551A JP6814857B1 (ja) 2019-09-13 2019-09-13 粉体塗料組成物、その製造方法及びそれを用いた塗膜形成方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP6814857B1 true JP6814857B1 (ja) 2021-01-20
JP2021042345A JP2021042345A (ja) 2021-03-18

Family

ID=74164498

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019167551A Active JP6814857B1 (ja) 2019-09-13 2019-09-13 粉体塗料組成物、その製造方法及びそれを用いた塗膜形成方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6814857B1 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2024122293A1 (ja) * 2022-12-08 2024-06-13 Dic株式会社 紙基材用又はプラスチック基材用コーティング剤、並びに該コーティング剤のコーティング層を有する紙基材、プラスチック基材、容器及び包装材

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100606021B1 (ko) * 2004-06-21 2006-07-31 삼성전자주식회사 나노 실버 입자를 함유한 항균 도료 및 그 항균 도료의코팅 방법
JP2008308645A (ja) * 2007-06-18 2008-12-25 Sumitomo Electric Ind Ltd 抗菌性塗料とそれを用いて形成される抗菌性物品、抗菌性フィルムおよび抗菌性テープ
US9328015B2 (en) * 2010-03-19 2016-05-03 Owens-Brockway Glass Container Inc. Curing coatings on glass containers
US9795141B2 (en) * 2013-01-14 2017-10-24 Dmr International, Inc. Antimicrobial polymer systems using multifunctional organometallic additives for polyurethane hosts
US10216111B2 (en) * 2015-05-07 2019-02-26 Xerox Corporation Antimicrobial sulfonated polyester resin
JP6745311B2 (ja) * 2018-09-25 2020-08-26 独立行政法人国立高等専門学校機構 バイオフィルム形成能を抑えた防汚コンポジット皮膜

Also Published As

Publication number Publication date
JP2021042345A (ja) 2021-03-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5010806B2 (ja) 粉体塗料組成物及びアルミホイールの塗装方法
JP5231377B2 (ja) 鉄系基材を粉体塗膜で被覆する方法
JP6567783B1 (ja) 粉体塗料組成物及び塗膜形成方法
CN104981519A (zh) 超低固化粉末涂料
JP6814857B1 (ja) 粉体塗料組成物、その製造方法及びそれを用いた塗膜形成方法
RU2621806C2 (ru) Способ нанесения порошкового покрытия
WO2004083320A1 (ja) 艶消し粉体塗料組成物
JP6644597B2 (ja) 粉体塗料組成物
JP2018002812A (ja) 粉体耐火塗料組成物の製造方法および粉体耐火塗料組成物
JP4027403B1 (ja) アルミニウム合金ホイールの塗装方法及びアルミニウム合金ホイール
JP4598230B2 (ja) 粉体塗料組成物
JP2017088874A (ja) 粉体塗料組成物
EP1137724B1 (de) Verwendung von polyethylenwachsen
JP2008081670A (ja) 粉体塗料組成物
JP2003176450A (ja) 熱硬化型艶消し粉体塗料
JP2001247814A (ja) 熱硬化性艶消し粉体塗料組成物
JP7038250B1 (ja) 艶調整粉体塗料組成物、艶調整硬化塗膜を有する塗装物品及び艶調整硬化塗膜の形成方法
JP4197164B2 (ja) 熱硬化型粉体塗料、塗装鉄系資材及び塗装鉄系資材の製造方法
JP2002194297A (ja) プレコート材用意匠性粉体塗料組成物、意匠性塗膜の形成方法および意匠性を有する塗装プレコート材
JP2024057339A (ja) 粉体塗料組成物の製造方法、塗膜形成方法及び調色方法
JP2000345076A (ja) 熱硬化性艶消し粉体塗料組成物
JP2002194289A (ja) 粉体塗料組成物および粉体塗装金属材料
JP2003003122A (ja) 熱硬化型粉体塗料及び熱硬化粉体塗膜形成方法
JP2021042176A (ja) 粉体塗料用抗菌性添加剤
JP2001311045A (ja) 意匠性粉体塗料組成物、意匠性塗膜の形成方法および意匠性を有する塗装物

Legal Events

Date Code Title Description
RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20200409

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200706

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20200706

A975 Report on accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971005

Effective date: 20200818

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200825

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20201013

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20201215

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20201221

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6814857

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250