JP2020010648A - 反芻動物用飼料成形物及び反芻動物用飼料成形物の製造方法 - Google Patents

反芻動物用飼料成形物及び反芻動物用飼料成形物の製造方法 Download PDF

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一博 黒須
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宏 新倉
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Kana Sato
加奈 佐藤
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Daisuke Minohara
大介 簑原
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Abstract

【課題】 保存性に優れ、反芻動物に資化されやすい反芻動物用飼料成形物を提供する。【解決手段】 リグノセルロース材料を原料とするカッパー価が5〜30であるクラフトパルプを含有する反芻動物用飼料成形物において、該成形物の水分率が30質量%以下で、かつセルラーゼ糖化率が70%以上であることを特徴とする反芻動物用飼料成形物。反芻動物が採食した後、反芻や体内での消化が容易であり、また、運搬性が向上し、微生物による腐敗を軽減できる。【選択図】 なし

Description

本発明は、反芻動物用飼料成形物およびその製造方法に関する。
一般に、牧畜分野においては、家畜の乳量の増加や増体重などを目的に、栄養価の高い濃厚飼料が、牧草などの粗飼料とともに使用されることが多い。
濃厚飼料は、トウモロコシ、麦類、大豆などの易消化性炭水化物(デンプンなど)を多く含む一方、粗飼料は、牧草を乾燥した干草(乾草、わら類)や、青刈りした牧草を発酵させたもの(サイレージ化したもの)などを主とする。
反芻動物が粗飼料を摂取し消化することが可能であるのは、ルーメン(第一胃)を有するためである。ルーメンは、反芻動物が有する複数の胃のうち最大の容積を占め、粗飼料中のセルロースやヘミセルロースなどの難消化性の多糖類を分解(ルーメン発酵)し得る微生物群(ルーメン微生物)が豊富に含まれている。
しかし、粗飼料中のセルロースやヘミセルロースは、リグニン類と結合し、それぞれリグニン−セルロース複合体やリグニン−ヘミセルロース複合体として存在している場合が多い。このような複合体は、ルーメン発酵において十分に分解されないおそれがあり、粗飼料は、飼料効率が不十分になりやすいという問題点があった。また、未消化物が多くなると糞量の増加を引き起こすため、環境面においても望ましくないとされていた。
さらに、粗飼料は、牧草の収穫量や作柄により影響を受けやすく、供給量が不安定である。特にわが国では粗飼料の多くを輸入に頼っているため、概して価格変動が大きく、また、輸出国の諸事情により輸入困難になる場合もあり、牧場経営を圧迫する場合がある。
このため、牧草に代替でき、飼料効率に優れ、且つ安定的に入手可能な反芻動物用飼料が望まれている。
ここで、飼料中の栄養濃度を高めるため、易消化性の炭水化物(デンプン)を多く含む濃厚飼料を粗飼料に配合することが一般に行われている。乳用家畜の乳量を維持し、或いは、肉用家畜の増体を維持するためは、飼料摂取量をも増加させる必要がある。これは、乳量の増加や体格の増強にともなうエネルギー要求量の増加率は、摂取飼料量の増加率を超えるためである。ところが、濃厚飼料中のデンプンなどの炭水化物は、第一胃(ルーメン)のpHを急激に低下させることがあり、結果としてルーメンアシドーシスが発生することがある。ルーメンアシドーシスとは、反芻動物の疾病の一種であり、炭水化物に富む穀物、濃厚飼料、果実類などを急激に摂取することにより引き起こされる。ルーメンアシドーシスにおいては、ルーメン内において、グラム陽性乳酸生成菌、特にStreptcoccus bovisおよびLactobacillus属微生物が増加し、乳酸あるいは揮発性脂肪酸(VFA:Volatile Fatty Acid)の異常な蓄積が生じ、ルーメン内のpHが低下する(pH5以下)。その結果、ルーメン内のプロトゾア(原生動物)、及びある種の細菌の減少あるいは消滅を引き起こす。特に急性アシドーシスは、ルーメンの鬱血や脱水症(胃内容浸透圧の上昇に伴い体液が大量に胃内に移動)、さらには昏睡や死をもたらすため、極めて危険である。
ルーメンアシドーシスの予防には、飼料配合の急激な変化を避け、ルーメン発酵を安定化させ、pHの変動を少なくすることが重要である。また、唾液には重曹が含まれpH調節に寄与するため、十分な反芻により唾液分泌のできる飼料を給与することも重要である。ただし、ルーメンアシドーシスを恐れ、飼料の栄養価を低くすると、エネルギーが不足して乳生産量が低下してしまうという懸念もある。
ルーメンアシドーシスを予防する飼料として、特許文献1には、木質原料に高衝撃力を与えて粉砕し微粒子化した家畜飼料が開示されている。また、ペレット化した飼料に関して、特許文献2には、加工食品残渣をペレット化して飼料を製造することが提案されている。さらに、特許文献3には、リグノセルロースバイオマスをペレット化して反芻動物の飼料とすることが記載されている。さらにまた、特許文献4には、カッパー価が90以下のクラフトパルプをペレット化して反芻動物の飼料とすることが記載されている。
特開2011−083281号公報 特開平10−75719号公報 国際公開WO2011/097075号公報(特表2013−518880号公報) 特開2015−198653号公報
反芻動物において、採食した飼料の栄養価を効率よく利用するには飼料の最終的な消化率を高くする必要がある。
また、飼料のハンドリングの容易さなどを考慮すると、飼料をペレットなどの形態にすることが考えられる。ところが、ペレットがあまりに硬いと、反芻動物が採食した後、反芻や体内での消化が困難となる。このとき、第一胃の中で異常な滞留時間となったり、消化されずに糞中に排出されたりすることがある。そのため、これまでこういった飼料は事前に水にふやかしてから採食させる方法があったが、給与の手間などの制約があり恒常的に実施することは難しい。
そこで本発明の課題は、比較的低水分でも反芻動物が消化しやすく、資化されやすい反芻動物用飼料成形物を提供することである。
本発明の発明者らは、上記課題について鋭意検討したところ、成形する際の成形機に投入する、リグノセルロース材料を原料とするカッパー価が5〜30であるクラフトパルプの水分率を40〜80質量%とし、そのクラフトパルプを原料として製造したパルプ成型物の水分率を30質量%以下に調整することによって、高いセルラーゼ糖化率の反芻動物用飼料成形物を製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
(1) リグノセルロース材料を原料とするカッパー価が5〜30であるクラフトパルプを含有する反芻動物用飼料成形物であって、
該成形物の水分率が30質量%以下で、下記に示すセルラーゼ糖化率が70%以上であることを特徴とする反芻動物用飼料成形物。
セルラーゼ糖化率:飼料成形物を濃度1%、pH4.0に調整した懸濁液に、セルラーゼを濾紙崩壊力1350U/(飼料成形物絶乾質量g)となるように添加し、40℃で、24時間反応させた後、式1より糖化率を求める。
セルラーゼ糖化率(%)=[(セルラーゼ処理前の飼料成形物質量−セルラーゼ処理後の飼料成形物質量)/セルラーゼ処理前の飼料成形物質量]×100 (式1)
(2) リグノセルロース材料が木質資源由来である、(1)記載の反芻動物用飼料成形物。
(3) リグノセルロース材料を原料とするカッパー価が5〜30であるクラフトパルプを含有し、かつ下記に示すセルラーゼ糖化率が70%以上である反芻動物用飼料成形物を製造するための方法であって、
水分率が40〜80質量%のクラフトパルプを加圧圧縮して成形する工程、
成形物の水分率を30質量%以下に調整する工程、を含む
上記方法。
セルラーゼ糖化率:飼料成形物を濃度1%、pH4.0に調整した懸濁液に、セルラーゼを濾紙崩壊力1350U/(飼料成形物絶乾質量g)となるように添加し、40℃で、24時間反応させた後、式1より糖化率を求める。
セルラーゼ糖化率(%)=[(セルラーゼ処理前の飼料成形物質量−セルラーゼ処理後の飼料成形物質量)/セルラーゼ処理前の飼料成形物質量]×100 (式1)
本発明によれば、消化効率に優れた飼料であって、反芻動物の嗜好性が高く、しかもハンドリングのしやすい成形物の形態の飼料を得ることができる。また、本発明の反芻動物用飼料成形物は、木材などのリグノセルロース原料から製造できるので安定かつ安価に供給することができる。
飼料成形物
本発明の反芻動物用飼料成形物は、反芻動物に適用される。反芻動物としては、例えば、乳牛及び肥育牛などの牛、羊、山羊などが挙げられる。本発明の飼料を反芻動物に給与する時期、すなわち適用対象である反芻動物の年齢、体格、健康状態等には特に制限はなく、例えば、哺乳期の仔牛から成牛、老廃牛まで用途があると考えられる。
本発明の飼料成形物は、漂白または未漂白のクラフトパルプを含有するが、クラフトパルプを10質量%以上含有することが好ましく、50質量%以上含有することがより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、クラフトパルプのみからなっていてもよい。必要に応じて、他の飼料成分を含有させてもよい。クラフトパルプとしては、酸素脱リグニン処理したものが好ましく、また、カッパー価が5〜30であることが必須である。より好ましくは、カッパー価は5〜25であり、5〜20であってもよく、6〜15としてもよい。カッパー価が30以下であると、セルラーゼ糖化率が向上し反芻動物のルーメンにおいて消化されやすく、また、反芻動物の嗜好性が良好である。
本発明の飼料成形物は、クラフトパルプ(KP)を含有するものであるが、他の公知のパルプ化法によって製造されたパルプを併用することができる。例えば、機械パルプ、化学パルプのいずれもが適用可能である。機械パルプとしては、砕木パルプ(GP)、リファイナーグラウンドウッドパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等が挙げられる。化学パルプとしては、クラフトパルプ(KP)、溶解クラフトパルプ(DKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解サルファイトパルプ(DSP)等が挙げられる。また、漂白パルプ、未漂白パルプのいずれも使用できる。これらの中では、酸素脱リグニン処理した化学パルプ、漂白化学パルプなどが好ましい。
本発明の飼料成形物において、パルプは1種類のものから成るものでもよく、複数のパルプを混合したものでもよい。例えば、原料や製造方法の異なる化学パルプ(広葉樹クラフトパルプ、針葉樹クラフトパルプ、溶解広葉樹クラフトパルプ、溶解針葉樹クラフトパルプ)、あるいは機械パルプ(砕木パルプ、リファイナーグラウンドウッドパルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ)、を2種以上混合して使用してもよい。
原料の木材としては、例えば、広葉樹、針葉樹、雑木、タケ、ケナフ、バガス、パーム油搾油後の空房が使用できる。具体的には、広葉樹としては、ブナ、シナ、シラカバ、ポプラ、ユーカリ、アカシア、ナラ、イタヤカエデ、センノキ、ニレ、キリ、ホオノキ、ヤナギ、セン、ウバメガシ、コナラ、クヌギ、トチノキ、ケヤキ、ミズメ、ミズキ、アオダモ等が例示される。針葉樹としては、スギ、エゾマツ、カラマツ、クロマツ、トドマツ、ヒメコマツ、イチイ、ネズコ、ハリモミ、イラモミ、イヌマキ、モミ、サワラ、トガサワラ、アスナロ、ヒバ、ツガ、コメツガ、ヒノキ、イチイ、イヌガヤ、トウヒ、イエローシーダー(ベイヒバ)、ロウソンヒノキ(ベイヒ)、ダグラスファー(ベイマツ)、シトカスプルース(ベイトウヒ)、ラジアータマツ、イースタンスプルース、イースタンホワイトパイン、ウェスタンラーチ、ウェスタンファー、ウェスタンヘムロック、タマラック等が例示される。
クラフトパルプ
木材チップからクラフトパルプを製造する場合、木材チップは蒸解液と共に蒸解釜へ投入され、クラフト蒸解に供する。また、MCC、EMCC、ITC、Lo−solidなどの修正クラフト法の蒸解に供しても良い。また、1ベッセル液相型、1ベッセル気相/液相型、2ベッセル液相/気相型、2ベッセル液相型などの蒸解型式なども特に限定はない。すなわち、本願のアルカリ性水溶液を含浸し、これを保持する工程は、従来の蒸解液の浸透処理を目的とした装置や部位とは別個に設置してもよい。好ましくは、蒸解を終えた未晒パルプは蒸解液を抽出後、ディフュージョンウォッシャーなどの洗浄装置で洗浄する。木材チップと薬液の液比は、例えば、1.0〜5.0L/kgとすることができ、1.5〜4.5L/kgが好ましく、2.0〜4.0L/kgがさらに好ましい。
また、本発明においては、キノン化合物を含むアルカリ性蒸解液を蒸解釜に添加してもよい。キノン化合物を含むアルカリ性蒸解液を添加する場合は絶乾チップ当たり0.01〜1.5質量%が好ましい。キノン化合物の添加量が0.01質量%未満であると添加量が少なすぎて蒸解後のパルプのカッパー価が低減されず、カッパー価とパルプ収率の関係が改善されない。さらに、粕の低減、粘度の低下の抑制も不十分である。また、キノン化合物の添加量が1.5質量%を超えてもさらなる蒸解後のパルプのカッパー価の低減、及びカッパー価とパルプ収率の関係の改善は認められない。
使用されるキノン化合物はいわゆる公知の蒸解助剤としてのキノン化合物、ヒドロキノン化合物又はこれらの前駆体であり、これらから選ばれた少なくとも1種の化合物を使用することができる。これらの化合物としては、例えば、アントラキノン、ジヒドロアントラキノン(例えば、1,4−ジヒドロアントラキノン)、テトラヒドロアントラキノン(例えば、1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン、1,2,3,4−テトラヒドロアントラキノン)、メチルアントラキノン(例えば、1−メチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン)、メチルジヒドロアントラキノン(例えば、2−メチル−1,4−ジヒドロアントラキノン)、メチルテトラヒドロアントラキノン(例えば、1−メチル−1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン、2−メチル−1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン)等のキノン化合物であり、アントラヒドロキノン(一般に、9,10−ジヒドロキシアントラセン)、メチルアントラヒドロキノン(例えば、2−メチルアントラヒドロキノン)、ジヒドロアントラヒドロアントラキノン(例えば、1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン)又はそのアルカリ金属塩等(例えば、アントラヒドロキノンのジナトリウム塩、1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセンのジナトリウム塩)等のヒドロキノン化合物であり、アントロン、アントラノール、メチルアントロン、メチルアントラノール等の前駆体が挙げられる。これら前駆体は蒸解条件下ではキノン化合物又はヒドロキノン化合物に変換する可能性を有している。
蒸解液は、対絶乾木材チップ重量当たりの活性アルカリ添加率(AA)を10〜35質量%とすることが好ましい。活性アルカリ添加率が10質量%未満であるとリグニンやヘミルロースの除去が不十分となり、35質量%を超えると収率の低下や品質の低下が起こる。ここで活性アルカリ添加率とは、NaOHとNaSの合計の添加率をNaOの添加率として換算したもので、NaOHには0.775を、NaSには0.795を乗じることでNaOの添加率に換算できる。また、硫化度は20〜35%の範囲が好ましい。硫化度20%未満の領域においては、脱リグニン性の低下、パルプ粘度の低下、粕率の増加を招く。
クラフト蒸解は、120〜180℃の温度範囲で行うことが好ましく、140〜160℃がより好ましい。温度が低すぎると脱リグニン(カッパー価の低下)が不十分である一方、温度が高すぎるとセルロースの重合度(粘度)が低下する。また、本発明における蒸解時間とは、蒸解温度が最高温度に達してから温度が下降し始めるまでの時間であるが、蒸解時間は、60分以上600分以下が好ましく、120分以上360分以下がさらに好ましい。蒸解時間が60分未満ではパルプ化が進行せず、600分を超えるとパルプ生産効率が悪化するために好ましくない。
また、本発明におけるクラフト蒸解は、Hファクター(Hf)を指標として、処理温度及び処理時間を設定することができる。Hファクターとは、蒸解過程で反応系に与えられた熱の総量を表す目安であり、下記の式によって表わされる。Hファクターは、チップと水が混ざった時点から蒸解終了時点まで時間積分することで算出する。Hファクターとしては、300〜2000が好ましい。
Hf=∫exp(43.20−16113/T)dt
[式中、Tはある時点の絶対温度を表す]
本発明においては、蒸解後得られた未漂白(未晒)パルプは、必要に応じて、種々の処理に供することができる。例えば、クラフト蒸解後に得られた未漂白パルプに対して、漂白処理を行うことができる。
クラフト蒸解で得られたパルプについて、酸素脱リグニン処理を行うことができる。本発明に使用される酸素脱リグニンは、公知の中濃度法あるいは高濃度法がそのまま適用できる。中濃度法の場合はパルプ濃度が8〜15質量%、高濃度法の場合は20〜35質量%で行われることが好ましい。酸素脱リグニンにおけるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを使用することができ、酸素ガスとしては、深冷分離法からの酸素、PSA(Pressure Swing Adsorption)からの酸素、VSA(Vacuum Swing Adsorption)からの酸素等が使用できる。
酸素脱リグニン処理の反応条件は、特に限定はないが、酸素圧は3〜9kg/cm、より好ましくは4〜7kg/cm、アルカリ添加率はパルプ絶乾重量当たり0.5〜4質量%、処理温度80〜140℃、処理時間20〜180分、この他の条件は公知のものが適用できる。なお、本発明において、酸素脱リグニン処理は、複数回行ってもよい。また、酸素脱リグニン処理などを施した後のクラフトパルプのカッパー価は5〜15であることが好ましい。
さらなるカッパー価の低下、白色度の向上を目的とする場合、酸素脱リグニン処理が施されたパルプは、例えば、次いで洗浄工程へ送られ、洗浄後、多段漂白工程へ送られ、多段漂白処理を行うことができる。本発明の多段漂白処理は、特に限定されるものではないが、酸(A)、二酸化塩素(D)、アルカリ(E)、酸素(O)、過酸化水素(P)、オゾン(Z)、過酸等の公知の漂白剤と漂白助剤を組み合わせるのが好適である。例えば、多段漂白処理の初段は二酸化塩素漂白段(D)やオゾン漂白段(Z)を用い、二段目にはアルカリ抽出段(E)や過酸化水素段(P)、三段目以降には、二酸化塩素や過酸化水素を用いた漂白シーケンスが好適に用いられる。三段目以降の段数も特に限定されるわけではないが、エネルギー効率、生産性等を考慮すると、合計で三段あるいは四段で終了するのが好適である。また、多段漂白処理中にエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)等によるキレート剤処理段を挿入してもよい。
本発明においては、カナダ標準濾水度(CSF)が300ml以上のクラフトパルプを使用することが好ましい。反芻動物のルーメンにおける消化速度を緩やかにし、ルーメンにおける反芻を促進するような飼料を製造することが可能になる。好ましい態様において、本発明に用いるクラフトパルプのカナダ標準濾水度は450ml以上であり、500ml以上や550ml以上としてもよい。一般に、クラフトパルプのカナダ標準濾水度は、公知の方法によって低下させることができる。
飼料成形物の反芻動物への給餌
本発明の飼料成形物のセルラーゼ糖化率は70%以上であることが必要で、80%以上が好ましく、85%以上や90%以上としてもよい。セルラーゼ糖化率はTDN(Total Digestible Nutrients:可消化養分総量)と相関が高く、セルラーゼ糖化率が高い飼料成形物とすることで、エネルギー要求量を満たした反芻動物用飼料を製造することができる。
なお、セルラーゼ糖化率とは、飼料成形物を濃度1%、pH4.0に調整した懸濁液に、セルラーゼを濾紙崩壊力で1350U/(飼料成形物絶乾質量g)となるように添加し、40℃で、24時間反応させた後、式1より糖化率を求めるものである。
セルラーゼ糖化率(%)=[(セルラーゼ処理前の飼料成形物質量−セルラーゼ処理後の飼料成形物質量)/セルラーゼ処理前の飼料成形物質量]×100 (式1)
本発明の飼料成形物は、他の飼料と併せて反芻動物に給与することができる。他の飼料成分としては、粗飼料(例えば牧草)、濃厚飼料(例えばトウモロコシ、麦などの穀類、大豆などの豆類)、ふすま、米糠、おから、蛋白質、脂質、ビタミン、ミネラルなどや添加剤(保存料、着色料、香料等)、等が挙げられる。これらの他の飼料成分は圧縮成型を行う際に、木材パルプに混合させてもよい。
本発明の飼料に濃厚飼料を配合する場合、例えば、とうもろこし、小麦、大麦、精白米などの穀物を用いることができる。本発明の飼料においては、例えば、米、小麦、大麦、えん麦、マイロ、とうもろこしなどの穀物を主なデンプン源として用いることができる。
本発明においては、粗飼料を配合してもよい。粗飼料の原料としては、例えば、大豆、大豆粕(加糖加熱処理又は加湿加熱処理等を施した大豆粕を含む)、菜種粕、アマニ粕、コーングルテンミール、濃縮大豆蛋白、小麦グルテン、小麦グルテン酵素分解物などを挙げることができる。特に、大豆粕などの大豆由来粗蛋白質供給原料(ただし、加糖加熱処理又は加湿加熱処理を施したものを除く)は、溶解性蛋白質を多く給与してルーメン内での繊維の消化率を高め、子牛の成育を向上させるといった観点や、DDGS等の粗脂肪の含有量が比較的高いNDF供給原料などの配合により飼料中の粗脂肪の含有量が過度に多くなるのを抑制するため、飼料に配合することが好ましい。
本発明においては、飼料に糖類を配合してもよく、例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、及びマルトースなどを好適に配合することができる。
本発明の飼料は、上述した原料の他に、呈味料、ミネラル、ビタミン、有機ミネラル、牧草、イネ科の植物の飼料原料、結晶アミノ酸、油脂、脂肪酸、脂肪酸カルシウム、吸着材、鉱物、植物抽出物、発酵物、着香料、有機酸、抗生物質、動物質性飼料、微生物成分、漢方薬、酵素剤、オリゴ糖、木質系飼料、粘結剤、他の植物体加工副産物などを含んでもよい。
牧草としては、例えば、オーチャードグラス、チモシー、オーツヘイ、アルファルファ、イタリアンライグラス、アカクローバー等を挙げることができ、イネ科の植物に由来する飼料原料としては、例えば、ソルガム、小麦ストロー、稲わら等を挙げることができる。もっとも、牧草やイネ科の植物に由来する飼料原料は、例えば、生後3ヶ月齢以下の子牛にとっては消化が容易でないので、ルーメンの胃壁を刺激する目的で必要に応じて粗飼料として供給し、本発明の飼料成形物を子牛に給与する場合には、含有させないか、含有させるとしても少量とすることが好ましい。
本発明における飼料成形物は、公知の方法によってクラフトパルプを含む原料を成形することによって製造することができる。本発明に係る飼料成形物は、形状やサイズは特に制限されない。
また、本発明においては、圧縮成形前の水分率が40〜80質量%であるクラフトパルプを圧縮成形して成形物とする。好ましい態様において、クラフトパルプの水分率は40〜70質量%であり、45〜65質量%としてもよい。圧縮成形前のクラフトパルプの水分率が80質量%以上の場合、クラフトパルプは成型物とならず、その一方で水分率が40質量%以下の場合、成型物が強固になりセルラーゼ糖化率が著しく低下する。クラフトパルプの水分率の調整は、圧搾や乾燥によって行うことができ、公知の装置を使用することができる。水分率を調整する装置は特に限定されないが、例えば、パルプマシン(丸石製作所製)、スクリュープレス(富国工業製)、通気棚式乾燥機(日本乾燥機製)を好適な例として挙げることができる。なお、水分率とは、水分率(質量%)=(A−B)/A(A:乾燥前の飼料成形物質量、B:絶乾燥後の飼料成形物質量)、で算出される。
本発明の飼料成形物の水分率を30質量%以下にすることが必要で、好ましくは15質量%以下にする。水分含有率を30質量%以下とすることで、運搬性が向上し、微生物による腐敗を軽減できる。なお、飼料成形物水分率の水分率の調整は風乾、熱風乾燥等で行うことができる。
好ましい態様において、木材パルプを単体もしくは他の飼料成分を圧縮成型してペレットのような形態にしてもよい。本発明の飼料成形物と併用する飼料は、パルプ状、紛体状、顆粒状、フラッフ化の形態でもよいが、キューブ状、顆粒状、ペレット状などに圧縮成型するか、断裁したシート状の形態とすることで、トウモロコシや牧草などの他の飼料と混合することが容易となり、さらに運搬や取扱いが容易となるので好ましい。
成形は、圧縮成型によって行うことができ、公知の装置を使用することができる。圧縮成型を行うための装置は特に限定されないが、例えば、ブリケッター(北川鉄工所製)、リングダイ式ペレタイザー(CPM製)、フラットダイ式ペレタイザー(ダルトン製)を好適な例として挙げることができる。
キューブ状に圧縮成型する場合、縦5〜50mm×横5〜50mm×高さ5〜50mmのキューブとすることが好ましい。ペレット状に圧縮成型する場合、直径5〜50mm×長さ5〜80mmの円筒状とすることが好ましい。
シート状の形態とする場合、坪量が300〜2000g/mで、5〜50mm×5〜50mmのシート片とすることが好ましい。
本発明の飼料成形物は、例えば、可消化養分総量(TDN:Total Digestible Nutrients)を70〜95%とすることができるが、70〜93%、さらには70〜90%としてもよい。
以下、本発明の実施の形態を実施例により説明するが、本発明はこれによって限定されない。各物性の測定方法は以下の通りである。
<セルラーゼ糖化率>
飼料成形物(絶乾質量500mg)を、樹脂製サンプル瓶(60ml容)に正確に秤量した。pH4.0の0.1M酢酸緩衝液にセルラーゼ(商品名:セルラーゼオノズカ p1500、ヤクルト薬品工業(株)製)を濾紙崩壊力で1350U/(飼料成形物絶乾質量g)となるように添加した懸濁液49.5mlを容器に添加し、TAITEC社製BioShaker BR−23FPを用いて、40℃、180rpmにて24時間振とうし、糖化処理を行った。
24時間後の時点でサンプルを採取し、糖化された飼料成形物の割合(セルラーゼ糖化率)を測定した。具体的には、あらかじめ恒量を求めたろ紙上でろ過し、4回水洗を行った後に、105℃の通風乾燥機中で2時間乾燥し、残渣の乾物質量を測定した。セルラーゼ糖化率は以下の式から算出した。
セルラーゼ糖化率(%)=[(セルラーゼ処理前の飼料成形物質量−セルラーゼ処理後の飼料成形物(残渣)質量)/セルラーゼ処理前の飼料成形物質量]×100 (式1)
<カッパー価>
JIS P 8221に基づいて測定した。
[サンプル1]
ユーカリ材のチップを活性アルカリ添加率18.0%、硫化度25%、Hファクター800にてクラフト蒸解を行い、カッパー価(KN)18.5の未晒しクラフトパルプを得た。
上記パルプを水道水で洗浄し、濃度10%に調製後、O添加率2.1%(絶乾パルプ重量当たり)、水酸化ナトリウム1.4%(絶乾パルプ重量当たり)、100℃、60分にて酸素脱リグニン処理を行い、KN9.6の酸素脱リグニン処理パルプを得た。
得られたパルプを水道水で洗浄した後、水分率50%のウェットパルプシートとし、これをFRITSCH社製カッティングミルP−15にて10mm以下に破砕した。破砕したパルプをダルトン社製ディスクペレッターにて有効孔径5mm、有効孔長20mmのダイスを用いて成形し、飼料成形物を得た。
得られた飼料成形物を日本乾燥機社製送風乾燥機にて105℃、1時間乾燥させ、水分28%の飼料成形物を得た。
この飼料成形物のセルラーゼ糖化率を測定したところ、76%であった。
[サンプル2]
酸素脱リグニン処理を実施しなかった以外はサンプル1と同様に飼料成形物を作成し、水分28%、KN18.5、セルラーゼ糖化率72%の飼料成形物を得た。
[サンプル3]
飼料成形物の乾燥時間を1時間45分とした以外はサンプル1と同様に飼料成形物を作製し、水分15%、KN9.6、セルラーゼ糖化率74%の飼料成形物を得た。
[サンプル4]
成型物の乾燥時間を1時間45分とした以外はサンプル2と同様に飼料成型物を作製し、水分15%、KN18.5、セルラーゼ糖化率70%の飼料成形物を得た。
[サンプル5]
成形物の乾燥時間を45分とした以外はサンプル1と同様に飼料成形物を作製し、水分32%、KN9.6、セルラーゼ糖化率85%の飼料成形物を得た。
[サンプル6]
ユーカリ材のチップを活性アルカリ添加率12.0%、硫化度25%、Hファクター800にてクラフト蒸解した以外はサンプル1と同様に飼料成型物を作製し、水分率28%、カッパー価(KN)35.6、セルラーゼ糖化率55%の飼料成型物を得た。
[サンプル7]
ユーカリ材のチップを活性アルカリ添加率13.0%、硫化度25%、Hファクター800にてクラフト蒸解した以外はサンプル2と同様に飼料成形物を作成し、得られた成型物の乾燥を行わないことで水分50%、KN38.5、セルラーゼ糖化率60%の飼料成形物を得た。
[サンプル8]
針葉樹(エゾマツ、トドマツ混合)の木材チップに、木材チップの絶乾重量あたり0.8%の亜硫酸ナトリウムを含浸させた。取り出したチップを遠心脱水し(遠心脱水後のチップの固形分:25重量%)、耐圧容器(バッチ式2.5L容回転型オートクレーブ)において135℃で30分間加熱処理した。加熱処理後の木材チップをブローしてから、加圧リファイナー(熊谷理器工業BRP45-300SS)を用いて133℃、5分間の予熱処理、引き続いてリファイニング処理を行い、機械パルプ(ケミサーモメカニカルパルプ)を得た。これ以外はサンプル2と同様に飼料成形物を作成し、水分28%、セルラーゼ糖化率12%の飼料成型物を得た。
実験1:給与試験による消化率測定
公益社団法人畜産技術協会「試料分析マニュアル」(平成12年3月発行)第2章飼料の栄養価評価法に記載の方法に準拠して測定したが、具体的には以下の通りである。
1)基礎飼料および基礎飼料の乾物20%を本発明品で置き換えた試験飼料を用意する。
2)1処理区当たり4頭の山羊を用意する。
3)予備試験7日(馴致期間)、本試験7日とし、本試験期間中の糞を全量採取する。
4)糞を乾燥する。
5)基礎飼料区および試験飼料区の消化率を測定する。
6)基礎飼料区と試験飼料区の消化率の差から本発明品の消化率を計算で求める。
濃厚飼料(圧片トウモロコシ)および粗飼料(アルファルファ乾草)を20:80の割合(乾物重量%)で混合した基礎飼料を用いて、給与試験による消化率測定を行った。なお、試験飼料は基礎飼料のうち20%(乾物質量%)をサンプル1〜8いずれかと入れ替えることで調製した。
実験2:保存性試験
サンプル1〜8を乾燥しないようにビニール袋に入れて、室温にて60日間の保存性試験を実施した。評価は目視による官能評価を実施し、カビの発生を認めた場合は×、カビの発生がなかった場合は〇と記載した。
実施例(サンプル1〜4)及び比較例(サンプル5〜7)の前述した物性、試験の結果を表1に示した。
Figure 2020010648
上記の結果から明らかなように、本発明の実施例の飼料成形物(サンプル1〜4)は消化率が高く、反芻動物への栄養源としての資質に富んでいることが示された。一方、水分が30質量%を超える飼料成形物(サンプル5)はカビの発生が確認され長期保存に不向きであり、KNが高く、セルラーゼ糖化率が70%以下の飼料成形物(サンプル6)は消化率が低く、水分率およびKNが高い飼料成形物(サンプル7)は消化率が低く、長期保存にも向いていなかった。さらにクラフト蒸解法による脱リグニンを行わなかった飼料成型物(サンプル8)はサンプル1〜7と比較してセルラーゼ糖化率および保存性が劣った。すなわち、本発明に係る飼料成形物は、保存性に優れ、反芻動物に資化され易いことが明らかとなった。

Claims (3)

  1. リグノセルロース材料を原料とするカッパー価が5〜30であるクラフトパルプを含有する反芻動物用飼料成形物であって、
    該成形物の水分率が30質量%以下で、下記に示すセルラーゼ糖化率が70%以上であることを特徴とする反芻動物用飼料成形物。
    セルラーゼ糖化率:飼料成形物を濃度1%、pH4.0に調整した懸濁液に、セルラーゼを濾紙崩壊力1350U/(飼料成形物絶乾質量g)となるように添加し、40℃で、24時間反応させた後、式1より糖化率を求める。
    セルラーゼ糖化率(%)=[(セルラーゼ処理前の飼料成形物質量−セルラーゼ処理後の飼料成形物質量)/セルラーゼ処理前の飼料成形物質量]×100 (式1)
  2. リグノセルロース材料が木質資源由来である、請求項1記載の反芻動物用飼料成形物。
  3. リグノセルロース材料を原料とするカッパー価が5〜30であるクラフトパルプを含有し、かつ下記に示すセルラーゼ糖化率が70%以上である反芻動物用飼料成形物を製造するための方法であって、
    水分率が40〜80質量%のクラフトパルプを加圧圧縮して成形する工程、
    成形物の水分率を30質量%以下に調整する工程、を含む
    上記方法。
    セルラーゼ糖化率:飼料成形物を濃度1%、pH4.0に調整した懸濁液に、セルラーゼを濾紙崩壊力1350U/(飼料成形物絶乾質量g)となるように添加し、40℃で、24時間反応させた後、式1より糖化率を求める。
    セルラーゼ糖化率(%)=[(セルラーゼ処理前の飼料成形物質量−セルラーゼ処理後の飼料成形物質量)/セルラーゼ処理前の飼料成形物質量]×100 (式1)
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