[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る接合方法について図面を参照して詳細に説明する。図1に示すように、第一実施形態に係る接合方法では、第一金属部材1と第二金属部材2とをT字状に突き合わせて接合する。第一実施形態に係る接合方法は、突合せ工程と、補助部材配置工程と、内隅摩擦攪拌工程と、補助部材の除去工程と、突合部摩擦攪拌工程とを行う。なお、説明における「表面」とは、「裏面」に対する反対側の面という意味である。
第一金属部材1は、板状の金属部材である。第一金属部材1の材料は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、 マグネシウム、マグネシウム合金等の摩擦攪拌可能な金属から適宜選択される。第一金属部材1の裏面1aには、底面3aと側壁3b,3bとからなる断面矩形の凹溝3が形成されている。凹溝3は、第一金属部材1の延長方向に延設されている。第二金属部材2は、板状の金属部材である。第二金属部材2の板厚寸法は、第二金属部材2が凹溝3に嵌合するように、凹溝3の幅と同等または凹溝3の幅よりも小さく設定されている。第二金属部材2の材料は、前記した摩擦攪拌可能な金属から適宜選択すればよいが、第一金属部材1と同等の材料であることが好ましい。
突合せ工程は、図1に示すように、第一金属部材1と第二金属部材2とを正面視T字状に突き合わせる工程である。突合せ工程では、第一金属部材1の凹溝3に第二金属部材2を嵌め込み、凹溝3の底面3aに第二金属部材2の端面2cを突き合わせる。第一金属部材1の凹溝3の底面3aと第二金属部材2の端面2cとを突き合わせることにより突合せ部J1(図2参照)が形成される。また、第二金属部材2の両側には、第一内隅S11(図2参照)及び第二内隅S12(図2参照)が形成される。第一内隅S11は、第一金属部材1の裏面1aと第二金属部材2の側面2aとで構成される隅部である。第二内隅S12は、第一金属部材1の裏面1aと第二金属部材2の側面2bとで構成される隅部である。
補助部材配置工程は、図2に示すように、第一金属部材1および第二金属部材2により形成される第一内隅S11および第二内隅S12に補助部材11,12を配置する工程である。補助部材11,12は、板状の金属部材である。補助部材11,12は、本実施形態では、第一金属部材1及び第二金属部材2と同じ材料で形成されている。
補助部材配置工程では、図2に示すように、第一金属部材1の裏面1aと補助部材11の表面11bとを面接触させるとともに、端部11cを第二金属部材2の側面2aに当接させる。また、第一金属部材1の裏面1aと補助部材12の表面12bとを面接触させるとともに、端部12cを第二金属部材2の側面2bに当接させる。なお、補助部材11,12の端部11c,12cの形状は、第一金属部材1と第二金属部材2の突き合わせ角度(内角)に応じて、側面2a,2bと隙間なく当接するように形成されるのがよい。補助部材11,12は、突合せ部J1の延長方向を覆う長さで形成されている。補助部材11,12の板厚は、後記する内隅摩擦攪拌工程の際に金属不足が発生しない程度の厚さに設定する。
内隅摩擦攪拌工程は、図3に示すように、第一金属部材1および第二金属部材2によって形成される第一内隅S11および第二内隅S12を摩擦攪拌接合する工程である(図3では第一内隅S11側の摩擦攪拌接合のみを図示している)。第一内隅S11側の摩擦攪拌接合では、図3に示すように、第二金属部材2の側面2aと補助部材11の端部11cとが当接する部分に回転する接合用回転ツールFを挿入して行う。また、第二内隅S12側の摩擦攪拌接合では、第二金属部材2の側面2bと補助部材12の端部12cとが当接する部分に回転する接合用回転ツールFを挿入して行う。接合用回転ツールFは、特許請求の範囲の「回転ツール」に相当する。
接合用回転ツールFは、連結部F1と、攪拌ピンF2とで構成されており、例えば工具鋼で形成されている。連結部F1は、図示しない摩擦攪拌装置に取り付けられる部位であって、円柱状を呈する。攪拌ピンF2は、連結部F1から垂下しており、連結部F1と同軸になっている。攪拌ピンF2は連結部F1から離間するにつれて先細りになっている。攪拌ピンF2の外周面には螺旋溝が刻設されている。本実施形態では、接合用回転ツールFを右回転させるため、螺旋溝は、基端から先端に向かうにつれて左回りに形成されている。
なお、接合用回転ツールFを左回転させる場合は、螺旋溝を基端から先端に向かうにつれて右回りに形成することが好ましい。螺旋溝をこのように設定することで、摩擦攪拌の際に塑性流動化した金属が螺旋溝によって攪拌ピンF2の先端側に導かれる。これにより、被接合金属部材(第一金属部材1、第二金属部材2及び補助部材11,12)の外部に溢れ出る金属の量を少なくすることができる。
第一内隅S11側の摩擦攪拌接合では、図3に示すように、第二金属部材2の側面2aと補助部材11の端部11cとが当接する部分に右回転させた攪拌ピンF2を浅く挿入し、図3の手前側から奥側に向けて第一内隅S11に沿って接合用回転ツールFを相対移動させる。つまり、第一内隅S11側の摩擦攪拌接合では、攪拌ピンF2の基端側は露出させた状態で、攪拌ピンF2のみを第一金属部材1、第二金属部材2及び補助部材11に接触させて摩擦攪拌を行う。これにより、接合用回転ツールFの移動軌跡には、線状の塑性化領域W11が形成される。
一方、第二内隅S12側の摩擦攪拌接合では、第二金属部材2の側面2bと補助部材12の端部12cとが当接する部分に右回転させた攪拌ピンF2を浅く挿入し、図3の奥側から手前側に向けて第二内隅S12に沿って接合用回転ツールFを相対移動させる。つまり、第二内隅S12側の摩擦攪拌接合では、攪拌ピンF2の基端側は露出させた状態で、攪拌ピンF2のみを第一金属部材1、第二金属部材2及び補助部材12に接触させて摩擦攪拌を行う。これにより、接合用回転ツールFの移動軌跡には、線状の塑性化領域W12(図5参照)が形成される。
内隅摩擦攪拌工程では、連結部F1が第二金属部材2の側面2aや側面2bに干渉しないように、接合用回転ツールFを第二金属部材2に対して傾斜させた状態で摩擦攪拌接合を行う。攪拌ピンF2の挿入角度や挿入距離は、第一金属部材1及び第二金属部材2を接合できるように適宜設定すればよい。なお、本実施形態では鉛直面(第二金属部材2の側面2a,2b)に対して接合用回転ツールFの回転中心軸を45°傾けている(図4参照)。
また、内隅摩擦攪拌工程では、補助部材11,12側にバリが発生するように接合条件を設定するのがよい。バリが発生する位置は、接合条件によって異なる。当該接合条件とは、接合用回転ツールFの回転速度、回転方向、移動速度(送り速度)、進行方向、攪拌ピンF2の傾斜角度(テーパー角度)、被接合金属部材(第一金属部材1、第二金属部材2及び補助部材11,12)の材質、被接合金属部材の厚さ等の各要素とこれらの要素の組合せで決定される。
例えば、接合用回転ツールFの回転速度が遅い場合では、フロー側(retreating side:回転ツールの外周における接線速度から回転ツールの移動速度が減算される側)に比べてシアー側(advancing side:回転ツールの外周における接線速度に回転ツールの移動速度が加算される側)の方が塑性流動材の温度が上昇しやすくなるため、塑性化領域外のシアー側にバリが多く発生する傾向にある。一方、例えば、接合用回転ツールFの回転速度が速い場合、シアー側の方が塑性流動材の温度が上昇するものの、回転速度が速い分、塑性化領域外のフロー側にバリが多く発生する傾向にある。
本実施形態では、接合用回転ツールFの回転速度を速く設定しているため、第一内隅S11側の摩擦攪拌接合では、塑性化領域W11外のフロー側である補助部材11にバリV11が多く発生する傾向にある(図4参照)。また、図示は省略するが、第一内隅S11側の摩擦攪拌接合と同じ理由により、第二内隅S12側の摩擦攪拌接合においても、塑性化領域W12外のフロー側である補助部材12にバリV12が多く発生する傾向にある。なお、接合用回転ツールFの接合条件、および補助部材11,12の配置位置は、ここで説明したものに限定されるものではなく適宜設定すればよい。
このようにして、バリV11,V12が発生する側又はバリV11,V12が多く発生する側が補助部材11,12側となるように接合条件を設定すれば、図5に示すように、補助部材11,12にバリV11,V12を集約することができる。その為、後記する除去工程を容易に行うことができるため好ましい。また、接合用回転ツールFの回転速度を速く設定することにより、接合用回転ツールFの移動速度(送り速度)を高めることができる。これにより、接合サイクルを短くすることができる。
補助部材の除去工程は、図5に示すように、第一金属部材1又は第二金属部材2から補助部材11,12を除去する工程である(ここでは、第一金属部材1から補助部材11,12を除去する場合を説明する)。本実施形態の除去工程では、補助部材11の端部11dや補助部材12の端部12dを図5の太線矢印方向にめくり上げて、塑性化領域W11,W12との境界部分を折り曲げるようにして切除する。除去工程は、切削工具等を用いてよいが、本実施形態では手作業で除去している。補助部材11,12には、バリV11,V12が形成されているので、補助部材11,12と共にバリV11,V12も一緒に除去される(図6参照)。その為、バリV11,V12を補助部材11,12ごと容易に除去することができる。
突合部摩擦攪拌工程は、図7〜図9に示すように、突合せ部J1に対して摩擦攪拌接合を行う工程である。図7に示すように、突合部摩擦攪拌工程では、まず、架台5,5に第一金属部材1及び第二金属部材2を配置する。より詳しくは、突合部摩擦攪拌工程では、離間して配置された架台5,5の間に第二金属部材2を挿入して、架台5,5に第一金属部材1の裏面1aを当接させる。架台5,5は、いずれも直方体を呈する。架台5,5のうち、第一内隅S11及び第二内隅S12に対向する部位に面取り部5a,5aが形成されている。面取り部5aの形状は、塑性化領域W11,W12に当接しないように適宜形成すればよく、本実施形態ではC面取り形状になっている。
突合部摩擦攪拌工程は、図8及び図9に示すように、第一金属部材1の表面1bから接合用回転ツールFを挿入して、突合せ部J1に沿って摩擦攪拌接合する工程である。接合用回転ツールFは、内隅摩擦攪拌工程で用いた物と同じであってよく、例えば工具鋼で形成されており、連結部F1と、攪拌ピンF2とで構成されている。なお、攪拌ピンF2は、先細りになっており、攪拌ピンF2の長さは、第一金属部材1の凹溝3(図1参照)が形成された部分の板厚よりも大きくなっている。
突合部摩擦攪拌工程では、第一金属部材1に回転した攪拌ピンF2のみを挿入し、第一金属部材1と連結部F1とは離間させつつ移動させる。言い換えると、攪拌ピンF2の基端部は露出させた状態で突合せ部J1をなぞるようにして摩擦攪拌接合を行う。接合用回転ツールFの移動軌跡には摩擦攪拌された金属が硬化することにより塑性化領域W13が形成される。
接合用回転ツールFの挿入深さは、攪拌ピンF2の先端が突合せ部J1に達するように設定することが好ましい。つまり、接合用回転ツールFを第一金属部材1及び第二金属部材2に接触させて摩擦攪拌接合を行うことが好ましい。攪拌ピンF2の先端が、突合せ部J1に達しないように設定する場合、つまり、攪拌ピンF2を第一金属部材1のみに接触させる場合は、第一金属部材1と攪拌ピンF2との摩擦熱によって突合せ部J1の周囲の金属が塑性流動化して第一金属部材1と第二金属部材2とが接合するようにする。なお、摩擦攪拌工程が終了したら、第一金属部材1の表面1bに発生したバリを除去するバリ除去工程を行うことが好ましい。これにより、図10に示すように、第一金属部材1の表面1bをきれいに仕上げることができる。
なお、補助部材配置工程は、図2に示すように、第一内隅S11、第二内隅S12の第一金属部材1側に寝かせるようにして補助部材11,12を配置(横置き)していたが、少なくとも何れか一方の補助部材11,12を第二金属部材2側に立てかけるようにして配置(縦置き)してもよい。例えば、図11に示すように、第二金属部材2の側面2bと補助部材12の裏面12aとを面接触させるとともに、端部12cを第一金属部材1の裏面1aに当接させる。その場合においても、内隅摩擦攪拌工程では、補助部材11,12側にバリが発生するように接合条件を設定するのがよい。このようにすることで、例えば、第一内隅S11と第二内隅S12とを同じ接合条件で摩擦攪拌接合を行うことが可能になる。
また、図3に示す内隅摩擦攪拌工程において、第一金属部材1および第二金属部材2の手前側または奥側に図示しないタブ材を密接した状態で配置し、タブ材に接合用回転ツールFを一旦挿入してから、挿入した状態のまま第一金属部材1および第二金属部材2側へ相対移動させて第一内隅S11および第二内隅S12を摩擦攪拌接合してもよい。同様に、図8に示す突合部摩擦攪拌工程において、第一金属部材1および第二金属部材2の手前側または奥側に図示しないタブ材を密接した状態で配置し、タブ材に接合用回転ツールFを一旦挿入してから、挿入した状態のまま第一金属部材1および第二金属部材2側へ相対移動させて突合せ部J1を摩擦攪拌接合してもよい。接合用回転ツールFを離脱させる場合も同様である。
以上説明した第一実施形態に係る接合方法によれば、第一内隅S11および第二内隅S12に補助部材11,12を配置し、補助部材11,12を介して第一内隅S11、第二内隅S12の摩擦攪拌接合を行う。これにより、補助部材11,12によって第一内隅S11、第二内隅S12の金属不足を解消できるので、接合不良を防ぐことができる。
また、第一実施形態に係る接合方法によれば、第一内隅S11、第二内隅S12に摩擦攪拌接合を行っているので、突合部摩擦攪拌工程時における第一金属部材1及び第二金属部材2同士の位置ずれや離間を防ぐことができる。これにより、第一金属部材1及び第二金属部材2の位置ずれや離間に伴う接合不良の発生を防ぐことができる。
また、本実施形態の第一金属部材1には凹溝3が形成されているので、第一金属部材1の凹溝3が形成されている部分の板厚は、他の部分の板厚よりも薄い。したがって、本実施形態の突合部摩擦攪拌工程では、凹溝3が形成されない場合に比べて攪拌ピンF2を挿入する深さを浅くすることができるので、摩擦攪拌装置に大きな負荷がかからない状態で、突合せ部J1の摩擦攪拌接合を行うことができる。
また、本実施形態の内隅摩擦攪拌工程では、補助部材11,12側にバリVが発生するように接合条件を設定するので、補助部材11,12にバリV11,V12を集約することができる。その為、バリV11,V12を補助部材11,12ごと容易に除去することができる。
また、本実施形態の突合部摩擦攪拌工程では、接合用回転ツールFを用いて、攪拌ピンF2のみを第一金属部材1及び第二金属部材2(又は第一金属部材1のみ)に接触させた状態で摩擦攪拌接合を行っているので、摩擦攪拌装置に大きな負荷がかからない状態で、深い位置まで摩擦攪拌接合を行うことができる。したがって、接合用回転ツールFは、第一金属部材1の板厚が大きい場合に特に有利である。また、接合用回転ツールFは、ショルダ部を押し込む場合と比べて塑性化領域Wの幅を小さくできるため、第二金属部材2の板厚が薄い場合にも有利である。
また、本実施形態の架台5,5は、第一内隅S11および第二内隅S12に対向する部位に面取り部5a,5aが形成されている。第一金属部材1及び第二金属部材2を架台5に配置するときに、塑性化領域W11,W12と架台5とが干渉して第一金属部材1及び第二金属部材2が架台5から浮き上がってしまうおそれがあるが、本実施形態によれば、塑性化領域W11,W12と架台5とが干渉するのを防ぐことができる。
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る接合方法について説明する。第二実施形態に係る接合方法は、第一実施形態と同様に、突合せ工程と、補助部材配置工程と、内隅摩擦攪拌工程と、補助部材の除去工程と、突合部摩擦攪拌工程とを行う。図12に示すように、第二実施形態に係る接合方法では、突合部摩擦攪拌工程において、接合用回転ツールGを用いる点で第一実施形態と相違する。その他の工程である、突合せ工程、補助部材配置工程、内隅摩擦攪拌工程および補助部材の除去工程は、第一実施形態と同一であるため説明を省略する。
接合用回転ツールGは、例えば工具鋼で形成されており、円柱状のショルダ部G1と、ショルダ部G1から垂下する攪拌ピンG2とで構成されている。攪拌ピンG2の外周面には、螺旋溝が刻設されている。突合部摩擦攪拌工程では、接合用回転ツールGを第一金属部材1の表面1bに挿入しつつ突合せ部J1に沿って移動させる。また、突合部摩擦攪拌工程では、ショルダ部G1の下端面を第一金属部材1に数ミリ程度押し込んで摩擦攪拌を行う。攪拌ピンG2の挿入深さは、突合せ部J1が摩擦攪拌接合可能であれば特に制限されないが、図12に示すように、攪拌ピンG2の先端が突合せ部J1に達するように設定することが好ましい。つまり、接合用回転ツールGを第一金属部材1及び第二金属部材2に接触させて摩擦攪拌接合を行うことが好ましい。
攪拌ピンG2の先端が、突合せ部J1に達しないように設定する場合、つまり、攪拌ピンG2が第一金属部材1のみと接触する場合は、第一金属部材1と攪拌ピンG2との摩擦熱によって突合せ部J1の周囲の金属が塑性流動化して第一金属部材1と第二金属部材2とが接合するようにする。なお、ショルダ部G1の外径(直径)は、適宜設定してよいが、凹溝3(図1参照)の幅よりも小さく形成されているのがよい。
以上説明した第二実施形態に係る接合方法によれば、第一実施形態と略同等の効果を得ることができる。また、ショルダ部G1を第一金属部材1の表面1bに押し込んでいるので塑性流動材がショルダ部G1で押さえられ、バリを少なくすることができる。また、接合用回転ツールGの押し込み量を小さくすると、塑性化領域W13によって表面1bに発生する溝を小さくすることができるため、表面処理等が容易になり、第一金属部材1の表面1bをきれいに仕上げることができる。また、ショルダ部G1の外径(直径)を凹溝3の幅よりも小さく形成するので、接合用回転ツールGの攪拌ピンG2によって塑性流動化した材料が、第一金属部材1と第二金属部材2との第一内隅S11、第二内隅S12から飛び出ることを防止することができる。
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る接合方法について説明する。第三実施形態に係る接合方法は、第一実施形態と同様に、突合せ工程と、補助部材配置工程と、内隅摩擦攪拌工程と、補助部材の除去工程と、突合部摩擦攪拌工程とを行う。第三実施形態に係る接合方法では、図13に示すように、第一金属部材21、第二金属部材22及び第三金属部材23を正面視T字状に突き合わせて接合する点で第一実施形態と相違する。
第一金属部材21及び第三金属部材23は、板状の金属部材である。第一金属部材21及び第三金属部材23の材料は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、 マグネシウム、マグネシウム合金等の摩擦攪拌可能な金属から適宜選択される。第一金属部材21の裏面21a側の角部は、正面視矩形状に切り欠かれている。つまり、第一金属部材21の裏面21aには、底面21d及び側壁21eからなる凹部21fを有する。また、第三金属部材23の裏面23a側の角部は、正面視矩形状に切り欠かれている。つまり、第三金属部材23の裏面23aには、底面23d及び側壁23eからなる凹部23fを有する。後記するように、第一金属部材21と第三金属部材23とを突き合わせることで、凹部21f及び凹部23fによって凹溝24が形成される。なお、凹部21fと凹部23fとは、同等の寸法であることが好ましい。つまり、第一金属部材21と第三金属部材23とが突き合わされた状態において、第一金属部材21の底面21dと第三金属部材23の底面23dとが面一になることが好ましい。
第二金属部材22は、板状の金属部材である。第二金属部材22の板厚寸法は、第二金属部材22が凹溝24に嵌合するように、凹溝24の幅と同等または凹溝24の幅よりも小さく設定されている。第二金属部材22の材料は、前記した摩擦攪拌可能な金属から適宜選択すればよいが、第一金属部材21及び第三金属部材23と同等の材料であることが好ましい。
突合せ工程では、第一金属部材21の凹部21fが形成された側の端面21cと第三金属部材23の凹部23fが形成された側の端面23cとを突き合わせて第一突合せ部J21を形成する。第一金属部材21及び第三金属部材23が突き合わされた状態で、第一金属部材21及び第三金属部材23の裏面21a,23a(第一突合せ部J21周辺)には、断面矩形の凹溝24が形成される。凹溝24は、第一金属部材21及び第三金属部材23の延長方向に延設される。
また、突合せ工程では、第一突合せ部J21に第二金属部材22の端面22cを突き合わせて第二突合せ部J22(図14参照)を形成する。つまり、第一金属部材21の裏面21a及び第三金属部材23の裏面23aに形成される凹溝24に対して、第二金属部材22の端面22cを突き合わせる。これにより、第二金属部材22の両側には、第一内隅S21(図14参照)及び第二内隅S22(図14参照)が形成される。第一内隅S21は、第一金属部材21の裏面21aと第二金属部材22の側面22aとで構成される隅部である。第二内隅S22は、第三金属部材23の裏面23aと第二金属部材22の側面22bとで構成される隅部である。
補助部材配置工程は、図14に示すように、第一金属部材21および第二金属部材22の第一内隅S21および第三金属部材23および第二金属部材22の第二内隅S22に補助部材11,12を配置する工程である。補助部材11,12は、板状の金属部材である。補助部材11,12は、本実施形態では、第一金属部材21、第二金属部材22および第三金属部材23と同じ材料で形成されている。
補助部材配置工程では、図14に示すように、第一金属部材21の裏面21aと補助部材11の表面11bとを面接触させるとともに、端部11cを第二金属部材22の側面22aに当接させる。また、第二金属部材22の側面22bと補助部材12の裏面12aとを面接触させるとともに、端部12cを第三金属部材23の裏面23aに当接させる。なお、補助部材11,12の端部11c,12cの形状は、第一金属部材21と第二金属部材22と第三金属部材23との突き合わせ角度(内角)に応じて、側面22aや裏面23aと隙間なく当接するように形成されるのがよい。補助部材11,12は、第二突合せ部J22の延長方向を覆う長さで形成されている。補助部材11,12の板厚は、後記する内隅摩擦攪拌工程の際に金属不足が発生しない程度の厚さに設定する。なお、第一実施形態と同様に、第二内隅S22の第三金属部材23側に寝かせるようにして補助部材12を配置(横置き)してもよいし、また、第一内隅S21の第二金属部材22側に補助部材11を立てかけるようにして配置(縦置き)してもよい。
内隅摩擦攪拌工程は、図15に示すように、第一金属部材21、第二金属部材22および第三金属部材23によって形成される第一内隅S21および第二内隅S22を摩擦攪拌接合する工程である(図15では第一内隅S21側の摩擦攪拌接合のみを図示している)。第一内隅S21側の摩擦攪拌接合では、図15に示すように、第二金属部材22の側面22aと補助部材11の端部11cとが当接する部分に回転する接合用回転ツールFを挿入して行う。また、第二内隅S22側の摩擦攪拌接合では、第三金属部材23の裏面23aと補助部材12の端部12cとが当接する部分に回転する接合用回転ツールFを挿入して行う。接合用回転ツールFは、特許請求の範囲の「回転ツール」に相当する。
第一内隅S21側の摩擦攪拌接合では、図15に示すように、第二金属部材22の側面22aと補助部材11の端部11cとが当接する部分に右回転させた攪拌ピンF2を浅く挿入し、図15の手前側から奥側に向けて第一内隅S21に沿って接合用回転ツールFを相対移動させる。つまり、第一内隅S21側の摩擦攪拌接合では、攪拌ピンF2の基端側は露出させた状態で、攪拌ピンF2のみを第一金属部材21、第二金属部材22及び補助部材11に接触させて摩擦攪拌を行う。これにより、接合用回転ツールFの移動軌跡には、線状の塑性化領域W21が形成される。
一方、第二内隅S22側の摩擦攪拌接合では、第三金属部材23の裏面23aと補助部材12の端部12cとが当接する部分に右回転させた攪拌ピンF2を浅く挿入し、図15の手前側から奥側に向けて第二内隅S22に沿って接合用回転ツールFを相対移動させる。つまり、第二内隅S22側の摩擦攪拌接合では、攪拌ピンF2の基端側は露出させた状態で、攪拌ピンF2のみを第二金属部材22、第三金属部材23及び補助部材12に接触させて摩擦攪拌を行う。これにより、接合用回転ツールFの移動軌跡には、線状の塑性化領域W22(図17参照)が形成される。
内隅摩擦攪拌工程では、連結部F1が第二金属部材22の側面22aや側面22bに干渉しないように、接合用回転ツールFを第二金属部材22に対して傾斜させた状態で摩擦攪拌接合を行う。攪拌ピンF2の挿入角度や挿入距離は、第一金属部材21、第二金属部材22及び第三金属部材23を接合できるように適宜設定すればよい。なお、本実施形態では鉛直面(第二金属部材22の側面22a,22b)に対して接合用回転ツールFの回転中心軸を45°傾けている(図16参照)。
また、内隅摩擦攪拌工程では、補助部材11,12側にバリが発生するように接合条件を設定するのがよい。バリが発生する位置は、接合条件によって異なる。当該接合条件とは、接合用回転ツールFの回転速度、回転方向、移動速度(送り速度)、進行方向、攪拌ピンF2の傾斜角度(テーパー角度)、被接合金属部材(第一金属部材21、第二金属部材22、第三金属部材23及び補助部材11,12)の材質、被接合金属部材の厚さ等の各要素とこれらの要素の組合せで決定される。
本実施形態では、接合用回転ツールFの回転速度を速く設定しているため、第一内隅S21側の摩擦攪拌接合では、塑性化領域W21外のフロー側である補助部材11にバリV21が多く発生する傾向にある(図16参照)。また、図示は省略するが、第一内隅S21側の摩擦攪拌接合と同じ理由により、第二内隅S22側の摩擦攪拌接合においても、塑性化領域W22外のフロー側である補助部材12にバリV22が多く発生する傾向にある。なお、接合用回転ツールFの接合条件、および補助部材11,12の配置位置は、ここで説明したものに限定されるものではなく適宜設定すればよい。
このようにして、バリV21,V22が発生する側又はバリV21,V22が多く発生する側が補助部材11,12側となるように接合条件を設定すれば、図17に示すように、補助部材11,12にバリV21,V22を集約することができる。その為、後記する除去工程を容易に行うことができるため好ましい。また、接合用回転ツールFの回転速度を速く設定することにより、接合用回転ツールFの移動速度(送り速度)を高めることができる。これにより、接合サイクルを短くすることができる。
補助部材の除去工程は、図17に示すように、第一金属部材21、第二金属部材22又は第三金属部材23から補助部材11,12を除去する工程である(ここでは、第一金属部材21から補助部材11を除去すると共に第二金属部材22から補助部材12を除去する場合を説明する)。本実施形態の除去工程では、補助部材11の端部11dや補助部材12の端部12dを図17の太線矢印方向にめくり上げて、塑性化領域W21,W22との境界部分を折り曲げるようにして切除する。除去工程は、切削工具等を用いてよいが、本実施形態では手作業で除去している。補助部材11,12には、バリV21,V22が形成されているので、補助部材11,12と共にバリV21,V22も一緒に除去される(図18参照)。その為、バリV21,V22を補助部材11,12ごと容易に除去することができる。
突合部摩擦攪拌工程は、図19〜図21に示すように、第一突合せ部J21及び第二突合せ部J22に対して摩擦攪拌接合を行う工程である。図19に示すように、第一実施形態と同じ要領で、まず、架台5,5に第一金属部材21、第二金属部材22及び第三金属部材23を配置する。より詳しくは、突合部摩擦攪拌工程では、離間して配置された架台5,5の間に第二金属部材22を挿入して、架台5,5に第一金属部材21の裏面21aおよび第三金属部材23の裏面23aを当接させる。架台5,5は、いずれも直方体を呈する。架台5,5のうち、第一内隅S21および第二内隅S22に対向する部位に面取り部5a,5aが形成されている。面取り部5aの形状は、塑性化領域W21,W22に当接しないように適宜形成すればよく、本実施形態ではC面取り形状になっている。
突合部摩擦攪拌工程は、図20及び図21に示すように、第一金属部材21の表面21b及び第三金属部材23の表面23bから接合用回転ツールFを挿入して、第一突合せ部J21に沿って摩擦攪拌接合する工程である。接合用回転ツールFは、内隅摩擦攪拌工程で用いた物と同じであってよく、例えば工具鋼で形成されており、連結部F1と、攪拌ピンF2とで構成されている。なお、攪拌ピンF2は、先細りになっており、攪拌ピンF2の長さは、第一金属部材21及び第三金属部材23により形成される凹溝24(図13参照)が形成された部分の板厚よりも大きくなっている。
突合部摩擦攪拌工程では、第一金属部材21及び第三金属部材23で形成される第一突合せ部J21に回転した攪拌ピンF2のみを挿入し、第一金属部材21及び第三金属部材23と連結部F1とは離間させつつ移動させる。言い換えると、攪拌ピンF2の基端部は露出させた状態で第一突合せ部J21をなぞるようにして摩擦攪拌接合を行う。接合用回転ツールFの移動軌跡には摩擦攪拌された金属が硬化することにより塑性化領域W23が形成される。
接合用回転ツールFの挿入深さは、攪拌ピンF2の先端が第二突合せ部J22に達するように設定することが好ましい。つまり、接合用回転ツールFを第一金属部材21、第二金属部材22及び第三金属部材23に接触させて摩擦攪拌接合を行うことが好ましい。攪拌ピンF2の先端が、第二突合せ部J22に達しないように設定する場合、つまり、攪拌ピンF2を第一金属部材21及び第三金属部材23のみに接触させる場合は、第一金属部材21及び第三金属部材23と攪拌ピンF2との摩擦熱によって第二突合せ部J22の周囲の金属が塑性流動化して第一金属部材21、第二金属部材22及び第三金属部材23が接合するようにする。なお、摩擦攪拌工程が終了したら、第一金属部材21及び第三金属部材23の表面21b,23bに発生したバリを除去するバリ除去工程を行うことが好ましい。これにより、第一金属部材21及び第三金属部材23の表面21b,23bをきれいに仕上げることができる。
なお、図15に示す内隅摩擦攪拌工程において、第一金属部材21、第二金属部材22及び第三金属部材23の手前側または奥側に図示しないタブ材を密接した状態で配置し、タブ材に接合用回転ツールFを一旦挿入してから、挿入した状態のまま第一金属部材21、第二金属部材22及び第三金属部材23側へ相対移動させて第一内隅S21および第二内隅S22を摩擦攪拌接合してもよい。同様に、図20に示す突合部摩擦攪拌工程において、第一金属部材21、第二金属部材22及び第三金属部材23の手前側または奥側に図示しないタブ材を密接した状態で配置し、タブ材に接合用回転ツールFを一旦挿入してから、挿入した状態のまま第一金属部材21、第二金属部材22及び第三金属部材23側へ相対移動させて第一突合せ部J21及び第二突合せ部J22を摩擦攪拌接合してもよい。接合用回転ツールFを離脱させる場合も同様である。
また、第三実施形態の突合部摩擦攪拌工程を、第二実施形態で説明した接合用回転ツールG(図12参照)を用いて行ってもよい。その場合、突合部摩擦攪拌工程では、ショルダ部G1の下端面を第一金属部材21及び第三金属部材23に数ミリ程度押し込んで摩擦攪拌を行う。攪拌ピンG2の挿入深さは、第一突合せ部J21および第二突合せ部J22が摩擦攪拌接合可能であれば特に制限されないが、攪拌ピンG2の先端が第二突合せ部J22に達するように設定することが好ましい。つまり、接合用回転ツールGを第一金属部材21、第二金属部材22及び第三金属部材23に接触させて摩擦攪拌接合を行うことが好ましい。
以上説明した第三実施形態に係る接合方法によれば、第一内隅S21および第二内隅S22に補助部材11,12を配置し、補助部材11,12を介して第一内隅S21、第二内隅S22の摩擦攪拌接合を行う。これにより、補助部材11,12によって第一内隅S21、第二内隅S22の金属不足を解消できるので、接合不良を防ぐことができる。
また、第三実施形態に係る接合方法によれば、第一内隅S21、第二内隅S22に摩擦攪拌接合を行っているので、突合部摩擦攪拌工程時における第一金属部材21及び第二金属部材22同士、並びに第三金属部材23及び第二金属部材22同士の位置ずれや離間を防ぐことができる。これにより、第一金属部材21、第二金属部材22及び第三金属部材23の位置ずれや離間に伴う接合不良の発生を防ぐことができる。
また、本実施形態の第一金属部材21には凹溝24を構成する凹部21fが形成されており、また、第三金属部材23には凹溝24を構成する凹部23fが形成されており、第一金属部材21の凹部21f及び第三金属部材23の凹部23fが形成されている部分の板厚は、他の部分の板厚よりも薄い。したがって、本実施形態の摩擦攪拌工程では、凹溝24が形成されない場合に比べて攪拌ピンF2を挿入する深さを浅くすることができるので、摩擦攪拌装置に大きな負荷がかからない状態で、第一突合せ部J21及び第二突合せ部J22の摩擦攪拌接合を行うことができる。
また、本実施形態の内隅摩擦攪拌工程では、補助部材11,12側にバリVが発生するように接合条件を設定するので、補助部材11,12にバリV21,V22を集約することができる。その為、バリV21,V22を補助部材11,12ごと容易に除去することができる。
また、本実施形態の突合部摩擦攪拌工程では、接合用回転ツールFを用いて、攪拌ピンF2のみを第一金属部材21、第二金属部材22及び第三金属部材23(又は第一金属部材21及び第三金属部材23のみ)に接触させた状態で摩擦攪拌接合を行っているので、摩擦攪拌装置に大きな負荷がかからない状態で、深い位置まで摩擦攪拌接合を行うことができる。したがって、接合用回転ツールFは、第一金属部材21及び第三金属部材23の板厚が大きい場合に特に有利である。また、接合用回転ツールFは、ショルダ部を押し込む場合と比べて塑性化領域Wの幅を小さくできるため、第二金属部材22の板厚が薄い場合にも有利である。
また、本実施形態の架台5,5は、第一内隅S21および第二内隅S22に対向する部位に面取り部5a,5aが形成されている。第一金属部材21、第二金属部材22及び第三金属部材23を架台5に配置するときに、塑性化領域W21,W22と架台5とが干渉して第一金属部材21、第二金属部材22及び第三金属部材23が架台5から浮き上がってしまうおそれがあるが、本実施形態によれば、塑性化領域W21,W22と架台5とが干渉するのを防ぐことができる。
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。