JP6794994B2 - タッチパネルセンサーフィルム - Google Patents

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Description

本発明は、タッチパネルセンサーフィルムに関し、特に、タッチセンサーを備えたフレキシブルOLED等の電子デバイスに適用したときにガスバリアー性に優れかつ厚さや重さを低減可能なガスバリアー層及び導電層を有するタッチパネルセンサーフィルムに関する。
従来、食品、包装材料、医薬品などの分野で、水蒸気や酸素等のガスの透過を防ぐため、樹脂基材の表面に金属や金属酸化物の蒸着膜等の無機膜を設けた比較的簡易な構造を有するガスバリアーフィルム(以下、本願ではガスバリアーフィルムという。)が用いられてきた。
近年、このような水蒸気や酸素等の透過を防ぐガスバリアーフィルムが、液晶表示装置(Liquid Crystal Display:LCD))、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(Organic Electroluminescence display:Organic Light Emitting Diode :「OLED」ともいう。)などの電子デバイスの分野にも利用されつつある。このような電子デバイスに、フレキシブル性と軽くて割れにくいという性質を付与するためには、硬くて割れ易いガラス基板ではなく、高いガスバリアー性を有するガスバリアーフィルムが必要となってくる。
上記電子デバイスのうち、OLEDについては、近年、フレキシブルプラスチックやメタルホイルのように、柔軟性のある材料を基板として使用して、紙のように曲がっても表示性能をそのまま維持できるように製造されたフレキシブルOLEDが次世代平板表示装置として大いに注目されている。しかしながら、このフレキシブルOLED表示装置の基板は軽量で、耐衝撃性に優れ、安価であるという長所を有するが、外部から水分または酸素が浸入し易い、という短所がある。したがって、外部から酸素及び水分がOLED内部に侵入することを防止するため及び耐衝撃性を補完する等のために三層構成の保護膜等を設けたりすることにより厚さ及び重さ、そして、製造費用が増加するなどの点が問題となっている(例えば特許文献1参照)。
さらに、最近では、フレキシブルOLEDについては、タッチセンサーを備えたOLEDの開発が要望されているが、タッチセンサーの追加のため、厚さ及び重さ、そして、製造費用が一層増加することなどが問題となっており、このような問題に対する解決手段が提案されている(例えば特許文献1参照)。より具体的には、タッチセンサーとして、導電性パターンを形成したガスバリアー性フィルムが提案されている。
一方で、ガスバリアー性層上に導電性パターンを形成する場合、種々の薬液を用いることで、ガスバリアー性が劣化する問題があった。
特開2014−110418号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、フレキシブル有機EL表示素子等の電子デバイスに適用したときに、厚さや重さを低減可能であり、かつ、ガスバリアー性に優れたタッチパネルセンサーフィルムを提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について鋭意検討した結果、基材上に、ガスバリアー層及びパターニングされた導電層を有するタッチパネルセンサーフィルムにおいて、ガスバリアー層として、非遷移金属M1及び遷移金属M2を含有する混合領域を有するガスバリアー層を設けることにより上記課題を解決することができることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.基材上に、ガスバリアー層及びパターニングされた導電層を有するタッチパネルセンサーフィルムであって、前記ガスバリアー層が、少なくとも厚さ方向において、非遷移金属M1及び遷移金属M2を含有する領域であって、前記非遷移金属M1に対する遷移金属M2の原子数比の値(M2/M1)が、0.02〜49の範囲内にある混合領域を、厚さ方向に連続して5nm以上有し、かつ、前記混合領域の組成に、さらに酸素が含有されており、前記混合領域の組成を、下記化学組成式(1)で表したとき、前記混合領域の少なくとも一部が下記関係式(2)を満たすことを特徴とするタッチパネルセンサーフィルム。
化学組成式(1): (M1)(M2)
関係式(2): (2y+3z)/(a+bx)<1.0
(ただし、式中、M1:非遷移金属、M2:遷移金属、O:酸素、N:窒素、
x,y,z:化学量論係数、0.02≦x≦49、0<y、0≦z
a:M1の最大価数、b:M2の最大価数、を表す。)
2.前記ガスバリアー層が、前記遷移金属M2を主成分として含有する領域と前記非遷移金属M1を主成分として含有する領域との間に、前記混合領域を有すること特徴とする第1項に記載のタッチパネルセンサーフィルム。
3.前記非遷移金属M1が、ケイ素(Si)であることを特徴とする第1項又は第2項に記載のタッチパネルセンサーフィルム。
4.前記遷移金属M2が、長周期型周期表の第5族元素であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載のタッチパネルセンサーフィルム。
5.前記遷移金属M2が、ニオブ(Nb)又はタンタル(Ta)であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載のタッチパネルセンサーフィルム。
本発明の上記手段により、フレキシブル有機EL表示素子等の電子デバイスに適用したときに、厚さや重さを低減可能であり、かつ、ガスバリアー性に優れたタッチパネルセンサーフィルムを提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
本発明のガスバリアー層は、後述するように、最表層が主なガスバリアー性を担っているわけではなく、表層から数nmから数10nm下側に形成されている、非遷移金属M1及び遷移金属M2を含有する混合領域が、主なガスバリアー性を担っていると推定している。したがって、ガスバリアー層上に導電性パターンを形成する際に種々の薬液を用いて、ガスバリアー層の最表層に何等かのダメージが加わったとしても、ガスバリアー性が劣化しないものと考えられる。
タッチパネルセンサーフィルムと導線の構造を模式的に示す断面図 タッチパネルセンサーフィルムの層構成を模式的に示す断面図 ガスバリアー層の厚さ方向における非遷移金属及び遷移金属の組成分布状態を示す概念図 本発明の電子デバイスの実施の形態である有機EL素子の構成を示す展開図
本発明のタッチパネルセンサーフィルムは、基材上に、ガスバリアー層及びパターニングされた導電層を有するタッチパネルセンサーフィルムであって、
前記ガスバリアー層が、少なくとも厚さ方向において、非遷移金属M1及び遷移金属M2を含有する領域であって、前記非遷移金属M1に対する遷移金属M2の原子数比の値(M2/M1)が、0.02〜49の範囲内にある混合領域を、厚さ方向に連続して5nm以上有し、かつ、前記混合領域の組成に、さらに酸素が含有されており、前記混合領域の組成を、前記化学組成式(1)で表したとき、前記混合領域の少なくとも一部が前記関係式(2)を満たすことを特徴とする。この特徴は、各請求項に係る発明に共通する又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施形態としては、本発明の効果発現の観点から、前記ガスバリアー層が、金属として、前記遷移金属M2を主成分として含有する領域(以下「A領域」という。)と、金属として、前記非遷移金属M1を主成分として含有する領域(以下「B領域」という。)との間に、前記混合領域を有する態様であることが好ましい。前記混合領域は、その少なくとも一部がA領域、又は、B領域と重なった領域であってもよい。
また、前記非遷移金属M1が、ガスバリアー性向上の観点から、ケイ素(Si)であることが好ましい。さらに、前記遷移金属M2が、長周期型周期表の第5族元素であることが、同様の観点から好ましい。具体的には、前記遷移金属M2が、ニオブ(Nb)又はタンタル(Ta)であることが好ましい。
本発明においては、前記導電層が、耐熱性、衝撃耐性等の観点から、カーボンナノチューブ又は銀ナノワイヤーの線状構造体であることが好ましい。また、前記基材が、ポリイミド系樹脂、シクロポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びセルロースエステル系樹脂から選ばれる樹脂であることが好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
≪タッチパネルセンサーフィルムの概要≫
本発明のタッチパネルセンサーフィルムは、基材上に、ガスバリアー層及びパターニングされた導電層を有するタッチパネルセンサーフィルムであって、前記ガスバリアー層が、少なくとも厚さ方向において、非遷移金属M1及び遷移金属M2を含有する領域であって、前記非遷移金属M1に対する遷移金属M2の原子数比の値(M2/M1)が、0.02〜49の範囲内にある混合領域を、厚さ方向に連続して5nm以上有し、かつ、前記混合領域の組成に、さらに酸素が含有されており、前記混合領域の組成を、下記化学組成式(1)で表したとき、前記混合領域の少なくとも一部が下記関係式(2)を満たすことを特徴とする。
化学組成式(1): (M1)(M2)
関係式(2): (2y+3z)/(a+bx)<1.0
(ただし、式中、M1:非遷移金属、M2:遷移金属、O:酸素、N:窒素、
x,y,z:化学量論係数、0.02≦x≦49、0<y、0≦z
a:M1の最大価数、b:M2の最大価数、を表す。)
本発明の実施形態としては、前記ガスバリアー層が、前記A領域と前記B領域との間に、前記混合領域を有する態様であることが好ましい。前記混合領域は、その少なくとも一部がA領域、又は、B領域と重なった領域であってもよい。
本発明に係るガスバリアー層のガスバリアー性は、基材上に当該ガスバリアー層を形成させた積層体で算出した際、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度(以下、「水蒸気透過率」ともいう。)が、1×10−3ml/m・24h・atm以下、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/m・24h以下の高ガスバリアー性であることが好ましい。
図1A及び図1Bは、タッチパネルセンサーフィルム11の構造の断面図を模式的に示している。図1Aはタッチパネルセンサーフィルム11の観察者側の面に設けられた導線12を含む断面図である。
図1Bは図1Aの一部を拡大した層構成を示す断面図であり、基材フィルム13にプライマー層14を介してバリアー層15が設けられている。バリアー層15上には導電層16が設けられ、導電層16はバリアー層側から順に低反射層17、導電本体層18、防錆層19により構成される。
《ガスバリアー性フィルムの各構成要素》
以下に、本発明のガスバリアー性フィルムを構成する基材、ガスバリアー層等について詳細な説明をする。
[基材]
本発明に用いる基材としては、無色透明な樹脂からなるフィルム又はシートが挙げられる。このような基材に用いる樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、シクロポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物;ポリアクリロニトリル系樹脂;アセタール系樹脂;ポリイミド系樹脂;セルロースエステル系樹脂が挙げられる。
これらの樹脂の中でも、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シクロポリオレフィン系樹脂、及びポリカーボネート系樹脂から選ばれる樹脂が特に好ましい。また、これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記基材の厚さは、本発明のガスバリアーフィルムを製造する際の安定性を考慮して適宜に設定することができる。前記基材の厚さとしては、真空中においてもフィルムの搬送が可能であるという観点から、5〜500μmの範囲であることが好ましい。
さらに、プラズマCVD法により本発明に係るガスバリアー層を形成する場合には、前記基材を通して放電しながらガスバリアー層を形成することから、前記基材の厚さが50〜200μmの範囲であることがより好ましく、50〜100μmの範囲であることが特に好ましい。
また、前記基材には、後述するガスバリアー層との密着性の観点から、基材の表面を清浄するための表面活性処理を施すことが好ましい。このような表面活性処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理が挙げられる。
[ガスバリアー層]
本発明に係るガスバリアー層は、少なくとも厚さ方向において、非遷移金属M1及び遷移金属M2を含有する混合領域を有し、当該混合領域における前記非遷移金属M1に対する遷移金属M2の原子数比の値(M2/M1)が、0.02〜49の範囲内にある領域を、厚さ方向に連続して5nm以上有することを特徴とするガスバリアー層である。 更には、ガスバリアー層としては、第3族〜第11族の遷移金属を金属の主成分aとして含有するA領域と、第12族〜第14族の非遷移金属を金属の主成分bとして含有するB領域との間に、主成分a及び主成分bに由来する化合物を含有する混合領域を有する構成であることが好ましい形態である。
また、本発明に係るガスバリアー層においては、層内の全域にわたって、前記混合領域が形成されている構成であることも、好ましい形態である。
この混合領域では、遷移金属と非遷移金属、および酸素が含有されている。又、この混合領域は、遷移金属の酸化物と非遷移金属の酸化物との混合物、又は、遷移金属と非遷移金属との複合酸化物の少なくとも一方が含有されていることが好ましい形態であり、遷移金属と非遷移金属との複合酸化物が含有されていることがより好ましい形態である。
加えて、上記混合領域の組成を下記化学組成式(1)で表したとき、混合領域の少なくとも一部が、下記関係式(2)で規定する条件を満たす。
化学組成式(1):(M1)(M2)xOyNz
関係式(2):(2y+3z)/(a+bx)<1.0
上記各式において、M1は非遷移金属、M2は遷移金属、Oは酸素、Nは窒素を表す。x、y、zは、それぞれ化学量論係数であり、aはM1の最大価数、bはM2の最大価数を表す。
以下、本発明に係るガスバリアー層の詳細について更に説明する。
〔ガスバリアー層を構成する各領域〕
本発明に係るガスバリアー層を構成する領域について説明するが、以下において使用する技術用語の定義について予め説明する。
本発明において、「領域」とは、ガスバリアー層の厚さ方向に対して略垂直な面(すなわち当該ガスバリアー層の最表面に平行な面)で当該ガスバリアー層を一定又は任意の厚さで分割したときに形成される対向する二つの面の間の三次元的範囲内(領域)をいい、当該領域内の構成成分の組成は、厚さ方向において一定であっても、徐々に変化するものであっても良い。
本発明でいう「構成成分」とは、ガスバリアー層の特定領域を構成する化合物及び金属若しくは非金属の単体をいう。また、本発明でいう「主成分」とは、原子組成比として含有量が最大である構成成分をいう。例えば、「金属の主成分」といえば、構成成分の中の金属成分の中で、原子組成比として含有量が最大である金属成分をいう。
本発明でいう「混合物」とは、前記領域A及びBの前記構成成分が相互に化学結合することなく混じり合っている状態の物をいう。例えば、酸化ニオブと酸化ケイ素がお互いに化学結合することなく混じり合っている状態をいう。
本発明でいう「主成分a及び主成分bに由来する化合物」とは、主成分a及び主成分bそれら自体、並びに主成分aと主成分bが反応して形成された複合化合物をいう。
複合化合物の具体例として「複合酸化物」を挙げて説明すると、「複合酸化物」とは、前記領域A及びBの前記構成成分が相互に化学結合をして形成された化合物(酸化物)をいう。例えば、ニオブ原子とケイ素原子が直接的に、又は酸素原子を介して化学結合を形成している化学構造を有する化合物をいう。なお、本発明においては、前記領域A及びBの前記構成成分が相互に分子間相互作用などにより物理的結合をして形成された複合体も本発明に係る「複合酸化物」に含まれるものとする。
次いで、各領域について詳細な説明をする。
(遷移金属含有領域:A領域)
遷移金属含有領域であるA領域とは、金属として遷移金属を主成分aとして含有する領域をいう。ここでいう「その化合物」、すなわち「遷移金属の化合物」とは、遷移金属を含む化合物をいい、例えば、遷移金属酸化物をいう。
遷移金属(M2)としては、特に制限されず、任意の遷移金属が単独で又は組み合わせて用いられうる。ここで、遷移金属とは、長周期型周期表の第3族元素から第11族元素を指し、遷移金属としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、及びAuなどが挙げられる。
なかでも、良好なガスバリアー性が得られる遷移金属(M2)としては、Nb、Ta、V、Zr、Ti、Hf、Y、La、Ce等が挙げられる。これらのなかでも、種々の検討結果から、特に第5族元素であるNb、Ta、Vが、ガスバリアー層に含有される非遷移金属(M1)に対する結合が生じやすい観点から、好ましく用いることができる。
特に、遷移金属(M2)が第5族元素(特に、Nb)であって、詳細は後述する非遷移金属(M1)がSiであると、著しいガスバリアー性の向上効果を得ることができ、特に好ましい組み合わせである。これは、Siと第5族元素(特に、Nb)との結合が特に生じやすいためであると考えられる。さらに、光学特性の観点から、遷移金属(M2)は、透明性が良好な化合物が得られるNb、Taが特に好ましい。
A領域の厚さとしては、ガスバリアー性と光学特性との両立の観点から、2〜50nmの範囲であることが好ましく、4〜25nmの範囲であることがより好ましく、5〜15nmの範囲であることがさらに好ましい。
(非遷移金属含有領域:B領域)
非遷移金属含有領域であるB領域とは、金属として、非遷移金属を主成分bとして含有する領域をいう。ここでいう「その化合物」すなわち「非遷移金属の化合物」とは、非遷移金属を含む化合物をいい、例えば、非遷移金属酸化物をいう。
非遷移金属(M1)としては、長周期型周期表の第12族〜第14族の金属から選択される非遷移金属が好ましい。当該非遷移金属としては、特に制限されず、第12族〜第14族の任意の金属が単独で又は組み合わせて用いることができるが、例えば、Si、Al、Zn、In及びSnなどが挙げられる。なかでも、当該非遷移金属(M1)として、Si、Sn又はZnを含むことが好ましく、Siを含むことがより好ましく、Si単独であることが特に好ましい。
B領域の厚さとしては、ガスバリアー性と生産性との両立の観点から、10〜1000nmの範囲であることが好ましく、20〜500nmの範囲であることがより好ましく、50〜300nmの範囲であることがさらに好ましい。
(混合領域)
本発明に係る混合領域は、長周期型周期表の第12族〜第14族の金属から選択される非遷移金属(M1)及び第3族元素から第11族の金属から選択される遷移金属(M2)が含有されている領域であって、前記非遷移金属M1に対する遷移金属M2の原子数比の値(M2/M1)が、0.02〜49の範囲内にある混合領域を、厚さ方向に連続して5nm以上有する領域である。
ここで、混合領域は、構成成分の化学組成が相互に異なる複数の領域として形成されていてもよく、また、構成成分の化学組成が連続して変化している領域として形成されていてもよい。
なお、ガスバリアー層の混合領域以外の領域は、非遷移金属(M1)の酸化物、窒化物、酸窒化物、酸炭化物等の領域であってもよいし、遷移金属(M2)の酸化物、窒化物、酸窒化物、酸炭化物等の領域であってもよい。
(酸素欠損組成)
本発明においては、本発明に係る混合領域に含有される一部の組成が、酸素が欠損した非化学量論的組成(酸素欠損組成)である。
本発明においては、酸素欠損組成とは、当該混合領域の組成を、下記化学組成式(1)で表したとき、当該混合領域の少なくとも一部の組成が、下記関係式(2)で規定する条件を満たすことと定義する。また、当該混合領域における酸素欠損程度を表す酸素欠損度指標としては、当該ある混合領域における(2y+3z)/(a+bx)を算出して得られる値の最小値を用いるものとする。詳細については後述する。
化学組成式(1)
(M1)(M2)xOyNz
関係式(2)
(2y+3z)/(a+bx)<1.0
上記各式において、M1は非遷移金属、M2は遷移金属、Oは酸素、Nは窒素を表し、x、y及びzはそれぞれ化学量論係数を表す。aはM1の最大価数、bはM2の最大価数を表す。
以下、特別の区別が必要ない場合、上記化学組成式(1)で表す組成を、単に複合領域の組成と言う。
上述したように、本発明に係る非遷移金属(M1)と遷移金属(M2)との混合領域の組成は、式(1)である(M1)(M2)xOyNzで示される。この組成からも明らかなように、上記混合領域の組成は、一部窒化物の構造を含んでいてもよく、窒化物の構造を含んでいる方がバリアー性の観点から好ましい。
ここでは、非遷移金属(M1)の最大価数をa、遷移金属(M2)の最大価数をb、Oの価数を2、Nの価数を3とする。そして、上記混合領域の組成(一部窒化物となっているものを含む)が化学量論的組成になっている場合は、(2y+3z)/(a+bx)=1.0となる。この式は、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の結合手の合計と、O、Nの結合手の合計とが同数であることを意味し、この場合、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)ともに、O及びNのいずれか一方と結合していることになる。なお、本発明において、非遷移金属(M1)として2種以上が併用される場合や、遷移金属(M2)として2種以上が併用される場合には、各元素の最大価数を各元素の存在比率によって加重平均することにより算出される複合価数を、それぞれの「最大価数」のa及びbの値として採用するものとする。
一方、本発明に係る混合領域において、関係式(2)で示す(2y+3z)/(a+bx)<1.0となる場合には、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の結合手の合計に対して、O、Nの結合手の合計が不足していることを意味し、この様な状態が上記の「酸素欠損」である。
酸素欠損状態においては、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の余った結合手は互いに結合する可能性を有しており、非遷移金属(M1)や遷移金属(M2)の金属同士が直接結合すると、金属の間にOやNを介して結合した場合よりも緻密で高密度な構造が形成され、その結果として、ガスバリアー性が向上すると考えられる。
また、本発明において、混合領域は、前記xの値が、0.02≦x≦49(0<y、0≦z)を満たす領域である。これは、先に、遷移金属(M2)/非遷移金属(M1)の原子数比の値が、0.02〜49の範囲内にあり、厚さが5nm以上である領域と定義する、としたことと同一の定義である。
この領域では、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の双方が金属同士の直接結合に関与することから、この条件を満たす混合領域が所定値以上(5nm)の厚さで存在することで、ガスバリアー性の向上に寄与すると考えられる。なお、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の存在比率が近いほどガスバリアー性の向上に寄与しうると考えられることから、混合領域は、0.1≦x≦10を満たす領域を5nm以上の厚さで含むことが好ましく、0.2≦x≦5を満たす領域を5nm以上の厚さで含むことがより好ましく、0.3≦x≦4を満たす領域を5nm以上の厚さで含むことが更に好ましい。
ここで、上述したように、混合領域の範囲内に、関係式(2)で示す(2y+3z)/(a+bx)<1.0の関係を満たす領域が存在すれば、ガスバリアー性の向上効果が発揮されることが確認されたが、混合領域は、その組成の少なくとも一部が(2y+3z)/(a+bx)≦0.9を満たすことが好ましく、(2y+3z)/(a+bx)≦0.85を満たすことがより好ましく、(2y+3z)/(a+bx)≦0.8を満たすことがさらに好ましい。ここで、混合領域における(2y+3z)/(a+bx)の値が小さくなるほど、ガスバリアー性の向上効果は高くなるものの可視光での吸収も大きくなる。したがって、透明性が望まれる用途に使用するガスバリアー層の場合には、0.2≦(2y+3z)/(a+bx)であることが好ましく、0.3≦(2y+3z)/(a+bx)であることがより好ましく、0.4≦(2y+3z)/(a+bx)であることがさらに好ましい。
なお、本発明において良好なガスバリアー性が得られる混合領域の厚さは、後述するXPS分析法におけるSiO2換算のスパッタ厚さとして、5nm以上であり、この厚さは、8nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることがさらに好ましい。混合領域の厚さは、ガスバリアー性の観点からは特に上限はないが、光学特性の観点から、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることがさらに好ましい。
上述したような特定構成の混合領域を有するガスバリアー層は、例えば、有機EL素子等の電子デバイス用のガスバリアー層として使用可能なレベルの非常に高いガスバリアー性を示す。
(XPSによる組成分析と混合領域の厚さの測定)
本発明に係るガスバリアー層の混合領域やA領域及びB領域における組成分布や各領域の厚さ等については、以下に詳述するX線光電分光法(X−ray Photoelectron Spectroscopy、略称:XPS)により測定することにより求めることができる。
以下、XPS分析法による混合領域及びA領域、B領域の測定方法について説明する。本発明に係るガスバリアー層の厚さ方向における元素濃度分布曲線(以下、「デプスプロファイル」という。)は、具体的には、非遷移金属M1(例えば、ケイ素)の元素濃度、遷移金属M2(例えば、ニオブ)の元素濃度、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)元素濃度等を、X線光電子分光法の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、ガスバリアー層の表面より内部を露出させつつ順次表面組成分析を行うことにより作成することができる。
このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子数比(単位:atom%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。なお、このように横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線においては、エッチング時間は層厚方向における前記ガスバリアー層の厚さ方向におけるガスバリアー層の表面からの距離におおむね相関することから、「ガスバリアー層の厚さ方向におけるガスバリアー層の表面からの距離」として、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出されるガスバリアー層の表面からの距離を採用することができる。また、このようなXPSデプスプロファイル測定に際して採用するスパッタ法としては、エッチングイオン種としてアルゴン(Ar+)を用いた希ガスイオンスパッタ法を採用し、そのエッチング速度(エッチングレート)を0.05nm/sec(SiO2熱酸化膜換算値)とすることが好ましい。
以下に、本発明に係るガスバリアー層の組成分析に適用可能なXPS分析の具体的な条件の一例を示す。
・分析装置:アルバックファイ社製QUANTERASXM
・X線源:単色化Al−Kα
・スパッタイオン:Ar(2keV)
・デプスプロファイル:SiO換算スパッタ厚さで、所定の厚さ間隔で測定を繰り返し、深さ方向のデプスプロファイルを求める。この厚さ間隔は、1nmとした(深さ方向に1nmごとのデータが得られる)。
・定量:バックグラウンドをShirley法で求め、得られたピーク面積から相対感度係数法を用いて定量した。データ処理は、アルバックファイ社製のMultiPakを用いる。なお、分析した元素は、非遷移金属M1(例えば、ケイ素(Si))、遷移金属M2、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)である。
得られたデータから、組成比を計算し、非遷移金属(M1)と遷移金属(M2)とが共存し、かつ、遷移金属(M2)/非遷移金属(M1)の原子数比率の値が、0.02〜49になる範囲を求め、これを混合領域と定義し、その厚さを求める。混合領域の厚さは、XPS分析におけるスパッタ深さをSiO換算で表したものである。
本発明において、混合領域の厚さは5nm以上であるときに「混合領域」と判定する。ガスバリアー性の観点からは、混合領域での厚さの上限はないが、光学特性の観点から、好ましくは5〜100nmの範囲内であり、より好ましくは8〜50nmの範囲内であり、さらに好ましくは、10〜30nmの範囲内である。
以下に、本発明に係るガスバリアー層における混合領域の具体例について、図を用いて説明する。
図2は、ガスバリアー層の厚さ方向における非遷移金属及び遷移金属の組成分布をXPS法により分析したときの元素プロファイルと混合領域を説明するためのグラフである。
図2において、ガスバリアー層の表面(グラフの左端部)より深さ方向に、非遷移金属(M1)、遷移金属(M2)、O、N、Cの元素分析を行い、横軸にスパッタの深さ(層厚:nm)を、縦軸に非遷移金属(M1)と遷移金属(M2)の含有率(原子数比(atom%))を示したグラフである。
右側より、金属として非遷移金属(M1、例えば、Si)を主成分とする元素組成であるB領域が示され、これに接して左側に金属として遷移金属(M2、例えば、ニオブ)を主成分とする元素組成であるA領域が示されている。混合領域は、遷移金属(M2)/非遷移金属(M1)の原子数比率の値が、0.02〜49の範囲内の元素組成で示される領域であり、A領域の一部とB領域の一部とに重なって示される領域であって、かつ、厚さ5nm以上の領域である。
〔各領域の形成方法〕
(遷移金属含有領域:A領域の形成)
本発明に係る遷移金属(M2)は、前述のとおり良好なガスバリアー性が得られる観点から、Nb、Ta、V、Zr、Ti、Hf、Y、La、Ce等が挙げられ、これらの中でも、特に第5族元素であるNb、Ta、Vが、ガスバリアー層に含有される非遷移金属(M1)に対する結合が生じやすいと考えられるため、好ましく用いることができる。
前記遷移金属(M2)の酸化物を含有する層の形成は、特に限定されず、例えば、既存の薄膜堆積技術を利用した従来公知の気相成膜法を用いることが、混合領域を効率的に形成する観点から好ましい。
これらの気相成膜法は公知の方法で用いることができる。気相成膜法としては、特に制限されず、例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法、イオンアシスト蒸着法等の物理気相成長(PVD)法、プラズマCVD(chemical vapordeposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法などの化学気相成長(CVD)法が挙げられる。なかでも、機能性素子へのダメージを与えることなく成膜が可能となり、高い生産性を有することから、物理気相成長(PVD)法により形成することが好ましく、スパッタ法により形成することがより好ましい。
スパッタ法による成膜は、2極スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、中間的な周波数領域を用いたデュアルマグネトロンスパッタリング(DMS)、イオンビームスパッタリング、ECRスパッタリングなどを単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、ターゲットの印加方式はターゲット種に応じて適宜選択され、DC(直流)スパッタリング、DCパルススパッタリング、AC(交流)スパッタリング、及びRF(高周波)スパッタリングのいずれを用いてもよい。
また、金属モードと、酸化物モードとの中間である遷移モードを利用した反応性スパッタ法も用いることができる。遷移領域となるようにスパッタ現象を制御することにより、高い成膜スピードで金属酸化物を成膜することが可能となるため好ましい。
プロセスガスに用いられる不活性ガスとしては、He、Ne、Ar、Kr、Xe等を用いることができ、Arを用いることが好ましい。さらに、プロセスガス中に酸素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素を導入することで、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の複合酸化物、窒酸化物、酸炭化物等の薄膜を形成することができる。スパッタ法における成膜条件としては、印加電力、放電電流、放電電圧、時間等が挙げられるが、これらは、スパッタ装置や、膜の材料、層厚等に応じて適宜選択することができる。
スパッタ法は、遷移金属(M2)の単体又はその酸化物を含む複数のスパッタリングターゲットを用いた多元同時スパッタ方式であってもよい。これらのスパッタリングターゲットを作製する方法や、これらのスパッタリングターゲットを用いて複合酸化物からなる薄膜を作製する方法については、例えば、特開2000−160331号公報、特開2004−068109号公報、特開2013−047361号公報などの記載の方法や条件を適宜参照することができる。
共蒸着法を実施する際の成膜条件としては、成膜原料における遷移金属(M2)と酸素との比率、成膜時の不活性ガスと反応性ガスとの比率、成膜時のガスの供給量、成膜時の真空度、及び、成膜時の電力からなる群から選択される1種又は2種以上の条件が例示され、これらの成膜条件(好ましくは、酸素分圧)を調節することによって、酸素欠損組成を有する複合酸化物からなる混合領域(C領域)を形成することができる。すなわち、上述したような共蒸着法を用いてガスバリアー層を形成することで、形成されるガスバリアー層の厚さ方向のほとんどの領域を混合領域とすることができる。このような方法によれば、混合領域の厚さを制御するという極めて簡便な操作により、所望のガスバリアー性を実現することができる。なお、混合領域の厚さを制御するには、例えば、共蒸着法を実施する際の成膜時間を調節すればよい。
(非遷移金属含有領域:B領域の形成)
本発明に係るガスバリアー層において、非遷移金属(M1)を含有するB領域を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば、気相成膜法は公知の方法で用いることができる。気相成膜法としては、特に制限されず、例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法、イオンアシスト蒸着法等の物理気相成長(PVD)法、プラズマCVD(chemical vapordeposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法などの化学気相成長(CVD)法が挙げられる。なかでも、機能性素子へのダメージを与えることなく成膜が可能となり、高い生産性を有することから、物理気相成長(PVD)法により形成することが好ましく、スパッタ法により、非遷移金属をターゲットとして用いて形成することができる。
また、他の方法としては、非遷移金属としてSiを含むポリシラザン含有塗布液を用いて、湿式塗布法により形成する方法も、好ましい方法の一つである。
本発明において、B領域の形成に適用可能な「ポリシラザン」とは、構造内にケイ素−窒素結合を持つポリマーであり、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO、Si及び両方の中間固溶体SiO等のセラミック前駆体無機ポリマーである。
上述した基材の平面性等を損なわないように、ポリシラザンを用いてガスバリアー層を構成するB領域を形成するためには、特開平8−112879号公報に記載されているような、比較的低温で酸化ケイ素、窒化珪素、又は酸窒化珪素に変性することが可能なポリシラザンが好ましい。
このようなポリシラザンとしては、下記一般式(1)で表す構造を有する化合物が挙げられる。
Figure 0006794994
式中、R、R及びRは、各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、又はアルコキシ基を表す。
本発明では、得られるガスバリアー層を構成するB領域の、薄膜としての緻密性の観点からは、R、R及びRのすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザン(PHPS)が特に好ましい。
一方、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより、隣接する基材との接着性が改善され、かつ硬くてもろいポリシラザンによるセラミック膜に靭性を持たせることができ、より膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる点で好ましい。 用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンを選択してよく、混合して使用することもできる。
なお、パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と6又は8員環を中心とする環構造とが共存した構造を有していると推定されている。
ポリシラザンの分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)であり、液体又は固体の物質であり、分子量により異なる。
これらのポリシラザン化合物は有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン化合物含有塗布液として使用することができる。
低温でセラミック化するポリシラザンの他の例としては、上記ポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(特開平7−196986号公報)等が挙げられる。
また、その他、ポリシラザンの詳細については、例えば、特開2013−255910号公報の段落(0024)〜同(0040)、特開2013−188942号公報の段落(0037)〜同(0043)、特開2013−151123号公報の段落(0014)〜同(0021)、特開2013−052569号公報の段落(0033)〜同(0045)、特開2013−129557号公報の段落(0062)〜同(0075)、特開2013−226758号公報の段落(0037)〜同(0064)等に記載されている内容を参照して適用することができる。
〈ポリシラザンを含有する塗布液〉
ポリシラザンを含有する塗布液を調製する有機溶媒としては、ポリシラザンと容易に反応してしまうようなアルコール系や水分を含有するものを用いることは避けることが好ましい。好適な有機溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。具体的には、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の炭化水素、塩化メチレン、トリクロロエタン等のハロゲン炭化水素、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等が挙げられる。これらの有機溶剤は、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度等、目的にあわせて選択し、複数の有機溶剤を混合してもよい。
ポリシラザンを含有する塗布液におけるポリシラザンの濃度は、目的とするガスバリアー層の膜厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、0.2〜35質量%程度であることが好ましい。
また、ポリシラザンを含有する塗布液には、酸化ケイ素、窒化珪素、又は酸窒化珪素への変性を促進するために、アミンや金属の触媒を添加することもできる。例えば、市販品としてのAZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製のNAX120−20、NN120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL150A、NP110、NP140、SP140のような触媒が含まれるポリシラザン溶液を用いることができる。また、これらの市販品は単独で使用されてもよく、2種以上混合して使用されてもよい。
なお、ポリシラザンを含有する塗布液中において、触媒の添加量は、触媒による過剰なシラノール形成、及び膜密度の低下、膜欠陥の増大などを避けるため、ポリシラザンに対して2質量%以下に調整することが好ましい。
ポリシラザンを含有する塗布液には、ポリシラザン以外にも無機前駆体化合物を含有させることができる。ポリシラザン以外の無機前駆体化合物としては、塗布液の調製が可能であれば特に限定はされない。例えば、特開2011−143577号公報の段落「0110」〜「0114」に記載のポリシラザン以外の化合物を適宜採用することができる。
(添加元素)
ポリシラザンを含有する塗布液には、Si以外の金属元素の有機金属化合物を添加することができる。Si以外の金属元素の有機金属化合物を添加することで、塗布乾燥過程において、ポリシラザンのN原子とO原子との置き換わりが促進され、塗布乾燥後にSiOに近い安定した組成へと変化させることができる。
Si以外の金属元素の例としては、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、鉛(Pb)、マンガン(Mn)、リチウム(Li)、ゲルマニウム(Ge)、銅(Cu)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、コバルト(Co)、ホウ素(B)、ベリリウム(Be)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、タリウム(Tl)等が挙げられる。
特に、Al、B、Ti及びZrが好ましく、中でもAlを含む有機金属化合物が好ましい。
本発明に適用可能なアルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムイソポロポキシド、アルミニウム−sec−ブチレート、チタンイソプロポキシド、アルミニウムトリエチレート、アルミニウムトリイソプロピレート、アルミニウムトリtert−ブチレート、アルミニウムトリn−ブチレート、アルミニウムトリsec−ブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロピレートモノアルミニウム−t−ブチレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムオキシドイソプロポキシドトリマー等を挙げることができる。
具体的な市販品としては、例えば、AMD(アルミニウムジイソプロピレートモノsec−ブチレート)、ASBD(アルミニウムセカンダリーブチレート)、ALCH(アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート)、ALCH−TR(アルミニウムトリスエチルアセトアセテート)、アルミキレートM(アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート)、アルミキレートD(アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート)、アルミキレートA(W)(アルミニウムトリスアセチルアセトネート)(以上、川研ファインケミカル株式会社製)、プレンアクト(登録商標)AL−M(アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、味の素ファインケミカル株式会社製)等を挙げることができる。
なお、これらの化合物を用いる場合は、ポリシラザンを含む塗布液と不活性ガス雰囲気下で混合することが好ましい。これらの化合物が大気中の水分や酸素と反応し、激しく酸化が進むことを抑制するためである。また、これらの化合物とポリシラザンとを混合する場合は、30〜100℃に昇温し、撹拌しながら1分〜24時間保持することが好ましい。
本発明に係るガスバリアー性フィルムを構成するポリシラザン含有層における上記添加金属元素の含有量は、ケイ素(Si)の含有量100mol%に対して0.05〜10mol%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5mol%である。
ポリシラザンを用いたB領域の形成においては、ポリシラザン含有層を形成した後、改質処理を施すことが好ましい。
改質処理とは、ポリシラザンを、エネルギーを付与して、その一部又は全てを酸化ケイ素又は酸化窒化珪素への転化する処理である。
本発明における改質処理は、ポリシラザンの転化反応に基づく公知の方法を選ぶことができ、例えば、公知のプラズマ処理、プラズマイオン注入処理、紫外線照射処理、真空紫外線照射処理等を挙げることができる。本発明においては、低温で転化反応が可能なプラズマやオゾンや紫外線を使う転化反応が好ましい。プラズマやオゾンは従来公知の方法を用いることができる。本発明において、基材上に塗布方式のポリシラザン含有塗布液の塗膜を設け、波長200nm以下の真空紫外線(VUV)を照射して改質処理する真空紫外線照射処理を適用してガスバリアー層を形成する方法が好ましい。
真空紫外光源としては、希ガスエキシマランプが好ましく用いられ、例えば、エキシマランプ(172nm、222nm、308nmの単一波長、例えば、ウシオ電機株式会社製、株式会社エム・ディ・コム製など)等を挙げることができる。
真空紫外線照射による処理は、ポリシラザン内の原子間結合力より大きい100〜200nmの光エネルギーを用い、好ましくは100〜180nmの波長の光エネルギーを用い、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみの作用により、直接切断しながら活性酸素やオゾンによる酸化反応を進行させることで、比較的低温(約200℃以下)で、酸化ケイ素膜や酸化窒化ケイ素膜の形成を行う方法である。
これらの改質処理の詳細については、例えば、特開2012−086394号公報の段落(0055)〜同(0091)、特開2012−006154号公報の段落(0049)〜同(0085)、特開2011−251460号公報の段落(0046)〜同(0074)等に記載の内容を参照することができる。
B領域の厚さは、特に制限はないが、1〜500nmの範囲内が好ましい、より好ましくは10〜300nmの範囲内である。
(混合領域の形成)
混合領域形成方法としては、前述したように、A領域及びB領域を形成する際に、各々の形成条件を適宜調整して、A領域とB領域との間に混合領域を形成する方法が好ましい。
B領域を上述した気相成膜法により形成する場合は、例えば、成膜原料における前記非遷移金属(M1)と酸素との比率、成膜時の不活性ガスと反応性ガスとの比率、成膜時のガスの供給量、成膜時の真空度、成膜時の磁力、および、成膜時の電力からなる群から選択される1種または2種以上の条件を調節することで混合領域を形成することができる。
B領域を上述した塗布成膜法により形成する場合は、例えば、前記非遷移金属(M1)を含有する成膜原料種(ポリシラザン種等)、触媒種、触媒含有量、塗布膜厚、乾燥温度・時間、改質方法、改質条件からなる群から選択される1種または2種以上の条件を調節することで混合領域を形成することができる。
A領域を上述した気相成膜法により形成する場合は、例えば、成膜原料における前記遷移金属(M2)と酸素との比率、成膜時の不活性ガスと反応性ガスとの比率、成膜時のガスの供給量、成膜時の真空度、成膜時の磁力、および、成膜時の電力からなる群から選択される1種または2種以上の条件を調節することで混合領域を形成することができる。
なお、上記した方法によって、混合領域の厚さを制御するには、A領域及びB領域を形成する方法の形成条件を適宜調整して、制御することができる。例えば、A領域を気相成膜法で形成する際には、成膜時間を制御することにより所望の厚さにすることができる。
また、これに加えて、非遷移金属と遷移金属の混合領域を直接形成する方法も好ましい。
混合領域を直接形成する方法としては、公知の共蒸着法を用いることが好ましい。このような共蒸着法として、好ましくは、共スパッタ法が挙げられる。本発明において採用される共スパッタ法は、例えば、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の双方を含む合金からなる複合ターゲットや、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の複合酸化物からなる複合ターゲットをスパッタリングターゲットとして用いた1元スパッタでありうる。
また、本発明における共スパッタ法は、非遷移金属(M1)の単体又はその酸化物と、遷移金属(M2)の単体又はその酸化物とを含む複数のスパッタリングターゲットを用いた多元同時スパッタであってもよい。これらのスパッタリングターゲットを作製する方法や、これらのスパッタリングターゲットを用いて複合酸化物からなる薄膜を作製する方法については、例えば、特開2000−160331号公報、特開2004−068109号公報、特開2013−047361号公報などの記載が適宜参照されうる。
そして、共蒸着法を実施する際の成膜条件としては、成膜原料における前記遷移金属(M2)と酸素との比率、成膜時の不活性ガスと反応性ガスとの比率、成膜時のガスの供給量、成膜時の真空度、及び、成膜時の電力からなる群から選択される1種又は2種以上の条件が例示され、これらの成膜条件(好ましくは、酸素分圧)を調節することによって、酸素欠損組成を有する複合酸化物からなる薄膜を形成することができる。すなわち、上述したような共蒸着法を用いてガスバリアー層を形成することで、形成されるガスバリアー層の厚さ方向のほとんどの領域を混合領域とすることができる。このため、かような手法によれば、混合領域の厚さを制御するという極めて簡便な操作により、所望のガスバリアー性を実現することができる。なお、混合領域の厚さを制御するには、例えば、共蒸着法を実施する際の成膜時間を調節すればよい。
本発明において、導電層は、可視項領域において透過度を有し、かつ導電性を有する層であればよく、特に限定されないが、導電性ポリマー、銀ペーストやポリマーペースト等の導電性ペースト、さらに金や銅等の金属コロイド、ITO等の金属酸化物等が挙げられる。その材料としては、具体的には、錫をドープしたインジウム酸化物(ITO)、アンチモンまたはフッ素をドープした錫酸化物(ATOまたはFTO)、アルミニウムをドープした亜鉛酸化物(AZO)、カドミウム酸化物、カドミウムと錫の酸化物、酸化チタン、酸化亜鉛、ヨウ化銅などの金属酸化物、または金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)などの金属、銀ナノワイヤーやカーボンナノチューブ(以下、CNT)の無機系、有機系のナノ材料等が挙げられる。これらの中でも、透明導電層を液晶表示素子用のタッチパネルとして用いる場合には、光線透過性、耐久性等の観点より、ITOが最も好ましい。
この導電層の成膜は、特に限定されないが、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、イオンプレーティング法、ゾル・ゲル法、コーティング法などが例示される。導電層は、静電容量式タッチパネルとして使用する場合は、パターン化して製膜される場合が多い。パターンとしては、メッシュ状で且つ直線が略直交した直線格子パターン、交差部間の導電部分が少なくとも1つの湾曲部を有する波線格子パターン、ダイヤモンド状のパターン等がある。導電層の厚みは、特に限定されないが、ITOの場合には、好ましくは10〜150nm、さらに好ましくは15〜70nm程度である。また、導電層の表面抵抗率は、特に限定されないが、好ましくは100〜1000Ω/□程度である。
導電層にCNTを使用する場合、用いられるCNTは、単層CNT、二層CNT、三層以上の多層CNTのいずれでもよいが、直径が0.3〜100nm、長さ0.1〜20μm程度のものが好ましく用いられる。導電層の透明性を高め、表面抵抗値を低減するためには、直径10nm以下、長さ1〜10μmの単層CNT、二層CNTがより好ましい。また、CNTの集合体にはアモルファスカーボンや触媒金属などの不純物は極力含まれないことが好ましい。
タッチパネルセンサーフィルムの両方の面に導電層を有する場合、両方の面に導電層を積層するのは、片面ごとに行ってもよいし、両面同時に行ってもよい。両面に導電層を有する場合の膜厚は異ならせてもよいが、フィルム基材の反りを防ぐためには同じ厚さである方が望ましい。
また、本発明の導電層としては、屈折率の異なる層を積層して反射を抑制する低反射層や、金属導電層の腐食を抑制する防性層を備えていても良い。
《電子デバイス》
本発明のガスバリアー性フィルムは、空気中の化学成分(酸素、水、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等)によって性能が劣化するデバイスに好ましく適用できる。すなわち、本発明のガスバリアー性フィルムは、電子デバイス本体と、を含む電子デバイスに適用することができる。
本発明のガスバリアー性フィルムを具備した電子デバイスに用いられる電子デバイス本体の例としては、例えば、有機EL素子、液晶表示素子(LCD)、タッチパネル、電子ペーパー等を挙げることができる。本発明の効果がより効率的に得られるという観点から、該電子デバイス本体は有機EL表示素子がより好ましい。
〔有機EL素子〕
本発明のガスバリアー性フィルムは、有機EL素子に適用することができ、本発明に適用可能な有機EL素子の概要については、例えば、特開2013−157634号公報、特開2013−168552号公報、特開2013−177361号公報、特開2013−187211号公報、特開2013−191644号公報、特開2013−191804号公報、特開2013−225678号公報、特開2013−235994号公報、特開2013−243234号公報、特開2013−243236号公報、特開2013−242366号公報、特開2013−243371号公報、特開2013−245179号公報、特開2014−003249号公報、特開2014−003299号公報、特開2014−013910号公報、特開2014−017493号公報、特開2014−017494号公報等に記載されている構成を挙げることができる。
図3は本発明の電子デバイスの実施の形態である有機EL素子の構成を示す展開図である。図3に示すように、フィルムセンサ31は、表示装置35の表示面35aに、例えば接着層(図示せず)を介して接着されている。なお図3において、符号32a及び32bはそれぞれ、フィルムセンサ31の支持フィルム32の対向する一対の面を表している。このうち面32bは、表示装置35側を向いている面であり、面32aは、観察者側を向いている面である。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。[基材の準備]
両面に易接着処理した厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラー(登録商標)(U403))のガスバリアー層を形成する面とは反対側の面に、アンチブロック機能を有するクリアハードコート層を形成した。具体的には、UV硬化型樹脂(アイカ工業株式会社製、品番:Z731L)を乾燥膜厚が0.5μmになるように塗布した後、80℃で乾燥し、その後、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件で硬化を行った。
次に、ガスバリアー層を形成する側の面に厚さ2μmのクリアハードコート層を形成した。具体的には、JSR株式会社製、UV硬化型樹脂オプスター(登録商標)Z7527を、乾燥膜厚が2μmになるように塗布した後、80℃で乾燥し、その後、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件で硬化を行った。このようにして、基材を作製した(以下、全ての作製例について、同一の基材を用いている。)。[ガスバリアー層の製膜条件]
上記基材に対し、表1に記載の製膜条件にて遷移金属M2を含有する領域、非遷移金属M1を含有する領域を形成し、試料No.1〜13のガスバリアー性フィルムを得た。各条件の具体的な手順は下記のとおりである。なお、製膜の順番は、上記基材上に、表1に記載の方法で非遷移金属M1を含有する領域(B領域)を製膜し、その後、遷移金属M2を含有する領域(A領域)を製膜する順番とした。
XPS分析により、組成プロファイルを求め、混合領域の有無等を表に記載した。
<スパッタ法>
スパッタリング法として、以下のS−1〜S−7までの方法を行った。S−1〜S−7においては、マグネトロンスパッタ装置を用いた。なお、S−1〜S−7においては、プロセスガスにArとOとを用いた。
(S−1)
市販の多結晶Siターゲットを用いて酸化ケイ素を製膜、RF方式、厚さ110nmとなるように製膜時間を設定して製膜した。なお、酸素分圧を調整し、XPSでの組成がSiOとなるようにした。
(S−2)
厚さ10nmとなるように製膜時間を設定して製膜した以外はS−1と同様にした。
(S−3)
市販の酸素欠損型五酸化二ニオブターゲットを用いて酸化ニオブを製膜、DC方式、酸素分圧12%、厚さ10nmとなるように製膜時間を設定して製膜した。
(S−4)
厚さ5nmとなるように製膜時間を設定して製膜した以外はS−3と同様にした。
(S−5)
厚さ2nmとなるように製膜時間を設定して製膜した以外はS−3と同様にした。
(S−6)
厚さ0.5nmとなるように製膜時間を設定して製膜した以外はS−3と同様にした。(S−7)
市販の金属タンタルターゲットを用いて酸化タンタルを製膜、DC方式、酸素分圧20%、厚さ5nmとなるように製膜時間を設定して製膜した。
<塗布法>
塗布法として、以下のC−1〜C−3までの方法を行った。
(C−1)
パーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NN120−20)と、アミン触媒(N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン(TMDAH))を含むパーヒドロポリシラザン20質量%のジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NAX120−20)とを、4:1(質量比)の割合で混合し、さらに乾燥膜厚調整のためジブチルエーテルで希釈し、固形分4質量%の塗布液を調製した。
上記基材上にスピンコート法により塗布液を、乾燥後の厚さが110nmになるよう塗布し、80℃で2分間乾燥した塗膜を得た。
(C−2)
C−1で得られた乾燥した塗膜に対して、波長172nmのXeエキシマランプを有する真空紫外線照射装置を用い、照射エネルギーを6.0J/cmとした条件で真空紫外線照射処理を行った。この際、照射雰囲気は窒素で置換し、酸素濃度は0.1体積%とした。また、試料を設置するステージ温度を80℃とした。
(C−3)
パーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NN120−20)と、アミン触媒(N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン(TMDAH))を含むパーヒドロポリシラザン20質量%のジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NAX120−20)とを、4:1(質量比)の割合で混合し、さらにジブチルエーテルで固形分濃度が4質量%となるように希釈した液Aを調製した。塗布液の調製はグローブボックス内で行った。次に、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレートをジブチルエーテルで固形分濃度が5質量%となるように希釈したアルミニウム化合物液を作製した。S1とアルミニウム化合物液とを、Al/Si原子数比が0.01となるように混合し、攪拌しながら80℃まで昇温し、80℃で2時間保持した後、室温(25℃)まで徐冷した。このようにして、固形分4質量%の塗布液を調製した。
上記基材上にスピンコート法により塗布液を、乾燥後の厚さが、110nmになるよう塗布し、80℃で2分間乾燥した塗膜を得た。
次いで、上記塗膜に対して、波長172nmのXeエキシマランプを有する真空紫外線照射装置を用い、照射エネルギーを0.7J/cmとした条件で真空紫外線照射処理を行った。この際、照射雰囲気は窒素で置換し、酸素濃度は0.1体積%とした。また、試料を設置するステージ温度を80℃とした。
[導電性パターン1の形成方法]
(銀ナノワイヤーの水分散物の調整)
特開2013−198990号公報の実施例の銀ナノワイヤー分散液(1)の調製方法にしたがって、銀ナノワイヤーの水分散物を調整した。
(透明導電膜の作製)
特開2013−198990号公報の実施例のパターン透明導電膜1の形成方法にしたがって、ガスバリアー性フィルムのガスバリアー層上に、透明導電膜を形成した。
(透明導電膜のパターニング)
特開2013−198990号公報の実施例のパターン透明導電膜1の形成方法にしたがって、透明導電膜のパターニングを行った。導電性エリアは12cm×12cmサイズにパターニングしたものを作製した。取り出し電極の形成は行わなかった。
[導電性パターン2の形成方法]
特開2015−12046の実施例に従い、細線形成用インク・インク1を用い、ガスバリアー性フィルムのガスバリアー層上に、200μmピッチで複数のラインをストライプ状に形成した。形成エリアは12cm×12cmサイズとした。次いで、電解メッキにより、上記で形成したライン上に、銅の導電性パターンを形成した。
<水蒸気透過率の評価>
各ガスバリアー性フィルムの水蒸気透過率を、モコン社製の水蒸気透過率測定装置アクアトランを用い、38℃、100%RHの条件で測定した。測定は、導電性パターンを形成していない試料、導電性パターン1を形成した試料、導電性パターン2を形成した試料それぞれで行った。結果を表1に示した。
Figure 0006794994
表1の結果から本発明のタッチパネルセンサーフィルムでは、水蒸気透過率が小さく、また導電性パターン形成による水蒸気透過率の増加も少ないことがわかる。
本発明は、ガスバリアー性に優れたタッチパネルセンサーとして利用でき、特にフレキシブル有機EL表示素子等の電子デバイスに適用したときに、厚さや重さを低減可能であり、かつ、ガスバリアー性に優れたタッチパネルセンサーフィルムとして利用できる。
11 タッチパネルセンサーフィルム
12 導線
13 基材フィルム
14 プライマー層
15 バリアー層
16 導電層
17 低反射層
18 導電本体層
19 防錆層
31 フィルムセンサ
32 支持フィルム
35 表示装置
36 表示面

Claims (5)

  1. 基材上に、ガスバリアー層及びパターニングされた導電層を有するタッチパネルセンサーフィルムであって、
    前記ガスバリアー層が、少なくとも厚さ方向において、非遷移金属M1及び遷移金属M2を含有する領域であって、前記非遷移金属M1に対する遷移金属M2の原子数比の値(M2/M1)が、0.02〜49の範囲内にある混合領域を、厚さ方向に連続して5nm以上有し、かつ、前記混合領域の組成に、さらに酸素が含有されており、前記混合領域の組成を、下記化学組成式(1)で表したとき、前記混合領域の少なくとも一部が下記関係式(2)を満たすことを特徴とするタッチパネルセンサーフィルム。
    化学組成式(1): (M1)(M2)
    関係式(2): (2y+3z)/(a+bx)<1.0
    (ただし、式中、M1:非遷移金属、M2:遷移金属、O:酸素、N:窒素、
    x,y,z:化学量論係数、0.02≦x≦49、0<y、0≦z
    a:M1の最大価数、b:M2の最大価数、を表す。)
  2. 前記ガスバリアー層が、前記遷移金属M2を主成分として含有する領域と前記非遷移金属M1を主成分として含有する領域との間に、前記混合領域を有すること特徴とする請求項1に記載のタッチパネルセンサーフィルム。
  3. 前記非遷移金属M1が、ケイ素(Si)であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のタッチパネルセンサーフィルム。
  4. 前記遷移金属M2が、長周期型周期表の第5族元素であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のタッチパネルセンサーフィルム。
  5. 前記遷移金属M2が、ニオブ(Nb)又はタンタル(Ta)であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のタッチパネルセンサーフィルム。
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