以下、図面を参照しながら本発明の各実施の形態について説明する。図面は例示であり、説明のために特徴部を誇張しており、実物とは異なる。なお、以下の各図において、同一部分には同一の符号を付している。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
(第1の実施の形態)
まず、第1の実施の形態について図1乃至図10を用いて説明する。
[インプリント装置]
図1は本実施の形態によるインプリント装置10を示す側面図であり、図2はインプリント装置10の平面図である。図1に示すように、本実施の形態によるインプリント装置10は、ステージ定盤11と、ステージ定盤11上に配置され、インプリント用の基材40を保持するとともに水平方向に移動可能なステージユニット12と、ステージユニット12の上方に配置された支持部13と、ステージユニット12の移動等を制御する制御部14と、制御部14から出力される情報を表示する表示部15と、を備えている。詳細は後述するが、基材40は平坦な表面及び平坦な裏面を有する平板状基板であり、本実施の形態において「水平方向」とは、基材40の表面に対して水平な方向を意味する。
支持部13には、ディスペンサヘッド16と、モールド保持部17と、軟X線型イオナイザ18と、軟X線センサ19とが、それぞれ取り付けられて固定されている。このうちモールド保持部17には、モールド50が保持されている。
また、本実施の形態よるインプリント装置10には、水平方向において一側から他側(本実施の形態においては、図中のX軸方向マイナス側からX軸方向プラス側)に向かう気流Fを形成する気流形成部20が設けられている。さらに、モールド保持部17の上方には、光(例えば紫外光)を、ディスペンサヘッド16から基材40の上に供給された被成形材料としての光硬化性樹脂組成物に向けて照射する照射部21が設けられている。なお、以上に説明した制御部14及び表示部15を除く各構成部材は、図示省略するチャンバ内に収容されている。また、以下の説明で用いる図において、X軸は水平面における一方向を示し、Z軸は鉛直方向を示し、Y軸はX軸及びZ軸に直交する方向を示している。
以下、インプリント装置10を構成する各要素について更に説明する。
図1に示すように、ステージユニット12は、ステージ定盤11上で水平方向に移動する移動ステージ12Aと、移動ステージ12A上に設けられ、インプリント用の基材40を保持する基材保持部(チャック)12Bと、を有している。移動ステージ12Aは、水平方向に沿って基材保持部12Bを移動させて、基材40を所定の位置に位置決めするものである。すなわち、基材保持部12Bは、移動ステージ12Aによって駆動され、移動ステージ12Aと一体となって水平方向に移動可能となっている。
図1においては、ステージユニット12の基材保持部12Bが、モールド保持部17の下方に移動され、基材40とモールド保持部17に保持されたモールド50とが鉛直方向に向き合うように位置決めされた状態が示されているが、ステージユニット12は、水平方向に移動して、例えばディスペンサヘッド16の下方に位置決めされることも可能となっている。
このようなステージユニット12における移動ステージ12Aは、基材40のXY方向位置の調整を行うほか、θ(Z軸周りの回転)方向の位置を調整(補正)する機能、基材40のZ軸方向の位置を調整する機能、及び基材40の傾きを調整する機能を有していてもよい。また、本実施の形態において、基材保持部12Bは、吸引による保持機構を用いて基材40を保持しているが、これに限らず、例えば、機械挟持による保持機構、静電気による保持機構等により基材40を保持してもよい。
インプリント用の基材40は、平坦な表面及び平坦な裏面を有する平板状基板からなっている。この基材40は、例えば、石英ガラス、珪酸系ガラス、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、アクリルガラス等のガラスや、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレン等の樹脂等、またはこれらの任意の積層材からなる透明基板等であってもよい。また、基材40として、ニッケル、チタン、アルミニウム等の金属基板、シリコン、窒化ガリウム等の半導体基板等も用いることができる。このような基材40は、例えばマスターテンプレートであるモールド50のレプリカを作製するためのレプリカブランクであってもよい。あるいは、基材40は、光学素子又は磁気記録媒体等であってもよい。なお、基材40の形状は、平板状基板に限らず、基板の表面に周囲より突出した段差構造が形成され、この段差構造の表面が平坦となる形状となっていてもよい。また、基材40の形状は、撓むことによってモールド50から剥離し易くなるように、基板の裏面の中央部分が厚み方向にくりぬかれ、当該中央部分の厚みが周囲よりも薄くなる形状となっていてもよい。
ディスペンサヘッド16は、基材保持部12Bに保持された基材40上に、例えばインクジェット式で被成形材料としての光硬化性樹脂組成物の液滴41(図4等参照)を吐出するものである。ディスペンサヘッド16には、当該ディスペンサヘッド16の所望の動作、例えば、水平方向移動等を可能とする駆動部、ディスペンサヘッド16への樹脂組成物供給部(共に図示省略)が設けられおり、本実施の形態では、これらディスペンサヘッド16、駆動部及び樹脂組成物供給部が制御部14によって制御されるようになっている。なお、ディスペンサヘッド16に所望の動作をさせることなく、ディスペンサヘッド16の下で、基材40を基材保持部12Bで固定した移動ステージ12Aによって移動させながら、光硬化性樹脂組成物を吐出させることにより所望のパターンに光硬化性樹脂組成物を塗付してもよい。
モールド保持部17は、その下方にステージユニット12の基材保持部12Bが移動され、基材40とモールド50とが鉛直方向に向き合うように位置決めされた際に、モールド50の凹凸構造51を有する面をステージユニット12方向に向けた状態で、モールド50を保持するものである。このモールド保持部17は、例えば、吸引による保持機構、機械挟持による保持機構、静電気による保持機構等によりモールド50を保持するものであり、保持機構の具体的構成には特に制限はない。
モールド保持部17には、高さ制御機構31が取り付けられており、これによりモールド50の高さ方向(Z軸方向)位置を制御ないし調整可能となっている。高さ制御機構31は、モールド50を下方向に移動させることによって、基材40上の光硬化性樹脂組成物にモールド50を接触させる。また、高さ制御機構31は、モールド50を上方向に移動させることによって、基材40上の光硬化性樹脂組成物からモールド50を剥離(離型)する。
図1においては、高さ制御機構31がモールド50を上方向に移動させ、光硬化性樹脂組成物からモールド50を離型させて、光硬化性樹脂組成物とモールド50とを離間させた状態が示されている。以下では、基材40上の光硬化性樹脂組成物から離間して、静止状態に保持されたときのモールド50の位置を「離型位置」と呼び、基材40上の光硬化性樹脂組成物と接触しているときのモールド50の位置を「接触位置」と呼ぶ。また、平面視において、ステージユニット12の基材保持部12B上に保持される基材40上の光硬化性樹脂組成物と、モールド保持部17に保持されるモールド50と、が接触される位置のことを、「転写位置TP」と呼ぶ。本実施の形態では、モールド保持部17が配置されている位置よりも内側であって、モールド保持部17がモールド50を保持している領域が、「転写位置TP」に対応している。
モールド50は、その下面の中央領域に形成された微細な凹凸構造51を有している。この凹凸構造51は、例えば電子線リソグラフィ法によって形成されたものである。本実施の形態において、モールド50は、照射部21からの光を透過する材料で構成され、例えば、石英ガラス、珪酸系ガラス、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、アクリルガラス等、あるいは、これらの任意の積層材からなる。モールド50は、基材40に転写すべき凹凸構造51が形成されたパターン面を有する。このモールド50は、モールド用基板の表面に電子線レジストを塗布し、電子線レジストに電子線描画を行ってレジストパターンを形成し、このレジストパターンをエッチングマスクとしてモールド用基板をエッチングして凹凸構造51を形成することで、製造されている。また、凹凸構造51は、電子線リソグラフィ以外の手法によって形成されもよく、例えばインプリント法によって形成されたものでもよい。
凹凸構造51は、図中では概略的に示されているが、凹凸構造51の凸部の高さ(凹部の深さ)、ピッチ、数、配置面積(モールド50の主面に対する凹凸構造51の占有面積)、形状(ライン形状、ドット形状(モスアイ状)等)は、特に限定されるものではなく、製造の対象となる基材に応じて適宜設定され得る。また、凹凸構造51の寸法は、特に限定されるものではないが、例えば、凸部の幅が40nm以下、好ましく10〜30nmであり、隣接する凸部の間の間隔は、40nm以下、好ましく10〜30nmである。なお、基材40がレプリカテンプレート作製用のレプリカブランクである場合、モールド50は、レプリカテンプレートを作製するためのマスターテンプレートであってもよい。
照射部21は、基材40の上に供給(塗布)された光硬化性樹脂組成物に光を照射する。本実施の形態では、基材40の上に供給される樹脂組成物は光硬化性樹脂組成物であるため、かかる光硬化性樹脂組成物は照射部21からの光の照射によって硬化する。なお、モールド保持部17には、照射部21からの光を通過させる開口が設けられている。
気流形成部20は、上述したように、水平方向において、すなわちX軸方向において一側から他側(本実施の形態においては、図1のX軸方向マイナス側からX軸方向プラス側)に向かう気流Fを形成するものであり、この気流Fを転写位置TPに供給するようになっている。すなわち、気流Fは、気流形成部20から転写位置TPに向かう気流である。より詳しくは、気流形成部20は、モールド保持部17の下方にステージユニット12の基材保持部12Bが移動され、基材40とモールド50とが鉛直方向に向き合うように位置決めされた際に、転写位置TPに位置付けられた基材40及びモールド50に向けて側方から水平方向に沿って流れる気流Fを供給するようになっている。
気流形成部20は、平面視で、モールド保持部17に対してディスペンサヘッド16の反対側に配置されている。気流形成部20は、チャンバ内をパーティクル等の異物の影響を除いた良好な転写環境にするものであり、例えば清浄な空気(クリーンエア)からなる気流Fを送り込むものであってもよい。なお、クリーンエアとしては、外気を取り込んだものであってもよく、例えば、フィルターを通した外気を用いることが好ましい。
また、図1及び図2に示すように、本実施の形態においては、ディスペンサヘッド16が、気流Fの流れ方向で、モールド保持部17の下流側(X軸方向プラス側)に配置されている。これにより、ディスペンサヘッド16で発生したパーティクル等の異物が、気流Fによってモールド50側へ運ばれることを防止し、異物がモールド50に付着することを防止している。なお、本明細書中、「部材Aが、気流の流れ方向で、部材Bの下流側に配置される」とは、「部材Aのうち気流の流れ方向で最も上流側に位置する部分が、部材Bのうち気流の流れ方向で最も下流側に位置する部分よりも、下流側に配置される」ことを意味する。
また、この場合、図1に示すように、モールド保持部17とディスペンサヘッド16とは、気流Fの流れ方向で、一直線状に並んで配置されていることが好ましい。これにより、ステージユニット12は、後述する接触工程より前の各工程の間、気流Fの上流に向かって遡る方向に移動し、モールド50の下方を通過することがない。この結果、ステージユニット12の影響によってパーティクル等の異物がモールド50に付着することが防止される。
軟X線型イオナイザ18は、軟X線を照射する装置であって、モールド除電用に、特にモールド50及び基材40に帯電した静電気を除電するために設けられている。軟X線型イオナイザ18は、図1及び図2に示すように、平面視において、転写位置TPとは重ならないよう、配置されている。
軟X線型イオナイザ18は、内部に配置される軟X線発生源18Sから照射面を介して放射状に拡がるように軟X線を照射する。ここで、本実施の形態における軟X線型イオナイザ18は、放射状に拡がるように照射される軟X線の中心を通る照射中心軸L1(図1及び図2参照)が水平方向に沿うように配置されている。
軟X線型イオナイザ18は、図1に示すように、基材40とモールド50とが鉛直方向に向き合う状態で基材40とモールド50との間に間隙Sが形成された際に、当該間隙Sに、水平方向に沿った軟X線を照射可能となっている。言い換えると、軟X線型イオナイザ18は、間隙Sを通過するように軟X線を水平方向に沿って照射可能となっている。本実施の形態において、上述の間隙Sは、モールド50を基材40上の光硬化性樹脂組成物に接触させて硬化させた後、光硬化性樹脂組成物からモールド50を離型させ光硬化性樹脂組成物とモールド50とを離間させた「離型位置」において、基材40とモールド50との間に形成される間隙のことを意味する。
上述の間隙Sに軟X線を水平方向に沿って照射可能とするために、図1に示すように、本実施の形態における軟X線型イオナイザ18は、昇降装置18Aを介して支持部13に支持され、その鉛直方向の位置を調整可能となっている。これにより、インプリント装置10においては、基材40及びモールド50と軟X線型イオナイザ18との鉛直方向における相対位置が調整可能となっている。
上述の構成によれば、上述の間隙Sが形成された際に軟X線型イオナイザ18からの軟X線が間隙Sを通過するように、予め軟X線型イオナイザ18の位置を調整したり、上述の間隙Sが形成された後、間隙Sを軟X線が所望の状態で通過しない場合に、軟X線型イオナイザ18の鉛直方向の位置を調整したりすることができる。これにより、軟X線型イオナイザ18は、間隙Sを通過するように軟X線を水平方向に沿って照射可能となっている。より詳しくは、図2に示すように、本実施の形態における軟X線型イオナイザ18は、照射中心軸L1上の軟X線が間隙Sを通過し、且つ平面視における基材40とモールド50の略中央を通過するように軟X線を照射可能となっている。なお、上述の略中央とは、転写位置TPに位置付けられた基材40とモールド50との平面視における中央又は中央の近傍領域を意味する。ここで、中央の近傍領域とは、平面視におけるモールド50の中央からの放射方向で、モールド50の外縁よりもモールド50の中央に近い側に位置付けられる領域を意味する。また、本実施の形態では、軟X線が基材40とモールド50との略中央を通過するように軟X線を照射可能となっているが、軟X線型イオナイザ18は、軟X線が基材40とモールド50の略中央から外れた位置で間隙Sを通過するように配置されてもよい。
また、図2に示すように、この例において、軟X線型イオナイザ18は、気流Fの流れ方向で、基材40及びモールド50、すなわち転写位置TPの上流側で且つ気流形成部20の下流側に配置されている。この場合、基材40及びモールド50の上流側で生成されたイオンが、気流Fによって気流Fの下流側に流されるので、モールド50及び基材40を効果的に除電することができる。
また、図2に示すように、基材40とモールド50とが鉛直方向に向き合うように位置決めされた際に、軟X線型イオナイザ18は、気流Fの流れ方向に沿って見た場合に、Y軸方向のプラス側に配置され、且つ、気流形成部20と基材40及びモールド50とが重なる二点鎖線で示す領域T1の外側に配置されている。図示の例において、領域T1は、気流形成部20から転写位置TPへ向かう気流Fが存在する領域を示している。気流Fは、平面視において、領域T1で示される範囲に設定される通流経路上を流れる。つまり、本実施の形態では、軟X線型イオナイザ18が、気流Fの通流経路上に配置されていない。より詳しくは、軟X線型イオナイザ18は、上述の通流経路のうちの気流形成部20から基材40及びモールド50に直線的に向かう気流Fが通過する範囲に配置されていない。この場合、軟X線型イオナイザ18が、基材40及びモールド50に向かう気流Fの流れを乱すことが抑制されるため、上流側で生成されたイオンによるモールド50及び基材40の除電効果が低下することを抑制することができる。また、気流Fの通流経路上に軟X線型イオナイザ18が配置されないことで、軟X線型イオナイザ18からの発塵が生じた場合でも、モールド50等の汚染を抑制できる。
また、図2に示すように、本実施の形態によるインプリント装置10においては、ディスペンサヘッド16と軟X線型イオナイザ18との間に、軟X線型イオナイザ18から照射された軟X線を遮る遮蔽部材33が配置されている。この遮蔽部材33は、金属材料又は塩化ビニル樹脂等の樹脂材料からなっていてもよい。このように遮蔽部材33を設けたことにより、軟X線型イオナイザ18からの軟X線の影響によってディスペンサヘッド16から供給される光硬化性樹脂組成物が変質してしまう不具合を防止することができる。
次に図1及び図2に示すように、軟X線センサ19は、基材40とモールド50とが鉛直方向に向き合うように位置決めされた際に、基材40とモールド50を挟んで軟X線型イオナイザ18とは反対側に位置し、具体的には、平面視で、Y軸方向のマイナス側であって、基材40とモールド50の略中央を挟んで軟X線型イオナイザ18と対向する位置に位置している。すなわち、本実施の形態では、平面視において、転写位置TPを挟んで、一方の側に軟X線型イオナイザ18が配置され、他方の側に軟X線センサ19が配置されている。軟X線センサ19は、軟X線型イオナイザ18からの軟X線を検出し、その強度を検出する。なお、軟X線型イオナイザ18と軟X線センサ19の平面視上の位置は、各々、調整可能となっていてもよく、軟X線型イオナイザ18と軟X線センサ19は、実際にインプリントをする際に、所望の配置位置に配置できればよい。なお、軟X線センサ19は、その軟X線の検出面の中央を軟X線型イオナイザ18からの軟X線の照射中心軸L1が通るように配置されることが好ましく、本実施の形態における軟X線センサ19は、その検出面の中央を軟X線型イオナイザ18からの軟X線の照射中心軸L1が通るように配置されている。しかしながら、軟X線センサ19の配置は、適正に軟X線を検出可能であれば、このような配置に限られるものでない。
図1に示すように、本実施の形態における軟X線センサ19は、昇降装置19Aを介して支持部13に支持され、その鉛直方向の位置を調整可能となっている。これにより、インプリント装置10においては、基材40及びモールド50と、軟X線型イオナイザ18と、軟X線センサ19との鉛直方向における相対位置が調整可能となっている。
制御部14は、本実施の形態において、ステージユニット12、ディスペンサヘッド16、モールド保持部17、軟X線型イオナイザ18、及び表示部15の各種動作を制御するようになっている。具体的に、制御部14は、ステージユニット12を移動させて、ディスペンサヘッド16の下方に位置決めする制御や、基材40とモールド50とが鉛直方向に向き合うように位置決めする制御を行うことが可能となっている。また、制御部14は、ステージユニット12がディスペンサヘッド16の下方に位置決めされた際に基材40上に光硬化性樹脂組成物を吐出する制御や、基材40とモールド50とが鉛直方向に向き合うように位置決めされた際に、モールド保持部17を高さ制御機構31によって上下移動させる制御等を行うことが可能となっている。
また、制御部14は、軟X線型イオナイザ18の軟X線の照射及び停止の切換や、昇降装置18Aによる軟X線型イオナイザ18の位置調整等の制御も行うことが可能となっている。とりわけ、制御部14は、モールド保持部17においてモールド50の近傍に配置された電位センサ34からモールド50の電位を出力され、電位センサ34によって検出された電位が所定値以下となった場合に、軟X線型イオナイザ18による軟X線の照射を停止するようになっている。
さらに、本実施の形態において、制御部14は、軟X線型イオナイザ18から間隙Sを通過するように照射された軟X線の強度を軟X線センサ19から出力され、軟X線センサ19によって検出された強度が所定値以下である場合に、警告を表示部15にて通知するようにもなっている。ここで、本発明でいう通知手段は、上述のように警告を通知する処理を行う制御部14及び表示部15に対応する。
また、本実施の形態では、制御部14の制御により、上述の間隙S、軟X線型イオナイザ18が軟X線を水平方向に沿って照射する照射位置、及び軟X線センサ19の検出面の各々の鉛直方向の位置が、水平面上に並ぶように、ステージユニット12、モールド保持部17、軟X線型イオナイザ18及び軟X線センサ19の鉛直方向の相対位置を自動で調整することも可能となっている。
具体的に本実施の形態においては、間隙Sが形成された状態において、軟X線型イオナイザ18が軟X線を照射し、この軟X線の強度を軟X線センサ19で検出して、軟X線センサ19で検出した強度が所定値以上となるように、軟X線型イオナイザ18の鉛直方向の位置を調整することにより、間隙S、軟X線型イオナイザ18の上述の照射位置、及び軟X線センサ19の検出面の各々の鉛直方向の位置が、水平面上に並ぶように、自動で調整することができる。ここで、本発明でいう位置調整機構は、制御部14、および制御部14によって制御される軟X線型イオナイザ18及び軟X線センサ19の鉛直方向の位置を調整可能な部材に対応する。
なお、本実施の形態では、制御部14が、上述で例示した複数の要素を制御可能となっているが、制御部14は、これら全てを必ずしも制御しなくてもよいし、ここで例示した要素以外の要素に対する制御を行うように構成されてもよい。
[インプリント方法]
次に、上述したインプリント装置10を用いてインプリントを行うインプリント方法について、図3乃至図10を参照して説明する。図3は、本実施の形態によるインプリント方法を示すフローチャートであり、図4乃至図9はそれぞれ本実施の形態によるインプリント方法の一工程を示す側面図であり、図10は、インプリント方法の一工程のうちの後述する軟X線の検出工程を説明するグラフを示した図である。
図3に示すフローチャートにおいては、まず、ディスペンサヘッド16の下方及びモールド保持部17の下方とは異なる図示しない領域(ロード領域)において、ステージユニット12の基材保持部12B上に基材40を保持する工程(基材保持工程、図3のS101)が行われる。
次いで、図4に示すように、ステージユニット12を移動することにより、基材40をディスペンサヘッド16の下方に移動し、基材保持部12Bに保持された基材40に、ディスペンサヘッド16から光硬化性樹脂組成物の液滴41を吐出して配置する(材料配置工程、図3のS102)。この材料配置工程S102では、ディスペンサヘッド16の下方位置にある基材40上の所望の領域に、ディスペンサヘッド16から光硬化性樹脂組成物の液滴41を吐出して供給する。
なお、光硬化性樹脂組成物は、一般に主剤、開始剤、架橋剤により構成され、また、必要に応じて、モールド50との付着を抑制するための離型剤や、基材40との密着性を向上させるための密着剤を含有している。本実施の形態で使用する光硬化性樹脂組成物には特に制限はなく、公知の光硬化性樹脂組成物から、インプリントで製造するパターン構造体の用途、要求される特性、物性等に応じて適宜選択することができる。また、ディスペンサヘッド16から基材40上に供給される光硬化性樹脂組成物の液滴41の個数、隣接する液滴41同士の距離は、個々の液滴41の滴下量、必要とされる光硬化性樹脂組成物の総量、基材40に対する光硬化性樹脂組成物の濡れ性、後工程である接触工程におけるモールド50と基材40との間隙等から適宜設定することができる。
また、本実施の形態においては、気流形成部20によって気流Fが形成されている。これにより、ディスペンサヘッド16から基材40上に吐出された液滴41からの揮発成分やミストが、モールド50側へ拡散してモールド50等に付着することが防止される。
次いで、図5に示すように、ステージユニット12をX軸方向マイナス側に移動することにより、基材40をモールド保持部17に保持されたモールド50の下方に移動し、基材40とモールド50とが鉛直方向に向き合うように位置決めする(位置決め工程、図3のS103)。
その後、図6に示すように、モールド50と基材40とを近接させて接触させることにより、モールド50と基材40との間に液滴41を展開して転写層42を形成する(接触工程、図3のS104)。この接触工程S104においては、高さ制御機構31によってモールド保持部17が下降して接触位置に移行し、モールド保持部17と基材保持部12Bとが近接する。これにより、モールド50と基材40とが近接し、モールド50と基材40との間に光硬化性樹脂組成物の液滴41が展開され、転写層42が形成される。
次いで、照射部21からの光によって光照射を行い、転写層42を硬化させる。これにより、転写層42にモールド50の凹凸構造51が転写される(硬化工程、図3のS105)。この硬化工程S105においては、モールド保持部17が下降した状態で、モールド保持部17の上方に位置する照射部21から光照射を行う。これにより転写層42を光硬化させて、モールド50の凹凸構造51が転写された転写層42が得られる。
その後、図7に示すように、硬化された転写層42とモールド50とを引き離す(離型工程、図3のS106)。この離型工程S106においては、高さ制御機構31によってモールド保持部17が上昇して離型位置に移行することにより、転写層42とモールド50とが離間した状態となる。これにより、基材40上に凹凸パターン構造を有する転写層42が固定される。また、ここで、基材40とモールド50との間には、間隙Sが形成される。
このとき、図7に示すように、間隙Sに水平方向に沿った軟X線を軟X線型イオナイザ18から照射する(除電工程、図3のS107)。なお、厳密にいうと、ここでは、基材40上の転写層42とモールド50との間を水平方向に沿う軟X線が通過するように、軟X線型イオナイザ18から軟X線が照射される。モールド50及び基材40は離型時の剥離帯電により帯電する場合がある。除電工程においては、軟X線型イオナイザ18からの軟X線が間隙Sの間に存在する分子をイオン化し、生成されたイオンがモールド50及び基材40に帯電した静電気を除電する。これにより、モールド50及び基材40に異物が付着することを防止することができる。このような軟X線型イオナイザ18を用いた場合、発塵することがなく、安定した除電性能を得ることができる。
ここで、本実施の形態においては、除電工程の際に、照射中心軸L1に沿って照射される軟X線が間隙Sを通過するように、基材保持工程S101の前に軟X線型イオナイザ18の鉛直方向の位置が予め調整されている(照射位置予備調整工程)。この照射位置予備調整工程の詳細は、図9を用いて後述する。なお、本実施の形態では、離型工程S106の後に、除電工程S107が行われるが、除電工程S107を開始するタイミングは、離型開始と同時であってもよいし、離型の途中であってもよいし、離型が完了した後であってもよい。
そして、除電工程が開始されると、軟X線型イオナイザ18からの軟X線を軟X線センサ19によって検出する(検出工程、図3のS108)。検出工程においては、軟X線センサ19によって検出された軟X線の強度が制御部14に出力される。また、本実施の形態では、検出工程の際に、軟X線センサ19が間隙Sを通過する軟X線を検出可能となるように、基材保持工程S101の前に軟X線センサ19の鉛直方向の位置が予め調整されている(センサ位置予備調整工程)。このセンサ位置予備調整工程の詳細は、図8を用いて後述する。
次いで、軟X線センサ19によって検出された軟X線の強度が所定値以上であるか否かが、制御部14によって判定される(判定工程、図3のS109)。ここで、軟X線の強度が所定値以上である場合には、制御部14が、電位センサ34の検出した電位に基づき電位が所定値以下になったか否かを確認する(電位確認工程、図3のS110)。電位確認工程にて、電位が所定値よりも大きい場合には、検出工程S108に戻り、電位が所定値以下になった場合には、軟X線型イオナイザ18による軟X線の照射を停止し(照射停止工程、図3のS112)、インプリントが終了する。
一方、判定工程S109において、軟X線の強度が所定値よりも小さい場合には、警告を表示部15にて通知する(通知工程、図3のS111)。その後、制御部14は、軟X線型イオナイザ18による軟X線の照射を停止し(照射停止工程、図3のS112)、インプリントが終了する。
ここで、図10は、検出工程における軟X線の強度の検出の様子の一例が示されている。本実施の形態における軟X線センサ19は、軟X線の強度を電圧として検出する。図10の例においては、間隙Sが2mmである場合の検出の様子が示されている。横軸は、間隙Sの中間に対する軟X線型イオナイザ18(照射位置)のずれ量を示し、縦軸は、軟X線の強度に応じて検出される電圧と、ある電圧に帯電したモールド50を所定の電圧まで降圧するように除電する際の軟X線の強度に応じたモールド50の除電時間とを示している。横軸においては、間隙Sの中間が基準点(0)となっており、基準点からのずれ量が大きいほど、間隙Sの中間に対して軟X線型イオナイザ18の照射位置のずれ量が大きいことを示している。また、図10では、間隙Sの中間に対する軟X線型イオナイザ18のずれ量ごとの軟X線センサ19の検出強度(電圧)を実線で結び、軟X線の強度に応じたモールド50の除電時間を一点鎖線で結んでいる。
図10の実線に示すように、間隙Sの中間と軟X線型イオナイザ18の照射位置とが合致している場合には、軟X線センサ19が検出する強度(電圧)は最大値Vmaxとなる。この場合には、一点鎖線に示すように除電時間も最短となる。これに対して、間隙Sの中間と軟X線型イオナイザ18の照射位置とのずれ量が大きいほど、軟X線センサ19が検出する強度(電圧)は最大値Vmaxに対して低下し、除電時間も長くなる。そして、この例では、ずれ量が1mm以上となった際の軟X線の強度では、除電時間が急激に長くなっており、除電が有効に行われていない。なお、図10では、間隙Sが2mmである例を説明したが、軟X線型イオナイザ18と間隙Sとの距離にもよるが、間隙Sは、5mm以下、とりわけ3mm以下であることが好ましい。このような範囲は、モールド50の駆動距離を小さくでき、高精度なインプリントを行うために好ましい。
また、上述の判定工程S109における所定値は、例えば、有効に除電を行うことが可能な軟X線の強度の値に設定される。図10の例のように軟X線の強度が検出される場合には、例えば、0.8×Vmax等の値を、判定工程S109における所定値として設定してもよい。軟X線型イオナイザ18による除電力を効率的に発揮するためには、軟X線の照射の際に、間隙Sを正確に狙う必要があるが、そのためにはモールド50と軟X線型イオナイザ18とが同一平面上に位置することが好ましい。一方で、モールド50と軟X線型イオナイザ18とが同一平面上に位置すると、軟X線型イオナイザ18とステージユニット12との干渉の問題が生じる。それを防ぐためには、ステージユニット12の可動範囲すなわち移動経路外に軟X線型イオナイザ18を設置する必要がある。そのため、本実施の形態では、ステージユニット12の可動範囲から一定の距離をおいて軟X線型イオナイザ18が配置されている。その結果、ステージユニット12の移動によって基材40とモールド50とが鉛直方向に向き合うように位置決めされた際に、軟X線型イオナイザ18とステージユニット12とが一定の距離をおいて離れることに応じて、軟X線型イオナイザ18とモールド50及び間隙Sも、一定の距離をおいて離れるようにもなる。軟X線型イオナイザ18はモールド50からの距離が遠くなると除電の能力が低下し、間隙Sへの照射の困難性も増すが、本実施の形態では、軟X線センサ19を用いることで、間隙Sへの軟X線の確実な照射を確保することで、除電の能力の低下の問題を解決し、軟X線型イオナイザ18とモールド50とが一定の距離をおいて離れる場合でも除電力を効果的に発揮させることができる。なお、本実施の形態では、平面視における間隙Sの中心、換言するとモールド50の中心から軟X線型イオナイザ18までの距離が一例として約60cmとなっている。この程度の距離である場合には、間隙Sが2mmであっても、軟X線センサ19を用いることにより、間隙Sへの軟X線の確実な照射を確保することができる。
次に、上述した照射位置予備調整工程及びセンサ位置予備調整工程について詳述する。本実施の形態では、センサ位置予備調整工程を行った後に、照射位置予備調整工程が行われる。まず、センサ位置予備調整工程について説明する。
図8は、センサ位置予備調整工程を説明する側面図を示している。本実施の形態におけるセンサ位置予備調整工程では、図8に示すように、まず、基材40とモールド50とが鉛直方向に向き合うように位置決めするとともに、基材40とモールド50との間に間隙Sと同等の調整間隙S’を形成する。次いで、調整間隙S’を通過するように、レーザー光源60から水平方向に沿ってレーザー光を照射する。次いで、調整間隙S’を通過したレーザー光が、軟X線センサ19の検出面に照射されるように、軟X線センサ19の鉛直方向の位置を調整する。これにより、軟X線センサ19は、軟X線型イオナイザ18から照射され間隙Sを通過する軟X線を適切に検出可能な位置に調整される。ここで、可視のレーザー光を用いることで、レーザー照射位置を目視しながら、軟X線センサ19の位置を調節し易くなる。以上のように調整された軟X線センサ19は、間隙Sと同一の水平面上で並ぶ位置となり、軟X線型イオナイザ18の照射位置が間隙Sと合致していれば、軟X線を適切に検出することができる。軟X線型イオナイザ18と軟X線センサ19との位置調整を、軟X線型イオナイザ18から軟X線を照射しつつ軟X線センサ19で検出して行う場合には、軟X線センサ19の検出強度が弱くずれが生じていることが判明しても、軟X線型イオナイザ18及び軟X線センサ19のいずれがずれているかが分からず、位置調整に非常に手間がかかる。これに対して、上述のようにレーザー光を用いて、まず軟X線センサ19を適切な位置に調整することで、その後の軟X線型イオナイザ18の位置調整を容易に行うことができる。
なお、センサ位置予備調整工程は、基材40に光硬化性樹脂組成物を塗布し、光硬化性樹脂組成物とモールド50とを接触させ、離型した後に、行うことが好ましい。例えば、センサ位置予備調整工程は、初回のインプリントの際に行ってもよいし、初回のインプリントの前に行う慣らしのインプリント(いわゆるプライミング)の際に行ってもよいし、初回のインプリントやプライミングとは別の独立した工程として行ってもよい。
続いて、図9は、照射位置予備調整工程を説明する側面図を示している。本実施の形態における照射位置予備調整工程では、図9に示すように上述のセンサ位置予備調整工程にて位置調整された軟X線センサ19に対して、軟X線型イオナイザ18から軟X線を照射する。そして、軟X線センサ19によって検出される軟X線の強度が十分な強度と判断され得る値となるように、軟X線型イオナイザ18の鉛直方向の位置を調整する。上述の値は、例えば、図10に示したVmax等の値に設定される。これにより、軟X線型イオナイザ18は、離型工程の後に間隙Sが形成された際に、間隙Sを通過するように軟X線を照射することが可能となる。
なお、本実施の形態によるインプリント方法では、判定工程S109において、軟X線の強度が所定値よりも小さい場合に、警告を表示部15にて表示して通知し、その後、軟X線型イオナイザ18による軟X線の照射を停止する。このような処理に代えて、判定工程S109において、軟X線の強度が所定値よりも小さい場合に、軟X線が間隙Sを通過しないと判定して、軟X線型イオナイザ18の鉛直方向の位置を調整してもよい。
以上に説明したように本実施の形態によれば、基材40とモールド50とが鉛直方向に向き合う状態で基材40とモールド50との間に間隙Sが形成された際に、軟X線型イオナイザ18が間隙Sに水平方向に沿った軟X線を照射することが可能となっている。これにより、軟X線を、基材40やモールド50に吸収させることなく除電の対象となる基材40及びモールド50の近傍の領域である間隙Sに通過させることができる。したがって、モールド50及び基材40に帯電した静電気を軟X線によって効果的に除電することができる。
とりわけ、軟X線型イオナイザ18は、軟X線発生源18Sから放射状に照射される軟X線の中心を通る照射中心軸L1が水平方向に沿うように配置され、照射中心軸L1上の軟X線が間隙Sを通過するように、軟X線を照射可能となっている。これにより、間隙S内を効率的に軟X線が通過することで、除電を効果的に行うことができる。
また、基材40及びモールド50と軟X線型イオナイザ18との鉛直方向における相対位置を調整可能となっている。具体的には、軟X線型イオナイザ18が、鉛直方向の位置を調整可能となっていることで、基材40及びモールド50と軟X線型イオナイザ18との鉛直方向における相対位置を調整可能となっている。これにより、間隙Sと軟X線型イオナイザ18との位置関係を柔軟に調整することができる。したがって、例えば基材40の変更等によって間隙Sの位置が変更された場合であっても、軟X線を好適に間隙Sに通過させることが可能となる。
また、基材40とモールド50とが鉛直方向に向き合うように位置決めされた際に、基材40及びモールド50を挟んで軟X線型イオナイザ18とは反対側に位置する軟X線センサ19が設けられている。すなわち、平面視において、転写位置TPを挟んで、一方の側に軟X線型イオナイザ18が配置され、他方の側に軟X線センサ19が配置されている。そして、軟X線センサ19は、軟X線型イオナイザ18からの軟X線を検出する。これにより、軟X線センサ19の検出に基づき、軟X線型イオナイザ18からの軟X線が適切に照射されているか否かを判定することができる。とりわけ、軟X線センサ19は、軟X線の強度を検出するため、軟X線が適切に照射されているか否かを正確に判定することができる。
また、軟X線センサ19は、鉛直方向の位置を調整可能となっているため、間隙Sとの位置関係を柔軟に調整することができる。これにより、例えば基材40の変更等によって間隙Sの位置が変更された場合であっても、軟X線を好適に検出することができる。
また、軟X線センサ19により検出された強度が所定値以下である場合に、警告が通知される。これにより、軟X線に影響によるモールド50の損傷等の損害を、最小限に抑えることができる。
(第2の実施の形態)
次に、図11には本発明の第2の実施の形態によるインプリント装置の平面図が示されている。本実施の形態における第1の実施の形態と同様の構成部分については、同一の符号を示し、説明を省略する。
図11に示すように、本実施の形態では、軟X線型イオナイザ18とは異なるイオナイザ181がさらに設けられている。本実施の形態において、イオナイザ181は、軟X線型イオナイザとして構成されているが、イオン化気体を噴出する形式のものでもよい。イオナイザ181は、Y軸方向或いは平面視において、基材40及びモールド50を挟んで軟X線型イオナイザ18とは反対側に配置され、基材40及びモールド50側に軟X線を照射するようになっている。
イオナイザ181は、軟X線の照射中心軸が水平方向に沿うように配置されていてもよい。この場合、鉛直方向の位置を調整可能とされ、軟X線型イオナイザ18の鉛直方向の位置と同一の位置に調整されるように構成されることが好ましい。また、本実施の形態においては、イオナイザ181とディスペンサヘッド16との間に、遮蔽部材331が配置されている。
このような本実施の形態によれば、除電効果を向上できる。なお、本実施の形態では、軟X線型イオナイザ18とは異なるイオナイザ181が一つ設けられるが、追加のイオナイザは複数設けられてもよい。
(第3の実施の形態)
続いて、図12には本発明の第3の実施の形態によるインプリント装置の側面図が示されている。本実施の形態における第1及び第2の実施の形態と同様の構成部分については、同一の符号を示し、説明を省略する。
図12に示すように、本実施の形態では、向き合う状態の基材40とモールド50に対して、溶解性ガスと電離性ガスとを切換可能に供給するガス供給機構100が設けられている。ガス供給機構100は、第1ポート、第2ポート及び第3ポートを有する三方弁101と、三方弁101の第1ポートに配管を介して接続され、溶解性ガスを貯留する溶解性ガスタンク102と、三方弁101の第2ポートに配管を介して接続され、電離性ガスを貯留する電離性ガスタンク103と、三方弁101の第3ポートに配管を介して接続された複数の噴射ノズル104と、を有している。
三方弁101は、第1ポートと第3ポートとを連通させ、噴射ノズル104から溶解性ガスが噴出される状態と、第2ポートと第3ポートとを連通させ、噴射ノズル104から電離性ガスを噴出させる状態と、を切換可能になっている。溶解性ガスタンク102に貯留される溶解性ガスは、例えばHeであり、電離性ガスタンク103に貯留される電離性ガスは、例えばN2である。
図12においては、複数の噴射ノズル104のうちの第1噴射ノズル104Aが示されている。第1噴射ノズル104Aは、気流Fの流れ方向で、基材40及びモールド50の上流側であって、軟X線型イオナイザ18から照射される水平方向に沿う軟X線の照射経路よりも鉛直方向において上方に配置されている。より詳しくは、第1噴射ノズル104Aは、モールド保持部17に支持され、向き合う状態の基材40及びモールド50の斜め上方の位置から、これら基材40及びモールド50の間隙にガスを噴射するように配置されている。
また、図12においては、複数の噴射ノズル104のうちの第2噴射ノズル104Bも示されている。第2噴射ノズル104Bは、向き合う状態の基材40及びモールド50を挟んで第1噴射ノズル104Aと対向する位置に配置されている。また、第2噴射ノズル104Bも、モールド保持部17に支持され、向き合う状態の基材40及びモールド50の斜め上方の位置から、これら基材40及びモールド50の間隙にガスを噴射するように配置されている。
上述したガス供給機構100では、インプリント装置内部(チャンバの内部)の雰囲気に対して、溶解性ガスと電離性ガスとを任意のタイミングで切り換えて供給することができる。これにより、インプリント前においては溶解性ガスを供給することで、残存ガスの溶解性を高めて、光硬化性樹脂組成物とモールド50との接触時の凹凸構造51への光硬化性樹脂組成物の充填性を高めることができる。また、充填後において、電離性ガスを供給することで、軟X線型イオナイザ18による除電を効率的に行うことができる。その結果、充填欠陥が少なく、付着異物の少ないパターン構造体を製造することができる。
本実施の形態において、溶解性ガスの供給のタイミングは、モールド50と光硬化性樹脂組成物とを接触させる前が好ましく、この接触前で且つディスペンサヘッド16から基材40に光硬化性樹脂組成物を塗布した後がより好ましく、モールド50と光硬化性樹脂組成物との接触開始直後であることがさらに好ましい。また、電離性ガスの供給のタイミングは、モールド50と光硬化性樹脂組成物とを離型する前が好ましく、この離型前で且つ光硬化性樹脂組成物に対する光の照射(硬化工程)後がより好ましく、光の照射直後であることがさらに好ましい。
なお、本実施の形態では、ガス供給機構100が複数の噴射ノズル104を有するが、ガス供給機構100は一つの噴射ノズル104を有していてもよい。また、噴射ノズル104の配置位置は、本実施の形態の態様に限定されない。
(第4の実施の形態)
次に、図13には本発明の第4の実施の形態によるインプリント装置の平面図が示されている。本実施の形態における第1乃至第3の実施の形態と同様の構成部分については、同一の符号を示し、説明を省略する。
上述の第2の実施の形態においては、イオナイザ181とディスペンサヘッド16との間に配置された遮蔽部材331が、イオナイザ181とディスペンサヘッド16との間であって、軟X線センサ19とディスペンサヘッド16との間に配置されていた。これに代えて、本実施の形態では、遮蔽部材331が、イオナイザ181とディスペンサヘッド16との間であって、イオナイザ181と軟X線センサ19との間に配置されている。これにより、遮蔽部材331は、イオナイザ181から軟X線センサ19及びディスペンサヘッド16に向かう軟X線を遮るように構成されている。
このような実施の形態では、軟X線型イオナイザ18からの軟X線を検出する軟X線センサ19が、イオナイザ181からの軟X線によって不所望な影響を受けることを抑制することができる。
(第5の実施の形態)
次に、図14には本発明の第5の実施の形態によるインプリント装置の平面図が示されている。本実施の形態における第1乃至第3の実施の形態と同様の構成部分については、同一の符号を示し、説明を省略する。
図14に示すように、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、平面視において、転写位置TPを挟んで、一方の側に軟X線型イオナイザ18(以下、第1軟X線型イオナイザ18)が配置され、他方の側に軟X線センサ19(以下、第1軟X線センサ19)が配置されている。また、これら第1軟X線型イオナイザ18及び第1軟X線センサ19が並ぶ方向に沿う方向で、転写位置TPを挟んで、他方の側に第2軟X線型イオナイザ18が配置され、一方の側に第2軟X線センサ19が配置されている。第2軟X線型イオナイザ18および第2軟X線センサ19は、配置位置が異なる点を除いて、第1軟X線型イオナイザ18及び第1軟X線センサ19と同様に構成されている。
とりわけ、本実施の形態では、転写位置TPを挟んで、一方の側の第1軟X線型イオナイザ18と第2軟X線センサ19が隣接して配置され、しかも一体化されている。また、第2軟X線センサ19の軟X線の検出面は、隣接する第1軟X線型イオナイザ18の軟X線の照射面よりも後退した位置に配置されている。これにより、第2軟X線センサ19が隣接する第1軟X線型イオナイザ18からの軟X線によって不所望な影響を受けることを抑制することができる。なお、転写位置TPを挟んで他方の側の第2軟X線型イオナイザ18および第1軟X線センサ19も、上述した第1軟X線型イオナイザ18および第2軟X線センサ19と同様に構成を有する。
このような実施の形態では、複数の軟X線型イオナイザ18が設けられることにより、除電効果を向上させることができる。具体的に説明すると、モールド50が基材40から離型される場合、モールド50の中央側と基材40との間隙は、その周囲よりも小さくなる状況が生じ得る。この場合、軟X線型イオナイザ18が一つである場合、モールド50の中央に対して軟X線型イオナイザ18が配置される側とは反対側の部分では、軟X線による除電効果が、軟X線型イオナイザ18が配置される側によりも低くなる状況が生じ得る。このような状況が生じた場合であっても、本実施の形態では、モールド50の中央に対する一方側及び他方側から軟X線を照射することにより、極めて効率的に除電を行うことができる。
(第6の実施の形態)
次に、図15には本発明の第6の実施の形態によるインプリント装置の平面図が示されている。本実施の形態における第1乃至第3の実施の形態と同様の構成部分については、同一の符号を示し、説明を省略する。
図15に示すように、本実施の形態では、第5の実施の形態と同様に、平面視において、転写位置TPを挟んで、一方の側に第1軟X線型イオナイザ18及び第2軟X線センサ19が配置され、他方の側に第1軟X線センサ19及び第2軟X線型イオナイザ18が配置されている。さらに、平面視において、第1軟X線型イオナイザ18及び第1軟X線センサ19が並ぶ方向に対して交差する方向(図示の例では直交する方向)で、転写位置TPを挟んで、一方の側に第3軟X線型イオナイザ18が配置され、他方の側に第3軟X線センサ19が配置され、且つ、これら第3軟X線型イオナイザ18及び第3軟X線センサ19が並ぶ方向に沿う方向で、転写位置TPを挟んで、他方の側に第4軟X線型イオナイザ18が配置され、一方の側に第4軟X線センサ19が配置されている。第3,4軟X線型イオナイザ18および第3,4軟X線センサ19は、配置位置が異なる点を除いて、第1軟X線型イオナイザ18及び第1軟X線センサ19と同様に構成されている。
このような実施の形態では、複数の軟X線型イオナイザ18が設けられることにより、除電効果を向上させることができる。なお、本実施の形態においては、第4軟X線型イオナイザ18及び第4軟X線センサ19が削除されてもよい。また、本実施の形態においては、さらに他の軟X線型イオナイザ18及び軟X線センサ19が設けられてもよい。
(実施例)
次に、軟X線型イオナイザ18の鉛直方向の位置を調整して間隙Sを通るように軟X線を照射した実施例1と、軟X線型イオナイザ18の鉛直方向の位置調整を行わずに軟X線を照射した場合の実施例2とを説明する。
実施例1では、軟X線型イオナイザ18の鉛直方向の位置を、図9で説明した照射位置予備調整工程によって調整して、離型工程の後に間隙Sが形成された際に、軟X線型イオナイザ18から軟X線を照射した。一方、実施例2では、軟X線型イオナイザ18の鉛直方向の位置を間隙Sに大まかに合わせて軟X線型イオナイザ18から軟X線を照射した。
これら実施例1,2では、7000Vに帯電したモールド50が軟X線によって、どの程度まで降圧されるように除電されるかを検証した。そして、実施例1の場合には、軟X線の照射開始から2分後のモールド50の電位が4000Vとなったことが確認された。一方、実施例2の場合には、軟X線の照射開始から2分後のモールド50の電位が5000Vとなったことが確認された。さらに、実施例1の場合には、軟X線の照射開始から5分後のモールド50の電位が2500Vとなったことが確認された。一方、実施例2の場合には、軟X線の照射開始から5分後のモールド50の電位が4000Vとなったことが確認された。このような実施例1,2においては、軟X線型イオナイザ18の位置を適切に調整することで、効果的な除電が可能であることが確認された。
以上、本発明の各実施の形態を説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限定されることなく種々の変更を加えることが可能である。