JP6804780B1 - ログ壁の耐風設計方法、ログ壁の耐風設計プログラム及び記憶媒体 - Google Patents
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Abstract
Description
また、経年劣化により、ログ材の緩みが生じた場合に風圧によりログ壁の変形がより大きくなる等の問題があった。
前記ログ壁に生じる風圧に抵抗する抵抗部材を前記ログ壁の内部又は前記ログ壁に隣接して複数配置し、
前記ログ壁を耐風設計用に複数の壁(以下、「耐風設計用壁」とする。)に分割し、
前記ログ壁の前記耐風設計用壁毎に生じる風圧による面外応力を算出し、
前記抵抗部材の許容応力を算出又は実験で求めた値を設定し、
前記耐風設計用壁に配置された複数の前記抵抗部材の許容応力の合計が前記耐風設計用壁の面外力に対して不足の有無を全ての前記耐風設計用壁で判断することを特徴とする。
また、本発明のうち第3の実施態様のログ壁の耐風設計方法は、第1又は第2の実施態様の構成に加え、前記不足が有ると判断した場合には、前記抵抗部材の再配置を行うことを特徴とする。
また、本発明のうち第4の実施態様のログ壁の耐風設計方法は、第1、第2又は第3の実施態様の構成に加え、前記抵抗部材は、添え柱、開口枠、ダボ、又は、通しボルトであることを特徴とする。
コンピュータに、
前記ログ壁に生じる風圧に抵抗する抵抗部材を前記ログ壁の内部又は前記ログ壁に隣接して複数配置する段階、
前記ログ壁を複数の耐風設計用壁に分割する段階、
前記ログ壁の前記耐風設計用壁毎に生じる風圧による面外応力を算出する段階、
前記抵抗部材の許容応力を算出又は実験で求めた値を設定する段階、及び、
前記耐風設計用壁に配置された複数の前記抵抗部材の許容応力の合計が前記耐風設計用壁の面外力に対して不足の有無を全ての前記耐風設計用壁で判断する段階、を実行させる。
また、本発明のうち第8の実施態様のログ壁の耐風設計プログラムは、第6又は第7の実施態様の構成に加え、前記不足が有ると判断した場合には、前記抵抗部材の再配置を行う段階、を実行させる。
また、本発明のうち第9の実施態様のログ壁の耐風設計プログラムは、第6、第7又は第8の実施態様の構成に加え、前記抵抗部材は、添え柱、開口枠、ダボ、又は、通しボルトである。
以下、本発明の一実施形態に係るログ壁の耐風設計方法を、図面を参照しつつ説明する。
本実施形態に係るログハウス1は、図1に示すように、地面に打設された基礎20と、この基礎20に載置され、かつ、基礎20に対して図示しないアンカーボルト25で固定された土台30と(図2B参照)、この土台30の上に構築されたログ壁10とを備えている。なお、ログ壁10は、丸太、製材その他これに類するログ材11を水平に積み上げる丸太組構法によって構築されている。
また、本実施の形態に係るログ壁10のうち少なくとも一面には、図1に示すように、開口部70が形成されている。
本実施の形態における通しボルト60は、ログ材11の最上段から最下段を貫通するように形成されたボルト用孔65(図2A及び図2B参照)を通ってログ材11の最上段から最下段を緊結する(図1参照)。
本実施の形態では、この通しボルト60は、ログ壁10に生じる風圧に抵抗する抵抗部材90として用いられる。
すなわち、図2Bに示すように、基礎20と土台30とはアンカーボルト25により固定されている。このとき、図2Bに示すように、土台30には、左右に隣接する土台30同士が通しボルト60の位置で不連続となっている箇所があり、この左右に隣接する土台30同士の間は、ログ材11の最上段から最下段までを貫通してきた通しボルト60をナット62で固定するための締め空間32として用いられる。また、この締め空間32内には、六面体の六面のうち、対向する二面が開口している箱状の連結部材36が設置されている(ただし、この連結部材36の開口面は、対向する二面でなくてもよく、一面だけでもよい)。このとき、連結部材36の下面には、図示しない開口部分が設けられており、その開口部分を挿通して連結部材36内に突出したアンカーボルト25の先端部分を座金61を挟んでナット62で締めることにより連結部材36と基礎20とを固定している。これにより、最下段のログ材11が座金61とナット62とによって通しボルト60と緊結される。換言すると、通しボルト60と基礎20とは、連結部材36及びアンカーボルト25を介して互いに固定されている。また、図2Aに示すように、最上段のログ材11も同様に座金61とナット62とによって通しボルト60と緊結される。
具体的には、図1に示すように、通しボルト60は、このログ壁10に六箇所設けられており、各々の箇所で、最上段から最下段のログ材11を緊結する。
本実施の形態におけるダボ50は、図3及び図4に示すように、通しボルト60の取り付け位置とは平面視において異なる複数箇所に設けられており、かつ、各段のダボ50が互い違い(千鳥)に設けられている。
本実施の形態では、このダボ50は、ログ壁10に生じる風圧に抵抗する抵抗部材90として用いられる。
あるログ壁10の水平剛性が他のログ壁10に比べて極端に高くなるような場合には、図5に示すように、当該ログ壁10に構造スリット80を設けることで、幅L0の箇所を新たに幅L1と幅L2に分割してもよい。
こうすることで、元のログ壁10の水平剛性を全体として低下させることができ、それによってそのログ壁10の水平剛性を低めてバランス良くすることが可能である。
なお、この構造スリット80は、意図的に切欠を設けてもよいものであるが、ログ材の横方向の継ぎ目を鉛直方向に揃えることで当該構造スリット80として形成するようにしてもよい。
本実施の形態において、補強を目的として、ログ壁10や柱の鉛直方向に添わせるように抵抗部材90としての添え柱96を設ける場合がある(図6参照)。
図6は、抵抗部材90の具体例として、添え柱96がログ壁10の鉛直方向に添って設けられている一例である。
この添え柱96は、ログ壁10に対して、ラグスクリュー97により固定されている。
本実施の形態では、この添え柱96は、ログ壁10に生じる風圧に抵抗する抵抗部材90として用いられる。
本実施の形態に係るログ壁10に開口する開口部70の開口枠には、開口部70の両側の縦材である開口枠材72が設けられている(図1参照)。この開口枠材72は、図2Cに示すように断面形状がT型形状をしており、ログ材11の端部に差し込まれる。このように開口枠材72がT型形状に形成されているので、風圧に対して抵抗となるものであり、ログ材11の面外方向の動きを拘束する。
なお、開口枠材72間の開口部70には、特に図示していないが、窓枠にガラス等をはめ込んで用いるサッシ等が取り付けられる。
本実施の形態では、この開口枠材72は、ログ壁10に生じる風圧に抵抗する抵抗部材90として用いられる。
本実施の形態では、横(ログ壁の正面方向)から吹いてくる風の風圧による力を支える壁として、ログ壁10を複数の耐風設計用壁A、B、C、D,Eに分割して耐風設計を行っている。
本実施の形態では、図1に示すように、ログ壁10を、耐風設計用壁A、B、C、D、Eの5つに分割して耐風設計を行っている。
本実施の形態では、ログ壁10を複数の耐風設計用壁A〜Eに分割するにあたって、下記に示す(イ)(ロ)(ハ)の基準に沿って分割している。
(イ)開口部70の中心位置にある中心線(鉛直方向)、
(ロ)交差部12(当該ログ壁10に直交する直交壁)と隣接する開口部70の開口枠材72との中間距離にある中心線(鉛直方向)
(ハ)構造スリット80
もちろん、上記のような耐風設計用壁A〜Eの分割手順は、一例であって、計算処理を行い易くするように便宜上、分割しているものであって、上記の分割内容に限定されるものではない。具体的には、例えば、さらにより細かく分割して、ログ壁10を抵抗部材90毎にさらに細かく分割してもよいものである。また、分割の基準をもとに分割した壁を組み合わせて1つの耐風設計用壁としてもよく、具体的には、例えば、図1のA+Bや、C+Dを1つの耐風設計用壁としてもよいものである。さらに、細かく分割した耐風設計用壁と、大きなまとまりのある耐風設計用壁との両方が混在するように分割してもよいものである。
本実施の形態では、上述した構造スリット80は、特に設けてはいないが、設けた場合には、ログ壁10を複数の耐風設計用壁A〜Eに分割する際の境界となる。
また、開口部70と構造スリット80がないログ壁10は、ログ壁10の全体を耐風設計用壁としても良い。
なお、この分割処理は、予め上述したログ壁10を複数の耐風設計用壁に分割する基準である(イ)〜(ハ)の内容をプログラムに入力することで、ログ壁10をプログラム演算処理により自動的に分割処理することが可能なものである。
この耐風設計用壁A〜Eの最上段は、根太組に、土台30はアンカーボルト25に固定支持されている。すなわち、この耐風設計用壁A〜Eは、最上段及び最下段からなる一組の相対する二辺との間で支持され、ログ壁10の上端と下端との鉛直方向に距離を有する「一方向版」として考えることができる。
なお、後に記載する面外応力算出と許容応力算出は、ここで示している最上段から最下段の鉛直方向の範囲で算出するものである。
上述のログ壁10の耐風設計方法は、たとえば、図7のフローチャートに示すログ壁10の耐風設計プログラムを、コンピュータ100に実行させることにより実現することができる。
まず、図7のS100に示すログ壁10における抵抗部材90の配置処理が行われる。ここでは、必要十分な全ての抵抗部材90の配置処理が行われる必要は無く、経験上少なくとも前提条件として必要だと思われる最低限度の抵抗部材90を配置すればよいものであり、抵抗部材90の数や、配置位置は厳密なものである必要はない。具体的には、抵抗部材90には、レイアウト上の開口部70に設ける開口枠材72や、地震力に対して必要となる通しボルト60や、ダボ50が含まれる。そして、S101に示す段階に進む。
S101に示すログ壁10を複数の耐風設計用壁に分割する分割処理が行われる。ログハウス1を構成する各ログ壁10についてそれぞれログ壁10を、複数の耐風設計用壁に分割処理されるものである。
耐風設計用壁B,C,Dのように開口部70の中心で分割されている場合は、開口枠材72を1つとして面外応力を算出する。また、耐風設計用壁Cと耐風設計用壁Dとを一つの耐風設計用壁とした場合は、1つの開口部70全体を含むので、当該開口部70の開口枠材72は2つとして面外応力を算出する。
具体的には、抵抗部材90の許容応力は、回転ばねによって接続されるログ材11、開口枠材72、添え柱96等を別々にモデル化し、ログ材11の各段で軸力伝達要素によってつないだ応力解析モデルを用いて算出する。そして、S104に示す段階へ進む。
S105に示す段階においては、許容応力が不足していると判断された耐風設計用壁に新たな抵抗部材90の追加を伴う抵抗部材90の再配置処理が行われる。
この「新たな抵抗部材90」として、具体的には、例えば、「添え柱96(図6参照)」があり、当該添え柱96を新たな抵抗部材90として追加することで、抵抗部材90の再配置処理が行われるようなものが含まれる。そして、S102に示す段階へ戻る。
上述の実施形態では、許容応力が不足の耐風設計用壁が有る場合に抵抗部材90を再配置することとしたが、当該再配置を行わずに、単に判断結果を出力する構成であってもよい。
許容応力不足の耐風設計用壁があり、隣接する他の壁の許容応力が足りている場合は、上述したように、該当する他の壁も含めて一つの耐風設計用壁として、再度、許容応力の不足の有無を判断してもよい。
例えば、壁Aは不足で、壁BはOKの場合、壁A+壁BがOK(許容応力足りている)ならば、良しとする判断を行ってもよい。
さらに、壁A+壁Bでも許容応力不足の場合は、もう片方の隣接する壁でも同様の検証を行い、不足の場合は、壁Aに抵抗部材90を再配置し、壁Aの判断を行うようにしてもよい。
また、ログ壁10を分割して設計することで、最も効果的な位置に必要最低限の抵抗部材90を配置することができ、これによりレイアウトの自由度を上げることと、部材コストを下げることができる。
また、上述したような構造計算を行い抵抗部材90を適切に配置することができるため、風圧による面外力に対して耐風強度を上げたログハウス1を提供することができる。
また、上述したような抵抗部材90は、他の用途も兼ねていることで、経済的な構成が可能となるものである。
また、上述したようにログ壁10の耐風設計方法を備える耐風設計プログラムを提供することができる。
10 ログ壁 11 ログ材
12 交差部
20 基礎 25 アンカーボルト
30 土台 32 締め空間
36 連結部材
40 緊結材 50 ダボ
54 上段孔 56 下段孔
60 通しボルト 61 座金
62 ナット 65 ボルト用孔
70 開口部 72 開口枠材
80 構造スリット
90 抵抗部材
A、B、C、D、E 耐風設計用壁
96 添え柱 97 ラグスクリュー
100 コンピュータ 101 CPU
102 ROM 103 RAM
104 ストレージ 109 バス
Claims (11)
- ログ材を水平に積み上げ、上下に隣接するログ材同士を連結する緊結材を備えた、丸太組構法によるログハウスにおけるログ壁の耐風設計方法であって、
前記ログ壁に生じる風圧に抵抗する抵抗部材を前記ログ壁の内部又は前記ログ壁に隣接して複数配置し、
前記ログ壁を耐風設計用に複数の壁(以下、「耐風設計用壁」とする。)に分割し、
前記ログ壁の前記耐風設計用壁毎に生じる風圧による面外応力を算出し、
前記抵抗部材の許容応力を算出又は実験で求めた値を設定し、
前記耐風設計用壁に配置された複数の前記抵抗部材の許容応力の合計が前記耐風設計用壁の面外力に対して不足の有無を全ての前記耐風設計用壁で判断することを特徴とするログ壁の耐風設計方法。 - 前記耐風設計用壁に前記不足が有ると判断した場合には、当該耐風設計用壁に隣接する耐風設計用壁と併せて、一つの耐風設計用壁とし、当該耐風設計用壁で前記不足の有無を判断することを特徴とする請求項1に記載のログ壁の耐風設計方法。
- 前記不足が有ると判断した場合には、前記抵抗部材の再配置を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のログ壁の耐風設計方法。
- 前記抵抗部材は、添え柱、開口枠、ダボ、又は、通しボルトであることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のログ壁の耐風設計方法。
- 前記抵抗部材の許容応力は、前記抵抗部材の種類毎に定められたものであることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載のログ壁の耐風設計方法。
- ログ材を水平に積み上げ、上下に隣接するログ材同士を連結する緊結材を備えた、丸太組構法によるログハウスにおけるログ壁の耐風設計プログラムであって、
コンピュータに、
前記ログ壁に生じる風圧に抵抗する抵抗部材を前記ログ壁の内部又は前記ログ壁に隣接して複数配置する段階、
前記ログ壁を耐風設計用に複数の壁(以下、「耐風設計用壁」とする。)に分割する段階、
前記ログ壁の前記耐風設計用壁毎に生じる風圧による面外応力を算出する段階、
前記抵抗部材の許容応力を算出又は実験で求めた値を設定する段階、及び、
前記耐風設計用壁に配置された複数の前記抵抗部材の許容応力の合計が前記耐風設計用壁の面外力に対して不足の有無を全ての前記耐風設計用壁で判断する段階、を実行させるためのログ壁の耐風設計プログラム。 - 前記耐風設計用壁に前記不足が有ると判断した場合には、当該耐風設計用壁に隣接する耐風設計用壁と併せて、一つの耐風設計用壁とし、当該耐風設計用壁で前記不足の有無を判断する段階、を実行させるための請求項6に記載のログ壁の耐風設計プログラム。
- 前記不足が有ると判断した場合には、前記抵抗部材の再配置を行う段階、を実行させるための請求項6又は請求項7に記載のログ壁の耐風設計プログラム。
- 前記抵抗部材は、添え柱、開口枠、ダボ、又は、通しボルトであることを特徴とする請求項6、7又は8に記載のログ壁の耐風設計プログラム。
- 前記抵抗部材の許容応力は、前記抵抗部材の種類毎に定められたものであることを特徴とする請求項6、7、8又は9に記載のログ壁の耐風設計プログラム。
- 請求項6から請求項10までのいずれか1項に記載のログ壁の耐風設計プログラムを記録した記憶媒体。
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