JP6794295B2 - 9%Ni鋼溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents

9%Ni鋼溶接用フラックス入りワイヤ Download PDF

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Description

本発明は、主にLNG等(Liquefied Natural Gas)の貯蔵タンクに用いられる9%Ni鋼の溶接に使用される9%Ni鋼溶接用フラックス入りワイヤに関し、高強度で靱性に優れた溶接金属性能が得られ、耐割れ性及びブローホール等の耐欠陥性に優れ、かつ、全姿勢での溶接作業性に優れる9%Ni鋼溶接用フラックス入りワイヤに関するものである。
近年、日本国内では、液化天然ガスを燃料とした火力発電所の増強計画が促進されており、都市ガス販売量の拡大、工業用の燃料転換による使用量の増加とともに、LNG需要は拡大すると見込まれている。また、世界全体でも、LNGの需要は増加傾向にあり、LNG貯槽タンクの新規建設や増設等が検討されている。このLNG貯蔵タンクは、フェライト系の極低温材料として、Niを9%含有させた9%Ni鋼が適用されており、主にLNGタンクの内槽材として適用されてきた。一方、溶接は、極低温で十分な強度と優れた靭性が要求されるため、Ni基合金を含有する溶接材料が多く用いられている。LNGタンクの現地溶接において、内槽側板の溶接は、建設工事全体の工程及びコストにおいて大きな割合を占めており、従来、内槽側板の縦継手には、被覆アーク溶接もしくはティグ溶接が、また周溶接にはサブマージアーク溶接が主に適用されてきた。一方、被覆アーク溶接やティグ溶接を適用する縦継手の溶接は、作業効率が悪く、溶接作業の負荷軽減や工期短縮等に課題があった。
Ni基合金のような特殊材料においても、被覆アーク溶接やティグ溶接に比べて、溶接作業の高能率化が期待できるNi基合金フラックス入りワイヤを用いたガスシールドアーク溶接に対する需要が拡大しつつある。一方、Ni基合金は、完全オーステナイト組織であり、極めて割れ感受性が高く、また炭素鋼と比較し、融点が低くブローホール等の気孔欠陥が発生する等、耐欠陥性に課題があった。さらには、鋼板と同等の引張強度や、極低温での衝撃性能が要求されるため、溶接金属には、このような諸特性と溶接作業性の両立が求められるため、溶接姿勢や溶接条件範囲が限られていた。
9%Ni鋼溶接用フラックス入りワイヤとして、例えば特許文献1において、Ni基外皮中のC、Ti、Al及びMg含有量を規定し、かつワイヤ全質量として、Ni、Cr、Mo、Mn、W、Fe、Ti、Mg含有量を所定量の範囲で含有し、C、Nb含有量を所定以下に抑制した耐欠陥性に優れるフラックス入りワイヤが提案されている。しかしながら、この特許文献1の開示技術によれば、ワイヤ全質量中のTi含有量が低く、十分な脱酸効果が得られないため、ブローホール等が発生しやすく耐欠陥性に課題がある。また、固溶強化元素であるNb含有量が低く、Ni基合金のような、完全オーステナイト組織では、溶接金属の強度が低い等の問題点があった。
また特許文献2には、800℃以上で焼結したTiO2を適用し、水分量を低減することによって耐欠陥性に優れたフラックス入りワイヤが提案されている。しかしながら、特許文献2の開示技術では、粉末状のフラックスは、表面積が高く、焼結後に再吸湿しやすい等の問題点があった。また、シームタイプのフラックス入りワイヤで製造した場合、シーム部より水分を吸湿し、耐欠陥性については課題がある。さらには、TiO2を焼成する等の工程増加によって、製造コストが高くなる等の問題点があった。
特許文献3では、Ni基外皮中のC含有量を規定し、かつワイヤ全質量としてTiO2やZrO2含有量を規定したワイヤ生産性が良好であるとともに、溶接金属の機械性能及び耐割れ性に優れ、溶接作業性が良好なフラックス入りワイヤが提案されている。しかしながら、この特許文献3の開示技術では、溶接金属の機械性能と耐割れ性能は両立が得られているものの、全姿勢における溶接作業性に改善の余地があった。
特開2015−85366号公報 特開2016−93836号公報 特開2016−147273号公報
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、主にLNG等の貯蔵タンクに用いられる9%Ni鋼の溶接に使用される9%Ni鋼溶接用フラックス入りワイヤに関し、高強度で靱性に優れた溶接金属が得られ、耐割れ性及びブローホール等の耐欠陥性に優れ、かつ、全姿勢での溶接作業性に優れる9%Ni鋼溶接用フラックス入りワイヤを提供することを目的とする。
本発明の要旨は、Ni基合金外皮にフラックスを充填してなる9%Ni鋼溶接用フラックス入りワイヤにおいて、ワイヤ全質量に対する質量%で、Ni基合金外皮とフラックスの合計で、Mn:2.0〜4.5%、Ni:53〜65%、Cr:13〜19%、Mo:5〜14%、Nb:0.5〜3.0%、Cu:0.01〜0.5%、Ti:0.4〜1.0%を含有し、C:0.02%以下、Si:0.2%以下であり、さらに、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、Ti酸化物:TiO2換算値の合計で3.0〜7.0%、Si酸化物:SiO2換算値の合計で0.5〜2.0%、Zr酸化物:ZrO2換算値の合計で1.0〜2.0%、Al酸化物:Al23換算値の合計で0.01〜0.1%、Na酸化物及びK酸化物:Na2O換算値及びK2O換算値の1種または2種の合計で0.1〜0.8%、CaO:0.1〜0.8%、弗素化合物:F換算値の合計で0.1〜1.0%、Ti酸化物、Si酸化物、Zr酸化物、Al酸化物、Na酸化物及びK酸化物、CaOを含む酸化物及び弗素化合物からなるスラグ形成剤の合計:6〜12%を含有し、残部はNi基合金外皮のFe分、鉄合金粉のFe分及び不可避不純物であることを特徴とする9%Ni鋼溶接用フラックス入りワイヤにある。
本発明の9%Ni鋼溶接用フラックス入りワイヤによれば、9%Ni鋼の溶接において、高強度、高靱性の溶接金属が得られ、かつ、耐割れ性及びブローホール等の耐欠陥性に優れ、かつ全姿勢での溶接作業性に優れる等、高能率で高品質な溶接金属が得られる9%Ni鋼溶接用フラックス入りワイヤを提供することができる。
耐欠陥性を評価した溶接継手の開先形状及び積層要領を示す図である。
本発明者らは、上述した課題を解決するために種々のフラックス入りワイヤを試作し、溶接作業性及び機械的性質におよぼす成分組成について詳細に検討した。
その結果、フラックス入りワイヤ中のC、Ni、Cr、Nb、Cuを適量にすることによって、機械的性質に優れた溶接金属を得ることができたものの、溶接後に高温割れが発生した。そこで溶接金属の機械的性質を維持しつつ、高温割れを防止できるよう成分組成について更なる検討を行った。その結果、高温割れは、S、P等の不純物元素の偏析もしくはNi−SiやNi−Nbの低融点化合物が生成することによって発生するといった知見が得られた。そこで、溶接金属の高温割れを助長するSiを低減することで、低融点化合物の生成を抑制し、またMnを調整することで、MnがSと結合し、耐高温割れ性を向上することが可能となった。さらには、Moを添加することで、低融点化合物であるNi−Nbの生成を抑制し、比較的高融点のNi−Nb−Mo化合物を生成することによって、耐高温割れ性の向上を行い、優れた機械的性質を有する溶接金属が得られた。
また、Ni基合金の溶接金属は、炭素鋼と比較し凝固温度が低いため、凝固が完了する時間が短く、COガスが溶接金属内部にトラップされやすくブローホール等の気孔欠陥が発生しやすくなるといった問題点があるため、更なる検討を行った。その結果、Tiを適量添加することで、溶接金属中の酸素量を低減させCO反応を抑制し、ブローホール等を低減するといった知見が得られた。また、CaOを適量添加することにより、スラグの融点や粘性を調整し、スラグと溶融金属表面に内在するCOガスのトラップを抑制し、ブローホールやピットの発生を低減し耐欠陥性が良好な溶接金属が得られた。
さらに、溶接作業性は、フラックス入りワイヤ中のTiO2換算値の合計、SiO2換算値の合計、Al23換算値の合計、ZrO2換算値の合計及びCaO、Na酸化物及びK酸化物のNa2O換算値及びK2O換算値の1種または2種の合計、弗素化合物のF換算値の合計、スラグ剤の合計量を適量とすることで溶接時のアーク状態、スラグ被包性、スラグ剥離性等が良好になることを見出した。
本発明は、Ni基合金外皮及び充填フラックスの各成分組成それぞれの単独及び共存による及び相乗効果によりなし得たもので、以下にそれぞれの各成分組成の添加理由及び限定理由を述べる。なお、各成分組成の含有量は、ワイヤ全質量に対する質量%で示すものとし、その質量%に関する記載を単に%と記載する。
[Ni基合金外皮とフラックスの合計でMn:2.0〜4.5%]
Mnは、溶接金属の耐割れ性を向上させるために添加する。Mnが2.0%未満では、耐割れ性が劣化する。一方、Mnが4.5%を超えると、スパッタ発生量が多くなる。従って、Ni基合金外皮とフラックスの合計でMnは2.0〜4.5%とする。なお、Mnは、Ni基合金外皮に含まれる他、フラックスからの金属Mn及びFe−Mn等の合金粉から添加される。
[Ni基合金外皮とフラックスの合計でNi:53〜65%]
Niは、溶接金属を構成する主元素であり、オーステナイト組織を有して強度及び靱性を確保するために添加する。Niが53%未満では、その効果が得られず、溶接金属の強度と靱性が低下する。一方、Niが65%を超えると、溶接金属の靱性が低下する。従って、Ni基合金外皮とフラックスの合計でNiは53〜65%とする。なお、Niは、Ni基合金外皮に含まれる他、フラックスからの金属Ni、Fe−Ni等の合金粉から添加される。
[Ni基合金外皮とフラックスの合計でCr:13〜19%]
Crは、溶接金属の強度を確保する目的で添加する。Crが13%未満では、その効果が得られず必要な溶接金属の強度が得られない。一方、Crが19%を超えると、溶接金属の伸びが低下する。従って、Ni基合金外皮とフラックスの合計でCrは13〜19%とする。なお、Crは、Ni基合金外皮に含まれる他、フラックスからの金属Cr、Fe−Cr等の合金粉から添加される。
[Ni基合金外皮とフラックスの合計でMo:5〜14%]
Moは、溶接金属の強度を向上し、かつ高温割れを抑制する目的で添加する。Moが5%未満では、その効果が十分に得られず溶接金属の強度が低下するとともに、高温割れが発生する。一方、Moが14%を超えると、溶接金属の靱性が低下する。従って、Ni基合金外皮とフラックスの合計でMoは5〜14%とする。なお、Moは、Ni基合金外皮に含まれる他、フラックスからの金属Mo、Fe−Mo等の合金粉から添加される。
[Ni基合金外皮とフラックスの合計でNb:0.5〜3.0%]
Nbは、溶接金属の強度を向上させる目的で添加する。Nbが0.5%未満では、その効果が十分に得られず溶接金属の強度が低下する。一方、Nbが3.0%を超えると、Ni−Nb等の低融点化合物を生成して、高温割れが発生しやすくなる。従って、Ni基合金外皮とフラックスの合計でNbは0.5〜3.0%とする。なお、Nbは、Ni基合金外皮に含まれるほか、フラックスからのFe−Nb等の合金粉から添加される。
[Ni基合金外皮とフラックスの合計でCu:0.01〜0.5%]
Cuは、溶接金属の強度を向上させる目的で添加する。Cuが0.01%未満では、その効果が十分に得られず、溶接金属の強度が低下する。一方、Cuが0.5%を超えると、結晶粒界に偏析し、耐割れ性が劣化する。従って、Ni基合金外皮とフラックスの合計でCuは0.01〜0.5%とする。なお、Cuは、Ni基合金外皮に含まれる他、フラックスからの金属Cu等の金属粉から添加される。
[Ni基合金外皮とフラックスの合計でTi:0.4〜1.0%]
Tiは、溶接金属中の酸素量を低減させCO反応を抑制し、ブローホール等を低減し、耐欠陥性を向上させる目的で添加する。Tiが0.4%未満では、溶接金属中の脱酸反応が不十分で、ブローホール等の気孔欠陥が発生する。一方、Tiが1.0%を超えると、炭化物が析出して、溶接金属の伸びが低下する。従って、Tiは0.4〜1.0%とする。なお、Tiは、Ni基合金外皮に含まれる他、フラックスからの金属Ti、Fe−Ti等の合金粉から添加される。
[Ni基合金外皮とフラックスの合計でC:0.02%以下]
Cは、溶接金属の強度を向上する効果があるが、過剰に添加すると炭化物を生成して靱性を低下させる。このため、Ni基合金外皮とフラックスの合計でCは、0.02%以下とする。なお、Cは、Ni基合金外皮に含まれる他、フラックスからの金属粉及び合金粉から添加される。なお、Cの下限は特に限定しないが溶接金属の強度を向上する効果を得るためには0.005%以上であることが好ましい。
[Ni基合金外皮とフラックスの合計でSi:0.2%以下]
Siは、Ni−Si等の低融点化合物を生成し、高温割れを助長する効果があるため、できる限り低くすることが好ましい。Siが0.2%を超えると、高温割れが発生する。従って、Ni基合金外皮とフラックスの合計でSiは0.2%以下とする。なお、SiはNi基合金外皮に含まれる他、フラックスからの金属粉及び合金粉から添加される。
[フラックス中のTi酸化物:TiO2換算値の合計で3.0〜7.0%]
Ti酸化物は、溶滴移行を安定させアーク安定性を改善する目的で添加する。Ti酸化物 のTiO2換算値の合計が3.0%未満では、その効果が十分に得られず、アークが不安定になる。一方、Ti酸化物のTiO2換算値の合計が7.0%を超えると、ビード表面にテンパーカラーが付着しビード外観が不良となる。従って、フラックス中のTi酸化物は、のTiO2換算値の合計で3.0〜7.0%とする。なお、Ti酸化物は、フラックスからのルチール、酸化チタン、チタンスラグ、イルメナイト等の粉末から添加される。
[フラックス中のSi酸化物:SiO2換算値の合計で0.5〜2.0%]
Si酸化物は、スラグの融点を調整し、ビード外観を向上する目的で添加する。Si酸化物のSiO2換算値の合計が0.5%未満では、その効果が十分に得られず、スラグの被包が不均一で、ビード外観が不良となる。一方、Si酸化物のSiO2換算値の合計が2.0%を超えると、スラグの融点が低くなり、立向上進溶接時に発生する溶融スラグによる溶融金属の保持が困難になるため、ビード形状が凸になる。従って、フラックス中のSi酸化物は、SiO2換算値の合計で0.5〜2.0%とする。なお、Si酸化物は、フラックスからの珪砂、珪酸ソーダ、珪灰石等の粉末から添加される。
[フラックス中のZr酸化物:ZrO2換算値の合計で1.0〜2.0%]
Zr酸化物は、スラグ被包性を改善し、スラグ剥離性を向上する効果がある。Zr酸化物のZrO2換算値の合計が、1.0%未満では、その効果が十分に得られず、スラグの被包が不均一で、スラグ剥離性が劣化する。一方、Zr酸化物のZrO2換算値の合計が2.0%を超えると、スラグ粘性が増加して溶滴移行が円滑に行われずスパッタ発生量が増加する。従って、フラックス中のZr酸化物は、ZrO2換算値の合計で1.0〜2.0%とする。なお、Zr酸化物は、フラックスからのジルコンサンド、酸化ジルコン等の粉末から添加される。
[フラックス中のAl酸化物:Al23換算値の合計で0.01〜0.1%]
Al酸化物は、スラグの融点を調整して、ビード外観を向上する目的で添加する。Al酸化物中のAl23換算値の合計が0.01%未満では、その効果が十分に得られず、スラグの被包が不均一で、ビード外観が劣化する。一方、Al酸化物中のAl23換算値の合計が0.1%を超えると、ビード表面にスラグが焼付きスラグ剥離性が劣化する。従って、フラックス中のAl酸化物は、Al23換算値の合計で0.01〜0.1%とする。なお、Al酸化物は、フラックスからのアルミナ、カリ長石等の粉末から添加される。
[フラックス中のNa酸化物及びK酸化物:Na2O換算値及びK2O換算値の1種または2種の合計で0.1〜0.8%]
Na酸化物及びK酸化物は、スラグの融点及び粘性を改善してアークを安定にする。Na酸化物及びK酸化物のNa2O換算値及びK2O換算値の1種または2種の合計が0.1%未満では、その効果が十分に得られず、アークが不安定となる。一方、Na酸化物及びK酸化物のNa2O換算値及びK2O換算値の1種または2種の合計が0.8%を超えると、溶滴が大きく成長して、大粒のスパッタが発生し、スパッタ発生量が多くなる。従って、フラックス中のNa酸化物及びK酸化物は、Na2O換算値及びK2O換算値の1種または2種の合計で0.1〜0.8%とする。なお、フラックス中のNa酸化物及びK酸化物は、フラックス中の珪酸ソーダ及び珪酸カリからなる水ガラス固質成分、カリ長石等の粉末から添加される。
[フラックス中のCaO:0.1〜0.8%]
CaOは、スラグの融点や粘性を調整し、スラグと溶融金属表面に内在するCOガスのトラップを抑制して、ブローホールやピットの発生を低減し耐欠陥性を向上する効果がある。CaOが0.1%未満では、その効果が十分に得られず、ブローホールやピットが生じやすくなる。一方、CaOが0.8%を超えると、溶滴移行が安定せず、アークが不安定となる。従って、フラックス中のCaOは0.1〜0.8%とする。なお、CaOは、フラックス中の珪灰石等の粉末から添加される。
[フラックス中の弗素化合物:F換算値の合計で0.1〜1.0%]
弗素化合物のF換算値の合計は、溶融金属を攪拌して、溶接金属へのスラグ内在を防止する目的で添加する。弗素化合物のF換算値の合計が0.1%未満では、その効果が十分に得られず、溶接金属へスラグが内在しやすくなる。一方、弗素化合物のF換算値の合計が1.0%を超えると、スパッタ発生量が多くなる。従って、フラックス中の弗素化合物は、F換算値の合計で0.1〜1.0%とする。なお、弗素化合物はNaF、LiF、CaF2、AlF3、K2ZrF6、K2SiF6等の粉末から添加でき、F換算値はそれらに含有するF量の合計である。
Ti酸化物、Si酸化物、Zr酸化物、Al酸化物、Na酸化物及びK酸化物、CaOを含む酸化物及び弗素化合物からなるスラグ形成剤の合計:6〜12%]
Ti酸化物、Si酸化物、Zr酸化物、Al酸化物、Na酸化物及びK酸化物、CaOを含む酸化物及び弗素化合物からなるスラグ形成剤の合計は、溶接時に発生するスラグ量を調整し、ビード形状を改善する目的で添加する。スラグ形成剤の合計が6%未満では、その効果が十分に得られず、溶接時に発生するスラグ量が少なくなりビード形状が劣化する。一方、スラグ形成剤の合計が12%を超えると、スラグ量が過剰となり溶接スラグが不均一に被包してスラグ剥離性が劣化する。従って、Ti酸化物、Si酸化物、Zr酸化物、Al酸化物、Na酸化物及びK酸化物、CaOを含む酸化物及び弗素化合物からなるスラグ形成剤の合計は6〜12%とする。なお、スラグ形成剤は、弗素化合物(NaF、LiF、CaF2、AlF3、K2ZrF6、K2SiF6)、酸化物(TiO2、SiO2、ZrO2、Al23、Na2O、K2O、CaO等)の合計をいう。
また、本発明を適用した9%Ni鋼溶接用フラックス入りワイヤの残部は、Ni基合金外皮のFe分、Fe−Mn、Fe−Nb、Fe−Mo、Fe−Ti等の鉄合金粉のFe分及び不可避不純物である。不可避不純物について、特に規定はしないが、耐高温割れ性の観点から、Pは0.010%以下、Sは0.010%以下が好ましい。なお、Ni基合金外皮へのフラックス充填率が18%未満では、外皮の肉厚が厚くなり、溶滴が肥大化してアークが不安定となる。一方、フラックス充填率が30%を超えると、外皮の肉厚が薄く、スラグ量が過剰となりスラグ被包性が劣化する。従って、フラックス充填率は18〜30%とすることが好ましい。
フラックス入りワイヤの製造方法について言及すると、例えば外皮を帯鋼より管状に成形する場合には、配合、撹拌、乾燥した充填フラックスをU形に成形した溝に満たした後丸形に成形し、所定のワイヤ径1.0〜1.6mmまで伸線する。この際、整形した外皮シームを溶接することで、シームレスタイプのフラックス入りワイヤとすることもできる。また外皮がパイプの場合には、パイプを振動させてフラックスを充填し、所定のワイヤ径まで伸線する。
充填フラックスは、供給、充填が円滑に行えるように、固着剤(珪酸カリ及び珪酸ソーダの水溶液)を添加して造粒して用いることもできる。
表1に示す化学成分のNi基合金外皮を適用し、表2及び表3に示す各種組成の9%Ni鋼溶接用フラックス入りワイヤを試作した。表2及び表3に示される各Mn、Ni、Cr、Mo、Nb、Cu、Ti、C、Siの組成は、Ni基合金外皮とフラックスの合計の量であり、TiO2換算値、SiO2換算値、ZrO2換算値、Al23換算値、Na2O換算値及びK2O換算値の1種または2種の合計、CaO、F換算値、スラグ形成剤の合計は、何れもフラックス中の量である。
また、ワイヤ径は1.2mm、フラックス充填率は18〜25%とした。
Figure 0006794295
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これらの試作したフラックス入りワイヤを用いて、溶着金属性能、耐欠陥性、耐割れ性及び溶接作業性について調査した。
溶着金属性能評価は、JIS Z 3335に従い、引張試験及び衝撃試験を行った。溶接条件は、表4のNo.1の条件で溶接を行った。引張試験は、引張強さ:690MPa以上、伸び:27%以上、衝撃試験は、試験温度−196℃における吸収エネルギーが3本の平均値で55J以上を良好とした。
耐欠陥性の調査は、表5に示す母材A1を使用した。実際の溶接は、図1に示す板厚12mmの母材1、60°V開先、ルートギャップ4mm、板厚4mmの裏当金2付き開先を表4のNo.1に示す条件で溶接を行った。溶接継手の評価は、JIS Z 3106に準拠し、放射線透過試験を行った。耐欠陥性の評価は、JIS Z 3106の等級分類にて判定し、1類を良好とした。
Figure 0006794295
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耐割れ性の調査は、表5に示す母材A2を使用し、JIS Z3153に従い、溶接条件は、表4のNo.1の条件で適用し溶接を行った。耐割れ性の評価は、クレータ部を除く溶接ビード部の割れの有無を判定した。
溶接作業性評価は、表5に示す母材A1を使用し、表4に示すNo.1及びNo.2の溶接条件で水平すみ肉溶接及び立向上進溶接を行い、アーク安定性、スパッタ発生量、スラグ剥離性、ビード外観及びビード形状を目視で調査した。それらの結果を表6及び表7に示す。
Figure 0006794295
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表2、表3、表6及び表7中のワイヤNo.1〜20が本発明例、ワイヤNo.21〜38は比較例である。本発明例であるNo.1〜20は、Mn、Ni、Cr、Mo、Nb、Cu、Ti、C、Si、TiO2換算値の合計、SiO2換算値の合計、ZrO2換算値の合計、Al23換算値の合計、Na2O換算値及びK2O換算値の1種または2種の合計、CaO、F換算値の合計、スラグ形成剤の合計が適正であるので、溶着金属の引張強さ及び吸収エネルギーが高く、耐欠陥性、耐割れ性に優れ、溶接作業性も良好であり極めて満足な結果であった。
比較例中ワイヤNo.21は、Na2O換算値とK2O換算値の合計が少ないので、アークが不安定であった。また、Cが多いので、溶着金属の吸収エネルギーが低かった。
No.22は、Na2O換算値とK2O換算値の合計が多いので、スパッタ発生量が多かった。
No.23は、TiO2換算値の合計が少ないので、アークが不安定であった。また、Siが多いので、高温割れが発生した。
No.24は、TiO2換算値の合計が多いので、テンパーカラーが付着してビード外観が不良であった。
No.25は、CaOが少ないので、ブローホールが発生し、耐欠陥性が悪かった。また、Mnが少ないのでため、高温割れが発生した。
No.26は、CaOが多いので、アークが不安定であった。また、Mnが多いので、スパッタ発生量が多かった。
No.27は、SiO2換算値の合計が少ないので、スラグの被包が不均一で、ビード外観が不良であった。また、Niが少ないので、溶着金属の引張強さ及び吸収エネルギーが低かった。
No.28は、SiO2換算値の合計が多いので、ビードが凸となりビード形状が不良であった。また、Niが多いので溶着金属の吸収エネルギーが低かった。
No.29は、F換算値の合計が少ないので、ブローホールが発生し、耐欠陥性が悪かった。また、Crが少ないので、溶着金属の引張強さが低かった。
No.30は、F換算値の合計が多いので、スパッタ発生量が多かった。また、Crが多いので、溶着金属の伸びが低かった。
No.31は、Moが少ないので、溶着金属の引張強さが低く、高温割れが発生した。
No.32は、Moが多いので、溶着金属の吸収エネルギーが低かった。
No.33は、ZrO2換算値の合計が少ないので、スラグ剥離性が不良であった。また、Nbが少ないので、溶着金属の引張強さが低かった。
No.34は、ZrO2換算値の合計が多いので、スパッタ発生量が多かった。また、Nbが多いので、高温割れが発生した。
No.35は、Al23換算値の合計が少ないので、ビード外観が不良であった。また、Tiが少ないので、ブローホールが発生し、対欠陥性が悪かった。
No.36は、Al23換算値の合計が多いので、スラグ剥離性が不良であった。また、Tiが多いので、溶着金属の伸びが低かった。
No.37は、スラグ形成剤の合計が少ないので、ビード形状が不良であった。また、Cuが少ないので、溶着金属の引張強さが低かった。
No.38は、スラグ形成剤の合計が多いので、スラグ剥離性が不良であった。また、Cuが多いので、高温割れが発生した。
1 母材
2 裏当金

Claims (1)

  1. Ni基合金外皮にフラックスを充填してなる9%Ni鋼溶接用フラックス入りワイヤにおいて、
    ワイヤ全質量に対する質量%で、Ni基合金外皮とフラックスの合計で、
    Mn:2.0〜4.5%、
    Ni:53〜65%、
    Cr:13〜19%、
    Mo:5〜14%、
    Nb:0.5〜3.0%、
    Cu:0.01〜0.5%、
    Ti:0.4〜1.0%を含有し、
    C:0.02%以下、
    Si:0.2%以下であり、
    さらに、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、
    Ti酸化物:TiO2換算値の合計で3.0〜7.0%、
    Si酸化物:SiO2換算値の合計で0.5〜2.0%、
    Zr酸化物:ZrO2換算値の合計で1.0〜2.0%、
    Al酸化物:Al23換算値の合計で0.01〜0.1%、
    Na酸化物及びK酸化物:Na2O換算値及びK2O換算値の1種または2種の合計で0.1〜0.8%、
    CaO:0.1〜0.8%、
    弗素化合物:F換算値の合計で0.1〜1.0%、
    Ti酸化物、Si酸化物、Zr酸化物、Al酸化物、Na酸化物及びK酸化物、CaOを含む酸化物及び弗素化合物からなるスラグ形成剤の合計:6〜12%を含有し、
    残部はNi基合金外皮のFe分、鉄合金粉のFe分及び不可避不純物であることを特徴とする9%Ni鋼溶接用フラックス入りワイヤ。
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