本発明を実施するための形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は例示であって、以下の実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係るエレベータ装置の概略図である。図1(a)、図1(b)には3軸直交座標系のx軸、y軸及びz軸が図示されている。主ロープ6の制振範囲Rの部分に平行にx軸が設定され、鉛直下方がx軸の正の方向である。図1(a)及び図1(b)はどちらもエレベータ装置200を図示している。
わかりやすく図示するため、かご位置計測部11と横振動計測部12及びアクチュエータ14とをそれぞれ、図1(a)と図1(b)に図示した。図1(a)には横振動計測部12及びアクチュエータ14を図示していない。また、図1(b)にはかご位置計測部11を図示していない。図1(c)にはエレベータ装置の概略図を2つ図示し、建物300、昇降路1及び機械室2の配置を図示した。
建物300と建物300の一部である昇降路1及び機械室2を除いて、図1に示す構成要素はエレベータ装置200に含まれる。また、エレベータロープの制振装置100はエレベータ装置200の一部である。図1(a)には主ロープ6に横振動が発生していない状態が模式的に図示されている。
図1(a)にはかご7が昇降する昇降路1が図示されている。昇降路1の上方に機械室2が設けられている。機械室2には巻上機3及びそらせ車5が設置されている。巻上機3は、駆動シーブ4、巻上機モータ(図示せず)及び巻上機ブレーキ(図示せず)を備える。巻上機モータは駆動シーブ4を回転させる。巻上機ブレーキは駆動シーブ4の回転を制動する。
駆動シーブ4及びそらせ車5には、懸架体である複数の主ロープ6が巻き掛けられている。主ロープ6の第一の端部e1にかご7が接続されている。主ロープ6の駆動シーブ4に接する部分と主ロープ6の駆動シーブ4に接しない部分との境界を接触点e2とする。すなわち、主ロープ6の駆動シーブ4に接する部分のうち最もかご7の側にある部分が接触点e2である。
主ロープ6の第二の端部e3は釣合おもり8に接続されている。実施の形態1に係るエレベータロープの制振装置100は、固定端となる第一の端部e1と接触点e2の間に発生する横振動を抑制する。主ロープ6の第一の端部e1と接触点e2の間の部分を制振範囲Rとする。制振範囲Rは、図1(a)のみに図示されている。
ここで、主ロープ6が複数並んで設置されているため、第一の端部e1、接触点e2、第二の端部e3、制振範囲Rは、複数の主ロープ6のx軸方向における位置又はx軸方向における範囲を表す。
図1(a)、図1(b)に示すエレベータ装置200では、昇降路1の内部において、かご7及び釣合おもり8が1:1ローピング方式で主ロープ6に吊り下げられている。巻上機3は駆動シーブ4を回転させることによってかご7及び釣合おもり8を昇降させる。実施の形態1に係るエレベータ装置は、1:1ローピング方式を例示しているが、2:1ローピング方式等の他のローピング方式のエレベータ装置にも本発明のエレベータロープの制振装置を適用可能である。
昇降路1の内部には、かご7の昇降を案内する一対のかごガイドレール(図示せず)と釣合おもり8の昇降を案内する一対の釣合おもりガイドレール(図示せず)が設置されている。かご7と釣合おもり8はコンペンロープ9によって接続されている。昇降路1の底部には釣合車10が設けられている。釣合車10にはコンペンロープ9が巻き掛けられている。
かご7のx軸方向における位置を計測するかご位置計測部11について説明する。ここで、x軸方向における位置とはx軸上の位置座標であり、例えば、かご7に設けられた基準箇所のx座標としてもよい。かご位置計測部11は、本体40、滑車41、滑車42及びワイヤロープ43で構成される。滑車41及び滑車42は昇降路1の上部と下部にそれぞれ設けられている。本体40は滑車42に設けられている。本体40を滑車42に設けることもできる。
滑車41及び滑車42には無端状(環状)のワイヤロープ43が巻き掛けられている。ワイヤロープ43はかご7の側壁に固定されている。かご7の走行に伴ってワイヤロープ43がかご7と共に動き、滑車41及び滑車42が回転する。
かご位置計測部11の本体40は、滑車42の回転量及び回転方向を計測するエンコーダ等のセンサである。かご位置計測部11は、計測したかごの位置をかご位置情報104として演算制御装置13へ出力する。なお、かご7の走行に係る各種機器(図示せず)が昇降路1の内部に設置されており、各種機器は制御盤18によって制御される。制御盤18は演算制御装置13を備える。
次に図1(b)について説明する。図1(a)において説明したエレベータ装置200の構成要素については説明を省略する。図1(b)の主ロープ6には、横振動が発生している状況が模式的に図示されている。
図1(b)には横振動を計測する横振動計測部12が図示されている。横振動計測部12は昇降路1に設置されている。横振動計測部12は建物300に設置されているとも言える。横振動計測部12はロープ横振動センサであり、非接触式の変位センサである。横振動計測部12をかご7の上部又は機械室に設けてもよい。
横振動計測部12は主ロープ6の横振動を計測する。より具体的には、主ロープ6の制振範囲Rのうちの少なくとも一点において横振動による主ロープ6の変位を計測する。主ロープ6の変位の方向は図1のyz面に平行な方向である。横振動計測部12は計測した横振動を横振動情報101として出力する。
後述する図2に示すように、アクチュエータ14は主ロープ6に強制変位109による力を加える。アクチュエータ14は直動型である。アクチュエータ14は昇降路1に設置されている。アクチュエータ14を機械室2に設置することもできる。アクチュエータ14は建物300に設置されているとも言える。
アクチュエータ14をかご7の上部に設置してもよい。
アクチュエータ14は強制変位109を発生し、主ロープ6の制振範囲Rのうちの少なくとも一点に強制変位109による力を加える。強制変位109とは、アクチュエータ14の変位である。より具体的には、駆動入力106に応じて発生するアクチュエータ14の可動部分の変位である。
実施の形態1に係るエレベータロープの制振装置100は、アクチュエータ14が昇降路1又は機械室2に設置されるため、アクチュエータ14をかごに設置する場合に比べ、アクチュエータ14の位置を自由に変更できる。そのため、エレベータロープの制振装置100は、固定端から離れた場所に強制変位による力を加えることによって、より小さい力で横振動を抑制することができる。
エレベータロープの制振装置100を動作させない場合の主ロープ6の横振動について説明する。地震、強風等によって建物300の揺れが発生すると、建物300の揺れにともない主ロープ6に横振動が発生する。発生した横振動は接触点e2から第一の端部e1に向かって主ロープ6を伝播する。接触点e2から第一の端部e1に向かって進行波として伝播する。
第一の端部e1に到達した横振動は第一の端部e1で反射され、第一の端部e1から接触点e2へ向かって伝播する。第一の端部e1から接触点e2へ向かう横振動を反射波とよぶ。第一の端部e1と接触点e2の間で進行波と反射波は重なり合いながら伝播と反射を繰り返す。以上がエレベータロープの制振装置100を動作させない場合の主ロープ6の横振動である。
図2は本発明の実施の形態1に係るエレベータロープの制振装置の要部を示すブロック図である。エレベータロープの制振装置100は、かご位置計測部11、横振動計測部12、演算制御装置13及びアクチュエータ14を備える。演算制御装置13は、横振動推定部50、横振動補償指令演算部51及びアクチュエータ駆動部52を備える。
実施の形態1に係るエレベータロープの制振装置100の動作について説明する。横振動計測部12は主ロープ6に発生した進行波による横振動を計測し、計測した横振動を横振動情報101として横振動推定部50へ出力する。
かご位置計測部11は、かご7の位置を計測し計測したかご7の位置をかご位置情報104として横振動推定部50に出力する。アクチュエータ14は強制変位109による力を主ロープ6に加える。また、アクチュエータ14は、強制変位109をアクチュエータ変位103として横振動推定部50に出力する。
横振動推定部50は、推定因子に基づき、アクチュエータ14の位置における横振動を推定する。アクチュエータ14の位置とは、主ロープ6にアクチュエータ14によって強制変位109による力が加えられる主ロープ6上の位置である。
横振動推定部50が推定横振動102の推定に用いる単数又は複数の因子を推定因子とする。エレベータロープの制振装置100においては、横振動情報101、かご位置情報104及びアクチュエータ変位103は推定因子に含まれている。アクチュエータ変位103を推定因子に含まないエレベータロープの制振装置を構成することもできる。
実施の形態1において横振動推定部50は、アクチュエータ14の位置における反射波による横振動を推定する。具体的には、主ロープ6上を伝播する横振動の伝播速度に基づき、横振動計測部12で計測された横振動がアクチュエータ14の位置に伝播するまでに要する時間を算出し、アクチュエータ14の位置における横振動を推定する。
横振動推定部50は推定した横振動を推定横振動102として横振動補償指令演算部51へ出力する。横振動補償指令演算部51は、推定横振動102と逆位相の指令値を算出し、算出した指令値を横振動補償指令値105としてアクチュエータ駆動部52へ出力する。
ここで、推定横振動102と横振動補償指令値105とが逆位相であるとは、次の状態を意味する。すなわち、推定横振動102の変位の大きさと横振動補償指令値105の変位の大きさとが等しく、かつ推定横振動102の変位の方向と横振動補償指令値105の変位の方向とが逆方向であることを意味する。
アクチュエータ駆動部52は、横振動補償指令値105に基づいて駆動入力106を算出しアクチュエータ14へ出力する。アクチュエータ14は、駆動入力106に応じて強制変位109を発生し、強制変位109による力を主ロープ6に対して加える。
アクチュエータ駆動部52は、駆動入力106を算出しアクチュエータ14へ出力することによってアクチュエータ14を駆動し、横振動補償指令値105に強制変位109を追従させる。すなわち、アクチュエータ駆動部52は、推定横振動102と横振動補償指令値105とが逆位相となるようにアクチュエータ14を駆動する。
強制変位109による力によって、主ロープ6の反射波の振幅が低減され、進行波と反射波の重ね合わせによって生じる定在波の発生が抑制される。すなわち、エレベータロープの制振装置100によって横振動の共振現象の発生が抑制される。演算制御装置13は、マイクロコンピュータで構成することができる。すなわち、横振動推定部50、横振動補償指令演算部51及びアクチュエータ駆動部52の機能は、マイクロコンピュータを用いて実現できる。
エレベータロープの制振装置100が、一連の制振動作を複数回行うことによって横振動を抑制してもよい。ここで、一連の制振動作とは、横振動計測部12による横振動の計測から、アクチュエータ14による強制変位109の発生までのエレベータロープの制振装置100の動作である。
エレベータロープの制振装置100が一連の制振動作を複数回行う場合、強制変位109による力を受けた横振動がアクチュエータ14の位置に到達する。エレベータロープの制振装置100は、推定因子の中にアクチュエータ変位103を含むため、強制変位109による力を受けた横振動を、より高精度に推定することができる。
アクチュエータ駆動部52が、推定横振動102から直接、駆動入力106を算出するようにエレベータロープの制振装置を構成すれば、横振動補償指令演算部51を含まないエレベータロープの制振装置を構成することもできる。
強制変位109による力がyz面に平行な方向の成分を含む場合、本発明のエレベータロープの制振装置は効果を奏する。また、強制変位109による力の方向とx軸との間の角度が90度に近くなるほど、より小さな力で横振動を抑制できる。強制変位109による力の方向は、主ロープ6に垂直とするのが好適である。
続いて、演算制御装置13の構成要素である横振動推定部50について説明する。図3は、本発明の実施の形態1に係るエレベータロープの制振装置の、横振動推定部を含む要部を示すブロック図である。横振動推定部50は、ロープ長算出部501、主ロープの機械特性502、遅延時間算出部503及び遅延処理部504を備える。
エレベータロープの制振装置100の構成においては、横振動推定部50がロープ長算出部501を備える。しかしながら、ロープ長算出部501は、エレベータロープの制振装置に含まれていればよく、かご位置計測部11がロープ長算出部501を備える構成としてもよい。
ロープ長算出部501は、かご位置計測部11からかご位置情報104を取得する。ロープ長算出部501はかご位置情報104からロープ長を算出し、算出したロープ長をロープ長情報107として遅延時間算出部503に出力する。ここで、実施の形態1におけるロープ長とは第一の端部e1から接触点e2までの主ロープ6の長さである。
アクチュエータ14及び横振動計測部12をかご7の上部に設けた場合、ロープ長算出部501が、かご位置計測部11からかご位置情報104を取得しない構成とすることもできる。その場合、ロープ長算出部501にはアクチュエータ14から横振動計測部12までの高さ方向の距離が予め記憶される。
遅延時間算出部503は、横振動計測部12で計測された横振動が横振動計測部12の位置からアクチュエータ14の位置に到達するまでの所要時間を算出する。遅延時間算出部503は、横振動計測部12の位置、アクチュエータ14の位置、ロープ長情報107及び主ロープの機械特性502に基づいてこの所要時間の算出を行う。
遅延時間算出部503は、算出した所要時間である遅延時間を遅延時間情報108として遅延処理部504に出力する。主ロープの機械特性502は、主ロープ6の単位長さあたりの質量(線密度)を含む。遅延時間算出部503は、主ロープの機械特性502を用いて横振動の伝播速度を算出する。
遅延処理部504は、横振動情報101、アクチュエータ変位103及び遅延時間情報108に基づき、アクチュエータ14の位置の横振動を推定する。遅延処理部504は、横振動情報101の位相を遅延時間情報108に相当する分、遅延させることにより横振動を推定してもよい。遅延処理部504は、推定した横振動を推定横振動102として横振動補償指令演算部51に出力する。
アクチュエータ駆動部52の構造及び動作について説明する。図4は本発明の実施の形態1に係るエレベータロープの制振装置のアクチュエータ駆動部を含む要部を示すブロック図である。図4(a)、図4(b)及び図4(c)のそれぞれは、アクチュエータ駆動部52の構成例である。
アクチュエータ駆動部52は、横振動補償指令値105を取得し、横振動補償指令値105に基づいて駆動入力106を算出し、駆動入力106をアクチュエータ14へ出力する。アクチュエータ駆動部52は、アクチュエータ14の強制変位109を横振動補償指令値105に追従させる。
駆動入力106は、横振動補償指令値105とアクチュエータ変位103との差異に応じて、横振動補償指令値105と強制変位109との差異を小さくするように、アクチュエータ14を駆動する信号である。
図4(a)、図4(b)及び図4(c)に示すアクチュエータ駆動部52は、アクチュエータ位置制御系521を備える。アクチュエータ位置制御系521はアクチュエータ14の変位である強制変位109を、目標値である横振動補償指令値105に近づけるように制御する。
図4(a)に示すアクチュエータ駆動部52はフィードフォワード制御系を構成している。アクチュエータ位置制御系521は横振動補償指令値105に基づき駆動入力106を算出しアクチュエータを駆動する。
フィードフォワード制御系を構成するアクチュエータ駆動部52の場合、アクチュエータ駆動部52は、横振動補償指令値105に対して所定の係数を乗算した値を駆動入力106として算出する。この係数は、主ロープの張力、ロープ長等のエレベータロープの制振装置100のパラメータに応じて算出することができる。
図4(b)に示すアクチュエータ駆動部52はフィードバック制御系を構成している。アクチュエータ位置制御系521は、横振動補償指令値105を取得するとともに強制変位109をアクチュエータ変位103として取得し、横振動補償指令値105及びアクチュエータ変位103に基づき駆動入力106を算出する。
フィードバック制御系を構成するアクチュエータ駆動部52の場合、アクチュエータ駆動部52はアクチュエータ変位103を取得することによって強制変位109と横振動補償指令値105の差異を得る。そして、強制変位109と横振動補償指令値105の差異を減らすように駆動入力106を決定する。
図4(c)に示すアクチュエータ駆動部52は図4(b)の構成に加えて、外乱オブザーバ522を備える。アクチュエータ駆動部52は反力推定値111を用いて駆動入力106を算出する。外乱オブザーバ522は、駆動入力106及びアクチュエータ変位103に基づいて主ロープ6からの反力を推定し反力推定値111として出力する。
アクチュエータ位置制御系521からの出力を反力推定値111によって補正し、駆動入力106を算出する。図4(c)に示すアクチュエータ駆動部52は、外乱オブザーバ522を併用する構成であるため、主ロープ6からの反力を補償し、アクチュエータ位置制御系521からの出力を反力推定値111に応じて補正できる。
そのため、図4(c)に示すアクチュエータ駆動部52は、より高精度に強制変位109を横振動補償指令値105に追従させることができる。
以下のようにアクチュエータ駆動部52を構成することにより、横振動を抑制する効果を奏するだけでなく、横振動補償指令演算部51が省かれたエレベータロープの制振装置を構成することができる。
すなわち、駆動入力106をアクチュエータ駆動部52が推定横振動102から直接算出する。そして、駆動入力106をアクチュエータ14に出力し、強制変位109の方向と推定横振動102の方向とが逆方向となり、強制変位109の大きさが推定横振動102の大きさより小さくなるように、アクチュエータ駆動部52がアクチュエータ14を駆動する。
さらに、以下のようにアクチュエータ駆動部52を構成すれば、横振動補償指令演算部51が省かれ、かつ、さらに高精度に横振動の振幅を低減することができるエレベータロープの制振装置を構成することができる。
すなわち、駆動入力106をアクチュエータ駆動部52が推定横振動102から直接算出しアクチュエータ14に出力する。そして、強制変位109と推定横振動102とが逆位相となるように、アクチュエータ駆動部52がアクチュエータ14を駆動する。
駆動入力106としてアクチュエータ14へ出力される信号は、強制変位109の値、強制変位109の速度、強制変位109の加速度又は強制変位109による力としてもよい。アクチュエータ14がモータを含む場合、モータへ供給する電流の電流値を駆動入力106としてもよい。また、ここに挙げた複数の信号の組み合わせを駆動入力106としてもよい。
図5は本発明の実施の形態1に係るエレベータロープの制振装置の横振動補償指令演算部を含む要部を示すブロック図である。横振動補償指令演算部51はアクチュエータ位置制御系の逆システム523を備える。アクチュエータ位置制御系の逆システム523はアクチュエータ位置制御系521の逆システムの伝達関数で構成される。
対象となるシステムの逆システムとは、対象となるシステムの伝達特性と逆作用の機能を持つシステムであり、対象となるシステムの出力を入力したときに、対象となるシステムの入力が出力されるシステムである。横振動補償指令演算部51は推定横振動102に基づいて横振動補償指令値105を算出する。より具体的には、横振動補償指令演算部51はアクチュエータ位置制御系の逆システム523の伝達関数に推定横振動102を乗じた値を算出する。
ここで、エレベータロープの制振装置100が横振動を抑制する効果を奏するには、横振動補償指令演算部51が以下のように横振動補償指令値105を算出すればよい。すなわち、横振動補償指令値105の変位の大きさが推定横振動102の変位の大きさより小さく、かつ、横振動補償指令値105の変位の方向が推定横振動102の変位の方向と逆方向となるようにすればよい。
さらに、横振動補償指令値105が推定横振動102に対して逆位相となるように横振動補償指令値105を算出する横振動補償指令演算部51を構成すれば、エレベータロープの制振装置はさらに精度良く横振動の振幅を低減することができる。
アクチュエータ14の位置における横振動と、強制変位109との関係が逆位相に近づくほど、エレベータロープの制振装置100の横振動の振幅を低減する精度は高くなる。エレベータロープの制振装置100が横振動の振幅を低減する精度が高いほど、短い時間の間に横振動を抑制することができる。
図6は本発明の実施の形態1に係るエレベータロープの制振装置の処理の概略を示すフローチャートである。演算制御装置13が、ステップS71からステップS74までの処理を一定時間間隔で繰り返し行うように演算制御装置13を構成してもよい。
ステップS71において横振動計測部12が主ロープ6の横振動を計測する。ステップS72において演算制御装置13は横振動推定プログラムを実行し、アクチュエータ14の位置に到達する反射波による主ロープ6の横振動を推定し推定横振動102を出力する。
ステップS73において横振動補償指令演算部51は横振動補償指令値演算プログラムを実行し、推定横振動102に基づき横振動補償指令値105を算出する。
ステップS74においてアクチュエータ駆動部52はアクチュエータ位置制御プログラムを実行し、横振動補償指令値105に基づき駆動入力106を算出し、アクチュエータ14へ出力する。主ロープ6に強制変位109による力が加えられ、主ロープ6の横振動が抑制される。
図7は本発明の実施の形態1に係るエレベータロープの制振装置100の処理を示すフローチャートである。図7には、図6のステップS71からステップS74が、より詳細に図示されている。
ステップS72の横振動推定プログラムの処理は図7のステップS81からステップS85に図示されている。ステップS71で主ロープ6の横振動を計測すると、横振動推定部50はステップS81において、かご位置情報104を取得する。ステップS82においてロープ長算出部501は、かご位置情報104を用いてロープ長を算出しロープ長情報107として出力する。
ステップS83において遅延時間算出部503は、主ロープの機械特性502に基づき横振動伝播速度を算出する。ステップS84において遅延時間算出部503は、ロープ長情報107及び横振動伝播速度に基づき、横振動計測部12の位置からアクチュエータ14の位置に横振動が到達するのに要する遅延時間を算出し、算出した遅延時間を遅延時間情報108として出力する。
ステップS85において遅延処理部504は、算出した遅延時間情報108、横振動情報101及びアクチュエータ変位103を含む推定因子に基づき、アクチュエータ14の位置の反射波による横振動を推定横振動102として推定する。
ステップS73の横振動補償指令値演算プログラムの処理は、図7のステップS86及びステップS87に図示されている。ステップS72の横振動推定プログラムが実行されると、ステップS86において遅延処理部504は、推定横振動102をアクチュエータ位置制御系の逆システム523へ入力する。すなわち、遅延処理部504は、推定横振動102をアクチュエータ位置制御系の逆システム523の伝達関数へ入力する。
ステップS87において横振動補償指令演算部51は、アクチュエータ位置制御系の逆システム523の出力信号を横振動補償指令値105として、アクチュエータ駆動部52へ出力する。以上がステップS73の横振動補償指令値演算プログラムの処理である。
ステップS74のアクチュエータ位置制御プログラムの処理は、図7のステップS88及びステップS89に図示されている。ステップS73において横振動補償指令値演算プログラムを実行すると、ステップS88において、アクチュエータ駆動部52は横振動補償指令値105に基づき駆動入力106を算出する。
ステップS89において、アクチュエータ駆動部52は、駆動入力106をアクチュエータ14へ出力し、アクチュエータ14を駆動する。アクチュエータ14によって主ロープ6に対して強制変位109による力が加えられる。伝達関数を用いないエレベータロープの制振装置100を構成することもできる。
伝達関数を用いて計算を行うエレベータロープの制振装置100を構成することもできる。伝達関数を用いたエレベータロープの制振装置100の動作について説明する。以下の説明において、exp(p)は指数関数であり自然対数eのp乗を表す。
第一の端部e1から接触点e2までの主ロープ6の長さをLとする。接触点e2を原点とし、接触点e2から第一の端部e1の側にxの距離離れた位置における時刻tの、主ロープ6の横振動をv(x、t)とするとき、v(x、t)は(1)式の波動方程式を満たす。
ここで、cは横振動の伝播速度である。横振動伝播速度cは(2)式を用いて算出できる。ロープ張力Tは主ロープ6の張力である。ρは主ロープ6の単位長さ当たりの質量である。アクチュエータ14は接触点e2(x=0)に設置されているとする。
主ロープ6の横振動であるv(x、t)は(3)式及び(4)式を満たす。(3)式及び(4)式は境界条件である。(3)式は接触点e2(x=0の位置)において、主ロープ6に変位外乱Vextと強制変位109であるVinによる力が加えられることを表す。(4)式は第一の端部e1(x=Lの位置)が固定端であることを表す。
ここで、変位外乱Vextは、接触点e2における建物300の揺れの変位である。変位外乱Vextに起因して、接触点e2において主ロープ6の横振動が発生する。Vinは強制変位109である。
(5)式及び(6)式は、主ロープ6の横振動及び横振動の時間変化の初期条件がいずれも0であることを表す。
(3)式から(6)式を満たす(1)式の解は(7)式で表すことができる。(7)式は伝達関数である。
(7)式について説明する。sはラプラス演算子である。exp(−Tds)の形の伝達関数はむだ時間要素を表す。このexp(−Tds)の形の伝達関数は入力信号に対して出力信号を時間Tdだけ遅延させる効果があり、横振動の伝播を表す。むだ時間の伝達関数は無限次元であり広い周波数範囲の情報を含む。
そのため、高次の共振周波数の横振動も含めて、主ロープ6に発生する横振動をモデル化することができる。ここで(7)式右辺の分数で示された部分の、分子の第一項と分子の第二項について説明する。
分子の第一項のexp(−xs/c)は位置xに到達する主ロープ6の接触点e2からの進行波に対応する。すなわち、変位外乱Vextによってx=0で発生した横振動と強制変位109であるVinによってx=0で発生した横振動がx/cの時間だけ遅延して位置xに到達することを表す。
分子の第二項の−exp(−(2L−x)s/c)は、進行波が第一の端部e1で反射し、反射波として位置xに到達することを表す。すなわち、変位外乱Vextと強制変位109であるVinによって発生した横振動が(2L−x)/cの時間だけ遅延して位置xに到達することを表す。
次に、(7)式右辺の分母はむだ時間要素であるexp(−2Ls/c)を有している。むだ時間要素exp(−2Ls/c)は、接触点e2から第一の端部e1に進行波が伝播し、第一の端部e1で反射され、第一の端部e1から接触点e2へ戻る反射波に対応している。すなわち、進行波と反射波の重ね合わせによって発生する横振動が(7)式に表現されている。
変位外乱Vext=0として(7)式を変形すると(8)式となる。
ここで、(8)式の右辺第2項は反射波を表し、V
rflは(9)式で表される。
エレベータロープの制振装置100は、横振動情報101に基づいて伝達関数V(x、s)を決定し、決定した伝達関数V(x、s)を用いてアクチュエータ14の位置における横振動を推定することができる。さらに、エレベータロープの制振装置100は、Vinを(10)式とすることにより、推定横振動102に対して逆位相となる強制変位109を発生させることができる。
(10)式から(7)式の伝達関数は(11)式となる。
(11)式は、変位外乱Vextを入力信号とし主ロープ6の横振動を出力信号とする伝達関数V(x,s)である。(11)式では、(7)式に含まれる反射波がエレベータロープの制振装置100によって除かれ、(7)式に含まれる反射波に相当する伝達関数の分母のむだ時間要素が除かれている。
図8は本発明の実施の形態1に係るエレベータロープの制振装置100の周波数応答の計算値を示す図である。図8の縦軸は横振動の振幅であり、dB(デシベル)を単位として図示されている。図8の横軸は横振動の周波数であり、Hz(ヘルツ)を単位として、対数軸を用いて図示されている。横軸に、周波数の目安として、周波数F1の位置と周波数10×F1の位置が図示されている。周波数F1は定数である。
図8には、(7)式の伝達関数の周波数応答及び(11)式の伝達関数の周波数応答が図示されている。(7)式の伝達関数による周波数応答は、非制振時の周波数応答であり破線で示されている。(11)式の伝達関数による周波数応答は、制振時の周波数応答であり実線で示されている。図8はエレベータ装置の典型的な数値を用いた計算例である。
図8において、非制振時の周波数応答に見られる複数の共振ピークが、制振時の周波数応答においてすべて消滅している。制振時の周波数応答では、エレベータロープの制振装置100によって反射波の振幅が低減され、定在波の発生が抑制されている。制振時の周波数応答では、すべての共振周波数に対して無共振状態が得られている。
式(1)から式(11)を用いて、伝達関数を用いた横振動の推定及び伝達関数を用いた横振動補償指令値105の算出について説明した。
実施の形態1に係るエレベータロープの制振装置において、伝達関数V(x、s)を用いて横振動の推定を行う横振動推定部50を構成してもよく、伝達関数V(x、s)を用いて横振動補償指令値105を算出する横振動補償指令演算部51を構成してもよい。
近似された伝達関数を用いてエレベータロープの制振装置100を構成することもできる。一例として、式(1)から式(11)に説明した伝達関数に含まれるむだ時間の伝達関数についてパデ近似による近似を行ってもよい。
伝達関数を用いるエレベータロープの制振装置100は、入力信号と出力信号を関係づける伝達関数V(x、s)を算出する。ここで、入力信号は変位外乱Vext及び強制変位となるVinである。出力信号はエレベータロープ上の横振動である。ここで、出力信号は少なくともアクチュエータ位置における横振動を含む。例えば、制振範囲R内の各位置における横振動を出力信号としてもよい。
算出される伝達関数は、主ロープ6に平行に設定された座標軸上の位置x及び時刻tを変数とする波動方程式の解である。また、この伝達関数は、ラプラス演算子sを含み、横振動伝播速度c、アクチュエータ14の位置、横振動の発生箇所の位置、横振動計測部の位置及び横振動情報101を用いて算出することができる。
また、伝達関数V(x、s)を用いた計算によって推定横振動102から駆動入力106を算出するようにアクチュエータ駆動部52を構成し、横振動補償指令演算部51を含まない伝達関数を用いるエレベータロープの制振装置100を構成することもできる。
エレベータ装置200においてかご7が走行すると、かご7の位置に依存してロープ長Lが変化し、周波数領域における共振ピークの位置が変化する。むだ時間を含む伝達関数を使用するエレベータロープの制振装置100は、かご7の位置の変化に応じて、高精度に横振動を抑制し、かごの走行中でも早く正確に共振ピークの大きさを低減できる。
また、むだ時間を含む伝達関数を使用するエレベータロープの制振装置100は、より広い周波数範囲において、早く、正確に横振動の振幅を低減できる。すなわち、より高次の振動モードの横振動の共振を抑制することができる。
計算式の説明では、アクチュエータをx=0の位置に設置した計算例を示した。アクチュエータ14がx=0以外の位置に設置された場合においても、アクチュエータ14の位置座標を含む伝達関数を用いることにより、伝達関数を使用するエレベータロープの制振装置100を構成することができる。
実施の形態1に係るローラ式ロープ把持部について説明する。図9は本発明の実施の形態1に係るローラ式ロープ把持部及びアクチュエータの構成を示す図である。ローラ式ロープ把持部19を介して強制変位109による力が主ロープ6に加わる。図9(a)はローラ式ロープ把持部19の側面図であり、図9(b)はローラ式ロープ把持部19の斜視図である。
ローラ式ロープ把持部19は枠部60、第一のローラ61及び第二のローラ62を備える。矩形の枠部60は、3本のワイヤで構成される主ロープ6の周囲を囲むように設けられている。第一のローラ61及び第二のローラ62が主ロープ6の両側に設けられている。第一のローラ61及び第二のローラ62はそれぞれ、軸部s1及び軸部s2を回転軸として、それぞれ矢印d1及び矢印d2のように回転することができる。
枠部60は第一のローラ61の軸部s1及び第二のローラ62の軸部s2を保持する構造を有する。図9の主ロープ6は、ローラ式ロープ把持部19の周辺の部分のみが図示されている。第一のローラ61と第二のローラ62には、主ロープ6の形状に合わせた溝が設けてある。
枠部60はアクチュエータ14の可動部分に固定されている。アクチュエータ14の可動部分が矢印d3の方向に動き、主ロープ6に対して強制変位109による力を加える。主ロープ6に横振動が発生していない状態では、主ロープ6と第一のローラ61及び第二のローラ62との間には隙間があり、かご7が走行しても主ロープ6はローラ式ロープ把持部19に接触しない。
ローラ式ロープ把持部19に替えて貫通式ロープ把持部を用いることもできる。図10は本発明の実施の形態1に係る貫通式ロープ把持部及びアクチュエータの構成を示す図である。図10(a)はその斜視図である。貫通式ロープ把持部20は平板部材65で構成されている。
平板部材65はアクチュエータ14に固定されており、平板部材65の開孔部を主ロープ6が貫通している。平板部材65の開孔部と主ロープ6の間には隙間があり、主ロープ6に横振動が発生していない状態では、かご7が走行しても、主ロープ6は平板部材65に接触しない。
アクチュエータ14が駆動されると、貫通式ロープ把持部20を介して、主ロープ6に強制変位109による力が加わる。平板部材65の開孔部には、主ロープ6が接触した際に主ロープ6を傷つけないように樹脂材料によるコーティングを施してもよい。また、主ロープ6に樹脂材料による被覆を設けてもよい。
実施の形態1において、横振動計測部12として、変位センサにかえて撮像素子を用い、画像処理による計測を行ってもよい。また、横振動計測部12として、横振動の振幅が所定の距離に達したときに信号を出力するセンサを用い、離散的なセンサ出力に基づいて主ロープ6の横振動を推定してもよい。
実施の形態1に係るエレベータロープの制振装置100は、主ロープ6を横振動の抑制の対象とする。コンペンロープ9又はガバナロープを横振動の抑制の対象として、本発明のエレベータロープの制振装置を適用することもできる。
横振動計測部12、アクチュエータ14をクラウドに接続し、演算制御装置13の行う処理を、クラウド上の計算機が実行する構成としてもよい。この場合、演算制御装置13はエレベータ装置200に含まれない。また、演算制御装置13と横振動計測部12の間を通信ネットワークで接続し、通信ネットワークを通じて横振動情報101を送受信してもよい。この場合も演算制御装置13はエレベータ装置200の外部にある。
建物の揺れのみに基づいてエレベータロープの横振動を推定する場合、建物の構造及び建物の中における昇降路の配置といったエレベータ装置の外部の要因を反映する必要がある。そのため、建物ごとに新たな検討が必要となり汎用性が低い。また、このようなエレベータロープの制振装置においては、推定の精度を向上することが難しい。
一方、計測したエレベータロープの横振動に基づいて横振動の伝播及び横振動の反射の影響を計算し、エレベータロープの横振動を推定する場合、横振動を、数式を用いて高精度に推定できる。また、横振動の伝播及び横振動の反射はエレベータロープの中で起こる現象なので、推定結果が建物の構造に依存せず汎用性が高い。
そのため、実施の形態1に係るエレベータロープの制振装置はアクチュエータ14にアクチュエータの位置における横振動と逆位相の強制変位を精度良く発生させることができる。実施の形態1に係るエレベータロープの制振装置は早く確実に横振動及び横振動の共振の発生を抑制できるため、昇降路に備えられた機器の損傷を避け、乗客の乗り心地の悪化を軽減できる。
実施の形態1に係るエレベータロープの制振装置は、エレベータロープの横振動を計測し、計測した横振動を含む推定因子に基づきアクチュエータの位置における横振動を推定することにより、高精度にエレベータロープの横振動の振幅を低減することが可能なエレベータロープの制振装置を提供できる。
実施の形態1に係るエレベータロープの制振装置100は、アクチュエータ14が昇降路1又は機械室2に設置されるため、かご7にアクチュエータ14を設置した場合に比べ、サイズ及び重量の大きいアクチュエータ14を使用できる。また、アクチュエータ14がかごとともに走行しないため、かご7の走行に起因する劣化がアクチュエータ14に発生しない。
実施の形態1に係るエレベータロープの制振装置は、アクチュエータ14を、昇降路1又は機械室2に設置した。そのため、実施の形態1に係るエレベータロープの制振装置100は横振動計測部12及びアクチュエータ14の設置箇所をより自由に選択できる。固定端から離れた箇所にアクチュエータ14を設置することによって、小さな力で効率的に制振することができる。
実施の形態1に係るエレベータロープの制振装置100は、アクチュエータ14が昇降路1又は機械室2に設置されている。そのため、実施の形態1に係るエレベータロープの制振装置は、主ロープ6に制振力を加える装置をかごの上に設ける場合に比べて、既設のエレベータ装置に新たにエレベータロープの制振装置を増設する際の制約が少ない。
実施の形態1に係るエレベータロープの制振装置100は、アクチュエータ14及び横振動計測部12が昇降路1又は機械室2に設置されるため、かご7の動きに起因してアクチュエータ14及び横振動計測部12の動作精度が低下しない。
そのため、アクチュエータ14又は横振動計測部12をかご7に設置した場合に比べて、実施の形態1に係るエレベータロープの制振装置100は、高精度に横振動を計測し、高精度に強制変位109による力を主ロープ6に加えることができる。
実施の形態1に係るエレベータロープの制振装置100は、むだ時間要素を含む伝達関数を用いて横振動の推定を行う。そのため、実施の形態1に係るエレベータロープの制振装置100は、かごの位置が変化する状況下においても、広い範囲の周波数の横振動の振幅を高精度かつ短時間の間に低減できる。
また、実施の形態1に係るエレベータロープの制振装置100は、かご位置計測部11を有し、さらに伝達関数を用いることにより、ロープ長の変化に応じて各時点において横振動を推定できる。そのため、かごが走行した状態でも高精度に横振動の振幅を低減できる。
実施の形態1に係るエレベータロープの制振装置は、横振動情報101に加えて、アクチュエータ変位103を含む推定因子に基づき横振動を推定するため、強制変位109の影響を反映し横振動を推定できる。特に、強制変位109による力が主ロープ6に加わった後に横振動の推定を行う場合、実施の形態1に係るエレベータロープの制振装置100はより高精度に横振動を推定できる。
エレベータロープの制振装置100において、進行波と反射波の伝播方向を図1(a)に示した構成と逆としてもよい。すなわち、鉛直下方に伝播する反射波を推定する構成としてもよい。エレベータロープの制振装置100において横振動計測部12は進行波を計測してもよく反射波を計測してもよい。また、横振動推定部50は進行波を推定してもよく反射波を推定してもよい。
実施の形態2.
実施の形態2に係るエレベータロープの制振装置は、建物の揺れを検出する建物揺れ検出部を備える。図11は本発明の実施の形態2に係る加速度計を備えたエレベータ装置の概略図である。図11から図13についての説明において、実施の形態1の構成と構成及び動作が同じである部分については説明を省略する。
建物300aと建物300aの一部である昇降路1a及び機械室2aを除いて、図11に示す構成要素はエレベータ装置200aに含まれる。また、エレベータロープの制振装置100aはエレベータ装置200aの一部である。
図11(a)、図11(b)には3軸直交座標系のx軸、y軸及びz軸が示されている。x軸は、主ロープ6aの制振範囲Raの部分と平行に設定されている。また、x軸の正の向きは鉛直下方である。図11(a)には横振動計測部12a及びアクチュエータ14aを図示しない。また、図11(b)にはかご位置計測部11aを図示しない。
図11(a)には、かご7aが昇降する昇降路1aが図示されている。昇降路1aの上方に機械室2aがある。建物300a、昇降路1a及び機械室2aの配置は図1(c)の建物300、昇降路1及び機械室2の配置と同様である。
機械室2aには巻上機3a及びそらせ車5aが設置されている。巻上機3aは駆動シーブ4a、巻上機モータ(図示せず)及び巻上機ブレーキ(図示せず)を備える。巻上機3aは駆動シーブ4aを回転させ、巻上機モータは駆動シーブ4aの回転を制動する。
駆動シーブ4a及びそらせ車5aには、複数の主ロープ6aが巻き掛けられている。主ロープ6aの第一の端部e4にかご7aが吊り下げられている。主ロープ6aの第二の端部e6は釣合おもり8aに接続されている。
主ロープ6aの駆動シーブ4aに接している部分のうち、最もかご7aの側にある部分を接触点e5とする。すなわち、接触点e5は、主ロープ6aの駆動シーブ4aに接している部分と主ロープ6aの駆動シーブ4aに接していない部分との境界である。
エレベータロープの制振装置100aの制振範囲Raは主ロープ6aの、第一の端部e4と接触点e5の間の部分である。制振範囲Raは、図11(a)に図示され、図11(b)には図示されていない。昇降路1aの内部には、かご7aの昇降を案内する一対のかごガイドレール(図示せず)及び釣合おもり8aの昇降を案内する一対の釣合おもりガイドレール(図示せず)が設置されている。
かご7aと釣合おもり8aはコンペンロープ9aによって接続されている。昇降路1aの底部には2つの釣合車10aが設けられている。釣合車10aにはコンペンロープ9aが巻き掛けられている。
昇降路1aの内部に、x軸方向におけるかご7aの位置を計測するかご位置計測部11aが設けられている。かご位置計測部11aの動作及び構造は実施の形態1のかご位置計測部11と同様である。かご7aの走行に係る各種機器(図示せず)が昇降路1aの内部に設置されており、各種機器は制御盤18aによって制御される。
次に図11(b)について説明する。図11(a)において説明したエレベータ装置200aの構成要素については説明を省略する。機械室2aには、制御盤18a、制御盤18aが備える演算制御装置13a、アクチュエータ14a及び建物揺れ検出部22が設置されている。
横振動計測部12aは昇降路1aに設置されている。横振動計測部12aは非接触式の変位センサである。アクチュエータ14aは機械室2aに設置されており、アクチュエータ14aは直動型である。昇降路1aの内部にアクチュエータ14aを設置してもよい。横振動計測部12a及びアクチュエータ14aは制振範囲Raに設置される。
実施の形態1と同様に、演算制御装置13aは横振動推定部50a、横振動補償指令演算部51a及びアクチュエータ駆動部52aを備える。横振動補償指令演算部51a及びアクチュエータ駆動部52aの構造及び動作は、横振動補償指令演算部51及びアクチュエータ駆動部52の構造及び動作と同様である。
図12は本発明の実施の形態2に係るエレベータロープの制振装置の横振動推定部を含む要部を示すブロック図である。横振動推定部50aは、ロープ長算出部501a、主ロープの機械特性502a、遅延時間算出部503a及び遅延処理部504aを備える。
かご位置計測部11a、ロープ長算出部501a、主ロープの機械特性502a及び遅延時間算出部503aの構造及び動作は、かご位置計測部11、ロープ長算出部501、主ロープの機械特性502及び遅延時間算出部503の構造及び動作と同様である。
実施の形態2に係るエレベータロープの制振装置100aは建物揺れ検出部22を備える。建物揺れ検出部22は計測した建物300aの揺れを、建物揺れ情報112として遅延処理部504aに出力する。実施の形態1と同様に遅延時間算出部503aは遅延時間を含む遅延時間情報108aを遅延処理部504aに出力する。
遅延処理部504aは、遅延時間情報108a、アクチュエータ変位103a、横振動情報101a及び建物揺れ情報112に基づきアクチュエータ14aの位置の横振動を推定する。実施の形態2においては、建物揺れ情報112が推定因子に含まれている。遅延処理部504aは推定横振動102aを横振動補償指令演算部51aへ出力する。
遅延処理部504aは、推定横振動102aに対して遅延時間情報108aに相当する分の位相を遅延させることにより、アクチュエータ14aの位置の横振動を推定してもよい。伝達関数を用いないエレベータロープの制振装置100aを構成することもできる。
遅延処理部504aは、後述する(19)式を用いてアクチュエータ14aの位置の横振動を推定することができる。建物揺れ検出部22を備え、伝達関数を用いるエレベータロープの制振装置100aについて数式を用いて説明する。実施の形態1と同様に主ロープ6aの接触点e5から第一の端部e4までの長さをLとする。
実施の形態1と同様に、接触点e5を原点として接触点e5からかご7aの側にxの距離離れた位置における時刻tの横振動をv2(x、t)とする。v2(x、t)は(12)式の波動方程式の解である。また、v2(x、t)は実施の形態1と同様に(13)式から(16)式の境界条件を満たす。実施の形態1と同様に横振動伝播速度cは(2)式で与えられる。
(12)式の解は、実施の形態1と同様に(17)式の伝達関数で表すことができる。ここで、V
2(x、s)は伝達関数である。V
ext2及びV
in2はそれぞれ、変位外乱及び強制変位109aである。
Vrfl2は(19)式で表される。
建物揺れ検出部22が出力する建物揺れ情報112は加速度であるため、建物揺れ情報112を2回時間積分することによって算出した値をもとに変位外乱Vext2を算出することができる。Vin2、変位外乱Vext2及び横振動情報101aから、伝達関数V2(x、s)を求めることができる。
Vin2が(20)式を満たすようにアクチュエータ14aを駆動することにより、建物揺れによる変位外乱Vext2による横振動及び反射波が除去される。(20)式を満たすようにVin2を決定すると、(18)式の伝達関数は(21)式となる。
エレベータロープの制振装置100aが動作することにより、(21)式のように建物300aの揺れに対して主ロープ6aに横振動が発生しない状態が実現される。
また、アクチュエータ14aが、制振範囲Raの中の接触点e5以外の位置に設置された場合でも、アクチュエータ14aの位置座標を含む伝達関数を導出し、伝達関数を用いるエレベータロープの制振装置100aを構成することができる。
建物揺れ検出部としてGPS(Global Positioning System)装置を備えるエレベータロープの制振装置を構成することもできる。図13を用いてGPS装置を備えるエレベータロープの制振装置について説明する。
図13は本発明の実施の形態2に係るGPS装置を備えるエレベータ装置の概略図である。図13に示すエレベータ装置200b及びエレベータロープの制振装置100bは、建物揺れ検出部22aとしてGPS装置を備える。
建物揺れ検出部22aは、GPS衛星からの電波を受信し、地震、強風等によって生じる建物の揺れの変位を計測し、計測した建物の揺れを建物揺れ情報112aとして出力する。建物揺れ情報112aは、演算制御装置13bに入力される。図13に示すエレベータロープの制振装置100bは、建物揺れ情報112aを用いて、変位外乱Vext2を算出する。
図13(a)及び図13(b)は、どちらもエレベータ装置200bを図示するものである。わかりやすく図示するため、図13(a)には横振動計測部12b及びアクチュエータ14bを図示していない。図13(b)には、かご位置計測部11bを図示していない。図13(a)及び図13(b)には3軸直交座標系の座標軸であるx軸、y軸及びz軸が図示されている。
x軸は主ロープ6bの制振範囲Rbの部分と平行に設定されている。x軸の正の方向は鉛直下方である。建物300bと建物300bの一部である昇降路1b及び機械室2bを除いて、図13に示す構成要素はエレベータ装置200bに含まれる。また、エレベータロープの制振装置100bはエレベータ装置200bの一部である。
図13(a)にはかご7bが昇降する昇降路1bが図示されている。昇降路1bの上方に機械室2bが設けられ、機械室2bには巻上機3b及びそらせ車5bが設置されている。建物300b、昇降路1b及び機械室2bの配置は図1(c)の建物300、昇降路1及び機械室2の配置と同様である。
巻上機3bは、駆動シーブ4b、駆動シーブ4bを回転させる巻上機モータ(図示せず)及び駆動シーブ4bの回転を制動する巻上機ブレーキ(図示せず)を備える。駆動シーブ4b及びそらせ車5bには懸架体である複数の主ロープ6bが巻き掛けられている。主ロープ6bの第一の端部e7にかご7bが吊り下げられている。主ロープ6bの第二の端部e9は釣合おもり8bに接続されている。
ここで、主ロープ6bの駆動シーブ4bと接する部分のうち最もかご7bの側にある部分を接触点e8とする。すなわち、主ロープ6bの駆動シーブ4bと接する部分と主ロープ6bの駆動シーブ4bと接していない部分の境界が接触点e8である。
エレベータロープの制振装置100bの制振範囲Rbは、主ロープ6bの、第一の端部e7と接触点e8の間の部分である。制振範囲Rbは、図13(a)に図示され、図13(b)には図示されていない。昇降路1bの内部には、かご7bの昇降を案内する一対のかごガイドレール(図示せず)が設置されている。
また、昇降路1bの内部には、釣合おもり8bの昇降を案内する一対の釣合おもりガイドレール(図示せず)が設置されている。かご7bと釣合おもり8bはコンペンロープ9bによって接続されている。昇降路1bの底部には釣合車10bが設けられている。
x軸方向におけるかご7bの位置を計測するかご位置計測部11bが設けられている。かご位置計測部11bは、本体40b、滑車41b、滑車42b及びワイヤロープ43bで構成される。かご7bの走行に係る各種機器(図示せず)が昇降路1bの内部に設置されており、各種機器は制御盤18bによって制御される。
図13(b)には機械室2bに設けられたアクチュエータ14b、昇降路1bに設けられた横振動計測部12bが図示されている。エレベータロープの制振装置100bは建物300bの屋上に建物揺れ検出部22aを備える。エレベータロープの制振装置100bにおいては、建物揺れ検出部22aから建物揺れ情報112aが出力される。
エレベータロープの制振装置100bにおいては、建物揺れ情報112aがアクチュエータ14bの位置の横振動を推定する推定因子に含まれる。建物揺れ情報112のかわりに建物揺れ情報112aを使用する点を除き、エレベータロープの制振装置100bの動作及び構造は、図11において説明したエレベータロープの制振装置100aと同様である。
横振動計測部12aを省いたエレベータロープの制振装置を構成することもできる。横振動計測部12aを省いたエレベータロープの制振装置は図11の符号を付している。横振動計測部12aを省いたエレベータロープの制振装置は、エレベータ装置の昇降路1a又は機械室2aに設置され、入力された駆動入力106aに応じて強制変位を発生し、強制変位109aによる力を主ロープ6aに対して加えるアクチュエータ14aを備える。
さらに、横振動計測部12aを省いたエレベータロープの制振装置は、建物の揺れを検出し建物揺れ情報として出力する建物揺れ検出部22を備える。さらに、アクチュエータの位置における主ロープ6aの横振動を、建物揺れ情報112を含む推定因子に基づいて推定し、推定した横振動を推定横振動102aとして出力する横振動推定部50aを備える。
さらに、横振動計測部12aを省いたエレベータロープの制振装置は、強制変位109aが推定横振動102aと逆位相となるようにアクチュエータ14aを駆動するアクチュエータ駆動部52aとを備える。アクチュエータ駆動部52aは、アクチュエータ14aに対して駆動入力106aを出力することにより、アクチュエータ14aを駆動する。
実施の形態2に係るエレベータロープの制振装置は、横振動情報を含む推定因子に基づき、アクチュエータの位置における横振動を推定するため、高精度に横振動の振幅を低減できる。そのため、乗客の乗り心地の悪化を軽減し、昇降路に備えられた機器の損傷を避けることができる。
実施の形態2に係るエレベータロープの制振装置は、建物揺れ検出部を備え、横振動情報に加えて、建物揺れ情報を含む推定因子に基づき、アクチュエータの位置における横振動を推定するため、変位外乱を横振動の推定に用いることができる。そのため、より高精度に横振動の振幅を低減することができる。
実施の形態3.
実施の形態3に係るエレベータロープの制振装置は、実施の形態1に開示したエレベータロープの制振装置の構成要素に加えて秤装置を備える。
図14は本発明の実施の形態3に係るエレベータ装置の概略図である。実施の形態3で開示しないエレベータ装置200c及びエレベータロープの制振装置100cの構造及び動作は、実施の形態1で開示したエレベータ装置200及びエレベータロープの制振装置100の構造及び動作と同様である。
建物300cと建物300cの一部である昇降路1c及び機械室2cを除いて、図14に示す構成要素はエレベータ装置200cに含まれる。また、エレベータロープの制振装置100cはエレベータ装置200cの一部である。
図14(a)及び図14(b)はどちらもエレベータ装置200cを図示するものである。わかりやすく図示するため、図14(a)には横振動計測部12c及びアクチュエータ14cを図示しない。さらに、図14(a)には秤装置21から演算制御装置13cへの接続線を図示しない。図14(b)にはかご位置計測部11cを図示しない。
図14(a)及び図14(b)には、3軸直交座標系のx軸、y軸及びz軸が図示されている。x軸は主ロープ6cの制振範囲Rcの部分と平行に設定され、x軸の正の向きは鉛直下方である。図14(a)にはかご7cが昇降する昇降路1cが図示されている。昇降路1cの上方に機械室2cが設けられ、機械室2cに巻上機3c及びそらせ車5cが設置されている。
建物300c、昇降路1c及び機械室2cの配置は、図1(c)の建物300、昇降路1及び機械室2の配置と同様である。巻上機3cは、駆動シーブ4c、駆動シーブ4cを回転させる巻上機モータ(図示せず)及び駆動シーブ4cの回転を制動する巻上機ブレーキ(図示せず)を備える。
駆動シーブ4c及びそらせ車5cには、懸架体である複数の主ロープ6cが巻き掛けられ、主ロープ6cの第一の端部e10にかご7cが吊り下げられている。主ロープ6cの第二の端部e12は釣合おもり8cに接続されている。
ここで、主ロープ6cの、駆動シーブ4cと接する部分のうち、最もかご7cの側の部分を接触点e11とする。すなわち、主ロープ6cの駆動シーブ4cと接する部分と主ロープ6cの駆動シーブ4cと接していない部分との境界が接触点e11である。
実施の形態3における制振範囲Rcは、主ロープ6cの第一の端部e10と接触点e11の間の部分である。制振範囲Rcは、図14(a)に図示され、図14(b)には図示されていない。
かご7c及び釣合おもり8cは、主ロープ6cに吊り下げられている。巻上機3cは、駆動シーブ4cを回転させてかご7c及び釣合おもり8cを昇降させる。昇降路1cの内部には、かご7cの昇降を案内する一対のかごガイドレール(図示せず)及び釣合おもり8cの昇降を案内する一対の釣合おもりガイドレール(図示せず)が設置されている。
かご7cと釣合おもり8cはコンペンロープ9cによって接続されている。昇降路1cの底部には、コンペンロープ9cが巻き掛けられた2つの釣合車10cが設けられている。実施の形態1と同様に、かご7cのx軸方向における位置を計測するかご位置計測部11cが設けられている。
かご位置計測部11cは、本体40c、滑車41c、滑車42c及びワイヤロープ43cを備える。滑車41c及び滑車42cには無端状(環状)のワイヤロープ43cが巻き掛けられている。なお、かご7cの走行に係る各種機器(図示せず)が昇降路1cの内部に設置されており、各種機器は制御盤18cによって制御される。
制御盤18cは演算制御装置13cを備える。昇降路1cの内部には、主ロープ6cの横振動を計測する横振動計測部12cとして非接触式の変位センサが配置されている。図14(b)には、機械室2cに設置されたアクチュエータ14c、昇降路1cに設置された横振動計測部12c及びかご7cに設置された秤装置21が図示されている。
実施の形態3に係るエレベータロープの制振装置100cは秤装置21を備える。秤装置21はかご7cの内部の総重量を計測し、計測した総重量をかご内荷重情報113として出力する。かご内荷重情報113は秤装置21から演算制御装置13cに入力される。
演算制御装置13cは、横振動推定部50c、横振動補償指令演算部51c及びアクチュエータ駆動部52cを備える。横振動補償指令演算部51c及びアクチュエータ駆動部52cの構造及び動作は、実施の形態1の横振動補償指令演算部51及びアクチュエータ駆動部52の構造及び動作と同様である。
実施の形態3に係る横振動推定部50cの構造及び動作について説明する。図15は、本発明の実施の形態3に係るエレベータロープの制振装置の横振動推定部を含む要部を示すブロック図である。横振動推定部50cはロープ長算出部501c、主ロープの機械特性502c、遅延時間算出部503c及び遅延処理部504cを備える。
かご位置計測部11c、ロープ長算出部501c及び遅延処理部504cの構造及び動作は、実施の形態1に係るかご位置計測部11、ロープ長算出部501及び遅延処理部504の構造及び動作と同様である。
実施の形態3に係るエレベータロープの制振装置100cの備える秤装置21は、かご7cの内部の総重量を計測し、計測した総重量をかご内荷重情報113として主ロープの機械特性502cに入力される。ここで総重量とは、かご7cの内部の乗客及びかご7cの内部に持ち込まれた荷物の重量である。
横振動推定部50cは、総重量を含むかご7cの重量、かご7cの下部に吊り下げられる制御ケーブル(図示せず)の重量、コンペンロープ9cの重量及び釣合車10cの重量に基づいて主ロープ6cの張力を算出する。実施の形態3に係る主ロープの機械特性502cは、主ロープ6cの線密度に加え、かご内荷重情報113を用いて算出された主ロープ6cの張力を含む。
遅延時間算出部503cは、主ロープの機械特性502c及びロープ長情報107cに基づき遅延時間情報108cを算出する。遅延処理部504cの構造及び動作は、実施の形態1の遅延処理部504の構造及び動作と同様である。実施の形態3に係る横振動推定部50cは、(19)式又は(9)式を用いて推定横振動102cの推定を行っても良い。
実施の形態3に係るエレベータロープの制振装置100cにおいては、かご内荷重情報113が推定因子に含まれるため、エレベータロープの張力をより正確に算出できる。そのため、かご内荷重情報113を推定因子に含まない場合に比べて横振動伝播速度の算出精度及び推定横振動102cの推定精度を向上できる。
実施の形態3に係るエレベータロープの制振装置100cは、横振動情報101cを含む推定因子に基づきアクチュエータの位置における横振動を推定するため、高精度に横振動の振幅を低減できる。そのため、早く、確実に横振動を抑制し、乗客の乗り心地の悪化を軽減し、昇降路に備えられた機器の損傷を避けることができる。
実施の形態3に係るエレベータロープの制振装置100cは、推定因子に、かご内荷重情報113を含むため、より高精度にアクチュエータの位置における横振動を推定し、より高い精度で横振動の振幅を低減できる。また、実施の形態1において説明した伝達関数をエレベータロープの制振装置100cに適用することもできる。
推定因子にかご内荷重情報113を含み、かつ伝達関数を使用するエレベータロープの制振装置100cは、伝達関数を併用することによってかご7cの内部の総重量の変化に応じて、高精度かつ短時間の間に横振動の振幅を低減できる。そのため、伝達関数を使用するエレベータロープの制振装置100cは、総重量が変化する状況下でも、早く、正確に横振動の振幅を低減できる。
乗客が乗降すると、かご7cの内部の総重量が変化し主ロープ6cの張力が変化することによって、周波数領域における共振ピークの位置が変化する。伝達関数を使用するエレベータロープの制振装置100cは、乗客の乗降に応じて、高精度に共振ピークを減衰させることができる。そのため、伝達関数を使用するエレベータロープの制振装置100cは、乗客の乗降がある状況下でも早く正確に横振動の共振ピークを低減できる。
実施の形態4.
実施の形態4に係るエレベータロープの制振装置は、異なる2方向に強制変位を発生するアクチュエータを備える。図16は本発明の実施の形態4に係るエレベータ装置の概略図である。図16には3軸直交座標系のx軸、y軸及びz軸が図示されている。x軸の正の方向は鉛直下方であり、x軸は主ロープ6dの制振範囲Rdの部分に平行に設定されている。
実施の形態4において説明しない構成要素の構造及び動作は、実施の形態1の構成要素の構造及び動作と同様である。建物300dと建物300dの一部である昇降路1d及び機械室2dを除いて、図16に示す構成要素はエレベータ装置200dに含まれる。また、エレベータロープの制振装置100dはエレベータ装置200dの一部である。
図16(a)及び図16(b)はどちらもエレベータ装置200dを図示するものであるが、図16(a)には横振動計測部12d及びアクチュエータ14dを図示せず、図16(b)には、かご位置計測部11dを図示しない。図16(a)にはかご7dが昇降する昇降路1dが図示されている。
昇降路1dの上方に機械室2dが設けられ、機械室2dにはかご7dを昇降させる巻上機3d及びそらせ車5dが設置されている。建物300d、昇降路1d及び機械室2dの配置は、図1(c)の建物300、昇降路1及び機械室2の配置と同様である。巻上機3dは、駆動シーブ4d、駆動シーブ4dを回転させる巻上機モータ(図示せず)及び駆動シーブ4dの回転を制動する巻上機ブレーキ(図示せず)を備える。
主ロープ6dの第一の端部e13にかご7dが吊り下げられ、主ロープ6dの第二の端部e15に釣合おもり8dが接続されている。主ロープ6dが駆動シーブ4dと接している部分のうち、最もかご7dの側の部分を接触点e14とする。すなわち、主ロープ6dの駆動シーブ4dと接している部分と主ロープ6dの駆動シーブ4dと接していない部分との境界が接触点e14である。
かご7d及び釣合おもり8dは、1:1ローピングで主ロープ6dに吊り下げられている。巻上機3dは駆動シーブ4dを回転させてかご7d及び釣合おもり8dを昇降させる。実施の形態4における制振範囲Rdは、主ロープ6dの第一の端部e13と接触点e14の間の部分である。制振範囲Rdは図16(a)に図示されており、図16(b)には図示されていない。
かご7dと釣合おもり8dはコンペンロープ9dによって接続される。昇降路1dの底部に、コンペンロープ9dが巻き掛けられた2つの釣合車10dが設けられている。昇降路1dの内部にかご7dのx軸方向の位置を計測するかご位置計測部11dが設けられている。かご位置計測部11dは、本体40d、滑車41d、滑車42d及びワイヤロープ43dから構成される。
かご位置計測部11dは、かご7dの位置を計測し計測したかご7dの位置をかご位置情報104dとして出力する。かご7dの走行に係る各種機器(図示せず)が昇降路1dの内部に設置されており、各種機器は制御盤18dによって制御される。制御盤18dは演算制御装置13dを備える。
昇降路1dの内部に、主ロープ6dの横振動を計測する横振動計測部12dが設置されている。横振動計測部12dは、主ロープ6dのy軸方向の横振動及び主ロープ6dのz軸方向の横振動を計測する。y軸方向の横振動とは、横振動の変位のy軸方向の成分である。z軸方向の横振動とは、横振動の変位のz軸方向の成分である。
横振動計測部12dは、計測したy軸方向の横振動をy軸方向横振動情報101dとして演算制御装置13dへ出力する。また、横振動計測部12dは、計測したz軸方向の横振動をz軸方向横振動情報101eとして演算制御装置13dへ出力する。
アクチュエータ14dが機械室2dに設置されている。アクチュエータ14dは主ロープ6dに対し、y軸方向強制変位109dによる力及びz軸方向強制変位109eによる力を加える。y軸方向強制変位109d及びz軸方向強制変位109eはそれぞれ、y軸方向の強制変位及びz軸方向の強制変位である。アクチュエータ14d及びロープ把持部の構造の詳細は後述する。
図17は本発明の実施の形態4に係るエレベータロープの制振装置の要部を示すブロック図である。エレベータロープの制振装置100dは、かご位置計測部11d、横振動計測部12d、演算制御装置13d及びアクチュエータ14dを備える。
演算制御装置13dは、横振動推定部50d、横振動補償指令演算部51d及びアクチュエータ駆動部52dを備える。横振動推定部50dについて説明する。図18は、本発明の実施の形態4に係るエレベータロープの制振装置の横振動推定部を含む要部を示すブロック図である。
横振動推定部50dは、ロープ長算出部501d、主ロープの機械特性502d、遅延時間算出部503d及び遅延処理部504dを備える。ロープ長算出部501d及び主ロープの機械特性502dの構造及び動作は実施の形態1のロープ長算出部501及び主ロープの機械特性502の構造及び動作と同様である。
遅延時間算出部503dは、主ロープの機械特性502d及びロープ長情報107dに基づき、y軸方向遅延時間情報108d及びz軸方向遅延時間情報108eを算出する。 y軸方向アクチュエータ141aとz軸方向アクチュエータ141bが、x軸方向において同じ位置に配置されている場合には、y軸方向遅延時間情報108dとz軸方向遅延時間情報108eとが同じとなる場合もある。
遅延処理部504dは、横振動計測部12dからy軸方向横振動情報101d及びz軸方向横振動情報101eを取得する。遅延処理部504dはアクチュエータ14dから、y軸方向強制変位109dをy軸方向アクチュエータ変位103dとして取得し、さらにz軸方向強制変位109eをz軸方向アクチュエータ変位103eとして取得する。
遅延処理部504dは、アクチュエータ14dの位置におけるy軸方向の横振動を、y軸方向横振動情報101dを含む推定因子に基づき推定する。さらに、遅延処理部504dは、アクチュエータ14dの位置におけるz軸方向の横振動を、z軸方向横振動情報101eを含む推定因子に基づき推定する。
ここで、y軸方向の横振動を推定する場合には、アクチュエータ14dの位置とはy軸方向アクチュエータ141aの位置であり、z軸方向の横振動を推定する場合には、アクチュエータ14dの位置とはz軸方向アクチュエータ141bの位置である。
遅延処理部504dは、推定したy軸方向の横振動及び推定したz軸方向の横振動をそれぞれ、y軸方向推定横振動102d及びz軸方向推定横振動102eとして、横振動補償指令演算部51dへ出力する。以上が横振動推定部50dの動作である。
横振動補償指令演算部51dは、y軸方向推定横振動102dに基づきy軸方向推定横振動102dの逆位相となるy軸方向横振動補償指令値105dを算出する。さらに、横振動補償指令演算部51dは、z軸方向推定横振動102eに基づき、z軸方向推定横振動102eの逆位相となるz軸方向横振動補償指令値105eを算出する。
横振動補償指令演算部51dは、y軸方向横振動補償指令値105d及びz軸方向横振動補償指令値105eをアクチュエータ駆動部52dへ出力する。アクチュエータ駆動部52dはy軸方向強制変位109dをy軸方向横振動補償指令値105dに追従させる信号となるy軸方向駆動入力106dを算出する。
アクチュエータ駆動部52dはz軸方向強制変位109eをz軸方向横振動補償指令値105eに追従させる指令値となるz軸方向駆動入力106eを算出する。アクチュエータ駆動部52dは、y軸方向駆動入力106d及びz軸方向駆動入力106eをアクチュエータ14dへ出力する。アクチュエータ駆動部52dはアクチュエータ14dを駆動する。
アクチュエータ14dは、主ロープ6dに対し、y軸方向強制変位109dによる力及びz軸方向強制変位109eによる力を加え、y軸方向の横振動及びz軸方向の横振動が抑制される。さらに、反射波の発生が抑制された場合には、y軸方向の横振動の共振及びz軸方向の横振動の共振が抑制される。
図19は本発明の実施の形態4に係る一体型のローラ式ロープ把持部及びアクチュエータの構造を示す図である。図19(a)は平面図であり図19(b)は斜視図である。図19には3軸直交座標系のx軸、y軸及びz軸が示されている。3軸直交座標系のx軸は主ロープ6dの制振範囲Rdの部分に対して平行でありx軸の正の向きは鉛直下方である。
ローラ式ロープ把持部19dは、枠部60d、第一のローラ61a及び第二のローラ62aを備える。主ロープ6dを囲うように四角形の中空の枠部60dが設けられている。第一のローラ61a及び第二のローラ62aはそれぞれ、軸部s3及び軸部s4を回転軸として回転することができる。
主ロープ6dの両側に、第一のローラ61a及び第二のローラ62aが対向して配置されている。第一のローラ61a及び第二のローラ62aには、主ロープ6dの形状に合わせた溝が設けられている。アクチュエータ14dはy軸方向アクチュエータ141a及びz軸方向アクチュエータ141bを備える。y軸方向アクチュエータ141aは矢印d5のようにy軸方向に動く。z軸方向アクチュエータ141bは矢印d6のようにz軸方向に動く。
枠部60dとy軸方向アクチュエータ141aの間は、枠部60dがy軸方向アクチュエータ141aの可動部分の動きにy軸方向のみ連動するように接続される。枠部60dとz軸方向アクチュエータ141bの間は、枠部60dがz軸方向アクチュエータ141bの可動部分の動きにz軸方向のみ連動するように接続される。
枠部60dとアクチュエータ14dの間の構造は、枠部60dのy軸方向の動きがy軸方向アクチュエータ141aの可動部分の動きに追従し、枠部60dのz軸方向の動きがz軸方向アクチュエータ141bの可動部分の動きに追従するように構成されている。
y軸方向アクチュエータ141aと枠部60dの間の接続には、レールがz軸方向に延びるように設置されたスライドレールを用いてもよい。また、z軸方向アクチュエータ141bと枠部60dの間の接続には、レールがy軸方向に延びるように設置されたスライドレールを用いてもよい。
図19に示す一体型のローラ式ロープ把持部19dは、yz面内の異なる2つ方向の強制変位に連動して動くことができる。そのため、一体型のローラ式ロープ把持部19dは、二体型のローラ式ロープ把持部を設けることなく、yz面内の異なる2方向の強制変位による力を主ロープ6dに加えることができる。以下では、アクチュエータと把持部が、強制変位を発生する方向ごとに分離されて配置された構造を二体型とよぶ。
主ロープ6dとローラ式ロープ把持部19dとの間には隙間が設けられ、主ロープ6dに横振動が発生していない平常時にかご7dが走行しても主ロープ6dはローラ式ロープ把持部19dに接触しない。アクチュエータ14dが駆動されると、ローラ式ロープ把持部19dを介して、主ロープ6dに強制変位による力が加えられる。
ローラ式ロープ把持部19dにかえて、貫通式ロープ把持部を用いてもよい。図20は本発明の実施の形態4に係る一体型の貫通式ロープ把持部及びアクチュエータの構造を示す図である。図20(a)は平面図であり、図20(b)は斜視図である。図20には3軸直交座標系のx軸、y軸及びz軸が図示されている。x軸は主ロープ6dの制振範囲Rdの部分に平行であり、鉛直下方がx軸の正の方向である。
貫通式ロープ把持部20dは主ロープ6dが貫通する開孔部を備える平板部材65dで構成される。平板部材65dは、y軸方向アクチュエータ141a及びz軸方向アクチュエータ141bに接続されている。y軸方向アクチュエータ141a及びz軸方向アクチュエータ141bと平板部材65dとの間の接続構造は図19において説明した構造と同様である。
平板部材65dと主ロープ6dの間には隙間があり、主ロープ6dに横振動が発生していない平常時は、かご7dが走行しても主ロープ6dが平板部材65dに接触しない。アクチュエータ14dが駆動されると、貫通式ロープ把持部20dを介して、主ロープ6dに、y軸方向強制変位109dによる力及びz軸方向強制変位109eによる力が加えられる。
二体型に構成され、x軸方向の異なる位置において、y軸方向及びz軸方向に力を加えるアクチュエータ及びロープ把持部を用いることもできる。図21は本発明の実施の形態4に係る二体型の貫通式ロープ把持部及びアクチュエータの構造を示す図である。図21(a)と図21(b)は貫通式ロープ把持部20eを示した平面図である。図21(c)は貫通式ロープ把持部20eの斜視図である。
図21には3軸直交座標系のx軸、y軸及びz軸が図示されている。x軸は主ロープ6dの制振範囲Rdの部分に平行であり、鉛直下方がx軸の正の方向である。貫通式ロープ把持部20eは、平板部材65e及び平板部材65fを備える。平板部材65eと平板部材65fは、制振範囲Rdの中のx軸方向において互いに異なる位置に設置されている。
互いに固定された平板部材65e及びy軸方向アクチュエータ141aの可動部分は、矢印d7の方向に動き主ロープ6dに対しy軸方向強制変位109dによる力を加える。同様に、互いに固定された平板部材65f及びz軸方向アクチュエータ141bの可動部分は、矢印d8の方向に動き主ロープ6dに対しz軸方向強制変位109eによる力を加える。
貫通式ロープ把持部20e及びアクチュエータ14dは、y軸方向に力を加える部分とz軸方向に力を加える部分が分離して設けられている。そのため、貫通式ロープ把持部20e及びアクチュエータ14dは、複雑な接続構造を設けずに、主ロープ6dに対してy軸方向及びz軸方向に力を加えることができる。
二体型の貫通式ロープ把持部にかえて二体型のローラ式ロープ把持部を用いることもできる。図22は本発明の実施の形態4に係る二体型のローラ式ロープ把持部及びアクチュエータの構造を示す図である。図22には、x軸、y軸及びz軸が図示されている。x軸は主ロープ6dの制振範囲Rdの部分に平行であり、x軸の正の向きは鉛直下方である。
図22(a)には、y軸方向アクチュエータ141aに接続されたローラ式ロープ把持部19eが図示されている。図22(b)には、z軸方向アクチュエータ141bに接続されたローラ式ロープ把持部19fが図示されている。ローラ式ロープ把持部19eを介して、主ロープ6dに対してy軸方向強制変位109dによる力が加わる。
ローラ式ロープ把持部19fを介して、主ロープ6dに対してz軸方向強制変位109eによる力が加えられる。ローラ式ロープ把持部19eとローラ式ロープ把持部19fとは、x軸方向において異なる位置に設けられている。ローラ式ロープ把持部19eは第一のローラ61b、第二のローラ62b及び枠部60eを備える。
第一のローラ61b及び第二のローラ62bはそれぞれ、軸部s5及び軸部s6を回転軸として回転することができる。第一のローラ61b及び第二のローラ62bはそれぞれ、軸部s5及び軸部s6において、枠部60eに接続されている。図22(b)に図示されたローラ式ロープ把持部19fは、第三のローラ63、第四のローラ64、第五のローラ66、第六のローラ67及び枠部60fを備える。
第三のローラ63、第四のローラ64、第五のローラ66及び第六のローラ67はそれぞれ、軸部s7、軸部s8、軸部s9及び軸部s10を回転軸として回転することができる。第三のローラ63、第四のローラ64、第五のローラ66及び第六のローラ67はそれぞれ、軸部s7、軸部s8、軸部s9及び軸部s10において、枠部60fに接続されている。
ローラ式ロープ把持部19e及びローラ式ロープ把持部19fはそれぞれ、y軸方向強制変位109d及びz軸方向強制変位109eに連動して動くことができる。そのため、貫通式ロープ把持部20eと同様に、yz面内のすべての方向の横振動に対し、横振動を抑制できる。また、ローラが回転することによって、主ロープ6dの磨耗を抑制できる。
以上のように、本発明の実施の形態4に係るエレベータロープの制振装置100dによれば、y軸方向アクチュエータ141aの位置におけるy軸方向の横振動及びz軸方向アクチュエータ141bの位置におけるz軸方向の横振動を推定することができる。そのため、y軸方向の横振動及びz軸方向の横振動に対応した、y軸方向強制変位109d及びz軸方向強制変位109eを発生させることができる。
そのため、本発明の実施の形態4に係るエレベータロープの制振装置100dによれば、発生するエレベータロープの横振動の方向に依存せず、早く確実に横振動を抑制することが可能となり、昇降路1dに備えられた機器の損傷を避けることができる。また、乗客の乗り心地の悪化を軽減できる。
実施の形態4において、主ロープ6dに対して、y軸方向及びz軸方向に強制変位による力を加える構成について説明したが、強制変位の方向は、直交する2方向に限られるものではなくyz面内の異なる2方向に力を加える構成であれば本発明の効果を奏する。また、yz面内でなくとも、x軸に平行でなければ本発明の効果を奏する。
また、y軸方向の強制変位及びz軸方向の強制変位を発生するエレベータロープの制振装置において、実施の形態2に説明した建物揺れ検出部を併用することもできる。このようなエレベータロープの制振装置においては、建物揺れ検出部がy軸方向及びz軸方向の両方向の建物の揺れを計測し、両方向の建物揺れ情報を推定因子に含む横振動推定部を構成するのが好適である。
実施の形態1に説明した伝達関数を用いてエレベータロープの制振装置100dを構成することにより、より広い周波数範囲のy軸方向の横振動の振幅及びz軸方向の横振動の振幅を、精度良く低減できる。また、y軸方向及びz軸方向についてそれぞれ伝達関数を算出し、アクチュエータ14dの位置の横振動を推定することもできる。
エレベータロープの制振装置100dはアクチュエータ14dを備える。アクチュエータ14dは、昇降路1d又は機械室2dに設置され、入力されたy軸方向駆動入力106d及びz軸方向駆動入力106eに応じて、y軸方向強制変位109d及びz軸方向強制変位109eを発生する。そして、アクチュエータ14dは、y軸方向強制変位109dによる力及びz軸方向強制変位109eによる力を主ロープ6dに加える。
エレベータロープの制振装置100dはさらに横振動計測部12dを備える。横振動計測部12dは、主ロープ6dに発生するy軸方向の横振動及びz軸方向の横振動を計測し、y軸方向横振動情報101d及びz軸方向横振動情報101eとして出力する。エレベータロープの制振装置100dはさらに横振動推定部50dを備える。
横振動推定部50dは、アクチュエータ14dの位置におけるy軸方向の横振動及びアクチュエータ14dの位置におけるz軸方向の横振動をそれぞれ、y軸方向横振動情報101dを含む推定因子及びz軸方向横振動情報101eを含む推定因子に基づいて推定する。そして、推定したy軸方向の横振動及びz軸方向の横振動を、y軸方向推定横振動102d及びz軸方向推定横振動102eとして出力する。
エレベータロープの制振装置100dはさらにアクチュエータ駆動部52dを備える。アクチュエータ駆動部52dはアクチュエータ14dに対して、y軸方向駆動入力106d及びz軸方向駆動入力106eを出力する。そして、アクチュエータ駆動部52dはy軸方向強制変位109d及びz軸方向強制変位109eがそれぞれ、y軸方向推定横振動102d及びz軸方向推定横振動102eと逆位相となるようにアクチュエータ14dを駆動する。
実施の形態4に係るエレベータロープの制振装置100dは以下のような構成とも言える。すなわち、エレベータロープの制振装置100dはアクチュエータ14dを備える。アクチュエータ14dは、主ロープ6dに直交する2方向の駆動入力に応じて、2方向の強制変位を発生し、2方向の強制変位による力を主ロープ6dに対して加える。
さらに、エレベータロープの制振装置100dは横振動計測部12dを備える。横振動計測部12dは、2方向の横振動を計測し計測した2方向の横振動を2方向の横振動情報として出力する。さらに、エレベータロープの制振装置100dは横振動推定部50dを備える。
横振動推定部50dは、2方向の横振動情報を含む推定因子に基づき、アクチュエータ14dの位置における主ロープ6dの2方向の横振動を推定し、推定した2方向の横振動を2方向の推定横振動として出力する。
さらに、エレベータロープの制振装置100dはアクチュエータ駆動部52dを備える。アクチュエータ駆動部52dは、アクチュエータ14dに対して2方向の駆動入力を出力し、2方向の強制変位のそれぞれが2方向の推定横振動のそれぞれに対して逆位相となるようにアクチュエータ14dを駆動する。
実施の形態5.
実施の形態5に係るエレベータロープの制振装置100fは、実施の形態1のエレベータロープの制振装置100の構成に加えて張力調整装置23を備える。張力調整装置23は、エレベータロープである複数の主ロープ6fを構成する各主ロープ6fのそれぞれの張力を調整し、各主ロープ6fの張力の間の差を小さくする。
図23は本発明の実施の形態5に係るエレベータ装置200fの概略図である。実施の形態5で説明しないエレベータ装置200f及びエレベータロープの制振装置100fの構造及び動作は、実施の形態1で説明したエレベータ装置200及びエレベータロープの制振装置100の構造及び動作と同様である。
建物300fと建物300fの一部である昇降路1f及び機械室2fを除いて、図23に示す構成要素はエレベータ装置200fに含まれる。また、エレベータロープの制振装置100fはエレベータ装置200fの一部である。
図23(a)及び図23(b)はどちらもエレベータ装置200fを図示するものである。わかりやすく図示するため、図23(a)には横振動計測部12f及びアクチュエータ14fを図示しない。図23(b)にはかご位置計測部11fを図示しない。
図23(a)及び図23(b)には、3軸直交座標系のx軸、y軸及びz軸が図示されている。x軸は主ロープ6fの制振範囲Rfの部分と平行に設定され、x軸の正の向きは鉛直下方である。図23(a)にはかご7fが昇降する昇降路1fが図示されている。昇降路1fの上方に機械室2fが設けられ、機械室2fに巻上機3f及びそらせ車5fが設置されている。
建物300f、昇降路1f及び機械室2fの配置は、図1(c)の建物300、昇降路1及び機械室2の配置と同様である。巻上機3fは、駆動シーブ4f、駆動シーブ4fを回転させる巻上機モータ(図示せず)及び駆動シーブ4fの回転を制動する巻上機ブレーキ(図示せず)を備える。
駆動シーブ4f及びそらせ車5fには、懸架体である複数の主ロープ6fが巻き掛けられ、主ロープ6fの第一の端部e16にかご7fが吊り下げられている。主ロープ6fの第二の端部e18は釣合おもり8fに接続されている。
ここで、主ロープ6fの駆動シーブ4fと接する部分のうち、最もかご7fの側の部分を接触点e17とする。すなわち、主ロープ6fの駆動シーブ4fと接する部分と主ロープ6fの駆動シーブ4fと接していない部分との境界が接触点e17である。
実施の形態5における制振範囲Rfは、主ロープ6fの第一の端部e16と接触点e17の間の部分である。制振範囲Rfは、図23(a)に図示され、図23(b)には図示されていない。
かご7f及び釣合おもり8fは、主ロープ6fに吊り下げられている。巻上機3fは、駆動シーブ4fを回転させてかご7f及び釣合おもり8fを昇降させる。昇降路1fの内部には、かご7fの昇降を案内する一対のかごガイドレール(図示せず)及び釣合おもり8fの昇降を案内する一対の釣合おもりガイドレール(図示せず)が設置されている。
かご7fと釣合おもり8fはコンペンロープ9fによって接続されている。昇降路1fの底部には、コンペンロープ9fが巻き掛けられた2つの釣合車10fが設けられている。実施の形態1と同様に、かご7fのx軸方向における位置を計測するかご位置計測部11fが設けられている。
かご位置計測部11fは、本体40f、滑車41f、滑車42f及びワイヤロープ43fを備える。滑車41f及び滑車42fには無端状(環状)のワイヤロープ43fが巻き掛けられている。なお、かご7fの走行に係る各種機器(図示せず)が昇降路1fの内部に設置されており、各種機器は制御盤18fによって制御される。
制御盤18fは演算制御装置13fを備える。昇降路1fの内部には、主ロープ6fの横振動を計測する横振動計測部12fとして非接触式の変位センサが配置されている。図23(b)には、機械室2fに設置されたアクチュエータ14f、昇降路1fに設置された横振動計測部12f及びかご7fに設置された張力調整装置23が図示されている。
実施の形態5に係るエレベータロープの制振装置100fは張力調整装置23を備える。張力調整装置23は、複数の主ロープ6fを構成する主ロープ6fの間の張力の差を小さくする調整をおこなう。以下では、複数の主ロープ6fを構成する主ロープ6fのそれぞれを各主ロープ6fとよぶ。
張力調整装置23の構成について説明する。図23の第一の端部e16の部分に油圧シリンダを各主ロープ6fに対応して1つずつ設ける。この油圧シリンダは、各油圧シリンダごとに独立して図23のx軸方向にスライドして長さを変えることが可能である。さらに、各主ロープ6fの端部を各油圧シリンダの一方の端に接続し、各油圧シリンダの他方の端はかご7fの上部に固定する。
各主ロープ6fは、対応する油圧シリンダを介してかご7fに接続される。そして、各主ロープ6fの張力を検知するロープ張力計を設けておき、検知した主ロープ6fの張力が小さい場合には、その主ロープ6fに対応する油圧シリンダの長さを短くする。主ロープ6fの張力が大きい場合には、対応する油圧シリンダの長さを長くする調整を行う。
張力調整装置23の構成は、上記に限定されるものではない。張力調整装置23として、各主ロープ6fにロープ張力計を一つずつ取り付け、ロープ張力計の情報に基づき張力をアクティブ制御し、各主ロープ6fの張力の間の差を小さくするように調整する装置を設けてもよい。
演算制御装置13fは、横振動推定部50f、横振動補償指令演算部51f及びアクチュエータ駆動部52fを備える。横振動補償指令演算部51f及びアクチュエータ駆動部52fの構造及び動作は、実施の形態1の横振動補償指令演算部51及びアクチュエータ駆動部52の構造及び動作と同様である。
実施の形態5の横振動推定部50fの構造及び動作について説明する。図24は、本発明の実施の形態5に係るエレベータロープの制振装置の横振動推定部を含む要部を示すブロック図である。横振動推定部50fはロープ長算出部501f、主ロープの機械特性502f、遅延時間算出部503f及び遅延処理部504fを備える。
かご位置計測部11f、ロープ長算出部501f及び遅延処理部504fの構造及び動作は、実施の形態1のかご位置計測部11、ロープ長算出部501及び遅延処理部504の構造及び動作と同様である。
横振動推定部50fは、かご7fの重量(積載物を含む総重量)、かご7fの下部に吊り下げられる制御ケーブル(図示せず)の重量、コンペンロープ9fの重量及び釣合車10fの重量に基づいて主ロープ6fの張力を算出する。実施の形態5の主ロープの機械特性502fは、主ロープ6fの線密度に加え、主ロープ6fの張力を含む。
遅延時間算出部503fは、主ロープの機械特性502f及びロープ長情報107fに基づき遅延時間情報108fを算出する。実施の形態5の横振動推定部50fは、(19)式又は(9)式を用いて推定横振動102fの推定を行ってもよい。
本実施の形態5に係るエレベータロープの制振装置100fにおいては、張力調整装置23を備えたため、各主ロープ6fの張力を均等にすることができる。各主ロープ6fの張力を均等にすることにより、各主ロープ6fの横振動伝播速度が均等になる。そのため、張力調整装置23を含まない場合に比べて、横振動伝播速度の算出精度及び推定横振動102fの推定精度を向上することができる。
実施の形態5に係るエレベータロープの制振装置100fは、横振動情報101fを含む推定因子に基づきアクチュエータの位置における横振動を推定するため、高精度に横振動の振幅を低減できる。そのため、早く、確実に横振動を抑制し、乗客の乗り心地の悪化を軽減し、昇降路に備えられた機器の損傷を避けることができる。
経年変化等により、複数の主ロープ6fを構成する各主ロープ6fの張力にばらつきが生じると、周波数領域における共振ピークの位置が各主ロープ6fごとに異なる状態となる。エレベータロープの制振装置100fは、張力調整装置23を使用して張力のばらつきを低減することができるため、アクチュエータの位置における横振動を高精度に推定できる。
ひいては、高精度に横振動の共振ピークを減衰させることができる。そのため、本実施の形態において伝達関数を使用したエレベータロープの制振装置100fは、早く正確に横振動の共振ピークを低減できる。
本実施の形態に記載の張力調整装置23を、実施の形態1から実施の形態4に説明したエレベータロープの制振装置に追加することもできる。このような場合、張力調整装置23を備えない場合に比べて、早く正確に横振動の共振ピークを低減できるエレベータロープの制振装置を提供することができる。
実施の形態6.
実施の形態6に係るエレベータロープの制振装置100gは、実施の形態1に説明したエレベータロープの制振装置100の構成に加えて、横振動推定部50gが横振動周波数推定部505を備える。
図25は本発明の実施の形態6に係るエレベータ装置200gの概略図である。実施の形態6で説明しないエレベータ装置200g及びエレベータロープの制振装置100gの構造及び動作は、実施の形態1で開示したエレベータ装置200及びエレベータロープの制振装置100の構造及び動作と同様である。
建物300gと建物300gの一部である昇降路1g及び機械室2gを除いて、図25に示す構成要素はエレベータ装置200gに含まれる。また、エレベータロープの制振装置100gはエレベータ装置200gの一部である。
図25(a)及び図25(b)はどちらもエレベータ装置200gを図示するものである。わかりやすく図示するため、図25(a)には横振動計測部12g及びアクチュエータ14gを図示しない。図25(b)にはかご位置計測部11gを図示しない。
図25(a)及び図25(b)には、3軸直交座標系のx軸、y軸及びz軸が図示されている。x軸は主ロープ6gの制振範囲Rgの部分と平行に設定され、x軸の正の向きは鉛直下方である。図25(a)にはかご7gが昇降する昇降路1gが図示されている。昇降路1gの上方に機械室2gが設けられ、機械室2gに巻上機3g及びそらせ車5gが設置されている。
建物300g、昇降路1g及び機械室2gの配置は、図1(c)の建物300、昇降路1及び機械室2の配置と同様である。巻上機3gは、駆動シーブ4g、駆動シーブ4gを回転させる巻上機モータ(図示せず)及び駆動シーブ4gの回転を制動する巻上機ブレーキ(図示せず)を備える。
駆動シーブ4g及びそらせ車5gには、懸架体である複数の主ロープ6gが巻き掛けられ、主ロープ6gの第一の端部e19にかご7gが吊り下げられている。主ロープ6gの第二の端部e21は釣合おもり8gに接続されている。
ここで、主ロープ6gの、駆動シーブ4gと接する部分のうち、最もかご7gの側の部分を接触点e20とする。すなわち、主ロープ6gの駆動シーブ4gと接する部分と主ロープ6gの駆動シーブ4gと接していない部分との境界が接触点e20である。
実施の形態6における制振範囲Rgは、主ロープ6gの第一の端部e19と接触点e20の間の部分である。制振範囲Rgは、図25(a)に図示され、図25(b)には図示されていない。
かご7g及び釣合おもり8gは、主ロープ6gに吊り下げられている。巻上機3gは、駆動シーブ4gを回転させてかご7g及び釣合おもり8gを昇降させる。昇降路1gの内部には、かご7gの昇降を案内する一対のかごガイドレール(図示せず)及び釣合おもり8gの昇降を案内する一対の釣合おもりガイドレール(図示せず)が設置されている。
かご7gと釣合おもり8gはコンペンロープ9gによって接続されている。昇降路1gの底部には、コンペンロープ9gが巻き掛けられた2つの釣合車10gが設けられている。実施の形態1と同様に、かご7gのx軸方向における位置を計測するかご位置計測部11gが設けられている。
かご位置計測部11gは、本体40g、滑車41g、滑車42g及びワイヤロープ43gを備える。滑車41g及び滑車42gには無端状(環状)のワイヤロープ43gが巻き掛けられている。なお、かご7gの走行に係る各種機器(図示せず)が昇降路1gの内部に設置されており、各種機器は制御盤18gによって制御される。
制御盤18gは演算制御装置13gを備える。昇降路1gの内部には、主ロープ6gの横振動を計測する横振動計測部12gとして非接触式の変位センサが配置されている。図25(b)には、昇降路1gに設置されたアクチュエータ14g及び横振動計測部12gが図示されている。
続いて、演算制御装置13gの構成要素である横振動推定部50gについて説明する。図26は、本発明の実施の形態6に係るエレベータロープの制振装置100gの、横振動推定部50gを含む要部を示すブロック図である。横振動推定部50gは、ロープ長算出部501g、主ロープの機械特性502g、遅延時間算出部503g、遅延処理部504g及び横振動周波数推定部505を備える。
エレベータロープの制振装置100gの構成においては、横振動推定部50gがロープ長算出部501gを備える。しかしながら、ロープ長算出部501gは、エレベータロープの制振装置に含まれていればよく、かご位置計測部11gがロープ長算出部501gを備える構成としてもよい。
ロープ長算出部501gは、かご位置計測部11gからかご位置情報104gを取得する。ロープ長算出部501gはかご位置情報104gからロープ長を算出し、算出したロープ長をロープ長情報107gとして、横振動周波数推定部505及び遅延時間算出部503gに出力する。
ここで、実施の形態6におけるロープ長とは第一の端部e19から接触点e20までの主ロープ6gの長さである。アクチュエータ14g及び横振動計測部12gをかご7gの上部に設け、ロープ長算出部501gが、かご位置計測部11gからかご位置情報104gを取得しない構成とすることもできる。
このような場合、ロープ長算出部501gは、アクチュエータ14gから横振動計測部12gまでの高さ方向の距離を予め記憶することによって、かご位置情報104gを用いずにロープ長情報107gを出力してもよい。
遅延時間算出部503gは、横振動計測部12gで計測された横振動が横振動計測部12gの位置からアクチュエータ14gの位置に到達するまでの所要時間を算出する。遅延時間算出部503gは、横振動計測部12gの位置、アクチュエータ14gの位置、ロープ長情報107g及び主ロープの機械特性502gに基づいてこの所要時間の算出を行う。
遅延時間算出部503gは、算出した所要時間である遅延時間を遅延時間情報108gとして遅延処理部504gに出力する。主ロープの機械特性502gは、主ロープ6gの単位長さあたりの質量(線密度)を含む。遅延時間算出部503gは、主ロープの機械特性502gを用いて横振動の伝播速度を算出する。
横振動周波数推定部505は、横振動情報101gに基づき、主ロープの横振動の周波数を推定する。また、横振動周波数推定部505は、ロープ長情報107g及び主ロープの機械特性502gに基づいて、主ロープの横振動の固有周波数理論値を計算する。
横振動周波数推定部505は、横振動情報101gに基づき推定した横振動の周波数を横振動周波数情報101gaとして遅延処理部504gに出力する。また、計算した横振動の固有周波数理論値を横振動周波数理論値情報101gbとして遅延処理部504gに出力する。
遅延処理部504gは、横振動周波数情報101gaと横振動周波数理論値情報101gbとを比較する。そして、両者の差が予め定めた基準値より小さいか又は同じであった場合に、横振動情報101g、アクチュエータ変位103g及び遅延時間情報108gに基づき、アクチュエータ14gの位置の横振動を推定する。
両者の差が予め定めた基準値より大きい場合、遅延処理部504gは、横振動補償指令演算部51gに対して推定横振動102gを出力せず、アクチュエータ14gは動作しない。
遅延処理部504gは、横振動情報101gの位相を遅延時間情報108gに相当する分、遅延させることにより横振動を推定してもよい。遅延処理部504gは、推定した横振動を推定横振動102gとして横振動補償指令演算部51gに出力する。
なお、この基準値は、例えば、1次モード振動から3次モード振動までを対象として、それぞれ横振動の固有周波数理論値の±20%程度としてもよい。すなわち、固有周波数理論値の80%から固有周波数理論値の120%の値としてもよい。
なお、本実施の形態においては、横振動推定部50gが横振動周波数推定部505を備えるが、エレベータロープの制振装置100gが横振動周波数推定部505を備えていればよい。横振動周波数情報101gaと横振動周波数理論値情報101gbとの比較を遅延処理部504g以外の構成要素がおこなってもよい。
例えば、横振動周波数推定部505が、横振動周波数情報101gaと横振動周波数理論値情報101gbを横振動補償指令演算部51gに出力する。そして、横振動補償指令演算部51gが、横振動周波数情報101gaと横振動周波数理論値情報101gbの差を算出してアクチュエータ14を動作するか否かを決定してもよい。
すなわち、本実施の形態のエレベータロープの制振装置100gは、横振動周波数推定部505をさらに備える。横振動周波数推定部505は横振動情報101gに基づき横振動の周波数である横振動周波数情報101ga及び前記周波数の理論値である横振動周波数理論値情報101gbとを推定する。
さらに、エレベータロープの制振装置100gにおいては、横振動周波数情報101gaと横振動周波数理論値情報101gbとが比較され、両者の差があらかじめ定めた基準値と同じか基準値と同じである場合にアクチュエータ14gが駆動される。そして、この差が前記基準値を超える場合にはアクチュエータ14gは駆動されない。
実施の形態6に係るエレベータロープの制振装置100gは、横振動情報101gを含む推定因子に基づきアクチュエータの位置における横振動を推定するため、高精度に横振動の振幅を低減できる。そのため、早く、確実に横振動を抑制し、乗客の乗り心地の悪化を軽減し、昇降路に備えられた機器の損傷を避けることができる。
実施の形態6に係るエレベータロープの制振装置100gは、横振動周波数情報101gaと横振動周波数理論値情報101gbを推定する横振動周波数推定部505を備える。そして、横振動周波数情報101gaと横振動周波数理論値情報101gbとの差の大きさに基づきアクチュエータ14gを動作させるか否かが決定される。
そのため、主ロープ6gが共振周波数に近い周波数で加振された場合のみに主ロープ6gに制振力を作用させることが可能となる。そして、ランダムな外力によって主ロープ6gが微小に横振動を生じた場合にアクチュエータ14gを動作させず消費電力を抑制することができる。
ランダムな外力の一例としては、例えば、昇降路1gに別の昇降路及びエレベータ装置が隣接して設置されている場合に、別のエレベータ装置の走行によって発生した風、振動等を挙げることができる。
本実施の形態に記載した構成は、実施の形態1から実施の形態5に説明したエレベータロープの制振装置にも適用することができる。そして、それぞれのエレベータ装置において、アクチュエータの不要な動作を低減することによって、消費電力を抑制することが可能である。
以上に説明したエレベータロープの制振装置の実施の形態は、適宜組み合わせて適用することができる。