JP6798533B2 - 細胞評価装置、インキュベータおよびプログラム - Google Patents
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Description
図1〜図3を参照して、本発明の実施形態における細胞評価装置が適用されるインキュベータ11について説明する。
図1と図2は、インキュベータ11の構造例を示している。図1はインキュベータ11の正面図であり、図2はインキュベータ11の平面図である。また、図3は、インキュベータ11の構成例を示している。
ここで、観察ユニット22は、上部ケーシング12のベースプレート14の開口部に嵌め込まれて配置される。観察ユニット22は、試料台31と、試料台31の上方に張り出したスタンドアーム32と、位相差観察用の顕微光学系および撮像装置33aを内蔵した本体部分33とを有している。そして、試料台31およびスタンドアーム32は恒温室15に配置される一方で、本体部分33は下部ケーシング13内に収納される。
画像入力部42は、撮像装置33aにより撮像される撮像画像を入力する。本実施形態において、撮像装置33aは、位相差観察用の顕微光学系により観察された顕微鏡画像、つまり、光の位相差をコントラストに変換した位相差画像を撮像する。また、撮像装置33aは、予め決定されたxy平面上における撮像位置をZ方向(標本の深さ方向)に添って焦点位置を変え、各焦点位置での撮像画像を行って撮像画像を出力する。このように得られる撮像画像の各々が単焦点画像である。画像入力部42は、これらの位相差画像としての単焦点画像を入力する。
例えば、幹細胞から神経細胞への分化過程においては、ロゼッタといわれる構造物が出現するのに応じて細胞表面の起伏に変化が生じる。このために、単焦点画像では、焦点が合ってコントラストが高い領域と焦点が合わずにコントラストが低い状態の領域とが混在する。画像における構造物の位置は不定であるから、単焦点画像を神経細胞の分化状態の評価に利用したとしても、適切な判定結果を得ることは難しい。そこで、本実施形態では、ロゼッタ100を抽出するにあたり全焦点画像を評価に利用する。これにより、適切な評価結果を得ることができる。
神経突起対応判定部(構造物対応判定部)47は、神経突起抽出部45により抽出されたロゼッタの状態を判定する。また、神経突起対応判定部47は、判定した神経突起の状態に基づいて細胞の分化誘導に関連する所定事項についての判定を行う。
総合判定部48は、ロゼッタ対応判定部46の判定結果と神経突起対応判定部47の判定結果に基づいて細胞の分化誘導に関連する所定事項についての判定を行う。
本実施形態のインキュベータ11は、神経細胞への分化過程において出現するロゼッタと神経突起の状態に基づいて神経細胞の分化状態についての評価を行う。そこで、図4と図5を参照してロゼッタと神経突起について説明する。
そして、神経上皮細胞から神経前駆細胞に分化しているときにロゼッタが出現する。
ロゼッタ100は、例えば、円柱状の細胞が放射状に配列されるような形状を有している。このロゼッタ100は、その形状が特徴的であるうえに、神経細胞への分化過程において固有な構造物として初期に出現する。したがって、ロゼッタ100の出現が確認されたということは、iPS細胞などの幹細胞の神経細胞への分化誘導が成功したことを示している。
ロゼッタ100が上記のような性質を有することを考慮すれば、神経細胞への分化状態の評価を行うにあたり、ロゼッタ100の状態を評価することは有効であるといえる。そこで、本実施形態では、神経細胞への分化状態を評価するにあたり、まず、ロゼッタ100の状態を判定するものである。
なお、図4においては、幹細胞であるiPS細胞を利用した例を示しているが、ES(Embryonic Stem)細胞などの他の幹細胞やダイレクトリプログラミングによる他種の分化細胞などを利用して神経細胞への分化培養を行った場合にも、図4と同様の分化過程となる。
細胞体210は、核を有し、丸く盛り上がるような形状である。
軸索220は、信号を出力する機能を有する。また、軸索220は、細く、その太さが一様であり、長く、小胞体やリボゾームはほとんど無い。また、軸索220の伸長速度は速い。
樹状突起230は、信号を受ける機能を有する。また、樹状突起230は、比較的太いが、先端にいくほど細くなる。また、その伸長速度は、遅い。
この神経細胞200も、神経細胞の分化過程において固有に出現する構造物の1つである。また、培養過程の神経細胞においては、多数の神経細胞200が重なり合う状態となり、軸索220と樹状突起230とを区別することが難しくなる。そこで、本実施形態においては、軸索220と樹状突起230とを区別することなく神経突起300として、神経細胞200における伸長部分として抽出する。また、併せて、神経細胞200における生きた細胞体210も生細胞として抽出する。
図6は、神経細胞へ分化誘導される細胞の分化状態をインキュベータ11が評価するための手順例を示している。
まず、インキュベータ11には、神経細胞へと分化誘導培養する幹細胞として、ヒト由来のiPS細胞またはES細胞が培養容器19に収容される(ステップS101)。または、ダイレクトリプログラミングにより分化誘導する目的で、他種の分化細胞が培養容器19に収容されてもよい(ステップS102)。
そして、ロゼッタ抽出部44は、ステップS105としての画像処理によって全焦点画像からロゼッタ100を抽出する。
つまり、ロゼッタ対応判定部46は、次の工程として、ロゼッタ100の状態の判定結果をロット管理用の情報として利用すべきと決定することができる。
また、ロゼッタ対応判定部46は、次の工程として、ロゼッタ100が出現した細胞を回収し、移植用サンプルとして利用すべきと決定することができる。このように回収すべきと決定された場合、制御装置40の装置制御部49は、回収装置51を制御して細胞の回収を行う。
また、ロゼッタ対応判定部46は、次の工程として、ロゼッタ100が出現した細胞を凍結保存すべきことを決定することができる。凍結保存された細胞は、例えば移植、大量生産目的による貯蔵、または、ロット管理などに利用される。
また、ロゼッタ対応判定部46は、次の工程として、ロゼッタ100が出現した細胞を分取して検査すべきことを決定することができる。なお、このように検査すべきと決定された場合には、各種検査や分析が行われる(ステップS110)。この検査、分析に際しては、細胞を回収して行ってもよいし、回収せずに、撮像画像を利用して行ってもよい。
また、ロゼッタ対応判定部46は、次の工程として、ロゼッタ100が出現した細胞の培養を続行すべきことを決定することができる。
また、ニューロスフェロイドの出現後においては、神経細胞への分化誘導培養が行われる(ステップS113)。このステップS113による分化誘導培養の過程において、神経突起200が出現する(ステップS114)。そして、このように神経突起200が出現すると、神経突起200における突起(軸索220および樹状突起230)が伸長するという現象が生じる。
神経突起対応判定部47がステップS118により決定する次の工程としては、以下のものが挙げられる。
例えば、神経突起対応判定部47は、次の工程として、今回の神経突起300の状態の判定結果をロット管理用の情報として利用すべきと決定することができる。
また、神経突起対応判定部47は、次の工程として、神経突起300が出現した神経細胞を回収し、移植用サンプルとして利用すべきと決定することができる。
また、神経突起対応判定部47は、次の工程として、神経突起300が出現した神経細胞を分取して検査すべきことを決定することができる。
また、神経突起対応判定部47は、次の工程として、神経突起300が出現した神経細胞をスクリーニング、アッセイなどに使用すべきことを決定することができる。
また、総合判定部48は、総合判定結果として、神経突起300が出現した段階の神経細胞についての次の工程を決定することができる(ステップS118)。
そして、品質データベースの内容は、例えば次の培養工程にフィードバックさせることができる(ステップS122)。具体的に、総合判定部48は、記憶部41に記憶される品質データベースの内容に基づいて次の培養工程における各種項目を設定する。そして、装置制御部49が、ユーザへの設定項目の通知、または、設定された項目にしたがった温度、湿度調整、播種、培地交換などを自動で実行する。これにより、次の培養工程への総合判定結果のフィードバックが実現される。
そして、制御装置40における画像入力部42は、播種直後の段階における細胞の撮像画像を入力する(ステップS204)。ロゼッタ抽出部44は、この撮像画像(複数の単焦点画像)を利用して全焦点画像生成部43が生成した全焦点画像(原画像)からコロニーを抽出するための画像処理を行う(ステップS205)。コロニーは、ロゼッタ100の最も初期の状態に対応する。
なお、ステップS205において、ロゼッタ抽出部44は、タイムラプス画像としての複数の全焦点画像の各々を対象として処理する。この点については、同図において以降説明する画像処理のステップにおいても同様である。
そのうえで、ロゼッタ対応判定部46は、上記の分化効率の予測結果のほかに、例えばロゼッタ100の密度、ロゼッタ100に分化するまでの日数なども予測し、これらの予測結果に基づいて、培養を継続すべきか廃棄すべきかの判定を行う(ステップS207)。
廃棄すべきと判定した場合には、装置制御部49は、これまでに培養した神経細胞が廃棄されるように例えば容器搬送装置23などを制御する(ステップS208)。一方、培養を継続すべきと判定した場合、装置制御部49は、そのまま培養が継続されるように上部ケーシング12内の所定の装置を制御する(ステップS209)。
そのうえで、ロゼッタ対応判定部46は、ステップS218により判定されたロゼッタ100の状態に基づいて、再び、以降の培養を継続すべきか廃棄すべきかの判定を行う(ステップS219)。
ロゼッタ対応判定部46は、廃棄すべきと判定した場合には、これまでに判定対象とされていた細胞を廃棄し(ステップS220)、培養を継続すべきと判定した場合には、培地交換を行ったうえで培養を継続する(ステップS221)。
ロゼッタ対応判定部46は、廃棄すべきと判定した場合には、これまでに判定対象とされていた細胞を廃棄する(ステップS228)。
また、ステップS228において培養を継続すべきとの判定した場合、その判定内容は、さらに2つに分けられる。
1つの判定内容は、例えばロゼッタ100が十分に成長しているなどの理由で神経前駆細胞への分化のための工程に移行させるというものである。この場合、装置制御部49は、神経前駆細胞への分化としての次の工程のために、回収装置51により細胞を回収させる(ステップS229)。
もう1つの判定内容は、例えばロゼッタ100が十分に成長していないなどの理由で、さらにロゼッタ100を成長させるための工程に移行させるというものである。この場合、装置制御部49は、ステップS203としての回収と播種の工程が行われるように、回収装置51と播種装置52を制御する。
具体的に、神経突起対応判定部47は、これまでに培養した神経細胞を廃棄すべきと決定することができる。このように決定された場合、装置制御部49は、これまでに培養した神経細胞を廃棄させるように例えば容器搬送装置23などを制御する(ステップS307)。また、培地交換をしたうえで次工程へ移行すべきと決定された場合、装置制御部49は、培地交換装置53により培地交換を行わせたうえで(ステップS308)、次の工程に移行させる(ステップS309)。または、培地交換をせずに次工程へ移行すべきと決定された場合、装置制御部49は、次のしかるべき工程に移行されるように、例えば上部ケーシング12における所定の装置を制御する。
次に、図9〜図14を参照してロゼッタ100を抽出するための画像処理の具体例について説明する。
前述のように、ロゼッタ100を抽出するのに利用する原画像は、位相差顕微鏡を介して細胞を撮像した位相差画像であり、かつ、画面の全領域において合焦している全焦点画像である。また、全焦点画像は、例えば所定の時間間隔の撮像時刻ごとに対応して形成される。つまり、本実施形態においては、時系列における複数の全焦点画像によりタイムラプス画像が形成されている。
以降、同様にして、制御装置40は、所定時間ごとに撮像装置33aが撮像した単焦点画像Psf−1〜Psf−Nを利用して、全焦点画像Paf−Nを生成していく。
ただし、神経突起300の場合にはその伸長速度はロゼッタ100の成長速度に対して相当に速い。このため、タイムラプス画像の時間間隔は、ロゼッタ100を抽出するにあたっては約6時間程度が設定されるのに対して、神経突起300を抽出するにあたっては、約30分から1時間程度が設定される。
図11は、ステップS403としてのソフトマッチングの結果例を示している。図11には、原画像が示されている。位相差画像である原画像においては、細胞に出現したロゼッタ100は暗いまとまった領域として観察される。この点に着目し、ステップS403のソフトマッチングは、暗い領域を抽出するためのテクスチャを予め定めておき、原画像からこのテクスチャに該当する領域を抽出するものである。図11において白抜きの矢印で示す黒色となっている領域がステップS403のソフトマッチングにより抽出された領域である。このように抽出された領域はロゼッタ100である可能性が高い領域である。
そこで、ロゼッタ抽出部44は、ステップS403のソフトマッチングと並行して、位相差画像としての原画像から、濃度差が一定以下の領域を抽出する(ステップS403〜S407)。
図12(a)は、ステップS402により生成された原画像の一例を示している。この原画像に対してステップS403によるエロージョンが施された画像を図12(b)に示す。このようにエロージョンが施された画像は、原画像において暗い部分が拡大されたような状態となる。
ロゼッタ抽出部44は、ステップS408の処理として、図11の画像において示されるオブジェクトと図13(b)において示されるオブジェクトとで一致する部分を抽出する。つまり、ロゼッタ抽出部44は、図11の画像において黒色により示される部分と、図13(b)の画像において黒色で示されている部分とでその座標が一致する領域を抽出する。図14(c)は、このようにステップS409により抽出された領域を白抜きの矢印で示すように黒色により示している。このように抽出された領域がロゼッタ100である。
そして、ロゼッタ抽出部44は、このようにステップS408により抽出したロゼッタ示される画像(ロゼッタ抽出画像)を出力する(ステップS409)。
これに伴い、ロゼッタ抽出部44は、図10により説明した処理を、撮像時刻ごと対応する全焦点画像ごとに行う。そして、ロゼッタ対応判定部46は、例えば、各撮像時刻の焦点画像から抽出されたロゼッタ100の状態を比較することにより、時間経過に応じた状態変化に基づく判定を行うことができる。
次に、神経突起300を抽出するために神経突起抽出部45が実行する画像処理の手順例について説明する。
前述のように、神経突起抽出部45は、神経突起300だけではなく死細胞と生細胞についても抽出する。そこで、図15を参照して位相差画像である原画像において観察される神経突起300と死細胞と生細胞の特徴について説明する。
なお、神経突起300の抽出に利用する位相差画像は、全焦点画像ではなく単焦点画像である。ロゼッタ100は細胞が集まった立体構造であるために高さがあるが、神経突起300の場合にはさほどの高さは生じない。このため、神経突起300については全焦点画像を利用しなくとも十分に高い精度で抽出が行える。
図15(a)と図15(b)から理解されるように、神経突起300は、位相差画像において、線状の暗い部分として観察される。そこで、神経突起抽出部45は、単焦点画像(第1の原画像)において輝度が周囲よりも低く細い線状の部分を神経突起300として抽出する。
また、死細胞240は、位相差画像において、明るい小さな円形が暗い線により縁取りされたような粒状の部分として観察される。そこで、神経突起抽出部45は、単焦点画像において、輝度が一定以上で、その縁の輝度勾配が一定以上の粒状の部分を死細胞240として抽出する。
また、生細胞250は、位相差画像において、比較的大きく暗い塊であって、かつ、その周囲が明るく縁取られるような状態の部分として観察される。そこで、神経突起抽出部45は、単焦点画像において、輝度が一定以下で、その面積が一定以上で、その縁の輝度が一定以上の部分を生細胞250として抽出する。
まず、神経突起抽出部45は、神経突起300の抽出のために撮像装置33aにより撮像された単焦点画像を原画像として入力する(ステップS501)。なお、この際に、神経突起抽出部45は、例えば神経突起300の抽出のために撮像装置33aにより撮像させ、記憶部41に記憶させた単焦点画像を入力すればよい。
図17(a)は、ステップS501により入力した原画像の一例を示している。ステップS502のソフトマッチングにより、神経突起抽出部45は、図17(a)の原画像から、図17(b)において黒色により強調されるように囲まれる領域をオブジェクトとして抽出する。このように抽出されたオブジェクトは、死細胞240である可能性が高い。
図18(a)は、ステップS501により入力した原画像の一例である。神経突起抽出部45が、図18(a)の原画像に対してクロージングを行うことにより、図18(b)に示す画像が得られる。このクロージングの処理によっては細い黒い溝が埋められる。これにより、生細胞250に対応する黒色の塊部分は保存されるが、例えば神経突起300に対応する細い黒色の部分や、死細胞240のように小さい暗い円の周囲が明るい部分は周囲の濃度で埋められる。
次に、神経突起抽出部45は、図18(b)の画像をステップS504により二値化することにより、黒色とされた部分の領域をオブジェクトとして抽出する。このように抽出されたオブジェクトは、図18(c)において黒色により示す領域である。このように抽出されたオブジェクトは、生細胞250である可能性が高い。
例えば、ステップS509とステップS510の処理は、図20(a)に示す画像に対して、図20(b)に示す画像と図20(c)に示す画像の両者を差し引く処理に相当する。
前述のように神経突起300は、位相差画像としての原画像において細く暗い部分として観察されるのであるが、その長さが一定以下のものについては、神経突起300ではなく、例えば生細胞250などである可能性が高い。したがって、ステップS510により生成された差分画像において示されるオブジェクトのうちで長さが一定以下のものについては除外すれば、より高い精度で神経突起300を抽出できる。
この図において、輝度が最も低い黒色により示されている部分が神経突起300の候補として抽出されたオブジェクトである。
神経突起抽出部45が図21(a)の画像のオブジェクトに対する細線化を施すことにより、図21(b)に示す画像が得られる。この図21(b)から分かるように、ステップS511の細線化によって、図21(a)においてある程度の太さを有していたオブジェクトが線状に変換される。このようにオブジェクトが線状化されたことにより、オブジェクトを長さにより定量化できる。
図21(c)は、ステップS512により復元されたオブジェクトを示す画像例を示している。ここで、図21(a)において破線で括って示す領域に存在していたオブジェクトは、その長さが一定未満であったためにステップS512により削除されたため、図21(c)の復元段階においては存在していない。このようにステップS513により復元された段階の画像においては、死細胞240や生細胞250などに対応するノイズが除去され、神経突起300に対応するオブジェクト高い精度で抽出されている。
そして、神経突起抽出部45は、ステップS513により復元したオブジェクトを示す画像を、神経突起300を抽出した結果として出力する(ステップS514)。
図23(a)は、図22(c)に示した差分画像をステップS517により二値化して、白の階調に分類された部分をオブジェクトとして抽出した例を示している。
そして、図23(c)は、ステップS508により、図23(a)に示されるオブジェクトと図23(b)に示されるオブジェクトとで共通となる部分として抽出したオブジェクトを示す画像である。図23(b)と図23(c)を比較して分かるように、ステップS518の段階では、ソフトマッチングにより抽出されたオブジェクトから、さらに死細胞240としてのオブジェクトが絞り込まれている。
そこで、神経突起抽出部45は、ステップS508により抽出された生細胞250のオブジェクトについて領域分割の画像処理を実行する(ステップS519)。つまり、神経突起抽出部45は、複数の生細胞250が重複して1つとして抽出されたものとして推定されるオブジェクトを複数の生細胞250ごとに対応して分割する。これにより、互いに接触して1つのオブジェクトとして抽出されている生細胞250のオブジェクトが複数に分割される。また、神経突起抽出部45は、ステップS518により抽出された死細胞240オブジェクトについて領域分割の画像処理を実行する(ステップS521)。これにより、互いに接触して1つのオブジェクトとして抽出されている死細胞240のオブジェクトが複数に分割される。
図24(a)、(b)は、水分界分離による領域分割を模式的に示している。例えば、図24(a)には、円形の2つのオブジェクトOBJ1とオブジェクトOBJ2との一部が重なるように接触した状態が示されている。この場合において、水分界分離のアルゴリズムにより分割領域を行うことで、オブジェクトOBJ1とオブジェクトOBJ2は、図24(b)に示すように分離される。
そこで、神経突起抽出部45は、ステップS519とステップS521で、以下のように、生細胞250と死細胞240のそれぞれに適合させた領域分割を行う。
図24(e)は、ステップS518にて抽出されたオブジェクトが示される画像の一例である。この画像においては、破線Cで示す部分が分水界として推定されている。そこで、神経突起抽出部45は、図24(f)に示すように、ステップS521により、破線Cで示す部分を分割するように領域分割を行う。
また、本実施形態においては、細胞を撮像した画像の内容に基づいてロゼッタの状態を判定しているので、非侵襲により安定的に神経細胞の分化状態が評価できる。本実施形態では、非侵襲によりロゼッタ100や神経突起300を有効に抽出可能な画像形式として、位相差画像を採用しているものである。
また、本実施形態では、インキュベータ11内で培養されている環境の細胞を撮像するようにしているので、撮像のために培養を中断してインキュベータから取り出す必要が無い。これにより、培養過程の細胞の品質が劣化せず安定する。
また、ロゼッタ100とともに抽出する構造物については、例えば神経管など、神経突起300以外のであってもよい。また、ロゼッタ100と神経突起300を抽出したうえで、さらに他の構造物も抽出し、これらの抽出結果に基づいて細胞の状態判定を行うようにしてもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
神経細胞分化過程の細胞を撮像した第1の撮像画像を入力する画像入力部と、
細胞の厚さ方向の位置において焦点の合った状態の全焦点画像を、少なくとも前記第1の撮像画像に基づく第1の原画像として生成する全焦点画像生成部と、
前記第1の原画像において一定以下の輝度分布を有する領域と、前記第1の原画像において濃度差が一定以下の領域とで共通する領域を、分化過程に出現するロゼッタとして抽出するロゼッタ抽出部と、
抽出された前記ロゼッタの状態を判定するロゼッタ対応判定部と、
を備える細胞評価装置。
前記ロゼッタ対応判定部は、
判定したロゼッタの状態に基づいて前記細胞の分化に関連する工程又は将来予測についての判定を行う、
付記1に記載の細胞評価装置。
前記画像入力部は、
前記ロゼッタ以外の所定の構造物が出現する分化過程の細胞を撮像した単焦点画像である第2の撮像画像を入力し、
前記所定の構造物を前記第2の撮像画像に基づく第2の原画像から抽出する構造物抽出部と、
抽出された前記構造物の状態を判定する構造物対応判定部とをさらに備える、
付記1又は付記2に記載の細胞評価装置。
前記構造物対応判定部は、
判定した前記構造物の状態に基づいて前記細胞の分化誘導に関連する前記構造物の分化状態又は前記構造物の品質についての判定を行う、
付記3に記載の細胞評価装置。
前記ロゼッタ対応判定部の判定結果と前記構造物対応判定部の判定結果とに基づいて、前記細胞の分化培養に関連する分化状態又は分化効率についての判定を行う総合判定部をさらに備える、
付記3又は付記4に記載の細胞評価装置。
前記画像入力部は、
位相差顕微鏡により前記細胞を観察した位相差画像を撮像した前記第1の撮像画像を入力する、
付記1から付記5のいずれか一項に記載の細胞評価装置。
前記全焦点画像生成部は、
前記細胞の予め決定されたxy平面上における撮像位置を前記細胞の深さ方向に添って焦点位置を変更して撮像された複数の単焦点画像としての前記第1の撮像画像を取得し、前記複数の単焦点画像の各々を合成することにより、細胞の厚さ方向の位置において焦点の合った状態の全焦点画像を、少なくとも前記第1の原画像として生成する
付記6に記載の細胞評価装置。
神経細胞分化過程の細胞を撮像した撮像画像を入力する画像入力ステップと、
細胞の厚さ方向の位置において焦点の合った状態の全焦点画像を、少なくとも前記撮像画像に基づく第1の原画像として生成する全焦点画像生成ステップと、
前記第1の原画像において一定以下の輝度分布を有する領域と、前記第1の原画像において濃度差が一定以下の領域とで共通する領域を、分化過程に出現するロゼッタとして抽出するロゼッタ抽出ステップと、
抽出された前記ロゼッタの状態を判定するロゼッタ対応判定ステップと、
を備えることを特徴とする細胞評価方法。
コンピュータに、
神経細胞分化過程の細胞を撮像した撮像画像を入力する画像入力ステップ、
細胞の厚さ方向の位置において焦点の合った状態の全焦点画像を、少なくとも前記撮像画像に基づく第1の原画像として生成する全焦点画像生成ステップ、
前記第1の原画像において一定以下の輝度分布を有する領域と、前記第1の原画像において濃度差が一定以下の領域とで共通する領域を、分化過程に出現するロゼッタとして抽出するロゼッタ抽出ステップ、
抽出された前記ロゼッタの状態を判定するロゼッタ対応判定ステップ、
を実行させるためのプログラム。
12 上部ケーシング
13 下部ケーシング
14 ベースプレート
15 恒温室
15a 温度調整装置
15b 湿度調整装置
16 大扉
17 中扉
18 小扉
19 培養容器
21 ストッカー
22 観察ユニット
23 容器搬送装置
24 搬送台
31 試料台
32 スタンドアーム
33 本体部分
33a 撮像装置
33b LED光源
34 垂直ロボット
35 回転ステージ
35a 回転軸
36 ミニステージ
37 アーム部
40 制御装置
41 記憶部
42 画像入力部
43 全焦点画像生成部
44 ロゼッタ抽出部
45 神経突起抽出部
46 ロゼッタ対応判定部
47 神経突起対応判定部
48 総合判定部
49 装置制御部
51 回収装置
52 播種装置
53 培地交換装置
100 ロゼッタ
200 神経細胞
210 細胞体
220 軸索
230 樹状突起
240 死細胞
250 生細胞
300 神経突起
Claims (15)
- 撮像された撮像画像から神経細胞の神経突起の候補としてオブジェクトを抽出し、前記オブジェクトを線状に変換する細線化を行うと共に、前記撮像画像から前記細線化されたオブジェクトの長さを算出し、前記オブジェクトの長さを基準に前記オブジェクトの中から前記神経細胞の神経突起を抽出する第1の抽出部と、
前記第1の抽出部で算出された前記神経突起の長さを用いて、抽出された前記神経突起を有する前記神経細胞の生育状態を判定する第1の判定部と、
を備える細胞評価装置。 - 前記神経突起は、軸索と樹状突起とから構成される
請求項1に記載の細胞評価装置。 - 前記撮像画像は、時系列に撮像された画像であり、
前記第1の抽出部は、複数の前記画像の各々から前記神経細胞の神経突起の候補としてオブジェクトを抽出し、前記オブジェクトを線状に変換する細線化を行うと共に、前記細線化されたオブジェクトの長さから前記神経細胞の神経突起の伸長速度を算出し、
前記第1の判定部は、前記神経細胞の神経突起の伸長速度を用いて、前記抽出された前記神経細胞の神経突起を有する前記神経細胞の生育状態を判定する
請求項1に記載の細胞評価装置。 - 前記第1の抽出部は、
画像の明暗が強調された前記神経細胞の位相差画像の領域のうち暗い部分である第1領域を前記神経突起の候補としてのオブジェクトとして抽出する
請求項1に記載の細胞評価装置。 - 前記第1の抽出部は、
前記位相差画像を二値化処理することで前記第1領域の周囲に明るい縁取りのないものを除外することにより、前記神経突起の候補としてのオブジェクトを抽出する
請求項4に記載の細胞評価装置。 - 前記第1の抽出部は、前記オブジェクトを細線化して得られた第2のオブジェクトのうち、該第2のオブジェクトの長さが所定の閾値未満のオブジェクトを削除する
請求項1に記載の細胞評価装置。 - 時系列に撮像された複数の単焦点画像を利用して生成される画像の全領域において合焦した複数の全焦点画像を記憶する記憶部と、
前記神経細胞の画像から前記神経細胞のロゼッタの候補としてオブジェクトを抽出する第2の抽出部と、
抽出された前記ロゼッタの状態を判定する第2の判定部と、
を更に備え、
前記第2の抽出部は、教師付き分類処理により複数の前記全焦点画像から抽出された領域と、複数の前記全焦点画像において濃度差に基づいて抽出された領域とで共通する領域を、前記ロゼッタとして抽出する
請求項3から請求項6のいずれか一項に記載の細胞評価装置。 - 前記記憶部は、位相差顕微鏡により前記神経細胞を観察した位相差画像を撮像した前記全焦点画像を記憶する、
請求項7に記載の細胞評価装置。 - 前記第2の判定部は、前記ロゼッタの状態に基づいて、以降の工程を継続すべきか廃棄すべきかの判定を行う
請求項7に記載の細胞評価装置。 - 前記ロゼッタの分化状態と前記ロゼッタから前記神経突起が出現する段階にまで分化させるまでの培養条件とを記憶する前記記憶部と、
前記第1の判定部の判定結果と前記第2の判定部の判定結果と前記記憶部が記憶する情報とに基づき、前記神経細胞の生育状態を判定する総合判定を行う第4の判定部と、
を更に備える
請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の細胞評価装置。 - 前記第1の判定部は、判定した前記生育状態の判定結果に基づき前記神経細胞を廃棄すべきかを決定する、
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の細胞評価装置。 - 前記第1の抽出部は、さらに、時系列に撮像した神経細胞の複数の画像の各々から前記神経細胞の生細胞および死細胞の候補としてオブジェクトを抽出し、
前記第1の判定部は、前記神経突起と前記神経細胞の生細胞と前記神経細胞の死細胞とに基づいて、前記神経細胞の生育状態を判定する、
請求項2から請求項11のいずれか一項に記載の細胞評価装置。 - 前記第1の判定部は、前記神経突起の伸長速度、前記神経突起の長さ、前記神経細胞の生細胞数、前記神経細胞の死細胞数、および前記神経細胞の増殖速度の少なくとも1つに基づいて前記神経細胞の生育状態を判定する、
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の細胞評価装置。 - 請求項1から請求項11の何れか1項に記載の細胞評価装置と、
前記神経細胞の培養を行う恒温室と、
前記神経細胞の画像を撮像するための観察ユニットと
を備えるインキュベータ。 - コンピュータに、
撮像された撮像画像から神経細胞の神経突起の候補としてオブジェクトを抽出し、前記オブジェクトを線状に変換する細線化を行うと共に、前記撮像画像から前記細線化されたオブジェクトの長さを算出し、前記オブジェクトの長さを基準に前記オブジェクトの中から前記神経細胞の神経突起を抽出する第1の抽出ステップと、
前記第1の抽出ステップにより算出された前記神経突起の長さを用いて、抽出された前記神経突起を有する前記神経細胞の生育状態を判定する第1の判定ステップと、
を実行させるためのプログラム。
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