JP4868207B2 - スクリーニング方法およびスクリーニング装置 - Google Patents
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Description
しかしながら、プログラム処理過程でノイズの除去ができない場合が多いなどの理由で、薬剤効果の評価精度が高くない場合が多いという課題がある。
本発明は、顕微鏡により取得した細胞画像を解析し、細胞画像中の各細胞の形態的な特徴を表す形態特徴量として、細胞の輪郭の円からのずれ量をパラメータ化した値を評価し、この評価に基づいて薬剤スクリーニングを行い、前記形態特徴量として、細胞の輪郭の内接円または外接円の少なくともいずれかからのずれ量をパラメータ化した値を評価するスクリーニング方法を提供する。
これらにより、細胞の中心部分の大きさや、全体の形の歪み、さらに細胞の空間的な広がりなどを統一的に把握することができ、細胞の形態変化を効率的に精度良く表現することができる。
また、上記発明においては、前記形態特徴量に基づいて、画像中の細胞を生細胞または死細胞のいずれかに判定して評価に使用することが好ましい。
なお、この判定に際し、細胞は画像取得前に固定されていても良いことは言うまでもない。
さらに、上記発明においては、細胞画像中に選択されたいずれかの領域に対して解析を行い、パラメータ化した値に基づいて、これら領域を細胞体、環状構造をもつ細胞の突起、細胞以外の細胞の死骸または気泡に分類することが好ましい。
実際、細胞にダメージを与え、一部の細胞を死滅させるような系では、生きている細胞あるいは細胞としての形状をある程度保存している死細胞の総数などの量だけでなく、断片化した細胞の死骸など細胞画像中に存在する細胞以外の画像情報を定量化し、細胞のみを対象とした画像解析結果の付加情報として用いることで、細胞解析の精度があがる。
細胞を使った薬剤スクリーニングの対象となる薬剤の種類の主なものとしては、細胞を保護し細胞のダメージを軽減させるものや、細胞の活性化をコントロールし、分裂を抑制したりあるいは成長を促進させたりする作用のある薬剤などがある。
細胞を保護する薬剤の薬効は、一定のダメージに対して細胞の死んだ数と生き残っている細胞の数の比や、あるいは、さらに詳細な薬効を表現する特徴量として、細胞の真円度などがある。
さらに、上記発明においては、複数種の細胞サンプルを用い、注目する細胞種および他の細胞種について同様の評価を行うこととしてもよい。
本実施形態に係るスクリーニング方法および装置の説明を行う前に、細胞の画像解析方法について説明する。
薬剤スクリーニングなどの細胞を観察する実験系で、細胞画像解析を自動化する方法について考える。
ここでの、画像解析の目的は、画像上の個々の細胞位置を特定し、各細胞の特徴量を抽出すること、さらにこれら特徴量に対し適切な統計的処理を施すことで、複数の細胞画像を比較する手段を提供することにある。
(前処理)
適当な方法で培養された細胞に、撮像のための処理を施す。
撮像のための処理とは、蛍光物質を投与するなどである。これらの処理により細胞の可視化が行われる。
光学系においては、適当な波長の光を細胞に当てることにより観察を行う。このとき、適当なカメラを光学系に設定し、撮影を行う。撮像系は通常、CCDなどを使い像をデジタル化し、パソコンなどにデータとして保存しておく。
座標(x、y)の輝度は、例えば、「230」のように表現されデジタルデータとして保存される。
画像解析は、これらのデジタルデータをパソコン上のソフト・プログラムなどで適当な処理を行い解析する方法である。
特に、細胞を使った画像解析においては、細胞を認識することが第1の目的となるが、細胞の認識は、通常、実験者によって直接行われる。
細胞を使った実験は様々な目的の元に行われるが、ここでは特に細胞をベースにした化合物スクリーニングを例にとって、実験の目的及び流れを簡単に説明する。
さらに、これらの定量化されたデータは、複数の化合物の場合と比較され、これらいくつかの化合物の中から、細胞に及ぼす影響の大きいもの、効果のあるものを発見することを目的として行われる。
サンプルとなる細胞は、図2に示されるように、まず、通常いくつかのグループ(細胞群G1〜GN)に分類される(S11)。
例えば、化合物の細胞に及ぼす効果を測定する実験系においては、化合物を加えた細胞群G1等ものと、そうではない細胞群GNとに分けられる。
顕微鏡などの適当な光学系を用いて、これら分類されたグループごとに撮像される(S12)。
通常、各グループごとに複数枚の撮像を行い、また各画像には適当な数(数十程度)の細胞が含まれている。
細胞画像の解析により画像中に存在している細胞の位置、また各細胞の発光量や大きさ突起の有無など特徴量を抽出する。
細胞の特徴量は、このグループごと、あるいは画像ごとに平均化されあるいは分布を解析され、グループ間の差異を検出し、化合物を導入された・導入されないなどのグループの条件と比較し検討される(S13)。
実際の薬剤スクリーニングにおいては、しかしながら、薬剤効果の評価精度が高くない場合が多いという課題がある。
この原因として第1に考えられることは、細胞形態の特徴量抽出処理じたいが精度の低い解析になっているなどである。
例えば、細胞形態量として、細胞の大きさを抽出する場合を考え、特徴量が適切に細胞形態に対応していない例をあげる。
「細胞の大きさ」として、通常、細胞Aの境界上でもっとも距離の大きい2点間の距離Lを大きさとして定義する方法がある。この方法によれば、例えば、図3にあるような細胞Aが特定の方向に伸びている場合、適切に細胞Aの大きさを表現しているとは言えない。
細胞画像中に含まれる生細胞以外の物質による画像ノイズを特徴量に含めてしまうということが、細胞特徴量の測定精度を下げる第2の原因として挙げられる。このことを、特に、細胞を保護する作用のある薬剤を探すスクリーニングを例にとって説明する。
この方法で問題になるのは、刺激によって一部死んだ細胞が培養プレートや培養液中に残っている場合があるということである。
実際の実験処理過程においては、このような1つの処理が付け加わることで時間とコストが増すことになる。このことは大量の薬剤サンプルを解析対象にするような薬剤スクリーニングにおいては好ましいことではない。
このような事情から、上のようなスクリーニング系では、細胞の画像中に生細胞と細胞の死骸が混在しているとして精度の高い解析処理方法を考えなくてはならない。
本実施形態に係るスクリーニング方法においては、まず、細胞Aの形態を表現する形態特徴量として、細胞Aの輪郭形状の円または球からのずれ量を使用する。
よって、細胞Aの形態特徴量として、円または球からのずれ量を採用することにより、その生死判定、活性度の推定を行うことができると考える。
まず、画像処理により細胞Aの境界を抽出し、さらに、図4に示されるように、細胞Aの境界の最大半径の内接円CIおよび最小半径の外接円COを取得する。ここで、円の半径、円に含まれる領域に対する細胞領域の面積比などを細胞Aの形態特徴量とする。
特に細胞が3次元的に重なっている場合を考える(図8参照)。この図の中で矢印をつけた細胞を取り出して解析する場合、細胞の3次元での解析が必要になる。
このような場合、図5に示されるように、細胞Aの各横断面A1〜ANのうち、細胞Aの中心を通る断面に対して上記の方法で解析を行うことにより、ダメージなど上で説明したパラメータの定量化を行うことができる。
これらの形態特徴量からは、細胞Aの中心部分の大きさ、つまり実質的な細胞Aの大きさや、上記領域の面積比からは全体の形の歪み、さらに外接円の半径の大きさから細胞Aの空間的な広がりなどを統一的に把握することができ、細胞Aの形態変化を効率的に精度良く表現することができる。
さらにこの方法を使うことによって、突起などの特定の細胞器官の検出や、細胞の死骸や死骸断片、あるいは、気泡などノイズといわれるものなど、様々に分類することができる。
また、例えば細胞の突起など、一般に管状構造をとる細胞の部分構造が多く見られるが、この場合、内接円CIが小さく、外接円COは大きいので、これらの半径比率は大きい。
以上のような方法により、これら内接円CI、外接円COを使って定義した特徴量により、細胞を分類することが可能になる。
細胞は刺激によるダメージを受けると、収縮するという特徴があることから、細胞の形態の円からの歪みを細胞が受けたダメージとして解釈すれば薬剤の保護作用の指標として用いることができる。
これら薬剤の各カテゴリに対してスクリーニング方法、細胞解析方法は異なるが、いずれの場合にも本発明の解析方法を適用することができる。
前述の細胞にダメージを与える系においては、細胞の一部は死ぬことになるが、これら死細胞の死骸は画像中に残っている場合が多く、系に固有のノイズ発生要因となって、細胞特徴量解析の精度を下げる原因となっている。
例えば、細胞の数をカウントし細胞保護作用の指標とするような前述した系においては、細胞の数があらかじめ厳密にコントロールされているとは限らない。そのため、同一カテゴリ内の、つまり似た条件の、細胞画像を多く観察することによって全体の細胞数を平均化させ、画像中の細胞数のばらつきを抑えるという方法が取られる。
本実施形態においては、例えば、細胞の死骸の数で細胞の総数を割ることによって、刺激を与える以前の細胞数に対して死滅あるいは生存している細胞の割合を正しく見積もることができる。
よって、これらを比較、あるいは平均化することにより細胞の受けたダメージ量を補正し、実際の細胞ダメージにより近い値を与えることができる。
例えば、神経細胞の管状構造をもつ突起の総延長を形態を表現する特徴量とする系を考える場合、突起の総延長は細胞によってばらつきが大きい、あるいは、薬剤などの影響を受けやすい、あるいは細胞体に比べて画像解析的に検出しにくいなどの特徴があるため、解析処理の結果には大きな誤差が含まれている場合が多いと考えられる。
細胞は一般的に、相互作用を行っていると考えられ、またこの相互作用は同一の細胞種間だけにとどまらず、異なる複数細胞種間でも行われていると考えられる。
細胞種を分類する方法としては、各細胞の形態の違いや染色の違いなどの定性的なものから、あるいは蛍光量などの定量的な違いなどから判断する方法などが考えられる。
サンプルの細胞を、細胞種などのカテゴリ分類して、各カテゴリの特徴量の変化などを記録することにより、より詳細にデータの解釈を行うことができ、たとえば有効な薬剤の探索により効果を発揮すると期待できる。
また、細胞の比率だけでなく、各細胞種の薬剤への反応の違いを比較することにより、たとえばより正確な薬剤の探索を行うことができると期待できる。
例えば、細胞群G1と細胞群G2の二つの細胞種を含む系で、薬剤投与後一定刺激を与えることにより、細胞群G1の60%が死滅し、細胞群G2の10%が死滅したという結果を得たとする。この場合、例えば、この薬剤は細胞群G2を選択的に保護する役割がある、などと解釈することができる。
一般には、このように、異なる細胞種間の結果を比較することにより、より詳細な解析を行うことができると期待できる。
図6に本実施形態に係るスクリーニング装置1の全体構成を示す。本実施形態に係るスクリーニング装置1は、励起光を発生する光源2を含む照明光学系3と、観察対象の動植物等の細胞を含む試料Bを配置したプレート4を載置する位置決めステージ5と、試料Bから発せられた蛍光を撮像するCCDカメラ6を含む受光光学系7と、CCDカメラ6により取得された画像を処理して形態的特徴量を抽出する画像処理部と、抽出された形態的特徴量を用いて薬剤スクリーニングを行うスクリーニング部とを備えている。
位置決めステージ5は、試料Bに焦点を合わせるようにプレート4を移動させることができるようになっている。
画像処理工程S27においては、まず、各画像の個々の細胞の中心となる点が抽出される(S271)。また、抽出された中心点が吟味され、細胞の中心点として不適切なものが除かれた、適切な細胞中心点が抽出される(S272)。続いて、これらの細胞中心点を囲む最も適切な細胞の境界を抽出する(S273)。そして、得られた細胞境界を用いて、上述したスクリーニング方法、すなわち、個々の細胞の形態的特徴量の抽出や細胞の総数を算出を行い(S28)、これに基づいて薬剤スクリーニングを実施する(S29)。
CI,CI1〜CIN 内接円
CO,CO1〜CON 外接円
1 スクリーニング装置
3 照明光学系(照明手段)
6 CCDカメラ(画像情報入力手段)
10 コンピュータ(スクリーニング部、評価手段、画像処理部、画像情報処理手段)
Claims (14)
- 顕微鏡により取得した細胞画像を解析し、
細胞画像中の各細胞の形態的な特徴を表す形態特徴量として、細胞の輪郭の円からのずれ量をパラメータ化した値を評価し、
この評価に基づいて薬剤スクリーニングを行なうスクリーニング方法であって、
前記形態特徴量として、細胞の輪郭の内接円または外接円の少なくともいずれかからのずれ量をパラメータ化した値を評価するスクリーニング方法。 - 顕微鏡により取得した複数の細胞画像から構築した3次元画像を解析し、
細胞画像中の各細胞の形態的な特徴を表す形態特徴量として、細胞の輪郭の球からのずれ量をパラメータ化した値を評価し、
この評価に基づいて薬剤スクリーニングを行うスクリーニング方法。 - 前記形態特徴量として、細胞の輪郭の内接球または外接球の少なくともいずれかからのずれ量をパラメータ化した値を評価する請求項2に記載のスクリーニング方法。
- 前記形態特徴量に基づいて、画像中の細胞を生細胞または死細胞のいずれかに判定して評価に使用する請求項1から請求項3のいずれかに記載のスクリーニング方法。
- 細胞画像中に選択されたいずれかの領域に対して解析を行い、
パラメータ化した値に基づいて、これら領域を細胞体、環状構造をもつ細胞の突起、細胞以外の細胞の死骸または気泡に分類する請求項1から請求項4のいずれかに記載のスクリーニング方法。 - 分類された細胞以外の画像情報を定量化し、
定量化された細胞以外の画像情報を用いて、細胞に対する薬剤スクリーニングの統計結果を補正する請求項5に記載のスクリーニング方法。 - 細胞の形態の変化を、細胞がダメージを受けたことに起因すると推定し、薬剤による細胞保護作用を定量化する請求項6に記載のスクリーニング方法。
- 細胞の形態の円からの歪みを細胞の運動に起因するものとして解釈し、
前記形態特徴量を薬剤の細胞に対する活性化を測る指標として用いる請求項1から請求項3のいずれかに記載のスクリーニング方法。 - 神経細胞のスクリーニング方法において、
分類された管状構造をもつ各細胞の突起の情報を形態特徴量として用い、
管状構造の総量が細胞が受けたダメージと相関するということを推定し、
薬剤効果の定量化を行う請求項5に記載のスクリーニング方法。 - 複数の種類によって構成される細胞サンプルを用いる請求項1から請求項9のいずれかに記載のスクリーニング方法。
- 注目する細胞種および他の細胞種について同様な評価を行う請求項10に記載のスクリーニング方法。
- 細胞に照明光を照射する照明手段と、
細胞から発せられる光を検出して画像情報を取得する画像情報入力手段と、
該画像情報入力手段により取得された画像情報において、各細胞の形態的な特徴を表す形態特徴量をパラメータ化する画像情報処理手段と、
該画像情報処理手段によりパラメータ化された形態特徴量を評価し、細胞に対する薬剤スクリーニングを行う評価手段と、
該評価手段による薬剤スクリーニングの結果を出力表示する出力手段とを備え、
前記評価手段が、前記形態特徴量として、円または球からの細胞の輪郭のずれ量を用いるスクリーニング装置。 - 前記評価手段が、前記形態特徴量に基づいて、各細胞の生死を判別する請求項12に記載のスクリーニング装置。
- 複数種の細胞サンプルを用い、注目する細胞種および他の細胞種について同様の評価を行う請求項12または請求項13に記載のスクリーニング装置。
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