JP6800142B2 - 反芻動物用飼料 - Google Patents

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Description

本発明は、反芻動物用飼料に関する。
一般に、牧畜分野においては、家畜の乳量の増加や増体重などを目的に、栄養価の高い濃厚飼料が、牧草などの粗飼料とともに使用されることが多い。
濃厚飼料は、トウモロコシなどの易消化性炭水化物(デンプンなど)を多く含む一方、粗飼料は、牧草を乾燥した干草(乾草、わら類)や、青刈りした牧草を発酵させた(サイレージ化)ものなどを主とする。
反芻動物が粗飼料を摂取し消化しうるのは、ルーメン(第一胃)を有するためである。ルーメンは、反芻動物が有する複数の胃のうち最大の容積を占め、粗飼料中のセルロースやヘミセルロースなどの難消化性の多糖類を分解(ルーメン発酵)し得る微生物群(ルーメン微生物)が豊富に含まれている。
しかし、粗飼料中のセルロースやヘミセルロースは、リグニン類と結合し、それぞれリグニン−セルロース複合体やリグニン−ヘミセルロース複合体として存在している場合が多い。このような複合体は、ルーメン発酵において十分に分解されないおそれがあり、粗飼料は、飼料効率が不十分になりやすいという問題点があった。また、未消化物が多くなると糞量の増加を引き起こすため、環境面においても望ましくないとされていた。
さらに、牧草の中には多量の硝酸態窒素が含まれている場合があり、これを摂取した反芻動物が各種の亜硝酸塩中毒になることがある。亜硝酸塩中毒は、摂取した牧草の硝酸態窒素から体内で生産された亜硝酸が、酸素を運搬する血液中のヘモグロビンと化合してしまい、ヘモグロビンが酸素を受入れなくなるために生じるものである。亜硝酸塩中毒は、重篤な場合には窒息状態になり反芻動物が急死することもあり、また、乳牛の場合には乳量低下等の症状を引き起こすことがある。
さらにまた、粗飼料は、牧草の収穫量や作柄により影響を受けやすく、供給量が不安定である。特にわが国では粗飼料の多くを輸入にたよっているため、概して価格変動が大きく、また、輸出国の諸事情により輸入困難になる場合もあり、牧場経営を圧迫する場合がある。
このため、牧草に代わりうる、飼料効率に優れ、亜硝酸塩中毒等の疾病を引き起こさない、安価であり、且つ安定的に入手可能な反芻動物用飼料が望まれている。
ここで、飼料中の栄養濃度を高めるため、易消化性の炭水化物(デンプン)を多く含む濃厚飼料を粗飼料に配合することが一般に行われている。乳用家畜の乳量を維持し、或いは、肉用家畜の増体を維持するためは、飼料摂取量をも増加させる必要があるが、乳量の増加や体格の増強にともなうエネルギー要求量の増加率は、摂取飼料量の増加率を超えるためである。ところが、濃厚飼料中のデンプンなどの炭水化物は、第一胃(ルーメン)のpHを急激に低下させることがあり、結果としてルーメンアシドーシスが発生することがある。ルーメンアシドーシスは、反芻動物の疾病の一種であり、炭水化物に富む穀物、濃厚飼料、果実類などを急激に摂取することにより引き起こされる。ルーメンアシドーシスにおいては、ルーメン内において、グラム陽性乳酸生成菌、特にStreptcoccus bovisおよびLactobacillus属微生物が増加し、乳酸あるいは揮発性脂肪酸(volatile fatty acid:VFA)の異常な蓄積が生じ、ルーメン内のpH(5以下)が低下する。その結果、ルーメン内の原生動物およびある種の細菌の減少あるいは消滅を引き起こす。特に急性アシドーシスは、ルーメンの鬱血や脱水症(胃内容浸透圧の上昇に伴い体液が大量に胃内に移動)、さらには昏睡や死をもたらすため、極めて危険である。
ルーメンアシドーシスの予防には、飼料配合の急激な変化を避け、ルーメン発酵を安定化させ、pHの変動を少なくすることが重量である。また、唾液には重曹が含まれpH調節に寄与するため、十分な反芻により唾液分泌のできる飼料を給与することも重要である。ただし、ルーメンアシドーシスを恐れ、飼料の栄養価を低くすると、エネルギーが不足して乳生産量が低下してしまうという懸念もある。
ルーメンアシドーシスを予防する飼料として、特許文献1には、100重量部のビートパルプに対して5〜60の廃糖蜜を含む混合物からなる粉粒体の糖蜜飼料が開示されている。また、特許文献2には、セルロースおよび/またはヘミセルロースを、乾燥固形分として80重量%以上含有する反芻動物用飼料、特許文献3には、木質原料に高衝撃力を与えて粉砕し微粒子化した家畜飼料が開示されている。
特開2006−174796号公報 特開2011−082381号公報 特開2012−105570号公報
しかしながら、上述した引用文献1のビートパルプと廃糖蜜の混合物からなる粉粒体の糖蜜飼料は、消化率をはじめとする飼料効率が十分ではなかった。また、引用文献2や引用文献3に記載の飼料は、反芻家畜の第1胃(ルーメン)を刺激して反芻を促す作用(物理性)に乏しく、また、嗜好性に劣っている。
そこで、本発明は、栄養価や飼料効率に優れた反芻動物用飼料を製造する技術を提供することを目的とする。特に本発明は、ルーメンアシドーシスを起こさず、また、反芻を促す物理性の高い飼料であって、牧草と比較しても亜硝酸中毒のような悪影響の可能性がなく、安価で安定供給可能で経済的にも有利な飼料を提供することを課題とする。さらに本発明は、反芻動物の嗜好性にも優れた飼料を開発することもその課題である。
本発明の発明者らは、上記課題について鋭意検討したところ、リグノセルロース材料から液体中でパルプ化したものを固液分離することによって、驚くべきことに上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
(1) 反芻動物用飼料の製造方法であって、リグノセルロース材料を原料として液体中でパルプを得る工程、得られたパルプを加圧式の固液分離装置にて固液分離する工程、固液分離したパルプを含む飼料を調製する工程、を含む、上記方法。
(2) 固液分離装置による処理後のパルプの含水率が45質量%以上80質量%未満である、(1)に記載の方法。
(3) リグノセルロース材料が木質資源由来である、(1)または(2)に記載の方法。
(4) パルプがクラフトパルプである、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5) 固液分離装置が、スクリュープレスおよび/またはフィルタープレスである、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6) 固液分離装置にて処理したパルプを含水率15%以下まで乾燥する工程をさらに含む、(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7) 固液分離装置を用いて多段階で固液分離を行う、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8) 第1段目の固液分離によってパルプの含水率が50〜75質量%になるまで固液分離する、(7)に記載の方法。
(9) 抄紙機またはパルプマシンを用いて固液分離を行う、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(10) 抄紙機またはパルプマシンを用いて固液分離したパルプの含水率が15〜35質量%である、(9)に記載の方法。
(11) 固液分離したパルプをペレット化する工程をさらに含む、(1)〜(10)のいずれかに記載の方法。
(12) パルプペレットの含水率が15質量%以下である、(11)に記載の方法。
(13) ペレット化する前のパルプの含水率が15〜30質量%である、(11)または(12)に記載の方法。
本発明によれば、反芻動物の嗜好性が高く、反芻家畜の第1胃(ルーメン)を刺激して反芻を促す作用(物理性)を有する飼料を得ることができる。特に本発明に係る飼料は、従来の濃厚飼料や牧草の使用量を減らすことができるので、ルーメンアシドーシスや亜硝酸中毒などを防ぐことができる。また、本発明の反芻動物用試料は、木材を初めとする植物原料から製造できるので安定かつ安価に供給することができる。また、運搬性にも優れている。
本発明の反芻動物用飼料は、反芻動物に適用される。反芻動物としては、例えば、乳牛及び肥育牛などの牛、羊、山羊などが挙げられる。本発明の飼料を反芻動物に給与する時期、すなわち適用対象である反芻動物の年齢、体格、健康状態等には特に制限はなく、代用乳が給与される哺乳期が終わってから哺乳期の仔牛から成牛まで可能である。
本発明の反芻動物用飼料は、リグノセルロース物質を原料とする、固液分離装置にて処理されたパルプを含む。リグノセルロース原料を液体中でパルプ化した後、水で洗浄し脱水する工程を含むが、脱水工程において加圧式固液分離装置にて含水率を調整したパルプを本発明で使用する。この時、含水率を45質量%以上80質量%未満とすることが好ましい。含水率を45質量%未満にすると、過度に脱水することになり成形品が締まり過ぎるため、消化率が低下する。含水率を80質量%以上にすると、成型することが不可能となり、運搬性が低下する。なお、固液分離装置にて含水率を80質量%未満まで調整した後に、風乾により含水率を低下させてもよい。
また、本発明の好ましい態様において、固液分離装置を用いて多段階で固液分離を行うことができる。例示的な態様においては、第1段目の固液分離によってパルプの含水率(水分率)が50〜75質量%になるまで固液分離することができ、第1段目の固液分離で含水率を55〜70質量%や60〜65質量%まで低下させてもよい。
加圧式の固液分離装置としては、通常パルプ製造工程で洗浄機としても使用されるスクリュープレス、フィルタープレス等を好ましく用いることができる。
また、本発明においては、抄紙機またはパルプマシンを用いて固液分離を行うことも可能である。例えば、抄紙機を用いて固液分離する場合、パルプの含水率を15〜35質量%に調整することができ、抄紙機を用いてパルプの含水率を16〜30質量%や17〜25質量%まで低下させてもよい。なお、抄紙機またはパルプマシンを用いて固液分離を行ったパルプは坪量が100〜2000g/cmのパルプシートとすることができる。一般に抄紙機またはパルプマシンは、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパートを備えており、ワイヤーパートではパルプ懸濁液が無端状ワイヤーに供給されてパルプシートが形成され、プレスパートではパルプシートがプレス用フェルトによって移送されプレスニップを通過しながらされに脱水され、ドライヤーパートではパルプシートがカンバスによって移送されつつ乾燥される。
本発明の反芻動物用飼料は、公知の種々のパルプ化法によって製造されたパルプを使用することができる。例えば、機械パルプ、化学パルプのいずれもが適用可能である。機械パルプとしては、砕木パルプ(GP)、リファイナーグラウンドウッドパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等が挙げられる。化学パルプとしては、クラフトパルプ(KP)、溶解クラフトパルプ(DKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解サルファイトパルプ(DSP)等が挙げられる。また、漂白パルプ、未漂白パルプのいずれも使用できる。
本発明の反芻動物用飼料において、パルプは1種類のものから成るものでもよく、複数のパルプを混合したものでもよい。例えば、原料や製造方法の異なる化学パルプ(広葉樹クラフトパルプ、針葉樹クラフトパルプ、溶解広葉樹クラフトパルプ、溶解針葉樹クラフトパルプ)、あるいは機械パルプ(砕木パルプ、リファイナーグラウンドウッドパルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ)、を2種以上混合して使用してもよい。
原料の木材としては、例えば、広葉樹、針葉樹、雑木、タケ、ケナフ、バガス、パーム油搾油後の空房が使用できる。具体的には、広葉樹としては、ブナ、シナ、シラカバ、ポプラ、ユーカリ、アカシア、ナラ、イタヤカエデ、センノキ、ニレ、キリ、ホオノキ、ヤナギ、セン、ウバメガシ、コナラ、クヌギ、トチノキ、ケヤキ、ミズメ、ミズキ、アオダモ等が例示される。針葉樹としては、スギ、エゾマツ、カラマツ、クロマツ、トドマツ、ヒメコマツ、イチイ、ネズコ、ハリモミ、イラモミ、イヌマキ、モミ、サワラ、トガサワラ、アスナロ、ヒバ、ツガ、コメツガ、ヒノキ、イチイ、イヌガヤ、トウヒ、イエローシーダー(ベイヒバ)、ロウソンヒノキ(ベイヒ)、ダグラスファー(ベイマツ)、シトカスプルース(ベイトウヒ)、ラジアータマツ、イースタンスプルース、イースタンホワイトパイン、ウェスタンラーチ、ウェスタンファー、ウェスタンヘムロック、タマラック等が例示される。
クラフトパルプ
本発明におけるパルプは、好ましい態様においてクラフトパルプを含み、特に好ましくは木材由来のクラフトパルプを含む。また、本発明のパルプはカッパー価が5以上15未満であることが好ましく、酸素脱リグニン処理したクラフトパルプを含むことが好ましい。
木材チップからクラフトパルプを製造する場合、木材パルプは、蒸解液と共に蒸解釜へ投入され、クラフト蒸解に供する。また、MCC、EMCC、ITC、Lo−solidなどの修正クラフト法の蒸解に供しても良い。また、1ベッセル液相型、1ベッセル気相/液相型、2ベッセル液相/気相型、2ベッセル液相型などの蒸解型式なども特に限定はない。すなわち、本願のアルカリ性水溶液を含浸し、これを保持する工程は、従来の蒸解液の浸透処理を目的とした装置や部位とは別個に設置してもよい。好ましくは、蒸解を終えた未晒パルプは蒸解液を抽出後、ディフュージョンウォッシャーなどの洗浄装置で洗浄する。
クラフト蒸解工程は、前加水分解処理した木材チップをクラフト蒸解液とともに耐圧性容器に入れて行うことができるが、容器の形状や大きさは特に制限されない。木材チップと薬液の液比は、例えば、1.0〜5.0L/kgとすることができ、1.5〜4.5L/kgが好ましく、2.0〜4.0L/kgがさらに好ましい。
また、本発明においては、絶乾チップ当たり0.01〜1.5質量%のキノン化合物を含むアルカリ性蒸解液を蒸解釜に添加してもよい。キノン化合物の添加量が0.01質量%未満であると添加量が少なすぎて蒸解後のパルプのカッパー価が低減されず、カッパー価とパルプ収率の関係が改善されない。さらに、粕の低減、粘度の低下の抑制も不十分である。また、キノン化合物の添加量が1.5質量%を超えてもさらなる蒸解後のパルプのカッパー価の低減、及びカッパー価とパルプ収率の関係の改善は認められない。
使用されるキノン化合物はいわゆる公知の蒸解助剤としてのキノン化合物、ヒドロキノン化合物又はこれらの前駆体であり、これらから選ばれた少なくとも1種の化合物を使用することができる。これらの化合物としては、例えば、アントラキノン、ジヒドロアントラキノン(例えば、1,4−ジヒドロアントラキノン)、テトラヒドロアントラキノン(例えば、1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン、1,2,3,4−テトラヒドロアントラキノン)、メチルアントラキノン(例えば、1−メチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン)、メチルジヒドロアントラキノン(例えば、2−メチル−1,4−ジヒドロアントラキノン)、メチルテトラヒドロアントラキノン(例えば、1−メチル−1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン、2−メチル−1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン)等のキノン化合物であり、アントラヒドロキノン(一般に、9,10−ジヒドロキシアントラセン)、メチルアントラヒドロキノン(例えば、2−メチルアントラヒドロキノン)、ジヒドロアントラヒドロアントラキノン(例えば、1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン)又はそのアルカリ金属塩等(例えば、アントラヒドロキノンのジナトリウム塩、1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセンのジナトリウム塩)等のヒドロキノン化合物であり、アントロン、アントラノール、メチルアントロン、メチルアントラノール等の前駆体が挙げられる。これら前駆体は蒸解条件下ではキノン化合物又はヒドロキノン化合物に変換する可能性を有している。
蒸解液は、木材チップが針葉樹の場合、対絶乾木材チップ重量当たりの活性アルカリ添加率(AA)を16〜22質量%とすることが好ましい。活性アルカリ添加率を16質量%未満であるとリグニンやヘミルロースの除去が不十分となり、22質量%を超えると収率の低下や品質の低下が起こる。ここで活性アルカリ添加率とは、NaOHとNaSの合計の添加率をNaOの添加率として換算したもので、NaOHには0.775を、NaSには0.795を乗じることでNaOの添加率に換算できる。また、硫化度は20〜35%の範囲が好ましい。硫化度20%未満の領域においては、脱リグニン性の低下、パルプ粘度の低下、粕率の増加を招く。
クラフト蒸解は、120〜180℃の温度範囲で行うことが好ましく、140〜160℃がより好ましい。温度が低すぎると脱リグニン(カッパー価の低下)が不十分である一方、温度が高すぎるとセルロースの重合度(粘度)が低下する。また、本発明における蒸解時間とは、蒸解温度が最高温度に達してから温度が下降し始めるまでの時間であるが、蒸解時間は、60分以上600分以下が好ましく、120分以上360分以下がさらに好ましい。蒸解時間が60分未満ではパルプ化が進行せず、600分を超えるとパルプ生産効率が悪化するために好ましくない。
また、本発明におけるクラフト蒸解は、Hファクター(Hf)を指標として、処理温度及び処理時間を設定することができる。Hファクターとは、蒸解過程で反応系に与えられた熱の総量を表す目安であり、下記の式によって表わされる。Hファクターは、チップと水が混ざった時点から蒸解終了時点まで時間積分することで算出する。
Hf=∫exp(43.20−16113/T)dt
[式中、Tはある時点の絶対温度を表す]
本発明においては、蒸解後得られた未漂白(未晒)パルプは、必要に応じて、種々の処理に供することができる。例えば、クラフト蒸解後に得られた未漂白パルプに対して、漂白処理を行うことができる。
クラフト蒸解で得られたパルプについて、酸素脱リグニン処理を行うことができる。本発明に使用される酸素脱リグニンは、公知の中濃度法あるいは高濃度法がそのまま適用できる。中濃度法の場合はパルプ濃度が8〜15質量%、高濃度法の場合は20〜35質量%で行われることが好ましい。酸素脱リグニンにおけるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを使用することができ、酸素ガスとしては、深冷分離法からの酸素、PSA(Pressure Swing Adsorption)からの酸素、VSA(Vacuum Swing Adsorption)からの酸素等が使用できる。
酸素脱リグニン処理の反応条件は、特に限定はないが、酸素圧は3〜9kg/cm、より好ましくは4〜7kg/cm、アルカリ添加率は0.5〜4質量%、温度は80〜140℃、処理時間は20〜180分、この他の条件は公知のものが適用できる。なお、本発明において、酸素脱リグニン処理は、複数回行ってもよい。
さらなるカッパー価の低下、白色度の向上させる場合、酸素脱リグニン処理が施されたパルプは、例えば、次いで洗浄工程へ送られ、洗浄後、多段漂白工程へ送られ、多段漂白処理を行うことができる。本発明の多段漂白処理は、特に限定されるものではないが、酸(A)、二酸化塩素(D)、アルカリ(E)、酸素(O)、過酸化水素(P)、オゾン(Z)、過酸等の公知の漂白剤と漂白助剤を組み合わせるのが好適である。例えば、多段漂白処理の初段は二酸化塩素漂白段(D)やオゾン漂白段(Z)を用い、二段目にはアルカリ抽出段(E)や過酸化水素段(P)、三段目以降には、二酸化塩素や過酸化水素を用いた漂白シーケンスが好適に用いられる。三段目以降の段数も特に限定されるわけではないが、エネルギー効率、生産性等を考慮すると、合計で三段あるいは四段で終了するのが好適である。また、多段漂白処理中にエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)等によるキレート剤処理段を挿入してもよい。
本発明の反芻動物用飼料は、パルプ分が100%から成るものでもよいが、栄養や嗜好性を高めるために他の飼料成分を配合してもよい。その際、全試料の固形分に対するパルプの含有量が80重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましい。他の飼料成分としては、粗飼料(例えば牧草)、濃厚飼料(例えばトウモロコシ、麦などの穀類、大豆などの豆類)、ふすま、米糠、おから、蛋白質、脂質、ビタミン、ミネラルなどや添加剤(保存料、着色料、香料等)、等が挙げられる。これらの他の飼料成分は圧縮成型を行う際に、パルプに混合させてもよい。
本発明の反芻動物用飼料は、含水率を15質量%以下とすることが好ましい。含水率を15質量%以下とすることで、運搬性が向上し、微生物による腐敗を軽減できる。
また、本発明においては、固液分離処理したパルプをペレット化してもよい。ペレット化することによって運搬性が向上し、取り扱いやすい飼料とすることができる。好ましい態様において、パルプペレットの含水率が15質量%以下であり、このような水分量であると、長期保存した場合であっても微生物による腐敗を軽減しやすくなる。また、好ましい態様において、ペレット化する前のパルプの含水率は15〜30質量%であり、16〜25質量%がより好ましい。このような含水率であると、ペレット化しやすく、また、ペレット成型の際の熱によってパルプの乾燥を同時に図ることができ効率的である。
以下に具体例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、本明細書において、%は特に断らない限り質量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
実験1:パルプを原料とした飼料の製造
<サンプル1−1:圧搾クラフトパルプ>
ユーカリ材チップを用いて液体中でクラフトパルプを製造した。まず、ユーカリ材のチップ(絶乾300g相当)を耐圧釜に入れ、活性アルカリ添加率13.0%、硫化度25%、Hファクター830の条件にてクラフト蒸解を行って未晒クラフトパルプを得た(カッパー価:16.7、白色度:30.3%)。水道水で洗浄後、遠心脱水を行い、濃度30%のパルプを得た。
得られたクラフトパルプを濃度10%に調製後、O添加率18kg/t、水酸化ナトリウム23kg/t、100℃、90分の条件にて酸素脱リグニン処理を行って酸素脱リグニン処理パルプを得た(カッパー価:8.5、ISO白色度:49.3%)。得たパルプをpH8.0以下になるまで水道水で洗浄後、遠心脱水を行った。その後、解繊処理を行いパルプ濃度20.6%の酸素脱リグニンパルプを得た。
得られた酸素脱リグニン処理パルプを、スクリュープレスにて圧搾して固液分離処理を行い、含水率72.1%の圧搾クラフトパルプを得た。
この圧搾クラフトパルプを角型バット(外形寸法:255mm×320mm×63mm)に置き、前日との重量誤差が1%未満になるまで風乾し、含水率7.1%のパルプを得た(サンプル1−1)。
<サンプル1−2:ペレット成型した酸素脱リグニンパルプ>
上記圧搾パルプを、プレスペレッター(半乾式連続ペレット製造装置、チヨダマシナリー製)を用いてペレット化した後(直径9mm×長さ15mm)、風乾し含水率7.0%のパルプペレットを得た(サンプル1−2)。
<サンプル1−3:未成型の酸素脱リグニンパルプ>
圧搾処理を行っていない上記酸素脱リグニンパルプをそのまま風乾し含水率7.1%とした(サンプル1−3)。
<サンプル1−4:2段階脱水した未晒クラフトパルプ>
上記未晒クラフトパルプ(濃度約10%)を、工場設備であるベルトプレスを用いて含水率62.1%まで脱水し、次いで、スクリュープレス(富国工業製、型式SHX−200)を用いて含水率26.9%まで脱水した(サンプル1−4)。
<サンプル1−5:抄紙機で処理された未晒クラフトパルプ>
上記未晒クラフトパルプを溶解パルパーにて濃度3%に調整した後、小型抄紙機にてシートを抄造した。抄紙工程は、ワイヤーパート、プレスパート、さらにドライヤーパートを含んで構成され、ドライヤーパートにおいて100℃程度に温度調節したドラムローラーの通過回数を調整することで、含水率17.7%、坪量123.5g/cmのシートを得た。抄造したシートを10mm角に断裁して飼料サンプルとした(サンプル1−5)。
<サンプル1−6:風乾してからペレット化した未晒クラフトパルプ>
上記未晒クラフトパルプを含水率17.9%まで風乾し、このパルプをCPM社製ペレタイザーにてペレット成型し、含水率13.9%のパルプペレットを得た(サンプル1−6)。
実験2:糖化率の測定
実験1で得られた飼料サンプル(圧搾クラフトパルプ、風乾重量400mg)を、樹脂製サンプル瓶(50ml容)に正確に秤量した。pH4.8、セルラーゼ(商品名:102321 セルラーゼ オノズカ R−10、メルク株式会社製)0.1%を添加した懸濁液45mlを容器に添加し、45℃にて48時間糖化処理を行った。
2時間後、4時間後、8時間後、24時間後、48時間後の時点でサンプルを採取し、糖化されたパルプの割合(セルラーゼ糖化率)を測定した。具体的には、あらかじめ恒量を求めたろ紙上でろ過し、4回水洗を行った後に、135℃の通風乾燥機中で2時間乾燥し、残渣の乾物重量を測定した。
セルラーゼ糖化率は、反芻動物における消化率と高い相関があり、糖化率が高いほど、反芻動物において消化されやすいと考えられる。表1に示したように、サンプル1−1(圧搾クラフトパルプ)は、サンプル1−2(ペレット成型した酸素脱リグニンパルプ)と比較して、糖化率および糖化速度が高く、またサンプル1−3(未成型の酸素脱リグニンパルプ)とほぼ同等の糖化率を示した。サンプル1−4(2段階脱水した酸素脱リグニンパルプ)やサンプル1−5(抄紙した酸素脱リグニンパルプ)は、サンプル1−1とほぼ同じ糖化率を示した。
Figure 0006800142
実験3:in situでの消化性評価
実験1で製造したサンプルと市販の飼料(圧片トウモロコシおよびバミューダグラス乾草)について、ルーメン内における消化性を、in situ法で測定した(Nocek 1988)。
供試動物(乳牛)のルーメン内に、サンプル1−1(スクリュープレス処理した圧搾クラフトパルプ)などの各サンプルを風乾重量で5g秤量したポリエステルバッグ(#R1020、ポリエステル、10cm×20cm、平均孔径50±15μm、ANKOM Technology Corp.、Fairport、NY、USA)を投入した。投入後、2時間、4時間、8時間、24時間、48時間の時点でルーメン内からポリエステルバッグを取り出し、水で洗浄し、60℃で乾物恒量を求めた。また、ルーメン内には投入せず、水で洗浄しただけの飼料の入ったポリエステルバッグを、分解時間0時間の試料とした。各試料の測定は、実施日を異ならせて3連で行った。
各サンプルの試験結果を表2に示す。表2に示されるように、サンプル1−1のパルプは、バミューダグラス乾草を越える消化率となった。さらに、サンプル1−1のパルプは、圧片トウモロコシと比較して消化が緩やかであり、ルーメン内での急激な分解・発酵を抑制する機能があるものと思われた。
Figure 0006800142
実験4:嗜好性試験
乳牛4頭(A、B、C、Dとする)に対し、実験1で製造した飼料(サンプル1−1、サンプル1−2、サンプル1−3)を300g(風乾重量)ずつ用意し、5分間自由摂食させた。給与は午前7時に行い、各飼料の置場は試験ごとに入れ替え、嗜好性試験を3回行った。
以下の表に示されるように、サンプル1−1はサンプル1−3と同等の採食性だった。また、サンプル1−2(ペレット)は食べ慣れないためか、サンプル1−1やサンプル1−3と比較して採食性が劣っていた。
Figure 0006800142
実験5:容積重測定
実験1のサンプルを105℃で恒量に達するまで乾燥した。その後、重量および体積を測定し容積重の測定を行った。
以下の表に示されるように、サンプル1−1(圧搾クラフトパルプ)は、サンプル1−3と比較して容積重が約2.5倍であり、運搬性が良好であると考えられる。また、サンプル1−4およびサンプル1−5も固液分離処理によって容積重が増加しており、運搬性に優れたものである。
Figure 0006800142
本発明のスクリュープレスで圧搾した酸素脱リグニン処理パルプ(圧搾クラフトパルプ)は、未成型の酸素脱リグニン処理パルプとほぼ同等の消化率および消化速度を示した。さらに、ペレット成型処理した酸素脱リグニン処理パルプと比較すると、消化率が高い傾向にあった。これはペレットのように圧縮成型しないため、消化液が早く浸漬するためだと考えられる。さらに、固液分離装置によって圧縮処理を行うことで、飼料の嵩比重が高まり、運搬性が大きく向上した。以上より、本発明の飼料は、消化性、運搬性、採食性に優れていた。

Claims (7)

  1. リグノセルロース材料を原料として液体中で、酸素脱リグニンしたクラフトパルプを得る工程、
    得られたパルプを加圧式の固液分離装置にて固液分離して、パルプの含水率を45質量%以上80質量%未満にする工程、
    固液分離したパルプを含水率15%以下まで乾燥して、パルプを含む飼料を調製する工程、
    を含む、反芻動物用飼料の製造方法(ただし、反芻動物用飼料はペレット化された飼料ではない)
  2. リグノセルロース材料が木質資源由来である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記クラフトパルプが、広葉樹を原料とするパルプである、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記クラフトパルプが、ユーカリを原料とするパルプである、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 固液分離装置が、スクリュープレスおよび/またはフィルタープレスである、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 固液分離装置を用いて多段階で固液分離を行う、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 第1段目の固液分離によってパルプの含水率が50〜75質量%になるまで固液分離する、請求項6に記載の方法。
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