(第1実施形態)
以下、図1及び図2を用いて第1実施形態に係る車両用ピラー構造10について説明する。なお、図面において、適宜示される矢印FRは、車両用ピラー構造10が適用された車両Sの車両前側を示し、矢印UPは車両上側を示し、矢印RHは車両右側を示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両上下方向の上下、車両左右方向(車幅方向)の左右、を示すものとする。
(全体構成)
図2に示されるように、本実施形態に係る車両用ピラー構造10が適用された車両Sの前部には、車室内における車幅方向の右側部に、運転席用の車両用シート12が配設されている。この車両用シート12は、乗員Pが着座するシートクッション14と、乗員Pの背部を支えるシートバック16と、を含んで構成されており、シートバック16の下端部がシートクッション14の後端部に傾倒可能に連結されている。
車両Sの車室の前端部には、ウィンドシールドガラス18が設けられている。このウィンドシールドガラス18は、透明板状に形成されると共に、側面視で上側へ向かうに従い後側へ傾斜して配置されている。また、ウィンドシールドガラス18は、車幅方向の中央部が前側へ凸に若干膨らむ湾曲形状に形成されている。そして、このウィンドシールドガラス18の車両幅方向の両端部(車幅方向一方側及び他方側)には、フロントピラー20が設けられている。また、ウィンドシールドガラス18の下端部が、車両幅方向に沿って延在されたカウル22に支持されており、カウル22は、車両Sの車室の前部を構成する図示しないダッシュパネルの上端部に沿って配設されている。また、ウィンドシールドガラス18の上端部は、車室の上部を構成するルーフ24の前端部において、車両幅方向に沿って配設されたフロントヘッダ26に支持されている。
また、図2に示されるように、車両Sの車室の右側部には、透明板状のサイドドアガラス28が設けられている。そして、サイドドアガラス28の前端部とウィンドシールドガラス18の車幅方向一方側の端部との間に、フロントピラー20が配設されている。
ここで、上述したように、フロントピラー20は、ウィンドシールドガラス18における車幅方向一方側の端部に沿って延在されている。従って、図2に示されるように、運転席側の乗員Pから見て、車両前方かつ斜め右側に配置されている。このため、仮にフロントピラー20全体が不透明部材により形成されていると、乗員Pに対して車両前方かつ斜め右側の視界がフロントピラー20によって遮られて、当該遮られた領域が死角領域BSとなっている。
具体的には、フロントピラー20に対して車両外側の領域であって、乗員PのアイポイントEPから延出され、かつ、フロントピラー20の車幅方向両側部に接する一対の接線T1の間の領域が死角領域BSとされている。ここで、アイポイントEPとは、車両用シート12に乗員Pが着座した状態において、乗員Pの両眼の中間点であり、乗員Pの両眼を結ぶ線の中央点である。また、本実施形態において乗員Pは、AM50(米国人成人男性の50パーセンタイル)と同等の体格を有しており、標準的な着座姿勢で車両用シート12に着座しているものとする。
以下、運転席用の車両用シート12に近い右側のフロントピラー20について説明する。なお、左側のフロントピラー20も同様の構成とされている。
(本願発明の要部)
図1に示されるように、フロントピラー20は、ピラーフレーム30と、ピラーガラスアウタ32と、ピラーガラスインナ34とを主要部として構成されている。なお、フロントピラー20は、本発明における「ピラー」に相当し、ピラーガラスアウタ32は、本発明における「第1透明部」に相当し、ピラーガラスインナ34は、本発明における「第2透明部」に相当する。
ピラーフレーム30は、不透明の樹脂材(一例として炭素繊維入り強化プラスチック)で構成されており、図示しないフロントピラーロアとフロントヘッダとの間に架け渡されている。このピラーフレーム30は、ウィンドシールドガラス18の右端部(車幅方向一方側の端部)に沿って延在する内側壁部36と、当該内側壁部36に対して車両後方側かつ車幅方向外側に離間して配置され、内側壁部36に沿って延在する外側壁部38とを備えている。これらの内側壁部36及び外側壁部38は、フロントピラー20の骨格を構成しており、車両上方側へ向かうほど車両後方側へ向かうように傾斜している。
内側壁部36は、中実の柱状に形成されており、内側壁部36の前面及び内側面を形成する第1壁部36Aと、内側壁部36の外側面を形成する第2壁部36Bと、内側壁部36の後面を形成する第3壁部36Cと、を備えている。
第1壁部36Aは、内側壁部36の前面を形成する前側壁36A1と、この前側壁36A1の車幅方向内側端部から車両後方側かつ車幅方向内側に延在され、内側壁部36の内側面を形成する内側壁36A2とを備えている。第1壁部36Aは、概ね車幅方向に沿って延在しているが、内側壁部36の長手方向から見た断面が略クランク状に曲がっている。また、第1壁部36Aにおける車幅方向外側の部位が車幅方向内側の部位よりも車両前方側へ突出している。
また、内側壁36A2における車幅方向内側の部位は、当該部位に対して車両前方側に配置されたウィンドシールドガラス18の車幅方向右端部と、ウレタンシーラント等の接着剤40を介して接合されている。また、接着剤40の車両前後方向右側には、クッションゴム42が設けられており、当該クッションゴム42によって第1壁部36Aとウィンドシールドガラス18の車幅方向右端部との間の隙間が塞がれている。
一方、第2壁部36Bは、第1壁部36Aの車幅方向外側端部から車両後方側へ延出しており、外側壁部38と対向して配置され、略平面状に形成されている。そして、第3壁部36Cは、第1壁部36Aの車幅方向内側端部と第2壁部36Bの車両前後方向後端部を連結しており、車内側に面して配置されている。
図1に示されるように、外側壁部38は、内側壁部36と同様に、中実の柱状に形成されており、外側壁部38の前面及び外側面を形成する第1壁部38Aと、外側壁部38の内側面を形成する第2壁部38Bと、外側壁部38の後面を形成する第3壁部38Cと、を備えている。第1壁部38Aは、外側壁部38の前面を形成する前側壁38A1と、この前側壁38A1の車幅方向外側端部から車両後方側かつ車幅方向外側に延在した外側壁38A2とを備えている。第1壁部38Aは、概ね車幅方向に沿って延在しているが、外側壁部38の長手方向から見た断面が略クランク状に曲がっている。また、第1壁部38Aは、車幅方向外側の部位が車幅方向内側の部位よりも車両後方側へ突出している。
なお、外側壁38A2における中間部位には、帯状のステンレス鋼等を折り曲げて形成されたリテーナ50が設けられている。このリテーナ50は平断面視で車幅方向外側且つ後側へ開口された略U字状に形成されており、リテーナ50の底壁が、第1壁部38Aに図示しないネジ等の締結部材によって固定されている。
リテーナ50には、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等の弾性部材で形成されたドアシール52が装着されている。これにより、ドアシール52が、リテーナ50を介してフロントピラー20に保持されると共に、サイドドアガラス28の前端部がドアシール52を介してフロントピラー20に保持される構成になっている。
第2壁部38Bは、第1壁部38Aを構成する前側壁38A1の車幅方向内側端部から車両後方側へ延出されており、内側壁部36と対向して配置され、略平面状に形成されている。そして、第3壁部38Cは、第1壁部38Aの車幅方向外側端部と第2壁部38Bの車両前後方向後端部とを連結しており、車内側に面して配置されている。
なお、上述した内側壁部36を構成する第2壁部36Bと、外側壁部38を構成する第2壁部38Bとは、車両後方に向かうに従って、近づくように配置されている。従って、内側壁部36と外側壁部38との空間37は、フロントピラー20の長手方向視で、車両後方に向かうに従って幅が狭くなる略テーパー状とされている(図1参照)。
一方、ピラーガラスアウタ32及びピラーガラスインナ34は、例えば無機ガラス又は高強度透明樹脂からなり、透明な板状に形成されている。本実施形態では一例として、ピラーガラスアウタ32及びピラーガラスインナ34は、可視光の透過率が70%以上の樹脂により形成されている。なお、高強度透明樹脂としては、例えばガラス繊維によって強化されたポリカーボネート(PC−GF)や、セルロース・ナノ・ファイバーによって強化されたポリカーボネート(PC−CNF)等が挙げられる。これらピラーガラスアウタ32及びピラーガラスインナ34は、内側壁部36と外側壁部38との間に架け渡されている。
ピラーガラスアウタ32は、内側壁部36及び外側壁部38の車外側に、フロントピラー20の長手方向と直交する方向を板厚方向として配置されている。また、長手方向視における断面形状が、略車幅方向における中央の厚みが周辺の厚みより薄い凹形状をなしている。換言すると、ピラーガラスアウタ32は、フロントピラー20の長手方向から見て、略両凹レンズ状をなしている。
具体的には、ピラーガラスアウタ32の車外側の側面32Aは、フロントピラー20の車外側の意匠面を構成している。この側面32Aでは、車幅方向の内側端部32A1と車幅方向の外側端部32A2とが車外側に凸をなす湾曲形状に形成されている。そして、底壁部32A3によって、内側端部32A1と外側端部32A2とが連結されている。つまり、側面32Aには、内側端部32A1、底壁部32A3、外側端部32A2が、車幅方向外側かつ若干車両後方側に向かって順に配置されており、これらが連続して一体形成されている。これにより、側面32Aは、フロントピラー20の長手方向から見て、中央が車内側に窪んだ凹面とされている。
一方、ピラーガラスアウタ32の車内側の側面32Bでは、車幅方向の内側端部32B1と、車幅方向の外側端部32B2に、それぞれ保持部44、46が形成されており、ピラーフレーム30における前端部のコーナー部を保持している。また、底壁部32B3によって、内側端部32B1と外側端部32B2とが連結されている。
図1に示されるように、側面32Bの車幅方向の内側端部32B1に形成された保持部44は、内側壁部36の第1壁部36Aにおける車幅方向外側端部に対向して配置される側部44aと、内側壁部36の第2壁部36Bの車両前後方向前端部に対向して配置される側部44bとを備えている。すなわち、長手方向から見て、車幅方向左側かつ車両後方側に開放された略L字型の溝部として構成されている。これにより、保持部44は、内側壁部36の前端部のコーナー部を車両前方側から覆っている。また、側部44aは、ウレタンシーラント等の接着剤40を介して内側壁部36の第1壁部36Aにおける車幅方向外側端部に接合されている。この接着剤40の車幅方向両側には、クッションゴム42が設けられており、当該クッションゴム42によって第1壁部36Aとピラーガラスアウタ32の内側端部との間の隙間が塞がれている。
側面32Bの車幅方向の外側端部32B2に形成された保持部46は、外側壁部38の第1壁部38Aにおける車幅方向内側端部に対向して配置される側部46aと、外側壁部38の第2壁部38Bにおける車両前後方向前端部に対向して配置される側部46bとを備えている。すなわち、長手方向から見て、車幅方向右側かつ車両後方側に開放された略L字型の溝部として構成されている。これにより、保持部46は、外側壁部38の前端部のコーナー部を車両前方側から覆っている。また、側部46aは、上述した保持部44の側部44aと同様に、ウレタンシーラント等の接着剤40を介して外側壁部38の第1壁部38Aにおける車幅方向内側端部に接合されている。また、接着剤40の車幅方向両側には、クッションゴム42が設けられており、当該クッションゴム42によって第1壁部38Aとピラーガラスアウタ32の外側端部との間の隙間が塞がれている。
さらに、底壁部32B3によって、保持部44における側部44bの車両前後方向の後端部と、保持部46における側部46bの車両前後方向後端部とが連結されている。この底壁部32B3は、長手方向から見て、中央に向かって車外側に凸をなす湾曲形状に形成されている。つまり、側面32Bには、内側端部32B1、底壁部32B3、外側端部32B2が、車両前方から後方に向かって順に配置されており、これらが連続して一体形成されている。これにより、側面32Bは、フロントピラー20の長手方向から見て、中央が車外側に窪んだ凹面とされている。
ピラーガラスインナ34は、内側壁部36及び外側壁部38の車内側に、フロントピラー20の長手方向と直交する方向を板厚方向として配置されている。また、上述したピラーガラスアウタ32と同様に、長手方向視における断面形状が、略車幅方向における中央の厚みが周辺の厚みより薄い凹形状をなしている。換言すると、ピラーガラスインナ34は、フロントピラー20の長手方向から見て、略両凹レンズ状をなしている。
ピラーガラスインナ34の車外側の側面34Aは、ピラーガラスアウタ32の車内側の側面32Bと対向して配置されている。側面34Aは、内側端部34A1と外側端部34A2が略平面状に形成されており、この内側端部34A1と外側端部34A2とを連結する底壁部34A3が、長手方向から見て、車内側に凸をなす湾曲形状とされている。また、内側端部34A1は、内側壁部36の第3壁部36Cにおける車幅方向外側端部に対向して配置されており、接着剤40を用いて第3壁部36Cに接合されている。一方で、外側端部34A2は、外側壁部38の第3壁部38Cにおける車幅方向内側端部に対向して配置されており、接着剤40を用いて第3壁部38Cに接合されている。
ピラーガラスインナ34の車内側の側面34Bは、フロントピラー20の車内側の意匠面を形成している。この側面34Bは、内側端部34B1と外側端部34B2が略平面状に形成されており、この内側端部34B1と外側端部34B2とを連結する底壁部34B3が、長手方向から見て、車外側に凸をなす湾曲形状とされている。なお、ピラーガラスインナ34の側面34Bにおける内側端部34B1から、内側壁部36の第3壁部36Cの車幅方向の内端部に亘って、図示しないピラーガニッシュがフロントピラー20の上下方向に沿って配置されている。これにより、フロントピラー20の車幅方向内側の周縁部における車内側の意匠面が形成されている。また、ピラーガラスインナ34の側面34Bにおける外側端部34B2から、外側壁部38の第3壁部38Cの車幅方向外端部に亘って、図示しないピラーガニッシュがフロントピラー20の上下方向に沿って配置されている。これにより、フロントピラー20の車幅方向外側の周縁部における車内側の意匠面が形成されている。
上記構成により、乗員Pがフロントピラーを見た場合に、その視線方向に沿って、長手方向から見て略両凹レンズ形状をなすピラーガラスアウタ32及びピラーガラスインナ34がラップして配置されている。
ここで、図1には、乗員PのアイポイントEPの高さにおけるフロントピラー20の平断面を拡大して図示している。この図1では、車外空間から入射し、フロントピラー20のピラーガラスアウタ32及びピラーガラスインナ34を透過する光の行路を複数の線分L1により概略的に示している。
また、仮に、フロントピラー20の内側壁部36と外側壁部38との間に架け渡されるピラーガラスアウタ及びピラーガラスインナが平板状である場合に、乗員Pが、内側壁部36と外側壁部38との間の空間37から車両Sの外側を視認することができる視認可能領域VAを概略的に示している。具体的には、死角領域BSに含まれ、かつ、乗員PのアイポイントEPから延出され、内側壁部36の車幅方向外端部及び外側壁部38の車幅方向内端部に接し、かつ、ピラーガラスアウタ32及びピラーガラスインナ34の両端部に接する一対の接線T2の間の領域が視認可能領域VAとされている。
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
上記構成の車両用ピラー構造10では、内側壁部36と外側壁部38との間には、透明に形成されたピラーガラスアウタ32及びピラーガラスインナ34が架け渡されている。これにより、乗員Pから見てフロントピラー20の向こう側に標識などの障害物がある場合でも、内側壁部36と外側壁部38との間の空間37から障害物を視認することができる。
ここで、ピラーガラスアウタ32とピラーガラスインナ34は、長手方向から見て、いずれも略車幅方向における中央の厚みが周辺の厚みより薄い凹形状をなしている。そのため、ピラーガラスアウタ32及びピラーガラスインナ34は所謂凹レンズと同様の作用を奏する。
すなわち、車外側からピラーガラスアウタ32に入射する各光線L1は、ピラーガラスアウタ32を透過する際に集光される。従って、図1に示されるように、視認可能領域VAの車幅方向外側(一対の接線T2の外側)から入射される光線L1も、集光される。このため、車内側からピラーガラスアウタ32を通して車外側を見ると、仮にピラーガラスアウタ32が平板形状である場合には、車内側の乗員Pから視認することができない内側壁部36及び外側壁部38に遮られる車外側の対象物を視認することができる。その結果、乗員Pの死角領域BSをさらに減少させることができる。
ここで、ピラーガラスアウタ32のみを透過した光線L1は、屈折しながら収束されている。このため、車内側からピラーガラスアウタ32を通して車外側を見ると、内側壁部36及び、外側壁部38の車外側にある対象物が歪んで見えることとなる。換言すると、ピラーガラスアウタ32の車幅方向両端部では、車外側の景色が歪んで見えることとなる。
そして、本実施形態では、内側壁部36の後端部と外側壁部38の後端部との間にピラーガラスインナ34を架け渡して配置することにより、乗員Pから見て、車外側の景色が歪んで見えるといった現象を防止、又は抑制することができる。すなわち、ピラーガラスアウタ32を透過して集光される光線L1は、ピラーガラスインナ34を透過することで拡散される。その結果、乗員Pからみて、車外側の対象物(特に、内側壁部36及び、外側壁部38の車外側にある対象物)が歪んだ状態で視認されるという現象が抑制される。
このように、本実施形態に係る車両用ピラー構造10では、車内側の乗員Pの死角領域BSをほとんどなくすと共に、ピラーガラスアウタ32及びピラーガラスインナ34を通して見る対象物が歪んで見えるといった現象が抑制され、ひいては乗員Pの視認性が向上する。
さらに、本実施形態に係る車両用ピラー構造10では、ピラーの骨格の一部を構成する内側壁部36及び外側壁部38の前端部との間にピラーガラスアウタ32が架け渡され、かつ、内側壁部36及び外側壁部38の後端部との間にピラーガラスインナ34が架け渡されている。これにより、フロントピラー20は、長手方向視で閉断面化されている。その結果、フロントピラーが閉断面化されていない構成と比較して、フロントピラー20の強度を向上させることができる。
(参考例)
以下、図3を用いて参考例として車両用ピラー構造60について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。この参考例では、平板状のピラーガラスインナ64を設ける点で第1実施形態と異なる。
本参考例の車両用ピラー構造60が適用されたフロントピラー62は、ピラーフレーム30と、ピラーガラスアウタ32と、ピラーガラスインナ64とを主要部として構成されている。なお、ピラーフレーム30とピラーガラスアウタ32との関係は第1実施形態と同様の構成であるため記載を省略する。
ピラーガラスインナ64は、ピラーガラスアウタ32と同様に、例えば無機ガラス又は高強度透明樹脂から構成されている。図3に示されるように、ピラーガラスインナ64は、内側壁部36及び外側壁部38の車内側に、フロントピラー62の長手方向と直交する方向を板厚方向として配置され、平板状に形成されている。
また、ピラーガラスインナ64の車外側の側面64Aは、車幅方向の内側端部64A1が内側壁部36の第3壁部36Cにおける車幅方向外側端部に対向して配置されており、接着剤40を用いて第3壁部36Cに接合されている。一方で、側面64Aにおける車幅方向の外側端部64A2は、外側壁部38の第3壁部38Cにおける車幅方向内側端部に対向して配置されており、接着剤40を用いて第3壁部38Cに接合されている。
ピラーガラスインナ64の車内側の側面64Bは、フロントピラー62の車内側の意匠面を形成している。また、側面64Bにおける車幅方向の内側端部64B1から、内側壁部36の第3壁部36Cの車幅方向内側端部に亘って、図示しないピラーガニッシュがフロントピラー62の上下方向に沿って配置されている。これにより、フロントピラー62の車幅方向内側の周縁部における車内側の意匠面が形成されている。また、ピラーガラスインナ64の側面64Bにおける車幅方向の外側端部64B2から、外側壁部38の第3壁部38Cの車幅方向外端部に亘って、図示しないピラーガニッシュがフロントピラー62の上下方向に沿って配置されている。これにより、フロントピラー62の車幅方向外側の周縁部における車内側の意匠面が形成されている。
ここで、図3には、乗員PのアイポイントEPの高さにおけるフロントピラー62の平断面を拡大して図示している。この図3では、車外空間から入射し、フロントピラー62のピラーガラスアウタ32及びピラーガラスインナ64を透過する光の行路を複数の線分L2により概略的に示している。
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
図3に示されるように、第1実施形態と同様に、ピラーガラスアウタ32は、長手方向から見て、略車幅方向における中央の厚みが周辺の厚みより薄い凹形状をなしている。そのため、所謂凹レンズと同様の作用を奏する。
すなわち、車外側からピラーガラスアウタ32に入射する各光線L2は、ピラーガラスアウタ32を透過する際に集光される。そして、仮にピラーガラスアウタ32及びピラーガラスインナ64を平板状に形成された場合に、車内の乗員Pにおける視認可能領域VAの車幅方向外側(一対の接線T2の外側)から入射される光線L1もピラーガラスアウタ32に集光される。このため、第1実施形態と同様に、車内側の乗員Pから見て、内側壁部36及び外側壁部38に遮られる車外側の対象物も視認することができる。その結果、乗員Pの死角領域BSをさらに減少させることができる。
なお、本実施形態のピラーガラスインナ64は、平板状に形成されているため、光線L2はピラーガラスインナ64を透過した光線L2は、拡散されずに乗員PのアイポイントEPに入ってくることなる。したがって、車内側からピラーガラスアウタ32及びピラーガラスインナ64を通して車外側を見ると、内側壁部36及び、外側壁部38の車外側にある対象物については歪んで見えることとなる。
しかしながら、本参考例に係る車両用ピラー構造60では、車内側の乗員Pの死角領域BSをほとんどなくすという点で、乗員Pの視認性を向上することができる。
なお、上記第1実施形態及び参考例では、ピラーフレーム30を構成する内側壁部36及び外側壁部38を樹脂製としたが、本発明はこれに限らない。例えば、内側壁部36及び外側壁部38を超高張力鋼板等の鋼材により構成してもよい。さらに、この場合には、内側壁部36及び外側壁部38が中空に形成されてもよい。
また、上記第1実施形態及び参考例では、ピラーガラスアウタ32及びピラーガラスインナ34と、内側壁部36及び外側壁部38とをそれぞれ接着剤40を介して接合したが、本発明はこれに限らない。ピラーガラスアウタ32と内側壁部36及び外側壁部38とを一体の構成としてもよい。
なお、上記第1実施形態及び参考例におけるピラーガラスアウタ32とピラーガラスインナ34は、長手方向から見て、略両凹レンズ状をなしているが、本発明はこれに限らない。所謂凹レンズと同様の効果を奏するものであればよく、例えば、平板凹型フレネルレンズでもよい。
なお、上記第1実施形態及び参考例では、車両用ピラー構造10、60が右ハンドル仕様の車両Sに適用されているが、車両用ピラー構造10、60を左ハンドル仕様の車両に適用してもよい。