以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係る沈殿装置10の構成を示す図である。沈殿装置10は傾斜式沈殿装置であり、沈殿池20に設置される。図1には、沈殿池20の長さ方向に平行なX軸と、沈殿池20の幅方向に平行なY軸と、沈殿池20の深さ方向(高さ方向または鉛直方向)に平行なZ軸の3軸からなる直交座標系が示されている。沈殿池20の流入部から流出部へと向かう方向をX軸の+方向とする。以下では、この直交座標系を用いて各部を説明する場合がある。
沈殿池20は、たとえば、上水、下水、その他の廃水などの処理水を浄化する設備である。より具体的には、沈殿池20は、たとえば、下水処理施設の最終沈殿池であり、沈砂池、最初沈殿池、およびエアレーションタンクを通過した処理水が流入する。沈殿池20には、底部の堆積物を掻き寄るための掻寄機等(図示せず)が設けられてもよい。
本実施形態では、沈殿装置10は阻流壁30を備え、阻流壁30は沈殿装置10に一体に固定されている。なお、阻流壁30は、沈殿装置10以外の構造物(沈殿池20を含む)に対して直接的には固定されていない。このため、沈殿装置10を設置するだけで阻流壁30も同時に配置することができ、阻流壁を構築するための土木工事等が不要になる。また、このため、阻流壁を設置するために処理水の流入を一時的に停止する等の対応も不要になる。
阻流壁30は、たとえば平面状かつ矩形状に形成される。阻流壁30の配置は、たとえば、沈殿池20の幅方向(Y軸方向)および深さ方向(Z軸方向)におおむね平行となっており、沈殿池20の処理水の流れを一部で遮る。阻流壁30の上端は、沈殿池20の水面より高い位置に配置される。阻流壁30の下端は、沈殿池20の水面より低く、沈殿池20の底部より高い位置に配置される。阻流壁30は、処理水の水面から所定の深さまで、流入部から流出部へと向かう処理水の流れを遮るように設けられている。
実施形態1では、阻流壁30は鉛直に、たとえばYZ平面内に配置される。このため、阻流壁30には汚泥等が堆積せず、阻流壁30を洗浄する必要がない。なお、仮に阻流壁を特許文献1に開示されるように斜めに配置すると、汚泥等が堆積し、阻流壁を洗浄する必要が生じる。特に、下水処理場では、堆積する汚泥が活性汚泥であるため、洗浄頻度がより増加する。活性汚泥を(例えば、2日間以上)放置すると、生物反応によってガスが発生し、浮上、処理水に混入し、処理水質の悪化を招く。本実施形態の阻流壁30によれば、このような事態を回避できる。
沈殿装置10は、複数の傾斜部40を備える。傾斜部40は、本実施形態では傾斜板として構成されるが、傾斜管として構成されてもよい。傾斜部40のうち大部分は、阻流壁30より下流側(X軸+側)に配置され、後述するように一部が阻流壁30より上流側(X軸−側)に配置される。傾斜部40は、たとえば上向流中に配置される。また、傾斜部40は、たとえば全体が水中に配置される。
本実施形態では、沈殿装置10は、1つ以上の折り畳み部50と、1つ以上の固定部60とを備える。折り畳み部50および固定部60には、上述の傾斜部40が、それぞれ少なくとも1つ備えられている。図1の例では、固定部60は折り畳み部50に対して阻流壁30側に(すなわち上流側に)配置される。
また、沈殿装置10はフレーム構造70を備える。図1の状態では、折り畳み部50および固定部60はフレーム構造70を介して傾斜部40を固定している。また、折り畳み部50および固定部60は互いに固定されており、とくに本実施形態では、折り畳み部50および固定部60はフレーム構造70を介して互いに連結されている。
本実施形態では、沈殿装置10は吊り部材80および水上構造90を備える。なお、「水上構造」という名称は、水中の傾斜部40等と区別するための便宜上のものであり、場合によって水中に配置される部分を含む構造であってもよい。フレーム構造70は、吊り部材80を介して水上構造90に連結される。なお後述するように吊り部材80は揺動可能であり、フレーム構造70および水上構造90は互いに固定されてはいない。また、阻流壁30は水上構造90に固定されることにより沈殿装置10に対して固定されている。
次に、沈殿装置10周辺における処理水の流れについて説明する。
処理水は、上流側の設備から流入部を介して沈殿池20へと流入し、沈殿池20の長さ方向に、下流側(X軸+側)へ向けて流れる。阻流壁30近傍に到達した処理水は、阻流壁30に沿って下向きに導かれる(矢印A1)。傾斜部40が配置された深さに達した処理水は、傾斜部40の下端から傾斜部40の間と流入し、上向流を形成して傾斜部40の間を流れ、傾斜部40の上端から流出する(矢印A2および矢印A3)。
図1には示さないが、沈殿装置10または沈殿池20に越流トラフが設けられてもよい。傾斜部40から流出した処理水は、(存在する場合には越流トラフを介して)沈殿池20の流出口に到達し、流出部から沈殿池20の下流側の設備へと流出する。
図2を用いて、傾斜部40近傍の処理水の流れについて説明する。
折り畳み部50は複数の傾斜部40を備える。以下、折り畳み部50に含まれる傾斜部40を第1傾斜部41と呼び、固定部60に含まれる傾斜部40を第2傾斜部42と呼ぶ場合がある。図2には、複数の第2傾斜部42として、第2傾斜部42a〜42dが示される。
傾斜部40のうち最上流に配置されるもの(図2の例では第2傾斜部42a)の下端は、図2に破線Dで示すように、阻流壁30よりも上流側に配置される(厳密には、阻流壁30の上流側端面または上流側縁よりも上流側に配置される)。なお、図2の例では、最上流のものに限らず、2番目の第2傾斜部42bおよび3番目の第2傾斜部42cについても同様に、下端が阻流壁30よりも上流側に配置されている。
処理水の一部は、阻流壁30に沿って下降し(矢印A4)、最上流の第2傾斜部42aの下端を回り込み(矢印A5)、第2傾斜部42aと第2傾斜部42bとの間を上向きに流れる(矢印A6)。このように、最上流の第2傾斜部42aは、第2傾斜部42aの下端周辺において、上面に沿って処理水が下向流を形成し、下面に沿って処理水が上向流を形成するように配置されている。
このような水流の形成は、たとえば阻流壁30と最上流の第2傾斜部42aとの位置関係を適切に設計することにより実現可能である。たとえば、阻流壁30と最上流の第2傾斜部42aとの距離を、第2傾斜部42間の距離よりも小さくすればよい。または、所定方向(たとえばX軸方向)における阻流壁30と最上流の第2傾斜部42aとの距離(ピッチ)を、同じ方向における第2傾斜部42間の距離(ピッチ)よりも小さくすればよい。
図3は、水上構造90と阻流壁30との連結部分の拡大図である。この例では、水上構造90と阻流壁30とは取付具31を介して連結され固定される。より具体的には、取付具31は2つの板状部材が直交した形状となっており、互いに直交する板状部材のそれぞれに阻流壁30および水上構造90が固定される。固定はたとえば締結構造32による締結である。締結構造32としては、たとえば公知のボルトおよびナットを用いることができる。
なお、このように水上構造90によって支持可能な阻流壁30は、たとえばステンレスまたは樹脂を用いて構成することができ、厚さはたとえば1mmとすることができる。
図4〜図6を用いて折り畳み部50の構成について説明する。折り畳み部50は、複数の第1傾斜部41を備え、折り畳み可能に構成される。図4は、展開された状態(すなわち折り畳まれていない状態)における折り畳み部50の斜視図である。図5は、折り畳まれた状態における折り畳み部50の側面図(Y軸方向に見た図)である。図6は、展開された状態の折り畳み部50における、第1傾斜部41の支持構造を示す斜視図である。
ここで、「折り畳み可能」とは、たとえば特定の一方向の寸法を縮小することにより、運搬時、保管時または梱包時等における全体容積を減少させることをいう。具体例として、図4に示す状態から図5に示す状態に上下方向の寸法を縮小することにより全体の容積が減少している。ただし、すべての方向の寸法を縮小することまでは要せず、たとえば図5の例では前後方向の寸法が増加する場合もある。
また、「折り畳み可能」とは、沈殿装置10が使用される状態においてまで常に折り畳み可能であることは要せず、少なくとも特定作業時(運搬時または保管時等)に、複数の第1傾斜部41が互いに平行となるよう連結された状態で、各第1傾斜部41を折り畳むことができる構成を意味する。
フレーム構造70は、折り畳み部50に関するフレームを備える。本実施形態では、折り畳み部50は、上側フレーム71と、下側フレーム72とを備える。また、フレーム構造70は、上側フレーム71および下側フレーム72を接続する接続フレームを備える。本実施形態では、接続フレームは、第1方向接続フレーム73と、第2方向接続フレーム74とを含む。
上側フレーム71は、少なくとも1つあればよいが、本実施形態では沈殿池20の幅方向(Y軸方向)に分離して、沈殿池20の長さ方向(X軸方向)に延びるように2本配置される。下側フレーム72も、少なくとも1つあればよいが、本実施形態では沈殿池20の幅方向(Y軸方向)に分離して、沈殿池20の長さ方向(X軸方向)に延びるように2本配置される。下側フレーム72は、上側フレーム71の下方に配置される。
図6に示すように、上側フレーム71および下側フレーム72によって各第1傾斜部41が支持される。上側フレーム71は、複数の上側回動支持部71aを備える。上側回動支持部71aはそれぞれ第1傾斜部41の1つと対応しており、第1傾斜部41を、所定の軸(第1軸)の周りに回動するよう支持する。この第1軸はたとえばY軸と平行な軸である。
同様に、下側フレーム72は、複数の下側回動支持部72aを備える。下側回動支持部72aもそれぞれ第1傾斜部41の1つと対応しており、第1傾斜部41を、第1軸と平行な所定の軸(第2軸)の周りに回動するよう支持する。
図6の例では、上側回動支持部71aおよび下側回動支持部72aは軸状または棒状の部材であり、先端に抜け止めの拡径部が形成されており、基端がそれぞれ上側フレーム71および下側フレーム72に固定されている。また、第1傾斜部41は係合部41xを備えており、係合部41xは、それぞれ上側回動支持部71aまたは下側回動支持部72aと回動可能に係合または嵌合する。この係合または嵌合は、遊びを有してもよい。
具体例として、係合部41xは、断面形状がU字型になるように曲折された板状の部材であり、沈殿池20の幅方向(Y軸方向)の両端と、下端とが開放されている。係合部41xは、沈殿池20の幅方向(Y軸方向)における第1傾斜部41の一方の端部と他方の端部に、それぞれ、上下に間隔をあけて二つずつ固定されている。
第1傾斜部41を上側フレーム71および下側フレーム72に連結し支持させるためには、係合部41xのうち上側のものを、上側フレーム71の上側回動支持部71aに引っ掛け、係合部41xのうち下側のものを、下側フレーム72の下側回動支持部72aに引っ掛ける。これにより、ある第1傾斜部41の、一つの係合部41xと上側回動支持部71aとが、上側回動支持部71aの下方側に遊びを有した状態で係合するとともに、別の係合部41xと下側回動支持部72aとが、下側回動支持部72aの下方側に遊びを有した状態で係合する。
上側回動支持部71aの回動軸は、すべて、ある1本の直線(たとえば上側フレーム71の軸線)と直交するように配置される。このため、すべての上側回動支持部71a(またはこれらの回動軸)は同一平面内(この例では同一水平面内)に配置される。また、上側回動支持部71aの回動軸は、互いに等間隔に配置されてもよい。
下側回動支持部72aの回動軸は、すべて、ある1本の直線(たとえば下側フレーム72の軸線)と直交するように配置される。このため、折り畳み部50において、すべての下側回動支持部72a(またはこれらの回動軸)は同一平面内(この例では同一水平面内)に配置される。また、下側回動支持部72aの回動軸は、互いに等間隔に配置されてもよい。
このように、上側回動支持部71aどうしの位置関係と、下側回動支持部72aどうしの位置関係とは、互いに同一であると言える。なお、すべての上側回動支持部71aによって構成される平面と、すべての下側回動支持部72aによって構成される平面とは、互いに平行であってもよい。
このような構成によれば、上側回動支持部71aおよび下側回動支持部72aにおいて各第1傾斜部41を回動させることにより、折り畳み部50を折り畳むことが可能となる。たとえば折り畳み部50は、図4に示す展開された状態と、図5に示す折り畳まれた状態とを変形しつつ実現することができる。
図4および図5に示す第1方向接続フレーム73は少なくとも1つあればよいが、本実施形態ではY軸方向に分離して3対(合計6本)設けられており、それぞれが上側フレーム71と下側フレーム72とを接続する。図4および図5には第1方向接続フレーム73が3本だけ図示されているが、第1傾斜部41を挟んで反対側に(すなわちY軸+側に)残り3本の第1方向接続フレーム73が配置されている。
第1方向接続フレーム73は、上側接続部分73aにおいて上側フレーム71と接続され、下側接続部分73bにおいて下側フレーム72と接続される。上側接続部分73aおよび下側接続部分73bは、いずれも回動可能に構成される。上側接続部分73aの回動軸と下側接続部分73bの回動軸とは平行であり、すべての第1方向接続フレーム73について上側接続部分73aの回動軸は互いに平行である。
第1方向接続フレーム73が複数配置される場合には、上側接続部分73aの回動軸は、すべて、ある1本の直線(たとえば上側フレーム71の軸線)と直交するように配置される。このため、すべての上側接続部分73a(またはこれらの回動軸)は同一平面内(この例では同一水平面内)に配置される。また、上側接続部分73aの回動軸は、互いに等間隔に配置されてもよい。
同様に、下側接続部分73bの回動軸は、すべて、ある1本の直線(たとえば下側フレーム72の軸線)と直交するように配置される。このため、すべての下側接続部分73b(またはこれらの回動軸)は同一平面内(この例では同一水平面内)に配置される。また、下側接続部分73bの回動軸は、互いに等間隔に配置されてもよい。
また、第1方向接続フレーム73が複数配置される場合には、すべて互いに平行に配置される。より厳密には、各第1方向接続フレーム73において、上側接続部分73aの回動軸と、下側接続部分73bの回動軸とを含む平面が、他の第1方向接続フレーム73における同様の平面と平行となるよう配置される。このような構成により、第1方向接続フレーム73が取り付けられた状態でも、折り畳み部50の折りたたみ動作は制限されない。
図4に示す展開された状態では、第2方向接続フレーム74が取り付けられている。第2方向接続フレーム74は、第1方向接続フレーム73とは平行でない向きに配置される。第2方向接続フレーム74は少なくとも1つあればよいが、本実施形態ではY軸方向に分離して2対(合計4本)設けられており、それぞれが上側フレーム71と下側フレーム72とを接続する。図4には第2方向接続フレーム74が2本だけ図示されているが、第1傾斜部41を挟んで反対側に(すなわちY軸+側に)残り2本の第2方向接続フレーム74が配置されている。
第2方向接続フレーム74は、上側接続部分74aにおいて上側フレーム71と接続され、下側接続部分74bにおいて下側フレーム72と接続される。上側接続部分74aでは、上側フレーム71と第2方向接続フレーム74とが締結等により固定される(ただし回動可能とした構成もとくに除外しない)。同様に、下側接続部分74bでは、下側フレーム72と第2方向接続フレーム74とが締結等により固定される(ただし回動可能とした構成もとくに除外しない)。締結には、公知の締結部材(ボルトおよびナット等)を用いることができる。
第1方向接続フレーム73と第2方向接続フレーム74とは平行でないので、第2方向接続フレーム74が取り付けられた状態では、第1方向接続フレーム73の上側接続部分73aおよび下側接続部分73bにおける回動が禁止され、折り畳み部50の折り畳み動作が抑制される。
このように、折り畳み部50は、第2方向接続フレーム74を取り付けない状態では折り畳み可能であるため、折り畳み部50については沈殿池20に設置する作業の工数が低減される。たとえば、予め上側フレーム71および下側フレーム72を第1方向接続フレーム73で連結し、これに第1傾斜部41をすべて取り付けた状態で折り畳むことができるので、この状態で沈殿池20まで運搬すれば、沈殿池20周辺で必要となる組み立て工程は第2方向接続フレーム74を取り付ける工程のみとなる。
図7に、固定部60の構成の例を示す。固定部60は、少なくとも1つの第2傾斜部42を備え、折り畳み不可能に構成される。図7には、複数の第2傾斜部42として、第2傾斜部42a〜42dが示される。ここで、「折り畳み不可能」とは、少なくとも沈殿装置10が使用される状態において(たとえば第2傾斜部42を取り付けた状態において)、折り畳むことができないことを意味する。
フレーム構造70(図1および図2参照)は、固定部60に関して少なくとも1つのフレームを備える。本実施形態では、固定部60は、上側フレーム75と、下側フレーム76とを備える。また、図7にはとくに示さないが、フレーム構造70は、上側フレーム75および下側フレーム76を接続する接続フレームを備えてもよい。この接続フレームは、上側フレーム75および下側フレーム76を単に連結するものであってもよいし、さらに上側フレーム75および下側フレーム76を互いに固定するものであってもよい。
上側フレーム75は、本実施形態では沈殿池20の幅方向(Y軸方向)に分離して、沈殿池20の長さ方向(X軸方向)に延びるように2本配置される。下側フレーム76も、本実施形態では沈殿池20の幅方向(Y軸方向)に分離して2本配置されるが、形状は長さ方向(X軸方向)および深さ方向(Z軸方向)に延びるL字形状となっている。下側フレーム76は、上側フレーム75の下方に配置される。
沈殿装置10が使用される状態では、固定部60と折り畳み部50とが互いに固定される。たとえば図2に示すように、固定部60の上側フレーム75が折り畳み部50の上側フレーム71に、固定部60の下側フレーム76が折り畳み部50の下側フレーム72に、それぞれ締結等により固定される。締結には、公知の締結部材(ボルトおよびナット等)を用いることができる。
上側フレーム75および下側フレーム76によって各第2傾斜部42が支持される。本実施形態では4つの第2傾斜部42が設けられており、これらを上流側から順に第2傾斜部42a、第2傾斜部42b、第2傾斜部42c、第2傾斜部42dとする。
第2傾斜部42は、すべて同一の構成とする必要はない。本実施形態では、図2および図7に示すように、第2傾斜部42cと第2傾斜部42dとは同一の構成であるが、第2傾斜部42bは深さ方向(Z軸方向)の寸法がより小さく、第2傾斜部42aはさらにより小さい。すなわち、上流に配置される第2傾斜部42は、下流に配置される第2傾斜部42と同一か、またはより小さい寸法となっている。このように、固定部60は、寸法が異なる複数の第2傾斜部42を備えている。
また、すべての第2傾斜部42について、その上端の深さ位置はすべて同一であるが、下端の深さ位置は一部異なる。図2の例では、第2傾斜部42cの下端より第2傾斜部42bの下端が高く、第2傾斜部42aの下端はさらにより高い。また、第2傾斜部42a、第2傾斜部42bおよび第2傾斜部42cの下端は、沈殿池20の長さ方向(X軸方向)の位置がすべて同一となっている。
上側フレーム75は上側支持部75aを備え(図7では位置のみ示す)、上側支持部75aは第2傾斜部42を支持する。また、下側フレーム76は下側支持部76a(図7では位置のみ示す)を備え、下側支持部76aも第2傾斜部42を支持する。上側支持部75aおよび下側支持部76aによる支持構造はとくに図示しないが、たとえば図7に示す上側回動支持部71aおよび下側回動支持部72aと同様に回動可能な支持構造であってもよいし、これらとは異なり回動不可能に固定された支持構造であってもよい。なお、第2傾斜部42も、そのような支持構造に対応して支持される構造を備える。たとえば、第2傾斜部42は、図7の第1傾斜部41の係合部41xと同様の係合部を備えてもよい。
固定部60では、折り畳み部50と異なり、下側支持部76aがすべて同一水平面内に配置されるわけではない。たとえば、第2傾斜部42bに対応する下側支持部76a(図7に示す位置)と、第2傾斜部42cに対応する下側支持部(図7ではとくに参照符号を付さない)とでは、深さ位置が異なる。
各第2傾斜部42の寸法が異なることに応じ、上側フレーム75または下側フレーム76の形状が適切に設計されてもよい。本実施形態では、上流側の第2傾斜部42の下端がより高くなっているので、下側フレーム76の上流側が上方向に屈曲している。
固定部60では、上側支持部75aどうしの位置関係と、下側支持部76aどうしの位置関係とは同一ではない。すなわち、すべての上側支持部75aが同一水平面内に配置されるが、下側支持部76aはそうではない(2つ以上の水平面にわたって配置される)。このため、上側支持部75aおよび下側支持部76aが回動可能であるか否かに関わらず、固定部60は折り畳むことができない(折り畳むためには上側フレーム75または下側フレーム76の変形が必要となるが、これらは剛性のフレームであって変形不可能である)。
固定部60を折り畳み不可能とするための構造(すなわち固定部60の構成を固定するための構造)は、この他にも任意に設計することができる。たとえば、上側フレーム75および下側フレーム76が互いに固定されていてもよい。または、たとえば、すべての下側支持部76aを同一水平面内に配置する場合には、上側支持部75aを2つ以上の水平面にわたって配置すればよい。また、たとえば、上側支持部75aどうしの位置関係と、下側支持部76aどうしの位置関係とが同一であっても、各支持部を回動不可能に固定すれば、固定部60は折り畳むことができない。
このように、固定部60は折り畳み不可能に構成されているので、沈殿池20に沈殿装置10を設置して使用する際に、折り畳み部50の第2方向接続フレーム74のような追加部材を取り付ける必要がなく、工数が低減される。
また、沈殿装置10は、一部に異なる寸法の第2傾斜部42を備えるものであるが、異なる寸法の第2傾斜部42を固定部60として別体に製造することにより、折り畳み部50については構成を簡素に維持することができる。言い換えると、仮に異なる寸法の第2傾斜部42を含めて全体を折り畳み可能とするためには、沈殿装置全体の構造が複雑になるが、本実施形態ではそのような複雑な構造とする必要がない。
また、沈殿装置10は折り畳み部50と固定部60とを備えるので、様々な寸法の沈殿池に容易に適応することができる。たとえば、折り畳み部50の寸法を標準化し、とくに沈殿池の長さ(X軸)方向の寸法を標準として決定しておき、所望の沈殿池の長さに応じた長さの固定部60を製造することができる。
また、折り畳み部50に別の折り畳み部50を接続できるように構成してもよい。たとえば図2に示す折り畳み部50と固定部60との接続部分と同様の構成をもって、折り畳み部50と別の折り畳み部50とを接続することができる。
固定部60では各第2傾斜部42の寸法が異なり、とくに上流側の第2傾斜部42がより小さく形成されている。このため、各第2傾斜部42の上端の深さ位置を揃えた状態で、下端をそれほど大きく上流側に突出させることなく、最上流の第2傾斜部42aを阻流壁30の近くに配置することができる。このため、阻流壁30と第2傾斜部42aとの間(すなわち第2傾斜部42aの上側)から汚泥が下流側にリークすることがない。
また、図2の矢印に示すように、第2傾斜部42aの下端周辺において、上面では矢印A4で示すように処理水が下向流を形成するので、処理水が第2傾斜部42aの上面を下流に向かって(すなわち上に向かって)流れることがない。このため、汚泥のリークが抑制される。
次に、図8〜図10を用いて、吊り部材80について説明する。図8は吊り部材80の側面図すなわちY軸方向から見た図であり、図9は吊り部材80の正面図すなわちX軸方向から見た図であり、図10は図9における吊り部材80と水上構造90との連結部分の拡大図である。
吊り部材80はその上端において連結部分81を介して水上構造90と連結される。また、吊り部材80はその下端において連結部分82を介してフレーム構造70に連結される。連結部分81は、たとえばボルト81aと、中空円筒状のスペーサ81bとを用いて構成される。
図10に示すように、スペーサ81bは、水上構造90の連結部材93の回動孔93a内に配置される。このスペーサ81bにボルト81aが挿通され、ボルト81aは吊り部材80のネジ孔80aと螺合する。スペーサ81bの軸方向寸法は、回動孔93aの軸方向寸法(すなわち連結部材93の厚さ)よりも大きく構成されており、このため連結部材93と吊り部材80との間にはクリアランスが確保される。
連結部分81において、吊り部材80は水上構造90に対して回動可能に構成される。たとえば、スペーサ81bの内周と、ボルト81aの外周(とくにスペーサ81bを貫通している部分の外周)とは、互いに回動可能となるよう構成される。また、スペーサ81bの外周と、回動孔93aの内周とは、互いに回動可能となるよう構成される。
連結部分82の構造の詳細はとくに図示しないが、連結部分81と同様の構成を有する。すなわち、吊り部材80はフレーム構造70に対しても回動可能となっている。このため、図8に矢印で示すように、フレーム構造70と水上構造90とは互いに揺動可能となる。
このように、フレーム構造70と水上構造90とが互いに揺動可能であることにより、外力に対する沈殿装置10の耐性が向上する。たとえば、地震が発生して水上構造90が振動した場合であっても、吊り部材80の回動によって振動の一部が吸収されるので、フレーム構造70(またはフレーム構造70に支持された傾斜部40等)に加わる力が低減される。また、水上構造90とフレーム構造70との間に発生する応力が低減される。
次に、傾斜部40を洗浄するための構成について説明する。
図11は、傾斜部40を洗浄するための洗浄装置100の外観構成を示す図である。沈殿装置10はこの洗浄装置100を備える。洗浄装置100は、傾斜部40を昇降させる昇降部101を備えており、傾斜部40を昇降させることにより洗浄する。昇降部101は、処理水を得るための構造物や部品(越流トラフ等)の近傍に配置されてもよい。
図8〜図10に示す吊り部材80は、昇降部101と傾斜部40とが互いに揺動可能となるように、傾斜部40を懸架する。
なお、図11の例では、水上構造90は縦方向に延びる接続部材94を備え、この接続部材94が水上構造90の上側部分と下側部分とを接続する。接続部材94を長くした構成では、吊り荷重が不均一である場合等に、昇降部101による昇降動作時に力のモーメント(回転モーメント)が発生する可能性がある。このようなモーメントを緩和する目的で、接続部材94の具体的構造を吊り部材80と同様とし、図8〜図10と同様に回動可能に接続して、水上構造90の上側部分と下側部分とが互いに揺動可能となる構造とすることが有効である。その場合には、吊り部材80に加えて接続部材94も、昇降部101と傾斜部40とが互いに揺動可能となるように、傾斜部40を懸架するということができる。
特に昇降部101にエアシリンダを用いる場合には、空気源が同一であることが多い。このような構成では、シリンダーそれぞれに対する吊り荷重が不均一である場合に、昇降スピードも不均一となる可能性があり、力のモーメントが発生しやすい。したがって、接続部材94を吊り部材80と同様に回動可能とした構成は、昇降部101にエアシリンダを用いる構成においてとくに有効である。
図12は、図11に示す昇降部101の拡大図である。昇降部101は、沈殿池20において処理水の水面よりも上方の水上部に設けられている。より具体的には、昇降部101は、固定ブラケット120を介して、沈殿池20の外縁部に支持されて固定されている。
沈殿装置10の水上構造90には軸部91が設けられる。軸部91は、水上構造90の接地部92を介し、沈殿池20の外縁部に支持される。ただし、接地部92は固定されておらず、外力等に応じて移動することが可能であり、たとえば図12の一点鎖線で示すように持ち上げることができる。このように、水上構造90は移動可能に支持されている。水上構造90が移動すると、これに伴って、水上構造90を介して支持されている各傾斜部40も移動することになる。
昇降部101は、たとえば、水上構造90の軸部91を支持する支持部108を有している。昇降部101は、たとえば、支持部108を昇降させることで、軸部91を介して水上構造90を昇降させ、結果として各傾斜部40を昇降させる。
また、支持部108は、たとえば、少なくとも一方向に遊びを有して水上構造90を支持するように構成されている。より具体的には、支持部108は、たとえば、軸部91を下方から支持する支持底部108bと、軸部91の両側に空隙を介して対向する移動規制部108aと、を有している。また、支持部108は、支持底部108bの上方が開放されている。より詳細には、図12に示す例において、支持部108は、たとえば、上部が開放されたU字型、J字型、または円弧状の断面形状を有するフック状の形状に成形されている。なお、支持部108は、たとえば円環状の形状のように上部が閉じた形状であってもよく、複数の部品で構成されていてもよい。
支持部108は、たとえば、フック状の形状の底部の支持底部108bによって、水上構造90の軸部91を支持する。支持部108の移動規制部108aは、支持底部108bの上に軸部91が支持された状態で、軸部91に対して、沈殿池20の長さ方向(X軸方向)の両側に間隙を介して対向するように設けられている。すなわち、図12に示す例において、支持部108は、たとえば、沈殿池20の上流方向(X軸−方向)と、沈殿池20の下流方向(X軸+方向)と、上方向の少なくとも三方向以上に遊びを有して水上構造90を支持するように構成されている。
図13は、昇降部101の構成の一例を示す空気圧回路図である。洗浄装置100は、昇降部101による傾斜部40の昇降を制御する制御部102と、エアシリンダ103と、エアシリンダ103に設けられたスピードコントローラ104と、空気供給部105と、フィルタ/レギュレータ106と、電磁弁107と、を備えている。
エアシリンダ103は、たとえば、沈殿池20の幅方向(Y軸方向)の一方側と他方側に、それぞれ二つずつ、合計で四つ設けられる。支持部108は、エアシリンダ103のピストンロッド103aに連結されている。昇降部101は、エアシリンダ103のピストンロッド103aを伸縮させることで、ピストンロッド103aに連結された支持部108を昇降させる。なお、昇降部101は、エアシリンダ103を備える構成に限定されず、たとえばギア、モータ、ボールねじ、チェーン、ワイヤロープ、リンク機構等を使用した昇降機構によって支持部108を昇降させるようにしてもよい。
四つのエアシリンダ103は、すべて図13に示すエアシリンダ103と同様の構成を備える。そのため、図13では、二つのエアシリンダ103とそれに付随する構成のみを図示し、他の二つのエアシリンダ103とそれに付随する構成の図示を省略する。なお、昇降部101が備えるエアシリンダ103の数は、特に限定されない。
空気供給部105は、たとえば、空気を圧縮する圧縮機と、圧縮された空気を貯留するタンクとを備え、エアー用ゴムホースを介してフィルタ/レギュレータ106に接続されている。空気供給部105は、制御部102からの制御信号に基づいて、圧縮された空気をフィルタ/レギュレータ106に供給する。フィルタ/レギュレータ106は、たとえば、フィルタが内蔵された減圧弁である。フィルタ/レギュレータ106は、各エアシリンダ103に対して設けられた電磁弁107にエアチューブを介して接続され、所定の圧力に減圧された清浄な空気を電磁弁107に供給する。
電磁弁107は、たとえば、4方向、4ポート、3位置の電磁弁である。電磁弁107は、たとえば、制御部102の制御信号に基づいて、図13に示す全てのポートが閉じた状態と、右側が励磁された状態と、左側が励磁された状態とを切り替える。
電磁弁107は、右側が励磁されると、右側の矢印が交差した状態になり、1番と2番のポートが接続され、4番と3番のポートが接続される。この状態で、圧縮された空気がフィルタ/レギュレータ106を介して電磁弁107に供給されると、図13における下方側のスピードコントローラ104の逆止弁が開き、図13におけるエアシリンダ103の下方側に圧縮された空気が供給される。
これにより、エアシリンダ103のピストンロッド103aが図13における上方側に移動して収縮し、支持部108が上昇する。また、ピストンロッド103aの収縮にともなって、図13におけるエアシリンダ103の上方側から空気が排出され、図13における上方側のスピードコントローラ104へ流入する。すると、図13における上方側のスピードコントローラ104の逆止弁が閉じ、流量制御弁を通して空気が排出される。
また、電磁弁107は、左側が励磁されると、左側の矢印が平行な状態になり、1番と4番のポートが接続され、2番と3番のポートが接続される。この状態で、圧縮された空気がフィルタ/レギュレータ106を介して電磁弁107に供給されると、図13における上方側のスピードコントローラ104の逆止弁が開き、図13におけるエアシリンダ103の上方側に圧縮された空気が供給される。
これにより、エアシリンダ103のピストンロッド103aが図13における下方側に移動して伸長し、支持部108が下降する。また、ピストンロッド103aの伸長にともなって、図13におけるエアシリンダ103の下方側から空気が排出され、図13における下方側のスピードコントローラ104へ流入する。すると、図13における下方側のスピードコントローラ104の逆止弁が閉じ、流量制御弁を通して空気が排出される。
すなわち、本実施形態において、スピードコントローラ104は、エアシリンダ103のメータアウト制御を行うように構成されている。また、スピードコントローラ104は、たとえば、図13における下方側のスピードコントローラ104の流量制御弁を通過する空気の流量が、図13における上方側のスピードコントローラ104の流量制御弁を通過する空気の流量よりも、大きくなるように設定されている。
換言すると、スピードコントローラ104は、たとえば、ピストンロッド103aの伸長時にエアシリンダ103から排出された空気を通過させる流量制御弁の空気流量が、ピストンロッド103aの収縮時にエアシリンダ103から排出された空気を通過させる流量制御弁の空気流量よりも多くされている。これにより、図13に示す例において、ピストンロッド103aに連結されて傾斜部40を支持する支持部108の下降速度は、支持部108の上昇速度よりも高速になる。また、沈殿装置10(とくに傾斜部40)の自重がエアシリンダ103に作用して、下降速度が上昇速度よりも高速になるようになっている。
このような構成により、昇降部101は、たとえば、傾斜部40の下降速度が傾斜部40の上昇速度よりも高速になるように構成されている。または、たとえば、傾斜部40を機械的に持ち上げることにより上昇させ、傾斜部40を、傾斜部40の自重を利用して下降させるように構成されている。ここで「自重を利用して下降させる」とは、自由落下によるものや、エアシリンダを開放して空気の出入りが自由となる状態で下降させることによるものを含む。また、「自由落下」とは、たとえば水中における自由落下を意味するが、自由落下の全行程が水中で行われるものに限定されない。また、このような動作を行う昇降部101の構成は、図13に示す構成に限定されない。
なお、昇降部101がエアシリンダ103を有しない場合には、たとえば、カム機構などを用いることで、支持部108の下降速度が支持部108の上昇速度よりも高速になるように構成することができる。また、たとえば、昇降部101がサーボモータを備える場合には、制御部102が昇降部101を制御して、傾斜部40の下降速度を傾斜部40の上昇速度よりも高速にするにように、制御部102を構成してもよい。
また、昇降部101がエアシリンダ103を備える場合でも、たとえば、昇降部101を構成するスピードコントローラ104の流量制御弁を自動制御することによって、傾斜部40の下降速度を傾斜部40の上昇速度よりも高速にするにように、制御部102を構成してもよい。このように、制御部102は、たとえば、傾斜部40の下降速度が傾斜部40の上昇速度よりも高速になるように、昇降部101を制御することができる。
以下、洗浄装置100の作用について説明する。
制御部102によって昇降部101を制御することで、昇降部101によって傾斜部40を上昇させることができる。また、制御部102によって昇降部101を制御することで、昇降部101によって傾斜部40を下降させることができる。すなわち、制御部102は、傾斜部40に堆積した堆積物を除去するときに、傾斜部40を上昇させ、次いで、下降させるように、昇降部101を制御することができる。また、制御部102は、あらかじめ傾斜部40を上昇させておき、傾斜部40に堆積した堆積物を除去するときに、傾斜部40を下降させるように、昇降部101を制御することができる。
なお、傾斜部40に堆積した堆積物をより効率よく除去する観点から、傾斜部40を上昇させてから下降させるか、または、傾斜部40を下降させてから上昇させる、往復の昇降動作を行うように、制御部102によって昇降部101を制御することが好ましい。なお、傾斜部40を下降させてから上昇させる往復の昇降動作よりも、傾斜部40を上昇させてから下降させる往復の昇降動作の方が、傾斜部40に堆積した堆積物を効果的に除去することができる。
このように、本実施形態の沈殿装置10および洗浄装置100は、制御部102によって昇降部101を制御して、昇降部101によって傾斜部40を昇降させることができる。これにより、従来のように傾斜部40を比較的に高い周波数で振動させる場合と比較して、傾斜部40に堆積した堆積物が、処理水から大きな流体抵抗を受けて効率よく除去される。なお、昇降部101による傾斜部40の連続的かつ周期的な昇降動作を、仮に振動と捉えた場合、その周波数は、たとえば1[Hz]以下であり、その振幅は、たとえば1[mm]以上である。
また、傾斜部40に堆積した堆積物をより確実に除去する観点から、複数回にわたって傾斜部40の昇降動作を行うように、制御部102によって昇降部101を制御することが好ましい。なお、昇降部101による傾斜部40の昇降動作は、一回でもよく、連続的に繰り返し行ってもよく、上昇と下降の間、または、昇降と昇降との間に、昇降動作を停止する期間を設けて間欠的に昇降させてもよい。前記したような傾斜部40の種々の昇降動作を行うためのプログラムを備える制御部102によって昇降部101を制御することで、前記したような傾斜部40の種々の昇降動作を行うことができる。
また、傾斜部40の昇降動作の高さは、たとえば、10[mm]以上、30[mm]以下であることが好ましい。これにより、傾斜部40の昇降時に堆積物に対して処理水からより大きな流体抵抗を作用させ、堆積物の除去効果を向上させるとともに、昇降動作に必要な昇降部101の動力を低減することができる。また、傾斜部40を上昇させた後、傾斜部40の下降を開始するまでの時間を10[秒]以下にするように、制御部102によって昇降部101を制御することで、傾斜部40に堆積した堆積物の除去効果を、より向上させることができる。
また、昇降部101は、傾斜部40の下降動作の終了時に、水上構造90の接地部92を、沈殿池20の周縁部に衝突させるように構成してもよい。これにより、昇降部101による水上構造90の下降動作の終了時に、沈殿池20の周縁部から水上構造90を介して作用する衝撃力によって傾斜部40を振動させ、傾斜部40に堆積した固体粒子を含む堆積物の除去効果を向上させることができる。これにより、傾斜部40を効果的に振動させて、傾斜部40に堆積した堆積物を効果的に除去することができる。
このような傾斜部40の昇降動作によって傾斜部40から剥離した堆積物は、処理水中で凝集して粗大化し、傾斜部40の斜面を滑り落ちて沈殿池20の底部に沈降する。これにより、従来の空気洗浄装置のように傾斜部40から剥離した堆積物が空気泡によって撹拌されて処理水中に分散したり水面に浮上したりすることが防止され、堆積物を効率よく除去して処理水の水質を向上させることができる。したがって、従来の空気洗浄装置のように傾斜部40の洗浄中に沈殿池20に対する処理水の流入を停止させる必要がなく、沈殿池20による処理水の処理効率を向上させることができる。
昇降部101および制御部102は、従来の空気洗浄装置のように処理水中に設置する必要がなく、沈殿池20における処理水の水面よりも上方の水上部に設置することが可能である。そのため、処理水中に設置する従来の空気洗浄装置と比較して、沈殿装置10および洗浄装置100の維持管理性を向上させることができる。
さらに、本実施形態では、昇降部101によって傾斜部40を昇降させるので、傾斜部40の傾斜角度を変化させるような装置とは異なり、沈殿池20の長さ方向(X軸方向)または幅方向(Y軸方向)に、複数の沈殿装置10または複数の洗浄装置100を隣接させて設置することが可能である。
また、昇降部101による傾斜部40の下降速度が傾斜部40の上昇速度よりも高速になるように構成されているので、傾斜部40を勢いよく下降させて傾斜部40に堆積した堆積物の除去効率を向上させることができる。一例として、傾斜部40の上昇速度は30[mm/s]程度であり、傾斜部40の下降速度は50[mm/s]程度である。これにより、傾斜部40の下降動作の終了時に、傾斜部40に比較的に大きな慣性力を作用させ、傾斜部40に堆積した堆積物を効果的に除去することができる。
なお、昇降部101による傾斜部40の下降速度は、たとえば、傾斜部40の自重を利用した下降速度と同等以上にすることができる。これにより、傾斜部40の下降動作の終了時に、たとえば傾斜部40がたわみながら振動することで、傾斜部40に堆積した堆積物の除去効果を向上させることができる。(なお、傾斜部40の上昇速度が傾斜部40の下降速度より大きい場合、傾斜部40から剥離した堆積物が処理水の水面に浮上することで、沈殿池20の下流側に流れる処理水に堆積物が混入して水質を悪化させるおそれがある。)
また、昇降部101の支持部108は、遊びを有して傾斜部40を支持するように構成されているので、傾斜部40の昇降動作にともなって傾斜部40を振動させやすくすることができ、傾斜部40に堆積した堆積物を、より効果的に除去することができる。さらに、水上構造90を昇降部101に固定せず、昇降部101の支持部108によって軸部91を支持することで、たとえば地震が発生したときに、傾斜部40と昇降部101との相対的な移動を許容して、昇降部101が損傷するのを防止できる。
また、支持部108は、水上構造90の軸部91を下方から支持する支持底部108bと、軸部91の両側に空隙を介して対向する移動規制部108aとを有しているので、軸部91と移動規制部108aとの間の空隙が、軸部91との間の遊びになり、傾斜部40を振動しやすくすることができる。また、支持部108は、傾斜部40の両側の移動規制部108aの間での軸部91の移動を許容しつつ、移動規制部108aの外側への移動を規制することができる。これにより、軸部91と昇降部101との相対的な移動を許容しつつ、軸部91が支持部108から脱落するのを防止できる。
また、支持部108において、支持底部108bの上方が開放されているので、たとえば地震によって、傾斜部40に鉛直方向上方の加速度が発生した場合であっても、傾斜部40を下方から支持する支持底部108bの上方が開放されているため、軸部91の鉛直方向上方への移動を許容することができる。これにより、支持部108および昇降部101の損傷を防止することができる。
また、昇降部101は、エアシリンダ103と、そのエアシリンダ103に設けられたスピードコントローラ104と、を有している。また、支持部108は、エアシリンダ103のピストンロッド103aに連結されている。
この構成により、傾斜部40に堆積した堆積物を除去するために必要な空気量を、大幅に削減することができる。これにより、従来の空気洗浄装置と比較して、傾斜部40に堆積した堆積物を除去するのに必要な動力を、大幅に低減することができる。また、昇降部101は、ピストンロッド103aに連結され、水上構造90の軸部91を支持して昇降させる支持部108の上昇速度と下降速度を、スピードコントローラ104によって調節することができる。
[実施形態2]
実施形態2は、実施形態1において傾斜部40の向きを変更するものである。以下、実施形態1との相違点を説明する。
図14は、本発明の実施形態2に係る沈殿装置210の構成を示す図である。実施形態1では、傾斜部40が水流の方向と交わるように(たとえばY軸と平行に)配置されていたが、実施形態2では、傾斜部40が水流の方向と平行となるように配置される。すなわち、傾斜部40はX軸と平行に配置される。ただし、沈殿作用を得るために、Z軸と平行にならないように配置される。図14では、処理水は紙面奥から手前に向かって流れる。なお、阻流壁30は、実施形態1と同様に、水流に対して直交するよう配置される。
以下、説明の便宜上、図14の向きに沿って、Y軸−側を「左」と呼び、Y軸+側を「右」と呼ぶ。傾斜部40は、沈殿池20の左壁21と右壁22との間に、等間隔に配列することができる。
最左端の第2傾斜部42aと、左壁21との間の距離は、傾斜部40間の距離よりも小さい。または、左右方向における左壁21と最左端の第2傾斜部42aとの距離(ピッチ)を、左右方向における傾斜部40間の距離(ピッチ)よりも小さくすればよい。同様に、最右端の第1傾斜部41aと、右壁22との間の距離は、傾斜部40間の距離よりも小さい。または、左右方向における右壁22と最右端の第1傾斜部41aとの距離(ピッチ)は、左右方向における傾斜部40間の距離(ピッチ)よりも小さい。このようにすることにより、左右端からの汚泥のリークを抑制することができる。
各傾斜部40は、上から下に向かって左右いずれかに傾くように配置されるので、沈殿池20の幅方向の一方の側(図14では右側)では傾斜部40の上端が沈殿池20の一方の横壁(図14では右壁22)に近くなり、他方の側(図14では左側)では傾斜部40の下端が沈殿池20の他方の横壁(図14では左壁21)に近くなる。固定部60は、傾斜部40の下端が沈殿池20の横壁に近くなる側(図14の配置では左側)に配置される。
折り畳み部50と固定部60との位置関係をこのようにすることにより、効率的に汚泥を除去することができる。とくに、異なる寸法の第2傾斜部42を備える固定部60を、左側に配置することにより、最左端の第2傾斜部42aの上端と、左壁21との距離を小さくすることができ、汚泥のリークを低減することができる。
なお、フレーム構造70に傾斜部40が連結される構造等は実施形態1と同様に構成することができる。また、吊り部材80を介した揺動構造も実施形態1と同様に構成することができる。さらに、とくに図示しないが、実施形態2の沈殿装置210も、実施形態1と同様の洗浄装置100を備える。
上述の実施形態1および2において、以下のような変形を施すことができる。
折り畳み部50を折り畳み可能とするための具体的構造は、図6等に示すものに限られない。たとえば、回動によらず、滑動による折り畳み構造としてもよい。
洗浄装置100は省略してもよいし、洗浄装置100に代えて異なる構成の洗浄装置または従来の洗浄装置を用いてもよい。
図11において、昇降部101は沈殿池20の長さ方向(X軸方向)に分離して2個配置されているが、昇降部101の数はこれに限らない。たとえば、傾斜部40の総重量等に応じ、昇降部101をただ1つとしてもよいし、昇降部101を沈殿池20の幅方向(Y軸方向)に分離して対として配置してもよい。幅方向(Y軸方向)に分離して対として配置する場合には、図11のようにさらに沈殿池20の長さ方向(X軸方向)に分離して配置すると総数4個の昇降部101が設けられることになり、沈殿池20の長さ方向(X軸方向)には分離せず1箇所のみに配置すると総数2個の昇降部101が設けられることになる。
阻流壁30は、沈殿装置の構成要素に含まれないものであってもよい。たとえば、沈殿装置以外の構造物(沈殿池20の外縁部等)に対して固定されていてもよい。
折り畳み部50または固定部60を省略してもよい。その場合には、沈殿装置全体で少なくとも1つの傾斜部40が配置されればよい。
吊り部材80は省略してもよい。その場合には、フレーム構造70と水上構造90とが互いに連結されてもよく、互いに固定されてもよい。
実施形態1において、すべての傾斜部40(最上流の第2傾斜部42aを含む)の下端が、阻流壁30よりも下流側に配置されてもよい。その場合には、すべての傾斜部40について、その全体が阻流壁30よりも下流側に配置されるということができる。
折り畳み部50および固定部60は、車輪を備えてもよい。また、車輪を着脱可能としてもよい。車輪を着脱可能とする場合には、折り畳み部50または固定部60(たとえば下側フレーム72または下側フレーム76)に車輪取付座を設けておき、この車輪取付座に車輪を着脱できるように構成としてもよい。
車輪を着脱するための構成は任意に設計可能であるが、たとえば車輪を棒状の車輪支持部材に回転可能に固定しておき、この車輪支持部材を車輪取付座に着脱できるようにしてもよい。車輪取付座は長穴状の切り欠きを有してもよく、この切り欠きの開口部から横方向に車輪支持部材を挿入することにより車輪を取り付けられるようにすると着脱作業の工数が低減できる。
また、車輪取付座はレベルアジャスターを備えてもよい。レベルアジャスターは、螺合構造等により高さ方向に伸縮可能に構成され、伸縮することによって地面と下側フレーム72等との距離を変更できるようになっていてもよい。そして、レベルアジャスターを伸長させることによって車輪を着脱する作業のための空間を確保し、着脱作業終了後にレベルアジャスターを短縮して移動等の支障とならないようにしてもよい。
折り畳み部50または固定部60は、たとえば外形寸法が2.5m程度×1m程度×1m程度の寸法を有し、重量が100kg程度となる場合がある。このため移動が困難となる場合があるが、車輪を設けておくと移動がより容易となる。